説明

排出ホースおよびこれを使用したトイレシステム

【課題】排出ホースの暴れを軽減する。
【解決手段】排出ホース本体14の先端に制水筒部150が取り付けられる。制水筒部は、筒状体か、逆漏斗状(ラッパ状)をなす筒体であり、内部に複数の制水片が設けられている。制水片は、吐出量をできるだけ一定すると共に、吐出速度を緩めることができるように、千鳥状に配列形成される。制水筒部150によって、排出ホース本体の先端部から吐出する吐出物(汚物など)の吐出量がほぼ一定となり、吐出速度(流速)も緩やかになることから、簡易トイレ装置から圧送された流状物(汚物)によって排出ホースの先端が暴れたりすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内で使用できる可搬型簡易トイレに適用できる排出ホースおよびこれを使用したトイレシステムに関する。詳しくは、排出ホース本体の先端に制水筒部を設けることで、圧送物の吐出時に発生する排出ホース本体のぶれなどを解消できるようにしたものである。また、圧送された汚物などが便器内に飛散しないようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
介護を必要とする老人や、身体が不自由で室内の既設トイレまで出向くことが困難な人のために、可搬型の簡易トイレ装置が開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
この可搬型簡易トイレ装置は、室内に設置できるように椅子型に構成され、椅子に座って用を足すことができる。可搬型簡易トイレ装置には便器に洗浄水を流すための給水ホースと、汚物を排出する排出用の排出ホースおよび汚物を圧送する手段が設けられている。そしてその給水および排出は既設トイレを利用して行うようにしている。
【0004】
このように既設トイレを利用して可搬型簡易トイレ装置の汚物を処理するトイレシステムは、例えば図20のように構成することができる。
【0005】
図20に示すトイレシステムは、家屋1の廊下2に面して既設トイレ3が設置された例である。既設トイレ3内には便器4と洗浄用注水タンク5が設置されている。廊下2に沿ってこの例では寝室としての部屋6が位置し、部屋6内には例えばベッド7が置かれている。部屋6の一部に可搬型簡易トイレ装置10が置かれ、既設トイレ3に出向かずに、この簡易トイレ装置10によって用便を足すことができる。
【0006】
可搬型簡易トイレ装置10は、水洗トイレである。そのため、給水手段と排出手段が設けられ、給水手段としての給水ホース12は上水道に連結され、排出手段としての排出ホース14は既設便器4に導かれる。
【0007】
排出ホース14は下水道管に連結することもできるが、そうすると配管工事を行う必要があり、コストが嵩む。既設便器4に排出ホース14用の連結部を設ける場合も、便器を改造したり、新たな便器を用意しなければならないので、同じくコストが嵩む。図20は、既設便器4をそのまま利用できるようにしたものである。
【0008】
既設便器4をそのまま利用する場合には、排出ホース14の先端部は例えば図21のように連結されることになる。この例では、便座118の下面に設けられた台座118aによって得られる既設便器4との間の空間を利用して、排出ホース14が挿通される。既設便器4には簡単なホース抑え120が便座118に取り付けられる。排出ホース14の先端14bはフリーであるが、既設便器4の内部に固定することもできる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−275885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図21のように既設便器4をそのまま利用して排出ホース14を設置すると、洗浄水の水圧のみでは排出ホース14内に汚物が滞留するおそれがあるので、可搬型簡易トイレ装置10としては、圧送型の水洗トイレであるのが望ましい。
【0011】
圧送式に構成したとき、排出ホース14にはある程度の送圧がかかるので、汚物が排出ホース14から吐出するときに、この送圧によって排出ホース14の先端部14bが不規則にぶれたり、暴れたりするおそれがある。先端部14bがぶれたりすると、汚物が既設便器4内に飛散するおそれがあるので、衛生上好ましくない。
【0012】
先端部14bを既設便器4内に固定したり、先端部14bを既設便器4の滞留水(洗浄水)内に沈めておくことも考えられるが、そうした場合でも汚物の吐出する速さが意外と速いので、汚物飛散を効果的に抑制することはできない。
【0013】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に吐出物飛散を効果的に抑制できる排出ホースおよびこれを使用したトイレシステムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る排出ホースは、ホース本体と、
このホース本体の先端に取り付けられた制水筒部とからなり、
この制水筒部は、その内部に千鳥状に配列された複数の制水片が設けられたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載したこの発明に係るトイレシステムは、既設トイレと可搬型簡易トイレ装置とで構成され、
簡易トイレ装置には汚物排出用の排出ホースが連結され、
上記排出ホースの先端に取り付けられた制水筒部は、上記既設トイレの便器と便座の間を介して上記便器の内部に固定されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、排出ホース本体の先端に制水筒部が取り付けられる。制水筒部は、排出ホース本体の先端部から吐出する吐出物(汚物など)の吐出量や吐出速度(流速)を制限するために設けられたものである。制水筒部は、筒状体か、逆漏斗状(ラッパ状)をなす筒体であり、内部に複数の制水片が設けられている。
【0017】
制水片は、吐出量をできるだけ一定すると共に、吐出速度を緩めることができるように、千鳥状に配列形成される。ただし、制水片の長さや幅および制水片の配列間隔や個数などは、吐出物の吐出を妨げないように選定される。
【0018】
制水片によって、制水筒部の先端開口部における流状物吐出速度(流速)を減速させることができると共に、その内圧を分散させることができるから、流状物が圧送されても、減速した状態でほぼ一定量ずつ流状物を吐出させることができる。内圧を逓減できるから、排出ホースの先端部が流状物の吐出圧の反力によって暴れ出すことはなくなり、流状物の飛散を回避できる。
【0019】
したがって、この排出ホースをトイレシステムを構築する可搬型簡易トイレ装置と既設便器との間に適用すると、汚物を圧送しても、既設便器内全体に汚物が飛散するようなことがなくなり、衛生的である。
【0020】
可搬型簡易トイレ装置は、圧送式の水洗トイレである。簡易トイレ装置は、便器の開口部の近傍から洗浄水が給水される給水口と、該開口部の奥底に設けられた溜まり部と、該溜まり部と連通する排出口とを備えた便器本体を有する。
【0021】
溜まり部内には汚物の粉砕手段が取り付けられる。溜まり部の上方には汚物の粉砕物を圧送する粉砕物圧送手段が設けられ、さらにこの粉砕物圧送手段の上方側に溜まり部を密閉する開閉蓋が設けられる。便器本体の排出口側には開閉弁(排出用電磁弁)を備える。
【0022】
汚物などが開閉蓋に落下すると、その重みで開閉蓋の先端部が縮径部の縁部から離れて、汚物はその自重によって自動的に溜まり部内に落下する。排便後は開閉蓋が自動的に閉まるので、溜まり部が再び自動的に密閉される。汚物からの防臭と粉砕手段の隠蔽ができる。
【0023】
粉砕手段を駆動して汚物を粉砕する。汚物の粉砕処理後は溜まり部内に圧縮空気を送って溜まり部内を加圧(2気圧程度)する。その後、排出用電磁弁を開くことで、粉砕した流状物が排出ホースを介して既設便器側に圧送される。この圧送処理によって流状物を排出ホース内に滞留させることなく既設便器に排出できる。
【0024】
簡易トイレ装置に給水する洗浄用の給水ホースと、上述した排出ホースとを一体化すれば、これらホースの取り付け、取り外し及び引き回しが容易になる。
【発明の効果】
【0025】
この発明では、制水筒部を備えた排出ホースを提供するものである。またこの発明ではこのような排出ホースを備えたトイレシステムを提供するものである。
【0026】
これによれば、制水筒部によって流状物の吐出量や吐出速度を抑えることができるから、流状物の吐出時に排出ホースの先端部が暴れたりすることを回避できる。そのため、この排出ホースを備えたトイレシステムでは、既設便器内に汚物を排出するときの排出ホース先端部の暴れを抑制できるので、衛生的なトイレシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
続いて、この発明に係る排出ホースおよびこれを使用したトイレシステムの好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。この発明に適用できる可搬型簡易トイレ装置は特にお尻洗浄機能の付いた、いわゆる温水洗浄便座付きの簡易トイレ装置が好適である。以下の説明はこの温水洗浄便座の設備についての説明は省いてある。可搬型簡易トイレ装置は洋式水洗トイレに適用した場合である。
【実施例1】
【0028】
この発明に係るトイレシステムは、図20に示すように既設トイレ3と可搬型簡易トイレ装置10と、これらの間を連結する給水ホース12と排出ホース14とで構築される。図20の構成は既に説明したので、その詳細は割愛する。既設トイレ3も洋式の水洗トイレである。可搬型簡易トイレ装置10は、圧送式の水洗トイレである。
【0029】
図1はこの発明に適用できる圧送式の可搬型簡易トイレ装置10の一例を示す要部断面図である。この可搬型簡易トイレ装置10は便器本体20を有する。便器本体20は通常の水洗式トイレ(洋式トイレ)とほぼ同じ漏斗状の断面形状をなすが、その全体形状は箱型として構成される。なお、近年はインテリア要素も強く求められる傾向にあり必ずしも箱形だけではなく、例えば肘掛けのある椅子型のものも利用されている。
【0030】
便器本体20を軽量化するため、この例では便器本体20はプラスチックによる成型品であるが陶器等の他の素材を使用して成形してもよい。便器本体20の上部開口部側には便座21が位置すると共に、この便座21および上部開口部を閉塞するような便蓋23が設けられている。
【0031】
便器本体20の底部がトラップ水(溜まり水)や汚物の溜まり部18となる。
溜まり部18に連通して断面が略「へ」の字状をなす排出部22が設けられ、排出口27にこの発明にかかる排出ホース14が連結される。
【0032】
断面が略「へ」の字状の部位は、一般にS字トラップと呼称されることが多い。そのため、この例では便器本体20の背面部20bに連結部26が設けられると共に、便器本体20の内部であって、開閉弁として機能する電磁弁24が連結部26に近接して設けられている。溜まり部18に連通する排出部22の略「へ」の字状の形状は、図示の形状の他にP型、U型、椀型などが考えられる。これらの形状はいずれも同様な作用効果が得られる。
【0033】
電磁弁24は、溜まり部18内のトラップ水(汚物を含んだ水)を便器外に排出するときだけ開くように制御され、トイレを使用していないときは閉じられている。漏水を防止するためである。この電磁弁24は漏水防止の他に、圧送手段を構成するエアコンプレッサ(後述する)を使用して溜まり部18内を加圧(2気圧程度)するときの圧縮空気の漏止を防止する機能もある。
【0034】
便器本体20の上部近辺で、排出部側の壁面18aには洗浄水の給水口28が設けられている。本体背面部20bに設けられた連結部34とこの給水口28との間には連結管30が配される。連結管30は分岐管が使用され、給水口28に向かう連結管30に洗浄水を制御するための電磁弁32が取り付けられている。連結部34に連結される給水ホース12からの給水をこの電磁弁32によって制御できるようにするためである。
【0035】
分岐された連結管30にも電磁弁33を介して洗浄ホース(洗浄管)240が連結されている。洗浄ホース240の先端部は溜まり部18のトラップ水の水面よりも上側に突出するように設けられている。この洗浄ホース240による注水(実際には噴射)によって、後述するように溜まり部18内と開閉蓋212の裏面の洗浄が行われる。
【0036】
給水口28と壁面18aとの間にはゴム状の漏水防止管29が介挿され、さらに洗浄ホース240が貫通する溜まり部18にも漏水防止管242が介挿され、外部への漏水の防止を図っている。
【0037】
溜まり部18の底部には排泄物等の粉砕手段40が設けられる。粉砕手段40は溜まり部18内に溜まった汚物(排泄物など)やトイレットペーパー(以下汚物と総称する)を砕くためのもので、粉砕した流状物はトラップ水と混合して排出される。
【0038】
粉砕手段40はモータ(電磁モータ)42と粉砕羽根44とで構成することができ、図1ではそのうち粉砕羽根44のみ溜まり部18内に臨むように取り付けられる。そのため、モータ42は溜まり部18の底部外壁19側に配置され、ボルトやナットによる支持具46によって便器本体20に取り付け固定される。モータ42の回転軸は溜まり部18の底部と水密的に係合されている。モータ42は溜まり部18の底部外壁側ではなく、便器本体20の底面板20cに固定するようにしてもよい。
【0039】
底面板20cの内側にはCPUなどで構成された制御部50が配される。上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、33、モータ42などの各駆動が、制御部50によって所定のタイミングで所定の時間だけ制御される。制御部50用の電源スイッチ52は本体背面部20bに設けられ、本体上面部であって、便蓋23の下面には開閉スイッチ55(後述する)が設けられている。
【0040】
可搬型簡易トイレ装置10はさらに以下の構造を有する。図1に示すように、便器本体20における溜まり部18の上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物用圧送手段200が設けられる。この溜まり部18の上部であって、圧送手段200の取り付け位置よりも若干上部側に縮径部230が設けられる。そしてこの縮径部230を閉塞し、溜まり部18を密閉できるように、縮径部230の下面には開閉蓋機構210が設けられる。
【0041】
圧送手段200はエアコンプレッサで構成することができ、このエアコンプレッサ200の送給管204が取り付け手段206を介して溜まり部18側に導出される。取り付け手段206は溜まり部18のトラップ水の水面より上部に設けられる。エアコンプレッサ200は便器本体20の背面空間部20a内に設けられた取り付け板202に固定される。
【0042】
便器本体20にエアコンプレッサ200を備えるのではなく、可搬型簡易トイレ装置本体の外部より圧縮空気を取り入れるような機構であっても、同様の作用を期待できる。
【0043】
縮径部230は環状フランジ部として構成され、溜まり部18の内面に向かうように所定長だけ突出している。上述した送給管204は溜まり部18のトラップ水と縮径部230との間に位置している。
【0044】
縮径部230は図1からも明らかなように、その全体が多少排出部22側に傾斜するように設けられている。縮径部230の下面側には、この縮径部230を閉塞できるような開閉蓋機構210が設けられている。開閉蓋機構210としては、回動式とスライド式が考えられる。図1の例は回動式である。
【0045】
この例では、回動式であるため、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212を有する。蓋本体212の一端、図の例では右端部が回動軸部214となされ、この回動軸部214が縮径部230の下面部232に位置するように、便器本体20に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体20に対して水密的に軸支されている。
【0046】
蓋本体212は、その周面が縮径部230の下面縁部234と当接した状態となるように付勢される。蓋本体212は下面縁部234に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部234に接触して溜まり部18内を密閉できるように、回動軸部214と下面部232の壁面との間には付勢用のバネ216が巻き付けられている。
【0047】
上述したように縮径部230は排出部22側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212自体も、排出部22側に傾いて取り付けられる。このように蓋本体212を傾けて取り付けるようにすれば、蓋本体212の上面に落下した排泄物を残らず、溜まり部18内に落とし込むことができる(図2参照)。
【0048】
上述した洗浄ホース240は、蓋本体212の裏面側と溜まり部18の周面の一部の双方に、洗浄水を噴射できるような角度をもってその先端部が溜まり部18内に取り付けられる。この例では図1に示すように、蓋本体212の回動軸部214の近傍であって、その下部側に水密的に取り付け固定される。
【0049】
このように構成された便器本体20には給水ホース12と排出ホース14とが連結されると共に、それらは既設トイレ3に導かれる。
【0050】
図3は既設トイレ3の概要を示す。
図3は温水洗浄便座80を備えた既設便器4を例示する。この場合には水道管(上水道管)82に分岐管84が連結され、この分岐管84のうち水道管82側に第1の分岐口86が設けられ、ここに温水洗浄便座用のホース87が連結される。そして第1の分岐口86より末端に近い方に第2の分岐口88が設けられ、ここに洗浄水用のホース89が連結される。
【0051】
この例では、このような分岐構成の分岐管84が使用されると共に、第1と第2の分岐口86,88との間に逆止弁90が設置されると共に、分岐管84の末端部に給水ホース12に対する連結部92が設けられる。この連結部92に給水ホース12の先端に設けられた連結部60Aが連結される。
【0052】
このように新たな分岐管84を設け、ここに給水ホース12を取り付けることによって可搬型簡易トイレ装置10に洗浄水を供給できる。なお、第1と第2の分岐口86,88との間に逆止弁90を設置したのは、万が一ホース89や給水ホース12側からの水が逆流して温水洗浄便座側に供給する水と混じり合わないようにするためである。
【0053】
分岐管84の末端部分にはさらに消毒液用の連結部に消毒液を満たしたタンク96が挿着される。消毒液を使用することで、既設トイレ3はもちろんのこと可搬型簡易トイレ装置10の衛生状態を改善できる。更に、排出ホースも同時に洗浄できるものである。なお、タンク96は必ずしも備えられていなくてはならないものではなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0054】
このように既存のトイレの配水系を流用すれば、分岐管84を付設するだけの簡単な増設工事で可搬型簡易トイレ装置10を使用することができる。
【0055】
排出ホース14は、制水筒部150が既設便器4内に臨むように、既設便器4と便座118との間から差し込まれる。挿通の仕方は図21に示した通りである。
【0056】
図4は給水ホース12の一例を、図5は排出ホース14の一例を示す。給水ホース12の一端部12aを上水道管側に接続される端部とし、他端部12bを可搬型簡易トイレ装置10に接続される端部としたとき、一端部12a及び他端部12bに各々逆止弁付きの連結部60A,60Bが取り付けられている。
【0057】
排出ホース14には一端部14aに逆止弁付きの連結部62Aが付設され、他端部14bに制水筒部150が設けられる。一端部14aは可搬型簡易トイレ装置10側に連結される端部である。
【0058】
給水ホース12は便器本体20に供給される洗浄水用として使用されるものであるから、小径のビニルホースなどを使用することができる。これに対して、排出ホース14は、その管内を汚物などを粉砕した流状物が流れるものであるから、給水ホース12と同径か僅かに太い径のビニルホースなどを使用することができる。これは固まった汚物ではなく、洗浄水と混合した流状物を取り扱うためである。図5は、給水ホース12よりも大径の排出ホース14を使用した場合である。
【0059】
給水ホース12と排出ホース14とで異なる管径のホースを使用すると、元々太さが違うために、給水ホース12を排出ホースとして使用したり、排出ホース14を給水ホースと間違って連結したりする、初歩的な誤連結作業を確実に防止できる。
【0060】
逆止弁付きの連結部60(62)は、例えば図6のように本体63の中空内部に断面矩形状の弁作動室64が設けられ、ここに弁作用をなす球体65とそれに対する押圧バネ66とが設けられ、水圧が矢印a方向に作用することで弁が開くようになっている。これにより可搬型簡易トイレ装置側と上水道管側からの双方の逆流防止を行っている。
【0061】
一方、他方の連結部60Bにあっては、これを可搬型簡易トイレ装置10側に連結したとき、逆止弁の球体65が押圧バネ66に抗して後退する凸部(図示せず)を、可搬型簡易トイレ装置側に設けることで、連結部60を連結したときには内部の弁が開放されて連通状態となり、連結を外したときには内部の弁が閉じ、ホース内の液体が外部に漏れ出さないように構成されている。
【0062】
排出ホース14に取り付けられた制水筒部150は既設便器4の内部に位置するように、この既設便器4の開口端縁4aを乗り越えて取り付けられる。そのとき、排出ホース14を固定するためホース抑え120が使用され、これが既設便器4の開口端縁4aに装着固定される。
【0063】
図7はこのホース抑え120の具体例を示す。ホース抑え120は樹脂などで成形されたもので、ホース抑え本体121は断面「ワ」の字状をなし、開口端縁4aに沿った形状となされている。本体121の左端部121aは開口端縁4aのうち外端縁側を抑える抑え片として機能する。同じく右端部121bは開口端縁4aのうち内側端縁を抑えるための抑え片として機能する。本体121の上面には第1のホース抑え部123が設けられる。第1のホース抑え部123は「ハ」の字状をなし、その内径部は排出ホース14よりも僅かに径大となされている。
【0064】
右端部121b側は、左端部121aよりも大凡2倍程度長くなされると共に、先端部が多少外側に反り返るように成形されている。そして、その端部側には外側に向かうような第2のホース抑え部125が本体121と一体成形されている。第2のホース抑え部125もまた「ハ」の字状をなし、その内径部は排出ホース14よりも僅かに径大となされている。
【0065】
図9はこのホース抑え120を開口端縁4a側に装着した状態を示す。図9は特に便座118の底部に設けられた台座118aの奥側にホース抑え120が装着されている場合を示す。
【0066】
図10はホース抑え120の装着状態の断面を示す。排出ホース14としては、この発明に係る排出ホース14が使用される。この排出ホース14は、そのホース本体145と、ホース本体145の先端部に取り付け固定された制水筒部150とで構成される。排出ホース14は第1と第2のホース抑え部123,125のそれぞれによってその周面が抑えられながら既設便器4の内部に引き込まれる。
【0067】
なお、便座118を降ろしたとき、台座118aによって生まれる便座118底部との空間内に排出ホース14が収まるように、排出ホース14の外径、第1のホース抑え部123の高さや、台座118aの高さなどが選定されているものとする。
【0068】
既設便器4の内部まで引き込まれた排出ホース14の先端部に取り付けられた制水筒部150は、既設便器4のくびれ部4b付近に取着されて固定される。例えば、ラッパ状をなすゴム状の吸着体148などによって、くびれ部4bに取着される。吸着体148を使用することで、くびれ部4bから制水筒部150を取り外すこともできるから制水筒部150の清掃が容易になる。
【0069】
図11は制水筒部150の一例を示す要部断面図である。制水筒部150はホース本体145に対する連結部151と、この連結部151に連なって設けられた筒部本体152とで構成される。筒部本体152は円筒体が使用され、その内部には複数の制水片154が設けられる。
【0070】
制水片154は千鳥状に配され、図11の場合にはほぼ半円状をなす右側制水片154aと、同じくほぼ半円状をなす左側制水片154bとを有し、これらが所定の間隔を保持して複数個千鳥状に配される。制水片154は流状物の流れる方向に突き出すようにほぼ流れ方向に対し直交するように設けられる。
【0071】
制水片154は排出ホース14から排出された流状物が、その流速を抑えながら一定量ずつ流下するようにするための制動片である。制水片154の個数、大きさ、配列間隔などは任意であるが、個数が余り多すぎたり、配列間隔が狭いと、流れ下る流状物がよどんでしまったり、流れ下る時間が長くなってしまうおそれがあるので、排出ホース14の内径などにあわせて選定する必要がある。図11の例では、トータル3個の制水片154を使用して制水筒部150を構成した場合であり、これでも充分な制水効果(吐出量の制限および減速効果)が得られる。
【0072】
このように制水片154によって、制水筒部150の先端開口部における流状物吐出速度(流速)を減速させることができると共に、その内圧を分散させることができるから、流状物が圧送されても、減速した状態でほぼ一定量ずつ流状物を吐出させることができる。内圧を逓減できるから、排出ホース14の先端部、つまり制水筒部150が流状物の吐出圧の反力によって暴れ出すことはなくなり、流状物の飛散を回避できる。
【0073】
したがって、制水筒部150の付いた排出ホース14をトイレシステムの可搬型簡易トイレ装置10と既設便器4との間に適用すると、汚物を圧送しても、既設便器内全体に汚物が飛散するようなことがなくなり、衛生的である。
【0074】
図12以下はこの制水筒部150の他の例であって、図12は図11と同一の制水片154が使用されるものの、制水片154の突出方向を多少流下方向に傾けた場合である。これによって流状物の通過がよりスムーズとなる。
【0075】
図13の例は、筒部本体152を円筒体ではなく、逆漏斗状(ラッパ状)にした場合であり、その他の構成は図11と同じである。下流に向かって開口させることで、流状物の反力を抑制できるため、流状物の流下に伴う暴れを少なくできる。
【0076】
図14は図13の変形例であって、制水片154の傾きを図12の場合と同じようにした場合である。その効果は図12と同様である。
【0077】
図15は、制水片154の他に、制水片154の上部に分流片156を設けた場合である。そのため、筒部本体152は角状体が使用されると共に、分流片156は図16に示すように円弧状をなし、その凸部が上流側を向くように設けられる。
【0078】
流状物はこの分流片156に衝突することで、流速が弱められると共に、左右に分流することで筒部本体152内を均等に流下するようになるため、制水効果を一層高めることができる。
【0079】
図17は可搬型簡易トイレ装置10の制御系の一例を示す。上述した電源スイッチ52の他に、開閉スイッチ55および水抜きスイッチ244が設けられ、それらのオンオフ信号が制御部50に供給される。
【0080】
電源スイッチ52は可搬型簡易トイレ装置10を設置するときにスイッチが投入される。これに対し、開閉スイッチ55は便座21の上部を閉蓋するための便蓋23の開閉に関連してオンオフするスイッチである。したがって、図1に示すようにこの例では便蓋23と対向するように便蓋23の下面に開閉スイッチ55(開閉検知センサースイッチなど)が取り付けられる。水抜きスイッチ244は例えば便蓋23よりも奥に設けることができる。使用頻度が少ないからである。
【0081】
CPUで構成されたこの制御部50からの制御信号によって上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、洗浄用電磁弁33、粉砕用モータ42およびエアコンプレッサ200の各駆動状態が制御される。
【0082】
図18はその制御タイミング例を示す。この可搬型簡易トイレ装置10の場合には、トイレが使用されていないときは開閉蓋である蓋本体212は閉じられた状態にあるものとする。
【0083】
可搬型簡易トイレ装置10は便蓋23を開けて使用する。便蓋23の開操作は開閉スイッチ55(開閉検知センサースイッチなど)によって検出される(図18A)。便蓋23を開けているうちに用を足す。排泄物が蓋本体212に落下すると、その自重によって蓋本体212が開いて、排泄物は溜まり部18のトラップ水内に落下する(図2参照)。排泄物が落下すると、蓋本体212は自動的に閉じる。これは蓋本体212が常時縮径部230側に付勢されているからである。
【0084】
排便の用が済んだら便蓋23を閉じる(図18A)。閉蓋と判断されると、期間Taに亘って排泄物に対する粉砕処理がなされる(図18B)。なお、便蓋23を閉じる動作を行う代わりに、手動操作によって開閉スイッチ55に相当するような始動スイッチを作動させて粉砕処理の開始がなされるようにしても良い。粉砕処理時間Taは汚物やトイレットペーパーを充分粉砕できる時間に選定される。通常は20秒以下、好ましくは5〜10秒程度の時間に設定される。
【0085】
粉砕処理が終了すると、エアコンプレッサ200が駆動されて、溜まり部18の内部に圧縮空気が送給されて加圧される(図18E)。加圧処理時間Tbは溜まり部18内の内圧が所定値(例えば2気圧)まで上昇する時間に設定される。内圧の所定値とは、排出ホース14を介して既設便器4内に流状物を確実に圧送して排出できる程度の圧力を言う。実際には内圧の所定値となる時間Tbが予め設定され、この時間Tbがカウントされる。
【0086】
加圧時間Tbが経過すると、エアコンプレッサ200を駆動した状態で、つまり圧縮空気を溜まり部18の内部に送給した状態で、排出用電磁弁24が駆動される(図18D)。排出用電磁弁24が駆動されて排出口27が開けられると、溜まり部18内のトラップ水(流状物)は、圧縮空気によって一気に圧送されて、排出ホース14側へと排出される。排出ホース14は既設便器4に連結されているので、粉砕手段40によって粉砕された排泄物が既設便器4側に排出される。
【0087】
圧送期間Tcは排出ホース14の設置長によっても相違するが、排出ホース14内に流状物が残留しないようにするため、通常の場合には比較的長めの時間、例えば10〜30秒程度に設定される。
【0088】
圧送期間Tcが経過すると、排出用電磁弁24への通電が解除されると共に、エアコンプレッサ200の駆動を停止する(図18D,E)。これで、排出口27が閉じられる。その後、給水用電磁弁32が作動して溜まり部18内への給水が開始される(図18C)。その給水時間Tdは、溜まり部18内のトラップ水が所定量となる注水時間に設定される。ここに、所定量とはトラップ水の水面が排出部22の屈曲部を超えるまでの貯水量を言う。溜まり部18への注水が完了することで、待機状態となる。
【0089】
なお、この例では、図18Cに示すように給水用の電磁弁32の作動に同期して洗浄用の電磁弁33も作動させている。この電磁弁33が作動すると、洗浄ホース240を介して溜まり部18内への注水、具体的には蓋本体212の裏面への噴射および溜まり部18の壁面への噴射が行われる。この洗浄水の噴射によって、蓋本体212の裏面および溜まり部18の壁面の洗浄が行われるから、蓋本体212と溜まり部18内を常に清潔に保つことができる。
【0090】
溜まり部18内への給水と蓋本体212などに対する洗浄とを同時に行うのではなく、溜まり部18内への給水を行う前、つまり流状物の圧送・排出処理が終了してから洗浄処理を行って、そのときの洗浄水も同時に圧送・排出するようにしてもよい。したがって、溜まり部18内への給水はその後、電磁弁24を閉じてから行うことになる。
【0091】
可搬型の簡易トイレ装置10を移動したり、撤去するときには、溜まり部18内のトラップ水は排出しておいた方が好ましい。この水抜き処理は、上述した排出処理とは独立して行われる。その場合には、図19に示すように水抜きスイッチ244をオンにして、エアコンプレッサ200を作動させる(図19A,C)。エアコンプレッサ200の始動によって溜まり部18内は加圧される(図19C)。期間Tfに亘る加圧処理が終了すると、排出用電磁弁24が作動して所定期間Tgに亘り排出口が開けられる(図19B)。
【0092】
この加圧圧送によってトラップ水を溜まり部18内から排出することができる。そして、エアコンプレッサ200の駆動が停止されてから若干時間ΔTfを置いて排出用電磁弁24を閉じる。こうすることで、トラップ水の排出処理(水抜き処理)が完了する。ここで、期間Tfは上述した時間Tbに、期間Tgは時間Tcにセットすればよい。
【0093】
なお、この発明の思想を逸脱することなく、種々の変形変更ができることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
この発明では、介護施設や在宅介護などの介護補助装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明に係る可搬型簡易トイレ装置の一例を示す要部の断面図である。
【図2】図1に示す可搬型簡易トイレ装置の使用状態を示す断面図である。
【図3】既設トイレ装置に給排出ホースを連結したときの例を示す概念図である。
【図4】給水ホースの構成例を示す図である。
【図5】排出ホースの構成例を示す図である。
【図6】逆止弁の一例を示す要部断面図である。
【図7】排出ホースに対するホース抑えの一例を示す斜視図である。
【図8】既設便器にホース抑えを取り付けた状態の要部断面図である。
【図9】既設便器にホース抑えを取り付けた状態の他の要部断面図である。
【図10】既設便器に排出ホースを取り付けた状態の要部断面図である。
【図11】この発明に使用される制水筒部の要部断面図である(その1)。
【図12】この発明に使用される制水筒部の要部断面図である(その2)。
【図13】この発明に使用される制水筒部の要部断面図である(その3)。
【図14】この発明に使用される制水筒部の要部断面図である(その4)。
【図15】この発明に使用される制水筒部の要部断面図である(その5)。
【図16】図15のI−I線上断面図である。
【図17】この発明に係る可搬型簡易トイレ装置の制御系の一例を示す系統図である。
【図18】その動作説明に供する波形図である。
【図19】水抜きの動作説明に供する波形図である。
【図20】トイレシステムの一例を示す説明図である。
【図21】既設便器に対する排出ホースの取り付け例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10・・・可搬型簡易トイレ装置
14・・・排出ホース
18・・・溜まり部
20・・・便器本体
24,32・・・電磁弁
22・・・排出部
28・・・給水口
40・・・粉砕手段
42・・・モータ
200・・・粉砕物圧送手段
210・・・開閉蓋機構
120・・・ホース抑え
150・・・制水筒部
154・・・制水片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、
このホース本体の先端に取り付けられた制水筒部とからなり、
この制水筒部は、その内部に複数の制水片が設けられた
ことを特徴とする排出ホース。
【請求項2】
上記制水筒部は、筒状体か、逆漏斗状筒体であって、
上記複数の制水片がその内部に千鳥状に配列された
ことを特徴とする請求項1記載の排出ホース。
【請求項3】
既設トイレと可搬型簡易トイレ装置とで構成され、
簡易トイレ装置には汚物排出用の排出ホースが連結され、
上記排出ホースの先端に取り付けられた制水筒部は、上記既設トイレの便器と便座の間を介して上記便器の内部に固定される
ことを特徴とするトイレシステム。
【請求項4】
上記可搬型簡易トイレ装置は、圧送式の水洗トイレであって、
便器の開口部の近傍から洗浄水が給水される給水口と、該開口部の奥底に設けられた溜まり部と、該溜まり部と連通して上記排出ホースが連結される排出口とを備えた便器本体と、
上記溜まり部に配設された汚物の粉砕手段と、
上記溜まり部の上方側に設けられると共に、上記汚物の粉砕物を圧送する粉砕物圧送手段と、
上記粉砕物圧送手段の上方側に配設されると共に、上記溜まり部を密閉する開閉蓋とを備える
ことを特徴とする請求項3記載のトイレシステム。
【請求項5】
上記排出口は、近傍に開閉弁機構を備え、
上記粉砕物圧送手段を作動させて上記密閉された空間の内圧が所定以上に上昇したときに上記開閉弁機構を開放することで、上記既設トイレの汚物を上記便器側に圧送する
ことを特徴とする請求項4記載のトイレシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−217996(P2007−217996A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41130(P2006−41130)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】