説明

排ガス浄化用触媒及びその製造方法

【課題】 内燃機関のコールドスタート時に触媒の温度を速やかに昇温させて活性化させることを、重量増加や経時劣化少なく実現する排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】 触媒活性を有する貴金属粒子11と、吸放熱材料13とを備える排ガス浄化用触媒である。この吸放熱材料13は、水和反応により発熱する第1の化合物粒子14と、この第1の化合物粒子14の水和反応に用いられる水分子を透過可能な細孔を有し、かつ、当該第1の化合物粒子に非固溶な第2の化合物15とからなり、かつ、この第1の化合物粒子14が、この第2の化合物15により覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を除去するために、アルミナ(Al)等の金属酸化物担体に白金(Pt)等の貴金属粒子を担持した排ガス浄化用触媒が広く利用されている。
【0003】
これらの排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排気管の途中に配設されたハニカム基材の内壁の表面上に形成される。内燃機関の運転時には、排ガス浄化用触媒は、排ガスに触れて加熱され、所定の活性温度の範囲で排ガス中の有害物質を無害なガスに変換する。しかしながら、内燃機関の始動(コールドスタート)時のように、排ガス浄化用触媒が活性温度に達していない場合は、排ガスの浄化が十分でないことがある。
【0004】
そこで、コールドスタート時においても排ガスを十分に浄化するために、できるだけ速やかに排ガス浄化用触媒を活性な温度に昇温させる方策が種々に試みられている。例えば、排ガス浄化用触媒中の貴金属量を多くして、排ガスに含まれるHC、CO、Hの低温時における酸化反応を活発化させ、この酸化反応熱により排ガス浄化用触媒を早期に昇温させる排ガス浄化用触媒がある。また、ハニカム基体の内壁面上に、マイクロ波で加熱可能な誘電体からなる第1コート層を設け、この第1コート層の誘電体を、マグネトロンにより発生させるマイクロ波により加熱し、これにより第1コート層上の触媒成分層を加熱する排ガス浄化用触媒がある(特許文献1)。更に、希土類元素を添加した触媒周囲の雰囲気を、内燃機関の停止時に還元性雰囲気とし、内燃機関を始動する直前に酸化性雰囲気に切り替えて、この酸化性雰囲気による触媒自体の酸化反応熱により触媒を早期に昇温させる排ガス浄化方法がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平4−131137号公報
【特許文献2】特開2005−337133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、触媒の早期加熱のために、排ガス浄化用触媒に貴金属量を多量に使用することは、産出量が少ない貴金属の資源保全の面から好ましくなく、また、排ガス浄化用触媒のコストアップにもつながる。また、誘電体からなる第1コート層をマイクロ波により誘導加熱することは、マイクロ波を発生させるためのマグネトロンを車両に搭載する必要があるため、車両の重量増加を招く。更に、排ガス浄化用触媒の雰囲気を、内燃機関の始動前後で切り替える制御をすることは、内燃機関の停止と同時又は直後に、ガソリン等の有機物、アンモニア又は水素といった還元剤触媒に噴射する必要があり、噴射及びその制御のための装置を要するので、車両の重量増加を招くとともに、排ガス浄化装置の複雑化を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒活性を有する貴金属粒子と、吸放熱材料とを備え、この吸放熱材料は、水和反応により発熱する第1の化合物粒子と、この第1の化合物粒子の水和反応に用いられる水分子を透過可能な細孔を有し、かつ、当該第1の化合物粒子に非固溶な第2の化合物とからなり、かつ、この第1の化合物粒子が、この第2の化合物により覆われていることを要旨とする。
【0007】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、水和反応により発熱する第1の化合物粒子の前駆体を分散させたコロイド溶液を調製した後、このコロイド溶液中の第1の化合物の前駆体の粒子の周囲に、第2の化合物を形成させ、その後に焼成して吸放熱材料を作製する工程と、触媒活性を有する貴金属を含む活性点材料と、前記吸放熱材料とを耐熱性無機酸化物で担持する工程とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒によれば、吸放熱材料を貴金属粒子と共に有していることから、この吸放熱材料が内燃機関の始動時に発熱することにより、当該排ガス浄化用触媒を速やかに活性温度まで昇温させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の排ガス浄化用触媒の実施形態について、図面を用いつつ説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る排ガス浄化用触媒の一実施形態について、粒子の構造を模式的に示す断面図である。図1に示した排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子11を備えている。この貴金属粒子11は、触媒活性を有する貴金属よりなり、有害な成分を含む排ガスと接触して無害化する作用を果たす。この貴金属粒子11は、耐熱性酸化物よりなる担体12の表面上に担持されている。図示したように貴金属粒子11が担体12に担持される構造は、排ガス浄化用触媒として一般的なものである。
【0011】
担体12に担持された貴金属粒子11の近傍に、吸放熱材料13が配設されている。この吸放熱材料13は、第1の化合物粒子14と、この第1の化合物粒子14の周囲に形成されることにより、この第1の化合物粒子14を覆う第2の化合物15とからなる。
【0012】
第1の化合物粒子14は、水分を加えることにより水和物を生成する水和反応の際に発熱し、かつ、この水和物を加熱することによる脱水反応(吸熱反応)により元の物質に可逆的に変化するものである。第1の化合物粒子14の材料については後で詳述するが、例えばマグネシア(MgO)がある。また、第2の化合物15は、その第2の化合物15の表面から内部の第1の化合物粒子14まで通じる複数の細孔16を有している。この細孔16は、この第1の化合物粒子の水和反応に用いられる水分子(水蒸気分子)を透過可能なサイズになっている。第2の化合物15の材料は、第1の化合物粒子14とは非固溶の化合物であって、後で詳述するが、例えば、セリア(CeO2)やジルコニア(ZrO2)がある。なお、この図1に示した吸放熱材料13は、本発明に係る吸放熱材料の理解を容易にするために模式的に図示されたものであり、実際の粒子は、細孔16の数や第2の化合物15の厚さなどについて、図1に示したものに限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る排ガス浄化用触媒の作用効果について述べる。この排ガス浄化用触媒は、ハニカム基体の貫通孔の内壁面上に層状に形成される。このハニカム基体が内燃機関の排気管の途中に設けられることにより、排ガス浄化用触媒中に含まれる貴金属粒子11は、内燃機関から排出されてハニカム基体の貫通孔を通過する排ガス中の有害物質を、所定の活性温度の範囲で無害なガスに変換する。そして、この貴金属粒子11の近傍に吸放熱材料13が配設されることにより、内燃機関のコールドスタート時には、吸放熱材料13が排ガス中に含まれる水蒸気により発熱反応を生じ、水和物を生じさせるとともに発熱し、吸放熱材料13近傍の貴金属粒子11を加熱する。したがって、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子11が吸放熱材料13によって速やかに昇温されて活性化するから、コールドスタート時のような低温時においても排ガスを速やかに、かつ十分に浄化することが可能となる。
【0014】
また、吸放熱材料13は、水和反応により水和物(例えば、水酸化物)を生じさせる材料であるから、コールドスタート時においては、この吸放熱材料13が、排ガス中の水蒸気と反応することにより、この排ガス中の水蒸気の濃度が一時的に低下する。排ガス中の水蒸気(水分)は、排ガス浄化用触媒の触媒活性点(貴金属粒子)への排ガス中の有害成分(HC、CO、NO等)の吸着阻害を引き起こすため、排ガス浄化には好ましくない成分である。本実施形態に係る排ガス浄化用触媒は、コールドスタート時に吸放熱材料13との反応により排ガス中の水蒸気の濃度が一時的に低下するため、水蒸気による有害成分の吸着阻害を抑制することができ、よって排ガス浄化用触媒のさらなる早期活性化を図ることができる。
【0015】
内燃機関の始動後における定常運転時にあっては、排ガス浄化用触媒中の吸放熱材料13は、排ガス等から熱を受けて脱水反応を生じ、水和物から元の酸化物等に可逆的に戻る。この酸化物等の状態は、内燃機関の停止後においても維持され、内燃機関がコールドスタートする時になって、前述したように排ガス中の水蒸気と反応して発熱する。
【0016】
なお、内燃機関を長い期間にわたって停止している場合には、排ガス浄化用触媒中の吸放熱材料13が空気中の水蒸気を吸湿することにより、徐々に水和反応を生じることがある。このような内燃機関の停止時における吸放熱材料13の水和反応を防止するために、排ガス浄化用触媒近傍に、水蒸気を含む空気が流入することを妨げる手段を講ずることができる。例えば、排ガス浄化用触媒が塗布形成されているハニカム基体のガス入側部及び出側部のそれぞれに、着脱自在な蓋体を設けるとともに、この蓋体をハニカム基体に取り付け、取り外しする駆動装置と、この駆動装置を運転状況に応じて動作させるための制御装置とを設けて、内燃機関の運転状況に応じた、蓋体のハニカム基体への取り付け取り外を可能にすることができる。また、ハニカム基体が設けられている排気管の当該ハニカム基体の前後に、流路を開閉可能なバルブを設けて、ハニカム基体の前後の空気の移動を遮断できるようにすることもできる。
【0017】
吸放熱材料13は、第1の化合物粒子14が第2の化合物により覆われている。この第1の化合物粒子は、水和反応及び脱水反応により可逆的に水和物に変化する材料、例えばMgOであって、第1の化合物のみであっても、吸放熱材料13としての機能を果たし得る。しかしながら、発明者らの研究により、吸放熱材料13が第1の化合物粒子14のみからなる場合には、長期間の使用により、吸放熱材料としての機能が劣化するおそれがあることを知見した。詳述すれば、通常の吸放熱材料、例えば、MgO(酸化マグネシウム)などは、その水和反応により発熱したとき、各粒子の表面エネルギーを減少させようとする方向、つまり粒子の表面積が減少する方向に物質移動が生じる。それにより、隣り合うMgO粒子同士が結合して、MgO粒子自身が凝集してしまう。MgO粒子自身が凝集すると、MgO粒子の表面積が減少するので、吸放熱材料として水分子と反応する接触面積が減少する。この吸放熱材料粒子の凝集による水分子との接触面積の減少により、吸放熱材料として第1の化合物粒子のみを用いたときに吸放熱材料としての機能が劣化するおそれがあることを見出した。この吸放熱材料粒子の凝集は、単に吸放熱材料粒子が高純度であったり、粒子径を揃えたものであったりしても、解決できるものではなかった。
【0018】
そこで、本実施形態の排ガス浄化用触媒の吸放熱材料13は、第1の化合物粒子の凝集を抑制すべく、吸放熱する機能を有する第1の化合物粒子14が、第2の化合物15により覆われている。このことにより、第2の化合物15によって第1の化合物粒子14同士の接触が抑制されて凝集が抑制される。また、第2の化合物15は、水分子を透過可能な多数の細孔16を有していることから、水分子はこの細孔16を通して第1の化合物粒子14に接触することができるので、第2の化合物15が形成されていても水分子と第1の化合物粒子14との接触面積の低下は抑制されている。以上のことから、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、吸放熱材料13の第1の化合物粒子14を第2の化合物で包接・固定化することで、この第1の化合物粒子14の凝集劣化を抑制して経時劣化を少なくつつ、高エネルギー密度の熱の吸放出が可能となるので、排ガス浄化用触媒の早期活性化を長期間安定して維持することができる。
【0019】
図1に示した実施形態においては、吸放熱材料13が、貴金属粒子11が担持されている担体12に担持されず、すなわち、吸放熱材料13が担体12に非接触になっている。このような実施形態の排ガス浄化用触媒は、例えば貴金属粒子11が担持されている担体12の粉末と、吸放熱材料13の粉末とを混合したスラリーをハニカム基体の内壁面上に塗布形成することにより得られる。
【0020】
本発明に係る排ガス浄化用触媒は、図1に示された実施形態に限定されるものではない。例えば、吸放熱材料13が、貴金属粒子11が担持される担体12と同一の担体に配設される実施形態とすることもできる。このような実施形態の一例を、模式的な断面図で図2に示す。
【0021】
図2に示した実施形態の排ガス浄化用触媒は、図1に示した排ガス浄化用触媒と比べると、吸放熱材料13が、貴金属粒子11を担持した担体12に担持されて接している。それ以外の構成については、図1に示した実施形態とは同様である。したがって、図2に示す各部材について、既に述べたことと重複する説明は省略する。
【0022】
図2に示した実施形態の排ガス浄化用触媒は、吸放熱材料13が、貴金属粒子11を担持した担体12と同一の担体に配設されている。このため、吸放熱材料13が、貴金属粒子11の近傍に確実に位置することになるから、吸放熱材料13の発熱作用を、よりいっそう活用することが可能となる。
【0023】
本発明に係る排ガス浄化用触媒の他の実施形態を、図3に模式的な断面図で示す。図3に示す排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子21と、この貴金属粒子21の周囲に形成されている多孔質の耐熱性無機酸化物22と、この耐熱性無機酸化物22の内部で貴金属粒子21に近接して配設されている化合物粒子23とを備えている。
【0024】
貴金属粒子21及び化合物粒子23は、多孔質の耐熱性無機酸化物22に包接されることにより担持され、この耐熱性無機酸化物22の多数の孔を通して排ガスと接触可能になっている。
【0025】
化合物粒子23は、水分を加えることにより水和物を生成する水和反応の際に発熱し、かつ、この水和物を加熱することによる脱水反応(吸熱反応)により元の物質に可逆的に変化するものであって、本発明における吸放熱材料の第1の化合物である。
【0026】
耐熱性無機酸化物22は、化合物粒子23とは非固溶の酸化物である。化合物粒子23を覆うこの耐熱性無機酸化物22は、本発明における吸放熱材料の第2の化合物に相当する。
【0027】
図3に示した実施形態の排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子21が、耐熱性無機酸化物22により包接されることにより、貴金属粒子21同士の接触、凝集が抑制される。したがって、貴金属粒子21の表面積の低下による触媒活性の低下を抑制することが可能となる。
【0028】
また、化合物粒子23が貴金属粒子21に近接して設けられることにより、図1で説明した実施形態と同様に、内燃機関のコールドスタート時には、化合物粒子23が排ガス中に含まれる水蒸気により発熱反応を生じ、水和物を生じさせるとともに発熱し、化合物粒子23近傍の貴金属粒子21を加熱する。したがって、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子21が化合物粒子23によって速やかに昇温されて活性化するから、コールドスタート時のような低温時においても排ガスを速やかに、かつ十分に浄化することが可能となる。また、コールドスタート時においては、この化合物粒子23が、排ガス中の水蒸気と反応することにより、この排ガス中の水蒸気の濃度が一時的に低下する。そのため、水蒸気による有害成分の吸着阻害を抑制することができ、よって排ガス浄化用触媒のさらなる早期活性化を図ることができる。
【0029】
更に、化合物粒子23が、耐熱性無機酸化物22により包接されることにより、貴金属粒子21同士の接触、凝集が抑制される。したがって、化合物粒子23の経時劣化を少なくつつ、高エネルギー密度の熱の吸放出が可能となるので、排ガス浄化用触媒の早期活性化を長期間安定して維持することができる。しかも、化合物粒子23が、耐熱性無機酸化物22により包接されることにより、貴金属粒子21の近傍に確実に位置することになるから、吸放熱材料13の発熱作用を、よりいっそう活用することが可能となる。
【0030】
図3に示した実施形態の排ガス浄化用触媒を得るには、例えば貴金属粒子21と化合物粒子23とをそれぞれ準備した後、これらの貴金属粒子21及び化合物粒子23を、耐熱性無機酸化物22の原料を含む溶液中に加えた後、溶液中の固形分を焼成すればよい。
【0031】
貴金属粒子21が、耐熱性無機酸化物22により包接される態様の排ガス浄化用触媒は図3に示された実施形態に限られない。別の実施形態の排ガス浄化用触媒を模式的に断面図で図4に示す。図4に示される実施形態は、図3に示した実施形態と比べると、耐熱性無機酸化物22の周囲に、別の化合物粒子24が形成されている。それ以外の構成については、図3に示した実施形態とは同様である。したがって、図4に示す各部材について、既に述べたことと重複する説明は省略する。
【0032】
別の化合物粒子24は、耐熱性無機酸化物22とは実質的に非固溶な別の材料からなり、別の化合物粒子24が耐熱性無機酸化物22の周囲に配設されることにより、耐熱性無機酸化物22の粒子同士が接触、凝集することを抑制する。そのため、貴金属粒子21の触媒活性及び化合物粒子23の発熱作用を、よりいっそう活用することが可能となる。
【0033】
これまで図1〜図4を用いて説明した各実施形態の排ガス浄化用触媒について、より好ましい態様を以下に説明する。
【0034】
図1及び図2に示された実施形態における第1の化合物粒子14並びに図3及び図4に示された実施形態における化合物粒子23の粒子径は、10nm以下であることが好ましい。吸放熱する機能を有する第1の化合物粒子14及び化合物粒子23の粒子径が10nm以下であることにより、10nmを超える場合よりも飛躍的に表面積が増大し、優れた吸放熱特性を示す。第1の化合物粒子14及び化合物粒子23の粒子サイズを小さくすることで、水分子との反応面積が増え、その結果、発熱反応時に著しい温度上昇効果を得ることができる。さらに、この粒子径を10nm以下の所定の粒子径に制御することで、発熱量(温度上昇)あるいは、発熱速度を制御することが可能となる。
【0035】
図1及び図2に示された実施形態における第2の化合物15並びに図3及び図4に示された実施形態における耐熱性無機酸化物22が備える細孔16の大きさは、それぞれ第1の化合物粒子14及び化合物粒子23の粒子径よりも小さいことが好ましい。第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22の細孔が、第1の化合物粒子14や化合物粒子23よりも小さいことで、これらの第1の化合物粒子14や化合物粒子23が、第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22の細孔16を通り抜けて移動し、第1の化合物粒子14同士、化合物粒子23同士で凝集するのを抑制しつつ、第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22が具備する水分子の透過機能を保持することが可能となる。
【0036】
第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22の細孔16の大きさの下限は、水分子が通過可能な大きさとして定まる。水分子の直径が、0.3nm弱と非常に小さいことから、細孔16の大きさの下限は0.3nm弱となる。もっとも、第2の化合物15や耐熱性無機酸化物として用いることができる通常の材料においては、第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22の細孔16の大きさを、第1の化合物粒子14や化合物粒子23の粒子径よりも小さい構成とすれば、細孔16の大きさは、水分子の透過機能に支障はない。
【0037】
第1の化合物粒子14及び化合物粒子23は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物であることが好ましい。これらの化合物で水和反応より発熱し、吸熱反応により元の化合物に可逆的に変化する材料を、第1の化合物粒子14や化合物粒子23に適用することができる。これらの化合物は、排ガス浄化用触媒の使用温度域により、任意に選択可能となる。内燃機関の排ガス温度は、内燃機関の出力の程度や排気弁からの距離によって異なるが、例えば、吸熱プロセスにおいて、吸放熱材料である第1の化合物粒子14が得ることができる温度域が、150℃であればCaOを、300℃であればMgOを、650℃であればPr2O3を、そして、1000℃であればLi2Oなどを選択して適用することができる。
【0038】
上掲した種々の金属化合物のなかでも、単位重量あたりの吸発熱量に優れるのは、MgOである。さらに、MgOは300℃程度の比較的、廃熱利用しにくい温度域でも、Mg(OH)2→MgO+H2O反応が進行する(吸熱可能である)という特性も有する。したがって、排ガス浄化用触媒の使用温度にもよるが、第1の化合物粒子14や化合物粒子23として、マグネシウム化合物、なかでもMgOを採用することは好適である。
【0039】
第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22は、CeO2、ZrO2、TiO2及びSiO2から選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22の材料は、第1の化合物粒子14や化合物粒子23を覆って、この第1の化合物粒子14同士や化合物粒子23同士の凝集を抑制する。その作用を発揮させるためには、第1の化合物粒子14や化合物粒子23と固相反応(いわゆる固溶)が生じない化合物を選択することができ、上掲したCeO2、ZrO2、TiO2及びSiO2は、その要件を満たす。また、CeO2、ZrO2、TiO2及びSiO2は、いずれも、微小な粒子又は繊維の集合体として第1の化合物粒子14の周囲に形成させることができ、よって前述した所定の細孔を形成することができる材料である。第1の化合物粒子14と第2の化合物15との組み合わせの例、又は化合物粒子23と耐熱性無機酸化物22との組み合わせの例としては、第1の化合物粒子14や化合物粒子23がMgOであれば、第2の化合物15や耐熱性無機酸化物22としてCeO2をMgOの周囲に配置することで、MgO粒子と反応することなく、MgO粒子の粗大化を抑制して安定に維持することが可能となる。
【0040】
貴金属粒子11、21は、排ガス浄化用触媒に用いられる従来公知の貴金属を適用することができる。また、貴金属粒子11の担体12についても、排ガス浄化用触媒に用いられる従来公知の担体材料を適用することができる。
【0041】
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法の一実施形態を、図5に示す製造方法の説明図を用いつつ述べる。本発明に係る排ガス浄化用触媒の製造方法の一実施形態においては、水和反応により発熱する第1の化合物粒子の前駆体を分散させたコロイド溶液を調製した後、このコロイド溶液中の第1の化合物の前駆体の粒子の周囲に、第2の化合物を形成させ、その後に焼成して吸放熱材料を作製する工程と、触媒活性を有する貴金属を含む活性点材料と、前記吸放熱材料とを耐熱性無機酸化物で担持する工程とを備えている。
【0042】
これらの工程を含む製造方法において、まず吸放熱材料を作製するには、10nm以下の第1の化合物粒子31又はその前駆体を、コロイド材を含む液中に微細分散したコロイド状態で形成する。(図5(a))。コロイド溶液中で微小な第1の化合物粒子31又はその前駆体を分散させることにより、第1の化合物粒子31又はその前駆体が、製造工程中に互いに接触・凝集することが抑制され、その結果、製造後の吸放熱材料について、第1の化合物粒子31の表面積を著しく大きくすることができる。特に、第1の化合物粒子31の粒子径が10nm以下であることにより、第1の化合物粒子31の表面積は粒子径が10nmを超える場合と比べて格段に大きくなる。第1の化合物粒子31又はその前駆体は、従来公知のものを用いることができ、また、コロイド材32には、例えばPVP(ボリビニルピロリドン)等の公知の材料を用いることができる。また、第1の化合物粒子31又はその前駆体と、コロイド材32との量比を調整することにより、第1の化合物粒子31の粒径を調整することができる。
【0043】
次に、このコロイド溶液中の第1の化合物粒子31又はその前駆体の周囲に、第2の化合物32を形成させる。第1の化合物粒子31又はその前駆体が分散したコロイド溶液と、別途調整した第2の化合物32又はその前駆体の溶液とを混合することで、第1の化合物粒子31又はその前駆体の周囲に第2の化合物32を形成させることができる(図5(b))。第2の化合物を形成させるためには、例えばゾルゲル法を用いることができ、このため、コロイド溶液と、第2の化合物32の金属アルコキシドを含む溶液とを混合することは好ましい。この第2の化合物32又はその前駆体の溶液(例えば、金属アルコキシド溶液)の濃度を調整することにより、第2の化合物32の細孔サイズを調整することができる。なお、この細孔サイズの調整は、第2の化合物32又はその前駆体の溶液中における当該第2の化合物32又はその前駆体の濃度調整に限られず、例えば、次に述べる焼成時の焼成条件を調整することによっても調整可能である。
【0044】
その後に、当該コロイド溶液をろ過し、ゲルを乾燥、焼成して吸放熱材料34を得る(図5(c))。この吸放熱材料34は、必要に応じて粉砕して粒子径を調整することもできる。
【0045】
得られた吸放熱材料34は、触媒活性を有する貴金属を含む活性点材料と共に、耐熱性無機酸化物に担持させる。担持させる方法は、例えばゾルゲル法を用いることができるが、ゾルゲル法に限定されるものではない。この工程により、同一担体(耐熱性無機酸化物)に吸放熱材料と触媒活性点とを共存させることができ、その結果、吸放熱材料から生じる熱の逸散が少なく、吸放熱材料による蓄熱エネルギーの効率的な利用が可能となる。
【0046】
上記の工程を経て得られた排ガス浄化用触媒は、図6(a)に斜視図で示されるようなハニカム基体41の内壁面上に塗布される。ハニカム基体41を貫通孔に垂直な面で切断した断面の一部を拡大して図6(b)に示す。同図に示されるように、排ガス浄化用触媒のコート層42は、ハニカム基体41の格子状の内壁により形成された矩形断面の貫通孔の表面上に形成される。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
<吸放熱材料調製>
酢酸Mg水溶液とポリビニルピロリドン(PVP)とイオン交換水とを、PVP/Mgモル比が8になる量で容器に投入し、1時間攪拌した後、100℃まで5℃/分の昇温速度で昇温し、5wt%−PVP−Mgコロイド溶液(平均粒径4nm)を作成した。
【0048】
一方、セリウムイソプロポキシドを、溶媒(ヘキシレングリコール)に10wt%になるように調整した量で別の容器に投入し、100℃で1時間攪拌後、この容器に上記したPVP−Mgコロイド溶液を投入した。
【0049】
その後、得られたゲルを乾燥・焼成することで、実施例1用の吸放熱材料を得た。得られた吸放熱材料粉末の組成は、MgO(65%)/CeO2(残余)であった。この粉末におけるMgOの粒子径は4nm、CeO2の細孔径を測定すると、3nmであった。
【0050】
<触媒粉末調製>
所定量のジニトロジアミンPt硝酸酸性水溶液に、γアルミナを攪拌しながら投入し、1時間連続攪拌後、120℃で1時間、空気中で乾燥し、更に、400℃で1時間、空気中で焼成して、Pt(0.3wt%)/γ−アルミナ触媒粉末を得た
<ハニカム触媒化>
上記実施例1の吸放熱材料を90.9g、上記触媒粉末を90.9g、ベーマイトを24.6g及びイオン交換水を293.6g分取し、磁性アルミナポットに、10mmφのアルミナボールと共に投入、粉砕して、触媒スラリを得た。得られたスラリを、0.119Lのコーディエライト製ハニカム担体(400cpsi/6ミル)に塗布し、空気気流にて余剰スラリを除去し、80℃で乾燥後、400℃まで、3〜5℃/minの昇温速度で昇温し、1時間、空気気流中で焼成した。
【0051】
得られた実施例1の触媒ハニカム担体は、担体1Lあたり、Pt量0.3g/L、吸放熱材料100g/Lであった。
【0052】
[実施例2]
<触媒金属含有−吸放熱材料調製>
酢酸Mg水溶液とポリビニルピロリドン(PVP))とイオン交換水とを、PVP/Mgモル比が8となる量で容器に投入し、1時間攪拌した後、100℃まで5℃/分の昇温速度で昇温し、5wt%−PVP−Mgコロイド溶液(平均粒径4nm)を作成した。
【0053】
また、市販の平均粒径5nmのセリアゾルにジニトロジアミンPtを投入し、Pt(1.5%)/セリアゾルを調製した。
【0054】
一方、セリウムイソプロポキシドを、溶媒(ヘキシレングリコール)に10wt%になるように調整した量で別の容器に投入し、100℃で1時間攪拌後、この容器に上記したPVP−Mgコロイド溶液と、Pt/セリアゾルとの混合溶液を投入した。
【0055】
その後、得られたゲルを乾燥・焼成し、実施例2用の触媒金属含有・吸放熱材料を得た。得られた吸放熱材料粉末の組成は、Pt(0.3wt%)/MgO(65%)/CeO2(残余)であった。この粉末におけるMgOの粒子径は4nm、CeO2の細孔径を測定すると、3nmであった。
【0056】
<ハニカム触媒化>
上記実施例2用の吸放熱材料を90.9g、セリア粉末を90.9g、ベーマイトを24.6g及びイオン交換水を293.6g分取し、磁性アルミナポットに、10mmφのアルミナボールと共に投入、粉砕して、触媒スラリを得た。得られたスラリを、0.119Lのコーディエライト製ハニカム担体(400cpsi/6ミル)に塗布し、空気気流にて余剰スラリを除去し、80℃で乾燥後、400℃まで、3〜5℃/minの昇温速度で昇温し、1時間、空気気流中で焼成した。
【0057】
得られた実施例2の触媒ハニカム担体は、担体1Lあたり、Pt量0.3g/L、吸放熱材料100g/Lであった。
【0058】
[実施例3]
実施例1の、PVP/Mgモル比を1.2にし、セリウムイソプロポキシドの溶液濃度を40wt%にした以外は同様にして、実施例3の触媒ハニカム担体を得た。得られた吸放熱材料粉末の組成は、MgO(65%)/CeO2(残余)であった。この粉末におけるMgOの粒子径は10nm、CeO2の細孔径を測定すると、9nmであった。
【0059】
[実施例4]
酢酸Pr水溶液とポリビニルピロリドン(PVP))とイオン交換水とを、PVP/Prモル比が8となる量で容器に投入し、1時間攪拌した後、100℃まで5℃/分の昇温速度で昇温し、5wt%−PVP−Prコロイド溶液(平均粒径6nm)を作成した。
【0060】
一方、ジルコニウムイソプロポキシドを、溶媒(ヘキシレングリコール)に30wt%になるように調整した量で別の容器に投入し、100℃で1時間攪拌後、この容器に上記したPVP−Prコロイド溶液を投入した。
【0061】
その後、得られたゲルを乾燥・焼成し、以下は実施例1と同様にして実施例4のハニカム担体を得た。実施例4の排ガス浄化用触媒の吸放熱材料粉末の組成は、PrO2(65%)/ZrO2であった。この粉末におけるPrO2の粒子径は6nm、ZrO2の細孔径を測定すると、10nmであった。
【0062】
[実施例5]
酢酸La水溶液とポリビニルピロリドン(PVP)とイオン交換水とを、PVP/Laモル比が6になる量で容器に投入し、1時間攪拌した後、100℃まで5℃/分の昇温速度で昇温し、5wt%−PVP−Laコロイド溶液(平均粒径4nm)を作成した。
【0063】
一方、所定量のセリウムイソプロポキシドを、溶媒(ヘキシレングリコール)に30wt%になるように調整した量で別の容器に投入し、100℃で1時間攪拌後、この容器に上記したPVP−Laコロイド溶液を投入した。
【0064】
その後、得られたゲルを乾燥・焼成し、以下は実施例1と同様にして実施例5のハニカム担体を得た。実施例5の排ガス浄化用触媒の吸放熱材料粉末の組成は、La2O3(65%)/CeO2(残余)であった。この粉末におけるLa2O3の粒子径は6nm、CeO2の細孔径を測定すると、10nmであった。
【0065】
[実施例6]
酢酸Mg水溶液とポリビニルピロリドン(PVP)とイオン交換水とを、PVP/Mgモル比が8になる量で容器に投入し、1時間攪拌した後、100℃まで5℃/分の昇温速度で昇温し、5wt%−PVP−Mgコロイド溶液(平均粒径4nm)を作成した。
【0066】
一方、セリウムイソプロポキシドを、溶媒(ヘキシレングリコール)に40wt%になるように調整した量で別の容器に投入し、100℃で1時間攪拌後、この容器に上記したPVP−Mgコロイド溶液を投入した。
【0067】
その後、得られたゲルを乾燥・焼成し、以下は実施例1と同様にして、実施例6のハニカム担体を得た。実施例6の排ガス浄化用触媒の吸放熱材料粉末の組成は、MgO(65%)/CeO2(残余)であった。この粉末におけるMgOの粒子径は4nm(この粉末の細孔径を測定すると、9nmであった。
【0068】
[比較例1]
実施例1の排ガス浄化用触媒と比較して、吸放熱材料についてMgOをセリウムで包接する工程を経ない以外は同様にして、比較例1の触媒ハニカム担体を得た。
【0069】
[比較例2]
比較例2は、吸放熱材料を具備しない排ガス浄化用触媒の例である。
【0070】
<触媒粉末調製>
所定量のジニトロジアミンPt硝酸酸性水溶液に、γアルミナを攪拌しながら投入し、1時間連続攪拌後、120℃で1時間、空気中で乾燥し、更に、400℃で1時間、空気中で焼成し、Pt(0.3wt%)/γ−アルミナ触媒粉末を得た。
【0071】
<ハニカム触媒化>
上記触媒粉末を90.9g、γアルミナを90.9g、ベーマイトを24.6g及びイオン交換水を293.6g分取し、磁性アルミナポットに、10mmφのアルミナボールと共に投入、粉砕して、触媒スラリを得た。得られたスラリを、0.119Lのコーディエライト製ハニカム担体(400cpsi/6ミル)に塗布し、空気気流にて余剰スラリを除去し、80℃で乾燥後、400℃まで、3〜5℃/minの昇温速度で昇温し、1時間、空気気流中で焼成した。
【0072】
得られた比較例3の触媒ハニカム担体は、担体1Lあたり、Pt量0.3g/Lであった。
【0073】
かくして得られた各実施例及び各比較例の排ガス浄化用触媒40ccを、模擬排気ガス流通装置に組み込み、以下の表1に示す組成の模擬排気ガスを流通させつつ昇温して、内燃機関のコールドスタートの模擬試験を行った。この模擬試験における模擬排気ガスの空間速度SVは90000 h-1であり、150〜450℃を5℃/分の昇温速度で昇温させた。また、昇温開始時に、反応ガスへの水分添加を開始した。この模擬試験における500℃における入口側及び出口側のHC濃度から、各排ガス浄化用触媒それぞれの500℃におけるHC浄化率(ηHC)%を算出した。
【0074】
また、図7に示すサイクル耐久試験を100回行った後をサイクル耐久後状態として、この初期状態及びサイクル耐久後状態についてHC浄化率を調べた。
【0075】
図7に示すサイクル耐久試験は、各試料粉末を、水蒸気10%/残部Heの組成の雰囲気にて200℃で30分間保持する時間と、He雰囲気にて所定の温度(第1の化合物の水酸化物の分解温度以上の温度)で20分間保持する時間とを、昇温時間の5分間と降温時間の2分間とを挟んで1サイクルとした試験であり、吸放熱材料の吸放熱反応に対応するモデル試験である。
【0076】
各実施例及び比較例の評価結果を、初期状態、サイクル耐久試験後の結果で表2に示す。なお、表2には、吸放熱材料が、貴金属粒子と同一の担体粉末上に担持されているか否かをYES/NOで示した。
【表1】

【表2】

【0077】
表2から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6は、吸放熱材料を含まない比較例2と対比して、初期状態におけるHC浄化率に優れており、コールドスタート時において吸放熱材料により低温時から優れた触媒活性を有している。また、これらの実施例1〜6は、サイクル耐久試験後の触媒活性も優れており、この点は、比較例1との対比により明白である。すなわち、比較例1は、吸放熱材料を含んでいるものの、この吸放熱材料が第2の化合物を具備していないことから、吸放熱材料が凝集して表面積が低下することにより、サイクル耐久試験後には吸放熱材料を含むことによる発熱効果が顕著に低下したものと考えられる。それに対して、実施例1〜6は、サイクル耐久試験後においても発熱効果の低下が少なく、長期間にわたって優れた性能を発揮している。
【0078】
実施例1〜6のなかでも、吸放熱材料の第1の化合物粒子の粒子径が、この第1の化合物粒子を覆う第2の化合物の細孔径よりも大きい例は、サイクル耐久試験後は発熱効果の劣化の程度が、より小さかった。
【0079】
また、吸放熱材料が貴金属粒子と同一の担体粉末上に担持されている実施例2は、初期状態の排ガス浄化温度が低く、低温時から特に優れた触媒活性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態の排ガス浄化用触媒の模式的な断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の排ガス浄化用触媒の模式的な断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の排ガス浄化用触媒の模式的な断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の排ガス浄化用触媒の模式的な断面図である。
【図5】本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法の一例の説明図である。
【図6】排ガス浄化用触媒が塗布形成されたハニカム基体の説明図ある。
【図7】サイクル耐久試験の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
11 貴金属粒子
12 担体
13 吸放熱材料
14 第1の化合物粒子
15 第2の化合物
21 貴金属粒子
22 耐熱性酸化物
23 第1の化合物粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性を有する貴金属粒子と、
吸放熱材料と
を備え、
この吸放熱材料は、水和反応により発熱する第1の化合物粒子と、
この第1の化合物粒子の水和反応に用いられる水分子を透過可能な細孔を有し、かつ、当該第1の化合物粒子に非固溶な第2の化合物とからなり、かつ、この第1の化合物粒子が、この第2の化合物により覆われていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記吸放熱材料が、前記貴金属粒子が担持される担体と同一の担体に配設されることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記吸放熱材料の第1の化合物粒子の粒子径が、10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記吸放熱材料の第2の化合物の細孔の大きさが、前記第1の化合物粒子の粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記吸放熱材料の第1の化合物粒子が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記吸放熱材料の第2の化合物が、CeO2、ZrO2、TiO2及びSiO2から選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記吸放熱材料の第1の化合物粒子が、マグネシウム化合物よりなることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
水和反応により発熱する第1の化合物粒子の前駆体を分散させたコロイド溶液を調製した後、このコロイド溶液中の第1の化合物の前駆体の粒子の周囲に、第2の化合物を形成させ、その後に焼成して吸放熱材料を作製する工程と、
触媒活性を有する貴金属を含む活性点材料と、前記吸放熱材料とを耐熱性無機酸化物で担持する工程と
を備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第1の化合物粒子の前駆体は、粒径が10nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−330864(P2007−330864A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163732(P2006−163732)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】