排気浄化装置用電力供給装置
【課題】浄化量の向上を図った排気浄化装置用電力供給装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路11に配置した放電電極21からコロナ放電させることで排気中のPM(微粒子)を酸化させて浄化する排気浄化装置10に適用され、放電電極21へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給装置50(電力供給手段)を備え、電力供給装置50により瞬時的に電圧印加する時間を、アーク放電所要時間(所定時間)よりも短くする。これによれば、アーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進でき、ひいてはPM浄化量向上を図ることができる。
【解決手段】内燃機関の排気通路11に配置した放電電極21からコロナ放電させることで排気中のPM(微粒子)を酸化させて浄化する排気浄化装置10に適用され、放電電極21へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給装置50(電力供給手段)を備え、電力供給装置50により瞬時的に電圧印加する時間を、アーク放電所要時間(所定時間)よりも短くする。これによれば、アーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進でき、ひいてはPM浄化量向上を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気中に含まれる微粒子を浄化する排気浄化装置に適用された、排気浄化装置用電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中のPM(particulate matters(微粒子))を酸化させて浄化、或いはPMを帯電させて捕集浄化する排気浄化装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−243419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置を用いてPMを浄化するにあたり、放電電極に印加する電圧を高くするほどPMの酸化又は帯電を促進でき、PM浄化量を増大できる。しかしながら、PM浄化量増大を図るべく電圧を上昇させていくと、放電電極に対向する接地電極(対向電極)と放電電極との間でアーク放電が発生する可能性が高くなる。そして、このようなアーク放電が発生すると、放電電極へ投入した電気エネルギの殆どがアークへ流入してコロナ放電が消滅してしまう。すると、放電電極近傍を通過するPMの殆どが酸化又は帯電されなくなり、PM浄化量が著しく低下するといった問題が生じる。
【0005】
また、排気中に含まれるO2やN2等の排気分子にコロナ放電された電子が衝突すると、排気分子の分子振動が促進されるが、この分子振動が活発化するほど、放電電極からコロナ放電された電子は、分子振動する排気分子に衝突する確率が高くなる。すると、その背反としてコロナ放電された電子がPMに衝突する確率は低くなるので、PMが十分に酸化又は帯電されなくなり、PM浄化量が低下するといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、浄化量の向上を図った排気浄化装置用電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置に適用され、前記放電電極へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、前記コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給手段を備え、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する時間を、所定時間よりも短くすることを特徴とする。
【0009】
これによれば、コロナ放電に用いる電力を放電電極へ供給するにあたり、常時継続して電圧印加するのではなく、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返して電力供給する。そのため、放電電極に対向する対向電極(例えば接地電極)及び放電電極の一方で電気アークが生じてからその電気アークが他方へ到達する前に、印加電圧が一時的に遮断されて、アーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅する可能性が高くなる。このように、上記発明によればアーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を図ることができる。
【0010】
また、上記発明に反し、印加電圧を一時的に遮断させることなく放電電極への電圧印加を継続して行うと、先述した排気分子の分子振動が促進される。これに対し上記発明では、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返して電力供給するので、排気分子の分子振動を抑制でき、コロナ放電された電子が微粒子に衝突する確率を高くできる。よって、微粒子の酸化量又は帯電量を向上でき、ひいては微粒子の浄化量向上を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明では、前記放電電極に対向する対向電極及び前記放電電極の一方で電気アークが生じてから、前記対向電極及び前記放電電極の他方へ前記電気アークが到達するまでに要する時間をアーク放電所要時間とし、前記アーク放電所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする。
【0012】
これによれば、対向電極(例えば接地電極)及び放電電極の一方で電気アークが生じてからその電気アークが他方へ到達する前に印加電圧を遮断させることの確実性を向上できる。よって、アーク放電の発生抑制を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を促進できる。
【0013】
請求項3記載の発明では、瞬時的な電圧印加を開始してから、コロナ放電された電子のエネルギを受けて排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する時間を分子振動所要時間とし、前記分子振動所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、排気分子が所定値以上の強度で分子振動することを回避させることの確実性を向上できる。よって、微粒子の酸化量又は帯電量向上を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を促進できる。
【0015】
請求項4記載の発明では、前記所定時間を、100ナノ秒以上かつ500ナノ秒以下に設定したことを特徴とする。
【0016】
上記発明に反して前記所定時間を100ナノ秒未満に設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制を向上できる背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。また、上記発明に反して前記所定時間を500ナノ秒より大きく設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制が不十分となることが懸念される。これらの懸念を鑑みて「100ナノ秒≦所定時間≦500ナノ秒」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0017】
請求項5記載の発明では、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する周期を、500Hz以上かつ100kHz以下に設定したことを特徴とする。
【0018】
上記発明に反して前記周期を500Hz未満に設定すると、電圧印加されていないインターバル時間が長すぎてしまい、アーク放電抑制及び分子振動抑制が促進される背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。
【0019】
また、上記発明に反して前記周期を100kHzより大きく設定すると、以下に説明するように前記インターバル時間が短すぎることとなる。すなわち、印加電圧を一時的に遮断することでアーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅しようとするものの、前記インターバル時間が短すぎると、電気アークが完全に消滅する前に次の電圧印加が為されてしまい、対向電極及び放電電極の一方で生じた電気アークが他方へ到達してアーク放電の状態に陥ることが懸念される。また、分子振動を十分に抑制できなくなることが懸念される。
【0020】
これらの懸念を鑑みて「500Hz≦瞬時的に電圧印加する周期≦100kHz」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0021】
請求項6記載の発明では、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加した時の電圧ピーク値の絶対値を、5kV以上かつ15kV以下に設定したことを特徴とする。
【0022】
上記発明に反して前記電圧ピーク値の絶対値を5kV未満に設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制を向上できる背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。また、上記発明に反して前記電圧ピーク値の絶対値を15kVより大きく設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制が不十分となることが懸念される。これらの懸念を鑑みて「5kV≦電圧ピーク値の絶対値≦15kV」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0023】
請求項7記載の発明では、前記放電電極は、コロナ放電により電子が放出される突起状の放出部を複数備えた形状であることを特徴とする。
【0024】
これによれば、電極へ供給した電荷が排気通路へ放出され易くなるので、印加電圧を低く抑えつつもコロナ放電を促進して微粒子の酸化量又は帯電量を向上できる。よって、アーク放電抑制及び分子振動抑制を促進させつつコロナ放電による微粒子浄化を促進できる。
【0025】
請求項8記載の発明では、前記排気通路を形成する排気管の内壁面に、前記放電電極に対向する対向電極が配置されており、前記排気通路のうち前記放電電極が配置されている部分の通路断面積は、前記排気通路の最小通路断面積以上となっていることを特徴とする。
【0026】
ここで、放電電極と対向電極とのギャップを大きくするほど両電極間での抵抗(インピーダンス)が大きくなり、放電電極に供給された電荷が放出されにくくなり、コロナ放電が不十分となることが懸念される。そこで、排気管の通路断面積を小さくすれば、前記ギャップが小さくなり上記懸念が解消されるものの、排気管のうち対向電極が配置された部分の通路断面積だけを小さくすると、この部分で排気の流れが絞られることとなり、排気の流通抵抗が大きくなるとの不具合が生じる。
【0027】
この点を鑑みた上記発明では、排気通路のうち対向電極が配置されている部分の通路断面積を、排気通路の最小通路断面積以上にするので、排気管のうち対向電極が配置された部分で排気の流れが絞られることを回避できる。なお、対向電極が配置されている部分の通路断面積を最小通路断面積にすれば、排気の流通抵抗が増大することを抑制しつつ、前記ギャップを小さくすることによるコロナ放電の促進を図ることができ、好適である。
【0028】
請求項9記載の発明では、排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、前記ケースは、前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、を備えて構成されており、前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍に配置するとともに、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする(図11参照)。
【0029】
ケースの保持部は、排気が触媒を通過する際の圧力損失低減を図るべく、排気管よりも通路断面積が大きく形成されているのが一般的である。そのため、保持部の下流端と排気管とを接続する出口テーパ部をケースは有することとなる。上記発明は、この出口テーパ部を利用してコロナ放電による浄化量の増大を図ったものである。
【0030】
すなわち、出口テーパ部に位置する排気は、出口テーパ部の内壁面にガイドされて、排気通路の中央へ向かう向きの流れとなる(図11中の矢印Y参照)。そのため、排気通路の通路断面中央部におけるPM濃度は通路断面外周部におけるPM濃度よりも高くなる。よって、放電電極を、出口テーパ部の下流側近傍かつ排気通路の通路断面中央部に配置した上記発明によれば、PM濃度の高い部分に放電電極が配置されることとなるので、コロナ放電による浄化量の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態において、(a)は排気浄化装置のエンジン搭載位置を示す図、(b)は排気浄化装置の構成を示す図、(c)は(b)のA矢視図。
【図2】図1の排気浄化装置によりPMが浄化されるメカニズムを説明する図。
【図3】図1の放電プラグへ電力を供給する電力供給装置の構成を示す図。
【図4】図3の電力供給装置により放電プラグへ印加する電圧の時間変化を示す図。
【図5】第1実施形態に反し、継続して電圧印加した場合の試験結果を示す図。
【図6】第1実施形態による効果の1つを説明する図。
【図7】第2実施形態にかかる排気浄化装置の構成を示す図。
【図8】第3実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【図9】第3実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【図10】第3実施形態にかかる放出部の形状例を示す図。
【図11】第4実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明をディーゼルエンジン(内燃機関)の排気浄化装置に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、エンジン41に対する排気浄化装置10の搭載位置を示し、図1(b)は排気浄化装置10の全体構成を示し、図1(c)は図1(b)のA矢視図である。
【0034】
図中、排気浄化装置10は、電子を放電させる放出部21bを有する放電プラグ20と、放出部21bと対向するよう配置された接地電極30(対向電極)と、を備えて構成されている。接地電極30は、エンジン41の排気管42に接続される筒状ハウジングHの内壁面に沿って配置された筒形状である。ハウジングHは排気管42より大径の円筒管状で、その内部は円形断面の排気通路11となり、両端小径部にて排気管42の直線部に接続されるようになっている。
【0035】
図1(b)において、放電プラグ20は、上半部がハウジングHの筒壁から外部(図の上方)に突出し、下半部がハウジングH内の排気通路11に位置している。放電プラグ20は、電力供給されて排気通路11内に電子を放出するようコロナ放電する放電電極21と、放電電極21を保持する碍子部22とからなる。放電電極21は、外周が碍子部22に保持される棒状の導電部21aと、その先端に設けられる放出部21bとからなる。導電部21aのうちハウジングH外に位置し碍子部22から突出する基端には、電力供給装置50(電力供給手段)から直流高電圧の電力が供給される。
【0036】
導電部21aのうち排気通路11内に露出する部分はL字状に屈曲して、排気通路11の軸線(排気流れ方向)に沿って延び、先端に接続された放出部21bへ高電圧の電流を導く。
【0037】
図1(c)に示すように、放出部21bは、板状であるとともに、その板外周面に放射状に突出する多数の突起を有する形状である。放出部21bに供給された電子は、突起の先端から排気通路11へ放出されてコロナ放電することとなる。このように、放出部21bに多数の突起を設けることで放電率を高めるとともに、排気通路11内に均等にコロナ放電を発生させて、浄化性能を高めることができる。
【0038】
次に、排気中に含まれるPM(particulate matters(微粒子))が排気浄化装置10により浄化されるメカニズムについて、図2を用いて説明する。
【0039】
図2(a)に示すように、エンジン41で発生し排気管42へ放出されるPMは、通常、0.01μmから数μm程度の粒径であり、通常のパティキュレートフィルタ(DPF)では捕捉できないナノ微粒子(ナノPM)を含んでいる。排気浄化装置10は主に、このナノPMを酸化して浄化するよう機能するものである。
【0040】
図2(b)に示すように、放電プラグ20の導電部21aに電力供給装置50から負の直流高電圧を印加すると、放出部21b先端の突起近傍においてコロナ放電が発生する(図中(1)参照)。この時、コロナ放電により放射される電子は高いエネルギを有しており、当該電子が排気中の酸素分子(O2)に衝突すると、当該酸素分子は解離して酸素イオン(Oラジカル:O2−)が生成されることとなる(図中(2)参照)。当該Oラジカルは不安定な状態となっており、このOラジカルがナノPMの成分である炭素原子(C)に衝突すると、二酸化炭素(CO2)が生成されることとなる(図中(3)(4)参照)。
【0041】
要するに、図2(c)に示すように、コロナ放電により放射された電子のエネルギ(活性化エネルギ)により、炭素と酸素分子が酸化反応して二酸化炭素に変化する。以上により、コロナ放電させることでナノPMを酸化して気体分子である二酸化炭素に直接変化させるので、コロナ放電の発生エネルギを効果的に利用してナノPMを浄化することができる。
【0042】
次に、図3を用いて電力供給装置50の構成を説明する。
【0043】
電力供給装置50は、車両に搭載されたバッテリ51を電源としており、当該バッテリ51の電圧(12V)を昇圧して放電プラグ20へ供給する。また、このように昇圧した電圧を放電プラグ20へ常時継続して印加させるのではなく、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すよう、パルス状の電圧を印加させるよう制御している。
【0044】
図3に示す回路は、このような昇圧及びパルス制御を行う回路の一例であり、電力供給装置50は、バッテリ51、コンデンサ52、トランス53、サイリスタ54(スイッチ手段)及びマイクロコンピュータ(マイコン55)を備えて構成されている。
【0045】
サイリスタ54がターンオフして通電を遮断した状態では、バッテリ51から供給される電力がコンデンサ52に蓄電される。そして、マイコン55から出力される指令信号によりサイリスタ54がターンオンすると、コンデンサ52に蓄電された電力がトランス53の一次コイルに流れ、これに伴いトランス53の二次コイルに高電圧が発生し、二次コイルに接続されている放電プラグ20へ高電圧の電力が供給されることとなる。
【0046】
要するに、放電プラグ20へ瞬時的に電圧(パルス電圧)を印加するにあたり、マイコン55によりターンオン指令を出力したタイミングで電圧印加が開始される。よって、瞬時的に電圧印加する周期はマイコン55により制御される。図3の例では、マイコン55からサイリスタ54へ出力される信号は、所定周期でターンオンを指令するクロックパルス信号であり、500Hz〜100kHzの周期でターンオンを指令する。
【0047】
一方、一次コイルへの放電によりコンデンサ52の電荷が所定量以下になると、サイリスタ54はターンオフして一次コイルへの通電が遮断される。これにより、放電プラグ20への電力供給が停止される。したがって、瞬時的な電圧印加を終了させるタイミング、及び瞬時的に電圧を印加する時間は、コンデンサ52の容量等の回路構成部品により決定される。図3の例では、瞬時的に電圧印加する時間が100ナノ秒〜500ナノ秒となるようコンデンサ52の容量等を設定している。
【0048】
また、放電プラグ20へ供給される電力の電圧は、バッテリ51及びトランス53の仕様により決定される。バッテリ51の残存容量が100%の時に、放電プラグ20へ印加される電圧が−5kV〜−15kVとなるようトランス53は選定されている。
【0049】
以上により、放電プラグ20の放出部21bに印加される電圧は、図4に示す如く、500Hz〜100kHzの周期で−5kV〜−15kVの電圧となり、100ナノ秒〜500ナノ秒といった極短時間、瞬時的に印加される。
【0050】
ところで、高い電圧でコロナ放電させるほど、生成されるOラジカルの量が増大してPMの浄化量を増大できる。また、放出部21bと接地電極30とのギャップG(図1(b)参照)が小さいと、放電電極21から電子が放出されやすくなるので、生成されるOラジカルの量が増大してPMの浄化量を増大できる。しかしながら、印加電圧を高くしてギャップGを小さくするほど、放電電極21の放出部21bと接地電極30との間でアーク放電が発生するおそれが高くなる。そして、このようなアーク放電が発生すると、放電電極21へ投入した電気エネルギの全てがアークへ流入してコロナ放電が消滅してしまう。すると、ナノPMの酸化が不十分となり、PM浄化量が著しく低下するといった問題が生じる。
【0051】
そして、放出部21bへパルス状に直流電圧を印加する本実施形態に反し、一時的に遮断させることなく常時継続して放出部21bへ直流電圧を印加すると、上記問題が顕著になることが、本発明者らの行った試験により明らかとなった。
【0052】
図5(a)は、継続して電圧印加した場合の試験結果であり、図中の横軸は印加電圧の大きさを示し、縦軸は、排気浄化装置10を通過した後の排気中に含まれるPMの数、つまり浄化できなかったPMの数を示す。また、図中の(1)はギャップG=40mm、(2)は30mm、(3)は20mmにした場合の試験結果を示す。なお、(2)(3)の点線は推定値を示す。
【0053】
図5(a)の試験結果は、高電圧にするほどPM浄化量が増大することを示すとともに、ギャップGを小さくするほど浄化量が増大することを示す。そして、図5(b)は、ギャップG=20mmの場合において、電圧を徐々に高圧にしていった時のPM数変化を示すグラフであり、電圧が−5kVの時にはアーク放電は発生しないが、−6kVまで昇圧するとPM数が大きく変動する(図中の点線部分参照)。このことは、アーク放電が発生した瞬間にコロナ放電が消滅してPMを浄化できなくなったことを意味する。また、−6kV以上昇圧してもPM浄化量を増大できないことが分かった。
【0054】
ちなみに、エンジン回転速度が高いほどアーク放電は生じやすい。また、エンジン負荷(出力トルク)が大きいほどアーク放電は生じやすい。図5は、エンジン回転速度を3000rpm、出力トルクを110N−mとした場合の試験結果である。
【0055】
この試験結果に対し、上記詳述した本実施形態によれば、放出部21bへパルス状に直流電圧を印加するので、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30に到達する前に印加電圧が一時的に遮断されて、アーク放電になりかけた電気アークを途中で消滅させることとなる。よって、アーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進するとともにギャップGを小さくすることができるので、ひいてはPM浄化量の向上を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、500Hz〜100kHzの周期で−5kV〜−15kVの電圧となり、100ナノ秒〜500ナノ秒といった極短時間、放出部21bへ瞬時的に電圧印加する。これらの数値は、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30に到達する前に印加電圧を遮断するよう設定したものであって、試験により得られた数値である。
【0057】
すなわち、電圧印加時間(所定時間)を500ナノ秒より大きく設定すると、電気アークが接地電極30に到達してアーク放電が発生しやすくなる。また、電圧を印加する周期(パルスオン周期)を100kHzより大きく設定すると、電力供給させないインターバル時間Ti(図4参照)が短すぎてしまい、印加電圧を一時的に遮断することでアーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅しようとするものの、電気アークが完全に消滅する前に次の電圧印加が為されるので、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30へ到達してアーク放電の状態に陥ることが懸念される。また、電圧ピーク値Vp(図4参照)を−15kVより低く(過剰昇圧)してもアーク放電が生じやすくなる。
【0058】
一方、電圧印加時間(所定時間)を100ナノ秒より小さく設定したり、電圧印加周期を500Hzより小さく設定したり、電圧ピーク値Vpを−5kVより高く設定すると、コロナ放電によるPMの酸化が不十分となり、PM浄化量が低下する。これらの点を鑑み、上述した各種数値に設定した本実施形態によれば、アーク放電を抑制する度合いと、PM酸化による浄化量増大の度合いとをバランスよくできる。
【0059】
なお、−5kV〜−15kVの電圧を印加する場合においては、放出部21bで電気アークが発生してから接地電極30に到達するまでに要する時間(アーク放電所要時間)は500ナノ秒より長い。
【0060】
なお、本実施形態では、排気通路11のうち放電電極21が配置されている部分の通路断面積は、排気通路11の最小通路断面積以上となっている。つまり、排気通路11のうち放電電極21が配置されている部分により、排気通路11の通路断面積が縮小して絞られないようにしている。
【0061】
さらに、本実施形態の如く放出部21bへパルス状に直流電圧を印加すると、以下に説明する分子振動を抑制でき、分子振動によるPM浄化量の著しい低下を回避できることが分かった。
【0062】
すなわち、本実施形態に反し、常時継続して放出部21bへ直流電圧を印加すると、電圧印加を開始した直後においては、図6(a)に示すように、放出部21bからコロナ放電した電子を、放出部21bから離れた場所(接地電極30の近傍)にある酸素分子にまで到達させて衝突させることができ、Oラジカルを広範囲に生成させることができる。よって、排気通路11を流れるPMがOラジカルと反応せずに通過する量を減少させることができ、ひいてはPMの浄化量を一定以上に保つことができる。
【0063】
しかしながら、放出部21bへの電圧印加時間が長くなると、放出部21bからコロナ放電した電子が排気中の酸素分子及び窒素分子(排気分子)に繰り返し衝突していくと、これらの分子が有する電子が高エネルギ化して激しく振動するようになる(図6(b)参照)。すると、コロナ放電した電子はこれらの振動分子に衝突する確率が高くなり、放出部21bから離れた場所にある酸素分子に電子が衝突する確率が低くなる。その結果、Oラジカルを広範囲に生成させることができなくなり、ひいてはPM浄化量の著しい低下を招く。
【0064】
この問題に対し、本実施形態では放出部21bへパルス状に直流電圧を印加するので、放出部21b近傍の排気分子は、所定値以上の強度で分子振動する前に印加電圧が遮断され、そのまま排気通路11から排出されていく。よって、Oラジカルを広範囲に生成させることができ、ひいてはPM浄化量の著しい低下を回避できる。
【0065】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、コロナ放電によりPMを酸化して浄化する排気浄化装置10に電力供給装置50を適用させているが、図7に示す本実施形態では、コロナ放電によりPMを帯電させて捕集浄化する排気浄化装置100に電力供給装置50を適用させている。なお、本実施形態にかかる排気浄化装置100は、上記第1実施形態にかかる排気浄化装置10に後述する捕集部31を備えた構成である。電力供給装置50等のその他のハード構成は、上記第1実施形態と同じであり、パルス状の電圧を放出部21bに印加する。
【0066】
但し、本実施形態では、第1実施形態に比べて印加電圧の絶対値が低く設定されている。すると、コロナ放電によるエネルギ投入量が少なくなり、PMが酸化されなくなる(或いは僅かしか酸化されなくなる)ものの、以下に説明するようにPMが帯電凝集するので、捕集部31へPMを捕集させることができる。
【0067】
すなわち、コロナ放電が発生して電子が放射されると(図7中の(1)参照)、その一部は電子親和性の高い気体分子(酸素)をマイナスイオン化してOラジカルが発生し((2)参照)、付近のナノPMに付着してこれを負に帯電させる((3)参照)。帯電したナノPMは、クーロン力によって集塵電極を兼ねる接地電極30に引き寄せられ、下流へ向かうガス流から徐々に離脱して、凝集しながら排気通路11の外周側へ移動して捕集部31内に侵入する。((4)参照)。その後、捕集部31の奥へ移動凝集したナノPMが接地電極30に達すると、放電し、凝集保持される((5)参照)。
【0068】
なお、捕集部31は、中空メッシュ状の導電性筒状体より構成されており、接地電極30の内周面に配置されている。捕集部31を構成する中空メッシュ状の導電性筒状体は、通常、1μmから10μm程度の粒径となる粗大粒子の流入を妨げない程度の大きさを有し、かつ内部に凝集微粒子を保持する十分な空間を有することが望ましい。
【0069】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様にしてパルス状の電圧を放出部21bに印加するので、アーク放電の発生を抑制できる。よって、印加電圧の高電圧化を促進するとともにギャップGを小さくすることができるので、ひいてはPM浄化量の向上を図ることができる。また、パルス状の電圧を放出部21bに印加するので、放出部21b近傍の排気分子は、所定値以上の強度で分子振動する前に印加電圧が遮断され、そのまま排気通路11から排出されていく。よって、Oラジカルを広範囲に生成させ、広範囲でPMを帯電させることができるので、PM浄化量の著しい低下を回避できる。
【0070】
(第3実施形態)
ところで、放出部21bから電子を放射してコロナ放電させるには、放出部21bと接地電極30との間の排気通路11における電気抵抗(インピーダンスR)を低減させることが望ましい。前記インピーダンスRは、放出部21bと接地電極30とのギャップGで形成される静電容量Cに反比例するため、インピーダンスRを低減させるには前記静電容量Cを大きくすればよい。そして、静電容量Cは、放出部21bと接地電極30との対向面積Sに比例するとともに、ギャップGの大きさに反比例するため、静電容量Cを大きくするには対向面積Sを増大させるとともにギャップGを小さくすればよい。
【0071】
そこで本実施形態では、上記対向面積Sの拡大を図るべく、1つの放電プラグ20に複数の放出部21bを設けている。図8に示す例では、排気通路11の径方向に複数の放出部21bを放射状に配置している。また、図9の例では、排気通路11の径方向に放出部21bを複数配置することに加え、排気流れ方向にも放出部21bを複数並べて配置している。また、図1(c)の放出部21bが有する突起の数(8個)を、図10に示すようにさらに増やして、対向面積Sの拡大を図るようにしてもよい。
【0072】
また、アーク放電が生じない程度にギャップGを小さくすれば、インピーダンスRを低減させてコロナ放電にかかる電子放出量を増大することができる。但し、排気通路11のうち放出部21bが配置されている部分の通路断面積を小さくしてギャップGを小さくしようとすると、当該部分で排気が絞られてしまい、排気の流通抵抗増大を招いてしまう。よって、放出部21bが配置されている部分の通路断面積は、排気通路11全長のうち最小となっている通路断面積よりも大きく設定することが望ましい。
【0073】
(第4実施形態)
図11に示す本実施形態では、排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒装置60が備えられた内燃機関に上記第1実施形態の排気浄化装置10を適用させている。なお、本実施形態にかかる放電プラグ20及び電力供給装置50の構成は上記第1実施形態と同じである。
【0074】
触媒装置60は、排気管42に接続されたケース内部に触媒60aを収容して構成されており、触媒60aの具体例としては、排気中のNOxを還元する還元触媒、排気中のCOやHCを酸化する酸化触媒、主にガソリンエンジンに用いられてNOx,CO,HCを酸化還元する三元触媒等が挙げられる。
【0075】
前記ケースは、以下の入口テーパ部61、出口テーパ部62及び保持部63から構成される。入口テーパ部61は、排気管42から排気を流入させる流入口61aを有するとともに、流入口61aから排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる円錐形状である。出口テーパ部62は、排気管42へ排気を流出させる流出口62aを有するとともに、流出口62aから排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる円錐形状である。保持部63は、入口テーパ部61及び出口テーパ部62を接続する円筒形状であり、触媒60aを内部に保持するものである。
【0076】
放電プラグ20は、ケースの出口テーパ部62に取り付けられている。そして、放電プラグ20の放出部21bは、排気管42で形成される排気通路11のうち、出口テーパ部62の下流側近傍、かつ、排気通路11の通路断面中央部に配置されている。したがって、放出部21bに対向配置される接地電極30は、排気管42の内面のうち出口テーパ部62の下流側近傍に位置することとなる。
【0077】
放出部21bの配置に関して詳細に説明すると、図11中の仮想線Kは、出口テーパ部62の内壁面62bの延長線を示しており、放出部21bは前記仮想線K上、或いは仮想線Kの上流側に配置することが望ましい。
【0078】
以上により、本実施形態によれば、出口テーパ部62に位置する排気は、出口テーパ部62の内壁面62bにガイドされて、排気通路11の中央へ向かう向きの流れとなる(図11中の矢印Y参照)。そのため、排気通路の通路断面中央部におけるPM濃度は通路断面外周部におけるPM濃度よりも高くなる。よって、放電電極21を、出口テーパ部62の下流側近傍かつ排気通路11の通路断面中央部に配置した本実施形態によれば、PM濃度の高い部分に放電電極21が配置されることとなるので、コロナ放電による浄化量の増大を図ることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様にして放電プラグ20へパルス状の電圧を印加させるよう制御させているが、印加電圧を一時的に遮断させることなく放電電極21への電圧印加を継続して行うよう制御してもよい。すなわち、本実施形態からは、特許請求の範囲に記載の請求項1から独立した以下の発明が抽出される。
【0080】
つまり、
『内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置において、
排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、
前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、
前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、
を備えて構成されており、
前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍、かつ、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする排気浄化装置。』
といった発明である。
【0081】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
・上記第1実施形態では、電圧印加時間をアーク放電所要時間よりも短く設定している。これに対し、コロナ放電された電子のエネルギを受けて、図6(b)に示す如く排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する分子振動所要時間を予め試験して取得しておき、当該分子振動所要時間よりも短くなるように電圧印加時間を設定してもよい。
【0083】
・アーク放電の発生のしやすさは、その時の排気流量、排気温度、PM量等のエンジン運転状態に応じて変化する。そこで、放出部21bにパルス電圧を印加するにあたり、電圧印加時間、電圧ピーク値Vp及び電圧印加周期の少なくとも1つを、エンジン運転状態に応じて可変設定してもよい。これによれば、エンジン運転状態に応じて、アーク放電を発生させないよう、放出部21bへの投入エネルギを増大させることができ、PM浄化量の増大を図ることができる。
【0084】
・上記第1実施形態の如くPMを酸化させて浄化する方式と、第2実施形態の如くPMを帯電凝集させて浄化する方式とを組み合わせるようにしてもよい。例えば、バッテリ51に十分な量の電力が蓄電されておりバッテリ電圧が所定値以上となっている場合には、PMを酸化させて浄化し、バッテリ電圧が所定値未満となっている場合にはPMを帯電凝集させて浄化すればよい。
【0085】
・上記第2実施形態の捕集部31を廃止して、接地電極30上に直接ナノPMを凝集保持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,100…排気浄化装置、11…排気通路、21…放電電極、21b…放出部、30…接地電極(対向電極)、50…電力供給装置(電力供給手段)、60a…触媒、61…入口テーパ部、61a…流入口、62…出口テーパ部、62a…流出口、63…保持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気中に含まれる微粒子を浄化する排気浄化装置に適用された、排気浄化装置用電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中のPM(particulate matters(微粒子))を酸化させて浄化、或いはPMを帯電させて捕集浄化する排気浄化装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−243419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置を用いてPMを浄化するにあたり、放電電極に印加する電圧を高くするほどPMの酸化又は帯電を促進でき、PM浄化量を増大できる。しかしながら、PM浄化量増大を図るべく電圧を上昇させていくと、放電電極に対向する接地電極(対向電極)と放電電極との間でアーク放電が発生する可能性が高くなる。そして、このようなアーク放電が発生すると、放電電極へ投入した電気エネルギの殆どがアークへ流入してコロナ放電が消滅してしまう。すると、放電電極近傍を通過するPMの殆どが酸化又は帯電されなくなり、PM浄化量が著しく低下するといった問題が生じる。
【0005】
また、排気中に含まれるO2やN2等の排気分子にコロナ放電された電子が衝突すると、排気分子の分子振動が促進されるが、この分子振動が活発化するほど、放電電極からコロナ放電された電子は、分子振動する排気分子に衝突する確率が高くなる。すると、その背反としてコロナ放電された電子がPMに衝突する確率は低くなるので、PMが十分に酸化又は帯電されなくなり、PM浄化量が低下するといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、浄化量の向上を図った排気浄化装置用電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置に適用され、前記放電電極へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、前記コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給手段を備え、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する時間を、所定時間よりも短くすることを特徴とする。
【0009】
これによれば、コロナ放電に用いる電力を放電電極へ供給するにあたり、常時継続して電圧印加するのではなく、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返して電力供給する。そのため、放電電極に対向する対向電極(例えば接地電極)及び放電電極の一方で電気アークが生じてからその電気アークが他方へ到達する前に、印加電圧が一時的に遮断されて、アーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅する可能性が高くなる。このように、上記発明によればアーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を図ることができる。
【0010】
また、上記発明に反し、印加電圧を一時的に遮断させることなく放電電極への電圧印加を継続して行うと、先述した排気分子の分子振動が促進される。これに対し上記発明では、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返して電力供給するので、排気分子の分子振動を抑制でき、コロナ放電された電子が微粒子に衝突する確率を高くできる。よって、微粒子の酸化量又は帯電量を向上でき、ひいては微粒子の浄化量向上を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明では、前記放電電極に対向する対向電極及び前記放電電極の一方で電気アークが生じてから、前記対向電極及び前記放電電極の他方へ前記電気アークが到達するまでに要する時間をアーク放電所要時間とし、前記アーク放電所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする。
【0012】
これによれば、対向電極(例えば接地電極)及び放電電極の一方で電気アークが生じてからその電気アークが他方へ到達する前に印加電圧を遮断させることの確実性を向上できる。よって、アーク放電の発生抑制を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を促進できる。
【0013】
請求項3記載の発明では、瞬時的な電圧印加を開始してから、コロナ放電された電子のエネルギを受けて排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する時間を分子振動所要時間とし、前記分子振動所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、排気分子が所定値以上の強度で分子振動することを回避させることの確実性を向上できる。よって、微粒子の酸化量又は帯電量向上を促進でき、ひいては微粒子の浄化量向上を促進できる。
【0015】
請求項4記載の発明では、前記所定時間を、100ナノ秒以上かつ500ナノ秒以下に設定したことを特徴とする。
【0016】
上記発明に反して前記所定時間を100ナノ秒未満に設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制を向上できる背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。また、上記発明に反して前記所定時間を500ナノ秒より大きく設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制が不十分となることが懸念される。これらの懸念を鑑みて「100ナノ秒≦所定時間≦500ナノ秒」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0017】
請求項5記載の発明では、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する周期を、500Hz以上かつ100kHz以下に設定したことを特徴とする。
【0018】
上記発明に反して前記周期を500Hz未満に設定すると、電圧印加されていないインターバル時間が長すぎてしまい、アーク放電抑制及び分子振動抑制が促進される背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。
【0019】
また、上記発明に反して前記周期を100kHzより大きく設定すると、以下に説明するように前記インターバル時間が短すぎることとなる。すなわち、印加電圧を一時的に遮断することでアーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅しようとするものの、前記インターバル時間が短すぎると、電気アークが完全に消滅する前に次の電圧印加が為されてしまい、対向電極及び放電電極の一方で生じた電気アークが他方へ到達してアーク放電の状態に陥ることが懸念される。また、分子振動を十分に抑制できなくなることが懸念される。
【0020】
これらの懸念を鑑みて「500Hz≦瞬時的に電圧印加する周期≦100kHz」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0021】
請求項6記載の発明では、前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加した時の電圧ピーク値の絶対値を、5kV以上かつ15kV以下に設定したことを特徴とする。
【0022】
上記発明に反して前記電圧ピーク値の絶対値を5kV未満に設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制を向上できる背反として、コロナ放電による微粒子の酸化又は帯電が不十分となることが懸念される。また、上記発明に反して前記電圧ピーク値の絶対値を15kVより大きく設定すると、アーク放電抑制及び分子振動抑制が不十分となることが懸念される。これらの懸念を鑑みて「5kV≦電圧ピーク値の絶対値≦15kV」に設定した上記発明によれば、アーク放電抑制及び分子振動抑制による効果と、微粒子酸化又は帯電による効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0023】
請求項7記載の発明では、前記放電電極は、コロナ放電により電子が放出される突起状の放出部を複数備えた形状であることを特徴とする。
【0024】
これによれば、電極へ供給した電荷が排気通路へ放出され易くなるので、印加電圧を低く抑えつつもコロナ放電を促進して微粒子の酸化量又は帯電量を向上できる。よって、アーク放電抑制及び分子振動抑制を促進させつつコロナ放電による微粒子浄化を促進できる。
【0025】
請求項8記載の発明では、前記排気通路を形成する排気管の内壁面に、前記放電電極に対向する対向電極が配置されており、前記排気通路のうち前記放電電極が配置されている部分の通路断面積は、前記排気通路の最小通路断面積以上となっていることを特徴とする。
【0026】
ここで、放電電極と対向電極とのギャップを大きくするほど両電極間での抵抗(インピーダンス)が大きくなり、放電電極に供給された電荷が放出されにくくなり、コロナ放電が不十分となることが懸念される。そこで、排気管の通路断面積を小さくすれば、前記ギャップが小さくなり上記懸念が解消されるものの、排気管のうち対向電極が配置された部分の通路断面積だけを小さくすると、この部分で排気の流れが絞られることとなり、排気の流通抵抗が大きくなるとの不具合が生じる。
【0027】
この点を鑑みた上記発明では、排気通路のうち対向電極が配置されている部分の通路断面積を、排気通路の最小通路断面積以上にするので、排気管のうち対向電極が配置された部分で排気の流れが絞られることを回避できる。なお、対向電極が配置されている部分の通路断面積を最小通路断面積にすれば、排気の流通抵抗が増大することを抑制しつつ、前記ギャップを小さくすることによるコロナ放電の促進を図ることができ、好適である。
【0028】
請求項9記載の発明では、排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、前記ケースは、前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、を備えて構成されており、前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍に配置するとともに、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする(図11参照)。
【0029】
ケースの保持部は、排気が触媒を通過する際の圧力損失低減を図るべく、排気管よりも通路断面積が大きく形成されているのが一般的である。そのため、保持部の下流端と排気管とを接続する出口テーパ部をケースは有することとなる。上記発明は、この出口テーパ部を利用してコロナ放電による浄化量の増大を図ったものである。
【0030】
すなわち、出口テーパ部に位置する排気は、出口テーパ部の内壁面にガイドされて、排気通路の中央へ向かう向きの流れとなる(図11中の矢印Y参照)。そのため、排気通路の通路断面中央部におけるPM濃度は通路断面外周部におけるPM濃度よりも高くなる。よって、放電電極を、出口テーパ部の下流側近傍かつ排気通路の通路断面中央部に配置した上記発明によれば、PM濃度の高い部分に放電電極が配置されることとなるので、コロナ放電による浄化量の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態において、(a)は排気浄化装置のエンジン搭載位置を示す図、(b)は排気浄化装置の構成を示す図、(c)は(b)のA矢視図。
【図2】図1の排気浄化装置によりPMが浄化されるメカニズムを説明する図。
【図3】図1の放電プラグへ電力を供給する電力供給装置の構成を示す図。
【図4】図3の電力供給装置により放電プラグへ印加する電圧の時間変化を示す図。
【図5】第1実施形態に反し、継続して電圧印加した場合の試験結果を示す図。
【図6】第1実施形態による効果の1つを説明する図。
【図7】第2実施形態にかかる排気浄化装置の構成を示す図。
【図8】第3実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【図9】第3実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【図10】第3実施形態にかかる放出部の形状例を示す図。
【図11】第4実施形態にかかる放出部の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明をディーゼルエンジン(内燃機関)の排気浄化装置に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、エンジン41に対する排気浄化装置10の搭載位置を示し、図1(b)は排気浄化装置10の全体構成を示し、図1(c)は図1(b)のA矢視図である。
【0034】
図中、排気浄化装置10は、電子を放電させる放出部21bを有する放電プラグ20と、放出部21bと対向するよう配置された接地電極30(対向電極)と、を備えて構成されている。接地電極30は、エンジン41の排気管42に接続される筒状ハウジングHの内壁面に沿って配置された筒形状である。ハウジングHは排気管42より大径の円筒管状で、その内部は円形断面の排気通路11となり、両端小径部にて排気管42の直線部に接続されるようになっている。
【0035】
図1(b)において、放電プラグ20は、上半部がハウジングHの筒壁から外部(図の上方)に突出し、下半部がハウジングH内の排気通路11に位置している。放電プラグ20は、電力供給されて排気通路11内に電子を放出するようコロナ放電する放電電極21と、放電電極21を保持する碍子部22とからなる。放電電極21は、外周が碍子部22に保持される棒状の導電部21aと、その先端に設けられる放出部21bとからなる。導電部21aのうちハウジングH外に位置し碍子部22から突出する基端には、電力供給装置50(電力供給手段)から直流高電圧の電力が供給される。
【0036】
導電部21aのうち排気通路11内に露出する部分はL字状に屈曲して、排気通路11の軸線(排気流れ方向)に沿って延び、先端に接続された放出部21bへ高電圧の電流を導く。
【0037】
図1(c)に示すように、放出部21bは、板状であるとともに、その板外周面に放射状に突出する多数の突起を有する形状である。放出部21bに供給された電子は、突起の先端から排気通路11へ放出されてコロナ放電することとなる。このように、放出部21bに多数の突起を設けることで放電率を高めるとともに、排気通路11内に均等にコロナ放電を発生させて、浄化性能を高めることができる。
【0038】
次に、排気中に含まれるPM(particulate matters(微粒子))が排気浄化装置10により浄化されるメカニズムについて、図2を用いて説明する。
【0039】
図2(a)に示すように、エンジン41で発生し排気管42へ放出されるPMは、通常、0.01μmから数μm程度の粒径であり、通常のパティキュレートフィルタ(DPF)では捕捉できないナノ微粒子(ナノPM)を含んでいる。排気浄化装置10は主に、このナノPMを酸化して浄化するよう機能するものである。
【0040】
図2(b)に示すように、放電プラグ20の導電部21aに電力供給装置50から負の直流高電圧を印加すると、放出部21b先端の突起近傍においてコロナ放電が発生する(図中(1)参照)。この時、コロナ放電により放射される電子は高いエネルギを有しており、当該電子が排気中の酸素分子(O2)に衝突すると、当該酸素分子は解離して酸素イオン(Oラジカル:O2−)が生成されることとなる(図中(2)参照)。当該Oラジカルは不安定な状態となっており、このOラジカルがナノPMの成分である炭素原子(C)に衝突すると、二酸化炭素(CO2)が生成されることとなる(図中(3)(4)参照)。
【0041】
要するに、図2(c)に示すように、コロナ放電により放射された電子のエネルギ(活性化エネルギ)により、炭素と酸素分子が酸化反応して二酸化炭素に変化する。以上により、コロナ放電させることでナノPMを酸化して気体分子である二酸化炭素に直接変化させるので、コロナ放電の発生エネルギを効果的に利用してナノPMを浄化することができる。
【0042】
次に、図3を用いて電力供給装置50の構成を説明する。
【0043】
電力供給装置50は、車両に搭載されたバッテリ51を電源としており、当該バッテリ51の電圧(12V)を昇圧して放電プラグ20へ供給する。また、このように昇圧した電圧を放電プラグ20へ常時継続して印加させるのではなく、瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すよう、パルス状の電圧を印加させるよう制御している。
【0044】
図3に示す回路は、このような昇圧及びパルス制御を行う回路の一例であり、電力供給装置50は、バッテリ51、コンデンサ52、トランス53、サイリスタ54(スイッチ手段)及びマイクロコンピュータ(マイコン55)を備えて構成されている。
【0045】
サイリスタ54がターンオフして通電を遮断した状態では、バッテリ51から供給される電力がコンデンサ52に蓄電される。そして、マイコン55から出力される指令信号によりサイリスタ54がターンオンすると、コンデンサ52に蓄電された電力がトランス53の一次コイルに流れ、これに伴いトランス53の二次コイルに高電圧が発生し、二次コイルに接続されている放電プラグ20へ高電圧の電力が供給されることとなる。
【0046】
要するに、放電プラグ20へ瞬時的に電圧(パルス電圧)を印加するにあたり、マイコン55によりターンオン指令を出力したタイミングで電圧印加が開始される。よって、瞬時的に電圧印加する周期はマイコン55により制御される。図3の例では、マイコン55からサイリスタ54へ出力される信号は、所定周期でターンオンを指令するクロックパルス信号であり、500Hz〜100kHzの周期でターンオンを指令する。
【0047】
一方、一次コイルへの放電によりコンデンサ52の電荷が所定量以下になると、サイリスタ54はターンオフして一次コイルへの通電が遮断される。これにより、放電プラグ20への電力供給が停止される。したがって、瞬時的な電圧印加を終了させるタイミング、及び瞬時的に電圧を印加する時間は、コンデンサ52の容量等の回路構成部品により決定される。図3の例では、瞬時的に電圧印加する時間が100ナノ秒〜500ナノ秒となるようコンデンサ52の容量等を設定している。
【0048】
また、放電プラグ20へ供給される電力の電圧は、バッテリ51及びトランス53の仕様により決定される。バッテリ51の残存容量が100%の時に、放電プラグ20へ印加される電圧が−5kV〜−15kVとなるようトランス53は選定されている。
【0049】
以上により、放電プラグ20の放出部21bに印加される電圧は、図4に示す如く、500Hz〜100kHzの周期で−5kV〜−15kVの電圧となり、100ナノ秒〜500ナノ秒といった極短時間、瞬時的に印加される。
【0050】
ところで、高い電圧でコロナ放電させるほど、生成されるOラジカルの量が増大してPMの浄化量を増大できる。また、放出部21bと接地電極30とのギャップG(図1(b)参照)が小さいと、放電電極21から電子が放出されやすくなるので、生成されるOラジカルの量が増大してPMの浄化量を増大できる。しかしながら、印加電圧を高くしてギャップGを小さくするほど、放電電極21の放出部21bと接地電極30との間でアーク放電が発生するおそれが高くなる。そして、このようなアーク放電が発生すると、放電電極21へ投入した電気エネルギの全てがアークへ流入してコロナ放電が消滅してしまう。すると、ナノPMの酸化が不十分となり、PM浄化量が著しく低下するといった問題が生じる。
【0051】
そして、放出部21bへパルス状に直流電圧を印加する本実施形態に反し、一時的に遮断させることなく常時継続して放出部21bへ直流電圧を印加すると、上記問題が顕著になることが、本発明者らの行った試験により明らかとなった。
【0052】
図5(a)は、継続して電圧印加した場合の試験結果であり、図中の横軸は印加電圧の大きさを示し、縦軸は、排気浄化装置10を通過した後の排気中に含まれるPMの数、つまり浄化できなかったPMの数を示す。また、図中の(1)はギャップG=40mm、(2)は30mm、(3)は20mmにした場合の試験結果を示す。なお、(2)(3)の点線は推定値を示す。
【0053】
図5(a)の試験結果は、高電圧にするほどPM浄化量が増大することを示すとともに、ギャップGを小さくするほど浄化量が増大することを示す。そして、図5(b)は、ギャップG=20mmの場合において、電圧を徐々に高圧にしていった時のPM数変化を示すグラフであり、電圧が−5kVの時にはアーク放電は発生しないが、−6kVまで昇圧するとPM数が大きく変動する(図中の点線部分参照)。このことは、アーク放電が発生した瞬間にコロナ放電が消滅してPMを浄化できなくなったことを意味する。また、−6kV以上昇圧してもPM浄化量を増大できないことが分かった。
【0054】
ちなみに、エンジン回転速度が高いほどアーク放電は生じやすい。また、エンジン負荷(出力トルク)が大きいほどアーク放電は生じやすい。図5は、エンジン回転速度を3000rpm、出力トルクを110N−mとした場合の試験結果である。
【0055】
この試験結果に対し、上記詳述した本実施形態によれば、放出部21bへパルス状に直流電圧を印加するので、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30に到達する前に印加電圧が一時的に遮断されて、アーク放電になりかけた電気アークを途中で消滅させることとなる。よって、アーク放電の発生を抑制できるので、印加電圧の高電圧化を促進するとともにギャップGを小さくすることができるので、ひいてはPM浄化量の向上を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、500Hz〜100kHzの周期で−5kV〜−15kVの電圧となり、100ナノ秒〜500ナノ秒といった極短時間、放出部21bへ瞬時的に電圧印加する。これらの数値は、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30に到達する前に印加電圧を遮断するよう設定したものであって、試験により得られた数値である。
【0057】
すなわち、電圧印加時間(所定時間)を500ナノ秒より大きく設定すると、電気アークが接地電極30に到達してアーク放電が発生しやすくなる。また、電圧を印加する周期(パルスオン周期)を100kHzより大きく設定すると、電力供給させないインターバル時間Ti(図4参照)が短すぎてしまい、印加電圧を一時的に遮断することでアーク放電になりかけた電気アークが途中で消滅しようとするものの、電気アークが完全に消滅する前に次の電圧印加が為されるので、放出部21bで発生した電気アークが接地電極30へ到達してアーク放電の状態に陥ることが懸念される。また、電圧ピーク値Vp(図4参照)を−15kVより低く(過剰昇圧)してもアーク放電が生じやすくなる。
【0058】
一方、電圧印加時間(所定時間)を100ナノ秒より小さく設定したり、電圧印加周期を500Hzより小さく設定したり、電圧ピーク値Vpを−5kVより高く設定すると、コロナ放電によるPMの酸化が不十分となり、PM浄化量が低下する。これらの点を鑑み、上述した各種数値に設定した本実施形態によれば、アーク放電を抑制する度合いと、PM酸化による浄化量増大の度合いとをバランスよくできる。
【0059】
なお、−5kV〜−15kVの電圧を印加する場合においては、放出部21bで電気アークが発生してから接地電極30に到達するまでに要する時間(アーク放電所要時間)は500ナノ秒より長い。
【0060】
なお、本実施形態では、排気通路11のうち放電電極21が配置されている部分の通路断面積は、排気通路11の最小通路断面積以上となっている。つまり、排気通路11のうち放電電極21が配置されている部分により、排気通路11の通路断面積が縮小して絞られないようにしている。
【0061】
さらに、本実施形態の如く放出部21bへパルス状に直流電圧を印加すると、以下に説明する分子振動を抑制でき、分子振動によるPM浄化量の著しい低下を回避できることが分かった。
【0062】
すなわち、本実施形態に反し、常時継続して放出部21bへ直流電圧を印加すると、電圧印加を開始した直後においては、図6(a)に示すように、放出部21bからコロナ放電した電子を、放出部21bから離れた場所(接地電極30の近傍)にある酸素分子にまで到達させて衝突させることができ、Oラジカルを広範囲に生成させることができる。よって、排気通路11を流れるPMがOラジカルと反応せずに通過する量を減少させることができ、ひいてはPMの浄化量を一定以上に保つことができる。
【0063】
しかしながら、放出部21bへの電圧印加時間が長くなると、放出部21bからコロナ放電した電子が排気中の酸素分子及び窒素分子(排気分子)に繰り返し衝突していくと、これらの分子が有する電子が高エネルギ化して激しく振動するようになる(図6(b)参照)。すると、コロナ放電した電子はこれらの振動分子に衝突する確率が高くなり、放出部21bから離れた場所にある酸素分子に電子が衝突する確率が低くなる。その結果、Oラジカルを広範囲に生成させることができなくなり、ひいてはPM浄化量の著しい低下を招く。
【0064】
この問題に対し、本実施形態では放出部21bへパルス状に直流電圧を印加するので、放出部21b近傍の排気分子は、所定値以上の強度で分子振動する前に印加電圧が遮断され、そのまま排気通路11から排出されていく。よって、Oラジカルを広範囲に生成させることができ、ひいてはPM浄化量の著しい低下を回避できる。
【0065】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、コロナ放電によりPMを酸化して浄化する排気浄化装置10に電力供給装置50を適用させているが、図7に示す本実施形態では、コロナ放電によりPMを帯電させて捕集浄化する排気浄化装置100に電力供給装置50を適用させている。なお、本実施形態にかかる排気浄化装置100は、上記第1実施形態にかかる排気浄化装置10に後述する捕集部31を備えた構成である。電力供給装置50等のその他のハード構成は、上記第1実施形態と同じであり、パルス状の電圧を放出部21bに印加する。
【0066】
但し、本実施形態では、第1実施形態に比べて印加電圧の絶対値が低く設定されている。すると、コロナ放電によるエネルギ投入量が少なくなり、PMが酸化されなくなる(或いは僅かしか酸化されなくなる)ものの、以下に説明するようにPMが帯電凝集するので、捕集部31へPMを捕集させることができる。
【0067】
すなわち、コロナ放電が発生して電子が放射されると(図7中の(1)参照)、その一部は電子親和性の高い気体分子(酸素)をマイナスイオン化してOラジカルが発生し((2)参照)、付近のナノPMに付着してこれを負に帯電させる((3)参照)。帯電したナノPMは、クーロン力によって集塵電極を兼ねる接地電極30に引き寄せられ、下流へ向かうガス流から徐々に離脱して、凝集しながら排気通路11の外周側へ移動して捕集部31内に侵入する。((4)参照)。その後、捕集部31の奥へ移動凝集したナノPMが接地電極30に達すると、放電し、凝集保持される((5)参照)。
【0068】
なお、捕集部31は、中空メッシュ状の導電性筒状体より構成されており、接地電極30の内周面に配置されている。捕集部31を構成する中空メッシュ状の導電性筒状体は、通常、1μmから10μm程度の粒径となる粗大粒子の流入を妨げない程度の大きさを有し、かつ内部に凝集微粒子を保持する十分な空間を有することが望ましい。
【0069】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様にしてパルス状の電圧を放出部21bに印加するので、アーク放電の発生を抑制できる。よって、印加電圧の高電圧化を促進するとともにギャップGを小さくすることができるので、ひいてはPM浄化量の向上を図ることができる。また、パルス状の電圧を放出部21bに印加するので、放出部21b近傍の排気分子は、所定値以上の強度で分子振動する前に印加電圧が遮断され、そのまま排気通路11から排出されていく。よって、Oラジカルを広範囲に生成させ、広範囲でPMを帯電させることができるので、PM浄化量の著しい低下を回避できる。
【0070】
(第3実施形態)
ところで、放出部21bから電子を放射してコロナ放電させるには、放出部21bと接地電極30との間の排気通路11における電気抵抗(インピーダンスR)を低減させることが望ましい。前記インピーダンスRは、放出部21bと接地電極30とのギャップGで形成される静電容量Cに反比例するため、インピーダンスRを低減させるには前記静電容量Cを大きくすればよい。そして、静電容量Cは、放出部21bと接地電極30との対向面積Sに比例するとともに、ギャップGの大きさに反比例するため、静電容量Cを大きくするには対向面積Sを増大させるとともにギャップGを小さくすればよい。
【0071】
そこで本実施形態では、上記対向面積Sの拡大を図るべく、1つの放電プラグ20に複数の放出部21bを設けている。図8に示す例では、排気通路11の径方向に複数の放出部21bを放射状に配置している。また、図9の例では、排気通路11の径方向に放出部21bを複数配置することに加え、排気流れ方向にも放出部21bを複数並べて配置している。また、図1(c)の放出部21bが有する突起の数(8個)を、図10に示すようにさらに増やして、対向面積Sの拡大を図るようにしてもよい。
【0072】
また、アーク放電が生じない程度にギャップGを小さくすれば、インピーダンスRを低減させてコロナ放電にかかる電子放出量を増大することができる。但し、排気通路11のうち放出部21bが配置されている部分の通路断面積を小さくしてギャップGを小さくしようとすると、当該部分で排気が絞られてしまい、排気の流通抵抗増大を招いてしまう。よって、放出部21bが配置されている部分の通路断面積は、排気通路11全長のうち最小となっている通路断面積よりも大きく設定することが望ましい。
【0073】
(第4実施形態)
図11に示す本実施形態では、排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒装置60が備えられた内燃機関に上記第1実施形態の排気浄化装置10を適用させている。なお、本実施形態にかかる放電プラグ20及び電力供給装置50の構成は上記第1実施形態と同じである。
【0074】
触媒装置60は、排気管42に接続されたケース内部に触媒60aを収容して構成されており、触媒60aの具体例としては、排気中のNOxを還元する還元触媒、排気中のCOやHCを酸化する酸化触媒、主にガソリンエンジンに用いられてNOx,CO,HCを酸化還元する三元触媒等が挙げられる。
【0075】
前記ケースは、以下の入口テーパ部61、出口テーパ部62及び保持部63から構成される。入口テーパ部61は、排気管42から排気を流入させる流入口61aを有するとともに、流入口61aから排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる円錐形状である。出口テーパ部62は、排気管42へ排気を流出させる流出口62aを有するとともに、流出口62aから排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる円錐形状である。保持部63は、入口テーパ部61及び出口テーパ部62を接続する円筒形状であり、触媒60aを内部に保持するものである。
【0076】
放電プラグ20は、ケースの出口テーパ部62に取り付けられている。そして、放電プラグ20の放出部21bは、排気管42で形成される排気通路11のうち、出口テーパ部62の下流側近傍、かつ、排気通路11の通路断面中央部に配置されている。したがって、放出部21bに対向配置される接地電極30は、排気管42の内面のうち出口テーパ部62の下流側近傍に位置することとなる。
【0077】
放出部21bの配置に関して詳細に説明すると、図11中の仮想線Kは、出口テーパ部62の内壁面62bの延長線を示しており、放出部21bは前記仮想線K上、或いは仮想線Kの上流側に配置することが望ましい。
【0078】
以上により、本実施形態によれば、出口テーパ部62に位置する排気は、出口テーパ部62の内壁面62bにガイドされて、排気通路11の中央へ向かう向きの流れとなる(図11中の矢印Y参照)。そのため、排気通路の通路断面中央部におけるPM濃度は通路断面外周部におけるPM濃度よりも高くなる。よって、放電電極21を、出口テーパ部62の下流側近傍かつ排気通路11の通路断面中央部に配置した本実施形態によれば、PM濃度の高い部分に放電電極21が配置されることとなるので、コロナ放電による浄化量の増大を図ることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様にして放電プラグ20へパルス状の電圧を印加させるよう制御させているが、印加電圧を一時的に遮断させることなく放電電極21への電圧印加を継続して行うよう制御してもよい。すなわち、本実施形態からは、特許請求の範囲に記載の請求項1から独立した以下の発明が抽出される。
【0080】
つまり、
『内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置において、
排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、
前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、
前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、
を備えて構成されており、
前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍、かつ、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする排気浄化装置。』
といった発明である。
【0081】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
・上記第1実施形態では、電圧印加時間をアーク放電所要時間よりも短く設定している。これに対し、コロナ放電された電子のエネルギを受けて、図6(b)に示す如く排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する分子振動所要時間を予め試験して取得しておき、当該分子振動所要時間よりも短くなるように電圧印加時間を設定してもよい。
【0083】
・アーク放電の発生のしやすさは、その時の排気流量、排気温度、PM量等のエンジン運転状態に応じて変化する。そこで、放出部21bにパルス電圧を印加するにあたり、電圧印加時間、電圧ピーク値Vp及び電圧印加周期の少なくとも1つを、エンジン運転状態に応じて可変設定してもよい。これによれば、エンジン運転状態に応じて、アーク放電を発生させないよう、放出部21bへの投入エネルギを増大させることができ、PM浄化量の増大を図ることができる。
【0084】
・上記第1実施形態の如くPMを酸化させて浄化する方式と、第2実施形態の如くPMを帯電凝集させて浄化する方式とを組み合わせるようにしてもよい。例えば、バッテリ51に十分な量の電力が蓄電されておりバッテリ電圧が所定値以上となっている場合には、PMを酸化させて浄化し、バッテリ電圧が所定値未満となっている場合にはPMを帯電凝集させて浄化すればよい。
【0085】
・上記第2実施形態の捕集部31を廃止して、接地電極30上に直接ナノPMを凝集保持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,100…排気浄化装置、11…排気通路、21…放電電極、21b…放出部、30…接地電極(対向電極)、50…電力供給装置(電力供給手段)、60a…触媒、61…入口テーパ部、61a…流入口、62…出口テーパ部、62a…流出口、63…保持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置に適用され、
前記放電電極へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、前記コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給手段を備え、
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する時間を、所定時間よりも短くすることを特徴とする排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項2】
前記放電電極に対向する対向電極及び前記放電電極の一方で電気アークが生じてから、前記対向電極及び前記放電電極の他方へ前記電気アークが到達するまでに要する時間をアーク放電所要時間とし、
前記アーク放電所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項3】
瞬時的な電圧印加を開始してから、コロナ放電された電子のエネルギを受けて排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する時間を分子振動所要時間とし、
前記分子振動所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項4】
前記所定時間を、100ナノ秒以上かつ500ナノ秒以下に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項5】
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する周期を、500Hz以上かつ100kHz以下に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項6】
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加した時の電圧ピーク値の絶対値を、5kV以上かつ15kV以下に設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項7】
前記放電電極は、コロナ放電により電子が放出される突起状の放出部を複数備えた形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項8】
前記排気通路を形成する排気管の内壁面に、前記放電電極に対向する対向電極が配置されており、
前記排気通路のうち前記放電電極が配置されている部分の通路断面積は、前記排気通路の最小通路断面積以上となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項9】
排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、
前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、
前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、
を備えて構成されており、
前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍、かつ、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置した放電電極からコロナ放電させることで排気中の微粒子を酸化させて浄化、或いは、前記微粒子を帯電させて捕集浄化する排気浄化装置に適用され、
前記放電電極へ瞬時的に電圧印加することを複数回繰り返すことで、前記コロナ放電に用いる電力を供給する電力供給手段を備え、
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する時間を、所定時間よりも短くすることを特徴とする排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項2】
前記放電電極に対向する対向電極及び前記放電電極の一方で電気アークが生じてから、前記対向電極及び前記放電電極の他方へ前記電気アークが到達するまでに要する時間をアーク放電所要時間とし、
前記アーク放電所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項3】
瞬時的な電圧印加を開始してから、コロナ放電された電子のエネルギを受けて排気分子が所定値以上の強度で振動するに至るまでに要する時間を分子振動所要時間とし、
前記分子振動所要時間を前記所定時間としたことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項4】
前記所定時間を、100ナノ秒以上かつ500ナノ秒以下に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項5】
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加する周期を、500Hz以上かつ100kHz以下に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項6】
前記電力供給手段により瞬時的に電圧印加した時の電圧ピーク値の絶対値を、5kV以上かつ15kV以下に設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項7】
前記放電電極は、コロナ放電により電子が放出される突起状の放出部を複数備えた形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項8】
前記排気通路を形成する排気管の内壁面に、前記放電電極に対向する対向電極が配置されており、
前記排気通路のうち前記放電電極が配置されている部分の通路断面積は、前記排気通路の最小通路断面積以上となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【請求項9】
排気中の特定物質を酸化又は還元する触媒と、前記排気通路を形成する排気管に接続されて前記触媒を内部に保持するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記排気管から排気を流入させる流入口を有するとともに、前記流入口から排気流れ下流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる入口テーパ部と、
前記排気管へ排気を流出させる流出口を有するとともに、前記流出口から排気流れ上流側へ向けて通路断面積を徐々に拡大させる出口テーパ部と、
前記入口テーパ部及び前記出口テーパ部を接続するとともに、前記触媒を内部に保持する保持部と、
を備えて構成されており、
前記放電電極を、前記排気通路のうち前記出口テーパ部の下流側近傍、かつ、前記排気通路の通路断面中央部に配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の排気浄化装置用電力供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−112026(P2011−112026A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271331(P2009−271331)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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