説明

排ガス浄化装置

【課題】 高電圧の作用により排ガスを浄化する排ガス浄化装置において、PMの堆積に起因する電極間の漏電を抑制する。
【解決手段】 ハニカム構造体10の上流側の端面と帯電用電極20とが所定距離a離間させる。ハニカム構造体10の上流側の端面にPMが堆積した場合にも、帯電用電極20と、受電極としての外周電極15との間の漏電のおそれを抑制できる。帯電用電極20と電界形成用電極25とを別体としたので、これら帯電用電極20と電界形成用電極25に個別に給電することにより、各電極の目的に応じた給電を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置、特にディーゼルエンジンやリーンバーンエンジン等の排気系に設けられ、排ガス中に含まれるPM(Particulate Matter;粒子状物質)を捕捉する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス中のPMを除去するための技術として、多孔質のハニカム構造体を用いたDPF(Diesel Particulate Filter)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このDPFは、例えばハニカム構造体の上流側の端面から下流側の端面まで貫通した複数の開口部のうち、一部の開口部を上流側の端部で栓詰し、他の開口部を下流側の端部で栓詰することにより、上流側の開口した開口部から流入した排ガスが、多孔質の隔壁を通って濾過され、下流側の開口した開口部から排出されると、その際に排ガス中のPMが隔壁に捕集されるようにしている。
【0003】
他方、上流端および下流端で開口した筒状の対向電極と、この対向電極の上流端の近傍から対向電極の軸心を貫いて延びる1本の棒状の内部電極とを備えた装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、内部電極によって帯電させられた排ガス中のPMが、その電位と両電極間の電界との相互作用によって、対向電極に吸着される。吸着されたPMの一部は燃焼して焼却され、また両電極間の高電圧の印加によりプラズマ状態が生じ、NOxなどの物質の分解が促進される。
【0004】
【特許文献1】特公平6−29545号公報
【特許文献2】特開2004−19534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の装置の対向電極の内部に、多数のセルを有するハニカム構造体を設置することを考えた場合、ハニカム構造体の前端部に堆積するPMによって、内部電極と対向電極との間で漏電が生じてしまい、浄化性能が低下するおそれがあると考えられる。
【0006】
そこで本発明の目的は、高電圧の作用により排ガスを浄化する排ガス浄化装置において、PMの堆積に起因する電極間の漏電のおそれを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、受電極と電界形成用電極との間に、多数のセルを有するハニカム構造体を備え、前記受電極と前記電界形成用電極との間に形成される電界によって、排ガス中の所定の物質を前記ハニカム構造体に吸着させる排ガス浄化装置であって、排ガス中の前記所定の物質を帯電させる帯電用電極を、前記電界形成用電極に対し上流側に更に備え、当該帯電用電極と、前記ハニカム構造体の上流側の端面とが、所定距離離間させられていることを特徴とする排ガス浄化装置である。
【0008】
第1の本発明では、排ガス中のPMが帯電用電極によって帯電され、その下流側で、電界形成用電極と受電極との間の電界の作用によって、ハニカム構造体に吸着される。ここで第1の本発明では、ハニカム構造体の上流側の端面と帯電用電極とが所定距離離間させられているので、ハニカム構造体の上流側の端面にPMが堆積した場合にも、帯電用電極と受電極との間の漏電のおそれを抑制できる。
【0009】
第2の本発明は、請求項1に記載の排ガス浄化装置であって、前記受電極が筒状であり、前記ハニカム構造体が前記受電極に囲まれた領域に配置され、前記電界形成用電極が前記ハニカム構造体に挿通されていることを特徴とする排ガス浄化装置である。
【0010】
第2の本発明では、筒状の受電極の内側にハニカム構造体を配置した構成において、第1の本発明と同様の効果を得ることができる。
【0011】
第3の本発明は、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置であって、前記帯電用電極と前記電界形成用電極とに個別に給電する高圧電源を更に備えたことを特徴とする排ガス浄化装置である。
【0012】
第3の本発明では、帯電用電極と電界形成用電極とに個別に給電することにより、これら帯電用電極および電界形成用電極のそれぞれの目的に応じた給電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る排ガス浄化装置の実施形態につき、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態の排ガス浄化装置1の概略構成図であり、図2はその要部であるハニカム構造体10を示す断面図である。排ガス浄化装置1は、不図示のエンジン(ディーゼルまたはリーンバーンガソリンエンジン等)の排気系に設けられる。
【0015】
排ガス浄化装置1は、金属製のケース2を備え、このケース2の内側に支持されたハニカム構造体10を有している。ハニカム構造体10の外周面には、受電極である円筒形の外周電極15が形成されている。外周電極15とケース2との間は、図示しないアルミナマットなどにより密封されている。なお、本実施形態のようにケース2とは別途に外周電極15を設ける構成に代えて、ケース2に外周電極の機能を持たせてもよい。
【0016】
図2に示されるように、ハニカム構造体10は、多孔質の隔壁11により仕切られた多数のセルすなわち排ガス通路12を備えており、排ガス通路12はいずれも排ガスの流入方向(図中A方向)に平行である。排ガス通路12の上流側の一部の開口部、および上流側の開口部が開放されている排ガス通路12の下流側の開口部が、詰栓13によって閉塞されている。
【0017】
ハニカム構造体10は多孔質のセラミックス材料からなり、具体的にはコーディエライトやSiC(炭化珪素)等を用いるのが好適である。ハニカム構造体10の排ガス通路を除く基材部(壁部)の気孔率は60〜80%とし、平均細孔径を20ないし60μmとする。
【0018】
ハニカム構造体10の隔壁11には、触媒物質として、例えばLi=3mol/L、Pt=5g/L、コート材をAlとするNOx吸蔵還元触媒(NSR;NOx Storage Reduction catalysis)がコーティングされている。NOx吸蔵還元触媒のコート量は、例えば300g/Lとする。
【0019】
なお、一般に用いられるハニカム構造体における隔壁の気孔率は一般に55ないし60%、隔壁の平均細孔径は9ないし30μmであるところ、本実施形態では気孔率を60〜80%とし、かつ隔壁の平均細孔径を20〜60μmとしたので、排ガスが多孔質の隔壁11を通って濾過されるウォールフロー型の構造を採用しつつ、比較的低い排気抵抗を実現できる。また、一般に触媒物質の担持量は150g/L程度であるところ、本実施形態では触媒物質の担持量を100ないし400g/Lのように比較的大きい値にすることができ、かつ触媒物質を担持させた状態においても排気抵抗を抑制することができる。
【0020】
ハニカム構造体10に対し排ガスの流れ方向における上流側には、帯電用電極20が配置されている。帯電用電極20はハニカム構造体10の軸心の延長上に延びており、その前端部はケース2の外側に突き出ている。帯電用電極20は、棒状の電極本体21の表面の一部を碍子等の絶縁層22で被覆してなる。絶縁層22による被覆割合は、エンジン排気量、PM排出量により規定され、エンジン排気量やPM排出量が多い場合ほど、絶縁層22による被覆割合を低くするのが好適である。電極本体21には、ケース2の外側で金属結線23が接続されている。帯電用電極20とハニカム構造体10の上流側の端面とは、所定距離a離間させられている。この距離aは、ハニカム構造体10の上流側の端面にPMが最大限に堆積した場合にも帯電用電極20とハニカム構造体10の上流側の端面との間で導通が生じないような距離とする。
【0021】
外周電極15に囲まれたハニカム構造体10の内部には、電界形成用電極25が配置されている。電界形成用電極25はハニカム構造体10の軸心上に延びており、その後端部はケース2の外側に突き出ている。電界形成用電極25は、棒状の電極本体26の表面の一部または全体を碍子等の絶縁層27で被覆してなる。電極本体26には、ケース2の外側で金属結線28が接続されている。
【0022】
なお、電極本体21,26は、耐腐食性に優れたクロム鋼(例えば、10Cr5Al)で形成することができるが、それにのみ限定されるものではなく、他の耐腐食性を有する金属その他の導電体を用いることができる。絶縁層22,27はセラミックス等の高い耐熱性を有する材料であることが望ましいが、ディーゼルエンジンのように排気系の温度が低いエンジンの場合には、絶縁層22,27はアクリル樹脂など耐熱性の比較的低い材料であってもよい。
【0023】
ケース2および外周電極15は、電気的に接地されている。他方、帯電用電極20および電界形成用電極25に給電するための金属結線23,28は高圧電源30の互いに別個に構成された帯電用電源部30aおよび電界形成用電源部30bにそれぞれ接続されている。
【0024】
これら電源部30a,30bは、それぞれインバータ回路・トランス・整流用のダイオード・平滑回路等を含んでおり、不図示のバッテリからの直流を昇圧して帯電用電極20と電界形成用電極25とに給電する。電源部30a,30bは、帯電用電極20と電界形成用電極25とに個別に(すなわち、必要に応じて互いに異なる電圧や波形で)給電することができるように構成されている。高圧電源30からの給電は、例えば帯電用電極20に対しては交流のパルス波、電界形成用電極25に対しては直流とし、これらの電圧は5kV以上、例えば15〜30kV程度が好適であるが、これらに限られず直流、直流パルス、交流、または直流と直流パルスとの重畳など任意の波形および電圧を選択することができる。高圧電源30は電子制御ユニット(ECU)40からの制御出力によって制御される。
【0025】
ECU40は、図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含んでいる。ECU40の入出力ポートには、エンジン水温センサ41、エアフローメータ42、クランク角センサ43等が接続されており、ECU40ではこれらの検出信号に基づいて夫々の値が算出され、後述のとおり処理される。
【0026】
ECU40は、所定の制御プログラム等に従うと共に、各種のセンサ類からの内燃機関の状態を示す信号に基づいて、高圧電源30のインバータ回路を駆動するための駆動パルス信号(ゲート信号)や、高圧電源30からの出力電圧値を指示するための電圧指示信号を生成する。
【0027】
ECU40から駆動パルス信号と電圧指示信号が与えられると、高圧電源30では、直流電源からの直流電圧がインバータ回路によって交流電圧に変換され、トランスによって昇圧させられると共に必要に応じてダイオードにより整流され、これにより所定の電圧が後述のとおり出力されることになる。
【0028】
他方、ECU40のROMには、帯電用電極20と電界形成用電極25とに対する電圧値を補正するために、エンジン水温に応じた補正係数x1f,x1r、および機関負荷に応じた補正係数x2f,x2rの値を格納した補正係数マップが格納されている。
【0029】
図3に示されるように、補正係数x1fは、帯電用電極20への電圧値を補正するためのものであり、エンジン水温が低いときには1より小さい値をとり、エンジン水温が高くなるほど1を超えて値が漸増するように設定されている。補正係数x1fの値がこのように設定されているのは、一般に冷間時にはPMが比較的少ないからである。補正係数x1rは、電界形成用電極25への電圧値を補正するためのものであるが、ここではエンジン水温にかかわらず1に設定されている。
【0030】
図4に示されるように、補正係数x2fは、帯電用電極20への電圧値を補正するためのものであり、機関負荷が低いときには1より小さい値をとり、機関負荷が高くなるほど値が1を超えて漸増するように設定されている。補正係数x2rは、電界形成用電極25への電圧値を補正するためのものであり、機関負荷が低いときには1より小さい値をとり、エンジン水温が高くなるほど値が1の近傍の値に漸近するように設定されている。機関負荷は、例えばエアフローメータ42の検出値から算出される吸入空気量、およびクランク角センサ43の検出値から算出されるエンジン回転速度に基づいて算出される。これら機関負荷に応じた補正係数x2f,x2rの値がこのように設定されているのは、一般に高負荷時には供給されるPM量が増える一方、高負荷時にはPMが凝集しやすく、後段の電界形成用電極25による電界が小さくてもPMが吸着されやすいと考えられるからである。
【0031】
このように設定された各補正係数x1f,x1r,x2f,x2rは、高圧電源30の電源部30a,30bからの出力電圧に反映される。すなわち、帯電用電源部30aからの出力電圧Vfは、予め定められたベース電圧Vfbと補正係数x1f,x2fとの積によって決定される。また電界形成用電源部30bからの出力電圧Vrは、予め定められたベース電圧Vrbと補正係数x1r,x2rとの積によって決定される。これらの演算はECU40において実行される。
【0032】
以上のとおり構成された第1実施形態の排ガス浄化装置1では、エンジンから排出されたPMを含む排ガスが、排気管を通ってケース2内に導かれると、排ガスは上流端開口の排ガス通路12からハニカム構造体10内に侵入すると共に、多孔質の隔壁11を通過して、下流端開口の排ガス通路12から下流側に排出される。この過程で、PMは隔壁11によって濾過される。
【0033】
他方、エンジンの始動と同時に高圧電源30がオンされ、帯電用電極20、電界形成用電極25および外周電極15の間に高電圧が印加されると、排ガス中のPMが帯電用電極20からの放電によって負極に帯電され、また電界形成用電極25と外周電極15との間に電界が形成されるため、PMは電気的吸引力によりハニカム構造体10に向けて吸引される。この結果、ハニカム構造体10の隔壁11を通じて流通するPMの移動経路が偏向され、PMは隔壁11の気孔内に吸着されることになる。吸着されたPMは、高電圧の印加に伴って発生する活性ガスにより、その燃焼ないし酸化が促進されることになる。
【0034】
ここで、本実施形態では、ハニカム構造体10の上流側の端面と帯電用電極20とが所定距離aだけ離間させられているので、ハニカム構造体10の上流側の端面にPMが堆積した場合にも、帯電用電極20と外周電極15との間の漏電のおそれを抑制できる。
【0035】
また、本実施形態では、帯電用電極20と電界形成用電極25とに個別に給電することにより、これら帯電用電極20および電界形成用電極25のそれぞれの目的に応じた給電を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態では、図3に示されるように、帯電用電極20への電圧値を補正するための補正係数x1fを、エンジン水温が低いときには1より小さい値をとり、エンジン水温が高くなるほど1を超えて値が漸増するように設定したので、一般にPM量が比較的少ないと考えられる冷間時における電力消費を抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では、図4に示されるように、帯電用電極20への電圧値を補正するための補正係数x2fを、機関負荷が低いときには1より小さい値をとり、機関負荷が高くなるほど値が1を超えて漸増するように設定し、かつ、電界形成用電極25への電圧値を補正するための補正係数x2rを、機関負荷が低いときには1より小さい値をとり、エンジン水温が高くなるほど値が1の近傍の値に漸近するように設定したので、一般に供給されるPM量が増える高負荷時においてPMをよく帯電させることができ、且つPMが凝集しやすい高負荷時において電界形成用電極25における電力消費を抑制できる。しかしながら、このような制御方法は例示にすぎず、本発明では上記実施形態のようにエンジン水温、吸入空気量およびエンジン回転数のほか、他のパラメータ、例えばスロットル開度や、ハニカム構造体10の前後に設けた圧力センサからの圧力差によって検出される圧損、排ガス温度など、車両の状態に応じた各種の他の物理量を、制御のための入力変数として利用することができ、例えばこれらの入力変数に基づく推定においてPM量が多いときほど補正係数を漸増させる等の設定を行うことが可能である。
【0038】
なお、上記実施形態ではケース2におけるハニカム構造体10の上流側および下流側を屈曲させる一方、帯電用電極20および電界形成用電極25を直線状とし、給電経路と排気経路とを互いに異なる方向に偏向させることによって、絶縁層22,27がケース2を貫いて外部に引き出されるようにしたので、帯電用電極20および電界形成用電極25が排気経路中の全領域において絶縁層22,27に被覆され漏電を効果的に抑制することができる。しかしながら本発明では上記実施形態における各電極15,20,25のような構造に代えて例えばメッシュ状の電極を用いるなど、各電極の形状および構造についても種々の変形が可能である。
【0039】
また、上記実施形態ではハニカム構造体10の各セルを交互に封止して、排ガスが隔壁11を通過して濾過される所謂ウォールフロー型ないし濾過型の装置としたが、本発明ではハニカム構造体を栓詰せず静電気力によってPMを吸着する所謂ストレートフロー型の装置として構成してもよい。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、ハニカム構造体10は概ね円柱形であり、また電界形成用電極25がハニカム構造体10を貫通しているが、本発明におけるハニカム構造体の形状は任意であり、また電界形成用電極はハニカム構造体を貫通している必要はない。第2実施形態は、ハニカム構造体および電界形成用電極の形状および構造に関する別の構成例である。
【0041】
図5は本発明の第2実施形態の排ガス浄化装置101の概略構成図である。排ガス浄化装置101は、金属製の四角筒状のケース102を備え、また、このケース102の内側に支持されたハニカム構造体110を有している。
【0042】
ハニカム構造体110は、排ガスの流れ方向の断面がほぼ長方形である。ハニカム構造体110は、多孔質の隔壁により仕切られた多数のセルすなわち排ガス通路を備えており、排ガス通路はいずれも排ガスの流入方向に平行である。ハニカム構造体110は、上流側閉塞の排ガス通路と下流側閉塞の排ガス通路とが交互に配置された、濾過型ないし所謂ウォールフロー型のものであってもよい。あるいは、ハニカム構造体110は、そのような詰栓を有しない所謂ストレートフロー型のものであってもよい。
【0043】
ハニカム構造体110に対し排ガスの流れ方向における上流側には、帯電用電極120が配置されている。帯電用電極120は、その軸心が、ハニカム構造体110の中心に向けて延びており、その前端部はケース102の外側に突き出ている。帯電用電極120は、棒状の電極本体121の表面の一部または全体を碍子等の絶縁層122で被覆してなる。絶縁層122による被覆割合は、エンジン排気量、PM排出量により規定され、エンジン排気量やPM排出量が多い場合ほど、絶縁層22による被覆割合を低くするのが好適である。電極本体121には、ケース102の外側で金属結線123が接続されている。帯電用電極120とハニカム構造体110の上流側の端面とは、所定距離b離間させられている。この距離bは、ハニカム構造体110の上流側の端面にPMが最大限に堆積した場合にも帯電用電極120とハニカム構造体110の上流側の端面との間で導通が生じないような距離とする。
【0044】
ハニカム構造体110の一方の側面(図5では上面)には、平板状の電界形成用電極125が形成されている。電界形成用電極125とケース102との間は、図示しないアルミナマットなどにより密封されている。電界形成用電極125には給電栓126のプラグ電極126aが接続されている。プラグ電極126aの周囲は絶縁層127で被覆されており、絶縁層127によって、プラグ電極126aとケース102との間が電気的に絶縁されている。
【0045】
ハニカム構造体110を挟んで、電界形成用電極125の反対側には、ハニカム構造体110から所定距離だけ離れて、受電極115が配置されている。受電極115は電気的に接地されている。
【0046】
帯電用電極120には、帯電用電源部30aが接続されている。給電栓126には、電界形成用電源部30bが接続されている。これら帯電用電源部30aおよび電界形成用電源部30b、ならびにこれらを制御する制御系の構成は、上記第1実施形態のものと同様である。また、ケース102、ハニカム構造体110、帯電用電極120、プラグ電極126a等の材質は、上記第1実施形態におけるケース2、ハニカム構造体10、帯電用電極20、電解形成用電極25等と同様である。
【0047】
以上のとおり構成された第2実施形態の排ガス浄化装置101では、エンジンから排出されたPMを含む排ガスが、排気管を通ってケース102内に導かれると、排ガスは上流端開口の排ガス通路からハニカム構造体110内に侵入すると共に、多孔質の隔壁を通過して、下流端開口の排ガス通路から下流側に排出される。この過程で、PMは隔壁によって濾過される。
【0048】
他方、エンジンの始動と同時に高圧電源30がオンされ、帯電用電極120、電界形成用電極125および受電極115の間に高電圧が印加されると、排ガス中のPMが帯電用電極120からの放電によって負極に帯電され、また電界形成用電極125と受電極115との間に電界が形成されるため、PMは電気的吸引力によりハニカム構造体110に向けて吸引される。この結果、ハニカム構造体110の隔壁を通じて流通するPMの移動経路が偏向され、PMは隔壁の気孔内に吸着されることになる。吸着されたPMは、高電圧の印加に伴って発生する活性ガスにより、その燃焼ないし酸化が促進されることになる。
【0049】
以上詳述したとおり、第2実施形態では、ハニカム構造体110の上流側の端面と帯電用電極120とが所定距離bだけ離間させられているので、上記第1実施形態と同様に、ハニカム構造体110の上流側の端面にPMが堆積した場合にも、帯電用電極120と受電極115との間の漏電のおそれを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態ではハニカム構造体110をほぼ角柱形としたので、装置全体の配置性を高めることができる。
【0051】
なお、上記各実施形態においては、電界形成用電極20,120を負極に接続し、外周電極15および受電極115を接地する例につき説明したが、本発明では両者間に所定の高電圧が印加される形態であれば足り、逆の極性であってもよい。また、その印加される電力はその目的に応じて、直流、交流、パルス、交流や直流とパルスとの重畳であってもよい。さらに、それらの電圧印加の形態も上述の常時印加に限られず、PMの捕集要求や燃焼処理要求の必要性に応じて所望の時期に行うようにしてもよく、かかる構成も本発明の範疇に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の排ガス浄化装置を示す概略構成図である。
【図2】ハニカム構造体を示す断面図である。
【図3】補正係数マップにおけるエンジン水温に応じた補正係数x1f,x1rの値の設定例を示すグラフである。
【図4】補正係数マップにおける機関負荷に応じた補正係数x2f,x2rの値の設定例を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態の排ガス浄化装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1,101 排ガス浄化装置
10,110 ハニカム構造体
15 外周電極(受電極)
20,120 帯電用電極
25,125 電界形成用電極
22,27 絶縁層
30 高圧電源
30a 帯電用電源部
30b 電界形成用電源部
115 受電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電極と電界形成用電極との間に、多数のセルを有するハニカム構造体を備え、前記受電極と前記電界形成用電極との間に形成される電界によって、排ガス中の所定の物質を前記ハニカム構造体に吸着させる排ガス浄化装置であって、
排ガス中の前記所定の物質を帯電させる帯電用電極を、前記電界形成用電極に対し上流側に更に備え、
当該帯電用電極と、前記ハニカム構造体の上流側の端面とが、所定距離離間させられていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置であって、
前記受電極が筒状であり、前記ハニカム構造体が前記受電極に囲まれた領域に配置され、前記電界形成用電極が前記ハニカム構造体に挿通されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス浄化装置であって、
前記帯電用電極と前記電界形成用電極とに個別に給電する高圧電源を更に備えたことを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−170021(P2006−170021A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361856(P2004−361856)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】