説明

排ガス浄化触媒

【課題】耐久試験後であっても優れた排ガス浄化性能を示す自動車などの内燃機関から輩出される排ガスを浄化し得る排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】細孔を有する酸化物担体に貴金属粒子を担持させてなり、貴金属粒子の平均粒子径が10nm未満であって且つ酸化物担体の平均細孔径よりも大きいことを特徴とする排ガス浄化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒に関し、さらに詳しくは酸化物担体の平均細孔径と担持した貴金属粒子の平均粒子径とが特定の関係を有することによって耐久試験後であっても優れた排ガス浄化性能を示す排ガス浄化触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)等が含まれるが、これらの物質は、CO及びHCを酸化し、またNOを還元する排ガス浄化触媒によって除去できる。排ガス浄化触媒の代表的なものとしては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属を多孔質金属酸化物担体に担持させた排ガス浄化触媒が知られている。
【0003】
この多孔質金属酸化物担体は様々な材料で作ることができるが、従来は高表面積を得るためにアルミナ(Al)を使用することが一般的であった。しかしながら近年では、担体の化学的性質を利用して排ガスの浄化を促進するために、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)等の様々な他の材料を、アルミナと組み合わせて又は組み合わせないで使用することが提案されている。
【0004】
特に、近年の研究によれば、セリアは担持される貴金属、特に白金との親和性が強いために、この貴金属の粒成長(シンタリング)を抑制できることが見出されている。このように、セリア担体は、排ガス浄化触媒での用途に関して好ましい性質を有するが、この用途において必要とされる耐熱性を有さないことがある。
一方、セリア以外の担体については貴金属の粒成長(シンタリング)の抑制効果がセリアよりも低い。
このため、金属酸化物担体に貴金属触媒を担持した排ガス浄化触媒においては、耐久性が十分ではなく耐久性の改善が必要であった。
【0005】
例えば、特開平11−137996号には、多孔質体からなる担体と該担体の主として細孔中に担持された貴金属と金属酸化物からなり少なくとも該細孔を被覆するコート層とよりなる排ガス浄化用触媒が記載されている。
しかし、前記公報に記載の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属のシンタリングは抑制されるが、貴金属粒子の活性が十分発揮し得ず排ガス浄化用触媒としての浄化性能は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−137996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、耐久試験後であっても優れた排ガス浄化性能を示す排ガス浄化触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細孔を有する酸化物担体に貴金属粒子を担持させてなり、貴金属粒子の平均粒子径が10nm未満であって且つ酸化物担体の平均細孔径よりも大きいことを特徴とする排ガス浄化触媒に関する。
本願発明における平均粒子径および平均細孔径は、後述の実施例の欄に詳述される測定法によって得られる物性値である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久試験後であっても優れた排ガス浄化性能を示す排ガス浄化触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来技術による排ガス浄化触媒の模式図である。
【図2】図2は、本発明による排ガス浄化触媒の模式図である。
【図3】図3は、実施例2による排ガス浄化触媒のTEM写真の写しである。
【図4】図4は、比較例5による排ガス浄化触媒のTEM写真の写しである。
【0011】
【図5】図5は、本明細書の実施例で排ガス浄化触媒の耐久試験で用いた評価試験用の反応管の模式図である。
【図6】図6は、実施例1、4および比較例2、4で用いた担体である酸化物粉末の細孔分布を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例2、5および比較例3、5で用いた担体である酸化物粉末の細孔分布を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例3で用いた担体である酸化物粉末の細孔分布を示すグラフである。
【図9】図9は、比較例1で用いた担体である酸化物粉末の細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、細孔を有する酸化物担体に貴金属粒子を担持させてなり、貴金属粒子の平均粒子径(以下、単に粒子径ということもある。)が10nm未満であって且つ酸化物担体の平均細孔径(以下、単に細孔径ということもある。)よりも大きいことが必要である。
図1および図2を参照して本発明を以下に詳述する。
図1に示すように、従来の排ガス浄化触媒においては、貴金属粒子径と酸化物担体の細孔径との間には、貴金属粒子径<酸化物担体の細孔径 の関係にあり、貴金属粒子が酸化物担体の粒界に入り込み、活性点を覆うため、貴金属触媒の表面の活性点が有効に活性されない。
【0013】
これに対して、図2に示すように、本発明の排ガス浄化触媒においては、貴金属粒子径と酸化物担体の細孔径との間には、貴金属粒子径>酸化物担体 の細孔径の関係にあり、貴金属粒子は酸化物担体の粒界に入り込むことがないか入り込むことが少なく酸化物担体の表面に存在するため、活性点は酸化物担体で覆われないか覆われることが少なく、貴金属触媒の表面の活性点が有効に活用されるのである。
【0014】
前記の酸化物担体としては、平均細孔径が10nm以下、特に4nm以上10nm以下であるものが適していて、限定されないが、例えば、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等の金属酸化物、特に酸化セリウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムのうちのうちの少なくとも1つ以上、もしくはアルカリ土類金属を含む酸化物からなる担体があげられる。
前記の酸化物として、例えば酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物、酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物、酸化アルミニウム−酸化バリウム複合酸化物を好適に挙げることができる。
【0015】
前記の酸化物担体は、酸化物の前駆体、例えば酸化物を与える金属の塩の水酸化物又は水和物の水溶液から沈殿物を分離取得し、300〜1000℃の温度範囲で加熱処理することによって得ることができる。
前記酸化物担体は、必要であれば粒子径を制御することができる。
粒子径を制御する方法として種々の手段を採用でき、例えば1)出発原料として前記酸化物を与える金属の硫酸塩を用いる方法、2)沈殿物を得るために還元剤、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムを用いる方法、3)金属の塩の水酸化物又は水和物の水溶液のpHを10〜13に調整する方法、4)沈殿物を生成した後に熟成工程を攪拌下に100〜150℃の高温で行う方法のいずれか1つ又は2つ以上を組み合わせることによって行うことができる。
【0016】
本発明の排ガス浄化触媒を得るために前記の酸化物担体と組み合わせて用いる貴金属粒子としては、貴金属の平均粒子径が、酸化物担体の平均細孔径との間に貴金属粒子平均径>酸化物担体の平均細孔径の関係を有するもものが用いられ、制限されないが、例えば白金、パラジウム、ロジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウムなどの貴金属の粒子であって平均粒子径が10nm未満、特に4nmより大で8nm以下、その中でも特に平均粒子径が5〜8nm程度であって、好適には平均粒子径を制御した貴金属粒子であり得る。
【0017】
前記の貴金属粒子の粒子径は、制限されないが例えば高分子化合物を用いる“コロイド法”によって、製造工程における使用する触媒貴金属を与える貴金属原料の種類と量、高分子化合物の分子量、還元剤の種類、還元温度、還元時間を選択することによって制御することが可能であり得る。
【0018】
前記の高分子化合物としては、貴金属と配位し得る分子内にH、OH、COOH又はNHを有する高分子化合物、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミン等が挙げられる。
前記の高分子化合物は水溶液にして用い得るが、高分子化合物の水溶液中における濃度はモノマーユニト換算で1×10−4mol/L〜1×10−3mol/L程度であり得る。
【0019】
前記の貴金属原料としては、前記貴金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アンミン錯体(塩)、好適には塩化物、硝酸塩、アンミン塩を用い得るが、貴金属粒子の粒子径はおおよそ(大)塩化物>硝酸塩>アンミン塩(小)の順となる。従って、求める貴金属粒子の粒径に対して適した塩を選択する必要がある。
前記の貴金属原料は水溶液にして用いられ得るが、貴金属原料水溶液中の貴金属の濃度はで1×10−4mol/L〜1×10−3mol/L程度であり得る。
【0020】
そして、前記の貴金属原料の水溶液と高分子化合物の水溶液とを混合するに際して、貴金属と高分子化合物(モノマーユニット換算)とがモル比で1:5〜1:10となるように混合することが好ましい。
【0021】
前記の高分子化合物の分子量(重合度)としては、高分子化合物の分子量を大きくすると1分子あたりに吸着する貴金属イオンの量が多くなるため、得られる貴金属粒子の粒子径が大きくなる。また、粒径の分布を狭くするためには、高分子化合物の重合度(分子量)をそろえることが望ましい。
【0022】
前記の還元剤としては、触媒活性の観点からはアルコール(C2n+1OH)、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、t−ブタノール、n−ブタノールなどを用い得るが、この場合前記式におけるnが大きくなるとアルコールの沸点が高くなるため、高温で還流還元することが可能となる。つまり、前記のnを大きくすると、還元時の還流温度を高くすることが可能となり、還元力が強くなり粒径の小さい貴金属粒子を得ることができる。逆にnを小さくすることによって粒径の大きい貴金属粒子を得ることができる。
また、還元時間を長くすると、粒成長が進むため粒径の大きい貴金属粒子を得ることができる。
【0023】
本発明の排ガス浄化触媒は、例えば前記の平均細孔径を有する酸化物担体の粉末を、前記の平均細孔径の貴金属粒子を与える貴金属原料の水溶液に加えて、攪拌下に乾燥した後、焼成することによって得ることができる。前記の焼成は、例えば大気雰囲気において400〜800℃で、1〜5時間行うことが好ましい。
【0024】
本発明の排ガス浄化触媒は、前述のような微細な平均細孔径を有する酸化物担体と前記の10nm未満の平均粒子径を有する貴金属粒子を組み合わせ、且つ前記の平均細孔径と平均粒子径との間に平均細孔径<平均粒子径 の条件を満足させて酸化物担体に貴金属粒子を担持させることによって、耐久後であっても高い浄化性能を有するものである。
【0025】
以下に、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は単に説明のためのものであり、本発明を如何様にも限定するものではない。
【実施例】
【0026】
以下の各例において、貴金属粒子の平均粒子径および酸化物担体の平均細孔径の測定、触媒の耐久試験は、以下の方法によって行った。しかし、これらの測定法は以下に示す方法に限定されず、当業界で同等と考えられる測定法によっても同様に行い得る。
1.貴金属粒子の平均粒子径の測定法
イ.透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、貴金属水溶液を乾燥(120℃×一昼夜)後の貴金属粒子に薬液を滴下、乾燥して観察し、100個の粒子の平均値を平均粒子径とした。
なお、TEMで測定した乾燥後の貴金属粒子の平均粒子径とCOパルスで測定した焼成(500℃×2時間)後の担持触媒における貴金属粒子の平均粒子径とは差異がないことを確認している。
ロ.COパルス吸着法
貴金属粒子の粒径が小さくてTEMで観察できない場合は、COパルス吸着法により平均粒子径を測定し、下記の式に基いて粒径を求めた。
L=f×M/(ρ×N×π×r×D)
f:形状因子(球状=6)
M:分子量
ρ:密度
:アボガドロ数
r:原子半径(Ptの場合1.3×10−8cm)
D:分散度
(貴金属担持量に対するCO吸着量の比率)
2.酸化物担体の平均細孔径の測定法
窒素ガス吸着法により、酸化物担体について窒素ガスの等温脱着曲線からBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法により平均細孔径を求めた。
【0027】
3.触媒の耐久試験法
a)触媒サンプルの作製
実施例および比較例で合成した貴金属担持触媒粉末を、加圧成形機(CIP)で2トンの圧力で固めた後、網目が1mmメッシュの金属製ふるい上で粉砕し、ペレットとした。
b)ペレットサンプルの加速耐久試験
ペレットサンプル5gを秤り採り、COとOガスおよび水蒸気を添加できる図5に概要を示すアルミナ製反応管に入れた。この反応管内に、CO(2%)/O(5%)(Nバランス)を1分間隔で交互に流通させた。水蒸気は常時10%添加した。また、ガス量は10L/分とした。アルミナ管内の温度が1100℃になるように電気炉を加熱し、5時間ガス流通下で保持した。
c)ペレットサンプルの評価方法
上記b)で加速耐久試験を行ったサンプルに対して、HCの浄化性能を以下のようにして求めた。
浄化性能評価ガス条件
ガス総流量:30L/分
ガス組成:C1000ppm、CO6500ppm、NO1500ppm
7000ppm、CO10%、HO無し/N残部
温度条件:500℃
サンプル:加速耐久試験後のペレット触媒2.0g
【0028】
実施例1
(平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径5.2nmのPt粒子担持触媒)
1.酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
硝酸二アンモニウムセリウムCe(NH(NO(1モル=548.22g)と硝酸ジルコニル二水和物ZrO(NO・2HO(1モル=267.26g)とをCe:Zr=1:1(モル比)になるように秤り採り、水に溶解して水溶液とした。この水溶液を攪拌しながら、pHが12になるまでアンモニア水を滴下し、沈殿物を得た。その後、遠心分離し、沈殿物を得た後、120℃で一昼夜乾燥し、その乾燥粉末を600℃で5時間焼成した。
得られた複合酸化物粉末の細孔分布を図6に示す。細孔分布を窒素吸着により測定し、BJH法による平均細孔径は4.1nmであった。
【0029】
2.粒子径を制御したPt粒子の調製
塩化白金酸六水和物HPtCl・6HO(1mol=517.90g)を水に溶解し、水溶液とした。これに、Pt:PVPモノマー=1:5(モル比)となるように、PVP(ポリビニルピロリドン、(CNO)、MW=35000)を水に溶解した水溶液を滴下した。次に、エタノールを加え、約80℃の油浴で8時間加熱還流した。
このようにして調製した場合、Pt粒子の平均粒子径が5.2nmであった。
3.排ガス浄化触媒の調製
このようにして得たPt溶液に、先に合成した酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化セリウム−酸化ジルコニウム粉末にPt粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0030】
実施例2
(平均細孔径5.8nmの酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径6.5nmのPt粒子担持触媒)
1.酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
硝酸アルミニウム九水和物Al(NO・9HO(1モル=375.13g)と硝酸二アンモニウムセリウムCe(NH(NO(1モル=548.22g)と硝酸ジルコニル二水和物ZrO(NO・2HO(1モル=267.26g)とをAl:Ce:Zr=2:1:1(モル比)になるように秤採り、水に溶解して水溶液とした。この水溶液を攪拌しながら、pHが12になるまでアンモニア水を滴下し、沈殿物を得た。その後、遠心分離し、沈殿物を得た後、120℃で一昼夜乾燥し、その乾燥粉末を600℃で5時間焼成した。
得られた複合酸化物粉末の細孔分布を図7に示す。細孔分布を窒素吸着により測定し、BJH法による平均細孔径は5.8nmであった。
【0031】
2.粒子径を制御したPt粒子の調製
塩化白金酸六水和物HPtCl・6HO(1mol=517.90g)を水に溶解し、水溶液とした。これに、Pt:PVPモノマー=1:5(モル比)となるように、PVP(ポリビニルピロリドン、(CNO)、MW=35000)を溶解した水溶液を滴下した。次に、メタノールを加え、約80℃の油浴で8時間加熱還流した。
このようにして調製した場合、Pt粒子は平均粒子径が6.5nmであった。
3.排ガス浄化触媒の調製
このようにして得たPt溶液に、先に合成した酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム粉末にPt粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について透過型電子顕微鏡(TEM)によって撮影した写真(倍率:500000倍)を図3に示す。図3によれば、Pt粒子が酸化物担体の表面に露出していることが確認できる。
また、得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0032】
実施例3
(平均細孔径5.1nmの酸化アルミニウム−酸化バリウム複合酸化物/平均粒子径6.5nmのPt粒子担持触媒)
1.酸化アルミニウム−酸化バリウム複合酸化物の合成
硝酸アルミニウム九水和物Al(NO・9HO(1モル=375.13g)と硝酸バリウムBa(NO(1モル=261.34g)とをAl:Ba=12:1(モル比)になるように秤り採り、水に溶解して水溶液とした。この水溶液を攪拌しながら、pHが13になるまでアンモニア水を滴下し、沈殿物を得た。その後、遠心分離し、沈殿物を得た後、120℃で一昼夜乾燥し、その乾燥粉末を600℃で5時間焼成した。
得られた複合酸化物粉末の細孔分布を図8に示す。細孔分布を窒素吸着により測定し、BJH法による平均細孔径は5.1nmであった。
【0033】
2.粒子径を制御したPt粒子の調製
粒子径を制御したpt粒子は実施例2で得られたものと同じものを用いた。
3.排ガス浄化触媒の調製
Pt溶液に、先に合成した酸化アルミニウム−酸化バリウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化アルミニウム−酸化バリウム粉末にPt粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0034】
実施例4
(実施例1の平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径6.3nmのPd粒子担持触媒)
1.酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
実施例1で得られものと同じ平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を用いた。
2.粒子径を制御したPd粒子の調製
硝酸パラジウムPd(NO(1mol=230.43g)を水に溶解し、水溶液とした。これに、Pt:PVPモノマー=1:10(モル比)となるように、PVP(ポリビニルピロリドン、(CNO)、MW=35000)を溶解した水溶液を滴下した。次に、エタノールを加え、約80℃の油浴で8時間加熱還流した。
このようにして調製した場合、Pd粒子は平均粒子径が6.3nmであった。
3.排ガス浄化触媒の調製
このようにして得たPd溶液に、先に合成した酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化セリウム−酸化ジルコニウム粉末にPd粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPd担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0035】
実施例5
(実施例2の平均細孔径5.8nmの酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径7.6nmのRh粒子担持触媒)
1.酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
実施例2で得られものと同じ平均細孔径5.8nmの酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を用いた。
2.粒子径を制御したRh粒子の調製
塩化ロジウムRhCl(1mol=209.28g)を水に溶解し、水溶液とした。これに、Pt:PVPモノマー=1:5(モル比となるように、PVP(ポリビニルピロリドン、(CNO)、MW=35000)を溶解した水溶液を滴下した。次に、エタノールを加え、約80℃の油浴で8時間加熱還流した。
このようにして調製した場合、Rh粒子は平均粒子径が7.6nmであった。
3.排ガス浄化触媒の調製
このようにして得たRh溶液に、先に合成した酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム粉末にRh粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のRh担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0036】
比較例1
(平均細孔径10.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径12.5nmのPt粒子担持触媒)
1.酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
硝酸二アンモニウムセリウムCe(NH(NO(1モル=548.22g)と硝酸ジルコニル二水和物ZrO(NO・2HO(1モル=267.26g)とをCe:Zr=1:1(モル比)になるように秤採り、水に溶解して水溶液とした。この水溶液を攪拌しながら、pHが12になるまでアンモニア水を滴下し、沈殿物を得た。その後、遠心分離し、沈殿物を得た後、120℃で一昼夜乾燥し、その乾燥粉末を900℃で5時間焼成した。
得られた複合酸化物粉末の細孔分布を図9に示す。細孔分布は窒素吸着により測定し、BJH法による平均細孔径は10.1nmであった。
2.粒子径を制御したPt粒子の調製
塩化白金酸六水和物HPtCl・6HO(1mol=517.90g)を水に溶解し、水溶液とした。これに、Pt:PVPモノマー=1:10(モル比)となるように、PVP(ポリビニルピロリドン、(CNO)、MW=35000)を溶解した水溶液を滴下した。次に、メタノールを加え、約80℃の油浴で8時間加熱還流した。
このようにして調製した場合、Pt粒子は平均粒子径が12.5nmであった。
3.排ガス浄化触媒の調製
このようにして得たPt溶液に、先に合成した酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を加え、攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、酸化セリウム−酸化ジルコニウム粉末にPt粒子を担持させた排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0037】
比較例2
(実施例1の平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均粒子径6.3nmのPt粒子担持触媒)
1.酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の合成
実施例1で得られたものと同じ平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末を用いた。
2.排ガス浄化触媒の調製
ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液に、上記複合酸化物を加え攪拌した後、120℃で一昼夜攪拌して乾燥し、大気中、500℃で2時間焼成して、排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。
Pt粒子径は、水溶液のため、TEMで観察することができないため、COパルス吸着法により、担持後の粒子径を測定した。Pt粒子は平均粒子径が1.2nmであった。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0038】
比較例3
(実施例2で用いた平均細孔径5.8nmの酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均細孔径12.1nmのPt粒子担持触媒)
実施例2で得られたものと同じ酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末と比較例1で得られたものと同じPt水溶液とを用いた他は実施例2と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPt担持量は0.5質量%とした。また、Pt粒子は平均粒子径が12.5nmである。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0039】
比較例4
(実施例1で用いた平均細孔径4.1nmの酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均細孔径0.8nmのPd粒子担持触媒)
実施例1で得られたものと同じ酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末と、硝酸パラジウム水溶液とを用いた他は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。この触媒のPd担持量は0.5質量%とした。
Pd粒子径は、水溶液のため、TEMで観察することができないため、COパルス吸着法により、担持後の粒子径を測定した。Pd粒子は平均粒子径が0.8nmであった。
得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0040】
比較例5
(実施例2で用いた平均細孔径5.8nmの酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物/平均細孔径0.7nmのRh粒子担持触媒)
実施例2で得られたものと同じ酸化アルミニウム−酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物粉末と、硝酸ロジウム水溶液とを用いた他は実施例2と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。この触媒のRh担持量は0.5質量%とした。
Rh粒子径は、水溶液のため、TEMで観察することができないため、COパルス吸着法により、担持後の粒子径を測定した。Rh粒子は平均粒子径が0.7nmであった。
また、得られた排ガス浄化触媒について透過型電子顕微鏡(TEM)によって撮影した写真(倍率:1000000倍)を図4に示す。図4によれば、明瞭ではないが6個のRh粒子が酸化物担体に分散して埋没していることが確認できる。
また、得られた排ガス浄化触媒について、前記の方法によって耐久試験後のHC浄化性能を評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0041】
【表1】

表1の実施例1〜5の結果は、貴金属粒子の平均粒子径が10nm未満であって且つ酸化物担体の平均細孔径よりも大きい本発明の排ガス浄化触媒では、耐久試験後のHC浄化率が93%以上の優れた浄化性能を示している。これに対して、表1の比較例2、4および5の結果は、貴金属の平均粒子径<酸化物担体の平均細孔径 の関係にある排ガス浄化触媒では耐久試験後のHC浄化率が約89%以下である。また、表1の比較例1および3の結果は、貴金属の平均粒子径>酸化物担体の平均細孔径の関係にあっても貴金属の平均粒子径が10nm以上である排ガス浄化触媒では耐久試験後のHC浄化率が約78%以下である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によって、自動車用エンジン等の内燃機関からの排ガスを浄化し得る耐久性の優れた排ガス浄化触媒が得られる。
【符号の説明】
【0043】
1 貴金属粒子
2 酸化物担体の細孔径
3 酸化物担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有する酸化物担体に貴金属粒子を担持させてなり、貴金属粒子の平均粒子径が10nm未満であって且つ酸化物担体の平均細孔径よりも大きいことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
酸化物担体が、酸化セリウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムのうちのうちの少なくとも1つ以上、もしくはアルカリ土類金属を含む酸化物である請求項1に記載の排ガス浄化触媒。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−16091(P2011−16091A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163077(P2009−163077)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】