排ガス浄化装置
【課題】排ガスを十分な性能で浄化できる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン2からの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9の外周面18にコート又は保持された光触媒21と、光通過部材9に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置1において、光通過部材9に、発光装置10からの光を案内する光導波路部13を筒状に形成すると共に、光導波路部13の内周側の光通過部材9と外周側の光通過部材9とに光導波路部13より屈折率の高い光分散部14を光導波路部13に隣接して形成し、光導波路部13の内周側の光通過部材9に排ガス導入用の空洞12を形成すると共に空洞12の内周面19に光触媒21をコート又は保持させたものである。
【解決手段】エンジン2からの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9の外周面18にコート又は保持された光触媒21と、光通過部材9に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置1において、光通過部材9に、発光装置10からの光を案内する光導波路部13を筒状に形成すると共に、光導波路部13の内周側の光通過部材9と外周側の光通過部材9とに光導波路部13より屈折率の高い光分散部14を光導波路部13に隣接して形成し、光導波路部13の内周側の光通過部材9に排ガス導入用の空洞12を形成すると共に空洞12の内周面19に光触媒21をコート又は保持させたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排ガスを光触媒を用いて浄化する排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、熱効率の点からは、ガソリンエンジンに比べて、有利であるにもかかわらず、黒煙、未燃炭化水素、一酸化炭素、窒素化合物といった有害排出ガスが多いため、現在でも、特に日本国内では商用車を除いて、広く市場に出回っていない。
【0003】
近年、ディーゼル燃焼後に、後処理を加えることで、黒煙や未燃炭化水素などの有害排出物を減少させる工夫が講じられている。図13に示す排ガス浄化装置60は、現在用いられているものであり、黒煙や未燃炭化水素の主成分をなす炭素を酸化することで二酸化炭素として排出するものである。この排ガス浄化装置60は、排ガス中の一酸化炭素、炭化水素を酸化反応により無害化する酸化触媒61と、PM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集し、燃焼させる触媒化セラミックフィルター62とを備える。
【0004】
また、特許文献1(図14参照)に記載されるように、エンジン64での燃焼反応によって生成した窒素酸化物を、貴金属等からなるNOx還元触媒65を用いて窒素に還元することで浄化する方法も考え出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349252号公報
【特許文献2】特開平10−118415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1等にて提案されたように、窒素酸化物を還元し、一方で、未燃炭化水素や一酸化炭素を酸化することで、排ガスを浄化するシステムにおいて、問題とされていることは、燃焼後の未燃炭化水素や一酸化炭素を利用して窒素酸化物の還元を行うことにある。将来想定されるエンジンでは燃費改善の観点から未燃炭化水素や一酸化炭素の利用は困難になるため、窒素酸化物を還元剤を用いずに無害化する必要が生じる。
【0007】
ところで、現在、光触媒を用いた排ガス浄化装置が提案されている(特許文献2など)。
【0008】
この排ガス浄化装置は、光ファイバーで光を導入し、かつ、光ファイバーから光が漏れるような構造とした上で、その光ファイバーの表面に光触媒を担持させ、光触媒による酸化反応を行わせることで排ガスを浄化する仕組みとなっている。この場合、還元剤として未燃炭化水素や一酸化炭素を供給する必要もなく、また、排ガス中に残留した未燃炭化水素や一酸化炭素を酸化することで無害な水や二酸化炭素にすることが可能となる。
【0009】
そこで、図15(特許文献2)に示すように、排ガスの浄化性能があるとされる酸化チタン光触媒に、エネルギーを供給する必要があるが、光ファイバー63による光の供給では、光ファイバー63の円柱形状の表面にしか光が供給できない。そのため、現在用いられている金属系の黒煙、未燃炭化水素酸化触媒のスポンジ状の構造に対して、接触面積が小さくなり、十分な浄化性能が得られない可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光触媒を用いて排ガスを十分な性能で浄化できる排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を筒状に形成すると共に、該光導波路部の内周側の光通過部材と外周側の光通過部材とに光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成し、前記光導波路部の内周側の光通過部材に排ガス導入用の空洞を形成すると共に該空洞の内周面に光触媒をコート又は保持させたものである。
【0012】
前記光通過部材の外周面と前記空洞の内周面には予め凹凸が形成され、これら凹凸に前記光触媒がコート又は保持されるのが望ましい。
【0013】
前記空洞は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口を有するのが望ましい。
【0014】
また、エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材の内部に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を形成すると共に、該光導波路部の外周の光通過部材に光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成して光導波路部からの光を外周側に向けて屈折させるようにしたものである。
【0015】
前記光通過部材の外周面には予め凹凸が形成され、該凹凸に前記光触媒がコート又は保持されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光触媒を用いて排ガスを十分な性能で浄化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は排ガス浄化装置の設置位置を示す説明図である(第1の実施の形態)。
【図2】図2は排ガス浄化装置の全体説明図である。
【図3】図3は排ガス浄化装置の内部構造の説明図である。
【図4】図4は排ガス浄化装置の光通過部材の側面図である。
【図5】図5は図4の要部拡大図である。
【図6】図6は光通過部材の変形例の側面図である。
【図7】図7は図6の光通過部材の表面構造の説明図である。
【図8】図8は図6の光通過部材の使用例を示す説明図である。
【図9】図9は図8の要部拡大断面説明図である。
【図10】図10は排ガス浄化装置の他の実施の形態を示す光通過部材の斜視説明図である(第2の実施の形態)。
【図11】図11(a)は図10の要部拡大図であり、図11(b)は図11(a)の変形例を示す説明図である。
【図12】図12は排ガス浄化装置の他の実施の形態を示す光通過部材の要部拡大図である。
【図13】図13は従来の排ガス浄化装置の説明図である。
【図14】図14はNOx還元触媒を用いて浄化する従来の装置(特許文献1)の説明図である。
【図15】図15は光触媒を用いて浄化する従来の装置(特許文献2)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る第1の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、排ガス浄化装置1は、エンジン2からの排ガスを流す配管たる排気管3と、排ガス再循環部4のEGR配管5とに設けられる。図中6は排ガスのエンタルピーを回収するタービン、蒸気発生装置又は熱交換器等の排気エンタルピー回収装置であり、7はEGRクーラーである。
【0020】
図2に示すように、排ガス浄化装置1は、配管3、5に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9にコート又は保持(担持)された光触媒(図示せず)と、光通過部材9に設けられ光触媒に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備える。
【0021】
図3に示すように、光通過部材9は、細長いファイバー状(繊維状)に形成されており、外殻部8内に複数並行に設けられる。これら光通過部材9の束は、外殻部8内にフィルタ状の層11を作る。光通過部材9同士の間隔は、圧力損失が大きくなりすぎないように、かつ、排ガスが光通過部材9の上流側から下流側に流れるとき主に後述する空洞12内を通過するように適宜設定される。光通過部材9間に隙間がなくなると圧力損失が大きくなると共に、浄化性能も良くないと考えられるためである。また、光通過部材9の束から構成される層11は外殻部8内に排ガスの流れ方向に複数重ねて配置されると共に、隣接する層11の光通過部材9の向き(延長方向)が互いに異なるように配置される。光通過部材9の束の層11の間隔は光通過部材9の太さ程度に形成されている。これにより、排ガスを構成する分子ができるだけ多く光触媒と接触して浄化性能が向上するようになっている。なお、図例では層11の光通過部材9は上下、左右方向に延びるものとしたが、斜めに延びるように配置されていてもよい。
【0022】
図4及び図5に示すように、光通過部材9には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部13が筒状に形成され、光導波路部13の内周の光通過部材9と外周の光通過部材9には、光導波路部13より屈折率の高い光分散部14が光導波路部13に隣接して形成される。光分散部14は、光導波路部13の内部を通過する光の供給を受けて、光導波路部13からの光が外部に漏出するように屈折率を調整されている。また、光導波路部13の内周の光通過部材9には、排ガス導入用の空洞12が形成されている。空洞12は、光通過部材9の中心部に長手方向に沿って形成されると共に、一端を径方向外方に開口され、他端を一端の開口方向とは反対方向に開口されている。一端の開口は、排ガスの上流側に向けられることで排ガスの入口15を形成し、他端の開口は排ガスの下流側に開口する排ガス出口16を形成する。また、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19には予め凹凸17が形成されており、排ガスの流れが乱流に遷移するように工夫されている。乱流による慣性遮り効果、拡散効果は、排ガスを構成する分子と後述する光触媒21との衝突を促進する。
【0023】
光触媒21は、酸化チタンからなり、紫外光を受けることで触媒として機能する。光触媒21は、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とにコート又は保持(担持)される。光触媒21は凹凸17が形成された外周面18と内周面19にコート又は保持(担持)されることで排ガスとの接触面積を広くとることができ、排ガスを効率よく浄化できるようになっている。
【0024】
図2及び図4に示すように、発光装置10は、紫外線レーザー発生装置からなり、コネクタ20を介して光通過部材9に接続される。
【0025】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0026】
発光装置10で発生した紫外光は、コネクタ20を介して光通過部材9の光導波路部13に入射され、光導波路部13に入射した紫外光のうち、光導波路部13と径方向内側の光分散部14との界面に至った紫外光は、半径方向内側に向かうように屈折して空洞12の内周面19の光触媒21に積極的に供給される。空洞12の内周面19に到達した紫外光は、内周面19の凹凸17で乱反射し、周囲の光触媒21にも供給される。
【0027】
また、光導波路部13と径方向外側の光分散部14との界面に至った紫外光は、半径方向外側に向かうように屈折し、光通過部材9の外周面18の光触媒21に積極的に供給される。紫外光を供給された光触媒21はそれぞれ活性化する。光を受けた光触媒21は励起することで酸素から酸化剤となる活性酸素を生成する。排ガス構成分子は活性酸素によって酸化される。つまり、光触媒21は、紫外線を受けることによって、酸化性能を発揮することになる。
【0028】
一方、エンジン2から排出された排ガスは、排気エンタルピー回収装置6を通過した後、排ガス再循環部4を通過して、再度、エンジン2に送り込まれるものと、そのまま車外に排出されるものとに分かれる。
【0029】
排気管3に設けられた排ガス浄化装置1は、特に車外に排出される直前に、比較的低温の環境下で最終的な排ガスの処理を行う。図3に示すように、排ガス浄化装置1に流入した排ガスは、光通過部材9の排ガス入口15から空洞12内に流入するものと、光通過部材9間に流れるものとに分かれる。
【0030】
図5に示すように、空洞12内に流入した排ガスは、空洞12の内周面19の光触媒21に触れることで酸化反応し、光通過部材9間に流れた排ガスは、光通過部材9の外周面18の光触媒21に触れることで酸化反応する。このとき、空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に形成された凹凸17により空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18での排ガスの流れが乱流になるように促進され、排ガスを構成する分子が空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に衝突し易くなり、効率よく酸化反応する。酸化反応した排ガス中の有害成分は無害化される。具体的には、この酸化反応により排ガス中の黒煙などの炭素が二酸化炭素になり、未燃炭化水素が二酸化炭素と水になり、窒素酸化物が硝酸イオンになる。このとき、酸素の供給が必要になるが、酸素は排ガス中に含まれるため、上述の酸化反応は可能である。
【0031】
また、図1に示すように、排ガス再循環部4に設けられた排ガス浄化装置1は、前述の排ガス浄化装置1と同様に排ガス構成分子の酸化を行い、排ガス構成分子を二酸化炭素、水、硝酸イオンといった反応に乏しい分子に変換することで、エンジン2に不活性のガスを送り込む。これにより、エンジン2での燃焼反応をより緩慢なものにすることができ、窒素酸化物を削減できるメリットもある。この場合、排ガス構成分子の酸化が完全に行われれば排ガス再循環部4からエンジン2に不活性の物質だけを送り込むことができるという機能を持つ。
【0032】
EGR配管5に排ガス浄化装置1を設けない通常の排ガス再循環装置では、未燃炭化水素、一酸化炭素、黒煙などが再循環することにより、燃焼させるべき物質が増加する一方で、燃焼を不完全にすることで、窒素酸化物の生成が抑えられるメリットの一方、ますます、未燃炭化水素、一酸化炭素、黒煙の発生が増加するというデメリットがあるが、排ガス再循環部4のEGR配管5の前後双方、又はいずれかに排ガス浄化装置1を設ける仕組みは上記デメリットを回避することができる。
【0033】
このように、排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9の外周面18にコート又は保持(担持)された光触媒21と、光通過部材9に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置1において、光通過部材9に、発光装置10からの光を案内する光導波路部13を筒状に形成すると共に、光導波路部13の内周側の光通過部材9と外周側の光通過部材9とに光導波路部13より屈折率の高い光分散部14を光導波路部13に隣接して形成し、光導波路部13の内周の光通過部材9に排ガス導入用の空洞12を形成すると共に空洞12の内周面19に光触媒21をコート又は保持(担持)させたため、排ガスとの接触面積を大きくできると共に光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とに十分に光を供給でき、十分な浄化性能が得られる。
【0034】
また、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19には予め凹凸17が形成され、これら凹凸17に光触媒21がコート又は保持されるものとしたため、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とで光を乱反射でき、光触媒21を効率よく活性化できると共に、光通過部材9の外周面18及び空洞12の内周面19での排ガスの流れを乱流にでき、空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に排ガス構成分子を衝突し易くでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0035】
空洞12は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口15を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口16を有するものとしたため、排ガスを効率よく空洞12内に導入でき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0036】
従来技術では、排ガスの処理のために電気ヒータやプラズマ加熱装置といった機器を用い、あるいは、窒素酸化物の還元のために意図的に未燃燃料を噴射することを行っていたため、熱損失が大きかった。しかし、光触媒による排ガスの浄化では酸化の方法が異なり、低温で処理できるため、熱損失を小さくすることができる。
【0037】
また、酸化チタンを代表とする光触媒21によって生成される酸化剤は、酸化力が強力な物質であるために、従来の酸化触媒では、触媒などの目詰まりによる性能悪化が避けられなかったが、光触媒21に、十分な光が届き、触媒によって生成される酸化剤が排ガスを構成する物質を酸化する限り性能悪化がない点において信頼性の高い排ガス処理装置となる。
【0038】
なお、光分散部14は単層に形成されるものについて説明したが、屈折率の異なる複数の層からなるものとしてもよい。この場合、内周側から外周側に向かうにつれて屈折率が大きくなるように複数の層を積層するとよい。
【0039】
また、一本の光通過部材9に一つの発光装置10が接続されるものについて説明したが、これに限るものではない。一つの発光装置10に複数本の光通過部材9を接続するものとしてもよく、一本の光通過部材9に複数の発光装置10が接続されるものとしてもよい。
【0040】
光触媒21は酸化チタンに限るものではなく他のものであってもよい。光触媒21が酸化チタンである場合、光触媒21に供給する光は紫外線が最も効果が高くなるので発光装置10は紫外線レーザー発生装置としたが、光触媒21が酸化チタン以外のものである場合、発光装置10も光触媒21を最も活性化させるものにするとよい。
【0041】
光導波路部13は断面円形の筒状に形成されるものを図示したが、光導波路部の断面形状は四角や他の形状であってもよい。
【0042】
また、空洞12の排ガス出口16は、排ガスの下流側に開口するものとしたが、図6に示すように光通過部材30の軸方向に開口するものとしてもよい。この場合、図7に示すように、光通過部材30の外周面18と空洞31の内周面32に凹凸17を形成するとよい。図中矢印で示すように光通過部材30の外周面18と空洞31の内周面32での排ガスの流れを乱流にでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0043】
またさらに、図8及び図9に示すように、光通過部材30の軸方向の開口部33同士を、多孔質のガラス部材34を介して接続すると共にガラス部材34に光触媒21をコート又は保持(担持)し、一方の光通過部材30の空洞31からガラス部材34を介して他方の光通過部材30の空洞31に排ガスを通して排ガスを浄化するものであってもよい。この場合、ガラス部材34はガラス状物質を発泡させて形成するとよい。具体的には、ガラス粉体に、貝殻を粉砕した貝殻粉体を含有したものを溶融後、冷却固化してガラス発泡体を製造するとよい。溶融時に貝殻粉体に含有する炭酸カルシウムが分解して炭酸ガスを発生させ、溶融したガラスに気泡が形成される。貝殻粉体は焼失して微細孔を形成する。なお、貝殻粉体に代えて炭酸カルシウムの粉体等を用いてもよい。また、ガラス部材34にはそれぞれの光通過部材30の空洞31に接続される穴35を形成し、穴35の端部を隔壁36によって遮るとよい。排ガスを確実にガラス部材34内に通した上で、ガラス部材34から外部に漏れることなく、次の空洞31に排ガスを通すことができ、光触媒21に排ガスを広い面積で接触させることができる。また、光通過部材30からの光はガラス部材34内部まで到達した上で乱反射し、ガラス部材34にコート又は保持された光触媒21に到達するため、光触媒21を容易に活性化できる。
【0044】
次に光通過部材に変更を加えた第2の実施の形態について述べる。上述と同様の構成については説明を省略する。
【0045】
図10に示すように、光通過部材40は、板状に形成されており、複数組み合わされて三次元的に組み立てられている。光通過部材40には、発光装置10がコネクタ等を介して接続されている。
【0046】
図11(a)に示すように、光通過部材40には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部13が筒状に形成され、光導波路部13の内周の光通過部材40と外周の光通過部材40には、光導波路部13より屈折率の高い光分散部14が光導波路部13に隣接して形成される。また、光導波路部13の内周の光通過部材40には、排ガス導入用の空洞41が形成されている。空洞41は、一方方向に延びて形成されており、両端を開放、又は他の光通過部材40の空洞41に接続されている。これにより、空洞41内で排ガスが流れるようになっている。光通過部材40の外周面18と空洞41の内周面42には、予め凹凸(図示せず)が形成されると共に光触媒(図示せず)がコート又は保持されている。なお、図11(b)に示すように、光導波路部13、光分散部14及び空洞41は断面矩形状に形成されていてもよく、他の断面形状に形成されていてもよい。また、空洞41は長さが一定でなくても良く、縦方向に延びる空洞41と横方向に延びる空洞41とが交差して接続されたり、途中でさらに他の空洞41と接続されてもよい。
【0047】
このように光通過部材40を板状に形成しても空洞41内に排ガスを通過させることができ、排ガスを効率よく浄化できる。
【0048】
第1の実施の形態の光通過部材に変更を加えた第3の実施の形態について述べる。第1の実施の形態と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図12に示すように、光通過部材50は、細長いファイバー状(繊維状)に形成されており、光通過部材50には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部51が形成されている。また、光導波路部51の外周の光通過部材50には、光導波路部51より屈折率の高い光分散部52が光導波路部51に隣接して形成されている。光通過部材50の外周面53には予め凹凸17が形成されると共に、光触媒21がコート又は保持(担持)されている。
【0050】
このように、排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材50と、光通過部材50の外周面53にコート又は保持された光触媒21と、光通過部材50に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材50内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置において、光通過部材50の内部に、発光装置10からの光を案内する光導波路部51を形成すると共に、光導波路部51の外周の光通過部材50に光導波路部51より屈折率の高い光分散部52を光導波路部51に隣接して形成して光導波路部51からの光を外周側に向けて屈折させるようにしても光通過部材50の外周面53に十分に光を供給でき、十分な浄化性能が得られる。
【0051】
また、光通過部材50の外周面53には予め凹凸17が形成され、この凹凸17に光触媒21がコート又は保持されるものとしたため、光通過部材50の外周面53で光を乱反射でき、光触媒21を効率よく活性化できると共に、光通過部材50の外周面53での排ガスの流れを乱流にでき、光通過部材50の外周面53に排ガス構成分子を衝突し易くでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 排ガス浄化装置
2 エンジン
8 外殻部
9 光通過部材
10 発光装置
12 空洞
13 光導波路部
14 光分散部
15 排ガス入口
16 排ガス出口
17 凹凸
18 外周面
19 内周面
21 光触媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排ガスを光触媒を用いて浄化する排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、熱効率の点からは、ガソリンエンジンに比べて、有利であるにもかかわらず、黒煙、未燃炭化水素、一酸化炭素、窒素化合物といった有害排出ガスが多いため、現在でも、特に日本国内では商用車を除いて、広く市場に出回っていない。
【0003】
近年、ディーゼル燃焼後に、後処理を加えることで、黒煙や未燃炭化水素などの有害排出物を減少させる工夫が講じられている。図13に示す排ガス浄化装置60は、現在用いられているものであり、黒煙や未燃炭化水素の主成分をなす炭素を酸化することで二酸化炭素として排出するものである。この排ガス浄化装置60は、排ガス中の一酸化炭素、炭化水素を酸化反応により無害化する酸化触媒61と、PM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集し、燃焼させる触媒化セラミックフィルター62とを備える。
【0004】
また、特許文献1(図14参照)に記載されるように、エンジン64での燃焼反応によって生成した窒素酸化物を、貴金属等からなるNOx還元触媒65を用いて窒素に還元することで浄化する方法も考え出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349252号公報
【特許文献2】特開平10−118415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1等にて提案されたように、窒素酸化物を還元し、一方で、未燃炭化水素や一酸化炭素を酸化することで、排ガスを浄化するシステムにおいて、問題とされていることは、燃焼後の未燃炭化水素や一酸化炭素を利用して窒素酸化物の還元を行うことにある。将来想定されるエンジンでは燃費改善の観点から未燃炭化水素や一酸化炭素の利用は困難になるため、窒素酸化物を還元剤を用いずに無害化する必要が生じる。
【0007】
ところで、現在、光触媒を用いた排ガス浄化装置が提案されている(特許文献2など)。
【0008】
この排ガス浄化装置は、光ファイバーで光を導入し、かつ、光ファイバーから光が漏れるような構造とした上で、その光ファイバーの表面に光触媒を担持させ、光触媒による酸化反応を行わせることで排ガスを浄化する仕組みとなっている。この場合、還元剤として未燃炭化水素や一酸化炭素を供給する必要もなく、また、排ガス中に残留した未燃炭化水素や一酸化炭素を酸化することで無害な水や二酸化炭素にすることが可能となる。
【0009】
そこで、図15(特許文献2)に示すように、排ガスの浄化性能があるとされる酸化チタン光触媒に、エネルギーを供給する必要があるが、光ファイバー63による光の供給では、光ファイバー63の円柱形状の表面にしか光が供給できない。そのため、現在用いられている金属系の黒煙、未燃炭化水素酸化触媒のスポンジ状の構造に対して、接触面積が小さくなり、十分な浄化性能が得られない可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光触媒を用いて排ガスを十分な性能で浄化できる排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を筒状に形成すると共に、該光導波路部の内周側の光通過部材と外周側の光通過部材とに光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成し、前記光導波路部の内周側の光通過部材に排ガス導入用の空洞を形成すると共に該空洞の内周面に光触媒をコート又は保持させたものである。
【0012】
前記光通過部材の外周面と前記空洞の内周面には予め凹凸が形成され、これら凹凸に前記光触媒がコート又は保持されるのが望ましい。
【0013】
前記空洞は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口を有するのが望ましい。
【0014】
また、エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材の内部に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を形成すると共に、該光導波路部の外周の光通過部材に光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成して光導波路部からの光を外周側に向けて屈折させるようにしたものである。
【0015】
前記光通過部材の外周面には予め凹凸が形成され、該凹凸に前記光触媒がコート又は保持されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光触媒を用いて排ガスを十分な性能で浄化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は排ガス浄化装置の設置位置を示す説明図である(第1の実施の形態)。
【図2】図2は排ガス浄化装置の全体説明図である。
【図3】図3は排ガス浄化装置の内部構造の説明図である。
【図4】図4は排ガス浄化装置の光通過部材の側面図である。
【図5】図5は図4の要部拡大図である。
【図6】図6は光通過部材の変形例の側面図である。
【図7】図7は図6の光通過部材の表面構造の説明図である。
【図8】図8は図6の光通過部材の使用例を示す説明図である。
【図9】図9は図8の要部拡大断面説明図である。
【図10】図10は排ガス浄化装置の他の実施の形態を示す光通過部材の斜視説明図である(第2の実施の形態)。
【図11】図11(a)は図10の要部拡大図であり、図11(b)は図11(a)の変形例を示す説明図である。
【図12】図12は排ガス浄化装置の他の実施の形態を示す光通過部材の要部拡大図である。
【図13】図13は従来の排ガス浄化装置の説明図である。
【図14】図14はNOx還元触媒を用いて浄化する従来の装置(特許文献1)の説明図である。
【図15】図15は光触媒を用いて浄化する従来の装置(特許文献2)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る第1の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、排ガス浄化装置1は、エンジン2からの排ガスを流す配管たる排気管3と、排ガス再循環部4のEGR配管5とに設けられる。図中6は排ガスのエンタルピーを回収するタービン、蒸気発生装置又は熱交換器等の排気エンタルピー回収装置であり、7はEGRクーラーである。
【0020】
図2に示すように、排ガス浄化装置1は、配管3、5に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9にコート又は保持(担持)された光触媒(図示せず)と、光通過部材9に設けられ光触媒に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備える。
【0021】
図3に示すように、光通過部材9は、細長いファイバー状(繊維状)に形成されており、外殻部8内に複数並行に設けられる。これら光通過部材9の束は、外殻部8内にフィルタ状の層11を作る。光通過部材9同士の間隔は、圧力損失が大きくなりすぎないように、かつ、排ガスが光通過部材9の上流側から下流側に流れるとき主に後述する空洞12内を通過するように適宜設定される。光通過部材9間に隙間がなくなると圧力損失が大きくなると共に、浄化性能も良くないと考えられるためである。また、光通過部材9の束から構成される層11は外殻部8内に排ガスの流れ方向に複数重ねて配置されると共に、隣接する層11の光通過部材9の向き(延長方向)が互いに異なるように配置される。光通過部材9の束の層11の間隔は光通過部材9の太さ程度に形成されている。これにより、排ガスを構成する分子ができるだけ多く光触媒と接触して浄化性能が向上するようになっている。なお、図例では層11の光通過部材9は上下、左右方向に延びるものとしたが、斜めに延びるように配置されていてもよい。
【0022】
図4及び図5に示すように、光通過部材9には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部13が筒状に形成され、光導波路部13の内周の光通過部材9と外周の光通過部材9には、光導波路部13より屈折率の高い光分散部14が光導波路部13に隣接して形成される。光分散部14は、光導波路部13の内部を通過する光の供給を受けて、光導波路部13からの光が外部に漏出するように屈折率を調整されている。また、光導波路部13の内周の光通過部材9には、排ガス導入用の空洞12が形成されている。空洞12は、光通過部材9の中心部に長手方向に沿って形成されると共に、一端を径方向外方に開口され、他端を一端の開口方向とは反対方向に開口されている。一端の開口は、排ガスの上流側に向けられることで排ガスの入口15を形成し、他端の開口は排ガスの下流側に開口する排ガス出口16を形成する。また、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19には予め凹凸17が形成されており、排ガスの流れが乱流に遷移するように工夫されている。乱流による慣性遮り効果、拡散効果は、排ガスを構成する分子と後述する光触媒21との衝突を促進する。
【0023】
光触媒21は、酸化チタンからなり、紫外光を受けることで触媒として機能する。光触媒21は、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とにコート又は保持(担持)される。光触媒21は凹凸17が形成された外周面18と内周面19にコート又は保持(担持)されることで排ガスとの接触面積を広くとることができ、排ガスを効率よく浄化できるようになっている。
【0024】
図2及び図4に示すように、発光装置10は、紫外線レーザー発生装置からなり、コネクタ20を介して光通過部材9に接続される。
【0025】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0026】
発光装置10で発生した紫外光は、コネクタ20を介して光通過部材9の光導波路部13に入射され、光導波路部13に入射した紫外光のうち、光導波路部13と径方向内側の光分散部14との界面に至った紫外光は、半径方向内側に向かうように屈折して空洞12の内周面19の光触媒21に積極的に供給される。空洞12の内周面19に到達した紫外光は、内周面19の凹凸17で乱反射し、周囲の光触媒21にも供給される。
【0027】
また、光導波路部13と径方向外側の光分散部14との界面に至った紫外光は、半径方向外側に向かうように屈折し、光通過部材9の外周面18の光触媒21に積極的に供給される。紫外光を供給された光触媒21はそれぞれ活性化する。光を受けた光触媒21は励起することで酸素から酸化剤となる活性酸素を生成する。排ガス構成分子は活性酸素によって酸化される。つまり、光触媒21は、紫外線を受けることによって、酸化性能を発揮することになる。
【0028】
一方、エンジン2から排出された排ガスは、排気エンタルピー回収装置6を通過した後、排ガス再循環部4を通過して、再度、エンジン2に送り込まれるものと、そのまま車外に排出されるものとに分かれる。
【0029】
排気管3に設けられた排ガス浄化装置1は、特に車外に排出される直前に、比較的低温の環境下で最終的な排ガスの処理を行う。図3に示すように、排ガス浄化装置1に流入した排ガスは、光通過部材9の排ガス入口15から空洞12内に流入するものと、光通過部材9間に流れるものとに分かれる。
【0030】
図5に示すように、空洞12内に流入した排ガスは、空洞12の内周面19の光触媒21に触れることで酸化反応し、光通過部材9間に流れた排ガスは、光通過部材9の外周面18の光触媒21に触れることで酸化反応する。このとき、空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に形成された凹凸17により空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18での排ガスの流れが乱流になるように促進され、排ガスを構成する分子が空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に衝突し易くなり、効率よく酸化反応する。酸化反応した排ガス中の有害成分は無害化される。具体的には、この酸化反応により排ガス中の黒煙などの炭素が二酸化炭素になり、未燃炭化水素が二酸化炭素と水になり、窒素酸化物が硝酸イオンになる。このとき、酸素の供給が必要になるが、酸素は排ガス中に含まれるため、上述の酸化反応は可能である。
【0031】
また、図1に示すように、排ガス再循環部4に設けられた排ガス浄化装置1は、前述の排ガス浄化装置1と同様に排ガス構成分子の酸化を行い、排ガス構成分子を二酸化炭素、水、硝酸イオンといった反応に乏しい分子に変換することで、エンジン2に不活性のガスを送り込む。これにより、エンジン2での燃焼反応をより緩慢なものにすることができ、窒素酸化物を削減できるメリットもある。この場合、排ガス構成分子の酸化が完全に行われれば排ガス再循環部4からエンジン2に不活性の物質だけを送り込むことができるという機能を持つ。
【0032】
EGR配管5に排ガス浄化装置1を設けない通常の排ガス再循環装置では、未燃炭化水素、一酸化炭素、黒煙などが再循環することにより、燃焼させるべき物質が増加する一方で、燃焼を不完全にすることで、窒素酸化物の生成が抑えられるメリットの一方、ますます、未燃炭化水素、一酸化炭素、黒煙の発生が増加するというデメリットがあるが、排ガス再循環部4のEGR配管5の前後双方、又はいずれかに排ガス浄化装置1を設ける仕組みは上記デメリットを回避することができる。
【0033】
このように、排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材9と、光通過部材9の外周面18にコート又は保持(担持)された光触媒21と、光通過部材9に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材9内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置1において、光通過部材9に、発光装置10からの光を案内する光導波路部13を筒状に形成すると共に、光導波路部13の内周側の光通過部材9と外周側の光通過部材9とに光導波路部13より屈折率の高い光分散部14を光導波路部13に隣接して形成し、光導波路部13の内周の光通過部材9に排ガス導入用の空洞12を形成すると共に空洞12の内周面19に光触媒21をコート又は保持(担持)させたため、排ガスとの接触面積を大きくできると共に光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とに十分に光を供給でき、十分な浄化性能が得られる。
【0034】
また、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19には予め凹凸17が形成され、これら凹凸17に光触媒21がコート又は保持されるものとしたため、光通過部材9の外周面18と空洞12の内周面19とで光を乱反射でき、光触媒21を効率よく活性化できると共に、光通過部材9の外周面18及び空洞12の内周面19での排ガスの流れを乱流にでき、空洞12の内周面19及び光通過部材9の外周面18に排ガス構成分子を衝突し易くでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0035】
空洞12は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口15を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口16を有するものとしたため、排ガスを効率よく空洞12内に導入でき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0036】
従来技術では、排ガスの処理のために電気ヒータやプラズマ加熱装置といった機器を用い、あるいは、窒素酸化物の還元のために意図的に未燃燃料を噴射することを行っていたため、熱損失が大きかった。しかし、光触媒による排ガスの浄化では酸化の方法が異なり、低温で処理できるため、熱損失を小さくすることができる。
【0037】
また、酸化チタンを代表とする光触媒21によって生成される酸化剤は、酸化力が強力な物質であるために、従来の酸化触媒では、触媒などの目詰まりによる性能悪化が避けられなかったが、光触媒21に、十分な光が届き、触媒によって生成される酸化剤が排ガスを構成する物質を酸化する限り性能悪化がない点において信頼性の高い排ガス処理装置となる。
【0038】
なお、光分散部14は単層に形成されるものについて説明したが、屈折率の異なる複数の層からなるものとしてもよい。この場合、内周側から外周側に向かうにつれて屈折率が大きくなるように複数の層を積層するとよい。
【0039】
また、一本の光通過部材9に一つの発光装置10が接続されるものについて説明したが、これに限るものではない。一つの発光装置10に複数本の光通過部材9を接続するものとしてもよく、一本の光通過部材9に複数の発光装置10が接続されるものとしてもよい。
【0040】
光触媒21は酸化チタンに限るものではなく他のものであってもよい。光触媒21が酸化チタンである場合、光触媒21に供給する光は紫外線が最も効果が高くなるので発光装置10は紫外線レーザー発生装置としたが、光触媒21が酸化チタン以外のものである場合、発光装置10も光触媒21を最も活性化させるものにするとよい。
【0041】
光導波路部13は断面円形の筒状に形成されるものを図示したが、光導波路部の断面形状は四角や他の形状であってもよい。
【0042】
また、空洞12の排ガス出口16は、排ガスの下流側に開口するものとしたが、図6に示すように光通過部材30の軸方向に開口するものとしてもよい。この場合、図7に示すように、光通過部材30の外周面18と空洞31の内周面32に凹凸17を形成するとよい。図中矢印で示すように光通過部材30の外周面18と空洞31の内周面32での排ガスの流れを乱流にでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【0043】
またさらに、図8及び図9に示すように、光通過部材30の軸方向の開口部33同士を、多孔質のガラス部材34を介して接続すると共にガラス部材34に光触媒21をコート又は保持(担持)し、一方の光通過部材30の空洞31からガラス部材34を介して他方の光通過部材30の空洞31に排ガスを通して排ガスを浄化するものであってもよい。この場合、ガラス部材34はガラス状物質を発泡させて形成するとよい。具体的には、ガラス粉体に、貝殻を粉砕した貝殻粉体を含有したものを溶融後、冷却固化してガラス発泡体を製造するとよい。溶融時に貝殻粉体に含有する炭酸カルシウムが分解して炭酸ガスを発生させ、溶融したガラスに気泡が形成される。貝殻粉体は焼失して微細孔を形成する。なお、貝殻粉体に代えて炭酸カルシウムの粉体等を用いてもよい。また、ガラス部材34にはそれぞれの光通過部材30の空洞31に接続される穴35を形成し、穴35の端部を隔壁36によって遮るとよい。排ガスを確実にガラス部材34内に通した上で、ガラス部材34から外部に漏れることなく、次の空洞31に排ガスを通すことができ、光触媒21に排ガスを広い面積で接触させることができる。また、光通過部材30からの光はガラス部材34内部まで到達した上で乱反射し、ガラス部材34にコート又は保持された光触媒21に到達するため、光触媒21を容易に活性化できる。
【0044】
次に光通過部材に変更を加えた第2の実施の形態について述べる。上述と同様の構成については説明を省略する。
【0045】
図10に示すように、光通過部材40は、板状に形成されており、複数組み合わされて三次元的に組み立てられている。光通過部材40には、発光装置10がコネクタ等を介して接続されている。
【0046】
図11(a)に示すように、光通過部材40には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部13が筒状に形成され、光導波路部13の内周の光通過部材40と外周の光通過部材40には、光導波路部13より屈折率の高い光分散部14が光導波路部13に隣接して形成される。また、光導波路部13の内周の光通過部材40には、排ガス導入用の空洞41が形成されている。空洞41は、一方方向に延びて形成されており、両端を開放、又は他の光通過部材40の空洞41に接続されている。これにより、空洞41内で排ガスが流れるようになっている。光通過部材40の外周面18と空洞41の内周面42には、予め凹凸(図示せず)が形成されると共に光触媒(図示せず)がコート又は保持されている。なお、図11(b)に示すように、光導波路部13、光分散部14及び空洞41は断面矩形状に形成されていてもよく、他の断面形状に形成されていてもよい。また、空洞41は長さが一定でなくても良く、縦方向に延びる空洞41と横方向に延びる空洞41とが交差して接続されたり、途中でさらに他の空洞41と接続されてもよい。
【0047】
このように光通過部材40を板状に形成しても空洞41内に排ガスを通過させることができ、排ガスを効率よく浄化できる。
【0048】
第1の実施の形態の光通過部材に変更を加えた第3の実施の形態について述べる。第1の実施の形態と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図12に示すように、光通過部材50は、細長いファイバー状(繊維状)に形成されており、光通過部材50には、発光装置10からの光を案内するための光導波路部51が形成されている。また、光導波路部51の外周の光通過部材50には、光導波路部51より屈折率の高い光分散部52が光導波路部51に隣接して形成されている。光通過部材50の外周面53には予め凹凸17が形成されると共に、光触媒21がコート又は保持(担持)されている。
【0050】
このように、排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部8と、外殻部8内に設けられ光を透過させる光通過部材50と、光通過部材50の外周面53にコート又は保持された光触媒21と、光通過部材50に設けられ光触媒21に光を供給すべく光通過部材50内に光を入射する発光装置10とを備えた排ガス浄化装置において、光通過部材50の内部に、発光装置10からの光を案内する光導波路部51を形成すると共に、光導波路部51の外周の光通過部材50に光導波路部51より屈折率の高い光分散部52を光導波路部51に隣接して形成して光導波路部51からの光を外周側に向けて屈折させるようにしても光通過部材50の外周面53に十分に光を供給でき、十分な浄化性能が得られる。
【0051】
また、光通過部材50の外周面53には予め凹凸17が形成され、この凹凸17に光触媒21がコート又は保持されるものとしたため、光通過部材50の外周面53で光を乱反射でき、光触媒21を効率よく活性化できると共に、光通過部材50の外周面53での排ガスの流れを乱流にでき、光通過部材50の外周面53に排ガス構成分子を衝突し易くでき、排ガス構成分子を効率よく酸化反応させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 排ガス浄化装置
2 エンジン
8 外殻部
9 光通過部材
10 発光装置
12 空洞
13 光導波路部
14 光分散部
15 排ガス入口
16 排ガス出口
17 凹凸
18 外周面
19 内周面
21 光触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を筒状に形成すると共に、該光導波路部の内周側の光通過部材と外周側の光通過部材とに光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成し、前記光導波路部の内周側の光通過部材に排ガス導入用の空洞を形成すると共に該空洞の内周面に光触媒をコート又は保持させたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記光通過部材の外周面と前記空洞の内周面には予め凹凸が形成され、これら凹凸に前記光触媒がコート又は保持された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記空洞は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口を有する請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材の内部に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を形成すると共に、該光導波路部の外周の光通過部材に光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成して光導波路部からの光を外周側に向けて屈折させるようにしたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記光通過部材の外周面には予め凹凸が形成され、該凹凸に前記光触媒がコート又は保持された請求項4記載の排ガス浄化装置。
【請求項1】
エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を筒状に形成すると共に、該光導波路部の内周側の光通過部材と外周側の光通過部材とに光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成し、前記光導波路部の内周側の光通過部材に排ガス導入用の空洞を形成すると共に該空洞の内周面に光触媒をコート又は保持させたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記光通過部材の外周面と前記空洞の内周面には予め凹凸が形成され、これら凹凸に前記光触媒がコート又は保持された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記空洞は、排ガスの流れ方向上流側に開口する排ガス入口を有すると共に、下流側に開口する排ガス出口を有する請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
エンジンからの排ガスを流す配管に設けられ排ガスを通過させる流路を内側に有する外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光通過部材と、該光通過部材の外周面にコート又は保持された光触媒と、前記光通過部材に設けられ前記光触媒に光を供給すべく光通過部材内に光を入射する発光装置とを備えた排ガス浄化装置において、前記光通過部材の内部に、前記発光装置からの光を案内する光導波路部を形成すると共に、該光導波路部の外周の光通過部材に光導波路部より屈折率の高い光分散部を前記光導波路部に隣接して形成して光導波路部からの光を外周側に向けて屈折させるようにしたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記光通過部材の外周面には予め凹凸が形成され、該凹凸に前記光触媒がコート又は保持された請求項4記載の排ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−179438(P2011−179438A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45721(P2010−45721)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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