説明

排気ガス浄化用触媒

【課題】触媒金属が凝集しシンタリングすることを抑制することができ、排気ガス浄化用触媒の耐熱性を高めることができる排気ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】ハニカム担体の外周に磁場発生装置又は永久磁石が配設されるとともに、前記ハニカム担体上に形成された触媒層に磁性材料粒子15と触媒金属粒子16とが含有されてなる排気ガス浄化用触媒において、前記触媒金属粒子は、該触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定される。また、前記触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定された前記触媒金属粒子と前記磁性材料粒子とからなる複合粒子17が、中空部18を有するシェル状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両においては、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)等の大気汚染物質を含んだ排気ガスを浄化するために、排気ガス浄化用触媒がエンジンの排気系に備えられている。そして、かかる排気ガス浄化用触媒を用いて、HC及びCOが酸化されて浄化され、NOxが還元されて浄化される。
【0003】
従来、このような排気ガス浄化用触媒として、例えば高比表面積を有するアルミナや酸素吸蔵放出能を有するCeZr系複合酸化物などの酸化物担体表面に、例えばPtなどの触媒金属を高分散状態で担持させた排気ガス浄化用触媒が用いられ、排気ガスの浄化が行われている。
【0004】
しかし、前記排気ガス浄化用触媒においては、高温の排気ガスに曝されることにより触媒金属が次第に凝集しシンタリングすることが問題となっている。触媒金属がシンタリングすると、触媒金属の比表面積が低下し触媒金属が失活することにより、排気ガスの浄化性能の低下を招くこととなる。
【0005】
これに対し、排気ガス浄化用触媒に磁性材料を含有させ触媒金属のシンタリングを抑制することが知られており、例えば特許文献1には、触媒金属粒子に作用する磁力を発生させる強磁性粒子を含む排気ガス浄化用触媒を備えるとともに該排気ガス浄化用触媒の外周に永久磁石帯を備えた排気ガス浄化装置が開示されている。また、例えば特許文献2には、排気ガス浄化用触媒の周辺に磁場を存在させた内燃機関の排ガス浄化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006ー29138号公報
【特許文献2】特開2003ー301715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に記載される排気ガス浄化用触媒においても、高温の排気ガスに曝されることにより、磁性粒子の磁力が次第にその効力を弱め、触媒金属が凝集しシンタリングする畏れがある。従って、排気ガス浄化用触媒においては、更なる耐熱性の向上が望まれる。
【0007】
そこで、この発明は、触媒金属が凝集しシンタリングすることを抑制することができ、排気ガス浄化用触媒の耐熱性を高めることができる排気ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本願の請求項1に係る排気ガス浄化用触媒は、ハニカム担体の外周に磁場発生装置又は永久磁石が配設されるとともに、前記ハニカム担体上に形成された触媒層に磁性材料粒子と触媒金属粒子とが含有されてなる排気ガス浄化用触媒であって、前記触媒金属粒子は、該触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定されていることを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定された前記触媒金属粒子と前記磁性材料粒子とからなる複合粒子が、中空部を有するシェル状に形成されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1に係る排気ガス浄化用触媒によれば、触媒金属粒子は、該触媒金属粒子の少なくとも一部が磁性材料粒子と固溶して磁性材料粒子の表面に露出固定されていることにより、触媒金属が磁性材料に強固に固定化され触媒金属の移動が抑制されるので、触媒金属が凝集しシンタリングすることを抑制することができ、排気ガス浄化用触媒の耐熱性を高めることができる。
前記排気ガス浄化用触媒では、排気ガス中のNO成分を磁性材料や触媒金属に引き寄せ吸着させることができ、排気ガス、特にNO成分の浄化性能を高めることができる。かかるNO成分は、触媒金属による還元作用やリッチ(酸素不足)雰囲気時におけるHC成分による還元作用により還元され浄化される。
【0011】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、触媒金属粒子と磁性材料粒子とからなる複合粒子が、中空部を有するシェル状に形成されていることにより、触媒層において表面に露出する触媒金属粒子を多く存在させることができ、排気ガスと触媒金属との接触面積を高め、排気ガスの浄化性能を高めることができる。
前記排気ガス浄化用触媒では、触媒金属粒子と磁性材料粒子とからなる複合粒子の中空部を通じて排気ガスが流れることができ、排気ガスと触媒金属との接触機会が増え、排気ガスの浄化性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置を概略的に示す概略説明図である。図1に示すように、例えば自動車等の車両の排気系には、矢印の方向(図1において右方向)へ流れる排気ガスGを浄化するための排気ガス浄化用触媒装置1が配設される。
【0013】
排気ガス浄化用触媒装置1は、排気ガスGを浄化するための触媒層がハニカム担体上に形成された排気ガス浄化用触媒2と、該排気ガス浄化用触媒2の外周を覆うインターラムマット20と備えており、排気ガス浄化用触媒2の外周には、具体的にはインターラムマット20の外周には磁場発生装置30が配設されている。
【0014】
インターラムマット20は、例えばセラミックファイバ等から成形されており、排気ガス浄化用触媒2を保温、及び保持・固定するとともに排気ガスGからの熱が磁場発生装置30に伝熱されることを抑制するように、排気ガス浄化用触媒2の外周に、具体的にはハニカム担体の外周に巻かれている。また、インターラムマット20は、前記ハニカム担体を排気ガス浄化用触媒装置1内に保持している。
【0015】
磁場発生装置30は、略断面コ字状に形成され排気ガス浄化用触媒2に含有される磁性材料に磁力を与える鉄心31と、該鉄心31に巻き付けられたコイル32を含む励磁回路33と、該励磁回路33に電流を供給する電源34とを備えている。磁場発生装置30では、電源34からコイル32に電流が流れることにより、鉄心31が磁化され該鉄心31の端部に磁極35a、35bが形成され、前記磁性材料に磁力が与えられる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の要部断面図である。図2に示すように、排気ガス浄化用触媒2は、例えばコージェライトなどから成形されるハニカム担体3上に、排気ガスGを浄化するための触媒層4が形成される。本実施形態では、該触媒層4に、触媒金属と磁性材料とを含有させ、触媒金属としてPtを用い、磁性材料としてγ−フェライト(γ−Fe)を用いた。
【0017】
また、本実施形態では、磁性材料と触媒金属とを含有させた触媒層4において、触媒金属粒子の少なくとも一部を磁性材料粒子と固溶させ、前記触媒金属粒子を前記磁性材料粒子の表面に露出固定させた触媒を用い、該触媒を共沈法及び噴霧熱分解法によってそれぞれ調製した。以下に、共沈法及び噴霧熱分解法による触媒の調製方法についてそれぞれ説明する。
【0018】
(1)触媒粉末の調製
先ず、共沈法による触媒粉末の調製方法について説明する。
イオン交換水に、触媒金属と磁性材料との原料塩、本実施形態ではジニトロジアミン白金塩と硝酸鉄とをそれぞれ所定量溶解し、原料溶液を調製する。次に、この原料溶液とアンモニア水溶液とを所定の割合で混合することにより、前駆体(水酸化物)が共沈して得られる。なお、ここでは、アンモニア水溶液を用いたが、これに限らず、水酸化ナトリウム溶液やシュウ酸水溶液等、その他の塩基性溶液を用いることができる。
【0019】
そして、前記前駆体(水酸化物)を含む溶液を一晩静置した上で、遠心分離により沈殿物を分離させた。その後、上澄み液を除去して前記前駆体を十分に水洗し、該水洗後、大気中で加熱焼成した。この焼成は、500℃の温度に2時間保持することにより行った。このようにして得られた酸化物粉末に対して、H/He混合ガスを700℃の温度で8時間流通させて、触媒金属Ptと磁性材料γ−Feとを一部固溶させ、共沈法による触媒粉末を得た。
【0020】
図3は、共沈法により得られた触媒粉末の要部を模式的に示す説明図である。なお、図3では、後述するように、磁性材料と触媒金属とを含む触媒粉末に、排気ガス中のNO成分が吸着される状態も示している。
図3に示すように、共沈法による触媒粉末には、磁性材料粒子5、具体的にはγ−Fe粒子と触媒粉末粒子6、具体的にはPt粒子とが含有され、磁性材料粒子5と触媒金属粒子6とはそれらの一部が固溶した固溶部7を形成している。このようにして、触媒金属粒子6の少なくとも一部が磁性材料粒子5と固溶して触媒金属粒子6が磁性材料粒子7の表面に露出して固定されている共沈法による触媒粉末が得られる。
【0021】
次に、噴霧熱分解法による触媒粉末の調製方法について説明する。
イオン交換水に、磁性材料の原料塩、本実施形態では硝酸鉄を所定量溶解し、該溶解後に、有機溶剤としてヘキサンを前記イオン交換水に対して40vol%添加してW/O型エマルジョン(油中水型エマルジョン)を形成し、原料溶液を調製する。
【0022】
そして、前記原料溶液を、キャリアガスとして空気を用いて噴霧させることにより前記原料溶液を液滴化させ、炉室温度950℃の加熱炉内に通過させる。該加熱炉を通過した粒子をバグフィルタによって捕集し、捕集された前記粒子を水洗し、該水洗後に乾燥させる。このようにして、磁性材料粒子、具体的にはγ−Fe粒子が凝集して、中空状の形態をした磁性材料粒子粉末が得られる。
【0023】
次に、前記中空状の磁性材料粒子粉末に、触媒貴金属としてPtを蒸発乾固法によって担持させる。すなわち、前記磁性材料粒子の粉末に、ジニトロジアミン白金硝酸溶液を加え、更にイオン交換水を加えて混合し、該混合物を蒸発乾固させる。そして、触媒金属Ptが担持された中空状の磁性材料粒子に対して、H/He混合ガスを700℃の温度で8時間流通させて、触媒金属Ptと磁性材料γ−Feとを一部固溶させ、噴霧熱分解法による触媒粉末を得た。
【0024】
図4は、噴霧熱分解法により得られた触媒粉末の要部を模式的に示す説明図である。図4に示すように、噴霧熱分解法による触媒粉末には、磁性材料粒子15、具体的にはγ−Fe粒子と触媒粉末粒子16、具体的にはPt粒子とが含有されている。前記触媒金属粒子16は、前記共沈法による触媒粉末と同様に、触媒金属粒子16の少なくとも一部が磁性材料粒子15と固溶して磁性材料粒子15の表面に露出して固定されている。
【0025】
このようにして、触媒金属粒子16の一部が磁性材料粒子15と固溶して磁性材料粒子15の表面に露出固定された触媒金属粒子16と磁性材料粒子15とからなる複合粒子17が凝集して、中空部18を有するシェル状、具体的には略球殻状に形成されてなる噴霧熱分解法による触媒粉末が得られる。
【0026】
(2)ハニカム担体へのコーティング
次に、共沈法及び噴霧熱分解法により得られた触媒粉末をハニカム担体にコーティングする方法について説明する。
図5は、触媒粉末をハニカム担体にコーティングする方法を示す説明図である。図5に示すように、先ず、触媒粉末をコーティングするためのハニカム担体を用意する(ステップS1)。なお、前記ハニカム担体は、セル密度4mil/400cpsiで、コージェライト製のものを使用した。
【0027】
そして、共沈法又は噴霧熱分解法により得られた触媒粉末、バインダ及び水を混合し、本実施形態では更に、酸素吸蔵材に触媒金属Rhを担持させたRh担持酸素吸蔵材と、アルミナに触媒金属Pdを担持させたPd担持アルミナとを混合してスラリーを調製し、該スラリーをハニカム担体にウォッシュコートした(ステップS2)。前記スラリー中にハニカム担体を浸漬させ、ハニカム担体上に共沈法又は噴霧熱分解法により得られた触媒粉末を含む触媒層を形成した。
【0028】
次に、前記ハニカム担体の表面に付着した余分なスラリーをエアブローにより吹き飛ばし(ステップS3)、該エアブロー後に、ハニカム担体を乾燥させた(ステップS4)。前記ハニカム担体に所定量の触媒が担持されるまで、ウォッシュコート、エアブロー及び乾燥を繰り返した(ステップS2〜ステップS4)。
【0029】
前記ハニカム担体に所定量の触媒が担持されると、前記ハニカム担体を空気中で加熱焼成した(ステップS5)。この焼成は、500℃の温度で2時間保持することにより行った。このようにして、ハニカム担体上に触媒層が形成されてなるハニカム担体触媒を得た(ステップS6)。
【0030】
なお、共沈法により調製され磁性材料粒子と触媒金属粒子とが一部固溶した触媒粉末と、Pd担持アルミナと、Rh担持酸素吸蔵材とを含有した触媒を実施例1とし、噴霧熱分解法により調製され磁性材料粒子と触媒金属粒子とが一部固溶した触媒粉末と、Pd担持アルミナと、Rh担持酸素吸蔵材とを含有した触媒を実施例2とした。
【0031】
また、比較例として、実施例1において磁性材料粒子と触媒金属粒子とが固溶していないもの(比較例1とする)と、実施例2において磁性材料粒子と触媒金属粒子とが固溶していないもの(比較例2とする)とを調製した。具体的には、比較例1の触媒は、共沈法により調製され磁性材料γ−Fe粒子に触媒金属Pt粒子を担持させた触媒粉末と、Pd担持アルミナと、Rh担持酸素吸蔵材とを含有させ、比較例2の触媒は、噴霧熱分解法により調製され磁性材料γ−Fe粒子に触媒金属Pt粒子を担持させた触媒粉末と、Rh担持酸素吸蔵材と、Pd担持アルミナとを含有させた。
【0032】
前記各実施例及び比較例として用いた触媒の組成を以下の表1に示す。なお、表1では、共沈法により調製され磁性材料γ−Fe粒子と触媒金属Pt粒子とが一部固溶した触媒粉末をPt/Fe中実材と表し、噴霧熱分解法により調製され磁性材料γ−Fe粒子と触媒金属Pt粒子とが一部固溶した触媒粉末をPt/Fe中空材と表し、共沈法により調製され磁性材料γ−Fe粒子に触媒金属Pt粒子を担持させた触媒粉末をPt担持Fe中実材と表し、噴霧熱分解法により調製され磁性材料γ−Fe粒子に触媒金属Pt粒子を担持させた触媒粉末をPt担持Fe中空材と表している。
【0033】
【表1】

【0034】
また、前記各実施例及び比較例の触媒に含有される触媒粉末、具体的にはPt/Fe中実材、Pt/Fe中空材、Pt担持Fe中実材及びPt担持Fe中空材、アルミナ並びに酸素吸蔵材の担持量をそれぞれ以下の表2に示す。なお、表2では、前記触媒粉末における触媒金属Ptと磁性材料Feとの質量比、アルミナに担持される触媒金属Pdの担持量、酸素吸蔵材に担持される触媒金属Rhの担持量も示している。
【0035】
【表2】

【0036】
表1及び表2に示すように、実施例1の触媒はPt/Fe中実材を30g/L、アルミナを50g/L、酸素吸蔵材を120g/L含有し、Pt/Fe中実材ではPtとFeとの質量比がPt:Fe=20:80である。また、実施例2の触媒は、Pt/Fe中空材を20g/L、アルミナを50g/L、酸素吸蔵材を120g/L含有し、Pt/Fe中空材ではPtとFeとの質量比がPt:Fe=10:90である。
【0037】
一方、比較例1の触媒は、Pt担持Fe中実材を30g/L、アルミナを50g/L、酸素吸蔵材を120g/L含有し、Pt/Fe中実材ではPtとFeとの質量比がPt:Fe=20:80である。また、比較例2の触媒は、Pt担持Fe中空材を20g/L、アルミナを50g/L、酸素吸蔵材を120g/L含有し、Pt/Fe中空材ではPtとFeとの質量比がPt:Fe=10:90である。
【0038】
なお、排気ガス浄化用触媒において、Pt/Fe中実材は、好ましくは、例えば1〜100g/L程度の範囲で含有され、Pt/Fe中実材におけるPtとFeとの質量比は、例えばPt:Fe=10:90〜40:60の範囲に設定される。また、排気ガス浄化用触媒において、Pt/Fe中空材は、好ましくは、例えば1〜100g/L程度の範囲で含有され、Pt/Fe中空材におけるPtとFeとの質量比は、例えばPt:Fe=5:95〜20:80の範囲に設定される。また、アルミナは、好ましくは、例えば35〜80g/L程度の範囲で含有され、酸素吸蔵材は、好ましくは、例えば80〜170g/L程度の範囲で含有される。
【0039】
(3)触媒性能評価
次に、前記各実施例及び比較例の触媒について、排気ガスの浄化性能をライトオフ性能により評価した。
前記各実施例及び比較例のハニカム担体触媒を大気中において950℃の温度で10時間保持するエージング処理を行った後に、ライトオフ性能を評価した。モデルガス流通反応装置及び排気ガス分析装置を用いて、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を測定した。なお、ライトオフ温度は、触媒に流入させるモデルガスのガス温度を常温から漸次上昇させ、HC、CO又はNOxの浄化率が50%に達したときのガス温度である。
【0040】
ライトオフ性能の評価に際し、先ず測定条件を一定にするためにプリコンディショニングを行った。前記エージング処理したハニカム担体触媒をモデルガス流通反応装置に取り付け、理論空燃比(A/F=14.7)のモデルガスを600℃の温度で20分間流した。ここでは、空間速度SVを120,000/時間とし、その昇温速度を30℃/分とした。なお、モデルガスのガス組成を以下の表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
ライトオフ性能の評価に際しては、モデルガスの空燃比をA/F=14.7±0.9とした。すなわち、理論空燃比A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、表3に示した所定量の変動用ガスを一定周期(1Hz)でパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。ここでは、空間速度SVを60,000/時間とし、その昇温速度を30℃/分とした。
【0043】
前記各実施例及び比較例の触媒について、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度の測定結果を以下の表4にそれぞれ示す。
【0044】
【表4】

【0045】
表4に示すように、HCの浄化に関するライトオフ温度について、Pt担持Fe中実材を含む比較例1の触媒では244℃、Pt担持Fe中空材を含む比較例2の触媒では239℃であるのに対し、Pt/Fe中実材を含む実施例1の触媒では223℃、Pt/Fe中空材を含む実施例2の触媒では221℃であり、実施例1、2の触媒は、比較例1、2の触媒に対し、HCの浄化に関するライトオフ温度が低くなっている。
【0046】
また、COの浄化に関するライトオフ温度については、Pt担持Fe中実材を含む比較例1の触媒では225℃、Pt担持Fe中空材を含む比較例2の触媒では220℃であるのに対し、Pt/Fe中実材を含む実施例1の触媒では209℃、Pt/Fe中空材を含む実施例2では207℃であり、実施例1、2の触媒は、比較例1、2の触媒に対し、COの浄化に関するライトオフ温度が低くなっている。
【0047】
更に、NOxの浄化に関するライトオフ温度についても、Pt担持Fe中実材を含む比較例1の触媒では233℃、Pt担持Fe中空材を含む比較例2の触媒では229℃であるのに対し、Pt/Fe中実材を含む実施例1の触媒では213℃、Pt/Fe中空材を含む実施例2の触媒では210℃であり、実施例1、2の触媒は、比較例1、2の触媒に対し、NOxの浄化に関するライトオフ温度が低くなっている。
【0048】
このように、触媒金属Ptと磁性材料Feとが含有された排気ガス浄化用触媒において、触媒金属Ptを磁性材料Feの表面に担持させた触媒に対し、触媒金属Pt粒子と磁性材料Fe粒子とを一部固溶させることで、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度をそれぞれ低下させることができる。
【0049】
また、Pt/Fe中空材を含む実施例2の触媒は、Pt/Fe中実材を含む実施例1の触媒に比して、触媒の単位体積当りの触媒金属Pt担持量が少ないにも関わらず、具体的には、実施例1では触媒金属Pt担持量が6g/Lであるのに対して実施例2では触媒金属Pt担持量が2g/Lであるにも関わらず、表4に示すように、実施例2の触媒は、実施例1の触媒に比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低くなっている。これは、中空材の場合、前記中空部18により排気ガスの流通、拡散が良好で、触媒金属との接触機会が増加しているためと考えられる。
【0050】
このように、触媒金属Ptと磁性材料Feとが含有され、触媒金属Pt粒子と磁性材料Fe粒子とを一部固溶させた排気ガス浄化用触媒において、触媒金属Pt粒子と磁性材料Fe粒子とを一部固溶させた複合粒子を略球殻状に凝集させることで、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度をそれぞれ低下させることができる。
【0051】
本実施形態では、磁性材料と固溶させる触媒金属としてPtを用いているが、Pd、Rhなどの触媒金属を用いてもよい。特に、排気ガス中のNO成分を酸化状態で吸着させるためには、触媒金属としてPt又はPdを用いることが好ましい。また、磁性材料としては、フェライト系材料、具体的にはγ−フェライト(γ−Fe)が好ましいが、その他の磁性材料を用いることも可能である。
【0052】
なお、排気ガス浄化用触媒2では、排気ガスG中に含まれ分子サイズの小さいNO成分が磁性材料5や触媒金属6に吸引される。これは、NO成分が常磁性であることによる。かかるNO成分は、図3に示すように、磁性材料5上ではNOとして吸着され、触媒金属6上ではNOとして吸着される。このようにして、排気ガスGに含まれるNO成分が大気中に排出されることを抑制することができる。
【0053】
前記磁性材料Feは、Feが3価の状態にあり酸化された状態であることから、その表面にO原子が存在していると考えられる。そこにNOが近づくことでNOとして吸着する。一方、触媒金属Ptは、磁性材料Feよりも酸素分解能力が強いため、より酸素が結合したNOという状態になりやすい。
【0054】
前記排気ガス浄化用触媒においては、磁性材料5上に吸着されたNO及び/又は触媒金属6上に吸着されたNOは、触媒金属Ptによる還元作用やリッチ(酸素不足)雰囲気時にHC成分による還元作用により還元され、排気ガス中のNO成分をNとして浄化することができる。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置を概略的に示す概略説明図である。図6に示すように、排気ガス浄化用触媒装置では、磁場発生装置30に代え、永久磁石50を用いるようにしてもよい。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては、同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0056】
図6に示すように、排気ガス浄化用触媒装置40は、第1の実施形態と同様に、排気ガス浄化用触媒2とインターラムマット20とを備えているが、排気ガス浄化用触媒2の外周には、具体的にはインターラムマット20の外周には、磁場発生装置30に代え永久磁石50が配設されている。
【0057】
前記永久磁石50としては、例えばFe−Al−Ni−Co磁石、Fe−Cr−Co磁石又はCu−Ni−Co磁石等の鋳造磁石、例えばBaフェライト磁石又はSrフェライト磁石等のフェライト磁石、例えばSm−Co磁石又はNd−Fe−B磁石等の希土類磁石等を使用することができる。この永久磁石50は、前記ハニカム担体の外周全体にわたって設けてもよく、あるいは前記ハニカム担体の外周の一部に設けるようにしてもよい。
【0058】
第2の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置40においても、排気ガス浄化用触媒2の外周に永久磁石50が配設されているので、第1の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置1の磁場発生装置30と同様に、ハニカム担体3上に形成された触媒層4に含有される磁性材料5、15の磁力の劣化を抑制することができ、排気ガス浄化用触媒の浄化性能を有効に確保することができる。
【0059】
このように、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒2によれば、触媒金属粒子6、16は、該触媒金属粒子6、16の少なくとも一部が磁性材料粒子5、15と固溶して磁性材料粒子5、15の表面に露出固定されていることにより、触媒金属が磁性材料に強固に固定化され触媒金属の移動が抑制されるので、触媒金属が凝集しシンタリングすることを抑制することができ、排気ガス浄化用触媒の耐熱性を高めることができる。
前記排気ガス浄化用触媒2では、排気ガス中のNO成分を磁性材料Feや触媒金属Ptに引き寄せ吸着させることができ、排気ガス、特にNO成分の浄化性能を高めることができる。かかるNO成分は、触媒金属による還元作用やリッチ(酸素不足)雰囲気時におけるHC成分による還元作用により還元され浄化される。
【0060】
また、触媒金属粒子16と磁性材料粒子15とからなる複合粒子17が、中空部18を有するシェル状に形成されていることにより、触媒層4において表面に露出する触媒金属粒子16を多く存在させることができ、排気ガスと触媒金属との接触面積を高め、排気ガスの浄化性能を高めることができる。
前記排気ガス浄化用触媒では、触媒金属粒子と磁性材料粒子とからなる複合粒子の中空部を通じて排気ガスが流れることができ、排気ガスと触媒金属との接触機会が増え、排気ガスの浄化性能を高めることができる。
【0061】
本実施形態では、排気ガス浄化用触媒に含有される触媒金属粒子と磁性材料粒子とをH/He混合ガスを用いて一部固溶させているが、その他の好適な方法を用いて、触媒金属粒子と磁性材料粒子とを一部固溶させ触媒金属粒子を磁性材料粒子の表面に露出固定させるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、排気ガス浄化用触媒に含有された磁性材料に磁力を与えるために、排気ガス浄化用触媒の外周に、磁力発生装置又は永久磁石が配設されているが、その他の好適な着磁手段を用いて排気ガス浄化用触媒に磁場を作用させ、前記磁性材料に磁力を与えるようにしてもよい。
【0063】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、磁性材料粒子と触媒金属粒子とを含有し、触媒金属粒子の一部を磁性材料粒子に固溶させ、触媒金属粒子を磁性材料粒子の表面に露出して固定させた排気ガス浄化用触媒であり、例えば自動車等の車両の排気系に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置を概略的に示す概略説明図である。
【図2】本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の要部断面図である。
【図3】共沈法により得られた触媒粉末の要部を模式的に示す説明図である。
【図4】噴霧熱分解法により得られた触媒粉末の要部を模式的に示す説明図である。
【図5】触媒粉末をハニカム担体にコーティングする方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置を概略的に示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0066】
2 排気ガス浄化用触媒
3 ハニカム担体
4 触媒層
5、15 磁性材料粒子
6、16 触媒金属粒子
17 複合粒子
18 中空部
30 磁場発生装置
50 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム担体の外周に磁場発生装置又は永久磁石が配設されるとともに、前記ハニカム担体上に形成された触媒層に磁性材料粒子と触媒金属粒子とが含有されてなる排気ガス浄化用触媒であって、
前記触媒金属粒子は、該触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定されている、
ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒において、
前記触媒金属粒子の少なくとも一部が前記磁性材料粒子と固溶して前記磁性材料粒子の表面に露出固定された前記触媒金属粒子と前記磁性材料粒子とからなる複合粒子が、中空部を有するシェル状に形成されている、
ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−36604(P2008−36604A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218373(P2006−218373)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】