説明

排気システム

【課題】排気システム(20)の良好なコールドスタート性能を確実にする。また、特に排気システム(20)を動作させるための提案された方法を用いるとき、窒素酸化物の排出を防ぐ。
【解決手段】この発明は、内燃機関(4)の少なくとも1つの燃焼室(3)において生成される排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材(2)を有する支持体(1)に関し、また、この種の支持体(1)を有する排気システム(20)を備えた内燃機関(4)を動作させるための方法に関する。内燃機関(4)のすべての燃焼室(3)は全体で全燃焼室体積(5)を有し、支持体(1)は吸着体体積(6)を有し、吸着体体積(6)は、燃焼室体積(5)の75%未満、特に45%未満、好ましくは5%未満ともなるように設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室で生成される排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材を有する支持体に関する。この種の支持体は、好ましくは自動車の排気システムにおいて用いられる。さらに、この発明はこの種の支持体を有する排気システムに関し、またこの排気システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素および水素だけからなる燃料が完全燃焼した場合、無害な物質である二酸化炭素(CO2)および水(H2O)だけが生成されるが、内燃機関からの排気ガスは、たとえば水素(H2)および一酸化炭素(CO)等の不完全な酸化によって生じるさらなる生成物や
、部分的に既燃または未燃の炭化水素(Hmn)を含む。さらに、排気ガスは窒素の酸化生成物であるNOおよびNO2を含む。窒素酸化物は、非常に小量(ppbの範囲)であっても地面近くでのオゾンの生成を増すので、その排出を避けなければならない。
【0003】
好適なエンジン管理システムの助けによって窒素酸化物濃度を下げることを目的とした予防手段に加えて、生成される排気ガスを洗浄手順にかけることが公知である。このために、一例として三元触媒コンバータが用いられ、これにより3つの最も重要な汚染物質(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物)が排気ガスから除去される。この場合、一酸化炭素と炭化水素の未燃残余物とが、窒素酸化物および酸素によって酸化されて、二酸化炭素および水を生成する。窒素酸化物は還元されて窒素を生成する。この種類の触媒コンバータによりこれらの反応の迅速な進行が可能になるが、これらは完全な反応を達成しない。その一因として、内燃機関のある動作状態の間、触媒コンバータにおける排気ガスの滞留時間があまりに短いため、上述の反応が完全に起こり得ないことが挙げられる。窒素酸化物の効率的な還元は、あまり高い酸素濃度は許容されないが、一定量の水素または一酸化炭素が排気ガス中に存在する場合のみ可能となる。これは、内燃機関が好ましくは可燃成分の多いモード(lambda<1)で動作されるべきであることを意味するが、これは燃料消費の点から見て望ましくない。
【0004】
米国特許第5,795,553号(特許文献1)は、酸素が豊富な環境において窒素酸化物の吸着が可能な、塗膜を備えた支持下地を開示している。この下地は、十分な量の一酸化炭素および炭化水素が排気ガス中にあるとき、蓄積された窒素酸化物を脱離する。このために、塗膜は、銅および含水酸化ジルコニウムを含むアルカリ金属の化合物を有する。使用されるアルカリ金属は、好ましくはナトリウムまたはカリウムである。この支持下地により、酸素が過剰にあるとき窒素酸化物の蓄積が可能となり、触媒コンバータを用いて触媒転換可能なとき窒素酸化物が確実に脱離される。
【0005】
さらに、DE 196 36 041 A1(特許文献2)では、排気ガスに含まれる窒素酸化物を蓄積するための吸着層を備えたハニカム形状の支持下地が開示される。吸着層を備えたこの支持下地は、排気システムにおいてある動作状態、たとえば正味の酸化状態(λ>1およびT>150℃)になると窒素酸化物を蓄積し、さらに動作状態が変わると、特に理論的な空気−燃料比になりかつ高温のときに、再びこれらの窒素酸化物を放出する。一時的に蓄積された窒素酸化物を転換するために、230℃を超える温度で、排気ガスに含まれる一酸化窒素の少なくとも50%を二酸化窒素に転換する下流触媒コンバータが提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,795,553号
【特許文献2】DE 196 36 041 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種類の支持下地の蓄積容量を設計するときには、下流触媒コンバータの着火性能も考慮に入れるべきである。比較的大体積の窒素酸化物蓄積装置を用いることにより、内燃機関のコールドスタート段階において、大量の熱エネルギが排気ガスから引き出されることとなる。これは触媒コンバータの加熱の遅れにつながり、ほぼ250℃の温度に達してようやく排気ガス中の汚染物質の触媒転換を始める。窒素酸化物蓄積装置の蓄積容量があまりに低い場合、結果として窒素酸化物が排出され、このため環境を汚染するおそれがある。
【0008】
これをもとにして、この発明の目的は、排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材を備えた支持体であって、その蓄積容量が排気システムのコールドスタート性能に著しく影響を及ぼさないようにした、支持体を提供することである。したがって、窒素酸化物の環境への排出を大いに削減する対応の排気システム、および、その排気システムを動作させるための好適な方法を記載することも意図しており、特に、吸着体材が適当な時間に再生成され、したがって窒素酸化物の吸着のための蓄積容量が常に利用可能であることを確実にすることを意図するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、実施の形態の支持体、排気システム、および動作方法により達成される。有利な改良および特に好ましい構成が従属請求項に記載される。これら実施の形態の特定の特徴はまた互いに組合されてもよい。
【0010】
排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材を有するこの発明にしたがった支持体は、吸着体体積を有する。この場合、吸着体体積は支持体に存在するいかなる空胴または通路も含む。排気ガスは内燃機関の少なくとも1つの燃焼室で生成される。燃料−空気混合物が燃焼室で燃焼し、排気ガスが生成される。公知の内燃機関は、好ましくはこの種類の燃焼室を4、6または8個有する。すべての燃焼室は全体で、ある規定された燃焼室体積を有する。従来の乗用車について、この燃焼室体積は、たとえば1.2から4.2リットルである。自動二輪車に対しては、燃焼室体積はほぼ0.25から1.5リットルである。ここで提案される支持体は、吸着体体積が燃焼室体積の75%未満、特に45%未満であり、好ましくはさらに5%未満であることによって特徴付けられる。支持体を機関近くに配置する場合、吸着体体積は、燃焼室体積の1%未満かまたはさらに0.5%未満となるよう設計されてもよい。
【0011】
驚くべきことに、試験により、このような小体積の窒素酸化物吸着体の設計が可能であることが示された。このことは、内燃機関の動作において、優勢な希薄燃焼(酸素が豊富な)モードのため、窒素酸化物の排出の大幅な増加を考慮に入れる必要があるという一般的な見解に反するものである。このような小体積の吸着体は比較的熱質量が低く、その結果、内燃機関のコールドスタート段階において排気ガスからほんのわずかな熱量しか引き出されない。一例として、これにより下流触媒コンバータの非常に急速な加熱が可能となり、結果として、生成される窒素酸化物の還元のための着火温度にごく短時間で達する。さらなる結果として、より短時間となるため、吸着体材を備えた支持体が吸着しなければならない窒素酸化物の量はより少なくなる。したがって、この発明に従った支持体は、確実に、内燃機関(特に希薄燃焼機関、ディーゼルエンジン)からの排気ガス中の窒素酸化物を効果的に還元し、さらにppb(10億分の1)の範囲での非常にわずかなレベルの排出さえも防ぐ。
【0012】
一実施例に従って、支持体は、断面の全体にわたって配される、排気ガスがそこを通って流れ得る複数の通路を有し、断面全体の平均通路密度は400〜1200cpsi(平方インチ当りのセル数)である。特定の所望の吸着体体積および内燃機関から吸着体の距離ももちろん、通路密度を設計する際に同様に考慮される。(特に燃焼室体積の20%未満の)非常に小さな吸着体体積および/または機関に(たとえば30cm未満の距離で)近接する設置部位に対して、この場合、約600cpsiまでの通路密度を用いることができ、ある状況下では、これらの密度をさらに一層(好ましくは、200から400cpsiの範囲に)減じねばならないかもしれない。通路密度が比較的低いこの設計は、第1に、吸着体にかけての排気ガス流れにおける過度の圧力低下を防ぐことを意味し、第2に、一例として、熱過負荷も確実に存在しないようにすることを意味する。吸着体体積がより大きい場合、および/または内燃機関からの距離がより離れている場合、より高い通路密度の吸着体を用いることが好ましい。これらの吸着体はその場合には、たとえば、少なくとも700cpsi、好ましくは1000cpsiより大きく、特に1600cpsiより大きい通路密度を有する。このような多数の通路により、吸着体材からなる広い表面積が提供される。これにより、排気ガスと吸着体材との間の集中的な接触が確実となり、支持体の体積比の蓄積容量が改善される。
【0013】
さらに別の実施例に従って、支持体は複数の金属薄板層を有し、その少なくともいくつかは、排気ガスがそこを通って流れ得る通路を形成するように構成される。金属薄板層を備えた支持体の持つ利点は、たとえばセラミックでできた支持体と比べて、同じ体積に対してより広い表面積を有し、かつ圧力損失が低いことである。金属薄板層は好ましくは、0.012mmから0.08mmの、特に0.03mm未満の厚さを有する金属薄板を用いて設計される。これにより表面積比の熱容量が低くなり、この結果、排気ガスから引き出される熱エネルギがさらに減じられる。
【0014】
さらに別の構成に従って、吸着体材はゼオライト構造および/または酸化カリウム成分を有する。ゼオライト構造の幾何学的特性により非常に大きい蓄積容量が確実となる。アルカリ金属の酸化物、特に酸化カリウムは、窒素酸化物の吸着を助ける際に特に有効である。試験において、特に酸化カリウム成分と金属支持体との組合せによって、長期間の、非常に有効な窒素酸化物の蓄積が確実となることが示された。
【0015】
さらなる構成に従って、支持体に窒素酸化物を還元するための触媒活性塗膜を備えることが提案される。これにより、適切な動作条件であれば、脱離されたか、またはちょうど生成されている窒素酸化物は、確実に直ちに還元されることとなる。この場合、特に有利には、吸着体材が第1の区域に配置され、支持体が、排気ガスの流れの方向で見て下流に、触媒活性塗膜を備えた第2の区域を有する。このように支持体を、吸着のための第1の区域と、窒素酸化物の還元のための第2の区域とに軸方向に分割することにより、結果として非常に単純な構造となり、たとえば、一方では吸着動作の、他方では触媒転換の結果としての正反対の化学反応を防ぐ。この場合、常に確実に、脱離された窒素酸化物がその後触媒活性塗膜と接触することとなる。
【0016】
この発明のさらなる局面では内燃機関の排気システムが提案され、これには内燃機関の少なくとも1つの燃焼室を環境に接続する少なくとも1つの排気管が含まれ、また内燃機関からの排気ガスに含まれる汚染物質を転換するための構成部品が配置される。この場合、この発明に従った支持体が、排気ガスの流れの方向で見て、内燃機関のすぐ下流に配置される。特に支持体のこの種の配置では、吸着体体積を大いに減じることができる。この場合、吸着体体積は燃焼室体積の1%未満またはさらに0.5%未満となるよう設計されてもよい。これは特に、その領域全体が高温であることに関連し、これにより吸着体材の再生成が促進される。
【0017】
支持体を、少なくとも1つの燃焼室から80cm未満、特に、30cm未満またはさら
に5cm未満の距離で配置することが特に有利である。このことを考慮に入れると、支持体がたとえば排気マニホールドの内側に、好ましくはターボチャージャの上流に配置されることが特に適切である。支持体が排気マニホールドの内側に配置される構成においては、個々の燃焼室につながる各々のマニホールドにこのような支持体が各場合1つ存在する。吸着体が適切に設計される場合、これを内燃機関の燃焼室の排気口通路に直接設置することもまた可能である。こうすると、吸着体体積が、複数の支持体の全吸着体体積と好ましい関係となる。また、ターボチャージャを上流に配置することにより、排気ガスから、それが支持体に接触するより前においても大量の熱エネルギが引き出されることを防ぎ、吸着体材の迅速かつ効果的な再生成を確実にする。
【0018】
さらに、排気システムを動作させる方法が提案され、この方法では、窒素酸化物を吸着するための吸着体材を有する支持体の不連続な再生成が、5秒未満、特に1秒未満で起こる。このような短い時間またはこのような動的な再生成により、窒素酸化物の蓄積のために必要とされる吸着体体積をさらに減じることが可能となる。有利には、この時間は、約0.5秒未満または0.1秒未満にまで短縮することもでき、この場合、ほんのわずかな量だけ窒素酸化物をやはり蓄積しなければならない。しかしながら、このような極端な場合、ある環境下では、コールドスタート直後に、および排気ガスの所要の温度に達するまで一時的に、窒素酸化物の蓄積を担う別個の吸着体を備える必要がある。
【0019】
内燃機関または排気システムが内燃機関における燃焼動作を制御するためのエンジン管理システムを有する場合、この発明は、再生成がエンジン管理システムを用いて燃料混合物を変えることにより達成され、特に、生成される排気ガス中の一酸化炭素のレベルの増加を伴う、排気システムを動作させる方法を提案する。これは、たとえば、燃料混合物に関して、燃料レベルが増加した内燃機関の運転サイクルがもたらされることを意味し、この場合、「燃料分の多い」混合物調製により、増加したレベルの不飽和炭化水素および一酸化炭素が生成される。増加したレベルの不飽和炭化水素および一酸化炭素は、ゆきわたっている温度と組み合わせると、窒素酸化物の還元につながり、純粋な窒素を生成する。というのも、不飽和炭化水素および一酸化炭素の酸素親和力がより大きいからである。
【0020】
動作方法のさらなる構成に従って、再生成が個々の燃焼室における別個の燃料混合物の交換により達成され、複数の燃焼室が交互に、生成される排気ガス中に、増加したレベルの一酸化炭素を生成する。これは特に、好ましくは、それら複数の燃焼室のうち各場合1つの燃焼室において交互に行なわれる。これは、たとえば、各々の場合1つの燃焼室のみに「燃料分の多い」燃料−空気混合物が供給され、残りの燃焼室が「燃料分の少ない」範囲で動作されることを意味する。増加したレベルの燃料を注入することにより頻繁に再生成するにもかかわらず、ここでは、内燃機関による燃料消費が非常に低くなる。これは特に、化学転換のためのさらなる構成部品が、この発明に従った非常に小さい支持体同士の間に配置されていないことに関連する。これまでは、比較的大体積の酸化触媒コンバータを吸着体の上流に接続することが慣例であった。しかしながら、これは、吸着体を再生成するのに十分な量よりもはるかに大量の燃料を注入しなければならないという結果を招く。というのも、生成された不飽和炭化水素および一酸化炭素のいくらかが上流の酸化触媒コンバータで既に転換されているからである。この発明に従った支持体を機関近くに直接配置することにより、非常に精密かつ正確に算出された、再生成にちょうど十分な、非常に少量の燃料を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内燃機関および排気システムを備えた自動車を概略的に示す図である。
【図2】この発明に従った支持マトリックスの一実施例の構造の概略的な斜視図である。
【図3】この発明に従った支持体のさらなる実施例の断面図である。
【図4】概略的に示された第1の詳細図である。
【図5】支持体の一実施例の第2の詳細図である。
【図6】機関近くに設置された支持体を備えた排気システムの構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
支持マトリックスのさらに有利で特に好ましい構成が、図面に関連して以下に記載される。
【0023】
[詳細な説明]
図1は、内燃機関4を備えた自動車21を概略的に示す。内燃機関4は4つの燃焼室3における燃焼動作を制御するエンジン管理システム25を有する。4つの燃焼室3は、燃焼室3の個々の部分的な体積からなる燃焼室体積5を有する。燃料−空気混合物を燃焼室3において燃焼させ、この燃焼の間に生成される排気ガスが次いで排気システムを通過する。この工程において、排気ガスを清浄にし、次に環境へ排出する。内燃機関4の下流に接続された排気システム20は、排気管26を有し、その中に、流れの方向(図示せず)で見て、予備の触媒コンバータ24、この発明に従った支持体1、主要触媒コンバータ23および消音器22が配される。予備の触媒コンバータ24は、たとえば電気によって加熱できるように設計され、結果として、排気ガス中の汚染物質の触媒転換が、内燃機関4のコールドスタート後、ごく短時間でも可能となる。排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材2(図示せず)を有する支持体1が下流に配置される。支持体1はこの場合、内燃機関4の燃焼室体積5の0.5%から75%の吸着体体積6(図示せず)を有する。支持体1は、内燃機関4または排気システム20のある動作状態の間、窒素酸化物を吸着する。好適な動作状態の間、窒素酸化物は支持体1から脱離され、還元されて、下流の主要触媒コンバータ23において窒素を生成する。爆発燃焼の結果として生じる排気ガス流れにおける圧力の変動を消音器22において減じ、その結果、自動車からの騒音公害を減じる。
【0024】
図2には、吸着体体積6を備えた支持体1の一実施例の概略的な斜視図が示される。支持体1は、流れ17の方向に軸方向27に連続して配置された第1の区域16および第2の区域18を有する。第1の区域16は窒素酸化物を吸着するための吸着体材2(図示せず)を有し、第2の区域18は窒素酸化物の還元のための触媒活性塗膜15(図示せず)を備えるよう設計される。排気ガスは、支持体1の中を、軸27と実質的に平行に走る多くの通路8を通って流れる。支持体1はこの場合、たとえば排気システム20において支持体1を固定するために用いられるチューブ状のジャケット19を備えるよう設計される。
【0025】
図3は、チューブ状のジャケット19を備えた、この発明に従った支持体のさらなる実施例の断面を概略的に示す。支持体1はこの場合、金属薄板層9を有し、このうち少なくともいくつかは、排気ガスがその中を通って流れ得るように構成される。このために、金属薄板層9は波形の金属薄板11および滑らかな金属薄板10を有し、これらにより、排気ガスがそこを通って流れ得る通路8の範囲が定められる。支持体1の断面7の全体にわたる通路8の平均数は、この場合、たとえば800cpsi(平方インチ当りのセル数)である。
【0026】
図4には、第1の区域16における排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材2の詳細図が概略的に示される。支持体1は、この場合、0.012mmから0.08mmの厚さ12を有する滑らかな金属薄板10、および波形の金属薄板11によって形成される。このように範囲を定められた通路8は吸着体材2で塗膜され、吸着体材2はゼオライト構造13および酸化カリウム成分14を有する。これにより、窒素酸化物に対する特に高い蓄積容量が確実となる。
【0027】
図5には、第2の区域16における支持体1の通路8の詳細図が概略的に示される。支持体1の滑らかな金属薄板10および波形の金属薄板11は、既に脱離された窒素酸化物を還元するための触媒活性塗膜15を有する。
【0028】
図6には、この場合特にディーゼルエンジンとして設計される内燃機関4の排気システム20の設計が概略的に示される。排気システム20は、内燃機関4の少なくとも1つの燃焼室3(図示せず)を環境に接続する排気管26を含み、その中に、内燃機関4の排気ガス中に含まれる汚染物質を転換するための構成部品1、23、28、32が配置される
。排気システム20は、支持体1を、排気ガスの流れ17の方向で見て内燃機関4のすぐ下流に接続することにより特徴付けられる。この場合、支持体1は、少なくとも1つの燃焼室から80cm未満の距離31に配置され、特に、排気マニホールド30の中にも、好ましくはターボチャージャ28の上流にも配置される。一例として、酸化触媒コンバータ23およびフィルタ32が、支持体1の下流に付加的に接続されてもよい。
【0029】
排気システム20を動作させる方法には、窒素酸化物を吸着するための吸着体材2(図示せず)を有する支持体1の、5秒未満の時間内での不連続な再生成が伴う。特に、エンジン管理システム29が、内燃機関4における燃焼動作を制御するために設けられ、このシステムは、エンジン管理システム29によって燃料−空気混合物を変えることにより再生成を行ない、特に、生成される排気ガス中の一酸化炭素のレベルを増す。再生成は、好ましくは単一の燃焼室再生成として行なわれ、各燃焼室に交互に燃料分の多い混合物を供給する。
【0030】
したがって、この発明は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室で生成される排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材を有する支持体、およびこの種類の支持体を有する排気システムを有する内燃機関を動作させるための方法を記載する。内燃機関のすべての燃焼室は全体で全燃焼室体積を有し、支持体は吸着体体積を有し、吸着体体積は燃焼室体積の75%未満、特に45%未満、好ましくは5%未満ともなるように設計される。この種類の支持体は、第1に排気システムの良好なコールドスタート性能を確実にし、第2に、特に排気システムを動作させるための提案された方法を用いるとき、窒素酸化物の排出を防ぐ。
【0031】
本実施の形態の支持体は、内燃機関(4)の少なくとも1つの燃焼室(3)において生成される、排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材(2)を有する支持体(1)であって、すべての燃焼室(3)は全体で燃焼室体積(5)を有し、支持体(1)は吸着体体積(6)を有し、吸着体体積(6)は、燃焼室体積(5)の75%未満、特に45%未満、好ましくはさらに5%未満となるよう設計され、支持体(1)は窒素酸化物を還元するための触媒活性塗膜(15)を有し、吸着体材(2)は第1の区域(16)に配置され、支持体(1)は、排気ガスの流れ(17)の方向で見て下流に、触媒活性塗膜(15)を備えた第2の区域(18)を有する。
【0032】
また、支持体は、断面(7)の全体にわたって配され、排気ガスがそこを通って流れ得る多くの通路(8)を有し、断面(7)を通じての平均通路密度が400cpsiから1200cpsiであってもよい。
【0033】
また、支持体(1)は、複数の金属薄板層(9)を有し、そのうちの少なくともいくつかは、排気ガスがそこを通って流れ得る通路(8)を形成するような方法で構成されてもよい。
【0034】
また、支持体においては、金属薄板層(9)は、0.012mmから0.08mmの厚さ(12)を有する金属薄板(10,11)を用いて設計されてもよい。
【0035】
また、吸着体材(2)はゼオライト構造(3)および/または酸化カリウム成分(14)を有していてもよい。
【0036】
本実施の形態の内燃機関(4)の排気システム(20)は、内燃機関(4)の少なくとも1つの燃焼室(3)を大気に接続する排気管(26)を含み、その中に、内燃機関(4)からの排気ガス中に含まれる汚染物質を転換するための構成部品(1,22,23,24,28)が配置され、上記の支持体(1)が排気ガスの流れ(17)の方向で見て、内燃機関(4)のすぐ下流に配置される。
【0037】
また、排気システム(20)においては、支持体(1)は、少なくとも1つの燃焼室から80cm未満の距離(31)に配置され、特に、排気マニホールド(30)の中にも、好ましくはターボチャージャ(28)の上流にも配置される。
【0038】
上記の排気システム(20)を動作させる方法は、窒素酸化物を吸着するための吸着体材(2)を有する支持体(1)の不連続な再生成が、5秒未満の時間内に行なわれる。
【0039】
排気システムを動作させる方法は、エンジン管理システム(29)が、内燃機関(4)における燃焼動作を制御するために設けられ、エンジン管理システムにおいて再生成はエンジン管理システム(29)を用いて燃料混合物を変えることにより達成され、これは特に、生成される排気ガス中の一酸化炭素のレベルを増加させることを伴ってもよい。
【0040】
また、再生成が個々の燃焼室(3)において別個の燃料混合物の変更により行なわれ、複数の燃焼室(3)は交互に、生成される排気ガス中に増加したレベルの一酸化炭素を生成してもよい。
【0041】
また、増加したレベルの一酸化炭素を生成する燃料混合物は、複数の燃焼室(3)のうち各場合1つの燃焼室(3)において交互に燃焼されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 支持体、2 吸着体材、3 燃焼室、4 内燃機関、5 燃焼室体積、6 吸着体体積、7 断面、8 通路、9 金属薄板層、10 滑らかな薄板、11 波形の薄板、12 厚さ、13 ゼオライト構造、14 酸化カリウム成分、15 触媒活性塗膜、16 第1の区域、17 流れの方向、18 第2の区域、19 チューブ状のジャケット、20 排気システム、21 自動車、22 消音器、23 主要な触媒コンバータ、24 予備の触媒コンバータ、25 エンジン管理システム、26 排気管、27 軸、28 ターボチャージャ、29 エンジン管理システム、30 排気マニホールド、31 距離、32 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(4)の排気システム(20)であって、内燃機関(4)の少なくとも1つの燃焼室(3)を大気に接続する排気管(26)を含み、その中に、内燃機関(4)からの排気ガス中に含まれる汚染物質を転換するための構成部品(1,22,23,24,28)が配置され、
支持体(1)が排気ガスの流れ(17)の方向で見て、内燃機関(4)の下流に配置され、
支持体(1)は、ターボチャージャ(28)の上流に配置され、かつ、
支持体(1)は、内燃機関(4)の少なくとも1つの燃焼室(3)において生成される、排気ガス中の窒素酸化物を吸着するための吸着体材(2)を有し、すべての燃焼室(3)は全体でそれぞれの燃焼室の部分体積からなる燃焼室体積(5)を有し、支持体(1)は吸着体材(2)と支持体(1)に存在するいかなる空洞または通路とを含む吸着体体積(6)を有し、
吸着体体積(6)は、燃焼室体積(5)の75%未満となるよう設計され、支持体(1)は窒素酸化物を還元するための触媒活性塗膜(15)を有し、吸着体材(2)は、酸化カリウム成分(14)を有しており、かつ、第1の区域(16)に配置され、支持体(1)は、排気ガスの流れ(17)の方向で見て下流に、触媒活性塗膜(15)を備えた第2の区域(18)を有する、排気システム(20)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−33039(P2011−33039A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208086(P2010−208086)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【分割の表示】特願2007−290038(P2007−290038)の分割
【原出願日】平成13年10月25日(2001.10.25)
【出願人】(594174493)エミテク・ゲゼルシャフト・フュール・エミシオーンテクノロギー・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (27)
【Fターム(参考)】