説明

排気ガス浄化装置

【課題】排気ガスの圧力損失が低い排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】還元剤供給装置10は、環状流路11と、両端が環状流路11と連通すると共に環状流路11の径方向内側において格子形状を形成するように設けられた複数の細管12とを有している。各細管12は、触媒担体6の上流側の端面6aに構成された目封じ部23bに沿って設けられている。これにより、還元剤供給装置10を正面から見たときに、細管12が形成する格子形状の孔24は、端面6aの開口部23aと重なることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低減するために、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが開発されている。尿素SCRシステムの基本構成は、一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)にするための酸化触媒と、酸化触媒の下流側に設けられ、尿素水から生成したアンモニアとNOxとの化学反応により、NOxを窒素及び水に還元するためのSCR触媒と、SCR触媒に尿素水を添加するための尿素水添加システムと、SCR触媒の下流側に設けられ、SCR触媒における化学反応で消費されずに残ったアンモニアを酸化するための酸化触媒とから構成される。
【0003】
このような尿素SCRシステムが例えば、特許文献1に記載されている。この尿素SCRシステムでは、触媒担体の上流側に、複数の噴出孔が形成された格子状のパイプが設けられ、ポンプによって尿素水が格子状のパイプに送られて、噴出孔から触媒担体に向けて尿素水が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−107450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の尿素SCRシステムでは、排気ガスが流通する排気管に格子状のパイプを設ける構成のため、排気ガスが格子状のパイプを通過する際の圧力損失が大きくなり、排気系統に不具合が生じるおそれがあるといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、排気ガスの圧力損失が低い排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る排気ガス浄化装置は、内燃機関から排出されて排気管を流通する排気ガス中のNOxを還元するSCR触媒が担持された触媒担体と、SCR触媒によってNOxを還元するために触媒担体に還元剤を供給する還元剤供給装置とを備え、還元剤供給装置は、還元剤が噴出される複数の噴出孔が形成された細管を有し、触媒担体の上流側の端面には、触媒担体内への排気ガスの流入が遮断される目封じ部が形成されており、細管は、目封じ部に沿って設けられている。排気ガスが通過できない目封じ部に沿って、還元剤供給装置の細管が設けられているので、還元剤供給装置による排気ガスの圧力損失が回避される。
目封じ部に溝が形成され、細管は溝内に設けられてもよい。
細管は、端面と面一に設けられてもよい。
細管が、端面の目封じ部を構成してもよい。
複数の噴出孔は、排気管の壁面から中心部に向かって、排気管の流路断面に対する噴出孔の開孔率が増加するように設けられてもよい。
噴出孔は、排気管内を排気ガスが流れる方向に対して上流側に向かって還元剤が噴出される向きに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、排気ガスが通過できない目封じ部に沿って、還元剤供給装置の細管が設けられていることにより、還元剤供給装置による排気ガスの圧力損失が回避されるので、排気ガスの圧力損失を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態に係る排気ガス浄化装置の構成模式図である。
【図2】この実施の形態に係る排気ガス浄化装置の触媒担体の断面図である。
【図3】この実施の形態に係る排気ガス浄化装置において、触媒担体の上流側の端面における還元剤供給装置の配置を説明するための部分拡大図である。
【図4】この実施の形態に係る排気ガス浄化装置の触媒担体の上流側の端面の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、内燃機関であるディーゼルエンジン1から排出された排気ガスが流通する排気管2に、酸化触媒3と、ウォールフロー型の触媒担体6を備えた排気ガス浄化フィルタ4と、酸化触媒5とが設けられている。排気ガス浄化フィルタ4と酸化触媒5との間には、排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ7が設けられている。触媒担体6の上流側の端面6aには、還元剤である尿素水を噴出する還元剤供給装置10が設けられている。還元剤供給装置10は、触媒担体6の外径と同じ外径を有する環状流路11と、両端が環状流路11と連通すると共に環状流路11の径方向内側において格子形状を形成するように設けられた複数の細管12とを有している。環状流路11は、配管13を介して、尿素水が貯留されている尿素水タンク14に連通されている。配管13には、尿素水タンク14に貯留された尿素水を環状流路11に圧送するポンプ15と、電磁弁16とが設けられている。NOxセンサ7とポンプ15と電磁弁16とはそれぞれ、制御装置であるECU17に電気的に接続されている。
【0011】
図2に示されるように、触媒担体6は、多孔質性の基材21から構成されている。基材21の材質としては、コージェライト、アルミナ、炭化珪素等の、通常のフィルタ基材として用いられるセラミックス材料が利用できる。基材21の内部の細孔内には、NOxを還元するためのSCR触媒が担持されている。基材21のディーゼルエンジン1側の表面21aには、排気ガス中のパティキュレートマター(PM)を捕集する捕集層22がコーティングされている。捕集層22の材質としても基材21と同様の材料が利用可能である。触媒担体6の内部には、触媒担体6の軸方向に延びる複数の排気ガス通路23が形成されているが、触媒担体6はウォールフロー型の触媒担体であるので、各排気ガス通路23は、端面6a側及び他方の端面6b側のいずれか一方の端部が開口部23aを構成し、他方の端部が目封じ部23bを構成している。
【0012】
図3に示されるように、各細管12は、触媒担体6の端面6aに構成された目封じ部23bに沿って設けられている。これにより、還元剤供給装置10を正面から見たときに、細管12が形成する格子形状の孔24は、端面6aの開口部23aと重なることになる。ただし、細管12の配置を分かりやすくするために、図3では、開口部23a及び目封じ部23b並びに孔24の大きさと、細管12の太さとを、実際よりも大きくなるように誇張して描き、目封じ部23bを、黒く塗りつぶされた正方形として描いている。
【0013】
各細管12には、触媒担体6の端面6aに対向する向きに細管12の格子を見たときに、尿素水を噴出する噴出孔25が見えるように、複数の噴出孔25が設けられている。これにより、尿素水は、排気管2(図1参照)内を排気ガスが流れる方向に対して上流側に向かって、噴出孔25から噴出されるようになる。ただし、尿素水は、排気ガスの流れに対して完全に対向する向き(排気ガスの流れと平行)に噴出される必要はなく、排気ガスの流れる方向に対して斜めに、すなわちある角度をなしながら、排気ガスが流れる方向に対して上流側に向かって噴出されてもよい。
【0014】
また、隣り合う噴出孔25間の距離は、端面6aの周縁部付近よりも端面6aの中心部付近のほうが短くなっている。言い換えると、端面6aの周縁部から中心部に向かって噴出孔25が密になるように、すなわち単位面積当たりの噴出孔25の数が増加するように、噴出孔25が設けられている。つまり、噴出孔25は、排気管2の壁面から中心部に向かって、排気管2の流路断面に対する噴出孔25の開孔率が増加するように設けられている。これにより、尿素水の供給量は、端面6aの周縁部付近よりも端面6aの中心部付近のほうが多くなるようになっている。
【0015】
次に、この実施の形態に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。
図1に示されるように、ディーゼルエンジン1の始動後、排気ガスは排気管2を流通する。排気ガスが酸化触媒3を流通することにより、排気ガス中のNOの一部がNOに酸化される。続いて排気ガスは、排気ガス浄化フィルタ4に流入する。排気ガス浄化フィルタ4内において、排気ガスは、還元剤供給装置10を通り抜けた後、触媒担体6内に流入する。図3に示されるように、還元剤供給装置10は、複数の細管12によって構成される格子の孔24が触媒担体6の端面6aの開口部23aと重なるようになっているので、排気ガスは、孔24を通り抜けた後、開口部23aを介して触媒担体6に流入する。これにより、還元剤供給装置10による排気ガスの圧力損失が回避される。
【0016】
図2に示されるように、開口部23aを介して触媒担体6に流入した排気ガスは、排気ガス通路23を流通する。端面6a側の端部に開口部23aが設けられた排気ガス通路23は、端面6b側の端部に目封じ部23bが設けられているので、排気ガス通路23を流通する際に排気ガスは、排気ガス通路23の壁、すなわち捕集層22及び基材21を通り抜けて隣の排気ガス通路23へ移動する。この隣の排気ガス通路23は、端面6b側の端部に開口部23aが設けられているので、この開口部23aを介して触媒担体6から流出する。
【0017】
排気ガスが排気ガス通路23の壁を通り抜ける際、捕集層22によって、排気ガスに含まれるPMが捕集される。捕集層22を通り抜けた排気ガスは、基材21の内部の細孔を拡散しながら基材21を通り抜ける。この際、後述する動作により供給された尿素水が加水分解されたアンモニアと二酸化炭素(CO)となり、基材21の内部の細孔内に担持されたSCR触媒において、生成したアンモニアと排気ガス中のNOxとが反応して、窒素(N)及び水(HO)となる(NOx浄化反応)。図1に示されるように、排気ガス浄化フィルタ4において消費されずに残ったアンモニアは、酸化触媒5において酸化される。このようにしてNOxが浄化された排気ガスは、排気管2を流通して大気中へ排気される。
【0018】
次に、尿素水が触媒担体6に供給される動作について説明する。
図1に示されるように、NOxセンサ7は、排気ガス浄化フィルタ4から流出した排気ガス中のNOx濃度を検出し、この検出値がECU17に伝送される。ECU17は、NOxセンサ7の検出値に基づいて、ポンプ15の起動及び電磁弁16の開閉を制御する。例えば、ECU17にNOx濃度の上限値を予め設定しておき、NOxセンサ7の検出値がこの上限値以上となったら、排気ガス浄化フィルタ4においてNOxの浄化が必要であると判断し、ポンプ15を起動すると共に電磁弁16を開く。すると、尿素水タンク14内の尿素水が配管13を流通し、還元剤供給装置10の環状流路11に流入する。環状流路11に流入した尿素水は、細管12に流入し、細管12に形成された噴出孔25から噴出される。逆に、NOxセンサ7の検出値がこの上限値未満の場合には、排気ガス浄化フィルタ4においてNOxの浄化が必要でないと判断し、ECU17は、ポンプ15を停止し、電磁弁16を閉じる。また、NOxセンサ7の検出値と尿素水の供給量とのマップ等をECU17に予め組み込んでおき、このマップに基づいて尿素水の供給量を調整するように、ポンプ15の起動及び電磁弁16の開閉を制御することもできる。
【0019】
既に述べたように、この実施の形態では、尿素水は、排気ガスが流れる方向に対して上流側に向かって噴出されることにより、流れてくる排気ガスに衝突するようになるので、排気ガス中に分散されやすくなり、尿素水の分散性が向上する。
また、排気管2を排気ガスが流通する際、排気ガスは一般的に、排気管2の壁面から中心部に向かって速度が大きくなるような速度分布をなす。これに対し、既に述べたように、この実施の形態では、尿素水の供給量は、端面6aの周縁部付近よりも端面6aの中心部付近のほうが多くなるようになっているので、排気ガスの速度が大きい個所に尿素水を多く供給するようになり、触媒担体6内でのNOx浄化反応の効率が向上する。
【0020】
このように、触媒担体6の上流側の端面6aにおいて、排気ガスが通過できない目封じ部23bに沿って、還元剤供給装置10の細管12が設けられていることにより、還元剤供給装置10による排気ガスの圧力損失が回避されるので、排気ガスの圧力損失を低くすることができる。
【0021】
この実施の形態では、細管12が端面6aに接するか、あるいは端面6aから離れるようにして設けられているが、この形態に限定するものではない。図4(a)に示されるように、端面6aにおいて目封じ部23bに溝30が形成され、溝30内に細管12が配置されてもよい。また、図4(b)に示されるように、断面が矩形の溝31を目封じ部23bに形成し、断面が矩形の細管32を溝31内に配置することにより、細管32が端面6aと面一になっていてもよい。
【0022】
この実施の形態では、触媒担体6の端面6aに予め目封じ部23bが形成された後、細管12を目封じ部23b上に配置するか、あるいは目封じ部に形成された溝30又は31内に細管12又は32を配置しているが、この形態に限定するものではない。触媒担体6の端面6aに目封じ部を形成せず、端面6aに細管12を配置し、端面6aのいくつかの開口部23aを細管12で塞ぐことにより、端面6aに目封じ部が構成されるようにしてもよい。
【0023】
この実施の形態では、複数の細管12が格子形状を構成していたが、この形態に限定するものではない。二本の細管を十字状に配置したり、複数の細管がそれぞれ波状のように曲がりくねりながら目封じ部23bに沿って配置してもよい。
【0024】
この実施の形態では、触媒担体6を構成する多孔質性の基材21のディーゼルエンジン1側の表面21aに、排気ガス中のPMを捕集する捕集層22がコーティングされているが、この形態限定するものではない。基材21にはPMを捕集する部材を設けずに、酸化触媒3と触媒担体6との間に、PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を設けてもよい。
【0025】
この実施の形態では、還元剤として尿素水を使用しているが、これに限定するものではない。アンモニア水、アンモニアガス等その他の還元剤を使用してもよい。
また、この実施の形態では、NOxセンサ7の検出値に基づいて還元剤の供給を制御したが、ディーゼルエンジン1の運転状況などを利用したり、併用したりして、還元剤の供給を制御してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)、2 排気管、6 触媒担体、6a (触媒担体の)端面、10 還元剤供給装置、12,32 細管、23b 目封じ部、25 噴出孔、30,31 溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出されて排気管を流通する排気ガス中のNOxを還元するSCR触媒が担持された触媒担体と、
前記SCR触媒によってNOxを還元するために前記触媒担体に還元剤を供給する還元剤供給装置と
を備え、
該還元剤供給装置は、前記還元剤が噴出される複数の噴出孔が形成された細管を有し、
前記触媒担体の上流側の端面には、前記触媒担体内への前記排気ガスの流入が遮断される目封じ部が形成されており、前記細管は、前記目封じ部に沿って設けられている排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記目封じ部に溝が形成され、前記細管は前記溝内に設けられている、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記細管は、前記端面と面一に設けられている、請求項2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記細管が、前記端面の目封じ部を構成する、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記複数の噴出孔は、前記排気管の壁面から中心部に向かって、前記排気管の流路断面に対する前記噴出孔の開孔率が増加するように設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記噴出孔は、前記排気管内を前記排気ガスが流れる方向に対して上流側に向かって前記還元剤が噴出される向きに設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87744(P2013−87744A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231449(P2011−231449)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】