説明

排出装置

【課題】傾斜状態の膨張ホースを利用して落下速度を抑制しながら材料を供給し得る排出装置を提供する。
【解決手段】コンテナ容器3から傾斜状態の排出シュート20を通して落下させて材料を排出する排出装置100において、排出シュート20は、2層のシート層を有する膨張ホース1と、筒状部材であって膨張ホース1のシート層に挟まれた空間に設けられたパイプ2と、膨張ホース1のシート層に挟まれた空間に空気を供給する空気供給装置6Aと、膨張ホース1のシート層に挟まれた空間から空気を排出する脱気装置6Bと、を備え、パイプ2と膨張ホース1は傾斜した状態で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方の容器から下方の装置へ材料を排出する排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の製造工程においては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の薬剤を、排出シュートを介して落下させて下方に設置した容器や装置等に供給する排出装置がある。このような排出装置では、薬剤の落下速度を調整せずに自由落下させると、落下の衝撃により錠剤やカプセル剤に欠損が生じたり、落下過程で顆粒剤の粒子分離が生じたりするという問題があった。
【0003】
上記の問題を解決するための排出装置として、特許文献1には、筒状の可撓性シート材からなり2層のシート層を有する膨張ホースを排出シュートとして備え、膨張ホースへの供給空気を制御することにより膨張ホースの膨張状態を調整して、材料の落下速度を抑制する排出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4303980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の膨張ホースは、可撓性シート材を環状ウエイト部分で折り返して形成されているので、膨張ホースの容器への取り付け部分に傾斜角をつけても、自重及び環状ウエイトの重さで鉛直方向に垂れ下がってしまう。このため、特許文献1の排出装置は、錠剤にフィルムや糖衣等をコーティングするコーティング装置のように、材料の投入口が側方に向けて開口している製造装置への材料供給には使用できない。
【0006】
そこで、本発明では、膨張ホースを利用して落下速度を抑制しながら傾斜状態で材料を供給し得る排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排出装置は、上部に配置されたコンテナ容器から下部に配置された装置に排出シュートを通して落下させて材料を供給する排出装置である。そして、排出シュートは、2層のシート層を有する膨張ホースと、筒状部材であって膨張ホースのシート層に挟まれた空間に設けられたパイプとを含んで構成され、膨張ホースのシート層に挟まれた空間に空気を供給する空気供給装置と、膨張ホースのシート層に挟まれた空間から空気を排出する脱気装置とを備え、パイプの上端が垂直から水平の間の任意の傾斜角度で直接または間接的にコンテナ容器に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膨張ホース内が略大気圧の状態で排出シュートを傾斜させても、膨張ホース内に設けたパイプが芯となるので、膨張ホースの垂れ下がりを防止できる。このため、パイプを垂直から水平の間の任意の傾斜角度でコンテナ容器に接続することができる。つまり、排出シュートを傾斜させることができる。したがって、本発明の排出装置は、材料の投入口が側面に開口している装置に対する材料供給にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る排出装置の概略断面図である。
【図2】本発明の排出装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態による排出装置100をコーティング装置7のコーティングパン8にセットした状態を示す概略断面図である。
【0012】
排出装置100は、薬剤製造装置によって製造された錠剤やカプセル剤、顆粒剤等の供給材料9を、コンテナ容器3から落下させてコーティング装置7に供給する装置である。
【0013】
コンテナ容器3は、すり鉢状の底部を備えるホッパー3Aと、ホッパー3Aの底部を開閉するコンテナ容器用弁4とを備える。コンテナ容器用弁4の下方には、フランジ部3Bが設けられ、このフランジ部3Bには軸線が斜め下向きに湾曲し、下端にフランジ部5A、上端にフランジ部5Bを備える接続エルボ5が接続されている。接続エルボ5の出口の向きは、コンテナ容器3とコーティング装置7のレイアウトに応じて、後述する排出シュート20がコーティングパン8に入るよう設定する。
【0014】
コーティング装置7は、薬剤等の表面にフィルムや糖衣等をコーティングする為の装置である。コーティング装置7の内部には、水平方向の回転軸回りに回転するコーティングパン8が配置されており、薬剤等はコーティングパン8に供給される。コーティング装置7では、コーティングパン8を回転させて薬剤等を攪拌しながら、スプレーガン等でフィルム材料等を噴射することで、錠剤の表面にコーティングを施す。
【0015】
コーティングパン8の回転軸は水平方向に限られるわけではないが、薬剤等の攪拌性を考慮すると、水平方向に近い方が望ましい。このため、コーティングパン8に供給材料9を供給するための供給口は装置の側面に開口することになる。
【0016】
コンテナ容器3は、供給材料9が充填された状態で無人搬送車等の搬送装置により運ばれてきて、排出シュート20及び接続エルボ5を接続した後に旋回リフター等の揚重装置により持ち上げられて、コーティング装置7の斜め上方に配置される。コンテナ容器3とコーティングパン8の投入口との間に配置される排出シュート20は、筒状部材である。排出シュート20の上端は接続エルボ5のフランジ部5Aに接続され、下端はコーティングパン8に臨むように配置される。つまり、排出シュート20は傾斜した状態となる。
【0017】
なお、排出シュート20と接続エルボ5を予め接続した状態としておけば、コンテナ容器3のセットに要する時間を短縮することができる。
【0018】
排出シュート20は、可撓性シート材からなる膨張ホース1と、側面に多数の孔を有する多孔パイプ2と、空気供給ポート12及び排気ポート13を備える環状の供給部本体10とを含んで構成される。空気供給ポート12には、コンプレッサ等の空気供給装置6Aが接続される。排気ポート13には、バキュームポンプ等の脱気装置6Bが接続される。
【0019】
多孔パイプ2は、上端部が供給部本体10の内周部に接着され、または供給部本体と一体に形成されている。供給部本体10は接続エルボ5のフランジ部5Aと締め付け筒11との間で挟持される。フランジ部5Aと締め付け筒11との間の締め付けや緩めは、クランプ装置やボルト・ナット等、公知の方法を用いることができる。また、多孔パイプ2は、コンテナ容器3からコーティング装置7の投入口まで届くだけの長さを有する。ただし、膨張ホース1よりも短い。これは、膨張ホース1が膨張する際の余裕代を設けるためである。
【0020】
膨張ホース1は、1枚の可撓性シート材からなり、この可撓性シート材を所定の長さの部分で折り返すことにより、内側と外側の2層のシート層を有するホースを形成している。可撓性シートとしては、例えば厚さ100ミクロン程度のポリエチレンを用いる。この他に、ポリウレタンやゴム等も用いることができる。なお、可撓性シートを折り返す構造に代えて接着してもよい。
【0021】
図1では、内側のシート層の端部をフランジ部5Aと供給部本体10の間に、外側のシート層の端部を供給部本体10と締め付け筒11の間にそれぞれ挟み込むことで、排出装置100に固定しているが、これに限られるわけではない。
【0022】
なお、図1では簡単の為に膨張ホース1を下端まで筒状に表しているが、実際には多孔パイプ2の下端より先の部分は自重で鉛直方法下向きに垂れ下がる場合もある。このように膨張ホース1の先端側の一部が垂れ下がっても、多孔パイプ2がコーティング装置7の投入口まで届いていれば問題はない。
【0023】
多孔パイプ2は、後述するように内部に供給材料9が充満したときに、たわみ量が許容範囲に収まるような強度を確保しつつ、より軽量であることが望ましい。そこで、アクリル等の樹脂や薄肉ステンレス等の軽量素材で形成する。
【0024】
空気供給ポート12及び排気ポート13は、多孔パイプ2の内周側、外周側のいずれに開口しても構わない。内周側と外周側は、側面の多数の孔及び膨張ホース1の先端部に設けた余裕代の部分で連通しているからである。
【0025】
空気供給装置6Aから空気を供給すると、膨張ホース1の内側シート層と外側シート層の間に空気が充満し、膨張ホース1が内側に膨らむ。そして、供給し続けると排出シュート20が膨張した膨張ホース1により閉塞される。
【0026】
一方、脱気装置6Bで膨張ホース1内の空気を排出すると、膨張ホース1は収縮し、多孔パイプ2に張り付いた状態となる。
【0027】
多孔パイプ2の側面に設ける孔は、供給材料9が錠剤等の場合には、錠剤等が落下途中に孔に引っかかることを防止するために、錠剤等の径よりも小径であることが望ましい。なお、上記説明ではより軽量化を図るために多孔パイプ2を用いる場合について説明したが、側面に孔が無い筒状パイプであっても構わない。孔が無くても、膨張ホース1はその先端部で内側と外側が連通しているので、空気供給及び脱気により排出シュート20の通路を開閉することができる。
【0028】
次に、図2を参照しながら、本実施形態の排出装置100を用いた供給材料9の排出工程について説明する。図2は図1と同様の排出装置100を示す図であり、図中の2点鎖線は、膨張ホース1が排出シュート20を閉塞するまで膨張した状態から、脱気により収縮していく様子を段階的に示している。
【0029】
空気供給装置6A及び脱気装置6Bの作動はコントローラ30により制御する。コントローラ30は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ30を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。また、コントローラ30には膨張ホース1の内圧を検出する圧力センサの検出値が読み込まれる。
【0030】
錠剤等の供給材料9が充填されたコンテナ容器3が無人搬送機等により運ばれてきたら、接続エルボ5に供給部本体10及び膨張ホース1を接続した後、旋回リフターによりコーティング装置7の斜め上方にセットし、排出シュート20の出口をコーティングパン8に導く。この状態でコンテナ容器用弁4は閉弁している。
【0031】
コンテナ容器3がセットされ、作業者がスタートスイッチをオンにしたら、コントローラ30は空気供給装置6を作動させて膨張ホース1を線Aの状態まで膨張させて、排出シュート20を閉塞する。線Aの状態になったか否かは、内圧と膨張状態の関係を予め実験等により求めておき、検出した内圧に基づいて判断する。
【0032】
排出シュート20が閉塞されたら、コンテナ容器用弁4を開弁する。コンテナ容器用弁4を開弁することで、コンテナ容器3内の供給材料9は接続エルボ5に流れ込み、膨張ホース1に堰き止められて接続エルボ5に供給材料9が充満する。
【0033】
次に、空気供給装置6Aを停止して、脱気装置6Bを作動させる。脱気により膨張ホース1が収縮すると、供給材料9はその重量によって膨張ホース1を押し広げながら排出シュート20内を緩やかに落下する。
【0034】
脱気を続けると、供給材料9は膨張ホース1を押し広げながら落下し続け、膨張ホース1は線Bの状態から線C、線D、線Eの状態へと変形し、排出シュート20内には供給材料9が充満する。そして膨張ホース1内が略大気圧まで脱気されると、供給材料9はコーティング装置7のコーティングパン8に到達する。
【0035】
脱気装置6Bは連続的に作動させてもよいし、空気を少量ずつ漸進的に排出するよう作動させてもよい。
【0036】
いずれの場合も、供給材料9の強度等に応じて定まる要求落下速度となるように、膨張ホース1の内圧を制御する。このように落下速度を抑制することで供給材料9の損傷や分離を防止することができる。
【0037】
また、最初に排出シュート20に入った供給材料9がコーティングパン8に到達した後、空気供給装置6Aを作動させて膨張ホース1を膨張させ、排出シュート20の通路径を絞り込むことによって落下速度を抑制してもよい。落下させる材料によっては、このような速度制御も有効である。
【0038】
上記のような排出行程は、供給材料9がコンテナ容器3及び排出装置100からなくなったら終了する。排出行程が終了したか否かは、排出シュート20の出口部分に供給材料9が通過したか否かを検知するセンサを設けて、供給材料9の通過しない状態が所定時間続いたら排出が終了したと判定する。なお、供給材料9の重量や投入量等に基づいて排出工程に要する時間を予め求めておき、排出開始からの経過時間で終了時期を判定してもよい。
【0039】
なお、供給材料9が顆粒や粉体の場合には、供給材料9の一部が膨張ホース1に付着して排出シュート20内に残留していることが想定される。そこで、供給材料9の排出が終了したと判定したら、排出用制御を終了する前に、短サイクルでの空気供給と脱気の切り換えを数回繰り返すようにしてもよい。これにより膨張ホース1が振動するので、付着していた顆粒等が振り落とされて、コーティングパン8に落下する。
【0040】
ここでいう短サイクルとは、空気供給装置6A及び脱気装置6Bの能力や膨張ホース1の大きさにもよるが、空気供給と脱気の切り換えの周期を例えば1秒程度にする。また、空気供給の際に、膨張ホース1を図1の線Aの状態まで膨張させる必要はない。
【0041】
なお、上述した空気供給装置6A及び脱気装置6Bの制御を、コントローラ30ではなく、作業者が手動で行うようにしてもよい。
【0042】
また、膨張ホース1及び多孔パイプ2は透明な素材で形成することが望ましい。透明素材で形成すれば、錠剤等の落下状態や排出シュート20内の残留状況を目視可能となるので、作業者が手動で操作する場合に操作が容易になるのはもちろん、コントローラ30で制御する場合でも作動状態を確認し易くなるというメリットがある。
【0043】
上述した排出装置100によれば、以下の効果が得られる。
【0044】
排出装置100は、膨張ホース1への空気供給と脱気により供給材料9の落下速度を自在にコントロールすることができるので、供給材料9が錠剤のように強度が弱く脆い場合でも欠損を防止でき、また顆粒等の粉体の場合には偏析や粒子分離を防止できる。
【0045】
また、排出装置100の排出シュート20は、2層のシート層を有する膨張ホース1の内部に多孔パイプ2を有するので、脱気した状態でも多孔パイプ2が芯となって膨張ホース1の垂れ下がりを防止することができる。その結果、排出シュート20を傾斜させることが可能となる。
【0046】
多孔パイプ2は樹脂等で形成されるうえに多数の孔を有するので、多孔パイプ2を設けることによる排出シュート20の重量増を抑制することができる。これにより、供給材料9を交換する際の膨張ホース1交換作業を一人で容易に行うことが可能となる。
【0047】
排出シュート20からの供給材料9の排出が無くなったら、排出制御を終了する前に、短い周期での空気供給と脱気の切り換えを繰り返し行うことにより、膨張ホース1に供給材料9が残留することを防止できる。
【0048】
排出装置100は、接続エルボ5が湾曲せずに排出シュート20が垂直となる場合にも適用可能である。
【0049】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 膨張ホース
2 多孔パイプ
3 コンテナ容器
4 コンテナ容器用弁
5 接続エルボ
6A 空気供給装置
6B 脱気装置
7 コーティング装置
8 コーティングパン
9 供給材料
10 供給部本体
12 空気供給ポート
13 排気ポート
20 排出シュート
100 排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ容器から排出シュートを通して落下させて材料を排出する排出装置において、
前記排出シュートは、
2層のシート層を有する膨張ホースと、
筒状部材であって前記膨張ホースのシート層に挟まれた空間に設けられたパイプと、
前記膨張ホースのシート層に挟まれた空間に空気を供給する空気供給装置と、
前記膨張ホースのシート層に挟まれた空間から空気を排出する脱気装置と、
を備え、
前記パイプ及び前記膨張ホースは傾斜した状態で配置されることを特徴とする排出装置。
【請求項2】
前記空気供給装置及び前記脱気装置を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記膨張ホースを前記排出シュートの通路が閉塞するように膨張させた後、徐々に空気を排出することで前記材料の落下速度を抑制しつつ前記材料を供給する排出制御を実行し、当該排出制御終了時には短い周期での空気の供給と排出の切り換えを繰り返し行う請求項1に記載の排出装置。
【請求項3】
前記パイプは側面に内外を連通する複数の孔を有する多孔パイプである請求項1または2に記載の排出装置。
【請求項4】
前記パイプ及び前記膨張ホースは透明な素材で形成されている請求項1から3のいずれかに記載の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107758(P2013−107758A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255197(P2011−255197)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(591055632)株式会社ミウラ (7)
【Fターム(参考)】