説明

排ガス分析用センサ

【課題】センサ本体等の温度変形に起因する反射鏡の固定緩みを低減して、排ガスの測定精度を向上させた排ガス分析用センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】エンジン20より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔41が穿設されたセンサ本体40に、排ガス通過孔41内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部5と、照射部5より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡60を備えた反射鏡ユニット6と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部7とが設けられる排ガス分析用センサ4において、前記反射鏡60は、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて挿入されたネジ部材66によってセンサ本体40に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス分析用センサの技術に関し、より詳細には、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔に向けてレーザ光を照射し、反射鏡によりレーザ光を多重反射させた後に、排ガス中を透過したレーザ光を検出する排ガス分析用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定し、分析するための装置として、排気経路(配管)に、光源や検出器部等からなる排ガス分析用センサを直接に配設し、排気経路を流れる排ガス中を透過したレーザ光を検出する等して、排ガス中の成分濃度等をリアルタイムで測定するように構成された排ガス分析装置の構成が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した特許文献1に開示される排ガス分析用センサは、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔に向けてレーザ光を照射し、反射鏡によりレーザ光を多重反射させた後に、排ガス中を透過したレーザ光を検出するように構成されている。このように、排ガス分析用センサは、センサ本体の排ガス通過孔内で対向する一対の反射鏡によってレーザ光を多重反射させて、レーザ光が排ガス中を透過する距離(測定長)をより長く確保することで、その測定精度を向上するように構成されている。
【0004】
図6は、従来の排ガス分析用センサ104の構成の一例を示したものである。この排ガス分析用センサ104は、排ガスが通過する排ガス通過孔141が穿設され、分析用のレーザ光を排ガス通過孔内に向けて照射する照射部105と、該照射部105より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡160と、排ガス中を透過したレーザ光を検出する受光部106とが設けられるセンサ本体140を有している。
【0005】
特に、反射鏡160は、センサ本体140の内部空間に収納され、排ガス通過孔141内からセンサ本体140の外側方向に向けて挿入されたネジ部材166(ビス)による押圧力によって位置決めされて固定される。このように、従来の排ガス分析用センサ104では、反射鏡160は、排ガス通過孔141に対してセンサ本体140の外側の固定面を基準面として、この基準面にネジ部材166によって押し付けられることで固定される。
【特許文献1】特開2006−184180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した排ガス分析用センサは、排気経路中に直接に配置されるため、センサ本体の排ガス通過孔を通過する高温の排ガスの影響を受けて、センサ本体や当該センサを構成する各部材が温度変形(熱歪みや熱変形)する恐れがある。特に、センサ本体や当該センサを構成する各部材が温度変形してしまうと、反射鏡の固定に緩みが生じ、照射部から照射されたレーザ光の反射角度がずれて、受光部にてレーザ光を受光できないといった計測不良の原因となる。
【0007】
かかる観点から、図6に示したように、従来の排ガス分析用センサの構造では、反射鏡は、排ガス通過孔内から外側に向けて挿入されたネジ部材によって固定されるため、ネジ部材が排ガスによる熱の影響を受けて熱歪み等の温度変形を生じ易いという問題があった。また、ネジ部材の挿入孔が穿設される排ガス通過孔の内壁も、その強度不足によって温度変化を生じ易いという問題があった。そのため、反射鏡の固定緩みが生じ易く、照射部から照射されたレーザ光の反射角度がずれて受光部にてレーザ光を受光できない等、排ガスの測定精度に劣っていた。
【0008】
そこで、本発明においては、排ガス分析用センサに関し、前記従来の課題を解決するもので、センサ本体や各構成部材の温度変形に起因する反射鏡の固定緩みを低減して、排ガスの測定精度を向上させた排ガス分析用センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設されたセンサ本体に、該排ガス通過孔内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部と、該照射部より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部とが設けられる排ガス分析用センサにおいて、前記反射鏡は、前記センサ本体の外側から排ガス通過孔の内部方向に向けて挿入されたネジ部材によってセンサ本体に締結されるものである。
【0011】
請求項2においては、前記反射鏡は、前記センサ本体の排ガス通過孔の内壁に凹設された取付溝に取り付けられるものである。
【0012】
請求項3においては、前記反射鏡は、前記ネジ部材が螺入されるネジ孔を有するケーシング内に収容され、該ケーシングを介して前記センサ本体に締結されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記ケーシングには、前記反射鏡を加熱する加熱部材が収容されるものである。
【0014】
請求項5においては、内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設されたセンサ本体に、該排ガス通過孔内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部と、該照射部より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部とが設けられる排ガス分析用センサにおいて、前記センサ本体と反射鏡との間に緩衝部材が配設されるものである。
【0015】
請求項6においては、前記緩衝部材は、前記センサ本体と前記反射鏡を加熱する加熱部材との間に配設されるものである。
【0016】
請求項7においては、前記緩衝部材は、波形ガスケットが用いられるものである。
【0017】
請求項8においては、前記緩衝部材は、セラミックペーパが用いられるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1に示す構成としたので、センサ本体や各構成部材の温度変形に起因した反射鏡の固定緩みを低減し、反射鏡を安定して固定することができるため、照射部から照射されたレーザ光の反射角度を一定にして、排ガスの測定精度を向上することができる。
【0020】
請求項2に示す構成としたので、センサ本体に対する反射鏡の位置決めが容易であり、また、センサ本体に反射鏡を安定して締結することができる。
【0021】
請求項3に示す構成としたので、センサ本体に対する反射鏡の着脱が容易であり、反射鏡のメンテナンス等の作業性が向上するとともに、センサ本体に安定して締結させることができる。
【0022】
請求項4に示す構成としたので、一度に複数の部材をセンサ本体から着脱することができるとともに、加熱部材によって予め反射鏡を暖めておくことで、水分を含む低温の排ガスであっても測定を行うことができる。
【0023】
請求項5に示す構成としたので、排ガスの熱の影響を受けて各構成部材が温度変化した場合であっても、センサ本体と反射鏡との温度変形の差を吸収することで、反射鏡を安定して固定することができ、排ガスの測定精度を向上できる。また、センサ本体から反射鏡への熱伝達を低減することができ、反射鏡の温度変形も防止できる。
【0024】
請求項6に示す構成としたので、加熱部材からセンサ本体への熱伝達を低減することができ、センサ本体の熱変形に基づく反射鏡の固定緩みを低減できる。
【0025】
請求項7に示す構成としたので、その形状に起因するばね応力を有し、各構成部材の温度変形を吸収して反射鏡を安定して固定することができる。また、他の部材との接触面積が少なく、加熱部材からセンサ本体への熱伝達やセンサ本体から反射鏡等への熱伝達を低減することができる。
【0026】
請求項8に示す構成としたので、フェルト状で弾性を有することから、熱による収縮を吸収することができるため、各構成部材の温度変形を吸収して反射鏡を安定して固定することができる。また、熱伝導率が低いため、加熱部材からセンサ本体への熱伝達やセンサ本体から反射鏡への熱伝達を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明を実施するための最良の形態する。
図1は本発明の一実施例に係る排ガス分析用センサを備えた排ガス分析装置を車輌に搭載した状態を示した側面図、図2は排ガス分析用センサへ管継手を取り付けた状態を示す分解斜視図及び側面図、図3は排ガス分析用センサの断面図、図4は排ガス分析用センサの反射鏡ユニットの取付構造を示した断面図、図5は同じく反射鏡ユニットの取付構造を示した側断面図、図6は従来の排ガス分析用センサの斜視図である。
【0028】
まず、本実施例の排ガス分析用センサ4を用いた排ガス分析装置1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の排ガス分析装置1は、自動車2に配置されたエンジン20から排出される排ガス中の成分濃度や温度を測定し分析するものである。具体的には、排ガス分析装置1は、エンジン20から延出された排ガスの排気経路3の複数箇所に配設された複数の排ガス分析用センサ4と、この排ガス分析用センサ4に接続されたレーザ発信・受光用のコントローラ10と、コントローラ10に接続されたコンピュータ装置11等とで構成されている。
【0029】
自動車2には、エンジン20からの排ガスを機外に排出する排気経路3が敷設され、排気経路3は、エキゾーストマニホールド30、排気管31、第一触媒装置32、第二触媒装置33、マフラー34、排気パイプ35等とから構成されている。また、排気経路3の各構成機器は、断面円形状の配管3aによって連結されている。
【0030】
排気経路3においては、エンジン20の排ガスが、まずエキゾーストマニホールド30で合流され、排気管31を通じて第一触媒装置32及び第二触媒装置33に導入され、その後マフラー34を通じて排気パイプ35から大気中に放出される。このような排気経路3が形成されることによって、エンジン20からの排ガスは、二つの触媒装置32・33によって浄化され、マフラー34によって消音・減圧されて大気中に放出される。
【0031】
排ガス分析用センサ4・4・・・は、排気経路3において4箇所に配置されており、具体的には、第一触媒装置32の上流側のエンジン20と排気管31との間、第一触媒装置32と第二触媒装置33との間、第二触媒装置33とマフラー34との間、マフラー34の下流側の排気パイプ35の末端部にそれぞれ配置されている。
【0032】
本実施例の排ガス分析装置1では、各排ガス分析用センサ4において、コントローラ10によって赤外線レーザ光が照射され、かつ排ガスを透過した後のレーザ光が受光されることで得られたデータが、コントローラ10からコンピュータ装置11に送られて排ガス中の成分が分析される。
【0033】
コントローラ10は、複数の波長の赤外線レーザ光を照射する照射装置であり、レーザ光の波長は、検出する排ガスの成分に合わせて設定される。また、コントローラ10には、排ガス分析用センサ4に接続された図示せぬ差分型光検出器等が設けられており、排ガス分析用センサ4により受光された信号光が導光され、排ガス中を透過して減衰したレーザ光と排ガス中を透過していないレーザ光との信号光が接続されたコンピュータ装置11に出力される。
コンピュータ装置11では、コントローラ10からの出力信号を解析して、排ガスの成分濃度や排ガスの温度を算出する等して、排ガスの分析が行われる。
【0034】
このように、本実施例の排ガス分析装置1では、各排ガス分析用センサ4による排気経路3の一断面におけるスポット的な排ガスの測定が可能となっている。特に、本実施例のように、排ガス分析用センサ4が排気経路3の複数箇所に設けられることで、排ガスが排気経路3の所定断面でどのように変化するかを瞬時に測定することができ、排ガスの状態をリアルタイムに連続して測定することができる。
【0035】
なお、本実施例の排ガス分析装置1では、排気経路3に配置された各排ガス分析用センサ4・4・・・は、それぞれ略同一に構成されているため、以下、一例として、第一触媒装置32と第二触媒装置33との間に配置された排ガス分析用センサ4について説明する。
【0036】
次に、排ガス分析用センサ4の構成について、以下に詳述する。
図2及び図3に示すように、本実施例の排ガス分析用センサ4は、平面視円形の薄板状部材より形成されたセンサ本体40に、排ガスが通過する円形の排ガス通過孔41が穿設され、分析用のレーザ光を排ガス通過孔41内に向けて照射する照射部5と、該照射部5より照射されたレーザ光を多重反射させる一対の反射鏡ユニット6・6と、排ガス中を透過したレーザ光を検出する受光部7等とが設けられている。排ガス分析用センサ4においては、照射部5から排気経路3と直交する一断面に沿ってレーザ光が照射され、照射されたレーザ光が反射鏡ユニット6の反射鏡60間で排気経路3を横切るように複数回反射されて、受光部7にて受光される。
【0037】
図2に示すように、排ガス分析用センサ4は、センサ本体40が一対の管継手36・36に挟まれた状態で固定され、管継手36・36がそれぞれ第一触媒装置32及び第二触媒装置33に接続された配管3a・3aと接続されることで排気経路3に配設される。
管継手36・36は、断面円形の貫通孔36aが穿設された筒状に形成され、一方の開口縁部にフランジ部36bが設けられている。排ガス分析用センサ4(のセンサ本体40)は、一対の管継手36・36のフランジ部36bが設けられた側の開口端の離間に、ガスケット37・37を介して挟み込まれ、フランジ部36b・36bがボルト38・38によって締結されることで固定される。
【0038】
なお、管継手36の貫通孔36aは、配管3aと同じ直径の円形に形成され、排ガスの流れが妨げられないように構成されている。また、ガスケット37は、貫通孔36a等と略同じ直径の孔が開口され、管継手36・36の間に排ガス分析用センサ4を挟んで配管3aと接続しても、排ガスが途中で漏れることはなく、排気経路の長さの増加も少ないように構成されている。
【0039】
このようにして、排ガス分析用センサ4は、上述した管継手36・36を介して排気経路3の各配管3aと接続されており、排気経路3を流れる排ガスは、一方の管継手36の貫通孔36aを介してセンサ本体40に送られた後に、センサ本体40の排ガス通過孔41を通過して、他方の管継手36の貫通孔36aより排気経路3の下流側に送られる。
【0040】
次に、センサ本体40について、以下に詳述する。
図3に示したように、排ガス分析用センサ4を構成する機台となるセンサ本体40は、上述したように、平面視円形に形成された薄板状の金属部材より構成され、排ガスの流れ方向と直交する対向面の略中央部に円形の排ガス通過孔41が穿設されている。
本実施例のセンサ本体40には、板厚中央部を通って外側から排ガス通過孔41へと排ガスの流れ方向に直交する方向に貫通された取付孔40a・40bが穿設されており、取付孔40aには照射部5が取り付けられ、取付孔40bには受光部7が取り付けられる。照射部5及び受光部7は、排ガス通過孔41の軸中心に対して対向する位置にそれぞれ取り付けられている。
【0041】
また、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aには、排ガス通過孔41の径方向外側に向けて一対の取付溝40c・40cが凹設されており、各取付溝40c・40cが排ガス通過孔41の軸中心に対して対向する位置に設けられている。この取付溝40c・40cには反射鏡ユニット6が取り付けられ、反射鏡ユニット6を構成する反射鏡60の反射面が排ガス通過孔41の内部空間に対向するようにして配設される。
【0042】
このように、各部材が取り付けられることで、排ガス分析用センサ4において、照射部5から照射されたレーザ光は、取付孔40aを介して排ガス通過孔41内に導入され、排ガス通過孔41内に導入されたレーザ光が、反射鏡60・60間で多重反射された後、取付孔40bを介して受光部7に導出される。
【0043】
なお、図3に示すように、本実施例のセンサ本体40には、排ガス通過孔41の内部空間に円筒形状のカバーリング8が配設されている。
カバーリング8は、通過孔81を有する円筒状部材であって、通過孔81の内径が排ガス通過孔41の直径よりも小さくなるように形成されている。すなわち、カバーリング8は、排ガス通過孔41に配設された状態で、排ガス通過孔41の内壁41aとの間に間隙を有するように形成されている。また、カバーリング8の幅は、センサ本体40の幅と略同じである。
【0044】
カバーリング8の周面には、一対の長穴のレーザ光通過小孔84が、それぞれ通過孔81の中心軸に対して対向する位置に穿設されている(図4及び図5参照)。レーザ光通過小孔84は、照射部5より排ガス通過孔41内に向けて照射されたレーザ光が、反射鏡60・60間で複数回反射され、その後受光部6に受光されるように、レーザ光の光路上に設けられる。
【0045】
このように、本実施例の排ガス分析用センサ4は、センサ本体40の排ガス通過孔41内にカバーリング8を設けることで、センサ本体40(排ガス通過孔41の内壁41a)を排ガス通過孔41に送られた排ガスから隔絶させることができる。そのため、高温の排ガスからのセンサ本体40への入熱を低減でき、センサ本体40の歪みや変形を防止し、ひいては、それに起因するレーザ光軸のずれ等を防止することができる。
【0046】
次に、照射部5及び受光部7について、以下に詳述する。
図3に示すように、照射部5は、赤外線送信用の光ファイバ50と、光ファイバ50をセンサ本体40に位置決めして取り付ける接続ブロック51等とで構成されている。
光ファイバ50は、接続ブロック51に設けられた入光コリメータ51aに接続され、その投光面がセンサ本体40の排ガス通過孔41の中心に向くようにして取り付けられる。接続ブロック51には、接続ブロック51がセンサ本体40に取り付けられた状態で、光ファイバ50の投光面から取付孔40aまでを貫通するようにして通光孔52が穿設されている。
この光ファイバ50は、上述したコントローラ10に接続されており、コントローラ10から射出されたレーザ光は、光ファイバ50より照射されて通光孔52から取付孔40aを介して排ガス通過孔41内に導入される。
【0047】
一方、受光部7は、レーザ光を検出するディテクタ70と、ディテクタ70をセンサ本体40に位置決めして取り付ける接続ブロック71等とで構成されている。
ディテクタ70は、接続ブロック71に設けられた受光コリメータ71aに接続され、その受光面がセンサ本体40の排ガス通過孔41の中心に向くようにして取り付けられる。接続ブロック71には、接続ブロック71がセンサ本体40に取り付けられた状態で、ディテクタ70の受光面から取付孔40bまでを貫通するようにして通光孔72が穿設されている。
このディテクタ70は、上述したコントローラ10に接続されており、排ガス中を透過したレーザ光は、取付孔40bから通光孔72を介して排ガス通過孔41外に導出され、ディテクタ70に受光されて受光信号がコントローラ10に入力される。
【0048】
次に、反射鏡ユニット6について、以下に詳述する。
図3乃至図5に示すように、反射鏡ユニット6は、照射部5より照射されたレーザ光を反射する反射鏡60と、反射鏡60の結露防止用の加熱部材としてのヒータ61と、緩衝部材62と、押え板63・64等とが、それぞれケーシング65に積層されて収納されたユニット体として構成されている。具体的には、ケーシング65に設けられた空間部65aに、上下方向(図5において矢印方向)に、反射鏡60、一方の押え板63、ヒータ61、緩衝部材62、及び他方の押え板64とが積層して収容される。
【0049】
そして、本実施例の反射鏡ユニット6は、センサ本体40の排ガス通過孔41を挟んで対向する位置に設けられた取付溝40c・40cにそれぞれ取り付けられ、排ガス通過孔41の内壁41aを基準面として、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて挿入されたネジ部材66によって、センサ本体40に締結されている。
【0050】
なお、各取付溝40c・40cに取り付けられる一対の反射鏡ユニット6は、略同一に構成されるため、以下、一方の反射鏡ユニット6(図3において上方に配設される反射鏡ユニット6)の構成について説明する。
【0051】
反射鏡60は、石英、若しくはサファイア、セラミック等で形成された厚さ数mm程度の長方形状基板の一方の面に、金、プラチナ、酸化チタン等のレーザ波長に見合った反射率の高い反射材がコーティングされ、さらに、その上にフッ化マグネシウムや二酸化珪素等の薄膜が形成された反射面が構成されている。
【0052】
ヒータ61は、反射鏡60の反射面に排ガス中の水分が結露するのを防止するために、反射鏡60を加熱するための加熱部材であって、反射鏡ユニット6において反射鏡60の近傍位置に配設される。本実施例のヒータ61は、反射鏡60と略同じ形状の板状に形成され、例えば、マイカ板にステンレス箔等の発熱体を敷設した素材などが用いられる。
【0053】
緩衝部材62は、平面視板状の部材であって、センサ本体40と反射鏡60との温度変形の差を吸収するような部材より構成され、具体的には、金属波形ガスケットやセラミックペーパ等を用いることができる。本実施例の緩衝部材62は、金属波形ガスケットより構成され、センサ本体40と反射鏡60との間に位置するように、具体的には、反射鏡ユニット6において、反射鏡ユニット6を取り付ける排ガス通過孔41の内壁41aと、反射鏡60との間に位置するようにして、ケーシング65に収納されている。さらに、本実施例の緩衝部材62は、センサ本体40とヒータ61との間に位置するように配設されている。
【0054】
押え板63・64は、長板状に形成された金属製の部材であって、一方の押え板63は、反射鏡60とヒータ61との間に配設され、他方の押え板64は、押え板63との間にヒータ61及び緩衝部材62を挟み込むようにして配設される。このようにして、一方の押え板63が反射鏡60とヒータ61との間に配設されることで、反射鏡60を保護しながら、反射鏡60をケーシング65(の空間部65a)の内壁に押し付けるようにして位置決めすることができる。
【0055】
なお、他方の押え板64は、特に設けられる必要はないが、本実施例のように、他方の押え板64を設けることで、ヒータ61及び緩衝部材62を押え板63・64によって挟み込んだ状態でケーシング65に収容することができ、反射鏡60等の取り外し作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0056】
ケーシング65は、内部に反射鏡60やヒータ61等を収容するための空間部65aが設けられた長方形状の筐体に構成されている。ケーシング65の一側面(図4及び図5における下側面)には、長手方向に沿って平面視長穴状のスリット65bが穿設されており、このスリット65bを介して空間部65aが外部空間と連続されている。空間部65aに収容された反射鏡60は、その反射面がスリット65bを塞ぐようにして外部空間に露出される。
また、ケーシング65のスリット65bが穿設される側面(下側面)に対して垂直の側面には、開口部(図略)が開口されており、この開口部を介して、空間部65aに反射鏡60やヒータ61等を収容し、又は取り出される。
【0057】
ケーシング65の空間部65aには、まず、反射鏡60がスリット65bを介して外部空間に露出されるように最下層に位置され、この反射鏡60から上方に向けて順に、一方の押え板63、ヒータ61、緩衝部材62、及び他方の押え板64とが積層して収容される。特に、本実施例では、反射鏡60は、積層された緩衝部材62からの下方(スリット65b方向)への応力(弾力)を受けて、スリット65bの空間部65a側の縁部に当接されることで、上下方向(排ガス通過孔41の径方向)の位置決めがされている。
【0058】
このようにして各部材が組み付けられた反射鏡ユニット6は、上述したセンサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aに凹設された取付溝40cに取り付けられる。
本実施例では、反射鏡ユニット6は、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aに上面を当接させた状態で、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて挿入された複数のネジ部材66・66・・・(本実施例では4個)によって、センサ本体40に締結される。
【0059】
ネジ部材66・66・・・は、反射鏡60(反射鏡ユニット6)をセンサ本体40に締結するための部材であって、汎用のネジやボルト等の部材を用いることができる。
センサ本体40には、センサ本体40の板厚略中央部において、外壁から排ガス通過孔41の内部空間までを貫通する複数の挿入孔40d・40d・・・が穿設され、挿入孔40dの一端は取付溝40cに開口されている。また、反射鏡ユニット6のケーシング65上面には、対応する位置にネジ孔65c・65c・・・が穿設されている(図5参照)。
【0060】
反射鏡ユニット6がセンサ本体40の取付溝40cに取り付けられた状態で、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて、各ネジ部材66・66・・・が挿入孔40d・40d・・・に挿入され、挿入孔40d・40d・・・より突出された各ネジ部材66・66・・・がケーシング65の対応するネジ孔65c・65c・・・に螺入される。ネジ部材66がネジ孔65cに螺入されていくにつれて、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aを接合面(基準面)として、反射鏡ユニット6にセンサ本体40の外側方向への締結力が作用する。そして、反射鏡ユニット6は、ケーシング65の上面が内壁41aに押し付けられた状態で、センサ本体40の締結される。
【0061】
なお、ネジ孔65cのセンサ本体40外側の開口部は、Cリング等のシール部材67を介してネジ部材66が挿入されるため、各ネジ孔65cの開口部からの排ガス漏洩が防止され、排ガス通過孔41内の気密性が高められている。
【0062】
反射鏡ユニット6は、センサ本体40の取付溝40cに取り付けられた状態では、取付溝40cとケーシング65とが密接するようにして位置決めされる。また、反射鏡60の反射面が排ガス通過孔41内に面し、かつ、一対の反射鏡ユニット6・6の各反射鏡60・60が上下に平行に対向されている。また、かかる状態では、ケーシング65の下面は、排ガス通過孔41の軸中心に向けて内壁41aから突出せずに、取付溝40c内に収容されている。
【0063】
このように、排ガス分析用センサ4は、センサ本体40に一対の反射鏡ユニット6(及び反射鏡60)が配設されることで、照射部5より排ガス通過孔41内に照射されたレーザ光は、一方の(図2において下方の)反射鏡ユニット6の反射鏡60によって他方の(図2において上方の)反射鏡ユニット6の反射鏡60に向けて反射される。このようにして、レーザ光は、2枚の反射鏡60・60により交互に複数回反射されながら排ガス中を透過して、やがて受光部7に到達される。
【0064】
以上のように、エンジン20より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔41が穿設されたセンサ本体40に、排ガス通過孔41内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部5と、照射部5より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡60を備えた反射鏡ユニット6と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部7とが設けられる排ガス分析用センサ4において、前記反射鏡60は、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて挿入されたネジ部材66によってセンサ本体40に締結されるように構成されているため、センサ本体40や各構成部材の温度変形に起因した反射鏡60の固定緩みを低減して、排ガスの測定精度を向上することができる。
【0065】
すなわち、本実施例の排ガス分析用センサ4は、センサ本体40の外側から排ガス通過孔41の内部方向に向けて挿入されたネジ部材66によって、排ガス通過孔41の内壁41aを基準面としたセンサ本体40の外側方向への締結力によって、反射鏡ユニット6を介して反射鏡60をセンサ本体40に締結させるものである。そして、反射鏡60の締結部材としてのネジ部材66が、センサ本体40において低温側の排ガス通過孔41の外側に位置するため、高温の排ガスの影響を受けにくく、熱歪み等の温度変形が生じにくい。そのため、反射鏡60を安定して固定することができ、照射部5から照射されたレーザ光の反射角度を一定にして、排ガスの測定精度を向上することができるのである。
【0066】
また、本実施例では、反射鏡60は、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aに凹設された取付溝40cに取り付けられるため、センサ本体40に対する反射鏡60の位置決めが容易であり、また、センサ本体40に反射鏡60を安定して固定することができる。
【0067】
特に、本実施例では、反射鏡60は、ネジ部材66が螺入されるネジ孔65cを有するケーシング65内に収容され、ケーシング65を介してセンサ本体40に締結されるため、センサ本体40に対する反射鏡60の着脱が容易であり、反射鏡60のメンテナンス等の作業性が向上するとともに、センサ本体40に安定して締結させることができる。
また、ケーシング65に反射鏡60とともにヒータ61が収容されることで、一度に複数の部材をセンサ本体40から着脱することができるとともに、予めヒータ61により反射鏡60を暖めておくことで、自動車2のエンジン20をスタートさせた直後の水分を含む低温の排ガスであっても測定を行うことができる。
【0068】
さらに、本実施例の排ガス分析用センサ4は、センサ本体40と反射鏡60との間に緩衝部材62が配設されている。
すなわち、例えば、反射鏡60をセンサ本体40に直接に当接させた構成とすると、高温の排ガスの影響を受けて、排ガス分析用センサ4を構成する各部材が温度変化した場合に、反射鏡60の固定緩みが生じる恐れがある。しかしながら、本実施例のような構成とすることで、排ガスの熱の影響を受けて排ガス分析用センサ4を構成する各部材が温度変化した場合であっても、センサ本体40と反射鏡60との温度変形の差を吸収することで、反射鏡60を安定して固定することができ、排ガスの測定精度を向上できる。また、センサ本体40から反射鏡60への熱伝達を低減することができ、反射鏡60の温度変形も防止できる。
【0069】
特に、本実施例の緩衝部材62は、さらにセンサ本体40とヒータ61との間に配設されるため、ヒータ61からセンサ本体への熱伝達を低減することができ、センサ本体40の熱変形に基づく反射鏡60の固定緩みを低減できる。
【0070】
本実施例のように、緩衝部材62として金属波形ガスケットを用いることで、薄板が波状に形成されたものであるため、その形状に起因するばね応力を有し、各部材の温度変形を吸収して反射鏡60を安定して固定することができる。また、他の部材(本実施例では、ヒータ61や押え板63)との接触面積が少なく、ヒータ61からセンサ本体40への熱伝達やセンサ本体40から反射鏡60等への熱伝達を低減することができる。
【0071】
なお、本実施例の排ガス分析用センサ4の構成は、上述した実施例に限定されない。
【0072】
すなわち、上述した実施例の反射鏡ユニット6は、ケーシング65に反射鏡60等を収容するように構成されているが、反射鏡60の取付構造はこれに限定されず、例えば、一対の板状部材によって反射鏡60を挟み込むようにして一体的に固定し、これをネジ部材66によってセンサ本体40に締結するように構成してもよい。
【0073】
また、反射鏡60の取付位置としては、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aを凹設して形成された取付溝40cに取り付けるだけでなく、センサ本体40に反射鏡60(反射鏡ユニット6)を収容可能な空間部を形成して、かかる空間部に取り付けてもよい。かかる場合には、空間部において排ガス通過孔41の径方向の外側の壁面が基準面として反射鏡60(反射鏡ユニット6)が締結される。
また、上述した取付溝40cは、センサ本体40の排ガス通過孔41の内壁41aの一部を切り欠くことで形成されてもよい。
【0074】
また、緩衝部材62としてセラミックペーパが用いられる場合には、フェルト状で弾性を有することから、熱による収縮を吸収することができるため、各部材の温度変形を吸収して反射鏡60を安定して固定することができる。また、熱伝導率が低いため、ヒータ61からセンサ本体40への熱伝達やセンサ本体40から反射鏡60等への熱伝達を低減することができる。
【0075】
さらに、排ガス分析センサ4を構成する照射部5や受光部7の構成は、とくに限定されず、例えば、照射部5より照射されるレーザ光は、赤外レーザ光や紫外レーザ光でもよく、光ファイバ50やディテクタ70の代わりにレーザダイオードやフォトダイオードが用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例に係る排ガス分析用センサを備えた排ガス分析装置を車輌に搭載した状態を示した側面図。
【図2】排ガス分析用センサへ管継手を取り付けた状態を示す分解斜視図及び側面図。
【図3】排ガス分析用センサの断面図。
【図4】排ガス分析用センサの反射鏡ユニットの取付構造を示した断面図。
【図5】同じく反射鏡ユニットの取付構造を示した側断面図。
【図6】従来の排ガス分析用センサの斜視図。
【符号の説明】
【0077】
1 排ガス分析装置
4 排ガス分析用センサ
5 照射部
6 反射鏡ユニット
7 受光部
20 エンジン(内燃機関)
40 センサ本体
41 排ガス通過孔
41a 内壁
60 反射鏡
61 ヒータ
62 緩衝部材
65 ケーシング
66 ネジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設されたセンサ本体に、該排ガス通過孔内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部と、該照射部より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部とが設けられる排ガス分析用センサにおいて、
前記反射鏡は、前記センサ本体の外側から排ガス通過孔の内部方向に向けて挿入されたネジ部材によってセンサ本体に締結されることを特徴とする排ガス分析用センサ。
【請求項2】
前記反射鏡は、前記センサ本体の排ガス通過孔の内壁に凹設された取付溝に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析用センサ。
【請求項3】
前記反射鏡は、前記ネジ部材が螺入されるネジ孔を有するケーシング内に収容され、該ケーシングを介して前記センサ本体に締結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排ガス分析用センサ。
【請求項4】
前記ケーシングには、前記反射鏡を加熱する加熱部材が収容されることを特徴とする請求項3に記載の排ガス分析用センサ。
【請求項5】
内燃機関より排出された排ガスが通過する排ガス通過孔が穿設されたセンサ本体に、該排ガス通過孔内に向けて分析用のレーザ光を照射する照射部と、該照射部より照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部とが設けられる排ガス分析用センサにおいて、
前記センサ本体と反射鏡との間に緩衝部材が配設されることを特徴とする排ガス分析用センサ。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記センサ本体と前記反射鏡を加熱する加熱部材との間に配設されることを特徴とする請求項5に記載の排ガス分析用センサ。
【請求項7】
前記緩衝部材は、波形ガスケットが用いられることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の排ガス分析用センサ。
【請求項8】
前記緩衝部材は、セラミックペーパが用いられることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の排ガス分析用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−203049(P2008−203049A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38609(P2007−38609)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】