説明

排気ガス浄化用触媒及び排気ガス浄化用触媒の製造方法

【課題】触媒の排気ガス浄化性能を向上させる。
【解決手段】触媒金属を担持した第一酸化物の粉末を湿式粉砕することにより、粒子径が小さい第一酸化物のゾルを調製し、このゾルと第二酸化物の粉末と界面活性剤とを混合し、乾燥させて焼成することにより、上記触媒金属を担持した第一酸化物微粒子が上記第二酸化物粒子に分散して担持されてなる複合粒子の粉末を調製し、この複合粒子の粉末をバインダ材と共に担体に担持して触媒層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒及び排気ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化用触媒は一般に、Pt、Pd、Rh等の触媒金属と、これを担持するサポート材としての金属酸化物(例えば、活性アルミナ、Ce含有酸化物等)とを含有する。その触媒金属は、排気ガスとの接触機会を増やすこと、また、触媒金属同士の凝集を防止することを目的として、サポート材表面に分散させた状態で担持するようにされている。そのため、サポート材表面の細孔数を多くして比表面積を大きくし、細孔内に触媒金属を配置することも知られている。しかし、上記触媒金属は、例えば硝酸溶液として、蒸発乾固法や含浸法等の公知の方法でサポート材に担持されているものの、その焼成段階で触媒金属が凝集することは避けられず、クラスター状態でサポート材に担持されているのが通常である。
【0003】
これに対して、特許文献1には、触媒金属Pdをサポート材としてのCeZr系複合酸化物粒子に担持し、これをさらにサポート材としてのアルミナ粒子に担持させてなる排気ガス浄化用触媒が記載されている。その製法は、Ce、Zr、及びPdを含有する酸性溶液に塩基性溶液を添加することにより、Ce、Zr、及びPdを含有する第1水酸化物が分散した第1分散液を調製し、Alを含有する酸性溶液に塩基性溶液を添加することにより、Alを含有する第2水酸化物が分散した第2分散液を調製し、この第1分散液と第2分散液とを混合して、乾燥・焼成するというものである。
【0004】
また、特許文献2には、金触媒の製法に関し、金含有微粒子のゾルに界面活性剤を添加して金コロイドの凝集を抑制し、これをサポート材と混合して金微粒子をサポート材に担持させることが記載されている。特許文献3には、触媒金属を担持したサポート材粉末とバインダとポリエチレングリコールとを混合したスラリーを調製し、該スラリーをハニカム担体にコーティングして焼成し、その焼成によってポリエチレングリコールを除去することにより、多孔性の触媒コート層を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12397号公報
【特許文献2】特開2006−175383号公報
【特許文献3】特開昭62−129146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、Pd担持CeZr系複合酸化物粒子をアルミナ粒子に担持させても、Pd担持CeZr系複合酸化物粒子が小さな粒子になってアルミナ粒子表面に分散して担持された状態になるとは限らない。むしろ、Pd担持CeZr系複合酸化物粒子がアルミナ粒子と同様に大きな粒子となって該アルミナ粒子に結合された状態になる可能性がある。その場合、触媒金属と排気ガスとの接触機会増大、すなわち、排気ガス浄化性能の大きな向上は望めない。
【0007】
特許文献2のように、金ゾルに界面活性剤を添加すると、金微粒子の凝集防止、そして、サポート材に対する金微粒子の分散担持に有利になると考えられるものの、サポート材自体の微粒子化が図れるわけではない。また、特許文献3のような触媒コート層の多孔質化は、触媒金属と排気ガスとの接触機会増大に有利になるものの、サポート材粒子の微細化にはならない。
【0008】
すなわち、本発明は、触媒金属を担持したサポート材としての第一酸化物粒子をさらに別のサポート材である第二酸化物粒子に担持させてなる排気ガス浄化用触媒に関して、第一酸化物粒子の微細化及び第二酸化物粒子に対する担持の高分散化によって、排気ガス浄化性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、触媒金属を担持した第一酸化物粒子をゾル化するとともに、これに界面活性剤を添加するようにした。
【0010】
ここに開示する製造方法は、エンジンの排気通路に配設され、担体上に触媒金属と第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とを含む触媒層が形成されている排気ガス浄化用触媒の製造方法であって、
上記触媒金属の少なくとも一部を粒子表面に担持した第一酸化物の粉末を得る工程と、
上記触媒金属を担持した第一酸化物の粉末を湿式粉砕することにより、上記第二酸化物粒子よりも平均粒子径が小さい上記第一酸化物粒子が液体中に分散してなるゾルを得る工程と、
上記ゾルと上記第二酸化物の粉末と界面活性剤とを混合し、乾燥させて焼成することにより、上記触媒金属を担持した第一酸化物微粒子が上記第二酸化物粒子に分散して担持されてなる複合粒子の粉末を得る工程と、
上記複合粒子の粉末をバインダ材と共に上記担体に担持する工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
この製造方法によれば、湿式粉砕によって、触媒金属を担持した第一酸化物粒子の微細化が図れる。そして、その湿式粉砕によって得られる第一酸化物のゾルと第二酸化物粉末とを界面活性剤と共に混合するから、微細化した第一酸化物粒子の凝集が抑制される。その結果、触媒金属を担持した第一酸化物粒子が第二酸化物の粒子表面に微細に分散担持された状態になる。よって、触媒活性が高い排気ガス浄化用触媒が得られる。
【0012】
上記第一酸化物としては、Ce及びZrを含有するCeZr系複合酸化物を採用することが好ましい。すなわち、Ce含有酸化物は酸素吸蔵放出能を有するが、CeZr系複合酸化物は、Zrを含有することにより、セリア(Ce酸化物)よりも耐熱性が高くなり、また、結晶構造に歪みを生ずることによる酸素吸蔵放出能の向上も見込まれる。さらに、このCeZr系複合酸化物の粒子表面に触媒金属が担持されると、その触媒金属が酸素の吸蔵放出を媒介するため酸素吸蔵放出量が増大する。しかし、それでもなお、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出能が十分に活用されていないと考えられている。つまり、CeZr系複合酸化物の粒子表面部分だけしか酸素の吸蔵放出に利用されていないということである。
【0013】
これに対して、本発明の場合、上述の如く、触媒金属を担持したCeZr系複合酸化物粒子は、湿式粉砕によって微細化され、界面活性剤によって第二酸化物粒子表面に対して高分散に担持された状態になる。この微細化・高分散担持により、個々のCeZr系複合酸化物粒子をみた場合、酸素吸蔵放出に利用される部分が多くなる。その結果、トータルでの酸素吸蔵放出量が多くなり、排気ガス浄化性能の向上に有利になる。上記第二酸化物としては、上記第一酸化物とは異なるCeZr系複合酸化物又は活性アルミナを採用することが好ましい。
【0014】
上記触媒金属を担持した第一酸化物の粉末は、例えば、該第一酸化物を構成する金属成分と触媒金属成分とを含む酸性溶液と塩基性溶液とを混合して共沈物を生成し、該共沈物を焼成して得ることができる。この調製法によれば、触媒金属が第一酸化物にドープされ(触媒金属が第一酸化物に固溶し)、一部の触媒金属が第一酸化物の粒子表面に露出した状態になる。従って、触媒が高温の排気ガスに晒されたときの触媒金属の凝集防止に有利になる。また、第一酸化物がCeZr系複合酸化物であるときは、上記ドープされた触媒金属が該酸化物の酸素吸蔵放出能を高める働きをする。
【0015】
上記界面活性剤としては、イオン性、非イオン性及び両性いずれも利用することができるが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコール等の非イオン性のものが好適である。
【0016】
また、ここに開示する排気ガス浄化用触媒は、エンジンの排気通路に配設され、担体上に触媒金属と酸素吸蔵放出能を有する第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とを含む触媒層が形成されているものであって、
上記触媒金属と第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とは、上記触媒金属の少なくとも一部が上記第一酸化物の粒子表面に担持され、該第一酸化物粒子が上記第二酸化物の粒子表面に分散して担持されて複合粒子を形成しており、
上記第二酸化物粒子は個数平均粒子径が0.5μm以上であり、
上記第二酸化物粒子の表面に分散して担持されている上記第一酸化物粒子が、0.05μm以上0.2μm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことを特徴とする。
【0017】
このように触媒金属を担持した第一酸化物は微細な粒子となって第二酸化物粒子の表面に分散して担持され、表面積が大きいことから、優れた酸素吸蔵放出能を示し、触媒活性の向上に有利になる。
【0018】
好ましい実施形態では、上記触媒金属がRhであって、上記第一酸化物の粒子表面に固着し、又は該第一酸化物に固溶して(第一酸化物の結晶格子又は原子間に配置されて)一部が該第一酸化物の粒子表面に露出しており、上記第二酸化物がCeZr系複合酸化物である。従って、Rhが第一酸化物の酸素吸蔵放出を促進し、触媒活性の向上に有利になる。
【0019】
好ましい実施形態では、上記複合粒子として、上記第一酸化物の粒子表面に担持された触媒金属がPdであり上記第二酸化物が活性アルミナである第一粒子と、上記第一酸化物の粒子表面に担持された触媒金属がRhであり上記第二酸化物がCeZr系複合酸化物である第二粒子とを備え、
上記触媒層は、第一層と、該第一層よりも上側に設けられた第二層とを備え、
上記第一粒子と第二粒子とは、前者が上記第一層に、後者が上記第二層に分かれて配置されている。
【0020】
すなわち、PdはRhに比べて熱劣化し易く、また、硫黄被毒や燐被毒を生じ易い。そこで、Pdを下層に配置することにより、熱劣化や被毒を生ずることを上層で保護するようにしたものである。そうして、RhはPdと合金化し易いところ、このRhを上層に配置して、両者が同一層内で混在しないようにしたから、エンジンに近い上流側にあっても、このPdとRhとのシンタリング及び合金化が防止される。
【発明の効果】
【0021】
従って、本発明によれば、触媒金属を担持した第一酸化物の粉末を湿式粉砕することにより、粒子径が小さい第一酸化物のゾルを調製し、このゾルと第二酸化物の粉末と界面活性剤とを混合し、乾燥させて焼成することにより、上記触媒金属を担持した第一酸化物微粒子が上記第二酸化物粒子に分散して担持されてなる複合粒子の粉末を調製し、この複合粒子の粉末をバインダ材と共に担体に担持して触媒層を形成するようにしたから、触媒金属を担持した微細な第一酸化物粒子が第二酸化物の粒子表面に分散して担持された状態になり、触媒活性が高い排気ガス浄化用触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Rh担持CeZrNd複合酸化物粒子(Rh/10CZN)の湿式粉砕前及び湿式粉砕後の粒度分布を示すグラフ図である。
【図2】本発明に係る複合粒子のAl濃度分布を示す図である。
【図3】本発明に係る複合粒子のZr濃度分布を示す図である。
【図4】比較例に係る複合粒子のAl濃度分布を示す図である。
【図5】比較例に係る複合粒子のZr濃度分布を示す図である。
【図6】本発明及び比較例各々の活性アルミナ粒子表面に担持されているRh/10CZN粒子の粒度分布を示す図である。
【図7】実施形態1に係る実施例及び比較例のライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図8】実施形態2に係る実施例及び比較例のライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図9】酸素吸蔵放出量測定装置の構成図である。
【図10】酸素吸蔵放出量の測定におけるサンプル前後のA/F及びサンプル前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図11】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図12】各サンプルの酸素放出量の温度による変化を示すグラフ図である。図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
<排気ガス浄化触媒用複合粒子>
本発明に係る排気ガス浄化用触媒は、エンジン(特に自動車のエンジン)の排気通路に配設されて排気ガスを浄化することに適したものであり、以下に述べる複合粒子を用いることに特徴がある。すなわち、その複合粒子は、触媒金属と第一酸化物と第二酸化物とが複合されたものである。具体的には、触媒金属の少なくとも一部が第一酸化物の粒子表面に担持され、該第一酸化物粒子が第二酸化物の粒子表面に分散して担持されて複合粒子が構成されている。
【0025】
−複合粒子調製法−
触媒金属としてRhを採用し、第一酸化物としてCeZrNd複合酸化物を採用し、第二酸化物として活性アルミナを採用した具体例によって当該複合粒子の調製法の一例を説明する。
【0026】
まず、CeZrNd複合酸化物粉末を共沈法によって得る。すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液(酸性溶液)にアンモニア水(塩基性溶液)を添加して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、乾燥させて粉砕し、焼成することにより、CeZrNd複合酸化物粉末を得ることができる。
【0027】
得られたCeZrNd複合酸化物粉末と硝酸Rh溶液とを混合し、蒸発乾固する。この乾固物を乾燥し粉砕して焼成することにより、CeZrNd複合酸化物粒子の表面にRhが担持されてなるRh/CZN粉末を得る。なお、「CZN」はCeZrNd複合酸化物の略号である。次にこのRh/CZNを湿式粉砕することによってゾル化する。すなわち、Rh/CZN粉末にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)。これにより、微細なRh/CZN粉末が水中に分散したゾルを得ることができる。
【0028】
次に上記Rh/CZNのゾルに界面活性剤としてのPEG(ポリエチレングリコール)をゾル中の水分1L当たり50g添加して攪拌する。そして、このPEG添加ゾルと活性アルミナ粉末とを混合し、この混合物を乾燥させて粉砕し、さらに焼成することにより、本発明に係る複合粒子Rh/CZN/アルミナの粉末を得る。
【0029】
−複合粒子を構成する粒子の粒子径−
図1はRh/10CZN粉末の湿式粉砕前と湿式粉砕後の粒度分布(頻度分布)を示す。ここに、10CZNは、CeOを10質量%含有するCZN(CeO:ZrO:Nd=10:80:10(質量比))であり、10CZN10g当たりのRh担持量は0.045gである。粒度分布の測定には、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。粉砕前のRh/10CZN粉末は、0.04μm以上2μm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、粉砕後のRh/10CZN粉末は、0.02μm以上0.2μm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ。
【0030】
図2は上記調製法によって得られた複合粒子Rh/10CZN/アルミナのAl濃度分布を示し、図3は同じくZr濃度分布を示す。この元素濃度分布はTEM(透過電子顕微鏡)を用い、発生する特性X線のスペクトルに基いて得た。この複合粒子のRhを除く組成は、10CZN:活性アルミナ=1:7(質量比)である。活性アルミナとしては、Laを4質量%含有するAlを採用した。
【0031】
図2において、Al濃度が高くなっている部分は活性アルミナ粒子のAlが現れているものであり、図3において、Zr濃度が高くなっている部分はRh/10CZNのZrが現れているものである。図2及び図3から、当該活性アルミナ粒子の粒子径は1.5μm〜2μm程度であること、この活性アルミナ粒子の表面に粒子径が0.05μm〜0.3μm程度のRh/10CZN粒子が十数個分散して担持されていることがわかる。
【0032】
図4及び図5は上記調製法においてPEGを添加せずに調製した比較例に係る複合粒子Rh/10CZN/アルミナのAl濃度分布及びZr濃度分布を示す。複合粒子の組成はPEGを添加したケースと同じである。この両図から、当該活性アルミナ粒子の粒子径は1.5μm〜2.5μm程度であること、この活性アルミナ粒子の表面に粒子径が1.5μm〜2μm程度のRh/10CZN粒子1個が担持されていることがわかる。
【0033】
図6はPEGを使用した本発明及びPEGを使用しない比較例各々の、活性アルミナ粒子表面に担持されているRh/10CZN粒子の粒度分布を示す。この粒度分布は、TEM像より無作為に抽出した100個のRh/10CZN粒子の粒子径を測定して得た。PEGを使用したケースでは、PEGを使用しないケースよりも、活性アルミナ粒子表面に担持されたRh/10CZN粒子の粒子径が小さいこと、そして、0.05μm以上0.2μm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことがわかる。
【0034】
<実施形態1>
−実施例1−
上述の如き複合粒子を有する排気ガス浄化用触媒を調製した。この触媒はハニカム担体上に下側の第一層(以下、「下層」という。)と上側の第二層(以下、上層」という。)とからなる二層構造の触媒層が形成されたものである。
【0035】
下層は、Pd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末とPd/アルミナ粉末とCZN粉末とバインダとしてのZrOとを含有する。上層は、Rh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末とRh/ZrLa/アルミナ粉末と活性アルミナ粉末とRhドープ10CZNY粉末とを含有する。Rhドープ10CZNY粉末は、触媒成分の一つであるとともに、上層のバインダとしても機能する。そのため、上層にはバインダとしてのZrOは含まれていない。
【0036】
触媒の調製にあたっては、下層を構成する各成分をイオン交換水と共に混合してスラリー化し、該スラリーをハニカム担体にコーティングした後、乾燥及び焼成を行なって下層を形成した。上層についても、各成分をイオン交換水と共に混合してスラリー化し、該スラリーを下層の上にコーティングした後、乾燥及び焼成を行なうことによって形成した。下層及び上層の各成分の担体1L当たりの担持量は表1の通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
次に下層及び上層各々の成分粉末について説明する。
【0039】
下層のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末は、触媒金属としてのPdがCeZrNd複合酸化物の粒子表面に蒸発乾固法によって担持され、該CeZrNd複合酸化物粒子が活性アルミナの粒子表面に分散して担持されたものであり、上述の湿式粉砕及びPEGを用いる複合粒子調製法によって調製した。ここに、23CZNは、CeOを23質量%含有するCZN(CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比))である。この複合粒子のPdを除く組成は、23CZN:活性アルミナ=1:7(質量比)である。23CZN10g当たりのPd担持量は0.2gである。
【0040】
Pd/アルミナ粉末は、上記活性アルミナ粒子にPdが蒸発乾固法によって担持されたものであり、活性アルミナ45g当たりのPd担持量は0.14gである。CZN粉末としては、上記23CZNを用いた。
【0041】
上層のRh/10CZN/23CZN粉末は、Rhが10CNZの粒子表面に蒸発乾固法によって担持され、該10CZN粒子が23CZNの粒子表面に分散して担持されたものであり、上述の湿式粉砕及びPEGを用いる複合粒子調製法によって調製した。この複合粒子のRhを除く組成は、10CZN:23CZN=1:7(質量比)であり、10CZN10g当たりのRh担持量は0.045gである。
【0042】
Rh/ZrLa/アルミナ粉末は、ZrLa/アルミナ粒子にRhが蒸発乾固法によって担持されたものである。ZrLa/アルミナは、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が活性アルミナ粒子の表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLa/アルミナを得た。その組成は、ZrO:La:Al=38.5:2:59.5(質量比)である。また、ZrLa/アルミナ30g当たりのRh担持量は0.01gである。
【0043】
Rhドープ10CZNY粉末は、CeOを10質量%含有するCeZrNdY複合酸化物(CeO:ZrO:Nd:Y=10:80:5:5(質量比))にRhがドープ(固溶)されたものであり、共沈法によって調製した。そうして、このRhドープ10CZNY粉末を、バインダとして機能させるべく、湿式粉砕した。CeZrNdY複合酸化物15g当たりのRhドープ量は0.005gである。湿式粉砕したRhドープ10CZNY粉末の粒度分布は、湿式粉砕したRh/10CZNの粒度分布(図1参照)と略同じである。
【0044】
上層及び下層いずれにおいても、活性アルミナとしては、Laを4質量%含有するAlを採用した。
【0045】
−比較例1−
下層では、上記Pd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末に代えて、湿式粉砕をしていないPd/23CZNと活性アルミナとの単純混合粉末を採用し、上層では、Rh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末に代えて、湿式粉砕をしていないRh/10CZNと23CZNとの単純混合粉末を採用する他は、実施例1と同様にして比較例1に係る触媒を調製した。
【0046】
−比較例2−
上記Pd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末及び上記Rh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末の調製にPEGを使用しないことの他は、実施例1と同様にして比較例2に係る触媒を調製した。
【0047】
<実施形態2>
−実施例2−
実施例1の上層のRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末をRhドープ10CZN/23CZN複合粒子の粉末に代えたことの他は、実施例1と同様にして実施例2に係る触媒を調製した。Rhドープ10CZN/23CZN複合粒子の粉末は、湿式粉砕したRhドープ10CZN粒子が23CZNの粒子表面にPEGを用いて分散担持されたものである。Rhドープ10CZNは、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かし、この硝酸塩溶液(酸性溶液)にアンモニア水(塩基性溶液)を添加して中和させ、得られた共沈物を遠心分離法で水洗した後、乾燥させて粉砕し、焼成することにより得た。
【0048】
−比較例3−
上記Pd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末及び上記Rhドープ10CZN/23CZN複合粒子の粉末各々の調製にPEGを使用しないことの他は、実施例2と同様にして比較例3に係る触媒を調製した。
【0049】
[触媒の評価]
実施形態1,2の実施例及び比較例の各触媒にベンチエージング処理を施した。これは、各触媒をエンジン排気系に取り付け、触媒入口ガス温度が900℃となるようにエンジン回転数を設定し、合計50時間の運転をするものである。
【0050】
しかる後、各触媒から担体容量約25mLのコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HCの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h−1、昇温速度は30℃/分である。A/F=14.7、A/F=13.8及びA/F=15.6のときのガス組成を表2に示し、実施形態1のライトオフ温度T50の測定結果を図7に示し、実施形態2のライトオフ温度T50の測定結果を図8に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施形態1の結果を示す図7によれば、HC、CO及びNOxのいずれに関しても、実施例1は比較例1,2よりもライトオフ温度が低い。ここに、比較例2は湿式粉砕・ゾル化の手法によって複合粒子の粉末を調製したことにより、単純混合の比較例1よりも、ライトオフ温度が低くなっていると認められる。これに対して、実施例1は、湿式粉砕・ゾル化に加えて、界面活性剤PEGを使用した担持方法を採用して下層のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末及び上層のRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末を調製したものであり、界面活性剤を使用せずにそれら複合粒子の粉末を調製した比較例2よりもさらにライトオフ温度が低くなっている。
【0053】
実施形態2の結果を示す図8によれば、上層にRhドープ10CZN/23CZN複合粒子の粉末を採用したケースでも、PEGを使用した実施例2はPEGを使用しない比較例3よりもライトオフ温度が低くなっている。実施例1と実施例2とを比べると、実施例2の方がライトオフ温度が低いが、これはRhドープの効果であると考えられる。
【0054】
[複合粒子の酸素吸蔵放出能]
PEGを使用した実施例1のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末及びRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末、並びにPEGを使用しない比較例2のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末及びRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末各々の、酸素吸蔵放出能を調べた。これらの粉末は大気中900℃で24時間のエージング処理を行ったものである。
【0055】
図9は、酸素吸蔵放出量を測定するための試験装置の構成を示す。同図において、符号11はサンプル(複合粒子の粉末)12を保持するガラス管であり、サンプル12はヒータ13によって所定温度に加熱保持される。ガラス管11のサンプル12よりも上流側には、ベースガスNを供給しながらO及びCOの各ガスをパルス状に供給可能なパルスガス発生装置14が接続され、ガラス管11のサンプル12よりも下流側には排気部18が設けられている。ガラス管11のサンプル12よりも上流側及び下流側にはA/Fセンサ(酸素センサ)15,16が設けられている。ガラス管11のサンプル保持部には温度制御用の熱電対19が取付けられている。
【0056】
測定にあたっては、ガラス管11内のサンプル温度を所定値に保ち、ベースガスNを供給して排気部18から排気しながら、図10に示すようにOパルス(20秒)とCOパルス(20秒)とを交互に且つ間隔(20秒)をおいて発生させることにより、リーン→ストイキ→リッチ→ストイキのサイクルを繰り返すようにした。ストイキからリッチに切り換えた直後から、図11に示すように、サンプル前後のA/Fセンサ15,16によって得られるA/F値出力差(前側A/F値−後側A/F値)がなくなるまでの時間における、当該出力差をO量に換算し、これをサンプルのO放出量(酸素吸蔵放出量)とした。このO放出量を200℃から500℃までの50℃刻みの各温度で測定した。
【0057】
結果を図12に示す。同図の「Rh PEGあり」は実施例1のRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末、「Rh PEG無し」は比較例2のRh/10CZN/23CZN複合粒子の粉末、「Pd PEGあり」は実施例1のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末、「Pd PEG無し」は比較例2のPd/23CZN/アルミナ複合粒子の粉末である。
【0058】
同図によれば、実施例1の「Rh PEGあり」及び「Pd PEGあり」は比較例2の対応する「Rh PEG無し」及び「Pd PEG無し」よりも酸素吸蔵放出量が多い。従って、この酸素吸蔵放出能の違いが、図7に示す実施例1と比較例2のライトオフ温度差になって現れているものと考えられる。
【0059】
なお、上記実施形態1,2では、触媒金属としてRh又はPdを採用しているが、Pt、その他の貴金属を採用することができ、さらには他の遷移金属を採用することもできる。また、第一酸化物及び第二酸化物としては、上述のCe含有酸化物や活性アルミナ等の金属酸化物の他、ゼオライト、シリカ等を採用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
11 ガラス管
12 サンプル(複合粒子の粉末)
14 パルスガス発生装置
15,16 A/Fセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に配設され、担体上に触媒金属と第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とを含む触媒層が形成されている排気ガス浄化用触媒の製造方法であって、
上記触媒金属の少なくとも一部を粒子表面に担持した第一酸化物の粉末を得る工程と、
上記触媒金属を担持した第一酸化物の粉末を湿式粉砕することにより、上記第二酸化物粒子よりも平均粒子径が小さい上記第一酸化物粒子が液体中に分散してなるゾルを得る工程と、
上記ゾルと上記第二酸化物の粉末と界面活性剤とを混合し、乾燥させて焼成することにより、上記触媒金属を担持した第一酸化物微粒子が上記第二酸化物粒子に分散して担持されてなる複合粒子の粉末を得る工程と、
上記複合粒子の粉末をバインダ材と共に上記担体に担持する工程とを備えていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記第一酸化物は、CeZr系複合酸化物であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記第二酸化物は、上記第一酸化物とは異なるCeZr系複合酸化物又は活性アルミナであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記触媒金属を担持した第一酸化物の粉末は、該第一酸化物を構成する金属成分と触媒金属成分とを含む酸性溶液と塩基性溶液とを混合して共沈物を生成し、該共沈物を焼成して得ることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記界面活性剤はポリエチレングリコールを含むことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
エンジンの排気通路に配設され、担体上に触媒金属と酸素吸蔵放出能を有する第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とを含む触媒層が形成されている排気ガス浄化用触媒であって、
上記触媒金属と第一酸化物粒子と第二酸化物粒子とは、上記触媒金属の少なくとも一部が上記第一酸化物の粒子表面に担持され、該第一酸化物粒子が上記第二酸化物の粒子表面に分散して担持されて複合粒子を形成しており、
上記第二酸化物粒子は個数平均粒子径が0.5μm以上であり、
上記第二酸化物粒子の表面に分散して担持されている上記第一酸化物粒子が、0.05μm以上0.2μm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項7】
請求項6において、
上記触媒金属がRhであって、上記第一酸化物の粒子表面に固着し、又は該第一酸化物に固溶して一部が該第一酸化物の粒子表面に露出しており、上記第二酸化物がCeZr系複合酸化物であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項8】
請求項6において、
上記複合粒子として、上記第一酸化物の粒子表面に担持された触媒金属がPdであり、上記第二酸化物が活性アルミナである第一粒子と、上記第一酸化物の粒子表面に担持された触媒金属がRhであり、上記第二酸化物がCeZr系複合酸化物である第二粒子とを備え、
上記触媒層は、第一層と、該第一層よりも上側に設けられた第二層とを備え、
上記第一粒子と第二粒子とは、前者が上記第一層に、後者が上記第二層に、分かれて配置されていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40515(P2012−40515A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184383(P2010−184383)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】