説明

排気タービン過給機の軸受台

【課題】起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、信頼性を向上させることができる排気タービン過給機の軸受台を提供すること。
【解決手段】タービン部3を構成するタービンケーシング23の一端部と対向する側の端部に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出し、前記タービンケーシング23に取り付けられた際に、押さえ板27と前記タービンケーシング23との間に挟み込まれる第2のフランジ部22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼル機関や陸上発電機用ディーゼル機関等に搭載される排気タービン過給機の軸受台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舶用ディーゼル機関や陸上発電機用ディーゼル機関等の内燃機関に搭載される排気タービン過給機の軸受台としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開平4−246239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された排気タービン過給機の軸受台は、その一端部(タービンホイール側の端部)に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出する(延びる)環状のフランジ部を有するものであり、このフランジ部は、複数本のボルト介してタービンケーシングの一端部(軸受台側の端部)に直接取り付けられていた。
しかしながら、このフランジ部の根元側(内周側)は水室内に供給される水によって冷却され、フランジ部の先端側(外周側)はタービンケーシング内を通過する排気ガス(燃焼ガス)によって加熱されることとなる。そのため、フランジ部の根元側と先端側とで温度差が発生するとともに周方向に熱伸び差が発生し、ボルトが貫通するボルト穴に、周方向および半径方向の熱伸び差による熱歪みが集中して、(降伏点を超える)熱応力が発生する。そして、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関では、熱応力の繰り返しによってボルト穴の周りに疲労亀裂が発生するおそれがある。
また、このような現象は、フランジ部とタービンケーシングとの間に位置して、ノズル・ガイド・ベーンを固定するためのノズル固定用穴を有する別のフランジ部でも発生するおそれがある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、信頼性を向上させることができる排気タービン過給機の軸受台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る排気タービン過給機の軸受台は、タービン部を構成するタービンケーシングの一端部と対向する側の端部に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出し、前記タービンケーシングに取り付けられた際に、押さえ板と前記タービンケーシングとの間に挟み込まれる第1のフランジ部が形成されている。
【0006】
本発明に係る排気タービン過給機の軸受台によれば、押さえ板とタービンケーシングとの間に、第1のフランジ部の先端部が挟み込まれることによって、タービンケーシングに結合される(一体化される)こととなる。
これにより、第1のフランジ部に設けられていたボルト穴を不要とすることができ(第1のフランジ部からボルト穴をなくすことができ)、周方向および半径方向の熱伸び差による熱歪みの集中をなくすことができるので、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、第1のフランジ部における疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、その信頼性を向上させることができる。
【0007】
上記排気タービン過給機の軸受台において、前記タービンケーシングに取り付けられた際に、前記タービンケーシングの一端部内周面に形成された段部を収容する第1の段部が前記第1のフランジ部の先端部に形成されているとともに、前記第1の段部にシール部材が配置されているとさらに好適である。
【0008】
このような排気タービン過給機の軸受台によれば、第1のフランジ部の第1の段部と、タービンケーシングの一端部内周面に形成された段部との間にシール部材が挟み込まれ、第1のフランジ部とタービンケーシングとの隙間がなくなる(シール部材で埋めつくされる)こととなるので、タービンケーシング内を通過する排気ガス(燃焼ガス)の漏洩を防止することができる。
【0009】
上記排気タービン過給機の軸受台において、タービン部を構成するタービンケーシングの一端部と対向する側の端部に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出し、ノズル・ガイド・ベーンを固定するためのノズル固定用穴を有する第2のフランジ部が形成されており、前記ノズル固定用穴が、半径方向外側に向かって突出する平面視略半円形状の凸部の中央部に形成されているとさらに好適である。
【0010】
このような排気タービン過給機の軸受台によれば、第2のフランジ部の周方向および半径方向の熱伸び差を小さくする(緩和させる)ことができ、ノズル固定用穴に集中する熱歪みを小さくする(緩和させる)ことができるので、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、第2のフランジ部における疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、その信頼性をさらに向上させることができる。
【0011】
本発明に係る排気タービン過給機は、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、疲労亀裂が発生することのない信頼性の高い排気タービン過給機の軸受台を具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る排気タービン過給機の軸受台によれば、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の縦断面図、図2は図1の要部拡大図である。
本実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台(以下、「軸受台」という。)6は、例えば、図1に示すような排気タービン過給機1に適用され得るものである。
図1に示すように、排気タービン過給機1は、図示しない内燃機関(例えば、ディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等)から導かれた排気ガス(燃焼ガス)2によって駆動されるタービン部3と、このタービン部3により駆動されて前記内燃機関に外気4を圧送するコンプレッサ部5と、これらタービン部3とコンプレッサ部5との間に設けられてこれらを支持する軸受台6とを主たる要素として構成されたものである。
【0014】
軸受台6には、一端をタービン部3側に突出させ、他端をコンプレッサ部5側に突出させた回転軸7が挿通されている。この回転軸7は、軸受台6に設けられた軸受8によって、軸線回りに回転可能に支持されている。
一方、軸受台6の下端部には、回転軸7の軸線方向において軸受台6を一点で支持する(回転軸7の軸線方向と直交する方向においては、二点以上で支持する場合もある)脚部6aが取り付けられており、この脚部6aは、床面に設置された図示しない基台に固定されるようになっている。すなわち、排気タービン過給機1の重量は、この脚部6aを介して基台に伝達されるようになっている。
なお、図1中の符号Pはパンチング・プレートである。このパンチング・プレートPは、その一端部がタービン部3の下端部に固定されているとともに、その他端部が軸受台6の脚部6aと同様、基台に固定されている。そして、このパンチング・プレートPは、脚部6aのように排気タービン過給機1の重量を支持することを主たる目的とするものではなく、排気タービン過給機1が基台に対して動揺(振動)しないようにすることを主たる目的とするものである。
図1中の符号9は、軸受台6を水冷却するための水室である。
【0015】
タービン部3は、前記内燃機関の排気系統に接続されて排気ガス2の少なくとも一部が供給される排気ガス通路10と、この排気ガス通路10内に供給された排気ガス2の流れを受けて回転駆動されるタービンホイール11とを有している。
タービンホイール11は、回転軸7の一端部に取り付けられた、略円盤状のハブ11aと、このハブ11aの外表面から半径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に沿って環状に設けられた複数枚の羽根11bとを備えている。
【0016】
排気ガス通路10は、前記内燃機関の排気系統と接続されて羽根11bに排気ガス2を導く供給路10aと、タービン11の半径方向外側に向かって設けられて、タービン11を通過した排気ガス2を系外、もしくは図示しない排気浄化装置等に導く送出路10bとを有している。また、送出路10bの上流側には複数枚(本実施形態では23枚)のノズル・ガイド・ベーン12が周方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0017】
コンプレッサ部5は、回転駆動されることで外気4を径方向外側に送出するコンプレッサ羽根車14と、このコンプレッサ羽根車14の周囲を囲んでコンプレッサ羽根車14が送出した外気4を圧縮する渦巻き室15とを有している。
コンプレッサ羽根車14は、回転軸7の他端部に取り付けられた、略円盤状のハブ14aと、このハブ14aの外表面から半径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に沿って環状に設けられた複数枚の羽根14bとを備えている。
コンプレッサ部5の上流側には、前記内燃機関の吸気系統に接続された図示しない消音器(サイレンサ)が配置されており、この消音器を通過した外気4は、流入路16を介してコンプレッサ羽根車14の羽根14bに導かれるようになっている。また、コンプレッサ部5の下流側には、図示しないインタークーラやサージタンク等が設けられており、渦巻き室15を通過した外気4は、これらインタークーラやサージタンク等を通過した後、前記内燃機関に供給されるようになっている。また、渦巻き室15の上流側にはディフューザ17が配置されている。
【0018】
さて、本実施形態に係る軸受台6の一端部(タービン部3側の端部)には、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出する(延びる)環状の第1のフランジ部(第2のフランジ部)21および第2のフランジ部(第1のフランジ部)22が設けられている。これら第1のフランジ部21および第2のフランジ部22は、その外周面が、タービン部3を構成するタービンケーシング23の一端部(軸受台6側の端部)内周面と接するように(すなわち、これら第1のフランジ部21および第2のフランジ部22の外周面が、タービン部3を構成するタービンケーシング23の一端部内周面と印籠合わせされるように)形成されている。
また、第1のフランジ部21のノズル・ガイド・ベーン12に対応した位置には、ノズル・ガイド・ベーン12を固定するためのノズル固定用穴21aがそれぞれ設けられている。
【0019】
図2に示すように、第2のフランジ部22の先端部には、周方向に沿うとともに板厚方向(図2において左右方向)に陥没する(凹む)、断面視L字形状を呈する第1の段部24および第2の段部25が設けられている。第1の段部24は、タービンケーシング23の一端部内周面に形成された段部23aを収容するように(取り囲むように)形成されている。また、第2の段部25は、タービンケーシング23の一端部に複数本(本実施形態では12本)のボルト26を介して取り付けられた、環状の押さえ板27の内周側の一角部27aを収容するように(取り囲むように)形成されている。すなわち、第1の段部24および第2の段部25は、押さえ板27がタービンケーシング23の一端部にボルト26を介して取り付けられた際に、押さえ板27の内周側の一角部27aと、タービンケーシング23の一端部内周面に形成された段部23aとの間に、第2のフランジ部22の先端部が挟み込まれるように形成されている。
【0020】
本実施形態に係る軸受台6によれば、押さえ板27とタービンケーシング23との間(より詳しくは、押さえ板27の内周側の一角部27aと、タービンケーシング23の一端部内周面に形成された段部23aとの間)に、第2のフランジ部22の先端部が挟み込まれることによって軸受台6とタービンケーシング23とが結合される(一体化される)ようになっている。
これにより、第2のフランジ部22に設けられていたボルト穴を不要とすることができ(第2のフランジ部22からボルト穴をなくすことができ)、周方向および半径方向の熱伸び差による熱歪みの集中をなくすことができるので、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、第2のフランジ部22における疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、軸受台6の信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る軸受台の第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。図3は本実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の要部拡大図であって、図2と同様の図である。
図3に示すように、本実施形態に係る軸受台31は、第2のフランジ部22の第1の段部24に、平面視環状を呈する板状のシール部材32を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0022】
本実施形態に係る軸受台31によれば、第2のフランジ部22とタービンケーシング23との間(より詳しくは、第2のフランジ部22の第1の段部24と、タービンケーシング23の一端部内周面に形成された段部23aとの間)にシール部材32が挟み込まれ、第2のフランジ部22とタービンケーシング23との隙間がなくなる(シール部材32で埋めつくされる)こととなるので、タービンケーシング23内を通過する排気ガス(燃焼ガス)の漏洩を防止することができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0023】
本発明に係る軸受台の第3実施形態について、図4を参照しながら説明する。図4は本実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の要部拡大図であって、第1のフランジ部の一部を拡大した図である。
本実施形態に係る軸受台41は、第1のフランジ部21の代わりに、第1のフランジ42を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0024】
図4に示すように、第1のフランジ42の外周側(半径方向外側)の端部には、半径方向外側に向かって突出する(延びる)平面視略半円形状の凸部43が、周方向に沿って複数個(本実施形態では6個)設けられている。また、各凸部43の中央部には、ノズル・ガイド・ベーン12(図1参照)を固定するためのノズル固定用穴21aが設けられている。
【0025】
本実施形態に係る軸受台41によれば、第1のフランジ部42の周方向および半径方向の熱伸び差を小さくする(緩和させる)ことができ、ノズル固定用穴21aに集中する熱歪みを小さくする(緩和させる)ことができるので、起動停止の多い運用、あるいは負荷変動の大きい運用が行われる内燃機関に搭載された場合でも、第1のフランジ部42における疲労亀裂の発生を防止することができるとともに、軸受台41の信頼性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の要部拡大図であって、図2と同様の図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る排気タービン過給機の軸受台を具備した排気タービン過給機の要部拡大図であって、第1のフランジ部の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0027】
1 排気タービン過給機
3 タービン部
6 軸受台
12 ノズル・ガイド・ベーン
21 第1のフランジ部(第2のフランジ部)
21a ノズル固定用穴
22 第2のフランジ部(第1のフランジ部)
23 タービンケーシング
23a 段部
24 第1の段部
27 押さえ板
31 軸受台
32 シール部材
41 軸受台
42 第1のフランジ部(第2のフランジ部)
43 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン部を構成するタービンケーシングの一端部と対向する側の端部に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出し、前記タービンケーシングに取り付けられた際に、押さえ板と前記タービンケーシングとの間に挟み込まれる第1のフランジ部が形成されていることを特徴とする排気タービン過給機の軸受台。
【請求項2】
前記タービンケーシングに取り付けられた際に、前記タービンケーシングの一端部内周面に形成された段部を収容する第1の段部が前記第1のフランジ部の先端部に形成されているとともに、前記第1の段部にシール部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の排気タービン過給機の軸受台。
【請求項3】
タービン部を構成するタービンケーシングの一端部と対向する側の端部に、周方向に沿うとともに半径方向外側に向かって突出し、ノズル・ガイド・ベーンを固定するためのノズル固定用穴を有する第2のフランジ部が形成されており、
前記ノズル固定用穴が、半径方向外側に向かって突出する平面視略半円形状の凸部の中央部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の排気タービン過給機の軸受台。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の排気タービン過給機の軸受台を備えてなることを特徴とする排気タービン過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257258(P2009−257258A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109269(P2008−109269)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】