説明

排水の処理方法及び装置

【課題】本発明は、生物処理の後に固液分離を行う排水処理方法において、より効率的に活性汚泥の固液分離を行うことのできる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】かかる目的を達成するために、本発明は、排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理方法であって、原水を生物反応槽に流入させて生物処理を行い、次に生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入して、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させ、該通水性濾過体より濾過水を得ることを特徴とする排水の処理方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理に関し、より詳しくは、活性汚泥の固液分離や余剰汚泥の濃縮等に関するものであり、具体的には、有機性工業廃水や生活排水等の処理に用いることができる活性汚泥の固液分離を含む排水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥法による水処理では、処理水を得るためには、活性汚泥の固液分離を行わなければならない。通常、このためには、活性汚泥を沈殿池に導入して、重力沈降によって汚泥を沈降させ、上澄液を処理水として沈殿池から流出される方法が用いられていた。しかしながら、この方法においては、活性汚泥を沈降させるために十分な沈降面積及び滞留時間を有する沈殿池が必要であり、処理装置の大型化と設置容積の増大要因となっていた。また、活性汚泥が、バルキング等で沈降性が悪化した場合には、沈殿池から汚泥が流出して処理水の悪化を招いていた。
【0003】
近年、沈殿池に代わって、膜分離によって活性汚泥の固液分離を行う手法も用いられている。この場合、固液分離用膜としては、一般的に精密濾過膜や限外濾過膜が用いられている。しかしながら、この方法では、濾過分離主眼として、ポンプによる吸引や加圧が必要であり、通常、数十〜数百kPaの圧力で濾過を行うため、ポンプによる動力が大きく、ランニングコストの増大要因となっていた。また、膜分離でSS(懸濁物質)の全くない清澄な処理水が得られる一方で、透過フラックスが低く、膜汚染を防止するために定期的に薬洗する必要があった。
【0004】
更に最近、沈殿池に代わる活性汚泥の固液分離法として、曝気槽に不織布等の通気性シートからなる濾過体を浸漬させ、低い水頭圧で濾過水を得る方法が提案されている。かかる方法の概念を図1に示す。提案されている方法によれば、生物反応槽201内に、曝気用の散気管202及び濾過体204を配置し、更に濾過体の空洗用の散気管203を濾過体の下方に配置する。生物反応処理時(濾過運転時)には、原水供給管205より処理原水を生物反応槽201内に供給すると共に、散気管202から空気等を曝気することにより、槽内の活性汚泥による生物処理を行い、処理液を濾過体204で濾過して処理水(濾過水)を排出管206より取出す。この際、散気管202による曝気によって、生物反応槽201内には、濾過体表面において下向流となる活性汚泥混合液のクロスフロー流が生じる(図1a)。このクロスフロー流によって、濾過体204の表面に活性汚泥のダイナミック濾過層が形成され、形成されたダイナミック濾過層によって活性汚泥混合液が濾過され、排出管206より取出される。そして、濾過体204の表面に形成された濾過層が圧密化し、濾過抵抗が増大して濾過水量が低下してきたら、散気管202からの曝気を止め、散気管203より空気を散気することにより、濾過体表面の濾過層を空洗除去する(図1b)。この方法によれば、濾過体表面に形成された汚泥のダイナミック濾過層による分離によって、清澄な濾過水が得られる。ここで、「汚泥のダイナミック濾過層」とは、濾過の進行により濾過体表面に形成される活性汚泥粒子の付着物層である。この方式において用いられる濾過体の濾過媒体は、実質的には活性汚泥粒子よりも大きな孔径を有していて粒子を通過させるものであるが、濾過の駆動圧が小さい条件下においては、濾過媒体の表面に活性汚泥粒子の付着物層(汚泥のダイナミック濾過層)が形成され、このダイナミック濾過層によって活性汚泥粒子の通過を阻止することができるようになるのである。この方式の濾過体としては、通常、不織布、織布、金網などが用いられている。ダイナミック濾過層を用いる方法においては、濾過媒体の表面に濾過層としての活性汚泥粒子の付着物層を活性汚泥の濾過に適当な厚さ及び圧密度等となるように均一に且つ効率的に形成させることが、活性汚泥粒子の通過を確実に阻止して良好な水質の処理水を安定に得る上で重要である。提案されている方法においては、ダイナミック濾過層の形成手法としては、濾過体表面を流通する活性汚泥流速を平均0.05〜0.4m/s、好ましくは0.15〜0.25m/sに制御することが規定されている。提案されている方法では、濾過体表面流速が0.2m/sにおいては、濾過フラックスが約2m/dで、濾過継続時間が2.5h以上となっているのに対して、濾過体表面流速0.03m/sにおいては、濾過フラックスは、初期は4.1m/dであるが、45分後には3.3m/dまで低下し、短時間で濾過フラックスが低下するとされている。
【0005】
また、生物反応槽内及び最終沈殿池内の少なくとも一方に、濾過体を浸漬配置して、後続槽との水頭圧差によって濾過体の流出口を介して濾過体から処理済水を引き抜くという活性汚泥法による汚水処理装置が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案されている方法においては、次のような問題点があった。即ち、提案されている方法においては、濾過体表面での汚泥混合液の流れは、曝気によって槽内を循環する流れを引き起こすことによって形成される。しかしながら、この方法では濾過体表面での流速が一様でないため、濾過体表面に均一な汚泥のダイナミック濾過層を形成することができず、汚泥が濾過体表面に堆積しやすい。更に、生物反応槽の水位が流入水量及び曝気風量によって変動するため、濾過体への水頭圧が一定でなく、濾過水量が変化し、安定した水量が得られない。水頭圧が不安定で、極端に高くなった場合には、濾過体表面に形成される汚泥ダイナミック濾過層の通水性能が低下し、濾過フラックスの急激な低下を招く恐れがある。その結果、洗浄頻度が高くなり、洗浄後のフラックス回復率も低くなる。更に、生物反応槽に流入する原水中のBOD(生物学的酸素消費量)等の有機汚濁物が僅かでも残留した場合には、それが濾過体に直接付着して、濾過体表面に生物膜が成長し、濾過水量を著しく低下させる原因となる。
【0007】
また、濾過体を最終沈殿池に浸漬した場合には次のような問題点がある。即ち、汚泥の重力沈降を利用した最終沈殿池においては、底部に濃縮汚泥が堆積し、上部より上澄水が得られることからも分かるように、沈殿池内部の汚泥濃度が均一ではない。このため、濾過体浸漬部の汚泥濃度が不均一となり、良好なダイナミック濾過層の形成が不可能で、安定した処理水を得ることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
更に、本発明者らは、活性汚泥混合液のダイナミック濾過層による濾過方法において、濾過体の濾過フラックスと表面流速との関係を詳細に検討した結果、濾過体表面の流速を0.05〜0.4m/s、特に、好ましいとされていた0.15〜0.25m/sとした場合には、濾過体表面の汚泥流動が激しく、汚泥の均一なダイナミック濾過層の形成が困難であり、有効な濾過面積も得られず、更にこの場合には微細な汚泥フロックによる濾過体表面の閉塞が早く、空洗や水洗を行っても効果が少なくなってしまうという知見を得た。そして、濾過体の洗浄直後においては、表面流速は0.05m/s未満とすることにより安定したダイナミック濾過層が5分以内と極めて短時間で形成され、その場合、濾過フラックスは5m/d以上を4時間以上継続でき、更に表面流速が0.05m/s未満の条件では、濾過体表面に形成されたダイナミック濾過層が空洗のみで容易に剥離することができることが見出された。
【課題を解決する手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題点を鑑みてより効率的に活性汚泥混合液の固液分離を行う方法を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、原水を生物反応槽に流入させて生物処理した後に、生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入し、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させながら濾過水を得ることによって、極めて効率的に活性汚泥の固液分離を行うことができることを見出した。また更に、通水性濾過体表面に対する活性汚泥混合液の移動速度を平均0.05m/s未満にすることによって、通水性濾過体表面へ汚泥のダイナミック濾過層を安定して形成することができることも見出された。更には、固液分離槽内に整流装置を配置して、活性汚泥混合液が、整流装置で整流された後に通水性濾過体表面を通過するようにすることによって、固液分離が更に効率よく進行することを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0010】
即ち、本発明は、次の構成からなるものである。
1.排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理方法であって、原水を生物反応槽に流入させて生物処理を行い、次に生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入して、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させ、該通水性濾過体より水頭圧で濾過水を得ることを特徴とする排水の処理方法。
【0011】
2.排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理方法であって、原水を生物反応槽に流入させて生物処理を行い、次に生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入して、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させ、該通水性濾過体の透過側をポンプで吸引することにより濾過水を得ることを特徴とする排水の処理方法。
【0012】
3.通水性濾過体表面に対する活性汚泥混合液の移動速度が平均0.05m/s未満であることを特徴とする上記第1項又は2項に記載の方法。
4.固液分離槽内に整流装置を設置し、活性汚泥混合液が、整流装置を通過した後に通水性濾過体表面を通過するようにしたことを特徴とする上記第1項〜第3項のいずれかに記載の方法。
【0013】
5.排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理装置であって、原水を流入させて生物処理を行う生物反応槽、通水性濾過体が浸漬配置されていて、生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽を具備し、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層が形成され、通水性濾過体より水頭圧で濾過水が得られるように構成されていることを特徴とする排水の処理装置。
【0014】
6.排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理装置であって、原水を流入させて生物処理を行う生物反応槽、通水性濾過体が浸漬配置されていて、生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽を具備し、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層が形成され、通水性濾過体の透過側をポンプで吸引することにより濾過水が得られるように構成されていることを特徴とする排水の処理装置。
【0015】
7.固液分離槽内に整流装置が設置されており、活性汚泥混合液が整流装置を通過した後に通水性濾過体表面を通過するように構成されていることを特徴とする上記第5項又は第6項に記載の装置。
【0016】
本発明によれば、生物反応槽の後段に固液分離槽を設置して、該固液分離槽に通水性濾過体を浸漬配置することにより、従来の方法よりも少ない濾過圧で清澄な濾過水を得ることができる。
【0017】
本発明の方法においては、濾過体から濾過水を得るための駆動圧としては、水頭圧及びポンプによる吸引圧のいずれを用いることもできる。水頭圧による濾過では、自然重力による濾過駆動圧であるので動力が不要であると共に、ダイナミック濾過層が形成される低い濾過圧を容易に構築することができるという利点がある反面、濾過層の圧密化による濾過水量の低下が起こり易いという欠点がある。これに対して、ポンプ吸引圧による濾過では、動力が必要であること、及びダイナミック濾過層が形成される低い濾過圧を安定して維持することが難しいという欠点がある反面、濾過水量の低下が起こりにくいという利点がある。本発明においては、両者の欠点と利点とを考慮の上でいずれか好ましい方法を採用することができる。
【0018】
本発明において用いることのできる通水性濾過体としては、不織布、濾布、金属網等の従来技術において公知の通水性濾過体のいずれを用いても同様の効果を得ることができる。また、濾過体の形状も、平面型、円筒型、中空型等の従来技術において公知の任意の形状を用いることができ、複数個を束ねてモジュール濾過体として用いることも可能である。
【0019】
なお、本発明においては、通水性濾過体の表面に安定にダイナミック濾過層を形成させるためには、固液分離槽内に導入される汚泥混合液の濾過体表面に対する平均流速を0.05m/s未満とすることが好ましい。このようにすることにより、汚泥混合液が濾過体表面を下向流及び上向流の何れで通過しても、濾過体表面に良好なダイナミック濾過層を容易に形成することができる。また、汚泥混合液の濾過体表面に対する平均流速を0.05m/s未満とすることにより、濾過フラックスの低下が少なく、高いフラックスが安定して得られることから、固液分離槽の容積を従来の沈殿池よりも大幅に小さくすることができ、処理装置をコンパクトにすることが可能になる。なお本発明においては、例えば、固液分離槽内で処理された汚泥混合液(濃縮汚泥混合液)を、固液分離槽内における汚泥混合液の導入箇所の反対側でポンプなどによって取出すことによって、汚泥混合液の濾過体表面に対する一定方向の流れを形成することができる。例えば、生物処理槽で処理された活性汚泥混合液を、固液分離槽の上部から固液分離槽内に導入する場合には、固液分離槽の底部より、濃縮汚泥混合液をポンプなどで取出すことにより、汚泥混合液の濾過体表面に対する一定方向の流れを形成することができる。したがって、汚泥混合液の濾過体表面に対する流速は、固液分離槽からの汚泥混合液取出し速度などを制御することによって調節される。取出された濃縮汚泥混合液は、生物反応槽や汚泥濃縮槽、汚泥消化槽等に返送したり、余剰汚泥として取出したりすることができる。
【0020】
なお、濾過体表面を通過する汚泥混合液の平均流速が、汚泥粒子の沈降速度以下である場合には、汚泥混合液は、濾過体表面に対して下向流、即ち固液分離槽の上部から下部に向かって導入することが好ましい。このように構成すれば、流入汚泥が沈降しても、必ず濾過体表面を通過するので、良好な汚泥ダイナミック濾過層が形成される。
【0021】
また、本発明の更に好ましい態様においては、固液分離槽の内部に整流装置を設置し、活性汚泥混合液が、整流装置を通過した後に濾過体表面を通過するように構成することが好ましい。このような構成とすると、固液分離槽内の流れ方向が一定となり、濾過体表面に汚泥のダイナミック濾過層を均一に形成することができる。
【0022】
なお、本発明にかかる装置においては、固液分離槽の濾過体下部に洗浄装置を設置することが好ましい。この洗浄装置を用いて、定期的に濾過を停止して濾過体を洗浄することにより、濾過体表面に形成された汚泥層を容易に剥離することができる。洗浄方法としては、空洗及び水洗の一方又は両方を用いることができる。なお、空洗時の空気気泡の上昇流速は、少なくとも0.2m/sとなるように空洗風量の調整を行うことが好ましい。濾過モジュール下部に設置する空洗管としては、従来の散気管よりも通気孔の大きな多孔管が望ましい。多孔管を用いれば、同等の曝気量で散気管よりも高い上昇速度を得ることができ、上昇気泡も大きいため、濾過体表面の汚泥層を容易に剥離することが可能である。なお、多孔管の通気孔径は2mm以上であることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる装置においては、濾過体表面に汚泥のダイナミック濾過層が形成されるまでの間に濾過モジュール内に汚泥が侵入する。このため、濾過モジュール内部の汚泥の堆積を無くすために、定期的に排泥を行うことが望ましい。この排泥方法としては、濾過モジュール下部より内部に貫通する排泥管を設け、排出汚泥を生物反応槽に導入するように接続することが好ましい。なお、排出動力としては水頭圧による自然流下が好ましく、排出の水頭圧は濾過の水頭圧と同程度にすることが好ましい。しかしながら、特に濾過駆動圧としてポンプを用いる場合などには、汚泥排出の排出動力としてポンプを用いることもできる。
【0024】
また、本発明にかかる装置においては、固液分離槽で形成される濃縮汚泥を生物反応槽に返送することが好ましい。このようにすると、生物反応槽でのBOD負荷を適切に管理することができ、安定した生物処理を行うことが可能になる。なお、活性汚泥混合液は、濾過体表面に沿って通過するにしたがって徐々に濾過水が濾過されて濃縮される。このようにして形成される濃縮汚泥混合液を、返送汚泥として生物反応槽に返送することが好ましい。また、固液分離槽の上部から汚泥を下向流で流入させる場合には、固液分離槽の下部より濃度の高い汚泥混合液を返送汚泥として生物反応槽に返送することが好ましい。
【0025】
上記に説明するように、本発明にかかる装置は、生物処理槽と固液分離槽とを具備するものであるが、これらの槽は、例えば下記の実施例1及び図2に示すように、単一の槽を隔壁で区切ることによって二つの槽を形成し、隔壁の底部に開口を設けることによって両槽を液体連絡させることによって構成してもよいし、或いは例えば下記の実施例2及び図7に示すように、二つの槽を別々に形成し、これらを配管で接続することによって構成してもよい。
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載において、CODMnは100℃における過マンガン酸カリウムによる化学的酸素消費量;S−CODMnは100℃における過マンガン酸カリウムによる溶解性化学的酸素消費量;BODは5日間における生物化学的酸素消費量;S−BODは5日間における溶解性の生物化学的酸素消費量である。
【0027】
実施例1
図2に、団地下水に対する本発明による排水処理法の一例をフローシートで示す。図2に示されている装置は、生物反応槽2と固液分離槽6とが一体に形成されていて、生物反応槽2と固液分離槽6とは、隔壁15によって分離され、隔壁15の底部に開放された開口4によって液体連絡している。流入原水1は、まず生物反応槽2に導入される。生物反応槽2では、ブロワー3によって散気管13を通して空気が供給され、槽内に収容されている活性汚泥中の微生物の作用によって好気処理が行われる。生物反応槽2から流出する活性汚泥液は、隔壁15の底部に形成されている開口4を通して固液分離槽6の底部に供給される。固液分離槽6内には、通水性濾過体7が配置されており、通水性濾過体の下部に整流装置5が配置されている。開口4を通過した活性汚泥液は、整流装置5の底部に供給される。整流装置5を通過した活性汚泥混合液は、固液分離槽6内で均一に上向流で流れて、通水性濾過体7によって固液分離される。処理水9は、水頭圧差によって通水性濾過体7の取水管8より得られる。濾過体7の洗浄は、定期的に濾過を停止して、整流装置の下部に設置された洗浄装置10から散気管14を通して空気を吹き込むことによって行う。固液分離槽6内の濃縮汚泥混合液は、濃縮汚泥混合液返送ポンプ11によって生物反応槽2に返送される。なお、余剰汚泥は、排泥管12より定期的に系外に排出される。
【0028】
図2に示すシステムを用いて行った排水処理実験における、生物反応槽2の処理条件を下表1に、固液分離槽6の処理条件を下表2に、それぞれ示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1に示すように、生物反応槽2への原水流入量を10m3/dとし、固液分離槽6からの濃縮汚泥混合液返送量を5m3/dとした。また、生物反応槽2でのMLSSを約2500mg/Lとした。この場合、槽全体のBOD負荷は約0.15kg/kg.dであった。
【0032】
生物反応槽2からの混合液を隔壁15底部の開口(即ち生物反応槽出口)4において採取し、その処理液の残留BODを測定したところ,生物反応槽2において、流入原水1のBODがほぼ完全に分解除去され、固液分離槽6に流入する活性汚泥混合液中に未分解BODの残留が全くないことが分かった。このため、固液分離槽6において、濾過分離に伴う濾過体表面の生物汚染を抑制することが可能であった。この結果、濾過体寿命が長くなり、安定した濾過水量を長期間において確保することができた。なお、上述の処理効果を得るためには、生物反応槽2のBOD負荷を0.3kg/kg.d以下とするのが好ましい。また、嫌気・好気法、硝化脱窒法等のBODだけを除去する方法でなく、N,Pも除去する生物学的方法を利用することもできる。
【0033】
表2に示されるように、本実施例での固液分離処理には、有効面積0.04m2、有効容積0.06m3の固液分離槽6を用いた。通水性濾過体7としては、厚さ0.4mm、目開き20〜30μmのポリエステル製不織布より作成した有効面積0.4m2の平面形不織布濾過体8枚を濾過体モジュールとして固液分離槽6内に設置した。濾過時の平均水頭圧を約10cmとした。濾過水量は10m3/d、濾過体表面の活性汚泥混合液流速は約0.006m/sとなった。また、濾過6時間毎に、3分間濾過を停止して、洗浄機10より空気を曝気することによって濾過体の洗浄を行った。曝気量は、洗浄時の空気気泡の濾過体表面流速が平均0.5m/sとなるように調節した。
【0034】
このような条件で約2カ月間、排水の連続処理を行った後の処理水の水質を、原水の水質と合わせて下表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3に示されるように、原水が、pH=7.1、濁度=150度、SS=86mg/Lであるのに対して、処理水では、pH=7.6、濁度=5.0度、SS=4.6mg/Lとなり、不織布濾過体上に形成された汚泥のダイナミック濾過層によって得られた濾過水が清澄であると認められた。また、CODMnとS−CODMn,BODとS−BODについては、原水ではそれぞれ75mg/Lと42mg/L、110mg/Lと65mg/Lであるのに対して、処理水ではそれぞれ12.5mg/Lと11.0mg/L、6.3mg/Lと5mg/L以下であり、処理水質も良好であると認められた。
【0037】
実施例1における濾過フラックスの経時変化を図3に示す。図3から明らかなように、約1500時間の連続処理において、平均濾過フラックスが約3.2m/dで、安定した処理が得られた。また、図4に処理水の濁度変化を示す。図4より、約1500時間の連続処理において、処理水の濁度が常時5度前後であり、大きな変動が見られず、汚泥のダイナミック濾過層が安定して形成され、安定した処理水質が得られたことが分かる。
【0038】
比較例1
実施例1と同様の処理装置を用い、固液分離槽6からの濃縮汚泥混合液の生物処理槽2への返送量を85m3/dとすることによって濾過体表面の汚泥混合液の流速を実施例1と比べて約17倍速い0.1m/sとした以外は、実施例1と同様の条件で排水の連続処理実験を行った。
【0039】
比較例1における濾過フラックスの経時変化を図5に、処理水の濁度変化を図6に示す。図5に示すように、濾過体表面の汚泥混合液流速を0.1m/sとした場合には、濾過フラックスが処理開始時においても2.7m/dしかなく、汚泥混合液流速が0.006m/dである実施例1と比べると約10%以上低い。更に、比較例1においては、時間の経過と共に濾過フラックスの低下が速く、約170時間後に濾過フラックスが2m/d以下となり、約500時間後では1m/d以下になった。処理時間500時間より、濾過体に対する洗浄の間隔を、濾過6時間毎に3分間の空洗から、濾過2時間毎に3分間の空洗に短縮したが、濾過フラックスの増加は見られず、徐々に低下した。これらの結果から、濾過体表面に対する汚泥混合液の流速が0.05m/s以上の場合には、濾過体表面に微細汚泥付着に伴う濾過フラックスの低下が認められた。また、洗浄頻度を高くしても濾過フラックスの保持には全く効果がなかったことから、これらの付着汚泥によって目詰まりを起こして濾過体孔径が閉塞される可能性が高いと考えられる。
【0040】
また、図6に示されるように、濾過水濁度は処理開始200時間後までは10度以上と高く、濾過体表面に汚泥のダイナミック濾過層が良好に形成されていないと考えられる。なお、濾過水濁度が200時間後に徐々に低下したのは、濾過体の目詰まりに伴って濾過フラックスが低下して、濾過体内部への汚泥侵入も少なくなったためであると考えられる。
【0041】
実施例2
図7に、団地下水に対する本発明の他の態様に係る排水処理法をフローシートで示す。流入原水101は、まず生物反応槽102に導入され、槽内に収容されている活性汚泥中の微生物の作用によって好気処理が行われる。生物反応槽102からの流出液は、ライン103を通して、汚泥静置槽104に流下する。汚泥静置槽104においては、撹拌機105によって緩速撹拌しながら、汚泥のフロック形成及び均一化が行われる。汚泥静置槽104から汚泥混合液が汚泥供給ポンプ106によって固液分離槽107の上部に供給される。汚泥混合液は、固液分離槽107内に配置されている濾過モジュール108によって濾過され、濾過モジュール上部の取水管より濾過水112が得られ、電磁弁111を通して処理水槽113に流入する。処理水槽113内の処理水は排水管123を通して適宜系外に排出される。なお、固液分離槽107の通過汚泥は、返送汚泥118として、固液分離槽107の底部から取出されて生物反応槽102に返送される。濾過時の濾過モジュールに対する水頭圧は、濾過水位調整弁109を上下させ、電磁弁110を開放することによって設定することができる。濾過モジュール外部の空洗は、通常、電磁弁111を閉じ、空洗ブロワー119を起動させて、電磁弁121を閉じ、電磁弁122を開放することにより、散気管120へ送気することによって行う。また、濾過モジュール内部の空洗は、電磁弁122を閉じ、電磁弁121を開放した状態でブロワー119より送気することにより行う。また、濾過モジュール内部の水逆洗は、電磁弁110及び111を閉じ、電磁弁115を開放した状態で水逆洗ポンプ116を起動させて、処理水槽の濾過水を濾過モジュール上部からモジュール内部に導入することによって行う。濾過モジュール内部を通過した水逆洗排水は、モジュール下部の排出管から電磁弁115を通して汚泥静置槽104に排出される。なお、水逆洗排水の水位は、水位調節弁114を調節して、逆洗の水頭圧が濾過の水頭圧と同等になるように設定する。このように、空洗→水逆洗→水逆洗排水排出→濾過の順に電磁弁を切り替えることによって、運転を自動化することができる。
【0042】
図7に示すシステムを用いて排水処理の連続運転実験を行った。生物反応槽102の処理条件は、実施例1と同様とした。下表4に、固液分離槽107の処理条件を示す。
【0043】
【表4】

【0044】
本実施例では、濾過モジュールとして有効面積1mの平面形織布濾過体を5枚セットにしたものを固液分離槽117に設置した。織布の素材としては、ポリエステル製の厚み0.1mm、200meshで孔径約72μmのものを用いた。濾過時の水頭圧及び水逆洗排水時の水頭圧を共に10cmとし、活性汚泥混合液が濾過モジュール表面を通過する平均流速を0.01m/sとした。濾過モジュール外部空洗時の空洗風量は150L/min、内部空洗時の空洗風量は30L/minとした。また、水逆洗時の水量は140L/minとした。
【0045】
下表5に、連続運転のタイムチャートを示す。濾過モジュールに対する洗浄は、濾過120分毎に、空洗3分、水逆洗30秒、水逆洗排水排出2分のサイクルで連続運転した。なお、空洗は、通常、濾過モジュール外部への曝気によって行い、濾過モジュール内部の空洗は50サイクル中1回の頻度で行った。
【0046】
【表5】

【0047】
実施例2における濾過モジュールの濾過フラックスの経時変化を図8に示す。図8から明らかなように、約1500時間の連続処理において、濾過モジュールの平均濾過フラックスが約3m/d前後で、安定した処理が得られた。また、図9に処理水の濁度変化を示す。図9より、約1500時間の連続処理において、処理水の濁度がおよそ5度前後であり、大きな変動が見られなかったことから、濾過モジュールにおいて汚泥のダイナミック濾過層が安定して形成され、良好な処理水質が安定して得られたと認められた。
【産業上の利用の可能性】
【0048】
本発明によれば、生物反応槽の後段に固液分離槽を設置し、該固液分離槽内に通水性濾過体を浸漬配置したことにより、少ない濾過圧で清澄な濾過水を得ることができる。また、本発明の好ましい態様においては、活性汚泥混合液を濾過体表面に沿って0.05m/s未満の流速で一定方向に流れるので、良好な汚泥のダイナミック濾過層が容易に形成されると共に、濾過フラックスの低下が少なく、高いフラックスが安定して得られるため、固液分離槽の容積を従来の沈殿池よりも大幅に小さくすることができ、処理装置をコンパクトにすることが可能となる。更に、本発明の好ましい態様においては、固液分離槽内に整流装置を設置して、活性汚泥混合液が整流装置を通過した後に濾過体を通過するようにしているので、固液分離槽内における活性汚泥混合液の平均速度が均一で、濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過槽が均一に形成される。更に、本発明の好ましい態様においては、濾過体の下部に洗浄装置を設けることにより、定期的に濾過を停止して洗浄を行うことによって、濾過体表面に形成された汚泥槽を容易に剥離することができる。更に、本発明の好ましい態様においては、固液分離槽から濃縮汚泥を生物反応槽に返送することにより、生物反応槽のBOD負荷を適切に管理することができ、安定した生物処理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来技術の活性汚泥混合液の固液分離法の概念を示す図である。
【図2】本発明に係る排水の処理方法の一実施例のフローシートである。
【図3】実施例1における平均濾過フラックスの経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例1における濾過水濁度の経時変化を示すグラフである。
【図5】比較例1における平均濾過フラックスの経時変化を示すグラフである。
【図6】比較例1における濾過水濁度の経時変化を示すグラフである。
【図7】本発明に係る排水の処理方法の他の実施例のフローシートである。
【図8】実施例2における平均濾過フラックスの経時変化を示すグラフである。
【図9】実施例2における濾過水濁度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 流入原水
2 生物反応槽
3 ブロワー
4 生物反応槽出口の開口
5 整流装置
6 固液分離槽
7 通水性濾過体
8 取水管
9 処理水
10 洗浄装置
11 濃縮汚泥混合液返送装置
12 排泥ライン
13 散気管
14 散気管
15 隔壁
101 流入原水
102 生物反応槽
103 生物反応槽流出液
104 汚泥静置槽
105 撹拌機
106 汚泥供給ポンプ
107 固液分離槽
108 濾過モジュール
109 濾過水位調整弁
110 電磁弁
111 電磁弁
112 濾過水
113 処理水槽
114 水逆洗排水水位調整弁
115 電磁弁
116 水逆洗ポンプ
117 逆止弁
118 返送汚泥
119 空洗ブロワー
120 散気管
121 電磁弁
122 電磁弁
123 濾過水排出管
201 生物反応槽
202 曝気用散気管
203 空洗用散気管
204 濾過体
205 原水供給管
206 濾過水排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理方法であって、原水を生物反応槽に流入させて生物処理を行い、次に生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入して、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させ、該通水性濾過体より水頭圧で濾過水を得ることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理方法であって、原水を生物反応槽に流入させて生物処理を行い、次に生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を、通水性濾過体が浸漬配置されている固液分離槽に導入して、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層を形成させ、該通水性濾過体の透過側をポンプで吸引することにより濾過水を得ることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項3】
通水性濾過体表面に対する活性汚泥混合液の移動速度が平均0.05m/s未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
固液分離槽内に整流装置を設置し、活性汚泥混合液が、整流装置を通過した後に通水性濾過体表面を通過するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理装置であって、原水を流入させて生物処理を行う生物反応槽、通水性濾過体が浸漬配置されていて、生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽を具備し、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層が形成され、通水性濾過体より水頭圧で濾過水が得られるように構成されていることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項6】
排水原水を生物処理した後に得られた活性汚泥混合液を固液分離する排水の処理装置であって、原水を流入させて生物処理を行う生物反応槽、通水性濾過体が浸漬配置されていて、生物反応槽で処理された活性汚泥混合液を導入して固液分離を行う固液分離槽を具備し、該通水性濾過体の表面に汚泥のダイナミック濾過層が形成され、通水性濾過体の透過側をポンプで吸引することにより濾過水が得られるように構成されていることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項7】
固液分離槽内に整流装置が設置されており、活性汚泥混合液が整流装置を通過した後に通水性濾過体表面を通過するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−43706(P2006−43706A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274857(P2005−274857)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【分割の表示】特願2001−570564(P2001−570564)の分割
【原出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】