説明

排気浄化装置

【課題】排気の熱エネルギを有効利用して、パティキュレートフィルタの再生を効率的に行うことが可能な排気浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン1の排気通路に介装された内側ケーシング46内にパティキュレートフィルタ30を収容し、内側ケーシング46と内側ケーシング46を包含する外側ケーシング50との間に形成された空間を隔壁60により第1流路56と第2流路58とに分割すると共に、隔壁60に形成された連通口62により第1流路56と第2流路58とを連通させる。そして、パティキュレートフィルタ30の強制再生時には、第1切換弁64及び第2切換弁68により、パティキュレートフィルタ30を通過した排気を第1流路56に流動させることによって、高温の排気の熱エネルギをパティキュレートフィルタ30に伝達し、パティキュレートフィルタ30を高温に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排気を浄化する排気浄化装置に関し、特にエンジンの排気中に含まれるパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備えた排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジン等のエンジンの排気通路にパティキュレートフィルタを設け、エンジンから排出される排気中に含まれるパティキュレートをパティキュレートフィルタで捕集し、大気中にパティキュレートが放出されないようにする技術が知られている。
パティキュレートフィルタでは、捕集したパティキュレートが堆積することにより排気抵抗が増大するため、適宜強制再生を行って、堆積したパティキュレートを強制的に焼却してパティキュレートフィルタを再生する。パティキュレートフィルタを強制再生するにはパティキュレートフィルタの温度を上昇させる必要がある。そのために例えば、パティキュレートフィルタの上流側に酸化触媒を設け、エンジンの膨張行程や排気行程で気筒内に燃料を噴射する、いわゆるポスト噴射を行うことにより、排気通路に供給したHC(炭化水素)を酸化触媒で酸化させ、パティキュレートフィルタに流入する排気の温度を上昇させることが知られている。
【0003】
また、このようにして上昇されたパティキュレートフィルタの温度を高温に維持し、パティキュレートフィルタの強制再生を良好に行うようにした排気浄化装置が特許文献1によって提案されている。
特許文献1の排気浄化装置では、排気通路に接続された外側ケーシング内に内側ケーシングを配設し、この内側ケーシング内にパティキュレートフィルタが収容されている。そして、温度が上昇した排気を、外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に流動させた後に内側ケーシング内に流入させることにより、内側ケーシング内のパティキュレートフィルタを外周面から暖め、パティキュレートフィルタ内の径方向における温度分布を均一化するようになっている。また、内側ケーシング内に流入した排気は、パティキュレートフィルタを通過する方向が切換バルブによって逆転可能となっており、パティキュレートフィルタ内の軸線方向における温度分布を均一化すると共に、アッシュなどによるパティキュレートフィルタの目詰まりが防止できるようになっている。
【0004】
特許文献1の排気浄化装置では、このようにしてパティキュレートフィルタ内の温度分布を均一化することにより、パティキュレートフィルタの強制再生を効率良く行えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−303121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排気浄化装置では、上述したようにパティキュレートフィルタに流入する前の高温の排気を、パティキュレートフィルタが収容された内側ケーシングと、これを包含する外側ケーシングとの間に流動させることにより、パティキュレートフィルタを外周面から暖めるようにしている。しかしながら、従来より一般的に用いられている排気浄化装置と同様に、上記特許文献1の排気浄化装置においては、パティキュレートフィルタを通過した後の排気が、そのまま排気浄化装置から排出されるようになっている。パティキュレートフィルタの強制再生時にパティキュレートフィルタから排出される排気の温度は依然として高温であるが、このような高温の排気が有する熱エネルギはそのまま大気中に放出され、有効利用されていない。このため、パティキュレートフィルタの温度を高温に維持するためには、引き続きポスト噴射などにより相応の燃料を供給し続けなければならず、その分だけエンジンの燃費が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気の熱エネルギを有効利用して、パティキュレートフィルタの再生を効率的に行うことが可能な排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の排気浄化装置は、エンジンの排気通路に介装され、上記エンジンの排気が流入する排気流入部と、流入した上記排気を流出させる排気流出部とを有する内側ケーシングと、上記内側ケーシング内に収容され、上記排気流入部から流入した排気中に含まれるパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、上記内側ケーシングを包含すると共に、上記内側ケーシングから離間して設けられることにより上記内側ケーシングとの間に、上記内側ケーシングの側壁部に沿って空間を形成する外側ケーシングと、上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記内側ケーシングの上記側壁部に沿い上流側から下流側にかけて第1流路と第2流路とに分割する隔壁と、上記パティキュレートフィルタより下流側に設けられ、上記パティキュレートフィルタを通過した排気を上記第1流路に流動させる第1状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気を上記排気流出部から流出させる第2状態とのいずれか一方に選択的に切り換え可能な流路切換手段と、上記第1流路において下流側となる上記隔壁の端部側に設けられ、上記第1流路と上記第2流路とを連通させる連通手段と、上記第2流路の下流側端部と上記排気流出部の下流側端部とを合流させる合流部とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このように構成された排気浄化装置によれば、エンジンの排気は排気流入部から内側ケーシング内に流入し、パティキュレートフィルタを通過する。流路切換手段は、パティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させる第1状態と、パティキュレートフィルタを通過した排気を排気流出部から流出させる第2状態とのいずれか一方に選択的に切り換え可能であり、流路切換手段が第2状態に切り換えられている場合には、パティキュレートフィルタを通過した排気が排気流出部から流出する。このとき、排気中に含まれるパティキュレートは、パティキュレートフィルタに捕集される。
【0009】
一方、流路切換手段が第1状態に切り換えられている場合には、パティキュレートフィルタを通過した排気が第1流路に流入した後、第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動し、第1流路において下流側となる隔壁の端部側に設けられた連通手段を介して第2流路に流入する。第2流路内を流動した排気は、第2流路の下流側端部から合流部を介して流出する。従って、排気が第1流路を流動する際に、強制再生などによって温度の上昇した排気の熱エネルギが内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達される。
【0010】
また、上記排気浄化装置において、上記パティキュレートフィルタの強制再生時には、上記第1状態となるように上記流路切換手段を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする(請求項2)。
このように構成された排気浄化装置によれば、パティキュレートフィルタの強制再生が行われるとき、制御手段が流路切換手段を第1状態に制御することにより、上述したようにパティキュレートフィルタを通過した排気が第1流路に流入し、第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動した後に、第2流路を経て合流部から流出する。従って、強制再生によって温度の上昇した排気の熱エネルギが内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達される。
【0011】
また具体的には、上記排気浄化装置において、上記流路切換手段が、上記パティキュレートフィルタより下流側となる位置の上記内側ケーシングに設けられて上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記第1流路に流動する状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記第1流路への流動を遮断する状態とに選択的に切り換え可能な第1切換弁と、上記第1切換弁より下流側となる位置の上記内側ケーシングに設けられ、上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記排気流出部から流出する状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記排気流出部からの流出を遮断する状態とに選択的に切り換え可能な第2切換弁とを備えるようにしてもよい(請求項3)。
【0012】
このように構成された排気浄化装置によれば、流路切換手段を第1状態としてパティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させる場合には、第2切換弁により排気流出部からの排気の流出を遮断すると共に、第1切換弁によりパティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させる。一方、流路切換手段を第2状態としてパティキュレートフィルタを通過した排気を排気流出部から流出させる場合には、第1切換弁により第1流路への排気の流動を遮断すると共に、第2切換弁によりパティキュレートフィルタを通過した排気を排気流出部から流出させる。
【0013】
また、上記排気浄化装置において、上記パティキュレートフィルタの強制再生時には、上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記第1流路に流動する状態に上記第1切換弁を制御すると共に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記排気流出部からの流出を遮断する状態に上記第2切換弁を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする(請求項4)。
【0014】
このように構成された排気浄化装置によれば、パティキュレートフィルタの強制再生が行われるとき、制御手段が第1切換弁及び第2切換弁を制御することにより、上述したようにパティキュレートフィルタを通過した排気が第1切換弁を介して第1流路に流入し、第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動した後、第2流路を経て合流部から流出する。従って、強制再生によって温度の上昇した排気の熱エネルギが内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達される。
【0015】
また、エンジン及び排気浄化装置が車両に搭載される場合、上記隔壁は、上記第1流路が上記第2流路より下方に位置するように、上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記内側ケーシングの上流側から下流側にわたって上下に分割するようにしてもよい(請求項5)。
このように構成された排気浄化装置によれば、パティキュレートフィルタを通過した排気は、第1流路に流入した後、まず内側ケーシングの側壁部のうち下方部分に沿って流動する。
【0016】
また、上記排気浄化装置において、上記隔壁は、上記第1流路内に露出する上記内側ケーシングの側壁部の面積の方が、上記第2流路内に露出する上記内側ケーシングの側壁部の面積よりも大きくなるように、上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を分割してもよい(請求項6)。
このように構成された排気浄化装置によれば、第1流路内を流動する排気に接する内側ケーシングの側壁部の面積の方が、第2流路内を流動する排気に接する内側ケーシングの側壁部の面積よりも大きくなる。
【0017】
更に、上記排気浄化装置において、上記内側ケーシング、上記外側ケーシング及び上記隔壁は、上記第1流路の流路断面積と上記第2流路の流路断面積とがほぼ等しくなるように相互の位置が定められていてもよい(請求項7)。
また、上記排気浄化装置において、上記外側ケーシングは、上記内側ケーシングの上記排気流入部に接続された排気通路の少なくとも一部を上記内側ケーシングと共に包含し、上記隔壁は、上記内側ケーシング及び上記排気通路と上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記第1流路と上記第2流路とに分割するようにしてもよい(請求項8)。
【0018】
このように構成された排気浄化装置によれば、流路切換手段が第1状態に切り換えられている場合には、上述したように、パティキュレートフィルタを通過した排気が第1流路に流入し、第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動する。このとき、第1流路内の排気は、内側ケーシングの排気流入部に接続されて外側ケーシングに包含された排気通路に沿って流動した後に、第2流路を経て合流部から流出する。従って、強制再生などによって温度の上昇した排気の熱エネルギが、内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達されると共に、内部ケーシング内に流入する排気にも排気通路を介して伝達される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排気浄化装置によれば、第1状態に流路切換手段が切り換えられている場合には、パティキュレートフィルタを通過した排気が第1流路に流入した後、第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動するので、パティキュレートフィルタを通過した後の依然として温度が高い排気の熱エネルギを、内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達することが可能となる。従って、パティキュレートフィルタを通過した後の排気の熱エネルギを有効利用し、パティキュレートフィルタの温度低下を抑制することが可能となる。
【0020】
この結果、請求項2の排気浄化装置や請求項4の排気浄化装置のように、パティキュレートフィルタの強制再生時にパティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させれば、強制再生によって高温となった排気の熱エネルギが内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達されるので、パティキュレートフィルタを高温に維持するために行われるポスト噴射などによる燃料の供給量を減少させることができ、エンジンの燃費を改善することが可能となる。
【0021】
また、温度の上昇した排気の熱エネルギが内側ケーシングを介して外側からパティキュレートフィルタに伝達されることにより、パティキュレートフィルタの径方向及び軸線方向における温度分布をより均一化することが可能となる。この結果、請求項2や請求項4の排気浄化装置のように、パティキュレートフィルタの強制再生時にパティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させれば、パティキュレートフィルタ内のパティキュレートの燃焼がより均一化され、より一層効率的にパティキュレートフィルタの強制再生を行うことが可能となる。従って、パティキュレートフィルタの強制再生に要する時間を短縮することが可能となり、この点でもパティキュレートフィルタの昇温に費やされる燃料量を減少することが可能となり、エンジンの燃費を改善することができる。
【0022】
また、パティキュレートフィルタにおける温度分布がより均一化されることにより、上述したようにパティキュレートの燃焼がより均一化されるので、強制再生時のパティキュレートの燃え残りが減少し、より良好にパティキュレートフィルタを再生することが可能となる。
一方、第2状態に流路切換手段が切り換えられている場合には、パティキュレートフィルタを通過した排気が排気流出部から流出するので、排気中に含まれるパティキュレートをパティキュレートフィルタによって捕集した後に、排気流出部から排気を流出させることができる。
【0023】
このとき、外側ケーシングが空間を有して内側ケーシングを包含しているので、パティキュレートフィルタから外気中への放熱量を低減することができる。この結果、パティキュレートフィルタの温度低下を抑制し、パティキュレートフィルタの連続再生を良好に行うことが可能となる。
また、請求項3の排気浄化装置によれば、第1切換弁より下流側となる位置の内側ケーシングに設けられた第2切換弁により排気流出部からの排気の流出を遮断すると共に、第1切換弁によりパティキュレートフィルタを通過した排気を第1流路に流動させることにより、パティキュレートフィルタを通過した排気を確実に第1流路に流動させることができる。一方、第1切換弁により第1流路への排気の流動を遮断すると共に、第2切換弁によりパティキュレートフィルタを通過した排気を排気流出部から流出させることにより、パティキュレートフィルタを通過した排気を確実に排気流出部から流出させることができる。
【0024】
また、車両に搭載されるエンジンの排気浄化装置では、車両の下方に排気浄化装置が装着されるのが一般的であり、この場合には車両走行時の走行風が排気浄化装置の下面に比較的多く接触することになる。請求項5の排気浄化装置によれば、第1流路が第2流路の下方に位置するので、パティキュレートフィルタを通過した排気は、第1流路内において内側ケーシングの側壁部のうち下方部分に沿って流動することになる。このとき第1流路内では上方であるほど排気の温度が高くなるので、走行風による放熱の影響を低く抑えながら、高温の排気の熱エネルギによってパティキュレートフィルタを高温に維持することが可能となる。
【0025】
また、請求項6の排気浄化装置によれば、第1流路内に露出する内側ケーシングの側壁部が排気に接触する面積の方が、第2流路内に露出する内側ケーシングの側壁部が排気に接触する面積よりも大きいので、流路切換手段が第1状態に切り換えられている場合に、第1流路内を流動する排気の熱エネルギを、効率良く内側ケーシング内のパティキュレートフィルタに伝達することが可能となる。この結果、より効率良くパティキュレートフィルタを高温に維持することが可能となる。
【0026】
更に、請求項7の排気浄化装置によれば、第1流路の流路断面積と第2流路の流路断面積とがほぼ等しくなっているので、排気が第1流路を流動する際の流動抵抗及び第2流路を流動する際の流動抵抗をほぼ同一にすることができ、排気の圧力損失を低く抑えることが可能となる。
また、請求項8の排気浄化装置によれば、流路切換手段が第1状態に切り換えられている場合には、パティキュレートフィルタを通過した排気が第1流路内を内側ケーシングの側壁部に沿って流動した後、内側ケーシングの排気流入部に接続されて外側ケーシングに包含された排気通路に沿って流動する。従って、強制再生などによって温度の上昇した排気の熱エネルギが、内側ケーシングを介してパティキュレートフィルタに伝達されると共に、内部ケーシング内に流入する排気にも排気通路を介して伝達される。この結果、パティキュレートフィルタに対する排気の熱エネルギの伝達だけではなく、パティキュレートフィルタに流入する排気の温度低下を抑制することによってもパティキュレートフィルタを高温に維持することが可能となり、パティキュレートフィルタの強制再生や連続再生による再生をより一層効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態に係る排気浄化装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置が適用されて車両に搭載された4気筒のディーゼルエンジン(以下、エンジンという)の全体構成図である。
エンジン1は各気筒共通の高圧蓄圧室(以下コモンレールという)2を備えており、図示しない燃料噴射ポンプから供給されてコモンレール2に蓄えられた高圧の燃料を、各気筒に設けられたインジェクタ4に供給し、各インジェクタ4からそれぞれの気筒内に燃料が噴射される。
【0028】
吸気管6にはターボチャージャ8が装備されており、図示しないエアクリーナから吸入された吸気は、吸気管6からターボチャージャ8のコンプレッサ8aへと流入し、コンプレッサ8aで過給された吸気はインタークーラ10及び吸気制御弁12を介して吸気マニホールド14に導入される。また、吸気管6のコンプレッサ8aより上流側には、エンジン1に吸入される空気量を検出するための吸気量センサ16が設けられている。
【0029】
一方、エンジン1の各気筒から排気が排出される排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド18を介して排気管(排気通路)20に接続されている。なお、排気マニホールド18と吸気マニホールド14との間には、EGR弁22を介して排気マニホールド18と吸気マニホールド14とを連通するEGR通路24が設けられており、EGR弁22の開度を変更することにより排気マニホールド18から吸気マニホールド14への排気還流量を調整可能となっている。
【0030】
排気管20には、ターボチャージャ8のタービン8bの下流側において、排気後処理装置26が介装されている。また、タービン8bの回転軸はコンプレッサ8aの回転軸と連結されており、タービン8bが排気管20内を流動する排気を受けてコンプレッサ8aを駆動するようになっている。
排気後処理装置26には、酸化触媒28が収容されると共に、この酸化触媒28の下流側に、排気中のパティキュレートを捕集することによりエンジン1の排気を浄化するパティキュレートフィルタ(以下フィルタという)30が収容されている。
【0031】
この酸化触媒28は、流入する排気中のNO(一酸化窒素)を酸化させてNO(二酸化窒素)を生成し、フィルタ30の連続再生を行う際の酸化剤として供給する機能を有している。また、フィルタ30はハニカム型のセラミック体からなり、エンジン1の排気が内部を流通することによって排気中のパティキュレートを捕集する。
酸化触媒28でNOから転化されたNOはフィルタ30に流入し、フィルタ30に捕捉されて堆積したパティキュレートに対して酸化剤として作用することにより、パティキュレートを酸化してフィルタ30から除去し、フィルタ30を連続再生すると共にNとなって大気中に排出される。
【0032】
酸化触媒28の上流側には、酸化触媒28に流入する排気の温度を検出するための流入排気温度センサ32、及び酸化触媒28から流出する排気の温度を検出するための流出排気温度センサ33が設けられている。また、フィルタ30の上流側にはフィルタ30に流入する排気の圧力を検出する上流側排気圧センサ34が設けられ、フィルタ30の下流側にはフィルタ30から流出する排気の圧力を検出する下流側排気圧センサ36が設けられている。更に、排気後処理装置26には、後述する排気流路の切換制御で用いられるアクチュエータユニット38が装備されている。
【0033】
ECU(制御手段)40は、エンジン1の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、CPU、メモリ、タイマカウンタなどから構成され、様々な制御量の演算を行うと共に、その制御量に基づき各種デバイスの制御を行っている。
ECU40の入力側には、各種制御に必要な情報を収集するため、上述した吸気量センサ16、流入排気温度センサ32、流出排気温度センサ33、上流側排気圧センサ34及び下流側排気圧センサ36のほか、エンジン回転数を検出する回転数センサ42、及びアクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出するアクセル開度センサ44などの各種センサ類が接続されている。一方、ECU40の出力側には演算した制御量に基づき制御が行われる各気筒のインジェクタ4、吸気制御弁12、EGR弁22及びアクチュエータユニット38などの各種デバイス類が接続されている。
【0034】
エンジン1の各気筒への燃料供給量の演算、及び演算した燃料供給量に基づくインジェクタ4からの燃料供給制御もECU40によって行われる。エンジン1の運転に必要な燃料供給量(主噴射量)は、回転数センサ42によって検出されたエンジン回転数とアクセル開度センサ44によって検出されたアクセルペダルの踏込量とに基づき、予め記憶しているマップから読み出して決定する。各気筒に供給される燃料の量は、インジェクタ4の開弁時間によって調整され、決定された燃料量に対応した駆動時間で各インジェクタ4が開弁駆動され、各気筒に主噴射が行われることにより、エンジン1の運転に必要な燃料量が供給される。
【0035】
ECU40は、このような各気筒への燃料供給制御のほか、フィルタ30を強制再生して機能回復させるための制御も行う。
フィルタ30に堆積したパティキュレートは、前述したように酸化触媒28からフィルタ30に流入するNOを酸化剤とした連続再生によって酸化除去されるが、排気温度が低い運転状態が長時間続いた場合などでは、このような連続再生だけでは堆積したパティキュレートが十分に酸化除去されない場合がある。このような状態が継続すると、フィルタ30内にパティキュレートが過剰に堆積し、フィルタ30が目詰まりを起こすおそれがあるため、フィルタ30におけるパティキュレートの堆積状況に応じ、適宜フィルタ30の強制再生が行われる。
【0036】
パティキュレートの堆積状況は、フィルタ30の上流側及び下流側にそれぞれ設けられた上流側排気圧センサ34及び下流側排気圧センサ36や吸気量センサ16の検出値などに基づき推定され、フィルタ30におけるパティキュレート堆積量が所定量に達したと判断したときに強制再生の制御が開始される。
この強制再生制御では、流入排気温度センサ32及び流出排気温度センサ33が検出した排気の温度に基づきフィルタ30の温度を推定し、フィルタ30の温度が低い場合には吸気制御弁12を閉方向に制御して排気温度を上昇させると共に、インジェクタ4から主噴射より遅角されたポスト噴射をエンジン1の膨張行程や排気行程で行い、フィルタ30に堆積したパティキュレートを焼却することが可能な温度までフィルタ30を昇温する。
【0037】
即ち、インジェクタ4からのポスト噴射によって排気中に供給されたHC(炭化水素)は酸化触媒28に達し、酸化触媒28でのHCの酸化反応によって更に温度が上昇した高温の排気がフィルタ30内に流入する。フィルタ30内に堆積しているパティキュレートは、このようにして高温となった排気により焼却され、フィルタ30が強制再生される。
このようなフィルタ30の強制再生が行われる際には、フィルタ30から流出する排気が高温であるため、このような排気の熱エネルギを有効利用することができるように、排気後処理装置26が構成されている。そこで、以下ではこの排気後処理装置26の構成について図2乃至7に基づき詳細に説明する。
【0038】
図2は、排気後処理装置26の軸線方向における断面図であるが、構成を分かり易くするため、流入排気温度センサ32、流出排気温度センサ33、上流側排気圧センサ34及び下流側排気圧センサ36は省略している。図2に示すように、排気後処理装置26は、筒状をなして酸化触媒28及びフィルタ30を収容した内側ケーシング46と、この内側ケーシング46を包含すると共に、内側ケーシング46から離間して設けられることによって内側ケーシング46との間に、内側ケーシング46の側壁部48に沿って空間を形成する外側ケーシング50とを備えている。
【0039】
なお、排気後処理装置26は、一般的な車両と同様に、車体の下面においてその下面が露出するように搭載されている。そして、車両が走行する際には図2の左方から右方に向けて走行風が流れ、排気後処理装置26の上部に比して下部の方が多くの走行風に接触するようになっている。
内側ケーシング46は、排気管20に接続されてエンジン1の排気が流入する排気流入部52と、流入した排気を流出させる排気流出部54とを有する。また、外側ケーシング50の上流側部分は、内側ケーシング46の排気流入部52に接続された排気管20を所定位置まで包含するように延長されており、内側ケーシング46と外側ケーシング50との間に形成される空間は、この排気管20の周囲まで延長されている。
【0040】
図3は、排気後処理装置26の外側ケーシング50を切り欠いた部分断面図であるが、図3に示すように排気後処理装置26には、外側ケーシング50と内側ケーシング46及び排気管20との間に形成された空間を、上流側から下流側にかけて第1流路56と第2流路58とに上下に分割する隔壁60が設けられている。また、内側ケーシング46の排気流入部52側となる隔壁60の端部には、第1流路56と第2流路58とを連通させる連通口(上流側連通手段)62が形成されている。
【0041】
内側ケーシング46のフィルタ30より下流側となる位置には、内側ケーシング46と第1通路56とを連通及び遮断可能な第1切換弁64が設けられており、フィルタ30を通過した排気が内側ケーシング46から第1流路56に流動する状態となる第1位置と、このような内側ケーシング46から第1流路56への排気の流動を遮断した状態となる第2位置とに選択的に第1切換弁64の開度位置を切り換え可能となっている。
【0042】
図4は図2中のIV−IV線に沿う断面図であるが、図4に示すように、第1切換弁64はバタフライバルブであって、その弁軸66がアクチュエータユニット38に連結されており、アクチュエータユニット38によって開度位置が第1位置と第2位置との間で切り換え可能となっている。
また、第1切換弁64より下流側となる位置の内側ケーシング46には、フィルタ30を通過した排気が排気流出部54から流出するのを遮断した状態となる第1位置と、フィルタ30を通過した排気が排気流出部から流出する状態となる第2位置とに選択的に開度位置を切り換え可能な第2切換弁68が設けられている。この第2切換弁68もバタフライバルブであって、第2切換弁68の弁軸70が、図4に示すようにアクチュエータユニット38に連結されており、アクチュエータユニット38によって開度位置が第1位置と第2位置との間で切り換え可能となっている。
【0043】
従って、第1切換弁64及び第2切換弁68が、本発明における流路切換手段に相当する。また、第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を共にそれぞれの第1位置とした状態が、流路切換手段の第1状態に相当すると共に、第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を共にそれぞれの第2位置とした状態が、流路切換手段の第2状態に相当する。
【0044】
このように設けた第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を、共にそれぞれの第1位置とすることにより、フィルタ30を通過した排気を排気流出部54から流出させることなく確実に第1流路56に流動させることができる。また、第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を、共にそれぞれの第2位置とすることにより、フィルタ30を通過した排気を第1流路56に流動させることなく確実に排気流出部54から流出させることができる。
【0045】
図5は図2中のV−V線に沿う断面図であるが、図5に示すように内側ケーシング46の中心軸は外側ケーシング50の中心軸より下方に偏倚している。そして、内側ケーシング46及び外側ケーシング50によって形成される空間を第1流路56と第2流路58とに上下に区分する隔壁60は、第1流路56の流路断面積と第2流路58の流路断面積とがほぼ同一となるような位置に設けられている。このため、隔壁60の位置は上下方向において内側ケーシング46の中心軸より上方となり、第1流路56内に露出する内側ケーシング46の側壁部48の面積は、第2流路58内に露出する内側ケーシング46の側壁部48の面積より大きくなっている。内側ケーシング56、外側ケーシング58及び隔壁60のこのような関係は、図2中のV−V線に沿う断面に限らず、酸化触媒28及びフィルタ30の収容部分を含む第1切換弁64の上流側部分までの内側ケーシング46のほぼ全域にわたって成立している。
【0046】
また、図6は図2中のVI−VI線に沿う断面図であるが、図6に示すように、外側ケーシング50に包含された排気管20についても、第1流路56内に露出する排気管20の側壁部分の面積の方が、第2流路58内に露出する排気管20の側壁部分の面積よりも大きく、且つ第1流路56の流路断面積と第2流路58の流路断面積とがほぼ等しくなるようになっている。
【0047】
第2流路58の下流側端部と排気流出部54の下流側端部とは、図2に示すように合流部72において合流しており、図2中におけるVII−VII線に沿う断面図である図7に示すように、第2流路58の下流側端部及びその近傍においては、第2流路58の流路断面積と排気流出部54の流路断面積とがほぼ等しくなっている。
以上のように構成された排気後処理装置26において、エンジン1の運転中に、ECU40はフィルタ30におけるパティキュレートの堆積状況に応じ、前述したようにしてフィルタ30の強制再生を行うと共に、強制再生の実行状況に対応してアクチュエータユニット38を制御することによる排気流路の切換制御を実行する。
【0048】
フィルタ30の強制再生を必要とするほどフィルタ30にパティキュレートが堆積しておらず、強制再生が行われない場合、ECU40は第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を、共にそれぞれの第2位置とするようにアクチュエータユニット38を制御する。即ち、排気管20から排気流入部52を介して内側ケーシング46内に流入したエンジン1の排気は、酸化触媒28及びフィルタ30を通過する。そして、フィルタ30を通過した排気は、第1切換弁64によって内側ケーシング46から第1流路56への流動が遮断されると共に、第2切換弁68によって排気流出部54からの流出が許容される。従って、エンジン1の排気は、酸化触媒28及びフィルタ30を通過する際に、パティキュレートがフィルタ30によって捕集されることにより浄化された後、排気流出部54から合流部72を経て排出される。
【0049】
このとき、排気中に含まれるNOが酸化触媒28の触媒作用によって酸化することによりNOが生成され、排気と共にフィルタ30に供給される。フィルタ30に供給されたNOは、前述したようにフィルタ30の連続再生の際に酸化剤として使用され、Nとなって排気と共に排気流出部54から合流部72を経て排出される。
このとき、外側ケーシング50が空間を形成しながら内側ケーシング46を包含しているので、内側ケーシング46から外気への放熱が抑制され、酸化触媒28及びフィルタ30の温度低下を良好に抑制することができる。従って、酸化触媒28によるNOの生成及びこのNOを酸化剤としたフィルタ30の連続再生が良好に行われる。
【0050】
一方、フィルタ30におけるパティキュレートの堆積量が増大し、フィルタ30の強制再生が必要になると、ECU40は前述したようにして排気温度を上昇させ、フィルタ30の強制再生を実行する。またECU40は、この強制再生に合わせ、第1切換弁64及び第2切換弁68の開度位置を、共にそれぞれの第1位置とするようにアクチュエータユニット38を制御する。
【0051】
即ち、排気管20から排気流入部52を介して内側ケーシング46内に流入し、酸化触媒28及びフィルタ30を通過した排気は、第2切換弁68によって排気流出部54からの流出が遮断されると共に、第1切換弁64によって内側ケーシング46から第1流路56への流動が許容される。従って、強制再生のために温度の上昇した排気は、フィルタ30を通過してフィルタ30に堆積しているパティキュレートを焼却した後、第1切換弁64を介して第1流路56内に流入する。フィルタ30を通過した排気は依然として高温であり、第1流路56内に流入した後に内側ケーシング46の側壁部48に沿って流動する際に、高温の排気の熱エネルギが内側ケーシング46を介して酸化触媒28及びフィルタ30に伝達される。この結果、酸化触媒28及びフィルタ30を高温に維持することが可能となり、フィルタ30の昇温のために行われるポスト噴射による燃料の供給量を減少させることができるので、エンジン1の燃費を改善することが可能となる。
【0052】
また、このようにして温度の上昇した排気の熱エネルギが内側ケーシング46を介して外側から酸化触媒28及びフィルタ30に伝達されることにより、酸化触媒28及びフィルタ30の径方向及び軸線方向における温度分布をより均一化することが可能となる。この結果、酸化触媒28におけるNOの生成を酸化触媒28のほぼ全領域にわたって効率良く行うことが可能となる。更に、フィルタ30内のパティキュレートの燃焼がほぼ全領域にわたってより一層均一化されるので、より効率的にフィルタ30の強制再生を行うことが可能となる。
【0053】
従って、フィルタ30の強制再生に要する時間を短縮することが可能となり、この点においてもフィルタ30を高温に維持するために費やされるポスト噴射の燃料量を減少することが可能となり、エンジン1の燃費を改善することができる。更に、このようにしてフィルタ30における温度分布がより均一化されてパティキュレートの燃焼が均一化することにより、強制再生時のパティキュレートの燃え残りが減少し、より一層良好にフィルタ30を再生することが可能となる。
【0054】
また、外側ケーシング50の上流側部分は、内側ケーシング46の排気流入部52に接続された排気管20を所定位置まで包含するように延長されており、内側ケーシング46と外側ケーシング50との間に形成される空間は、この排気管20の周囲まで延長されている。そして、第1流路56と第2流路58とは、第1流路56において下流側となる隔壁60の端部側に形成された連通口62を介して連通されているので、第1流路56に流入した高温の排気は第1流路56内を内側ケーシング46の側壁部48に沿って流動した後、内側ケーシング46の排気流入部52に接続されて外側ケーシングに包含された排気通路20に沿って第1流路56内を流動する。
【0055】
従って、強制再生により高温となった排気の熱エネルギは、排気管20から内部ケーシング46内に流入する排気にも排気管20を介して伝達されるので、上述したような酸化触媒28やフィルタ30に対する排気の熱エネルギの伝達だけではなく、内部ケーシング46に流入する排気の温度低下を抑制することによっても酸化触媒28及びフィルタ30を高温に維持することが可能となる。この結果、フィルタ30の強制再生をより一層効率的に行うことが可能となる。
【0056】
また、前述したように、車両走行時には走行風が排気浄化装置26の下面に比較的多く接触するが、第1流路56が第2流路58より下方に位置するので、フィルタ30を通過した高温の排気は、まず内側ケーシング46の側壁部48のうち下方部分に沿って流動することになる。このとき第1流路56内においては上方となるほど排気の温度が高くなるので、走行風による放熱の影響を低く抑えながら、高温の排気の熱エネルギによってフィルタ30を高温に維持することが可能となる。
【0057】
また図5に示すように、第1流路56内に露出する内側ケーシング46の側壁部48が排気と接触する面積の方が、第2流路58内に露出する内側ケーシング46の側壁部48が排気と接触する面積よりも大きいので、第1流路56内を流動する高温の排気の熱エネルギを、効率良く内側ケーシング46内の酸化触媒28及びフィルタ30に伝達することができる。これは外側ケーシング50に包含された排気管20についても同様であり、第1流路56内を流動する高温の排気の熱エネルギを、効率良く排気管20内の排気に伝達することができる。
【0058】
なお、第1流路56内を流動した排気は、隔壁60に形成された連通口62を介して第2流路58内に流入し、合流部72を経て排気後処理装置26から排出される。
ここで、第1流路56の流路断面積及び第2流路58の流路断面積は、排気管20から内側ケーシング46の第1切換弁64より上流側となるまでの部分においてほぼ等しくなっているので、排気が第1流路56を流動する際の流動抵抗と、第2流路58を流動する際の流動抵抗をほぼ同一にすることができ、排気の圧力損失を低く抑えることが可能となる。
【0059】
以上で本発明の一実施形態に係る排気浄化装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態ではフィルタ30の強制再生の際に、第1切換弁64及び第2切換弁68を、共にそれぞれの第1位置とすることにより、フィルタ30を通過した排気を第1流路56に流入させるようにしたが、フィルタ30の強制再生を行っていないときにも、必要に応じて排気を第1流路56に流入させ、第1流路56内の排気の熱エネルギを酸化触媒28及びフィルタ30に伝達することにより、酸化触媒28及びフィルタ30の温度低下を抑制するようにしてもよい。
【0060】
また、フィルタ30の強制再生を行っていないときに、酸化触媒28の活性化やフィルタ30の昇温などの目的で排気温度を上昇させたい場合に、第1切換弁64を第2位置とすると共に第2切換弁68を第1位置として排気の流路を閉塞し、合流部72からの排気の流出を遮断するようにしてもよい。
更に、上記実施形態では、第1切換弁64及び第2切換弁68により本発明の流路切換手段を構成するようにしたが、フラップ弁などの単一の切換弁により流路切換手段を構成するようにしてもよいし、第2切換弁68は排気ブレーキ装置と併用するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、フィルタ30の上流側に酸化触媒28を配設したが、酸化触媒に代えてNOx吸蔵触媒など別の触媒を用いるようにしてもよいし、酸化触媒28などのフィルタ30に酸化剤を供給するための触媒或いはこれに代わるものを別置きとし、内側ケーシング46内にはフィルタ30のみを収容するようにしてもよい。更に、排気後処理装置26の下流側に更に別の排気後処理装置を設けるようにしてもよい。
【0062】
また、フィルタ30の強制再生の方法は上記実施形態に採用した方法に限定されるのではなく、一般的に知られている様々な方法を採用することが可能である。
また、上記実施形態では、第1流路56が第2流路58より下方となり、第1流路56内に露出する内側ケーシング46の側壁部48の面積が、第2流路58内に露出する内側ケーシング46の側壁部48の面積よりも大きくなると共に、第1流路56の流路断面積及び第2流路58の流路断面積がほぼ等しくなるように、内側ケーシング46、外側ケーシング50及び隔壁60の関係を定めることにより、上述したそれぞれの効果を得るようにしたが、内側ケーシング46、外側ケーシング50及び隔壁60の関係はこれに限定されるものではなく、それぞれ対応する効果の要否を考慮しながら必要に応じて適宜変更することが可能である。
【0063】
更に、上記実施形態では、内側ケーシング46の排気流入部52に接続された排気管20を所定位置まで包含するように、外側ケーシング50の上流側部分を延長したが、排気管20については包含せず、内側ケーシング46のみを外側ケーシング50で包含するようにしてもよい。この場合、排気後処理装置26に流入する排気の温度低下を排気管20側で抑制することはできないが、第1流路56内を流動する高温の排気により酸化触媒28及びフィルタ30を高温に維持することは上記実施形態と同様に可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、エンジン1を車両に搭載された4気筒のディーゼルエンジンとしたが、エンジン1の気筒数及び形式はこれに限定されるものではなく、また車両以外に使用されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置が適用されたエンジンの全体構成図である。
【図2】図1の排気後処理装置の軸線方向における断面図である。
【図3】図1の排気後処理装置の外側ケーシングを切り欠いた部分断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2中のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2中のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図2中のVII−VII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
20 排気管(排気通路)
26 排気後処理装置
30 パティキュレートフィルタ
40 ECU(制御手段)
46 内側ケーシング
48 側壁部
50 外側ケーシング
52 排気流入部
54 排気流出部
56 第1流路
58 第2流路
60 隔壁
62 連通口
64 第1切換弁(流路切換手段)
68 第2切換弁(流路切換手段)
72 合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に介装され、上記エンジンの排気が流入する排気流入部と、流入した上記排気を流出させる排気流出部とを有する内側ケーシングと、
上記内側ケーシング内に収容され、上記排気流入部から流入した排気中に含まれるパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、
上記内側ケーシングを包含すると共に、上記内側ケーシングから離間して設けられることにより上記内側ケーシングとの間に、上記内側ケーシングの側壁部に沿って空間を形成する外側ケーシングと、
上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記内側ケーシングの上記側壁部に沿い上流側から下流側にかけて第1流路と第2流路とに分割する隔壁と、
上記パティキュレートフィルタの下流側に設けられ、上記パティキュレートフィルタを通過した排気を上記第1流路に流動させる第1状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気を上記排気流出部から流出させる第2状態とのいずれか一方に選択的に切り換え可能な流路切換手段と、
上記第1流路において下流側となる上記隔壁の端部側に設けられ、上記第1流路と上記第2流路とを連通させる連通手段と、
上記第2流路の下流側端部と上記排気流出部の下流側端部とを合流させる合流部と
を備えることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
上記パティキュレートフィルタの強制再生時には、上記第1状態となるように上記流路切換手段を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
上記流路切換手段は、
上記パティキュレートフィルタより下流側となる位置の上記内側ケーシングに設けられて上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記第1流路に流動する状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記第1流路への流動を遮断する状態とに選択的に切り換え可能な第1切換弁と、
上記第1切換弁より下流側となる位置の上記内側ケーシングに設けられ、上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記排気流出部から流出する状態と、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記排気流出部からの流出を遮断する状態とに選択的に切り換え可能な第2切換弁と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
上記パティキュレートフィルタの強制再生時には、上記パティキュレートフィルタを通過した排気が上記第1流路に流動する状態に上記第1切換弁を制御すると共に、上記パティキュレートフィルタを通過した排気の上記排気流出部からの流出を遮断する状態に上記第2切換弁を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
上記エンジン及び排気浄化装置は車両に搭載され、
上記隔壁は、上記第1流路が上記第2流路より下方に位置するように、上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記内側ケーシングの上流側から下流側にわたって上下に分割することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
上記隔壁は、上記第1流路内に露出する上記内側ケーシングの側壁部の面積の方が、上記第2流路内に露出する上記内側ケーシングの側壁部の面積よりも大きくなるように、上記内側ケーシングと上記外側ケーシングとの間に形成された空間を分割することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
上記内側ケーシング、上記外側ケーシング及び上記隔壁は、上記第1流路の流路断面積と上記第2流路の流路断面積とがほぼ等しくなるように相互の位置が定められていることを特徴とする請求項6に記載の排気浄化装置。
【請求項8】
上記外側ケーシングは、上記内側ケーシングの上記排気流入部に接続された排気通路の少なくとも一部を上記内側ケーシングと共に包含し、
上記隔壁は、上記内側ケーシング及び上記排気通路と上記外側ケーシングとの間に形成された空間を、上記第1流路と上記第2流路とに分割する
ことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−103033(P2009−103033A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275042(P2007−275042)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】