説明

排ガス浄化用触媒及びその製造方法

【課題】NOxを浄化能に優れたRhの酸化抑制を行うことによって、ガソリンエンジン用三元触媒で用いられるようなストイキ雰囲気における活性の向上、低温浄化性の向上、及び使用量の低減が可能な排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属酸化物からなる担体と、担体に担持されたAu及びRhを含む複数の複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒であって、複合微粒子の中心部がAuを最大成分とする組成を有し、複合微粒子の外周部がRhを最大成分とする組成を有する、排ガス浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、二輪車などのエンジンから排出される排ガス中に含まれる有害成分を除去する排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関するものであり、特にRh及びAuを含む排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などのエンジンから排出される排ガスには、HC、CO、NOx等の有害成分が含まれている。これらの有害な排ガスを分解除去するために、アルミナ、セリア等の金属酸化物担体に、Pt、Pd、Rh等の白金族元素を主成分とする触媒粉末をコートした排ガス浄化用触媒が用いられており、特に、理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO、HC、NOxを同時に酸化・還元して浄化することができる三元触媒がよく用いられている。
【0003】
上記白金族元素において、Rhは、O2共存下でもNOx還元能に優れることが知られており、ガソリンエンジン用三元触媒として欠かせない元素であるが、希少金属で非常に高価な上に価格変動が激しく、材料リスク低減のため、Rh使用量の低減が求められている。
【0004】
同時に、近年、世界的に自動車の排ガス規制が強化されてきており、LEVIIIやEURO6等の規制強化に対応するための触媒性能の向上が求められている。また、近年、ハイブリッド車のように、エンジンの停止と運転を頻繁に繰り返す車両が多くなってきているが、排気ガスに含まれるNOx等はエンジン冷間始動直後が最も多く、低温における触媒活性の向上も必要である。
【0005】
Rhは酸化されると、その活性が低下するため、上記のような三元触媒に限らず、Rhの酸化抑制をし得る材料開発が必要と考えられるが、そのようなコンセプトでの実施例は報告されていない。例えば、特許文献1には、PtとPdの2元素を用いて行った実施例が記載されているが、Rhについては元素が挙げられているのみで具体的に示されておらず、この方法では、Rhの酸化を抑制し得る触媒を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−194384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Rhの酸化抑制を十分に行うためには、Rhと、例えばAu等の酸化しにくい他元素とを原子レベルで近接させた触媒が有効と考えられる。しかしながら、RhとAuは固溶体を形成しないため、原子レベルで互いに近接して存在させることは非常に困難である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、NOx浄化能に優れたRhの酸化抑制を行うことによって、ガソリンエンジン用三元触媒で用いられるようなストイキ雰囲気における活性の向上、低温浄化性の向上、及び使用量の低減が可能な排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属酸化物からなる担体と、担体に担持されたAu及びRhを含む複数の複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒であって、
複合微粒子の中心部がAuを最大成分とする組成を有し、複合微粒子の外周部がRhを最大成分とする組成を有する、排ガス浄化用触媒である。
【0010】
本発明はまた、金属酸化物からなる担体と、担体に担持され、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する複数のRh/Au複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
Rh塩、Au塩、保護高分子、還元剤、及び水を混合して、少なくとも最初にAuを析出させ、次いでAuの周囲にRhを析出させて、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製する工程;
金属酸化物担体粉末を水中に分散させた金属酸化物担体分散液を調製する工程;
保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子分散液と、金属酸化物担体分散液とを混合し、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子を金属酸化物担体に担持させる工程;並びに
Rh/Au複合微粒子から、保護高分子を焼成除去する工程、
を含む、
排ガス浄化用触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化用触媒及びその製造方法によれば、金属酸化物の担体に、Rh原子とAu原子とを含む複数の複合微粒子を担持させ、その複合微粒子が、複合微粒子の中心部においてAuを最大成分とする組成を有し、複合微粒子の外周部においてRhを最大成分とする組成を有するため、NOに対してRhの還元浄化特性を高めることができ、また優れた低温浄化性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のRh/Au複合微粒子を担持した触媒の模式図である。
【図2】担体に担持したRh/Au複合微粒子の走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察像である。
【図3】担体に担持したRh/Au複合微粒子についての、走査型透過電子顕微鏡−エネルギー分散X線分析(STEM−EDX)による組成分析結果である。
【図4】Rh/Au複合微粒子担持触媒のNO浄化特性を示すグラフである。
【図5】Rh/Au複合微粒子担持触媒のRh/Au複合微粒子の粒径によるNO浄化特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の排ガス浄化用触媒は、金属酸化物からなる担体と、担体に担持されたRh及びAuを含む複数のRh/Au複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒であり、Rh/Au複合微粒子は、その中心部がAuを最大成分とする組成を有し、外周部がRhを最大成分とする組成を有する。
【0014】
本発明において、Rh/Au複合微粒子とは、数十〜数万個程度のRh原子とAu原子が原子レベルで組み合わされた活性種であり、図1に模式的に示すように、RhとAuの原子が1つの粒子内に共存した構成を有し、中心部はAuの濃度が高く、外周部はRhの濃度が高い複合金属粒子である。
【0015】
Rh/Au複合微粒子の中心部においてAuが最も多く存在し、複合微粒子の外周部においてRhが最も多く存在することによって、AuがRhの酸化を抑制してRhの高活性な状態を維持することができ、且つ複合微粒子がRhによる活性点を表面に多く有することができるため、排ガスに含まれるNOxに対して優れた浄化能を示すことができる。
【0016】
本明細書において、Rh/Au複合微粒子の中心部とは、Rh/Au複合微粒子の略中心であり、Rh/Au複合微粒子の外周部とは、Rh/Au複合微粒子の外縁から5nmの範囲であり、特に外縁から3nmの範囲をいう。
【0017】
本発明におけるRh/Au複合微粒子中のRhは、排ガス浄化用触媒としての使用中に可逆的な酸化還元を示し得る。Rhの表面は酸化され得るが、Auの作用によって容易に還元され得る。
【0018】
好ましくは、Rh/Au複合微粒子の中心部において、Au及びRhの総量を基準としてAuの濃度は90原子%以上であり、Rh/Au複合微粒子の外周部において、Au及びRhの総量を基準としてRhの濃度は50原子%以上である。さらに好ましくは、Rh/Au複合微粒子の中心部にはAuのみが含まれ、外周部にはRhのみが含まれる。
【0019】
複合微粒子の中心部及び外周部における組成は、実施例において説明するように、走査型透過電子顕微鏡−エネルギー分散X線分析(STEM−EDX)によって測定することができる。
【0020】
Rh/Au複合微粒子の外周部において、Au及びRhの総量を基準としてRhの濃度が50原子%未満であると、不活性なAuがRh/Au複合微粒子の表面を占める割合が多すぎて触媒活性が発現しにくくなる。また、Rh/Au複合微粒子の中心部において、Auの濃度が90原子%未満であると、Rh/Au複合微粒子はRh及びAuの2元素粒子であるから、その分だけコア−シェル構造が乱れてくるため、複合微粒子の表面を占めるRhの割合が減少することになり、触媒活性が発現しにくくなる。
【0021】
本明細書において、Auの濃度が高い中心部及びRhの濃度が高い外周部を有する構造を、コア−シェル構造と呼ぶ。
【0022】
Rh/Au複合微粒子は、Rh及びAuを主成分とするが、他の微量成分を含んでもよい。
【0023】
Rh/Au複合微粒子の平均粒径は10nm〜25nmであることが好ましい。Rh/Au複合微粒子の平均粒径がこの範囲の場合、さらに触媒によるNOの低温浄化能が向上する。
【0024】
Rh/Au複合微粒子のRhを最大成分とする外周部の平均厚みは、約0.2〜5nmが好ましく、約1〜3nmがさらに好ましい。Rhを最大成分とする外周部の平均厚みが薄すぎる場合、Rh/Au複合微粒子の表面にRhが存在しない箇所が多くなりNOに対する活性が小さくなる恐れがあり、Rhを最大成分とする外周部の平均厚みが厚すぎる場合、AuによるRhの酸化抑制効果が小さくなる恐れがある。
【0025】
Rh/Au複合微粒子の粒径は、実施例において説明するように、Rh/Au複合微粒子分散液を乾燥した試料の走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察像に基づいて直径寸法を測定することによって得ることができる。この場合、少なくとも100個のRh/Au複合微粒子の直径を測定することが好ましい。
【0026】
本発明はまた、金属酸化物からなる担体と、担体に担持されたAu及びRhを含む複数の複合微粒子を備える排ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【0027】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、Rh塩、Au塩、保護高分子、還元剤、及び水を混合して、水溶液中に溶解させたAu塩及びRh塩から生成したAuイオン及びRhイオンが保護高分子と錯体を形成し、少なくとも最初にAuを還元析出させ、次いでAuの周囲にRhを還元析出させて、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製することができる。
【0028】
そして、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子分散液を、金属酸化物担体粉末を分散させた担体分散液と混合することによって、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子を担体に担持させ、次いで保護高分子を焼成除去することにより、Rh/Au複合微粒子を単体に担持させた触媒粉末を得ることができる。
【0029】
本発明におけるコア−シェル構造を有するRh/Au複合微粒子は、AuイオンとRhイオンとの酸化還元電位の差を利用して、最初にAuを還元析出させ、次いでRhを還元析出させることによって形成され得る。本発明においては、Auの析出後にRhが析出することが望ましいが、Auの析出が完了する前にRhの析出が始まってもよい。
【0030】
本発明においては、Rh塩、Au塩、保護高分子、還元剤、及び水を混合した水溶液を加熱還流して、Auイオン及びRhイオンの還元反応を促進することができる。
【0031】
あらかじめ水中に保護高分子を溶解させた保護高分子分散液を調製しておき、これに、Rh塩、Au塩、及び還元剤を添加することができる。これにより、水溶液中に保護高分子をより均一に分散させることができ、より均一に分散した保護高分子とAuイオン及びRhイオンとの錯体を形成することができる。
【0032】
本発明においては、Rhイオン及びAuイオンが保護高分子と錯体を形成し、この錯体を形成した状態のRhイオン及びAuイオンが、還元されることによって、保護高分子に囲まれたRh/Au微粒子のコロイドを形成することができる。保護高分子同士は電子的に反発するため、凝集が抑制され、ナノオーダーのRh/Au複合微粒子を形成することができる。
【0033】
本発明において、Auを最初に還元析出し次いでRhを還元析出させる上で、AuとRhの還元析出するタイミングをできるだけずらすことが望ましいが、そのためには弱い還元作用を有する還元剤を使用することが好ましく、エタノール、プロパノール、ポリオール等のアルコールを使用することができる。強すぎる還元作用を有する還元剤を用いると、AuイオンとRhイオンが同時に還元されコア−シェル構造を形成しにくくなる。
【0034】
また、Rh塩及びAu塩としては、Auが最初に還元析出され、次いでRhが還元析出されるために、酸化還元電位の差がある程度大きい組み合わせがよい。
【0035】
Rh塩としては、例えば塩化ロジウム、酢酸ロジウム、硝酸ロジウム等を使用することができ、Au塩としては、例えば塩化金酸等を使用することができる。
【0036】
保護高分子としては、水溶液中でRhイオン及びAuイオンと錯体を形成してRh/Au複合微粒子の凝集を抑制することができる高分子を用いることができ、例えばポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸等を使用することができ、ポリビニルピロリドンとしてはPVP K−15、PVP K−25、PVP K−30等が挙げられる。
【0037】
Rh/Au複合微粒子を担体に担持させる方法は、従来から用いられている含浸法等の方法を使用することができる。
【0038】
担体としては、触媒担体として通常用いられる金属酸化物を使用することができ、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア等が挙げられる。またシリカ−アルミナ、ジルコニア−セリアなどの複合酸化物を用いることも可能である。
【0039】
水等に単体を分散させた担体分散液と、必要に応じて水等で希釈したRh/Au複合微粒子の分散液とを、130℃〜170℃程度で加熱攪拌し、分散媒を除去することによって、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子を金属酸化物担体に担持させた粉末を得ることができる。
【0040】
次いで、約100℃〜140℃で乾燥した後、乳鉢で粉砕し、約250〜350℃で焼成することにより、保護高分子を焼成除去して、Rh/Au複合微粒子を金属酸化物担体に担持させた触媒粉末を得ることができる。Rh/Au複合微粒子は担体上に任意の量で担持され得るが、担体質量基準で総金属量0.01%〜10wt%のRh/Au複合微粒子を担持させることが望ましい。また、得られた触媒粉末を約50〜300MPaで加圧プレスすることにより、ペレット状に成型することができる。
【実施例】
【0041】
本発明について、実施例、参考例、及び比較例を用いて具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
Rh/Au複合微粒子を担持した触媒の形成1
1Lのセパラブルフラスコに、PVP K−25(平均分子量35000)を6.7g(60.0mmol)入れ、イオン交換水375mlで完全に溶解させた。次いで、この溶液に、Au濃度30.3wt%のHAuCl4水溶液0.486g(0.75mmol)、Rh濃度8.3wt%のRhCl3水溶液0.926g(0.75mmol)、及びエタノール375mlを加えた。このAu塩及びRh塩を添加した溶液をバス温100℃で2時間加熱・還流した後、室温まで放冷した。次いで、この溶液を、液量が50mlになるまで濃縮し、Rh/Au複合微粒子分散液を調製した。
【0043】
調製したRh/Au複合微粒子分散液を300mLビーカーに入れ、水を加えて100mLに希釈し、マグネチックスターラーで攪拌した。別のビーカーを用意し、平均表面積100m2/gのアルミナ担体粉末を入れ、50mLの水を加えて分散させた。この担体粉末分散液を、上記の水で希釈したRh/Au複合微粒子分散液に加えて、150℃で加熱攪拌することにより、分散媒を除去した。次いで、120℃で12時間乾燥した後、乳鉢で粉砕し、空気中で30時間、300℃で焼成することにより、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を生成した。次いで、生成したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を98MPaで高圧成型することにより、ペレット状の触媒試料を形成した。
【0044】
(実施例2)
Rh/Au複合微粒子を担持した触媒の形成2
イオン交換水を75mlとし、エタノールを675mlとしたこと以外は実施例1と同様の方法で、Rh/Au複合微粒子分散液を調製した。
【0045】
そして、実施例1と同様の方法で、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を生成した。次いで、同様に、ペレット状の触媒試料を形成した。
【0046】
(実施例3)
Rh/Au複合微粒子を担持した触媒の形成3
エタノール675mlに代えて、1−プロパノール675mlを用いたこと以外は実施例2と同様の方法で、Rh/Au複合微粒子分散液を調製した。
【0047】
そして、実施例2と同様の方法で、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を生成した。次いで、同様に、ペレット状の触媒試料を形成した。
【0048】
(実施例4)
Rh/Au複合微粒子を担持した触媒の形成4
PVP K−25を3.3g(30.0mol)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、Rh/Au複合微粒子分散液を調製した。
【0049】
そして、実施例1と同様の方法で、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を形成した。次いで、同様に、ペレット状の触媒試料を作成した。
【0050】
(実施例5)
Rh/Au複合微粒子を担持した触媒の形成5
PVP K−25を3.3g(30.0mol)、Au濃度30.3wt%のHAuCl4水溶液を0.423g(0.375mmol)、及びRh濃度8.3wt%のRhCl3水溶液を0.463g(0.375mmol)としたこと以外は実施例3と同様の方法で、Rh/Au複合微粒子分散液を調製した。
【0051】
そして、実施例3と同様の方法で、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を形成した。次いで、同様に、ペレット状の触媒試料を作成した。
【0052】
(参考例1)
Rh微粒子を担持した触媒の形成
HAuCl4水溶液を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でRh微粒子分散液を調製した。
【0053】
そして、実施例1と同様の方法で、実施例1とRhの質量が同じとなるように担体質量基準で総金属量0.5wt%を担持したRh微粒子担持触媒粉末を生成した。次いで、同様に、ペレット状の触媒試料を形成した。
【0054】
(比較例1)
Rh/Auバルク混合触媒の形成
300mLビーカーに、Au濃度30.3wt%のHAuCl4水溶液0.486g(0.75mmol)と、Rh濃度8.3wt%のRhCl3水溶液0.926g(0.75mmol)とを入れ、水を加えて100mLに希釈し、マグネチックスターラーで10分間、攪拌した。
【0055】
別のビーカーに、表面積100m2/gのアルミナ担体粉末を入れ、50mLの水を加えて分散させた。この担体粉末分散液に、上記のAu塩及びRh塩を溶解させた水溶液を加えて、150℃で加熱攪拌することにより、分散媒を除去した。次いで、120℃で12時間乾燥した後、乳鉢で粉砕し、空気中で30時間、300℃で焼成することにより、担体質量基準で総金属量1.5wt%を担持したRh/Auバルク混合触媒粉末を生成した。次いで、形成したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を98MPaで高圧成型することにより、ペレット状の触媒試料を形成した。
【0056】
粒径及び組成分析
生成したRh/Au複合微粒子担持触媒粉末を、エタノールで50倍に希釈し、モリブデングリッドに滴下後乾燥させたものについて、走査型透過電子顕微鏡(STEM、日立製 HD−2000、加速電圧200kV)で観察した。
【0057】
図2に、実施例1で生成したRh/Au複合微粒子のSTEM観察像を示す。三谷商事株式会社製画像解析ソフトWinROOFを用いて、STEM観察像から、100個のRh/Au複合微粒子の直径を測定した。粒子の直径は円相当径である。実施例1で生成したRh/Au複合微粒子の平均粒径は21.9nmであった。同様にして、実施例2〜5の平均粒径はそれぞれ15.8nm、13.1nm、27.0nm、及び8.3nmであり、参考例1で生成したRh微粒子の平均粒径は2.6nmであった。
【0058】
また、図2の実施例1で生成したRh/Au複合微粒子のSTEM観察像における箇所1〜4について、STEM−EDXを用いて、加速電圧200kVの分析条件で、組成分析を行った。図3に組成分析結果を示す。
【0059】
Rh/Au複合微粒子の中心部を測定した箇所1及び3においては、Au及びRhの総量を基準としてAuの濃度がそれぞれ99原子%及び95原子%であり、Rh/Au複合微粒子の外周部を測定した箇所2及び4においては、Au及びRhの総量を基準としてRhの濃度がそれぞれ57原子%及び73原子%であった。このように、Rh/Au複合微粒子は、中心部ではAuを最大成分とする組成を有し、外周部ではRhを最大成分とする組成を有するコア−シェル構造を有していることが分かった。
【0060】
NO浄化率の評価
Rh/Au複合微粒子担持触媒粉末から成型したペレット状触媒試料について、CO 0.65%、C36 1000ppm、NO 1500ppm、O2 0.7%、CO2 10%、H2O 3%、N2バランスの総流量10L/分のサンプルガス(ストイキ)を、入ガス温度を室温から500℃に20℃/分で昇温させながら流通させて、入ガス中のNO量及び出ガス中のNO量を測定し、NO浄化率を連続的に測定した。
【0061】
図4に、実施例1のRh/Au複合微粒子担持触媒粉末及び比較例1のRh/Auバルク混合触媒粉末からそれぞれ成型したペレット状触媒試料2gを用いて、NO浄化率を測定したグラフを示す。ストイキ雰囲気において、実施例1のペレット状触媒試料は、比較例1のペレット状触媒試料に比べて、低温側の200℃から高温側の500℃の温度にわたって、NO浄化に対して高活性を示すことが分かった。
【0062】
NO低温浄化性の評価
Rh/Au複合微粒子担持触媒粉末から成型したペレット状触媒試料について、CO 0.65%、C36 1000ppm、NO 1500ppm、O2 0.7%、CO2 10%、H2O 3%、N2バランスの総流量10L/分のサンプルガス(ストイキ)を、入ガス温度を室温から500℃に20℃/分で昇温させながら流通させて、Rh/Au微粒子の粒径とNO50%浄化温度との関係を評価したグラフを示す。NO50%浄化温度とは、入りガスの温度を昇温させながら入ガス中のNO量及び出ガス中のNO量を連続的に測定したときに、出ガス中のNO量が入ガス中のNO量の半分になった温度をいう。
【0063】
図5に、実施例1〜5のRh/Au複合微粒子担持触媒粉末及び参考例1のRh微粒子担持触媒粉末からそれぞれ成型したペレット状触媒試料2gを用いて、NO50%浄化温度を測定したグラフを示す。
【0064】
参考例1のペレット状触媒試料と比べると、Rh/Au複合微粒子の粒径が10nm〜25nmのペレット状触媒試料のNO50%浄化温度が低くなり、低温浄化性に優れることが分かった。Rh/Au複合微粒子の粒径が約15〜20nmのときに、NO50%浄化温度がさらに低くなることが分かった。
【0065】
これらの結果から、Rhの一部に代えてAuを組み合わせることによってRhの使用量を低減しつつ、NOに対する触媒活性及び低温浄化性を向上することができることが分かった。
【符号の説明】
【0066】
1 Rh/Au複合微粒子
2 Rh原子
3 Au原子
4 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる担体と、前記担体に担持されたAu及びRhを含む複数の複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記複合微粒子の中心部がAuを最大成分とする組成を有し、前記複合微粒子の外周部がRhを最大成分とする組成を有する、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記複合微粒子の中心部において、Au及びRhの総量を基準としてAuの濃度が90原子%以上であり、前記複合微粒子の外周部において、Au及びRhの総量を基準としてRhの濃度が50原子%以上である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記複合微粒子の平均粒径が10nm〜25nmである、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
金属酸化物からなる担体と、前記担体に担持され、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する複数のRh/Au複合微粒子とを備える排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
Rh塩、Au塩、保護高分子、還元剤、及び水を混合して、少なくとも最初にAuを析出させ、次いで前記Auの周囲にRhを析出させて、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製する工程;
金属酸化物担体粉末を水中に分散させた金属酸化物担体分散液を調製する工程;
前記保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子分散液と、前記金属酸化物担体分散液とを混合し、前記保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子を前記金属酸化物担体に担持させる工程;並びに
前記Rh/Au複合微粒子から前記保護高分子を焼成除去する工程、
を含む、
排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記Rh/Au複合微粒子分散液を調製する工程が、
Rh塩、Au塩、保護高分子、還元剤、及び水を混合して水溶液を調製する工程;並びに
前記水溶液を加熱還流して、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製する工程、
を含む、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記Rh/Au複合微粒子分散液を調製する工程が、
水中に保護高分子を溶解させた保護高分子分散液を調製する工程;
Rh塩、Au塩、及び還元剤を前記保護高分子分散液に添加して水溶液を調製する工程;並びに
前記水溶液を加熱還流して、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製する工程、
を含む、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記Rh/Au複合微粒子分散液を調製する工程が、
水中に保護高分子を溶解させた保護高分子分散液を調製する工程;
Rh塩、Au塩、及び還元剤を前記保護高分子分散液に添加して水溶液を調製する工程;
前記水溶液中に溶解させた前記Au塩及びRh塩から生成したAuイオン及びRhイオンが前記保護高分子と錯体を形成する工程;並びに
前記錯体を形成したAuイオン及びRhイオンが還元され、中心部がAuを最大成分とする組成を有し外周部がRhを最大成分とする組成を有する、保護高分子に覆われたRh/Au複合微粒子が分散したRh/Au複合微粒子分散液を調製する工程、
を含む、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記還元剤がアルコールである、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記保護高分子がポリビニルピロリドンである、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−179573(P2012−179573A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45416(P2011−45416)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】