排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体
【課題】十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体を提供する。
【解決手段】セル隔壁が、材料特性及びセル構造に関し、下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(1)
(式(1)中、σ[MPa]は材料強度、E[MPa]は材料ヤング率、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向の熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ[m])をそれぞれ示す。)。
【解決手段】セル隔壁が、材料特性及びセル構造に関し、下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(1)
(式(1)中、σ[MPa]は材料強度、E[MPa]は材料ヤング率、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向の熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ[m])をそれぞれ示す。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体に関する。さらに詳しくは、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6、ここで、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数である)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガス規制が強化されたことと相俟って、リーンバーンエンジンや直噴エンジン等が普及したことに伴い、リーン雰囲気下で、排ガス中のNOxを効果的に浄化することのできるNOx吸蔵触媒が実用化された。このようなNOx吸蔵触媒に用いられるNOx吸蔵成分としては、K、Na、Li、Cs等のアルカリ金属、Ba、Ca等のアルカリ土類金属、La、Y等の希土類等が知られているが、最近では、Kが、高温度域におけるNOx吸蔵能に優れることから、特に注目されている。
【0003】
このようなNOx吸蔵触媒は、通常、前述のNOx吸蔵成分を含む触媒層を、コージェライトのような酸化物系セラミックス材料やFe−Cr−Al合金のような金属材料からなる担体に担持して構成されるが、これらの担体には、排ガスの高温下で活性化されたアルカリ金属や一部のアルカリ土類金属、とりわけ、K、Na、Li、Caに腐食され、劣化しやすいという問題がある。特に、酸化物系セラミックス材料で構成されるコージェライト担体には、前述のアルカリ金属等と反応してクラックが発生する等、問題が深刻である。
【0004】
このような担体劣化を抑制するための対策として、触媒層を構成する多孔質酸化物粒子中に、アルカリ金属と反応しやすいケイ素を含ませ、触媒層中で担体との界面付近に存在するアルカリ金属が担体に移行する前に、ケイ素と反応させ、担体への移行を防止する技術が開示されている(特許文献1)。また、この公報には、担体と触媒層との間にジルコニア層を形成し、このジルコニア層によって、触媒層中のアルカリ金属が担体へ移行するのを防止する技術も開示されている。また、NOx吸蔵触媒担体にアルミナやジルコニアを用いた技術も開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−279810号公報
【特許文献2】特開平10−165817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特開2000−279810号公報に開示された技術のうち、多孔質酸化物粒子中にケイ素を含ませる手法の場合、アルカリ金属の担体内への移行は抑制することができるものの、アルカリ金属がケイ素と反応することによって、そのNOx吸蔵能を失活させてしまうという問題があった。また、担体と触媒層との間に耐食材料であるジルコニアの層を形成する手法の場合、多孔質な担体上に緻密なジルコニア層を、クラック、ピンホール、露出部等を発生させることなく形成することは極めて困難であるという問題があった。また、前述の特開平10−165817号公報の場合、アルカリ金属による担体の腐食は抑制することができるものの、担体の熱膨張率が大きいため、耐熱衝撃性の面で実用化し得るものではなかった。
【0007】
一方、ディーゼル排気ガス用SCR触媒(例えば、触媒を含有した材料で担体を形成するソリッドタイプ)の分野においても、TiO2、ゼオライト、Al2O3及びこれらの複合酸化物等、熱膨張率の高い材料を担体の主成分としてハニカム型に成形するため、耐熱衝撃性が十分ではないという問題があり、その解決が望まれていた。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上述の目的を達成するため鋭意研究した結果、構造体(担体)及び触媒体を構成するセル隔壁が、その材料特性及びセル構造に関し、特定の式に示される関係を満たすことによって、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、耐熱衝撃性に優れ、長期的な使用が可能な構造体(担体)及び触媒体を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明によって、以下の排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体が提供される。
【0010】
[1] 複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、前記セル隔壁上に担持される触媒層又は前記セル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、前記セル隔壁が、アルミナまたはチタニアであって、材料特性及びセル構造に関し、下記式(6)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
【0011】
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(6)
【0012】
(式(6)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚の曲げ強度を意味し、具体的には、梁の高さを除き、JIS R1601に準拠した方法にて、4点曲げにより測定された材料強度、又は、他の方法での試験結果を有効体積により本方法に換算した材料強度を意味する)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m]をそれぞれ示す。)
【0013】
[2] 前記[1]に記載の排ガス浄化用ハニカム構造体の、前記セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又は前記セル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0014】
[3] 前記触媒層又は触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである前記[2]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0015】
[4] 前記触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である前記[2]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0016】
[5] 前記SCR触媒材料が、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;アルカリ金属酸化物;及びアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものである前記[4]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は平面図をそれぞれ示す。
【図2】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図4】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図5】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図6】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図7】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図8】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図9】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの配置例を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図、(d)はその底面図である。
【図10】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの形成方法を示す説明図であり、(a)はセル隔壁に平行に形成した例、(b)はセル隔壁を斜めに切断するように形成した例をそれぞれ示す。
【図11】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリット先端の応力緩和構造を模式的に示す説明図であり、(a)は先端が曲率をもった応力緩和部を有する例、(b)は先端が分岐した例をそれぞれ示す。
【図12】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの形態を模式的に示す説明図であり、(a)はセル隔壁を部分的に切断した例、(b)はセル隔壁を部分的に除去した例をそれぞれ示す。
【図13】径方向に分割された二以上の第1のハニカムセグメントの各種の例を模式的に示す説明図である。
【図14】径方向に分割された二以上の第1のハニカムセグメントのアスペクト比を模式的に示す斜視図である。
【図15】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体から切り出されたテストピースの一例を模式的に示す斜視図である。
【図16】4点曲げ試験の例を模式的に示す説明図である。
【図17】中心軸に対して垂直な平面で分割された二以上の第2のハニカムセグメントの一例を模式的に示す斜視図である。
【図18】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図である。
【図19】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図20】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図21】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図22】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図23】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図24】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体において、セル隔壁厚さを、そのセル隔壁の断面が、逆台形状、糸巻き状又は長方形状に変化させた例を模式的に示す断面図である。
【図25】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の全体のアスペクト比[(L3)/(P3)]を模式的に示す斜視図である。
【図26】本発明の実施例で得られた構造体(式(11)を満たす)は、クラックや割れの発生が認められず、比較例で得られた構造体(式(11)を満たさない)はクラックや割れの発生が認められることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体10は、複数のそれぞれ隣接したセル1の複合体を形成するセル隔壁(リブ)2と、このセル1の複合体を囲繞して保持するハニカム外壁3とから構成され、セル隔壁2上に担持される触媒層(図示せず)又はセル隔壁2中に含有される触媒(図示せず)によってセル1内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体10であって、セル隔壁2及びハニカム外壁3が、材料特性及びセル構造に関し、下記式(11)に示す関係を満たすことを特徴とする(以下、「第1の発明」ということがある)。
【0020】
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(11)
(式(11)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚の曲げ強度を意味し、具体的には、梁の高さを除き、JIS R1601に準拠した方法にて、4点曲げにより測定された材料強度、又は他の方法での試験結果を有効体積により本方法に換算した材料強度を意味する)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m])をそれぞれ示す。)
【0021】
以下、上記式(11)について具体的に説明する。
【0022】
ハニカム内の熱応力発生原因である温度勾配の生成は、ガスによる加熱、冷却時に、ガス/ハニカム間の熱伝達量がハニカム内の場所により異なることに起因する。また、固体内熱伝導が十分であれば、高受熱部から低受熱部へ固体内を熱が流れることにより、又は固体内を低熱損部から高熱損部へ熱が流れることにより、温度勾配の発生程度は軽減される。このような、過渡的、局所的な、固体への外部からの熱伝達により温度勾配が生じる程度の大きさは、理論的に、下記式(12)に比例することが知られている。
【0023】
Bi・F01/2 …(12)
【0024】
式(12)中、Bi(ビオー数)は下記式(13)、F0(フーリエ数)は下記式(14)でそれぞれ示される。
【0025】
Bi=(h・l)/λ …(13)
【0026】
F0=(λ・t0)/(ρ・c・l2) …(14)
【0027】
式(13)及び式(14)中、hは熱伝達係数(固体とガスの間)、lは代表長さ、λは熱伝導率(固体)、ρは密度(固体)、cは単位体積当たり熱容量(固体)、t0は代表時間をそれぞれ示す。
【0028】
温度勾配の程度は、ガス、固体間の代表温度差ΔTと前記式(12)との積に比例し、これに前記式(13)、(14)を代入すると、下記式(15)が得られる。
【0029】
ΔT・Bi・F01/2=ΔT・h・t0 1/2/(ρ・c・λ)1/2 …(15)
【0030】
また、ハニカム流路内層流熱伝達については、下記式(16)が成立する。
【0031】
h=Nu・λg/HD …(16)
【0032】
式(16)中、hは熱伝達係数(セル隔壁と流入ガスの間)、Nu(ヌッセルト数)は3.77、HDは流路水力直径、λgはガスの熱伝導率をそれぞれ示す。
【0033】
式(16)を代入することによって、前記式(15)は下記式(17)に書き換えられる。
【0034】
ΔT・t0 1/2・Nu・λg/[(ρ・c・λ)1/2・HD] …(17)
【0035】
さらに、ここでは、温度勾配の程度と、局所的な加熱、冷却領域の代表長さLを想定した伝熱面積GSA・L3との積で固体内温度差パラメータを下記式(18)で表した。
【0036】
(固体内温度差パラメータ)=C1・GSA/[(ρ・c・λ)1/2・HD] …(18)
【0037】
式(18)中、C1はΔT・t01/2・Nu・λg・L3である。
【0038】
また、熱応力パラメータを、固体内温度差パラメータと、熱膨張係数α、ヤング率Eとの積として下記式(19)で定義した。
【0039】
(熱応力パラメータ)=(固体内温度差パラメータ)・α・E …(19)
【0040】
このようにして導いた熱応力パラメータは材料物性、セル構造の関数となっており、その材料物性、セル構造を採用した場合に想定される推定発生熱応力に相当する。実際の材料強度がその熱応力パラメータ値以上であれば、破壊が生じないと考えられる。
【0041】
これは、下記式(20)、すなわち前記式(11)と等価である。
【0042】
(材料の強度)/E≧(熱応力パラメータ)/E …(20)
【0043】
ここで、C1を決定するための代表時間t0及び、代表長さLについては、純粋に理論的な選択を行なうことは不可能であり、試作実験結果との対比による試行錯誤の結果、λg=0.061W/mK、Nu=3.77を想定し、L=0.04m、t0=5sec、ΔT=500Kを選択して得られるC1=1.61×10-2を採用することにより、本発明で想定する使用条件、材料、構造の広範囲において、前記式(20)すなわち前記式(11)の成否と熱応力破壊発生とに良い相関があることを見出した。
【0044】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体は、複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、セル隔壁上に担持される触媒層又はセル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、排ガスを浄化する際にセル隔壁及びハニカム外壁に加えられる熱応力を緩和するための熱応力緩和手段を備えてなるものであってもよい。
【0045】
以下、熱応力緩和手段の具体例について説明する。
【0046】
排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第1の例としては、図2(a)〜(d)に示すように、ハニカム外壁3の表面から中心軸(図示せず)の方向に向かって形成した、ハニカム外壁3の表面で少なくともその一部が開口した、一以上のスリット4を備えるように構成してなるものを挙げることができる。
また、スリットは、図2(a)〜(d)のように排ガスの貫流方向(中心軸方向)に形成すること以外に、特に図示しないが、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に対して垂直な方向に形成してもよい。さらに、構造体としての強度に差し支えない範囲で、両方向に形成することも可能である。
【0047】
上記の熱応力緩和手段を用いた排ガス浄化用ハニカム構造体10においては、スリット4が少なくとも一つの端面5において、少なくとも端面エッジ部6に形成されていることが好ましい。
【0048】
この場合、端面エッジ部6に形成されたスリット4の、ハニカム外壁3の表面で開口した部分の排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわち図2(a)におけるX方向)に平行な方向の長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の全長の10%以上であることが好ましく、かつ端面5で開口した長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の直径の10%以上であることが好ましい。
【0049】
また、温度の不均一が排ガス浄化用ハニカム構造体10の全体(全長)に及ぶような使用環境においては、スリット4を、ハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)全長にわたって開口させるように形成することが好ましい。
【0050】
図2(a)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4を端面5のエッジ部6において、径方向の深さを変えて三角形状となるように4本形成し、図2(b)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4を径方向の深さを変えずに長方形状となるように4本形成し、図2(c)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えて三角形状となるように4本形成し、図2(d)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えずに四角形状となるように4本形成している。
【0051】
図2(a)〜(d)に示すようにスリット4を形成することにより、排ガス浄化用ハニカム構造体10において、局所的な高温又は低温のような温度分布の不均一が生じた場合であっても、ハニカム構造体の各部が互いに拘束されずに自由に変形することができ、熱応力が低減され、熱衝撃によるクラックの発生を極力防止することができる。
【0052】
図3(a)は、図2(c)と同様に、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えて三角形状となるように3本形成している。図3(b)は、図2(d)と同様に、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えずに四角形状となるように3本形成している。これらの場合には、温度の不均一がハニカム構造体全体(全長)に及ぶような使用環境において特に有効である。
【0053】
図4(a)は、スリット4を、ハニカム外壁3の表面のうちの一つの端面5aにおいて、端面エッジ部6aの2点(A及びB)、並びに(C及びD)を連続的につなぐように開口させて形成した場合を示す。図3(b)は、スリット4を、ハニカム外壁3の表面のうちの二つの端面5b、5cにおいて、端面エッジ部6b、6cの2点(A及びB)、並びに(C及びD)等を連続的につなぐように開口させて形成した場合を示す。
【0054】
このように構成することによって、さらに排ガス浄化用ハニカム構造体10の端面5の近傍の変形の自由度が増し、熱応力の低減、熱衝撃によるクラックの発生を有効に防止することができる。この場合、スリット4の、ハニカム外壁3の表面で開口した部分の排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に平行な方向の長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の全長の10%以上であることが好ましく、スリット4の端面5に開口した長さは排ガス浄化用ハニカム構造体10の直径の10%以上であることが好ましい。
【0055】
図5(a)〜(d)に示すように、スリット4が相互に交叉する部分において、スリット4を形成しない部分(連結部)7を排ガス浄化用ハニカム構造体10の中心部に位置するように形成し、連結部7をハニカム外壁3の表面、上端面5d及び下端面5eに開口させないように構成してもよい。
【0056】
このように構成することによって、極めて大きい温度の不均一が排ガス浄化用ハニカム構造体10の全体(全長)に及ぶような使用環境においても、熱衝撃によるクラック等の発生を有効に防止することができる。
【0057】
なお、図5(a)は、連結部7のスリットを含む平面で切断した断面形状が長方形の場合、図5(b)は、円形の場合、図5(c)は、レーストラック形形状の場合、図5(d)は、菱形の場合をそれぞれ示す。このような構成にすることによって、局所的に高温又は低温が散在するような温度の不均一が大きく、その不均一がハニカム構造体の全体にわたって分布するような場合においても、熱衝撃によるクラック等の発生を有効に防止することができる。
【0058】
一方、図6(a)〜(d)は、それぞれ、連結部7の一部がハニカム外壁3の表面のうちの下端面5fに開口した場合を示している。
【0059】
図7及び図8は、それぞれ連結部7がハニカム外壁3の表面に開口しないように構成された別の場合を示している。
【0060】
図7は、図5(a)と同様に、連結部7のスリットを含む平面で切断した断面形状が長方形の場合を示す。この場合には、スリット4の数を図5(a)に示す場合より多く形成している。
【0061】
図8は、連結部7のスリット4を含む平面で切断した断面形状が円又は楕円形の場合を示している。
【0062】
スリット4には、充填材を充填することが好ましい。このような充填材としては、例えば、耐熱性を有するセラミックスファイバー、セラミックス粉、セメント等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、必要に応じて、有機バインダ、無機バインダ等を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明のハニカム構造体においては、貫流方向(中心軸)に対して垂直な断面で切断したときに径方向のスリットの長さが最も長くなるようなセル断面において、その径方向のスリットの長さは、ハニカム外壁から中心軸までの距離(半径)の10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
【0064】
また、本発明のハニカム構造体において、スリットは、排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に垂直な断面において点対称に配置されていることが、全体の変形に偏りを生じにくく好ましいが、これに限定されることはない。例えば、図9(a)〜(d)に示すようにスリット4を配置してもよい。
【0065】
スリット4は、図10(b)に示すように、セル隔壁2に平行でなくセル隔壁2を斜めに切断するように形成してもよいが、図10(a)に示すように、セル隔壁2に平行に形成する方が、スリット4先端の応力集中が小さいため、より好ましい。
【0066】
また、ハニカム構造体10のセル1の形状が3角の場合には、スリット4は、60°方向、または120°方向とするのが上記と同じ理由でより好ましい。
【0067】
スリット4の幅としては特に制限はないが、広すぎると充填材を充填する場合の充填工数、充填材量が増加し、また、ガス等流体の清浄化に使用できるセル数が減少するため、セル1個分の幅より狭いことが好ましい。
【0068】
さらに、図11(a)、(b)に示すように、スリット4の先端部において、スリット4を分岐させた分岐部4aを設けるか(図11b)参照)、又は曲率を有する応力緩和部4bを設けること(図11(a)参照)が、熱応力の緩和の観点からより好ましい。
【0069】
なお、スリット4の形態としては、図12(a)に示すように、ハニカム構造体10のセル隔壁2を部分的に切断するようにしてもよいし、図12(b)に示すように、セル隔壁2を部分的に除去するようにしてもよい。
【0070】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第2の例としては、図13(a)〜(d)に示すように、セルの複合体を、中心軸に対して平行な平面で二以上の第1のハニカムセグメント13に分割した構成を有する(ハニカム製造後に切断して分割してもよく、最初から各セグメントに相当する形のものを作製してもよい)とともに、必要に応じて接合層14によって接合するように構成してなるものであり、かつ第1のハニカムセグメント13の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L1)とセルの複合体の端部側における直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P1)とのアスペクト比[(L1)/(P1)]を、下記式(21)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。この場合、図14に示すように、第1のハニカムセグメント13の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L1)と、直径(一辺)(P1)とのアスペクト比[(L1)/(P1)]が、下記式(21)に示す関係を満たすものであることが好ましい。
【0071】
2≦[(L1)/(P1)]≦10 …(21)
【0072】
セグメント自体の強度・耐熱衝撃性の観点からは、アスペクト比[(L1)/(P1)]は、10以下とすることが好ましい。一方、2未満であると、セグメントを集合させた時に、全体としてのアスペクト比が径方向に著しく偏るため、上述の範囲とすることが好ましい。3≦[(L1)/(P1)]≦6の範囲とすることがさらに好ましい。一体のハニカム構造体の中に複数の形状の第1のハニカムセグメントが共存する場合には、その全てが前記式(21)を満たすことが最も好ましいが、少なくとも、最も熱衝撃の大きい中心軸周りの(中心軸を含む、又は中心軸に接する)第1のハニカムセグメントは前記式(21)を満たすことが必要である。集合させるセグメント数は、24以下であることが好ましく、16以下であることが、集合体全体としての強度及び製造コストの点でさらに好ましい。
【0073】
以下、ハニカムセグメントの接合についてさらに具体的に説明する。
【0074】
図13(a)〜(d)に示すように、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体10は、各種分割パターンの第1のハニカムセグメント13に分割されることが好ましい。
【0075】
これらのハニカムセグメントを接合する場合、接合層14のヤング率を、第1のハニカムセグメント13のヤング率の20%以下にすることが好ましく、1%以下とすることがさらに好ましい。また、接合層14の材料強度を、第1のハニカムセグメント13の材料強度より小さくすることが好ましい。このように、接合層14と第1のハニカムセグメント13とのヤング率を特定することにより、使用時における熱応力の発生を小さく抑えて、熱衝撃によるクラックの発生を有効に防止し、耐久性に優れた構造体とすることができる。また、接合層14のヤング率が第1のハニカムセグメント13のヤング率の20%を超える場合であっても、接合層14の材料強度が第1のハニカムセグメント13の材料強度より小さい場合には、接合層14のみにクラックが生じ、第1のハニカムセグメント13には損傷を受けることがない。
【0076】
ここで、接合層14のヤング率、第1のハニカムセグメント13のヤング率とは、それぞれ材料自体のヤング率を意味し、材料固有の物性を示すものである。
【0077】
また、「接合層の材料強度が第1のハニカムセグメントの材料強度より小さい」ことの定義について、図15及び図16を用いて説明する。
【0078】
すなわち、図15に示すような、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体から切り出したテストピース20を準備する。なお、テストピース20は径方向の長さが40mm以上で、その中央部に接合層14が位置するように切断する。
【0079】
このテストピース20を、図16に示す4点曲げ試験(JIS R1601に準拠する)において、接合層14内部、又は接合層14と第1のハニカムセグメント13との界面で破壊する確率が50%以上であることを、上記の「接合層の材料強度がハニカムセグメントの材料強度より小さい」と定義する。
【0080】
また、接合層14に接する第1のハニカムセグメント13の表面の内で少なくとも30%以上の面積を占める部分の平均的な表面粗さ(Ra)は、0.4ミクロンを超えることが好ましく、0.8ミクロン以上がさらに好ましい。このように構成することにより、2個以上の第1のハニカムセグメント13間の接合がより強固になり、使用時における剥離を有効に防止することをできる。また、セグメント同士を接合しない場合にも、相互のずれを防止することができる。
【0081】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10を構成する全ての第1のハニカムセグメント13の総熱容量に対する、排ガス浄化用ハニカム構造体10内の全ての接合層14の総熱容量の比率は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
このように構成することにより、昇温にかかる時間を許容範囲内に小さく抑え、触媒成分を早期活性化させることができる。
【0083】
また、径方向に切断した断面における第1のハニカムセグメント13の断面形状の角部は、曲率半径0.2mm以上に丸められているか、又は0.3mm以上の面取りがされていることが、使用時における熱応力の発生を小さくし、クラックの発生を防止して耐久性を付与することができるために好ましい。
【0084】
また、径方向に切断した断面における排気ガス浄化用ハニカム構造体の断面積(SH)に占める接合層14の総断面積(SS)の比率(SS/SH)が17%以下であることが流体の圧力損失低減の観点から好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
【0085】
また、排気ガス浄化用ハニカム構造体10の径方向に切断した断面におけるセルの複合体の隔壁断面積の総和(SC)に対する接合層断面積の総和(SS)の比率(SS/SC)が50%以下であることが流体の圧力損失低減の観点から好ましく、24%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
さらに、排気ガス浄化用ハニカム構造体の径方向に切断した排気ガス浄化用ハニカム構造体の断面内において、セルの複合体の断面積に対する接合層の断面積の比率が中央部で大きく、ハニカム外壁側で小さくなっていることが好ましい。このような構成にすることによって、中央部に集中する排気ガス流を、外壁近傍に適度に分散させることができる。その結果、中央部とハニカム外壁側の温度差を低減することができ、排気ガス浄化用ハニカム構造体における熱応力を低減することができる。
【0087】
排気ガス浄化用ハニカム構造体の、排ガスの貫流方向に垂直な面で径方向に切断した断面の形状(ハニカム外壁の断面形状)は、円、楕円、レーストラック等のいずれであってもよい。
【0088】
ここで、第1のハニカムセグメント間を接合する接合層の材料としては、例えば、耐熱性を有するセラミックスファイバー、セラミックス粉、セメント等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、必要に応じて有機バインダ、無機バインダ等を混合して用いてもよい。
【0089】
ハニカムセグメントの強度が十分に高い場合には、必要に応じてセラミックスファイバー、セラミックス粉、マット等を介して集合させ、周囲から圧力をかけてキャニングする、又は少なくとも排ガス出口側に押さえを配して留める等して接合を省略することもできる。
【0090】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第3の例としては、図17に示すように、セル1の複合体を、中心軸に対して垂直な平面で二以上の第2のハニカムセグメント15に分割して多段形状に構成してなるものであり(図17においては、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さが、(L2)、(L2’)及び(L2”)の3段形状の例を示す)、かつ第2のハニカムセグメント15の、セル1の複合体の端部側における直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P2)と排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L2)とのアスペクト比[(P2)/(L2)]を、下記式(22)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。なお、第2のハニカムセグメント15のL2が、L2'、L2”の場合も同様である。
【0091】
0.5≦[(P2)/(L2)]≦5 …(22)
【0092】
多段に配された第2のハニカムセグメントの中で、少なくとも一つの第2のハニカムセグメントが前記式(22)を満たす場合には、本願発明の効果が得られるが、少なくとも、最も熱衝撃の大きい最上流側に配された第2のハニカムセグメントが前記式(22)を満たすことが好ましく、さらに、第2のハニカムセグメントの全てが前記式(22)を満たすことが最も好ましい。
【0093】
第2のハニカムセグメント15自体の強度・耐熱衝撃性の観点からは、アスペクト比[(P2)/(L2)]は、5以下とすることが好ましいが、0.5未満であると、第2のハニカムセグメント15を集合させた時に、全体としてのアスペクト比が排ガスの貫流方向に著しく偏り圧力損失が増大するため、上記の範囲とすることが好ましく、1.0≦[(P2)/(L2)]≦3の範囲とすることがさらに好ましい。また、段数については、同じく圧力損失の観点から、5段以下とすることが好ましく、3段以下であればさらに好ましい。このように構成することにより、熱応力を低減することができるとともに、分割された第2のハニカムセグメント15は、互いに端面同士が接するように、又はある程度の距離を介して、又は別の缶体内に、等の種々の配設の仕方を自在に採用することができ、また、接合を不要とすることができる。
【0094】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第4の例としては、図18に示すように、セル1の複合体を構成するセル隔壁2の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に配設した一以上の切り欠き部16を備えるように構成してなるものを挙げることができる。
【0095】
このような切り欠き部16の配設例を図18〜図23に示す。
【0096】
ハニカム構造体における切り欠き部16は、ハニカム外壁3から径方向にハニカム構造体を切断して配設した前述の外部に開口するスリットとは異なるものであり、セルの排ガスの貫流方向(中心軸方向)の所定部分を切り欠いて実質的に均一に配設されるものである。
【0097】
切り欠き部16の配設箇所は、断面で見た場合、互いに離れていてもよく、複数セル連続していてもよい。この切り欠き部16が、熱応力を緩和する。前述のスリットの場合とは異なり、切り欠き部16は必ずしもハニカム外壁に開口している必要はない。基本的には、同方向の連続を避けるように配設することが好ましいが、敢えて同方向に連続して設ける場合には、連続数は10セル以下とすることが好ましい。同方向に10セルを超えて連続すると、ハニカム構造体全体としての強度が著しく低下することがある。また、連続でなくても、選択的に同方向に配設すると、熱応力開放方向が偏ることがある。
【0098】
強度の観点からは、切り欠き部16数を総セル壁数(交点から次の交点までを1枚と数える)の40%以下に抑えることが好ましい。また、切り欠き部16の排ガスの貫流方向深さについては、基本的には、少なくともある断面で不連続となっていればよいが、実使用において熱衝撃の大きい(排ガスの貫流方向(中心軸方向))入口側に露出していることが好ましく、セルの排ガスの貫流方向(中心軸方向)の全体に耐熱衝撃性が要求される場合は、図20に示すように、セルの排ガスの貫流方向の全長にわたっていることが好ましい。
【0099】
切り欠き部16の幅は、セル隔壁の厚さ、セルピッチ(リブの間隔)の如何に関係なく、10μmm以上で、1セルの幅以下であることが好ましい。10μmm未満であると、熱応力緩和効果が不十分となることがあり、1セル分を超えると、ハニカム構造体全体として著しい強度低下に至ることがある。
【0100】
径方向や排ガスの貫流方向に切り欠き部16密度を変化させて配設してもよい。変化させるにあたっては、1個体のままでもよく、前述の分割方式を活用してもよい。変化のさせ方としては、例えば、実使用において熱衝撃の大きい径方向の中央部や排ガスの貫流方向入口側に集中して切り欠き部16を形成することを好適例として挙げることができる。
【0101】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第5の例としては、セルの複合体を構成するセルの断面形状を、三角形以上の多角形状に構成してなるものを挙げることができる。
【0102】
中でも、角数が多い多角形状が熱応力が低減されることから好ましい。具体的には、4角形以上であることが好ましく、6角形がさらに好ましい。同じ理由で、4角形の中でも、正方形より長方形の方が好ましい。また、径方向や排ガスの流れ方向(多段式の場合にのみ可能)にセル形状を変化させてもよい。径方向に変化させるにあたっては、1個体のままでも可能であるが、前述の分割方式を活用してもよい。変化のさせ方としては、例えば、実使用において熱衝撃の大きい径方向中央部や排ガスの流れ方向入口側を集中して多角化することが好ましい。
【0103】
本発明においては、実使用における熱衝撃の大きさの分布を考慮して、径方向及び/又は排ガスの流れ方向(多段式の場合にのみ可能)にセル隔壁の厚さを変化させることが好ましい。径方向に変化させるにあたっては、1個体のままでも可能であるが、上述の分割方式を活用することもできる。ここで、セル隔壁の厚さの変化のさせ方としては、一般的に昇温・冷却速度が速い、径方向中央部や排ガス流れ方向入口近傍を厚くすることが、熱衝撃によるクラックの防止に有効である。
【0104】
具体的には、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第6の例として、中心軸から半径(一辺の半分)の少なくとも10%以内の領域に存在するセルの隔壁厚さ(T10)を、基本セル隔壁厚さ(Tc)との間に下記式(23)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。
【0105】
1.2≦T10/Tc …(23)
【0106】
また、径方向中央部や排ガス流れ方向(中心軸方向)入口近傍のセル隔壁を厚くすることは、その部分の昇温・冷却速度を緩めるのみならず、外周部や出口近傍との温度差を小さくすることにもなり、二重に熱衝撃を緩和することができる。
【0107】
図24に示すように、排ガス浄化用ハニカム構造体において、中心軸に対して垂直の面で切断した断面内にセル隔壁2の厚さの異なる領域が共存する場合には、境界部分のセル隔壁2の厚さを、それぞれのセル隔壁2の断面が、逆台形状(図24(a))、糸巻き状(図24(b))、又は長方形状(図24(c))で、リブ厚が厚い領域から薄い領域に向かって順次薄くなるように変化させることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失や耐熱衝撃性比の向上を図ることができる。
【0108】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第7の例として、図25に示すように、セルの複合体全体の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L3)と、直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P3)とのアスペクト比[(L3)/(P3)]を、下記式(24)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。このように構成することによって、強度、耐熱衝撃性を向上させることができる。図25においては、構造体が、第1のハニカムセグメント13に分割された接合層14を有するものの場合を示す。
【0109】
0.5≦[(L3)/(P3)]≦2 …(24)
【0110】
排ガス浄化用ハニカム構造体は、その重量が、1500g以下であるもので、その体積が、1500cm3以下であるものが好ましい。
【0111】
ハニカム構造体1個の重量(1個体の場合はその重量、分割型の場合には1セグメントの重量)は、その材質(熱膨張率,比重)や気孔率にもよるが、耐熱衝撃性の観点から、少なくとも1500g以下であることが好ましい。1500gを超えると、実使用の際、通常運転モードの比較的緩い熱衝撃にても、クラックの発生、割れ等、損傷することがある。さらに好ましくは1200g以下であり、1000g以下であれば、急峻な温度変化による厳しい熱衝撃にも耐えることができるため特に好ましい。
【0112】
ハニカム構造体1個の体積(1個体の場合はその体積、分割型の場合には1セグメントの体積)は、耐熱衝撃性の観点から、少なくとも1500cm3以下であることが好ましい。1500cm3を超えると、実使用の際、通常運転モードの比較的緩い熱衝撃にても、損傷することがある。さらに好ましくは1000cm3以下であり、800cm3以下であれば、急峻な温度変化による厳しい熱衝撃にも耐えることができるため特に好ましい。
【0113】
上述の種々の方策を任意に組み合わせて適用することにより、より一層熱応力緩和効果を高めた排ガス浄化用ハニカム構造体とすることができる。
【0114】
ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、ハニカム構造体をNOx吸蔵触媒用担体として用いる場合、耐アルカリ性に優れ、かつ自動車の排気ガスに適用し得る強度・耐熱性を併せもつ材質を主成分とすることが好ましい。具体的には、アルミナ(アルミナの中では、α−アルミナが最も耐アルカリ性が高いという点で好ましい)、チタニア、を挙げることができる。例えば、アルミナ、SiC、SiN、ムライト、無配向コージェライト等が耐アルカリ特性上好適に用いられるが、中でも酸化物系は、コストの点でも好ましい材料である。セル隔壁がこれ等を主要構成材料として含有するものであることが好ましいが、さらに、ハニカム外壁も、セル隔壁と同じ材料で構成されることが好ましい。
【0115】
ハニカム構造体の材質が、高熱膨張率を必要とする自動車の排気ガスに用いられる場合で、排ガスの貫流方向に対して垂直な方向の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以上の場合に、本発明のハニカム構造体は、有効にその効果を発揮する。特に、3.0×10-6/℃以上の高熱膨張材料になると、排ガス温度変化の大きいマニホールド直下搭載の場合には本発明が必須となり、更に、5.0×10-6/℃以上になると排ガス温度変化が比較的小さい床下搭載の場合でさえ本発明が必要となる。逆に、1.0×10-6/℃未満の低熱膨張材料にも、本願発明を適用することはできるが、元々材料として熱膨張率が低い(耐熱衝撃性が高い)ため、得られる耐熱衝撃性向上効果は小さい。
【0116】
また、本発明に用いられるハニカム外壁の断面形状としては、設置する排気系の内形状に適した形状であれば特に制限はないが、例えば、円、楕円、長円、台形、三角形、四角形、六角形又は左右非対称な異形形状を挙げることができる。中でも、円、楕円、長円が好ましい。
【0117】
本発明のハニカム構造体のセル構造としては、セル密度が、通常6〜1500cpsi(1平方インチ当たりのセル数)で、300〜1200cpsiが好ましく、400〜900cpsiがさらに好ましい。本発明のハニカム構造体は自動車の排ガス用途に用いる場合、1200cpsiを超えると圧力損失が顕著となることがある一方、300cpsi未満であると限られた搭載スペース内で高GSAを得ることができなくなって、排ガスとの接触効率が不足することがある。
【0118】
また、隔壁の厚さが、通常20〜2000μmで、2〜10mil(1000分の1インチ)が好ましく、2.5〜8milがさらに好ましい。ハニカム構造体は自動車の排ガス用途に用いる場合、10milを超えると圧力損失及び暖気特性低下が顕著となることがある一方、2mil未満であると強度が不足することがある。さらに、20μm未満であると、著しい強度不足により、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0119】
このように、本発明は、上記第1の発明に、前述の熱応力緩和手段(第1の例〜第7の例)を備えさせてなるものであってもよい。このように構成することによって、第1の発明及び熱応力緩和手段を備えた構成による効果を併せて発揮させることができる。
【0120】
本発明の排ガス浄化用触媒体は、上述の排ガス浄化用ハニカム構造体の、セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又はセル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする。
【0121】
例えば、触媒層又は触媒がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するNOx吸蔵触媒体等に、好適に用いられる。特に、K、Na、Li、Caを合計5g/L(ハニカム体積当り)以上含有するNOx吸蔵触媒体に好適に用いられる。
【0122】
この場合、排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、SiC、SiN、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、リン酸チタン、ペロブスカイト、スピネル、シャモット、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。
【0123】
中でも、アルミナ、SiC、ムライト、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物などが、耐アルカリ性がより高く、好適に用いられる。
【0124】
本発明の排ガス浄化用触媒体の応用例としては、例えば、触媒層又は触媒がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである場合、より確実に担体とアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属との反応を抑える目的で、排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料よりもアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と優先的に反応する物質(以下、「アンカー物質」ということがある)をセル隔壁上及び/又はセル隔壁中に有するものを挙げることができる。
【0125】
アンカー物質としては、例えば、B、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Ga、Ge、As、Se、Br、Zr、Mo、Sn、Sb、I及びWよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する物質を挙げることができる。
【0126】
具体的には、触媒成分として用いるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と反応しやすく、ハニカム構造体の主要構成材料よりもこれらと優先的に反応する物質を、予め共存させておくことが好ましい。このようにしておくことにより、触媒体が使用中に高温に晒されても、触媒層中のアルカリ金属やアルカリ土類金属は優先的にアンカー物質と反応し、ハニカム構造体(担体)との反応が抑えられるため、結果的に担体の劣化をより確実に抑止することができる。
例えば、担体に触媒を担持する前に、予めアンカー物質を含浸又はコーティング等の手法によって担持しておき、その後に触媒を担持することにより、担体と触媒層との間にアンカー物質を介在させることができ、最も効果的に担体と触媒層中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属との反応を抑止することができる。
【0127】
また、本発明の排ガス浄化用ハニカム触媒体の他の例としては、触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である、ディーゼル排ガス浄化用の触媒体を挙げることができる。
【0128】
この場合、SCR触媒材料としては、例えば、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;CeO2又はLa2O3等の希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;Na、K等のアルカリ金属酸化物;及びBa、Sr等のアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。
【0129】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、SiC、SiN、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、リン酸チタン、ペロブスカイト、スピネル、シャモット、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。中でも酸化物系は、コストの点でも好ましい材料である。
【0130】
さらに、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料は、例えば、TiO2、ゼオライト、Al2O3及びこれらの二種以上の複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものであることが、好ましい。
【0131】
さらに、ハニカム外壁も、セル隔壁と同じ材料で構成されることが好ましい。
【0132】
排ガス中成分にSO3が存在する場合、担体の硫酸塩化を防ぐ目的でTiO2が好ましいが、SO3が低濃度(50PPM以下)の場合は特に制限はない。
【0133】
TiO2は、通常、アナターゼ(Anatase)型が用いられる。ルチル型は比表面積が小さく、触媒活性への寄与が期待できない。
【0134】
ゼオライトとしてはX型、Y型、ZSM−5型、β型等のものを用いることができるが、耐熱性の観点から、アルカリ成分の含有量は極力押さえることが重要である。耐熱性の観点からSiO2/Al2O3比を25以上とすることが好ましい。また、AlPOやSAPO、メタロシリケート、層状化合物も好適に用いることができる。前述の触媒活性成分をイオン交換担持したものも、好適に用いられる。
【0135】
ソリッドタイプの場合には、Al2O3としては、ガンマ型、イータ型等アルファ型以外の高表面積のものが好ましい。
【0136】
ハニカム構造体(担体)の比表面積は、10〜500m2/gのものを用いることができるが、担体の強度や耐熱性を考慮すると、150m2/g以下のものが好ましい。
【0137】
貴金属の種類としては、例えば、Pt、PdやRh等の成分を挙げることができる。貴金属としての含有量は0.17〜7.07g/L(ハニカム体積当り)用いることが好ましい。
【0138】
卑金属としては、V、VI、VII、VIII族の遷移金属を挙げることができる。
【0139】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体に用いられる触媒組成の好ましい例としては、Pt等貴金属担持TiO2又はAl2O3、Pt等貴金属担持ゼオライト、CuやFe、Ag等担持ゼオライト、CuCr系等非金属担持TiO2又はAl2O3、V−W担持TiO2等を挙げることができる。しかしながら、V−W−TiO2系の触媒は、耐SOX性に優れる反面、損耗や毒性のVが高温で揮発しやすいので、ディーゼル車輛用には使い難いことがある。さらに、助触媒として、CeO2やLa2O3等の希土類酸化物、及びこれらの複合酸化物、さらに、Zr等との複合酸化物を用いることができる。別の助触媒として、NaやK等のアルカリ金属酸化物、Ba、Sr等のアルカリ土類酸化物も好適に用いることができる。
【0140】
また、尿素等を含むSCRに用いるためには、各セル隔壁が、貴金属又は遷移金属を担持または含有してなるものであることが好ましい。貴金属は、ディーゼル燃料中のSOx濃度が低い(例えば、50PPM以下)場合に高い活性を示す。
【0141】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の製造法としては、担体はTiO2、Al2O3、ゼオライト等の担体酸化物をハニカム担体に成形して、触媒活性成分や助触媒成分を担体に担持してよく、また別の方法で、担体と触媒及び助触媒とを一緒に混ぜ込んだ酸化物をハニカム担体に成形してもよい。
【0142】
ディーゼル排ガス浄化用には、NOx還元剤として尿素を車載するケースが多く、この場合、尿素を加水分解してNH3を発生するハニカム触媒やSCR触媒の後流側に配置するNH3スリップ分解触媒に本発明を適用してもよい。
【0143】
なお、SCR触媒用に用いられるハニカム構造体のセル形状としては、例えば、1インチ平方当り50〜600セル(50〜600cpsi)のものを挙げることができる。SCR反応は、ハニカム触媒の幾何学的表面積に影響を受けるため、50セル未満であると、所望の反応活性を得ることができず、また600セルを超えると熱衝撃が弱く破壊しやすくなることがある。本発明におけるような格別な対応をしないハニカム構造体にあっては100〜200セルが耐熱衝撃性の点から車載上限界であるが、本発明においては300セル以上のハニカム構造体が車載可能となり、従ってコンパクトな触媒装置を提供することができる。
【0144】
セル隔壁の厚さは、3〜50ミル(mil)の広範な範囲で使用可能であるが、コンパクトで低圧損の反応装置を提供するためには、3〜10ミルの範囲が好ましい。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0146】
以下、第1の発明の実施例1〜9及び比較例1〜15として、表1に示すような互いに異なる材料特性を有する、チタニア及びアルミナの各3種(チタニアA、B、C、及びアルミナA、B、C)を材料に用いた構造体1〜24を作製した。
【0147】
実施例1
セル隔壁の材料として、アルミナB原料粉、水、バインダーの混練原料を用い、押出成形してから焼成して、四角セル構造で、直径が40mm、長さが40mm、セル隔壁(リブ)厚さが4mil(0.102mm)、セル密度が600cpsi、セルピッチが1.037mmのハニカム構造体(構造体1)を作製した。アルミナBは、材料特性として、貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数(α):8.40×10-6[1/K]、材料比熱(C):820[J/kgK]、材料密度(ρ):1900[kg/m3]、材料熱伝導率(λ):14[W/mK]、材料ヤング率(リブ1枚曲げ)(E):40×103[MPa]、を有するものである。以上の材料特性及びセル構造データをまとめて表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
表1に示すデータを用い、構造体1について前記式(11)の右辺の各変数を算出した結果、ハニカム体積当たり幾何学的表面積(GSA)は、3.48×103[m2/m3]、ハニカムセル水力直径(HD)は、0.000935[m]、セル熱容量(c)は、290347.6[J/m3K]、ハニカムセル熱伝導率(λC)は、1.371714[W/mK]であった。計算式を下記式(25)〜(29)に示す。
【0150】
GSA[m2/m3]=4×(セルピッチ[m]−リブ厚[m])/(0.0254)2×セル密度[cpsi] …(25)
【0151】
HD[m]=セルピッチ[m]−リブ厚[m] …(26)
【0152】
ρC[kg/m3]=材料密度[kg/m3]×{1−(セルピッチ[m]−リブ厚[m])2/(セルピッチ[m])2} …(27)
【0153】
セル熱容量[J/m3K]=材料比熱[J/kgK]×ハニカム構造かさ密度[kg/m3] …(28)
【0154】
ハニカムセル熱伝導率[W/mK]=材料熱伝導率[W/mK]×リブ厚[m]/セルピッチ[m] …(29)
【0155】
なお、前述のように、C1を決定するための代表時間t0及び、代表長さLについては、λg=0.061W/mK、Nu=3.77を想定し、L=0.04m、t0=5sec、ΔT=500Kを選択して得られるC1=1.61×10-2を採用した。以上の前記式(11)の右辺の変数の計算結果をまとめて表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
さらに、表2の数値を用いて前記式(11)の右辺を計算した結果、右辺:8.00×10-4が得られた。一方、作製した構造体1からリブ1枚を切り出して実測した材料の強度は、35[MPa]であったので、これを材料ヤング率(リブ1枚曲げ)で割って、左辺:8.75×10-4を得た。従って、この構造体1は、前記式(11)を満たすことがわかる。以上の結果をまとめて表3に示す。なお、表3においては、構造体が前記式(11)を満たす場合には〇、満たさない場合には×として示した。
【0158】
また、得られた構造体1の耐熱性の評価のため、下記のガスバーナーを用いた熱サイクル試験を行った。すなわち、構造体1から、直径が40mmで、長さが40mmのサンプルを切り出し、ガスバーナーによる熱風と冷風を三方弁で切り替えながら、サンプルに交互に通じ、加熱(サンプルの入口側のガス温度900℃で10分間)と冷却(サンプルの入口側のガス温度200℃で10分間)を10サイクル繰り返した後に、サンプルのクラックや割れの発生の有無を目視により観察した。この結果を表3に示す。なお、表3においては、構造体にクラックや割れの発生が認められなかった場合には〇、認められた場合には×として示した。
【0159】
実施例2〜9、及び比較例1〜15
セル隔壁の材料及びセル構造を表1に示すものに変えたこと以外は実施例1と同様にして、構造体2〜24を作製した。得られた構造体2〜24の、表1に示すデータを用い構造体2〜24について前記式(11)の右辺の各変数の算出結果を表2に示す。さらに、表2の数値を用いて前記式(11)の右辺を計算した結果、材料強度の実測値、材料強度の実測値を材料ヤング率(リブ1枚曲げ)で割った左辺の値、左辺の値が前記式(11)を満たすか否か及びガスバーナーの熱サイクル試験におけるサンプルのクラックや割れの発生の有無の観察結果をまとめて表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
図26は、本発明の実施例で得られた構造体(前記式(11)を満たす構造体)は、クラックや割れの発生が認められず、比較例で得られた構造体(式(11)を満たさない構造体)はクラックや割れの発生が認められることを示すグラフである。図26に示すように、前記式(11)を満たす構造体(実施例1〜9)と満たさない構造体(比較例1〜15)とは、前記式(11)の等号の場合の直線グラフを境界として、2つの領域に区分けされるが、これらの2つの領域は、クラックや割れの発生が認められない領域とクラックや割れの発生が認められる領域とにそれぞれ合致することがわかる。
【0162】
以下、参考例10〜21及び比較例16〜19として、表4〜表8に示すようなアルミナC、チタニアA、チタニアBを材料に用いた構造体25〜40を作製した。
【0163】
参考例10
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた構造体25を、実施例1と同様にして作製した。この構造体25には、図2(d)に示すような形状でスリット4を入れた構造のものとした。なお、図2(d)におけるスリット4の形状は、ハニカム構造体10の上端面14に露出するスリット4の長さをハニカム構造体10の直径の3/10(具体的には30mm)、また、スリット4のハニカム外壁上に露出した中心軸方向の長さを、ハニカム外壁の全長に亘る100mmとした。得られた構造体25の体積は785cm3、重量は、270gであった。また、この構造体25を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃(750℃まではクラック発生が認められなかった)と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表4に示す。
【0164】
電気炉による耐熱衝撃性試験
室温の試料を400℃に保持された電気炉に入れ、20分間経過後、試料を取り出して室温まで冷却した後、クラックの発生の有無を目視で確認した。クラックの発生がなければ、電気炉の温度を50℃ずつ上昇させ、同様な試験を繰り返した。最終的に、クラックが発生した温度を「破壊温度」とした。
【0165】
参考例11〜13
参考例10において、セル外形、セル密度、スリットの形状を表4に示すように変えたこと以外は参考例10と同様にして構造体26〜28を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表4に示す。
【0166】
【表4】
【0167】
参考例14
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた構造体29を、実施例1と同様にして作製した。この構造体29は、図13(c)に示すような形状で一辺の長さが35mmの正方形で、長さが100mmの第1のセグメント13を4個と周囲の異形(断面の長辺が35mm、長さが100mm)の第1のセグメント8個とを抱き合わせてセメントで接合した構造のものとした。得られた構造体29の体積は785cm3、重量は、270g(セメント分は除く)であった。また、第1のセグメント13のアスペクト比((L1)/(P1))は、100/35=2.86であった。この構造体29を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表5に示す。
【0168】
参考例15〜16
参考例14において、材料、セル外形、セル密度、第1のセグメントの構造を表5に示すように変えたこと以外は参考例14と同様にして構造体30〜31を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表5に示す。
【0169】
【表5】
【0170】
参考例17
セル外形(直径が100mm、長さが120mm(間隔も含む)、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた第2のハニカムセグメントを三段に分割した形状に構成してなる構造体32を、実施例1と同様にして作製した。この構造体32は、図17に示すような形状で長さが33.3mmの第2のセグメント15を3段に積層した構造のものとした。得られた構造体32の体積は785cm3、重量は、270gであった。また、第2のセグメント15のアスペクト比[(P2)/(L2)]は、100/33.3=3.0であった。この構造体32を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表6に示す。
【0171】
参考例18〜19
参考例17において、材料、セル外形、セル密度、第2のセグメントの構造を表6に示すように変えたこと以外は参考例17と同様にして構造体33〜34を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表6に示す。
【0172】
【表6】
【0173】
参考例20
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いたセル隔壁の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に配設した一以上の切り欠き部を備えた構造体35を、実施例1と同様にして作製した。この構造体35は、図18に示すような形状で一以上の切り欠き部16を備えた構造のものとした。得られた構造体35の体積は785cm3、重量は、270gであった。この構造体35を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、750℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表7に示す。
【0174】
参考例21
参考例20において、材料、セル外形、セル密度を表7に示すように変えたこと以外は参考例20と同様にして構造体36を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表7に示す。
【0175】
【表7】
【0176】
比較例16〜19
熱応力緩和手段(参考例10におけるスリットの形成、参考例14における第1のセグメントへの分割、参考例17における第2のセグメント構造の形成及び参考例20における切り欠き部の形成)を施さなかったこと、並びに材料、セル外形、セル密度、体積、重量を表8に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして構造体37〜40を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表8に示す。
【0177】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体は、例えば、自動車排ガス浄化用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0179】
1:セル、2:セル隔壁、3:ハニカム外壁、4:スリット、4a:分岐部、4b:応力緩和部、5、5a、5b、5c、5d、5e、5f:ハニカム外壁の端面、6、6a、6b、6c:端面エッジ部、7:連結部、10:排ガス浄化用ハニカム構造体、13:第1のハニカムセグメント、14:接合層、15:第2のハニカムセグメント、16:切り欠き部、20:テストピース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体に関する。さらに詳しくは、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6、ここで、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数である)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガス規制が強化されたことと相俟って、リーンバーンエンジンや直噴エンジン等が普及したことに伴い、リーン雰囲気下で、排ガス中のNOxを効果的に浄化することのできるNOx吸蔵触媒が実用化された。このようなNOx吸蔵触媒に用いられるNOx吸蔵成分としては、K、Na、Li、Cs等のアルカリ金属、Ba、Ca等のアルカリ土類金属、La、Y等の希土類等が知られているが、最近では、Kが、高温度域におけるNOx吸蔵能に優れることから、特に注目されている。
【0003】
このようなNOx吸蔵触媒は、通常、前述のNOx吸蔵成分を含む触媒層を、コージェライトのような酸化物系セラミックス材料やFe−Cr−Al合金のような金属材料からなる担体に担持して構成されるが、これらの担体には、排ガスの高温下で活性化されたアルカリ金属や一部のアルカリ土類金属、とりわけ、K、Na、Li、Caに腐食され、劣化しやすいという問題がある。特に、酸化物系セラミックス材料で構成されるコージェライト担体には、前述のアルカリ金属等と反応してクラックが発生する等、問題が深刻である。
【0004】
このような担体劣化を抑制するための対策として、触媒層を構成する多孔質酸化物粒子中に、アルカリ金属と反応しやすいケイ素を含ませ、触媒層中で担体との界面付近に存在するアルカリ金属が担体に移行する前に、ケイ素と反応させ、担体への移行を防止する技術が開示されている(特許文献1)。また、この公報には、担体と触媒層との間にジルコニア層を形成し、このジルコニア層によって、触媒層中のアルカリ金属が担体へ移行するのを防止する技術も開示されている。また、NOx吸蔵触媒担体にアルミナやジルコニアを用いた技術も開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−279810号公報
【特許文献2】特開平10−165817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特開2000−279810号公報に開示された技術のうち、多孔質酸化物粒子中にケイ素を含ませる手法の場合、アルカリ金属の担体内への移行は抑制することができるものの、アルカリ金属がケイ素と反応することによって、そのNOx吸蔵能を失活させてしまうという問題があった。また、担体と触媒層との間に耐食材料であるジルコニアの層を形成する手法の場合、多孔質な担体上に緻密なジルコニア層を、クラック、ピンホール、露出部等を発生させることなく形成することは極めて困難であるという問題があった。また、前述の特開平10−165817号公報の場合、アルカリ金属による担体の腐食は抑制することができるものの、担体の熱膨張率が大きいため、耐熱衝撃性の面で実用化し得るものではなかった。
【0007】
一方、ディーゼル排気ガス用SCR触媒(例えば、触媒を含有した材料で担体を形成するソリッドタイプ)の分野においても、TiO2、ゼオライト、Al2O3及びこれらの複合酸化物等、熱膨張率の高い材料を担体の主成分としてハニカム型に成形するため、耐熱衝撃性が十分ではないという問題があり、その解決が望まれていた。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上述の目的を達成するため鋭意研究した結果、構造体(担体)及び触媒体を構成するセル隔壁が、その材料特性及びセル構造に関し、特定の式に示される関係を満たすことによって、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、耐熱衝撃性に優れ、長期的な使用が可能な構造体(担体)及び触媒体を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明によって、以下の排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体が提供される。
【0010】
[1] 複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、前記セル隔壁上に担持される触媒層又は前記セル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、前記セル隔壁が、アルミナまたはチタニアであって、材料特性及びセル構造に関し、下記式(6)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
【0011】
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(6)
【0012】
(式(6)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚の曲げ強度を意味し、具体的には、梁の高さを除き、JIS R1601に準拠した方法にて、4点曲げにより測定された材料強度、又は、他の方法での試験結果を有効体積により本方法に換算した材料強度を意味する)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m]をそれぞれ示す。)
【0013】
[2] 前記[1]に記載の排ガス浄化用ハニカム構造体の、前記セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又は前記セル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0014】
[3] 前記触媒層又は触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである前記[2]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0015】
[4] 前記触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である前記[2]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【0016】
[5] 前記SCR触媒材料が、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;アルカリ金属酸化物;及びアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものである前記[4]に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、従来から自動車排ガス浄化用途に広く普及されているコージェライトに比較して、熱膨張率の高い(α≧1×10-6)、すなわち耐熱衝撃性の低い構造体(担体)材料を用いた場合であっても、構造体としては十分な耐熱衝撃性を有し、長期的な使用が可能な排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は平面図をそれぞれ示す。
【図2】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図4】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図5】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図6】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図7】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図8】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図9】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの配置例を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図、(d)はその底面図である。
【図10】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの形成方法を示す説明図であり、(a)はセル隔壁に平行に形成した例、(b)はセル隔壁を斜めに切断するように形成した例をそれぞれ示す。
【図11】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリット先端の応力緩和構造を模式的に示す説明図であり、(a)は先端が曲率をもった応力緩和部を有する例、(b)は先端が分岐した例をそれぞれ示す。
【図12】スリットを有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のスリットの形態を模式的に示す説明図であり、(a)はセル隔壁を部分的に切断した例、(b)はセル隔壁を部分的に除去した例をそれぞれ示す。
【図13】径方向に分割された二以上の第1のハニカムセグメントの各種の例を模式的に示す説明図である。
【図14】径方向に分割された二以上の第1のハニカムセグメントのアスペクト比を模式的に示す斜視図である。
【図15】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体から切り出されたテストピースの一例を模式的に示す斜視図である。
【図16】4点曲げ試験の例を模式的に示す説明図である。
【図17】中心軸に対して垂直な平面で分割された二以上の第2のハニカムセグメントの一例を模式的に示す斜視図である。
【図18】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図である。
【図19】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図20】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図21】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図22】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図23】排ガスの貫流方向に配設された一以上の切り欠き部を有する本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の他の例を模式的に示す説明図である。
【図24】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体において、セル隔壁厚さを、そのセル隔壁の断面が、逆台形状、糸巻き状又は長方形状に変化させた例を模式的に示す断面図である。
【図25】本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の全体のアスペクト比[(L3)/(P3)]を模式的に示す斜視図である。
【図26】本発明の実施例で得られた構造体(式(11)を満たす)は、クラックや割れの発生が認められず、比較例で得られた構造体(式(11)を満たさない)はクラックや割れの発生が認められることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体10は、複数のそれぞれ隣接したセル1の複合体を形成するセル隔壁(リブ)2と、このセル1の複合体を囲繞して保持するハニカム外壁3とから構成され、セル隔壁2上に担持される触媒層(図示せず)又はセル隔壁2中に含有される触媒(図示せず)によってセル1内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体10であって、セル隔壁2及びハニカム外壁3が、材料特性及びセル構造に関し、下記式(11)に示す関係を満たすことを特徴とする(以下、「第1の発明」ということがある)。
【0020】
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(11)
(式(11)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚の曲げ強度を意味し、具体的には、梁の高さを除き、JIS R1601に準拠した方法にて、4点曲げにより測定された材料強度、又は他の方法での試験結果を有効体積により本方法に換算した材料強度を意味する)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m])をそれぞれ示す。)
【0021】
以下、上記式(11)について具体的に説明する。
【0022】
ハニカム内の熱応力発生原因である温度勾配の生成は、ガスによる加熱、冷却時に、ガス/ハニカム間の熱伝達量がハニカム内の場所により異なることに起因する。また、固体内熱伝導が十分であれば、高受熱部から低受熱部へ固体内を熱が流れることにより、又は固体内を低熱損部から高熱損部へ熱が流れることにより、温度勾配の発生程度は軽減される。このような、過渡的、局所的な、固体への外部からの熱伝達により温度勾配が生じる程度の大きさは、理論的に、下記式(12)に比例することが知られている。
【0023】
Bi・F01/2 …(12)
【0024】
式(12)中、Bi(ビオー数)は下記式(13)、F0(フーリエ数)は下記式(14)でそれぞれ示される。
【0025】
Bi=(h・l)/λ …(13)
【0026】
F0=(λ・t0)/(ρ・c・l2) …(14)
【0027】
式(13)及び式(14)中、hは熱伝達係数(固体とガスの間)、lは代表長さ、λは熱伝導率(固体)、ρは密度(固体)、cは単位体積当たり熱容量(固体)、t0は代表時間をそれぞれ示す。
【0028】
温度勾配の程度は、ガス、固体間の代表温度差ΔTと前記式(12)との積に比例し、これに前記式(13)、(14)を代入すると、下記式(15)が得られる。
【0029】
ΔT・Bi・F01/2=ΔT・h・t0 1/2/(ρ・c・λ)1/2 …(15)
【0030】
また、ハニカム流路内層流熱伝達については、下記式(16)が成立する。
【0031】
h=Nu・λg/HD …(16)
【0032】
式(16)中、hは熱伝達係数(セル隔壁と流入ガスの間)、Nu(ヌッセルト数)は3.77、HDは流路水力直径、λgはガスの熱伝導率をそれぞれ示す。
【0033】
式(16)を代入することによって、前記式(15)は下記式(17)に書き換えられる。
【0034】
ΔT・t0 1/2・Nu・λg/[(ρ・c・λ)1/2・HD] …(17)
【0035】
さらに、ここでは、温度勾配の程度と、局所的な加熱、冷却領域の代表長さLを想定した伝熱面積GSA・L3との積で固体内温度差パラメータを下記式(18)で表した。
【0036】
(固体内温度差パラメータ)=C1・GSA/[(ρ・c・λ)1/2・HD] …(18)
【0037】
式(18)中、C1はΔT・t01/2・Nu・λg・L3である。
【0038】
また、熱応力パラメータを、固体内温度差パラメータと、熱膨張係数α、ヤング率Eとの積として下記式(19)で定義した。
【0039】
(熱応力パラメータ)=(固体内温度差パラメータ)・α・E …(19)
【0040】
このようにして導いた熱応力パラメータは材料物性、セル構造の関数となっており、その材料物性、セル構造を採用した場合に想定される推定発生熱応力に相当する。実際の材料強度がその熱応力パラメータ値以上であれば、破壊が生じないと考えられる。
【0041】
これは、下記式(20)、すなわち前記式(11)と等価である。
【0042】
(材料の強度)/E≧(熱応力パラメータ)/E …(20)
【0043】
ここで、C1を決定するための代表時間t0及び、代表長さLについては、純粋に理論的な選択を行なうことは不可能であり、試作実験結果との対比による試行錯誤の結果、λg=0.061W/mK、Nu=3.77を想定し、L=0.04m、t0=5sec、ΔT=500Kを選択して得られるC1=1.61×10-2を採用することにより、本発明で想定する使用条件、材料、構造の広範囲において、前記式(20)すなわち前記式(11)の成否と熱応力破壊発生とに良い相関があることを見出した。
【0044】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体は、複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、セル隔壁上に担持される触媒層又はセル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、排ガスを浄化する際にセル隔壁及びハニカム外壁に加えられる熱応力を緩和するための熱応力緩和手段を備えてなるものであってもよい。
【0045】
以下、熱応力緩和手段の具体例について説明する。
【0046】
排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第1の例としては、図2(a)〜(d)に示すように、ハニカム外壁3の表面から中心軸(図示せず)の方向に向かって形成した、ハニカム外壁3の表面で少なくともその一部が開口した、一以上のスリット4を備えるように構成してなるものを挙げることができる。
また、スリットは、図2(a)〜(d)のように排ガスの貫流方向(中心軸方向)に形成すること以外に、特に図示しないが、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に対して垂直な方向に形成してもよい。さらに、構造体としての強度に差し支えない範囲で、両方向に形成することも可能である。
【0047】
上記の熱応力緩和手段を用いた排ガス浄化用ハニカム構造体10においては、スリット4が少なくとも一つの端面5において、少なくとも端面エッジ部6に形成されていることが好ましい。
【0048】
この場合、端面エッジ部6に形成されたスリット4の、ハニカム外壁3の表面で開口した部分の排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわち図2(a)におけるX方向)に平行な方向の長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の全長の10%以上であることが好ましく、かつ端面5で開口した長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の直径の10%以上であることが好ましい。
【0049】
また、温度の不均一が排ガス浄化用ハニカム構造体10の全体(全長)に及ぶような使用環境においては、スリット4を、ハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)全長にわたって開口させるように形成することが好ましい。
【0050】
図2(a)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4を端面5のエッジ部6において、径方向の深さを変えて三角形状となるように4本形成し、図2(b)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4を径方向の深さを変えずに長方形状となるように4本形成し、図2(c)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えて三角形状となるように4本形成し、図2(d)に示す排ガス浄化用ハニカム構造体10は、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えずに四角形状となるように4本形成している。
【0051】
図2(a)〜(d)に示すようにスリット4を形成することにより、排ガス浄化用ハニカム構造体10において、局所的な高温又は低温のような温度分布の不均一が生じた場合であっても、ハニカム構造体の各部が互いに拘束されずに自由に変形することができ、熱応力が低減され、熱衝撃によるクラックの発生を極力防止することができる。
【0052】
図3(a)は、図2(c)と同様に、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えて三角形状となるように3本形成している。図3(b)は、図2(d)と同様に、スリット4をハニカム外壁3の表面の排気ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に沿った全長にわたって開口させ、かつスリット4の径方向の深さを変えずに四角形状となるように3本形成している。これらの場合には、温度の不均一がハニカム構造体全体(全長)に及ぶような使用環境において特に有効である。
【0053】
図4(a)は、スリット4を、ハニカム外壁3の表面のうちの一つの端面5aにおいて、端面エッジ部6aの2点(A及びB)、並びに(C及びD)を連続的につなぐように開口させて形成した場合を示す。図3(b)は、スリット4を、ハニカム外壁3の表面のうちの二つの端面5b、5cにおいて、端面エッジ部6b、6cの2点(A及びB)、並びに(C及びD)等を連続的につなぐように開口させて形成した場合を示す。
【0054】
このように構成することによって、さらに排ガス浄化用ハニカム構造体10の端面5の近傍の変形の自由度が増し、熱応力の低減、熱衝撃によるクラックの発生を有効に防止することができる。この場合、スリット4の、ハニカム外壁3の表面で開口した部分の排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に平行な方向の長さは、排ガス浄化用ハニカム構造体10の全長の10%以上であることが好ましく、スリット4の端面5に開口した長さは排ガス浄化用ハニカム構造体10の直径の10%以上であることが好ましい。
【0055】
図5(a)〜(d)に示すように、スリット4が相互に交叉する部分において、スリット4を形成しない部分(連結部)7を排ガス浄化用ハニカム構造体10の中心部に位置するように形成し、連結部7をハニカム外壁3の表面、上端面5d及び下端面5eに開口させないように構成してもよい。
【0056】
このように構成することによって、極めて大きい温度の不均一が排ガス浄化用ハニカム構造体10の全体(全長)に及ぶような使用環境においても、熱衝撃によるクラック等の発生を有効に防止することができる。
【0057】
なお、図5(a)は、連結部7のスリットを含む平面で切断した断面形状が長方形の場合、図5(b)は、円形の場合、図5(c)は、レーストラック形形状の場合、図5(d)は、菱形の場合をそれぞれ示す。このような構成にすることによって、局所的に高温又は低温が散在するような温度の不均一が大きく、その不均一がハニカム構造体の全体にわたって分布するような場合においても、熱衝撃によるクラック等の発生を有効に防止することができる。
【0058】
一方、図6(a)〜(d)は、それぞれ、連結部7の一部がハニカム外壁3の表面のうちの下端面5fに開口した場合を示している。
【0059】
図7及び図8は、それぞれ連結部7がハニカム外壁3の表面に開口しないように構成された別の場合を示している。
【0060】
図7は、図5(a)と同様に、連結部7のスリットを含む平面で切断した断面形状が長方形の場合を示す。この場合には、スリット4の数を図5(a)に示す場合より多く形成している。
【0061】
図8は、連結部7のスリット4を含む平面で切断した断面形状が円又は楕円形の場合を示している。
【0062】
スリット4には、充填材を充填することが好ましい。このような充填材としては、例えば、耐熱性を有するセラミックスファイバー、セラミックス粉、セメント等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、必要に応じて、有機バインダ、無機バインダ等を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明のハニカム構造体においては、貫流方向(中心軸)に対して垂直な断面で切断したときに径方向のスリットの長さが最も長くなるようなセル断面において、その径方向のスリットの長さは、ハニカム外壁から中心軸までの距離(半径)の10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
【0064】
また、本発明のハニカム構造体において、スリットは、排ガスの貫流方向(中心軸方向、すなわちX方向)に垂直な断面において点対称に配置されていることが、全体の変形に偏りを生じにくく好ましいが、これに限定されることはない。例えば、図9(a)〜(d)に示すようにスリット4を配置してもよい。
【0065】
スリット4は、図10(b)に示すように、セル隔壁2に平行でなくセル隔壁2を斜めに切断するように形成してもよいが、図10(a)に示すように、セル隔壁2に平行に形成する方が、スリット4先端の応力集中が小さいため、より好ましい。
【0066】
また、ハニカム構造体10のセル1の形状が3角の場合には、スリット4は、60°方向、または120°方向とするのが上記と同じ理由でより好ましい。
【0067】
スリット4の幅としては特に制限はないが、広すぎると充填材を充填する場合の充填工数、充填材量が増加し、また、ガス等流体の清浄化に使用できるセル数が減少するため、セル1個分の幅より狭いことが好ましい。
【0068】
さらに、図11(a)、(b)に示すように、スリット4の先端部において、スリット4を分岐させた分岐部4aを設けるか(図11b)参照)、又は曲率を有する応力緩和部4bを設けること(図11(a)参照)が、熱応力の緩和の観点からより好ましい。
【0069】
なお、スリット4の形態としては、図12(a)に示すように、ハニカム構造体10のセル隔壁2を部分的に切断するようにしてもよいし、図12(b)に示すように、セル隔壁2を部分的に除去するようにしてもよい。
【0070】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第2の例としては、図13(a)〜(d)に示すように、セルの複合体を、中心軸に対して平行な平面で二以上の第1のハニカムセグメント13に分割した構成を有する(ハニカム製造後に切断して分割してもよく、最初から各セグメントに相当する形のものを作製してもよい)とともに、必要に応じて接合層14によって接合するように構成してなるものであり、かつ第1のハニカムセグメント13の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L1)とセルの複合体の端部側における直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P1)とのアスペクト比[(L1)/(P1)]を、下記式(21)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。この場合、図14に示すように、第1のハニカムセグメント13の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L1)と、直径(一辺)(P1)とのアスペクト比[(L1)/(P1)]が、下記式(21)に示す関係を満たすものであることが好ましい。
【0071】
2≦[(L1)/(P1)]≦10 …(21)
【0072】
セグメント自体の強度・耐熱衝撃性の観点からは、アスペクト比[(L1)/(P1)]は、10以下とすることが好ましい。一方、2未満であると、セグメントを集合させた時に、全体としてのアスペクト比が径方向に著しく偏るため、上述の範囲とすることが好ましい。3≦[(L1)/(P1)]≦6の範囲とすることがさらに好ましい。一体のハニカム構造体の中に複数の形状の第1のハニカムセグメントが共存する場合には、その全てが前記式(21)を満たすことが最も好ましいが、少なくとも、最も熱衝撃の大きい中心軸周りの(中心軸を含む、又は中心軸に接する)第1のハニカムセグメントは前記式(21)を満たすことが必要である。集合させるセグメント数は、24以下であることが好ましく、16以下であることが、集合体全体としての強度及び製造コストの点でさらに好ましい。
【0073】
以下、ハニカムセグメントの接合についてさらに具体的に説明する。
【0074】
図13(a)〜(d)に示すように、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体10は、各種分割パターンの第1のハニカムセグメント13に分割されることが好ましい。
【0075】
これらのハニカムセグメントを接合する場合、接合層14のヤング率を、第1のハニカムセグメント13のヤング率の20%以下にすることが好ましく、1%以下とすることがさらに好ましい。また、接合層14の材料強度を、第1のハニカムセグメント13の材料強度より小さくすることが好ましい。このように、接合層14と第1のハニカムセグメント13とのヤング率を特定することにより、使用時における熱応力の発生を小さく抑えて、熱衝撃によるクラックの発生を有効に防止し、耐久性に優れた構造体とすることができる。また、接合層14のヤング率が第1のハニカムセグメント13のヤング率の20%を超える場合であっても、接合層14の材料強度が第1のハニカムセグメント13の材料強度より小さい場合には、接合層14のみにクラックが生じ、第1のハニカムセグメント13には損傷を受けることがない。
【0076】
ここで、接合層14のヤング率、第1のハニカムセグメント13のヤング率とは、それぞれ材料自体のヤング率を意味し、材料固有の物性を示すものである。
【0077】
また、「接合層の材料強度が第1のハニカムセグメントの材料強度より小さい」ことの定義について、図15及び図16を用いて説明する。
【0078】
すなわち、図15に示すような、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体から切り出したテストピース20を準備する。なお、テストピース20は径方向の長さが40mm以上で、その中央部に接合層14が位置するように切断する。
【0079】
このテストピース20を、図16に示す4点曲げ試験(JIS R1601に準拠する)において、接合層14内部、又は接合層14と第1のハニカムセグメント13との界面で破壊する確率が50%以上であることを、上記の「接合層の材料強度がハニカムセグメントの材料強度より小さい」と定義する。
【0080】
また、接合層14に接する第1のハニカムセグメント13の表面の内で少なくとも30%以上の面積を占める部分の平均的な表面粗さ(Ra)は、0.4ミクロンを超えることが好ましく、0.8ミクロン以上がさらに好ましい。このように構成することにより、2個以上の第1のハニカムセグメント13間の接合がより強固になり、使用時における剥離を有効に防止することをできる。また、セグメント同士を接合しない場合にも、相互のずれを防止することができる。
【0081】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10を構成する全ての第1のハニカムセグメント13の総熱容量に対する、排ガス浄化用ハニカム構造体10内の全ての接合層14の総熱容量の比率は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
このように構成することにより、昇温にかかる時間を許容範囲内に小さく抑え、触媒成分を早期活性化させることができる。
【0083】
また、径方向に切断した断面における第1のハニカムセグメント13の断面形状の角部は、曲率半径0.2mm以上に丸められているか、又は0.3mm以上の面取りがされていることが、使用時における熱応力の発生を小さくし、クラックの発生を防止して耐久性を付与することができるために好ましい。
【0084】
また、径方向に切断した断面における排気ガス浄化用ハニカム構造体の断面積(SH)に占める接合層14の総断面積(SS)の比率(SS/SH)が17%以下であることが流体の圧力損失低減の観点から好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
【0085】
また、排気ガス浄化用ハニカム構造体10の径方向に切断した断面におけるセルの複合体の隔壁断面積の総和(SC)に対する接合層断面積の総和(SS)の比率(SS/SC)が50%以下であることが流体の圧力損失低減の観点から好ましく、24%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
さらに、排気ガス浄化用ハニカム構造体の径方向に切断した排気ガス浄化用ハニカム構造体の断面内において、セルの複合体の断面積に対する接合層の断面積の比率が中央部で大きく、ハニカム外壁側で小さくなっていることが好ましい。このような構成にすることによって、中央部に集中する排気ガス流を、外壁近傍に適度に分散させることができる。その結果、中央部とハニカム外壁側の温度差を低減することができ、排気ガス浄化用ハニカム構造体における熱応力を低減することができる。
【0087】
排気ガス浄化用ハニカム構造体の、排ガスの貫流方向に垂直な面で径方向に切断した断面の形状(ハニカム外壁の断面形状)は、円、楕円、レーストラック等のいずれであってもよい。
【0088】
ここで、第1のハニカムセグメント間を接合する接合層の材料としては、例えば、耐熱性を有するセラミックスファイバー、セラミックス粉、セメント等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、必要に応じて有機バインダ、無機バインダ等を混合して用いてもよい。
【0089】
ハニカムセグメントの強度が十分に高い場合には、必要に応じてセラミックスファイバー、セラミックス粉、マット等を介して集合させ、周囲から圧力をかけてキャニングする、又は少なくとも排ガス出口側に押さえを配して留める等して接合を省略することもできる。
【0090】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第3の例としては、図17に示すように、セル1の複合体を、中心軸に対して垂直な平面で二以上の第2のハニカムセグメント15に分割して多段形状に構成してなるものであり(図17においては、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さが、(L2)、(L2’)及び(L2”)の3段形状の例を示す)、かつ第2のハニカムセグメント15の、セル1の複合体の端部側における直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P2)と排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L2)とのアスペクト比[(P2)/(L2)]を、下記式(22)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。なお、第2のハニカムセグメント15のL2が、L2'、L2”の場合も同様である。
【0091】
0.5≦[(P2)/(L2)]≦5 …(22)
【0092】
多段に配された第2のハニカムセグメントの中で、少なくとも一つの第2のハニカムセグメントが前記式(22)を満たす場合には、本願発明の効果が得られるが、少なくとも、最も熱衝撃の大きい最上流側に配された第2のハニカムセグメントが前記式(22)を満たすことが好ましく、さらに、第2のハニカムセグメントの全てが前記式(22)を満たすことが最も好ましい。
【0093】
第2のハニカムセグメント15自体の強度・耐熱衝撃性の観点からは、アスペクト比[(P2)/(L2)]は、5以下とすることが好ましいが、0.5未満であると、第2のハニカムセグメント15を集合させた時に、全体としてのアスペクト比が排ガスの貫流方向に著しく偏り圧力損失が増大するため、上記の範囲とすることが好ましく、1.0≦[(P2)/(L2)]≦3の範囲とすることがさらに好ましい。また、段数については、同じく圧力損失の観点から、5段以下とすることが好ましく、3段以下であればさらに好ましい。このように構成することにより、熱応力を低減することができるとともに、分割された第2のハニカムセグメント15は、互いに端面同士が接するように、又はある程度の距離を介して、又は別の缶体内に、等の種々の配設の仕方を自在に採用することができ、また、接合を不要とすることができる。
【0094】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第4の例としては、図18に示すように、セル1の複合体を構成するセル隔壁2の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に配設した一以上の切り欠き部16を備えるように構成してなるものを挙げることができる。
【0095】
このような切り欠き部16の配設例を図18〜図23に示す。
【0096】
ハニカム構造体における切り欠き部16は、ハニカム外壁3から径方向にハニカム構造体を切断して配設した前述の外部に開口するスリットとは異なるものであり、セルの排ガスの貫流方向(中心軸方向)の所定部分を切り欠いて実質的に均一に配設されるものである。
【0097】
切り欠き部16の配設箇所は、断面で見た場合、互いに離れていてもよく、複数セル連続していてもよい。この切り欠き部16が、熱応力を緩和する。前述のスリットの場合とは異なり、切り欠き部16は必ずしもハニカム外壁に開口している必要はない。基本的には、同方向の連続を避けるように配設することが好ましいが、敢えて同方向に連続して設ける場合には、連続数は10セル以下とすることが好ましい。同方向に10セルを超えて連続すると、ハニカム構造体全体としての強度が著しく低下することがある。また、連続でなくても、選択的に同方向に配設すると、熱応力開放方向が偏ることがある。
【0098】
強度の観点からは、切り欠き部16数を総セル壁数(交点から次の交点までを1枚と数える)の40%以下に抑えることが好ましい。また、切り欠き部16の排ガスの貫流方向深さについては、基本的には、少なくともある断面で不連続となっていればよいが、実使用において熱衝撃の大きい(排ガスの貫流方向(中心軸方向))入口側に露出していることが好ましく、セルの排ガスの貫流方向(中心軸方向)の全体に耐熱衝撃性が要求される場合は、図20に示すように、セルの排ガスの貫流方向の全長にわたっていることが好ましい。
【0099】
切り欠き部16の幅は、セル隔壁の厚さ、セルピッチ(リブの間隔)の如何に関係なく、10μmm以上で、1セルの幅以下であることが好ましい。10μmm未満であると、熱応力緩和効果が不十分となることがあり、1セル分を超えると、ハニカム構造体全体として著しい強度低下に至ることがある。
【0100】
径方向や排ガスの貫流方向に切り欠き部16密度を変化させて配設してもよい。変化させるにあたっては、1個体のままでもよく、前述の分割方式を活用してもよい。変化のさせ方としては、例えば、実使用において熱衝撃の大きい径方向の中央部や排ガスの貫流方向入口側に集中して切り欠き部16を形成することを好適例として挙げることができる。
【0101】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第5の例としては、セルの複合体を構成するセルの断面形状を、三角形以上の多角形状に構成してなるものを挙げることができる。
【0102】
中でも、角数が多い多角形状が熱応力が低減されることから好ましい。具体的には、4角形以上であることが好ましく、6角形がさらに好ましい。同じ理由で、4角形の中でも、正方形より長方形の方が好ましい。また、径方向や排ガスの流れ方向(多段式の場合にのみ可能)にセル形状を変化させてもよい。径方向に変化させるにあたっては、1個体のままでも可能であるが、前述の分割方式を活用してもよい。変化のさせ方としては、例えば、実使用において熱衝撃の大きい径方向中央部や排ガスの流れ方向入口側を集中して多角化することが好ましい。
【0103】
本発明においては、実使用における熱衝撃の大きさの分布を考慮して、径方向及び/又は排ガスの流れ方向(多段式の場合にのみ可能)にセル隔壁の厚さを変化させることが好ましい。径方向に変化させるにあたっては、1個体のままでも可能であるが、上述の分割方式を活用することもできる。ここで、セル隔壁の厚さの変化のさせ方としては、一般的に昇温・冷却速度が速い、径方向中央部や排ガス流れ方向入口近傍を厚くすることが、熱衝撃によるクラックの防止に有効である。
【0104】
具体的には、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第6の例として、中心軸から半径(一辺の半分)の少なくとも10%以内の領域に存在するセルの隔壁厚さ(T10)を、基本セル隔壁厚さ(Tc)との間に下記式(23)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。
【0105】
1.2≦T10/Tc …(23)
【0106】
また、径方向中央部や排ガス流れ方向(中心軸方向)入口近傍のセル隔壁を厚くすることは、その部分の昇温・冷却速度を緩めるのみならず、外周部や出口近傍との温度差を小さくすることにもなり、二重に熱衝撃を緩和することができる。
【0107】
図24に示すように、排ガス浄化用ハニカム構造体において、中心軸に対して垂直の面で切断した断面内にセル隔壁2の厚さの異なる領域が共存する場合には、境界部分のセル隔壁2の厚さを、それぞれのセル隔壁2の断面が、逆台形状(図24(a))、糸巻き状(図24(b))、又は長方形状(図24(c))で、リブ厚が厚い領域から薄い領域に向かって順次薄くなるように変化させることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失や耐熱衝撃性比の向上を図ることができる。
【0108】
また、排ガス浄化用ハニカム構造体10に用いられる熱応力緩和手段の第7の例として、図25に示すように、セルの複合体全体の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)の長さ(L3)と、直径(一辺)(偏りのある断面形状の場合には長径(長辺))(P3)とのアスペクト比[(L3)/(P3)]を、下記式(24)に示す関係を満たすように構成してなるものを挙げることができる。このように構成することによって、強度、耐熱衝撃性を向上させることができる。図25においては、構造体が、第1のハニカムセグメント13に分割された接合層14を有するものの場合を示す。
【0109】
0.5≦[(L3)/(P3)]≦2 …(24)
【0110】
排ガス浄化用ハニカム構造体は、その重量が、1500g以下であるもので、その体積が、1500cm3以下であるものが好ましい。
【0111】
ハニカム構造体1個の重量(1個体の場合はその重量、分割型の場合には1セグメントの重量)は、その材質(熱膨張率,比重)や気孔率にもよるが、耐熱衝撃性の観点から、少なくとも1500g以下であることが好ましい。1500gを超えると、実使用の際、通常運転モードの比較的緩い熱衝撃にても、クラックの発生、割れ等、損傷することがある。さらに好ましくは1200g以下であり、1000g以下であれば、急峻な温度変化による厳しい熱衝撃にも耐えることができるため特に好ましい。
【0112】
ハニカム構造体1個の体積(1個体の場合はその体積、分割型の場合には1セグメントの体積)は、耐熱衝撃性の観点から、少なくとも1500cm3以下であることが好ましい。1500cm3を超えると、実使用の際、通常運転モードの比較的緩い熱衝撃にても、損傷することがある。さらに好ましくは1000cm3以下であり、800cm3以下であれば、急峻な温度変化による厳しい熱衝撃にも耐えることができるため特に好ましい。
【0113】
上述の種々の方策を任意に組み合わせて適用することにより、より一層熱応力緩和効果を高めた排ガス浄化用ハニカム構造体とすることができる。
【0114】
ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、ハニカム構造体をNOx吸蔵触媒用担体として用いる場合、耐アルカリ性に優れ、かつ自動車の排気ガスに適用し得る強度・耐熱性を併せもつ材質を主成分とすることが好ましい。具体的には、アルミナ(アルミナの中では、α−アルミナが最も耐アルカリ性が高いという点で好ましい)、チタニア、を挙げることができる。例えば、アルミナ、SiC、SiN、ムライト、無配向コージェライト等が耐アルカリ特性上好適に用いられるが、中でも酸化物系は、コストの点でも好ましい材料である。セル隔壁がこれ等を主要構成材料として含有するものであることが好ましいが、さらに、ハニカム外壁も、セル隔壁と同じ材料で構成されることが好ましい。
【0115】
ハニカム構造体の材質が、高熱膨張率を必要とする自動車の排気ガスに用いられる場合で、排ガスの貫流方向に対して垂直な方向の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以上の場合に、本発明のハニカム構造体は、有効にその効果を発揮する。特に、3.0×10-6/℃以上の高熱膨張材料になると、排ガス温度変化の大きいマニホールド直下搭載の場合には本発明が必須となり、更に、5.0×10-6/℃以上になると排ガス温度変化が比較的小さい床下搭載の場合でさえ本発明が必要となる。逆に、1.0×10-6/℃未満の低熱膨張材料にも、本願発明を適用することはできるが、元々材料として熱膨張率が低い(耐熱衝撃性が高い)ため、得られる耐熱衝撃性向上効果は小さい。
【0116】
また、本発明に用いられるハニカム外壁の断面形状としては、設置する排気系の内形状に適した形状であれば特に制限はないが、例えば、円、楕円、長円、台形、三角形、四角形、六角形又は左右非対称な異形形状を挙げることができる。中でも、円、楕円、長円が好ましい。
【0117】
本発明のハニカム構造体のセル構造としては、セル密度が、通常6〜1500cpsi(1平方インチ当たりのセル数)で、300〜1200cpsiが好ましく、400〜900cpsiがさらに好ましい。本発明のハニカム構造体は自動車の排ガス用途に用いる場合、1200cpsiを超えると圧力損失が顕著となることがある一方、300cpsi未満であると限られた搭載スペース内で高GSAを得ることができなくなって、排ガスとの接触効率が不足することがある。
【0118】
また、隔壁の厚さが、通常20〜2000μmで、2〜10mil(1000分の1インチ)が好ましく、2.5〜8milがさらに好ましい。ハニカム構造体は自動車の排ガス用途に用いる場合、10milを超えると圧力損失及び暖気特性低下が顕著となることがある一方、2mil未満であると強度が不足することがある。さらに、20μm未満であると、著しい強度不足により、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0119】
このように、本発明は、上記第1の発明に、前述の熱応力緩和手段(第1の例〜第7の例)を備えさせてなるものであってもよい。このように構成することによって、第1の発明及び熱応力緩和手段を備えた構成による効果を併せて発揮させることができる。
【0120】
本発明の排ガス浄化用触媒体は、上述の排ガス浄化用ハニカム構造体の、セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又はセル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする。
【0121】
例えば、触媒層又は触媒がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するNOx吸蔵触媒体等に、好適に用いられる。特に、K、Na、Li、Caを合計5g/L(ハニカム体積当り)以上含有するNOx吸蔵触媒体に好適に用いられる。
【0122】
この場合、排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、SiC、SiN、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、リン酸チタン、ペロブスカイト、スピネル、シャモット、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。
【0123】
中でも、アルミナ、SiC、ムライト、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物などが、耐アルカリ性がより高く、好適に用いられる。
【0124】
本発明の排ガス浄化用触媒体の応用例としては、例えば、触媒層又は触媒がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである場合、より確実に担体とアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属との反応を抑える目的で、排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料よりもアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と優先的に反応する物質(以下、「アンカー物質」ということがある)をセル隔壁上及び/又はセル隔壁中に有するものを挙げることができる。
【0125】
アンカー物質としては、例えば、B、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Ga、Ge、As、Se、Br、Zr、Mo、Sn、Sb、I及びWよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する物質を挙げることができる。
【0126】
具体的には、触媒成分として用いるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と反応しやすく、ハニカム構造体の主要構成材料よりもこれらと優先的に反応する物質を、予め共存させておくことが好ましい。このようにしておくことにより、触媒体が使用中に高温に晒されても、触媒層中のアルカリ金属やアルカリ土類金属は優先的にアンカー物質と反応し、ハニカム構造体(担体)との反応が抑えられるため、結果的に担体の劣化をより確実に抑止することができる。
例えば、担体に触媒を担持する前に、予めアンカー物質を含浸又はコーティング等の手法によって担持しておき、その後に触媒を担持することにより、担体と触媒層との間にアンカー物質を介在させることができ、最も効果的に担体と触媒層中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属との反応を抑止することができる。
【0127】
また、本発明の排ガス浄化用ハニカム触媒体の他の例としては、触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である、ディーゼル排ガス浄化用の触媒体を挙げることができる。
【0128】
この場合、SCR触媒材料としては、例えば、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;CeO2又はLa2O3等の希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;Na、K等のアルカリ金属酸化物;及びBa、Sr等のアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。
【0129】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、SiC、SiN、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、リン酸チタン、ペロブスカイト、スピネル、シャモット、無配向コージェライト及びこれらの混合物・複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。中でも酸化物系は、コストの点でも好ましい材料である。
【0130】
さらに、本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体のセル隔壁の主要構成材料は、例えば、TiO2、ゼオライト、Al2O3及びこれらの二種以上の複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものであることが、好ましい。
【0131】
さらに、ハニカム外壁も、セル隔壁と同じ材料で構成されることが好ましい。
【0132】
排ガス中成分にSO3が存在する場合、担体の硫酸塩化を防ぐ目的でTiO2が好ましいが、SO3が低濃度(50PPM以下)の場合は特に制限はない。
【0133】
TiO2は、通常、アナターゼ(Anatase)型が用いられる。ルチル型は比表面積が小さく、触媒活性への寄与が期待できない。
【0134】
ゼオライトとしてはX型、Y型、ZSM−5型、β型等のものを用いることができるが、耐熱性の観点から、アルカリ成分の含有量は極力押さえることが重要である。耐熱性の観点からSiO2/Al2O3比を25以上とすることが好ましい。また、AlPOやSAPO、メタロシリケート、層状化合物も好適に用いることができる。前述の触媒活性成分をイオン交換担持したものも、好適に用いられる。
【0135】
ソリッドタイプの場合には、Al2O3としては、ガンマ型、イータ型等アルファ型以外の高表面積のものが好ましい。
【0136】
ハニカム構造体(担体)の比表面積は、10〜500m2/gのものを用いることができるが、担体の強度や耐熱性を考慮すると、150m2/g以下のものが好ましい。
【0137】
貴金属の種類としては、例えば、Pt、PdやRh等の成分を挙げることができる。貴金属としての含有量は0.17〜7.07g/L(ハニカム体積当り)用いることが好ましい。
【0138】
卑金属としては、V、VI、VII、VIII族の遷移金属を挙げることができる。
【0139】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体に用いられる触媒組成の好ましい例としては、Pt等貴金属担持TiO2又はAl2O3、Pt等貴金属担持ゼオライト、CuやFe、Ag等担持ゼオライト、CuCr系等非金属担持TiO2又はAl2O3、V−W担持TiO2等を挙げることができる。しかしながら、V−W−TiO2系の触媒は、耐SOX性に優れる反面、損耗や毒性のVが高温で揮発しやすいので、ディーゼル車輛用には使い難いことがある。さらに、助触媒として、CeO2やLa2O3等の希土類酸化物、及びこれらの複合酸化物、さらに、Zr等との複合酸化物を用いることができる。別の助触媒として、NaやK等のアルカリ金属酸化物、Ba、Sr等のアルカリ土類酸化物も好適に用いることができる。
【0140】
また、尿素等を含むSCRに用いるためには、各セル隔壁が、貴金属又は遷移金属を担持または含有してなるものであることが好ましい。貴金属は、ディーゼル燃料中のSOx濃度が低い(例えば、50PPM以下)場合に高い活性を示す。
【0141】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体の製造法としては、担体はTiO2、Al2O3、ゼオライト等の担体酸化物をハニカム担体に成形して、触媒活性成分や助触媒成分を担体に担持してよく、また別の方法で、担体と触媒及び助触媒とを一緒に混ぜ込んだ酸化物をハニカム担体に成形してもよい。
【0142】
ディーゼル排ガス浄化用には、NOx還元剤として尿素を車載するケースが多く、この場合、尿素を加水分解してNH3を発生するハニカム触媒やSCR触媒の後流側に配置するNH3スリップ分解触媒に本発明を適用してもよい。
【0143】
なお、SCR触媒用に用いられるハニカム構造体のセル形状としては、例えば、1インチ平方当り50〜600セル(50〜600cpsi)のものを挙げることができる。SCR反応は、ハニカム触媒の幾何学的表面積に影響を受けるため、50セル未満であると、所望の反応活性を得ることができず、また600セルを超えると熱衝撃が弱く破壊しやすくなることがある。本発明におけるような格別な対応をしないハニカム構造体にあっては100〜200セルが耐熱衝撃性の点から車載上限界であるが、本発明においては300セル以上のハニカム構造体が車載可能となり、従ってコンパクトな触媒装置を提供することができる。
【0144】
セル隔壁の厚さは、3〜50ミル(mil)の広範な範囲で使用可能であるが、コンパクトで低圧損の反応装置を提供するためには、3〜10ミルの範囲が好ましい。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0146】
以下、第1の発明の実施例1〜9及び比較例1〜15として、表1に示すような互いに異なる材料特性を有する、チタニア及びアルミナの各3種(チタニアA、B、C、及びアルミナA、B、C)を材料に用いた構造体1〜24を作製した。
【0147】
実施例1
セル隔壁の材料として、アルミナB原料粉、水、バインダーの混練原料を用い、押出成形してから焼成して、四角セル構造で、直径が40mm、長さが40mm、セル隔壁(リブ)厚さが4mil(0.102mm)、セル密度が600cpsi、セルピッチが1.037mmのハニカム構造体(構造体1)を作製した。アルミナBは、材料特性として、貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数(α):8.40×10-6[1/K]、材料比熱(C):820[J/kgK]、材料密度(ρ):1900[kg/m3]、材料熱伝導率(λ):14[W/mK]、材料ヤング率(リブ1枚曲げ)(E):40×103[MPa]、を有するものである。以上の材料特性及びセル構造データをまとめて表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
表1に示すデータを用い、構造体1について前記式(11)の右辺の各変数を算出した結果、ハニカム体積当たり幾何学的表面積(GSA)は、3.48×103[m2/m3]、ハニカムセル水力直径(HD)は、0.000935[m]、セル熱容量(c)は、290347.6[J/m3K]、ハニカムセル熱伝導率(λC)は、1.371714[W/mK]であった。計算式を下記式(25)〜(29)に示す。
【0150】
GSA[m2/m3]=4×(セルピッチ[m]−リブ厚[m])/(0.0254)2×セル密度[cpsi] …(25)
【0151】
HD[m]=セルピッチ[m]−リブ厚[m] …(26)
【0152】
ρC[kg/m3]=材料密度[kg/m3]×{1−(セルピッチ[m]−リブ厚[m])2/(セルピッチ[m])2} …(27)
【0153】
セル熱容量[J/m3K]=材料比熱[J/kgK]×ハニカム構造かさ密度[kg/m3] …(28)
【0154】
ハニカムセル熱伝導率[W/mK]=材料熱伝導率[W/mK]×リブ厚[m]/セルピッチ[m] …(29)
【0155】
なお、前述のように、C1を決定するための代表時間t0及び、代表長さLについては、λg=0.061W/mK、Nu=3.77を想定し、L=0.04m、t0=5sec、ΔT=500Kを選択して得られるC1=1.61×10-2を採用した。以上の前記式(11)の右辺の変数の計算結果をまとめて表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
さらに、表2の数値を用いて前記式(11)の右辺を計算した結果、右辺:8.00×10-4が得られた。一方、作製した構造体1からリブ1枚を切り出して実測した材料の強度は、35[MPa]であったので、これを材料ヤング率(リブ1枚曲げ)で割って、左辺:8.75×10-4を得た。従って、この構造体1は、前記式(11)を満たすことがわかる。以上の結果をまとめて表3に示す。なお、表3においては、構造体が前記式(11)を満たす場合には〇、満たさない場合には×として示した。
【0158】
また、得られた構造体1の耐熱性の評価のため、下記のガスバーナーを用いた熱サイクル試験を行った。すなわち、構造体1から、直径が40mmで、長さが40mmのサンプルを切り出し、ガスバーナーによる熱風と冷風を三方弁で切り替えながら、サンプルに交互に通じ、加熱(サンプルの入口側のガス温度900℃で10分間)と冷却(サンプルの入口側のガス温度200℃で10分間)を10サイクル繰り返した後に、サンプルのクラックや割れの発生の有無を目視により観察した。この結果を表3に示す。なお、表3においては、構造体にクラックや割れの発生が認められなかった場合には〇、認められた場合には×として示した。
【0159】
実施例2〜9、及び比較例1〜15
セル隔壁の材料及びセル構造を表1に示すものに変えたこと以外は実施例1と同様にして、構造体2〜24を作製した。得られた構造体2〜24の、表1に示すデータを用い構造体2〜24について前記式(11)の右辺の各変数の算出結果を表2に示す。さらに、表2の数値を用いて前記式(11)の右辺を計算した結果、材料強度の実測値、材料強度の実測値を材料ヤング率(リブ1枚曲げ)で割った左辺の値、左辺の値が前記式(11)を満たすか否か及びガスバーナーの熱サイクル試験におけるサンプルのクラックや割れの発生の有無の観察結果をまとめて表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
図26は、本発明の実施例で得られた構造体(前記式(11)を満たす構造体)は、クラックや割れの発生が認められず、比較例で得られた構造体(式(11)を満たさない構造体)はクラックや割れの発生が認められることを示すグラフである。図26に示すように、前記式(11)を満たす構造体(実施例1〜9)と満たさない構造体(比較例1〜15)とは、前記式(11)の等号の場合の直線グラフを境界として、2つの領域に区分けされるが、これらの2つの領域は、クラックや割れの発生が認められない領域とクラックや割れの発生が認められる領域とにそれぞれ合致することがわかる。
【0162】
以下、参考例10〜21及び比較例16〜19として、表4〜表8に示すようなアルミナC、チタニアA、チタニアBを材料に用いた構造体25〜40を作製した。
【0163】
参考例10
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた構造体25を、実施例1と同様にして作製した。この構造体25には、図2(d)に示すような形状でスリット4を入れた構造のものとした。なお、図2(d)におけるスリット4の形状は、ハニカム構造体10の上端面14に露出するスリット4の長さをハニカム構造体10の直径の3/10(具体的には30mm)、また、スリット4のハニカム外壁上に露出した中心軸方向の長さを、ハニカム外壁の全長に亘る100mmとした。得られた構造体25の体積は785cm3、重量は、270gであった。また、この構造体25を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃(750℃まではクラック発生が認められなかった)と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表4に示す。
【0164】
電気炉による耐熱衝撃性試験
室温の試料を400℃に保持された電気炉に入れ、20分間経過後、試料を取り出して室温まで冷却した後、クラックの発生の有無を目視で確認した。クラックの発生がなければ、電気炉の温度を50℃ずつ上昇させ、同様な試験を繰り返した。最終的に、クラックが発生した温度を「破壊温度」とした。
【0165】
参考例11〜13
参考例10において、セル外形、セル密度、スリットの形状を表4に示すように変えたこと以外は参考例10と同様にして構造体26〜28を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表4に示す。
【0166】
【表4】
【0167】
参考例14
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた構造体29を、実施例1と同様にして作製した。この構造体29は、図13(c)に示すような形状で一辺の長さが35mmの正方形で、長さが100mmの第1のセグメント13を4個と周囲の異形(断面の長辺が35mm、長さが100mm)の第1のセグメント8個とを抱き合わせてセメントで接合した構造のものとした。得られた構造体29の体積は785cm3、重量は、270g(セメント分は除く)であった。また、第1のセグメント13のアスペクト比((L1)/(P1))は、100/35=2.86であった。この構造体29を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表5に示す。
【0168】
参考例15〜16
参考例14において、材料、セル外形、セル密度、第1のセグメントの構造を表5に示すように変えたこと以外は参考例14と同様にして構造体30〜31を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表5に示す。
【0169】
【表5】
【0170】
参考例17
セル外形(直径が100mm、長さが120mm(間隔も含む)、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いた第2のハニカムセグメントを三段に分割した形状に構成してなる構造体32を、実施例1と同様にして作製した。この構造体32は、図17に示すような形状で長さが33.3mmの第2のセグメント15を3段に積層した構造のものとした。得られた構造体32の体積は785cm3、重量は、270gであった。また、第2のセグメント15のアスペクト比[(P2)/(L2)]は、100/33.3=3.0であった。この構造体32を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、800℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表6に示す。
【0171】
参考例18〜19
参考例17において、材料、セル外形、セル密度、第2のセグメントの構造を表6に示すように変えたこと以外は参考例17と同様にして構造体33〜34を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表6に示す。
【0172】
【表6】
【0173】
参考例20
セル外形(直径が100mm、長さが100mm、隔壁の厚さが101.6μm)、セル密度が400(cpsi)の、アルミナCを用いたセル隔壁の、排ガスの貫流方向(中心軸方向)に配設した一以上の切り欠き部を備えた構造体35を、実施例1と同様にして作製した。この構造体35は、図18に示すような形状で一以上の切り欠き部16を備えた構造のものとした。得られた構造体35の体積は785cm3、重量は、270gであった。この構造体35を、電気炉による耐熱衝撃性試験を行ったところ、破壊温度は、750℃と極めて良好であった。以上の結果をまとめて表7に示す。
【0174】
参考例21
参考例20において、材料、セル外形、セル密度を表7に示すように変えたこと以外は参考例20と同様にして構造体36を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表7に示す。
【0175】
【表7】
【0176】
比較例16〜19
熱応力緩和手段(参考例10におけるスリットの形成、参考例14における第1のセグメントへの分割、参考例17における第2のセグメント構造の形成及び参考例20における切り欠き部の形成)を施さなかったこと、並びに材料、セル外形、セル密度、体積、重量を表8に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして構造体37〜40を作製した。その結果及び耐熱衝撃性試験の結果をまとめて表8に示す。
【0177】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の排ガス浄化用ハニカム構造体及び排ガス浄化用ハニカム触媒体は、例えば、自動車排ガス浄化用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0179】
1:セル、2:セル隔壁、3:ハニカム外壁、4:スリット、4a:分岐部、4b:応力緩和部、5、5a、5b、5c、5d、5e、5f:ハニカム外壁の端面、6、6a、6b、6c:端面エッジ部、7:連結部、10:排ガス浄化用ハニカム構造体、13:第1のハニカムセグメント、14:接合層、15:第2のハニカムセグメント、16:切り欠き部、20:テストピース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、前記セル隔壁上に担持される触媒層又は前記セル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、
前記セル隔壁が、アルミナまたはチタニアであって、材料特性及びセル構造に関し、下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(1)
(式(1)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚曲げ)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m])をそれぞれ示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化用ハニカム構造体の、前記セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又は前記セル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項3】
前記触媒層又は触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである請求項2に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項4】
前記触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である請求項2に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項5】
前記SCR触媒材料が、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;アルカリ金属酸化物;及びアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものである請求項4に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項1】
複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセルの複合体を囲繞して保持するハニカム外壁とから構成され、前記セル隔壁上に担持される触媒層又は前記セル隔壁中に含有される触媒によってセル内を貫流する排ガスを浄化する排ガス浄化用ハニカム構造体であって、
前記セル隔壁が、アルミナまたはチタニアであって、材料特性及びセル構造に関し、下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム構造体。
σ/E≧0.0161・α・(GSA)/{HD・(ρC・C・λC)0.5} …(1)
(式(1)中、σ[MPa]は材料強度(リブ1枚曲げ)、E[MPa]は材料ヤング率(リブ1枚曲げ)、α[1/K]は貫流方向に対して垂直な方向のハニカム熱膨張係数:ただし、α≧1×10-6、GSA[m2/m3]はハニカム体積当たり幾何学的表面積、HD[m]はハニカムセル水力直径、ρC[kg/m3]はハニカム構造かさ密度、C[J/kgK]は材料比熱、λC[W/mK]はハニカムセル熱伝導率=λ・b/p(ここで、λは材料熱伝導率[W/mK]、bはリブ厚[m]、pはセルピッチ(リブの間隔)[m])をそれぞれ示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化用ハニカム構造体の、前記セル隔壁上に触媒層が担持されてなる又は前記セル隔壁中に触媒が含有されてなることを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項3】
前記触媒層又は触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するものである請求項2に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項4】
前記触媒層又は触媒が、SCR(Selective Catalytic Reduction)反応の主触媒及び助触媒又はそのいずれかの作用を有するSCR触媒材料である請求項2に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【請求項5】
前記SCR触媒材料が、貴金属;V、VI、VII、VIII族遷移金属;希土類酸化物;これらの二種以上の複合酸化物又はこれらの少なくとも一種とZrとの複合酸化物;アルカリ金属酸化物;及びアルカリ土類酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものである請求項4に記載の排ガス浄化用ハニカム触媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−41946(P2011−41946A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211246(P2010−211246)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2001−224975(P2001−224975)の分割
【原出願日】平成13年7月25日(2001.7.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2001−224975(P2001−224975)の分割
【原出願日】平成13年7月25日(2001.7.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]