説明

排気ガス再循環装置の構造

【課題】気筒に充填される吸気のEGR率のばらつきを抑制するとともに、減速時等における燃焼の不安定化を防止する。
【解決手段】EGR通路21におけるEGRバルブ22よりも下流に連絡路25を介して容積部24を接続し、この連絡路25に、EGRバルブ22の開度が小さくなるほど当該連絡路25の断面積を小さく絞るようEGRバルブ22に連動する遮蔽体26を付設した。容積部24は、EGRガスの脈動の影響を緩和して気筒毎のEGR率を均一化する。遮蔽体26は、減速時等において、容積部24内に充満しているEGRガスが吸気経路に向けて流出することを抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に付帯する排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
気筒内の燃焼温度を低下させてNOxの排出量を削減しつつ、ポンピングロスの低減を図るEGR装置が周知である(例えば、下記特許文献を参照)。EGR装置は、排気経路と吸気経路とをEGR通路を介して接続し、気筒で発生する燃焼ガスの一部をEGR通路経由で吸気経路に還流させて吸気に混入するものである。
【0003】
近時では、燃費性能の一層の向上を目論み、多量のEGRガスを吸気経路に還流させるようになってきている。このため、吸排気の脈動の影響をもろに受けて、気筒に充填される吸気のEGR率が気筒間で大きくばらついてしまう傾向にある。
【0004】
気筒毎のEGR率のばらつきを抑制するためには、EGR通路におけるEGRバルブの下流(吸気経路により近い側)にEGRサージタンクを設置することが効果的である。だが、減速時等、要求されるEGRガス量が低下する状況において、EGRバルブを閉弁したとしても、既にEGRサージタンクに充満しているEGRガスが吸気に混入することは避けられない。そして、そのEGRガスが特定の気筒に流入した結果、当該気筒で失火を引き起こすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−255599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、気筒に充填される吸気のEGR率のばらつきを抑制するとともに、減速時等における燃焼の不安定化を防止することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るEGR装置の構造は、内燃機関の排気経路と吸気経路とを連通するEGR通路と、前記EGR通路を開閉することのできるEGRバルブと、前記EGR通路における前記EGRバルブよりも下流の部位に接続された容積部と、前記EGR通路の下流部位と容積部とを連絡する通路、または前記EGR通路の下流部位と吸気経路とを連絡する通路に付設され、前記EGRバルブの開度が小さくなるほど当該通路の断面積を小さく絞るようEGRバルブに連動する遮蔽体とを具備する。
【0008】
容積部は、EGRサージタンクの如く作用し、EGRガスの脈動の影響を緩和して気筒毎の吸気のEGR率を均一化する。遮蔽体は、減速時等において、容積部とEGRバルブの下流とを連絡する通路、またはEGRバルブの下流と吸気経路とを連絡する通路の断面積を縮小し、または当該通路を閉鎖して、容積部内に滞留しているEGRガスが吸気経路に向けて流出することを抑止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気筒に充填される吸気のEGR率のばらつきを抑制することができ、かつ減速時等における燃焼の不安定化をも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における内燃機関及びEGR装置の構成を示す図。
【図2】同実施形態のEGR装置の詳細を模式的に示す図。
【図3】同実施形態のEGR装置の詳細を模式的に示す図。
【図4】本発明の変形例の一を模式的に示す図。
【図5】本発明の変形例の一を示す要部斜視図。
【図6】本発明の変形例の一の詳細を模式的に示す図。
【図7】同変形例の詳細を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関0の概要を示す。内燃機関0は、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気経路3と、各気筒1から排気を排出するための排気経路4と、吸気経路3を流通する吸気を過給する排気ターボ過給機5と、排気経路4から吸気経路3に向けてEGRガスを還流させる外部EGR装置2とを備えている。
【0012】
吸気経路3は、外部から空気を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気経路3上には、エアクリーナ31、吸気絞りバルブ35、過給機5のコンプレッサ51、インタクーラ32、電子スロットルバルブ33、サージタンク34、吸気マニホルド36を、上流からこの順序に配置している。
【0013】
排気経路4は、気筒1内で燃料を燃焼させることで発生する燃焼ガス、即ち排気を気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気経路4上には、排気マニホルド42、過給機5の駆動タービン52及び三元触媒41を配置している。
【0014】
排気ターボ過給機5は、駆動タービン52とコンプレッサ51とを同軸で連結し連動するように構成したものである。そして、駆動タービン52を排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
【0015】
外部EGR装置2は、いわゆる低圧ループEGRを実現するものである。EGR通路21の入口は、排気経路4における三元触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気経路3における吸気絞りバルブ35の下流、かつコンプレッサ51の上流の所定箇所に接続している。EGR通路21上には、EGRクーラ23及びEGRバルブ22を設けてある。
【0016】
低圧ループEGRでは、大気圧に近い低圧の排気ガスをEGR通路21を通じて大量に吸気経路3に還流する。EGR通路21の圧力損失は、数百Pa程度と非常に小さい。そのために、EGR通路21の出口の上流にある吸気絞りバルブ35を絞ることで、EGR通路21の出口の周囲を負圧化する。なお、吸気経路3における、吸気絞りバルブ35よりも上流側の圧力は略大気圧、またはコンプレッサ51の稼働によって幾分負圧となる。
【0017】
内燃機関0の運転制御を司るECU(電子制御装置)6は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0018】
入力インタフェースには、車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、エンジン回転数を検出する回転数センサから出力される回転数信号b、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサから出力されるアクセル開度要求信号c、サージタンク34内の吸気圧(過給圧)を検出する圧力センサから出力される吸気圧信号d、サージタンク34の吸気温を検出する温度センサから出力される吸気温信号e等が入力される。アクセルペダルの踏込量は、運転者が指令する要求負荷(エンジン出力)と捉えることができる。
【0019】
出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号f、点火プラグ(のイグニッションコイル)に対して点火信号g、EGRバルブ22に対して開度操作信号h、スロットルバルブ33に対して開度操作信号i、吸気絞りバルブ35に対して開度操作信号j等を出力する。
【0020】
ECU6のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行して、内燃機関0の運転を制御する。ECU6は、内燃機関0の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、eを入力インタフェースを介して取得し、それらに基づいて吸気量や要求燃料噴射量、点火時期、要求EGRガス量等を演算する。そして、演算結果に対応した各種制御信号f、g、h、i、jを出力インタフェースを介して印加する。
【0021】
以降、EGR装置2に関して詳述する。本実施形態では、EGR通路21における、EGRバルブ22よりも下流の部位に、連絡路25を介して容積部24を接続している。図2及び図3に、EGR通路21の下流部位及びEGRバルブ22、容積部24、連絡路25、遮蔽体26を模式的に示す。図2(及び、図6)中の矢印は、EGRガスの流れる方向を表している。
【0022】
容積部24には、EGR通路21を流れて吸気経路3へと向かうEGRガスの一部が流入する。吸気に混入されるEGRガスには、容積部24を経由せず直接吸気経路3に至るものと、一旦容積部24に入った後再び容積部24からEGR通路21へと帰還して吸気経路3に至るものとが存在している。容積部24及び連絡路25はレゾネータとして機能し、EGRガスの脈動を打ち消して複数の気筒1間の吸気のEGR率のばらつきを抑制する。
【0023】
連絡路25には、当該連絡路25の流路断面積を拡縮させる可動の遮蔽体26を付設してある。遮蔽体26は、連絡路25の延伸方向に沿って拡張している。図示例では、連絡路25の内面に対向する面板261と、面板261の前後両端部から略垂直に屈曲して垂下する前板262及び後板263とを備えた板状体である。前板262は連絡路25の入口(EGR通路21に接続する口)側を閉塞することができ、後板263は連絡路25の出口(容積部24を接続する口)側を閉塞することができる。
【0024】
EGRバルブ22はポペットバルブであり、弁体221が弁座222に着座することでEGR通路21を遮断し、弁体221が弁座222から離反することでEGR通路21を開通する。弁体221と弁座222との離間距離が、EGRバルブ22の開度となる。弁体221からは、弁体221の進退動作する方向、換言すればEGRガスの流通方向に沿って軸223が伸び出している。そして、遮蔽体26は、弁体221から伸びた軸223に固着している。
【0025】
遮蔽体26は、EGRバルブ22の開閉動作に従動し、連絡路25の実効的な流路断面積を連絡路25の略全長に亘って拡大または縮小させる、遮蔽体26により、連絡路25の流路断面積は、EGRバルブ22の開度が小さくなるほど小さく絞られ、逆にEGRバルブ22の開度が大きくなるほど大きく開かれる。図3に示しているように、EGRバルブ22の全閉時には、連絡路25の流路断面積が0となり、前板262が連絡路25の入口側を、後板263が連絡路25の出口側をそれぞれ閉止して、EGR通路21と容積部24との間の流通を遮断する。
【0026】
容積部24の容積をV、EGR通路21と容積部24とを連通する連絡路25の流路断面積をS、同連絡路25の長さをL、同連絡路25の断面積の等価半径をr、EGRガスを媒質とした音速をcとおくと、ヘルムホルツのレゾネータの共鳴周波数fは下式(数1)となる。
【0027】
【数1】

【0028】
EGR通路21を流れるEGRガスの脈動の周波数は、内燃機関0のエンジン回転数に比例して高くなる。一方、エンジン回転数が上昇すると、要求されるEGRガス量も増大するので、ECU6がEGRバルブ22の開度を大きく拡がる方向に操作する。さすれば、連絡路25の流路断面積Sも大きく拡がるので、レゾネータの共鳴周波数fが高くなる。逆に、エンジン回転数が下降すると、EGRバルブ22の開度及び連絡路25の流路断面積Sが小さく絞られるので、レゾネータ共鳴周波数fが低くなる。このようにして、幅広い運転領域に亘ってEGRガスの脈動を打ち消すことができる。
【0029】
本実施形態によれば、内燃機関0の排気経路4と吸気経路3とを連通するEGR通路21と、前記EGR通路21を開閉することのできるEGRバルブ22と、前記EGR通路21における前記EGRバルブ22よりも下流の部位に接続された容積部24と、前記EGR通路21の下流部位と容積部24とを連絡する通路25に付設され、前記EGRバルブ22の開度が小さくなるほど当該通路25の断面積を小さく絞るようEGRバルブ22に連動する遮蔽体26とを具備するEGR装置2を構成したため、EGRガスの脈動の影響を緩和して気筒1毎の吸気のEGR率を均一化することができ、
その上、減速時等、要求EGRガス量が低減する状況においては、EGRバルブ22の閉弁に伴って通路25の断面積も縮小し、または通路25が閉鎖されるので、容積部24内に充満しているEGRガスが吸気経路3に向けて流出することを抑止できる。従って、減速時等の失火が未然に防がれる。
【0030】
本実施形態のEGR装置2の構造は、排気脈動や吸気脈動の大きい少数気筒(一気筒、二気筒または三気筒)の内燃機関0に極めて好適である。本EGR装置2を採用することにより、大量EGRが容易となることから、燃費性能の向上にも少なからず寄与し得る。
【0031】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。図2及び図3に示している遮蔽体26の形状はあくまでも一例であり、この形状に限定されるわけではない。例えば、図4に示すように、後板263を省略してもよい。遮蔽体26(の前板262)をEGRバルブ22の弁体221の軸223に固着する連結部分の形状も、必要十分な剛性や強度を確保できる限りにおいて任意であり、図5に示すように肉抜きをしたり、細棒状に成形したりすることが許される。遮蔽体26を、EGRバルブ22の弁体221の軸223に一体成形しても構わない。
【0032】
上記実施形態では、EGR通路21と容積部24とを連通する連絡路25に遮蔽体26を付設していたが、図6及び図7に示すように、EGR通路21におけるEGRバルブ22よりも下流の部位と吸気経路3とを連絡する通路27に遮蔽体28を付設してもよい。遮蔽体28は、通路27の延伸方向に沿って拡張している。図示例では、通路27の内面に対向する面板281と、面板281の前端部から略垂直に屈曲して垂下する前板282とを備えた板状体である。前板282は、通路27の出口(吸気経路3に接続する口)側を閉塞することができる。
【0033】
遮蔽体28もまた、EGRバルブ22に連動し、EGRバルブ22の開度が小さくなるほど当該通路27の断面積を小さく絞るように動作する。図7に示しているように、EGRバルブ22の全閉時には、通路27の流路断面積が0となり、前板282が通路28の出口側を閉止して、容積部24及びEGR通路21と吸気経路3との間の流通を遮断する。
【0034】
上記実施形態、及び図4ないし図7に示した変形例では、遮蔽体26、28をEGRバルブ22の弁体221の軸223に固着し、EGRバルブ22を駆動する駆動源(ステッピングモータ等)により遮蔽体26、28をも動作させていた。これとは異なり、遮蔽体26、28をEGRバルブ22から切り離した別個の部材とし、遮蔽体26、28を駆動する駆動源をEGRバルブ22の駆動源とは別に設けてもよい。この場合にも、遮蔽体26、28は、EGRバルブ22の開度が小さくなるほど通路25、27の断面積を小さく絞るように動作させることは言うまでもない。
【0035】
本発明に係るEGR装置の構造は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものにも適用することが可能である。高圧ループEGRの場合、EGR通路の入口は排気経路4におけるタービン52の上流の所定箇所に接続し、出口は吸気経路3におけるスロットルバルブ33の下流の所定箇所(典型的には、サージタンク34)に接続する。
【0036】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両等に搭載される内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
0…内燃機関
2…EGR装置
21…EGR通路
22…EGRバルブ
24…容積部
25、27…通路
26、28…遮蔽体
3…吸気経路
4…排気経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に付帯する排気ガス再循環装置の構造であって、
内燃機関の排気経路と吸気経路とを連通するEGR通路と、
前記EGR通路を開閉することのできるEGRバルブと、
前記EGR通路における前記EGRバルブよりも下流の部位に接続された容積部と、
前記EGR通路の下流部位と容積部とを連絡する通路、または前記EGR通路の下流部位と吸気経路とを連絡する通路に付設され、前記EGRバルブの開度が小さくなるほど当該通路の断面積を小さく絞るようEGRバルブに連動する遮蔽体と
を具備する排気ガス再循環装置の構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−197719(P2012−197719A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62275(P2011−62275)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】