説明

排水中の金属濃度分析のための前処理装置及び該前処理装置を備えた分析システム

【課題】排水中に含まれる金属元素の分析のためのサンプリング及び排水の前処理を長時間安定して行うことのできる前処理装置を提供する。
【解決手段】試料液を容器に採取する手段と;容器内の試料液に一定量の酸を添加する酸添加手段と;ガラスボールフィルターと;容器の内外にガラスボールフィルターを挿抜する手段と;ガラスボールフィルターと試料液出口を繋ぐ試料液配管と;試料液配管に空気を供給する空気配管と;試料液配管に洗浄水を供給する洗浄水配管と;受取容器内の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通し、試料液出口から排出させる試料液輸送手段と;試料液出口から排出される試料液を受け取る測定槽とを備えた試料液中の金属濃度分析のための前処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属精錬工場等の排水中に含まれる金属元素を分析するための前処理装置に関する。また、本発明はそのような前処理装置と分析装置を備えた分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
銅精錬工場等の金属精錬工場の排水にはAsやSe等の金属が含まれる。これらの金属に関してはそれぞれ排水基準が定められていることから、排水中の濃度を監視することが求められる。これまで、排水中に含まれる金属の濃度を監視するには、定期的に人手により排水をサンプリングして、濾過等の前処理を行い、分析装置にかけていたのが実情であり、排水のサンプリング、前処理、分析装置への投入を精度よく長時間安定して行うことのできる前処理装置は存在しなかった。また、そのような前処理装置と分析装置を組み合わせた分析システムも存在しなかった。
【0003】
本発明に関連する公知文献としては以下がある。
【0004】
特開2004−298720号公報(特許文献1)には汚染水の有害金属除去システムが記載されている。該文献に具体的に開示されている有害金属除去システムは、有害金属を含む汚染水のサンプリング手段A、B、C、Dと、ヒ素をはじめとする有害金属の濃度を連続的な処理操作によって測定する濃度測定部10と、この測定した濃度に応じて処理剤を投入し、有害金属を沈澱化する反応部13と、反応後の汚染水を固液分離する濾過部14と、固液分離した浄水を一時的に貯留して排水する排水処理部16とを有しており、管路を開閉するバルブV1、V2、V3が設けられている。
そして、上記濃度測定部10は自動化に適するように連続流れ分析法(フローインジェクション法)に基づく測定手段によって形成されている。この測定手段は試料液の注入部、試薬添加部、試料と試薬の反応部、濃度検出計が管路によって一体に連通した測定系を有しており、サンプリングされた試料液が管路を流れる間に試薬の添加と反応、および濃度検出が連続して行われる。
【特許文献1】特開2004−298720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムは汚染水分析の自動化を図ったものであるが、該システムでは、原水はサンプリング手段Aによって採取された後、濃度測定部10に直接送られている。該システムだと、汚染水には固形分(SS)も含まれているのが通常であり、そのような汚染水中に含まれる金属元素を直接濃度測定しても正確な濃度測定は困難であるし、配管や濃度測定部内に堆積物が溜まり、早晩閉塞してしまうので、システムを頻繁にメンテナンスする必要が出てくると考えられる。また、システム内には逆浸透膜を用いた精密濾過部もあるが、この濾過部についても頻繁にメンテナンスする必要があると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の課題の一つは排水中に含まれる金属元素の分析のためのサンプリング及び排水の前処理を長時間安定して行うことのできる前処理装置を提供することである。本発明の別の課題の一つはそのような前処理装置と分析装置を組み合わせた分析システムを提供することである。本発明の更に別の課題の一つは、排水中に含まれる金属元素の分析のためのサンプリング及び排水の前処理を長時間安定して行うことのできる前処理方法を提供することである。本発明の更に別の課題の一つは、そのような前処理方法を含む排水中の金属の分析方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ガラスボールフィルターを用いた以下のような構成をもつ試料液中の金属濃度分析のための前処理装置及びそれを用いた分析システムを創作した。また、本発明者は以下のような工程を含む試料液中の金属濃度分析のための前処理方法及びそれを用いた分析方法を創作した。
【0008】
本発明は一側面において、
1又は2以上の試料液採取箇所と、
一定量の試料液を採取及び排出する試料採取手段と;
採取した試料液を試料採取手段から受け取る受取容器と;
試料採取手段を洗浄する洗浄手段と;
試料採取手段を試料液採取箇所、受取容器及び洗浄手段の間で移動させる移送手段と;
酸貯蔵容器と;
酸供給管と;
酸貯蔵容器から酸供給管を通じて受取容器内に一定量の酸を添加する酸添加手段と;
ガラスボールフィルターと;
受取容器内外にガラスボールフィルターを挿抜する手段と;
ガラスボールフィルターと試料液出口を繋ぐ試料液配管と;
試料液配管に空気を供給する空気配管と;
試料液配管に洗浄水を供給する洗浄水配管と;
受取容器内の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通し、試料液出口から排出させる試料液輸送手段と;
試料液出口から排出される試料液を受け取る測定槽と;
を備えた試料液中の金属濃度分析のための前処理装置である。
【0009】
本発明に係る前処理装置は一実施形態において、試料液配管の途中には、試料液を測定槽に送る前に試料液を一時的に貯めておく貯留管が設置され、ガラスボールフィルターと貯留管の間、及び貯留管と測定槽の間にそれぞれ電磁弁が設けられており、貯留管の上流には空気配管、洗浄水配管及び試料液輸送手段が連結している。
【0010】
本発明に係る前処理装置の別の一実施形態においては、前記酸は硝酸である。
【0011】
本発明は別の一側面において、前記前処理装置と分析装置を備えた排水中の金属濃度分析のための分析システムである。
【0012】
本発明に係る分析システムの一実施形態においては、前記分析装置はICP発光分析装置である。
【0013】
本発明に係る分析システムの別の一実施形態においては、測定対象となる金属はAs、Se、Cd、Pd、Sb、Cu及びZnよりなる群から選択される1種以上である。
【0014】
本発明は更に別の一側面において、
試料液を試料採取手段で採取するサンプリング工程と;
試料採取手段から試料液を受取容器へ移す工程と;
受取容器中の試料液に酸を添加して固形分を溶解する工程と;
酸を添加した後の試料液にガラスボールフィルターを介して空気を送り込み、試料液を攪拌する工程と;
攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程とを含む前処理プロセス;及び、
試料採取手段を洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター、測定槽及び受取容器に洗浄水を流し、これらを洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口及びガラスボールフィルターに空気を流し、これらに残留する洗浄水を追い出す工程と;
受取容器及び測定槽中の残留洗浄水を排出する工程とを含む洗浄プロセス;
を電気制御によって自動で行うことを含む排水中の金属濃度分析のための前処理方法である。
【0015】
また、本発明は更に別の一側面において、
試料液を試料採取手段で採取するサンプリング工程と;
試料採取手段から試料液を受取容器へ移す工程と;
受取容器中の試料液に酸を添加して固形分を溶解する工程と;
酸を添加した後の試料液にガラスボールフィルターを介して空気を送り込み、試料液を攪拌する工程と;
攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程と;
測定槽中の試料液を分析用配管を介して分析装置に投入する工程と;
分析装置によって試料液中の金属濃度を測定する工程とを含む分析プロセス;及び
試料採取手段を洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター、測定槽及び受取容器に洗浄水を流し、これらを洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口及びガラスボールフィルターに空気を流し、これらに残留する洗浄水を追い出す工程と;
受取容器及び測定槽中の残留洗浄水を排出する工程と;
分析装置及び分析用配管を洗浄する工程とを含む洗浄プロセス;
を電気制御によって自動で行うことを含む排水中の金属濃度分析方法である。
【0016】
本発明に係る前処理方法又は分析方法の一実施形態においては、前記酸は硝酸である。
【0017】
本発明に係る前処理方法又は分析方法の別の一実施形態においては、攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程は、試料液を試料液配管の途中に設けられた採取管に一旦移した後に、採取管から試料液出口に試料液を送る。
【0018】
本発明に係る分析方法の更に別の一実施形態においては、前記分析装置はICP発光分析装置である。
【0019】
本発明に係る分析方法の更に別の一実施形態においては、測定対象となる金属はAs、Se、Cd、Pd、Sb、Cu及びZnよりなる群から選択される1種以上である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排水中に含まれる金属濃度分析のためのサンプリング、排水の前処理及び分析装置への排水の投入を長時間安定して行うことができるので、メンテナンス頻度が少なく分析精度の高い分析システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
1.サンプリング工程
サンプリング工程では試料液を採取する。試料液としては特に制限はないが、本発明が対象とする典型的な試料液は銅精錬工場等の金属精錬工場からの排水である。敷地内の1又は2以上の地点における排水の濃度を管理するために、1又は2以上の地点の排水を配管でそれぞれ本発明に係る前処理装置内に設置されている各試料液採取箇所まで導くことができる。試料液採取箇所の構造には特に制限はないが、例えばオーバーフロー構造の槽とし、流れ込んできた排水の濃度をリアルタイムで測定できるようにすることができる。試料液のサンプリングは本発明に係る前処理装置が有する試料採取手段を用いて行うことができる。試料採取手段としては一定量の試料液の吸引、保持及び排出を電気制御で行うことができる機構でよく、特に制限はないが、例えば自動ピストンビュレットに連結した先端が細くなった樹脂製(例:ポリプロピレン)の採取管による採取が挙げられる。
試料液を採取する量は特に制限はないが、あまり少ないと精度の高い分析が行えず、あまり多いと後に添加する酸が無駄になるので、一般には40〜90cc、典型的には40〜60ccである。
【0022】
2.試料採取手段から試料液を受取容器へ移す工程
試料採取手段によって採取された試料液はその後、試料採取手段から排出され、受取容器に移される。この際、測定毎に受取容器に濾紙が自動的にセットされるようにして、試料液から固形分を予備的に除去することもできる。但し、排出された試料液が濾紙を通過することができるよう、十分な圧力で試料液を試料採取手段から排出する必要がある。そのような圧力は自動ピストンビュレットを使用すれば得られる。
また、本発明に係る前処理装置は試料採取手段を試料液採取箇所、受取容器及び後に説明する洗浄手段の間で移動させる移送手段を備える。移送手段としては、X・Y・Z軸方向(3次元方向)に移動可能なモーター駆動の移動体に試料採取手段を連結することが挙げられる。例えば、移動体に車輪を付けて、移動領域に敷かれたレール上を移動体が移動できるようにすることができる。移動体にタイミングベルトを連結し、ガイドに沿ったスライド機構によって移動させてもよい。ラック・アンド・ピニオンのような歯車を利用した移動機構とすることもできる。移動体の駆動手段としてはエア駆動、油圧駆動又は磁気駆動でもよい。従って、試料採取手段は所望の試料液採取箇所で試料を採取した後、受取容器の位置まで移動してから受取容器に試料液を移すことができる。
【0023】
3.受取容器中の試料液に酸を添加する工程
試料液を受け取った受取容器には試料液中に含まれる浮遊物等の固形分を溶解するために酸が添加される。本発明に係る前処理装置は受取容器を試料液の受け取り位置から酸供給管の出口まで移送するための移送手段を有することができる。移送手段は試料採取手段の移送手段と同様のものを採用することができる。受取容器の移動方向は受取容器と酸供給管の位置関係に応じて決めればよく、3次元方向、2次元方向又は1次元方向に移動可能とすることができる。更に、後述するように、移動体への受取容器の連結を、軸方向に回転可能なアームを介して行い、受取容器が反転できるようにしてもよい。こうすることで、受取容器に残留する試料液や洗浄水を排出することができる。
酸としては固形分を溶解することができ、測定対象となる金属の濃度分析結果に悪影響を与えないものであれば特に制限は無く、例えば塩酸、硝酸を使用することができる。装置の腐食を防止する観点からは、揮発性の小さな硝酸が好ましい。添加された酸の試料液中での濃度は測定対象成分の安定性の観点から0.5〜2mol/Lが好ましく、1.0mol/Lがより好ましい。
固形分は次の攪拌工程と相俟って溶解される。固形分を溶解しておくことで(例えばJIS K0102法に従った)正確な分析ができるとともに、使用する分析装置(例:ICP/OES)のネブライザー詰まりを防止できるという利点がある。例えば、銅精錬工場からの排水には水酸化鉄共沈の由来の固形分が含まれる。
本発明に係る前処理装置は酸を貯蔵するための酸貯蔵容器を備えており、酸は酸貯蔵容器から酸供給管を通じて受取容器内に一定量添加される。この操作を実施するために本発明に係る前処理装置は酸添加手段を有する。酸添加手段としては一定量の酸の添加を電気制御で行うことができる公知の任意の機構でよく、特に制限はないが、例えば自動ピストンビュレットが挙げられる。
また、本発明に係る前処理装置は受取容器に酸供給管を挿入し、及び挿入した酸供給管を抜き出す手段を備えることもできる。例えば、酸供給管を先述したような移送手段で上下動させればよい。
【0024】
4.試料液を攪拌する工程
酸を添加した後、試料液にガラスボールフィルターを介して空気を送り込み、試料液を攪拌する。そのため、受取容器中の試料液にはガラスボールフィルターが挿入される。本発明に係る前処理装置は受取容器内にガラスボールフィルターを挿入し、及び挿入したガラスボールフィルターを抜き出す手段を備えている。例えば、ガラスボールフィルターを先述したような移送手段で上下動させればよい。
後述するように、ガラスボールフィルターには試料液配管が連結されており、そこに空気を供給することでガラスボールフィルターに空気を送り込むことができる。そのため、本発明に係る前処理装置は試料液配管に直接又は間接的に連結する空気配管を有しており、そこから試料液配管に空気を供給することができる。後述する貯留管が存在する場合の一実施形態においては、空気配管は貯留管の上流に設けることができる。
空気配管には例えばコンプレッサー、送風機、又はエアシリンダーを連結することができる。その中でも利便性の観点からコンプレッサーが好ましい。空気配管には、空気量や空気圧を制御するための弁(電磁弁や減圧弁等)を適宜設けることができる。空気配管からガラスボールフィルターに空気が送り込まれると、ガラスボールフィルターのボールの内側から外側に向かって空気が排出され、バブリングによって試料液が攪拌される。これによって試料液中の固形分を確実に溶解することができる。攪拌が不充分だと固形成分が溶解されず測定値が低く出るような不都合がある。攪拌時間としては、可溶性固形物の完全溶解の観点から、30〜90秒程度が好ましく、典型的には50〜70秒程度である。ガラスボールフィルターの仕様としては、十分な攪拌効果を得たいという理由により、泡が小さすぎないのが好ましい。このため、球径は5〜30mmであり、メッシュの孔径は20〜100μmとするのが好ましい。球径は10〜20μm、メッシュの孔径は20〜100μmとするのがより好ましい。例えば球径が15mm、メッシュの孔径が約40〜50μmのガラスボールフィルターを使用することができる。
【0025】
5.試料液を試料液配管に通して測定槽に送る工程
試料液の攪拌後はガラスボールフィルターを介して試料液配管に吸引されて、測定槽に送られる。ガラスボールフィルターに試料液配管を介して負圧を与えると受取容器内の試料液はこの配管を通って吸い上げられる。試料液はガラスボールフィルターを通過する間に濾過され、攪拌工程で溶解しなかった固形分は除去される。濾過することで使用する分析装置(例:ICP/OES)のネブライザー詰まりを防止できる利点がある。本発明に係る前処理装置は、ガラスボールフィルターと試料液出口を繋ぐ試料液配管、及び試料液をガラスボールフィルターから試料液出口に輸送するための試料液輸送手段を有している。これにより、吸引濾過された試料液はガラスボールフィルターから試料液配管を通じて試料液出口から排出され、測定槽に入る。試料液輸送手段としては、電気制御によって試料液をガラスボールフィルターから試料液配管に吸引して輸送できる任意の手段としてよいが、一定量の試料液を吸引する観点から、自動ピストンビュレットや定量ポンプが好ましい。その中でもなるべく金属部品を使用せず安価であるという観点から自動ピストンビュレットが好ましい。
自動ピストンビュレットを使用した場合の一実施形態を説明する。ガラスボールフィルターから試料液出口までの試料液配管途中には、吸引した試料液を一旦貯めておく貯留管が設置されている。また、試料液配管途中、ガラスボールフィルターと貯留管の間、及び貯留管と試料液出口の間にはそれぞれ電磁弁が設けられている。ガラスボールフィルターと貯留管の間の電磁弁を電磁弁Aとし、貯留管と試料液出口の間の電磁弁を電磁弁Bとする。電磁弁Aを開き、電磁弁Bを閉じた状態で、貯留管の上流に設けられた自動ピストンビュレットによって試料液を吸い上げると、吸い上げられた試料液はガラスボールフィルターと貯留管の間の試料液配管を通って一時的に貯留管に貯められる。次いで、電磁弁Aを閉じて、電磁弁Bを開け、自動ピストンビュレットからの空気によって貯留管上流から試料液を加圧すると、試料液は貯留管から貯留管と試料液出口の間の試料液配管を通って試料液出口から排出される。試料液出口から排出された試料液は測定槽に入る。
試料液出口としては、配管から試料液を排出するための開口であれば特に制限はないが、汚染防止の観点から、ポリプロピレンのような撥水性があり耐酸性の材質が好ましい。また、本発明に係る前処理装置は測定槽に試料液出口を挿入し、及び挿入した試料液出口を抜き出す手段を備えることもできる。例えば、試料液出口を先述したような移送手段で上下動させればよい。
【0026】
6.試料液を分析装置に投入する工程
測定槽中の試料液には、分析装置に繋がる分析用配管が挿入される。試料液は分析装置によって自動的に吸い上げられ、分析装置に投入される。本発明に係る前処理装置は測定槽に分析用配管を挿入し、及び挿入した分析用配管を抜き出す手段を備えている。例えば、分析用配管を先述したような移送手段で上下動させればよい。
【0027】
7.試料液中の金属濃度を分析する工程
測定対象となる金属は特に制限はないが、本発明では特に重金属を対象とし、より特別にはAs、Se、Cd、Pd、Sb、Cu及びZnを対象元素とする。測定したい金属成分に応じて適切な分析装置を選択すればよいが、例えばICP発光分析装置、ICP質量分析装置、フレームレス原子吸光分析装置、フレーム原子吸光分析装置、吸光光度計が挙げられる。その中でも安全性及び共存元素の妨害が少ないという観点からICP発光分析装置(ICP/OES)が好ましい。
【0028】
8.試料採取手段を洗浄する工程
本発明に係る前処理装置は試料採取手段を洗浄する洗浄手段を備える。試料液を受取容器に移した後、試料採取手段は洗浄手段により洗浄される。洗浄手段としては特に制限は無いが、例えば洗浄水の入った洗浄槽である。洗浄槽を用いる場合、試料採取手段を移送手段によって洗浄槽に移動させ、そこで洗浄水の吸引排出を行うことで洗浄可能である。洗浄効果を上げるために吸引排出は繰り返すことができる。繰り返しの回数は洗浄効果から経験的に決定することができる。
精度の高い測定結果を得る観点から、洗浄水には測定対象となる金属イオンや他のイオンが含まれないか含まれていても測定の際、無視できる量である水を使用する。純水を使用しても良いが、通常は水道水で足りる。他の器具を洗浄するときも同様の洗浄水を使用することができる。
【0029】
9.試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター及び受取容器を洗浄する工程
試料液が分析装置に投入された後は、次の試料液を受け入れる前に、試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター、測定槽及び受取容器を洗浄する。洗浄はこれらの部材に洗浄水を流すことで行うことができる。貯留管を設けている場合はこれも洗浄する。
そのため、本発明に係る前処理装置は試料液配管に洗浄水を供給する洗浄水配管を有する。洗浄水配管は試料液配管に直接又は間接的に連結しており、試料液配管に洗浄水を供給することができる。洗浄水は試料液配管を流れて試料出口及びガラスボールフィルターから排出される。ガラスボールフィルターから出てきた洗浄水は受取容器内に流入し、オーバーフローによって排出される。この間に受取容器も洗浄される。また、試料出口から出てきた洗浄水は測定槽に流入し、オーバーフローによって排出される。この間に測定槽も洗浄される。受取容器及び測定槽の周辺には排水孔を設けることができ、洗浄水はそこから装置外へ出て行く。洗浄水の使用量は洗浄効果との兼ね合いで経験的に決定すればよいが、例えば受取容器及び測定槽の容量の2〜10倍、典型的には3〜4倍とすることができる。
測定槽の洗浄は測定槽の近傍に洗浄水槽を別途設置し、そこから配管で測定槽に洗浄水を流すこともできる。洗浄水は測定槽からオーバーフローさせることができる。
洗浄後、受取容器及び測定槽には洗浄水が残るので、これを排出する。排出する方法には特に制限は無いが、例えば、ガラスボールフィルター及び試料液出口を受取容器及び測定槽からそれぞれ抜き出す手段と、受取容器及び測定槽を反転させる手段の組み合わせによって可能である。例えば、ガラスボールフィルター及び試料液出口を先述したような移送手段で上下動させることで、ガラスボールフィルター及び試料液出口を受取容器及び測定槽からそれぞれ抜き取る。そして、受取容器及び測定槽を軸方向に回転可能なアームを介してそれぞれ移動体に連結することで、アームの回転に伴って受取容器及び測定槽を反転させ、洗浄水を排出することができる。この機構を利用して、受取容器や測定槽に洗浄水を流す前に、これらに残留している試料液を排出しておくこともできる。
また、受取容器や測定槽の底部に排出口を設け、排出口に電磁弁の付いた排水管を連結することもできる。排水の抜き取りは重力によってもよく、ポンプを利用することもできる。
測定槽から洗浄水を排出する方法は次のように行ってもよい。ガラスボールフィルターを受取容器から抜き取る。受取容器は試料液を受け取る位置に戻す。測定槽に試料液出口を挿入し、先述した電磁弁Aを閉じ、電磁弁Bを開けた状態で貯留管の上流に設けられた自動ピストンビュレットを作動させる。これにより、測定槽に残っている洗浄水は吸引されて、試料液出口から貯留管と試料液出口の間の試料液配管を通って貯留管に貯まる。次いで、電磁弁Aを開け、電磁弁Bを閉じ、自動ピストンビュレットによって貯留管上流から洗浄水を加圧すると、洗浄水は貯留管から貯留管とガラスボールフィルターの間の試料液配管を通ってガラスボールフィルターから排出される。ガラスボールフィルターの周辺に排水孔を設けることができ、洗浄水はそこから装置外へ出て行く。
更に、試料液配管、ガラスボールフィルター及び試料液出口に残留している洗浄水を抜き出すために前記空気配管から試料液配管に空気を供給することができる。空気供給源はバブリングに使用したものと同じでよい。供給された空気は試料液配管を通ってガラスボールフィルター及び試料液出口から排出される。試料液配管、ガラスボールフィルター及び試料液出口に残留している洗浄水は空気に同伴されて抜き出される。
【0030】
10.分析装置を洗浄する工程
分析装置の洗浄は、分析用配管を介して洗浄水を吸引することで実施することができる。ここで使用する洗浄水も上記と同様に水道水で問題ない。なお、分析装置によっては、稼働中は常に溶液を吸引させておく必要がある(例:ICP/OES)。その場合は、試料溶液を測定する以外は常時洗浄水を吸引させておけばよい。
【0031】
本発明では酸を使用するので、前処理装置及び分析装置内で酸に接し得る部位は耐酸性処理又は耐酸性素材とするのが望ましい。例えば、フッ素樹脂のコーティング処理をした材料やポリプロピレンを利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を、図を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る分析システムの平面図である。左上がICP発光分析装置であり、その右下が前処理装置である。前処理装置及び分析装置の動作はそれぞれの内部に設けられた制御部(図示せず)によって自動的に行われる。1回の前処理、分析及び洗浄に要する時間は全体で5分程度である。本実施例で使用した洗浄水はすべて水道水である。
【0033】
図2は前処理装置の試料採取部の平面図及びこれを図1のAの方向から見たときの正面図である。本実施例においては、前処理装置は8箇所の試料液採取槽12(材質:塩化ビニール)を有する。試料液採取槽12には銅精錬工場内の8箇所からの排水が集められる。試料液採取槽12はオーバーフロー構造になっている。試料採取ノズル21(材質:ポリプロピレン)に連結した試料採取用移動体11はモーター(図示せず)で駆動し、タイミングベルトによってX軸(正面図において紙面の左右方向)に敷設したガイドに沿って移動でき、歯車を介してY軸(正面図において紙面に垂直な方向)及びZ軸(正面図において紙面の上下方向)に移動できるようになっている。試料採取ノズル21は移動体11によって試料液採取槽12の一つの頭上に移動し、試料液採取槽12に挿入される。試料液採取槽12に挿入された試料採取ノズル21は自動ピストンビュレット(シリンダーによる減圧機構)によって試料を10秒間で50cc採取する。
【0034】
図3は前処理装置の受取容器移動部及び前処理部を図1のBの方向から見た図である。
試料を採取した後は試料採取ノズル21は移動体11によって試料受渡ステーション15まで移動し、自動ピストンビュレット(シリンダーによる加圧機構)によって試料が排出され、試料液が受取容器14に移される。試料液を移した後は試料採取ノズル21はノズル洗浄槽13まで移動し、そこに挿入されて60ccの洗浄水の吸引排出を3回繰り返す。試料液のサンプリングから試料液を受取容器へ移し、試料採取ノズルを洗浄するまでの工程の模式図を図5に示した。
【0035】
受取容器14は、モーター(図示せず)で駆動し、タイミングベルトによってレールに沿ってY軸方向に移動可能で、回転機構31によってY軸方向を中心に回転可能なアームを介して受取容器搬送用移動体16に連結されている。移動体16は図3中、初期位置(16−1)から右へ移動して、終期位置(16−2)まで移動する。
【0036】
受取容器14は酸添加ノズル18の直下まで更に移動する。酸添加工程の模式図を図6に示した。本実施例においては酸添加ノズル18は固定されている。酸添加ノズル18は酸供給管63及び酸貯蔵容器61に連結しており、自動ピストンビュレット62によって6規定の硝酸が10cc添加される。
【0037】
攪拌工程の模式図を図7に示す。酸添加後、受取容器14はガラスボールフィルター連結管32の直下に移動し、ガラスボールフィルター71が挿入される。ガラスボールフィルターとしては木下式ガラスボールフィルター型式502G No.2(球径:15mm、メッシュ孔径:約40〜50μm)を使用した。ガラスボールフィルター71は、歯車によりレールに沿って上下動可能なモーター駆動の移動体に、ガラスボールフィルター連結管32を介して取り付けられており、受取容器14内外に挿抜可能である。ガラスボールフィルター71は試料液配管76に連結されており、試料液配管76は貯留管17を介して空気配管72に連結している。空気配管72から圧縮空気を供給することでガラスボールフィルター71に空気を送り込む。空気配管72の途中には電磁弁73が設けられており、その上流にはコンプレッサー(図示せず)が連結されている。空気配管72からガラスボールフィルター71に空気が送り込まれると、ガラスボールフィルター71のボールの内側から外側に向かって空気が排出され、バブリングによって試料液が攪拌される。バブリングは1分間行う。
【0038】
試料液は攪拌後にガラスボールフィルター71を介して試料液配管76に吸引されて、測定槽に送られる。このときの模式図を図8に示す。電磁弁74を開き、電磁弁75を閉じた状態で自動ピストンビュレット81を稼働させると受取容器14内の試料液のうちの50ccが試料液配管76を通って貯留管17に貯まる。次いで、電磁弁74を閉じて、電磁弁75を開け、自動ピストンビュレットによって貯留管17上流から試料液を加圧すると、試料液は試料液出口ノズル82から排出される。試料液出口ノズル82から排出された試料液は測定槽19に入る。試料液出口ノズル82は歯車によりレールに沿って上下動可能なモーター駆動の移動体に取り付けられたアームによって支持されており、測定槽内外に挿抜可能である。
【0039】
図4は前処理装置の測定槽部の平面図及びこれを図1のAの方向から見たときの正面図である。
測定槽19内の試料液を分析装置に投入する工程の模式図を図9に示す。測定槽19はICP発光分析装置110に繋がる分析用配管43が挿入され、試料液は分析装置110によって自動的に吸い上げられ、分析装置110に投入される。こうして、分析装置110に投入された試料液中の金属成分濃度が測定される。分析自体は2〜3分で終了する。分析用配管43はレールに沿って歯車により上下動可能なモーター駆動の移動体42に連結されており、測定槽内外に挿抜可能である。また、分析用配管43は洗浄水及び標準溶液を吸引するために、タイミングベルト(図示せず)によってガイドに沿ってX軸方向に移動可能なモーター駆動の移動体41によって洗浄水槽111及び検量線作成用の三つの標準液容器45のところまで移動することができる。
【0040】
試料液配管76、ガラスボールフィルター71、受取容器14及び貯留管17を洗浄する。この際の模式図を図10に示す。まず、受取容器14を回転機構31によって反転させて、受取容器14に残留している試料液を排出する。その後、電磁弁74を開き、電磁弁75を閉じた状態で洗浄水を供給すると、洗浄水配管78及び貯留管17を通って試料液配管76に入る。洗浄水は試料液配管76を流れてガラスボールフィルター71から排出される。ガラスボールフィルター71から出てきた洗浄水は受取容器14内に流入し、オーバーフローによって排出される。この間に受取容器14も洗浄される。受取容器14の周辺には排水孔(図示せず)が設けてある。洗浄水の使用量は受取容器14の容量の3〜4倍である。受取容器14には洗浄水が残留するので、ガラスボールフィルターを受取容器14から抜き取り、回転機構31によって受取容器14を反転させることで洗浄水を排出する。その後、受取容器14を移動体16によって試料液の試料受渡ステーション15に戻す。
【0041】
測定槽19を洗浄する。再び図9を参照すると、測定槽19の脇には洗浄水槽111が設置されており、洗浄水槽111から洗浄水を配管(図示せず)を通して測定槽19に送り、測定槽19を洗浄する。洗浄水は測定槽19からオーバーフローする。測定槽19の周辺には排水孔(図示せず)が設けてあり、オーバーフローした洗浄水はそこから系外に排出される。
測定槽19に残留している洗浄水を抜き取るために、以下の工程を行う。電磁弁74を閉じ、電磁弁75を開けた状態で貯留管17の上流に設けられた自動ピストンビュレット81を作動させると測定槽19に残っている洗浄水は試料液出口ノズル82から貯留管17と試料液出口ノズル82の間の試料液配管76を通って貯留管17に貯まる。次いで、電磁弁74を開け、電磁弁75を閉じ、自動ピストンビュレット81によって貯留管17上流から洗浄水を加圧すると、洗浄水は貯留管17から貯留管17とガラスボールフィルター71の間の試料液配管76を通ってガラスボールフィルター71から排出される。ガラスボールフィルター71から排出された洗浄水は排水孔(図示せず)から系外に出される。
【0042】
その後、試料液配管76、ガラスボールフィルター71及び試料液出口ノズル82に残留している洗浄水を抜き出す。そのため、空気配管72から貯留管17を介して試料液配管76に空気を供給する(図11)。このとき、電磁弁74及び電磁弁75は開いており、供給された空気は試料液配管76を通ってガラスボールフィルター71及び試料液出口ノズル82から排出される。
【0043】
ICP発光分析装置は、稼働中は常に溶液を吸引させておく必要がある。試料溶液を測定する以外は洗浄水を分析用配管を通して常時吸引させておくことで、分析用配管及び分析装置内が洗浄される。
【0044】
実験結果
上記の分析システムを用いて1回/時間のペースで1日間連続して銅精錬工場内の排水を分析した。実験終了時も、前処理装置及び分析装置内に有意な堆積物は見つからず、構成部品のメンテナンスも必要なかった。また、実験初期(開始から1時間後)及び終期(開始から23時間後)において、本発明の分析システムを用いて測定した排水中のAs及びSeの濃度を、手作業によりサンプリング、濾過及び分析を行った場合のものと比較した。結果を表1に示す。実験初期及び終期も安定して正確な濃度を測定できていることがわかる。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る分析システムの平面図である。
【図2】前処理装置の試料採取部の平面図及びこれを図1のAの方向から見た正面図である。
【図3】前処理装置の受取容器移動部及び前処理部を図1のBの方向から見た図である。
【図4】前処理装置の測定槽部の平面図及びこれを図1のAの方向から見たときの正面図である。
【図5】サンプリングから試料液を受取容器へ移し、試料採取ノズルを洗浄するまでの工程の模式図である。
【図6】酸添加工程の模式図である。
【図7】攪拌工程の模式図である。
【図8】ガラスボールフィルターを介して試料液を測定槽に送る工程の模式図である。
【図9】測定槽内の試料液を分析装置に投入する工程の模式図である。
【図10】試料液配管、ガラスボールフィルター、受取容器及び貯留管を洗浄する工程の模式図である。
【図11】試料液配管、ガラスボールフィルター、及び試料液出口ノズルに残留している洗浄水を抜き出す工程の模式図である。
【符号の説明】
【0047】
11 試料採取用移動体
11−1 試料採取用移動体X軸駆動機構
11−2 試料採取用移動体Y軸駆動機構
11−3 試料採取用移動体Z軸駆動機構
12 試料液採取槽
13 ノズル洗浄槽
14 受取容器
15 試料受渡ステーション
16 受取容器搬送用移動体
17 貯留管
18 酸添加ノズル
19 測定槽
21 試料採取ノズル
31 回転機構
32 ガラスボールフィルター連結管
41 分析用配管のZ軸移動体
42 分析用配管のX軸移動体
43 分析用配管
45 標準液容器
61 酸貯蔵容器
62 自動ビュレット
63 酸供給管
71 ガラスボールフィルター
72 空気配管
73 電磁弁
74 電磁弁
75 電磁弁
76 試料液配管
78 洗浄水配管
81 自動ビュレット
82 試料液出口ノズル
110 ICP発光分析装置
111 洗浄水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の試料液採取箇所と、
一定量の試料液を採取及び排出する試料採取手段と;
採取した試料液を試料採取手段から受け取る受取容器と;
試料採取手段を洗浄する洗浄手段と;
試料採取手段を試料液採取箇所、受取容器及び洗浄手段の間で移動させる移送手段と;
酸貯蔵容器と;
酸供給管と;
酸貯蔵容器から酸供給管を通じて受取容器内に一定量の酸を添加する酸添加手段と;
ガラスボールフィルターと;
受取容器内外にガラスボールフィルターを挿抜する手段と;
ガラスボールフィルターと試料液出口を繋ぐ試料液配管と;
試料液配管に空気を供給する空気配管と;
試料液配管に洗浄水を供給する洗浄水配管と;
受取容器内の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通し、試料液出口から排出させる試料液輸送手段と;
試料液出口から排出される試料液を受け取る測定槽と;
を備えた試料液中の金属濃度分析のための前処理装置。
【請求項2】
試料液配管の途中には、試料液を測定槽に送る前に試料液を一時的に貯めておく貯留管が設置され、ガラスボールフィルターと貯留管の間、及び貯留管と測定槽の間にそれぞれ電磁弁が設けられており、貯留管の上流には空気配管、洗浄水配管及び試料液輸送手段が連結している請求項1記載の前処理装置。
【請求項3】
前記酸は硝酸である請求項1又は2記載の前処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3何れか一項記載の前処理装置と分析装置を備えた排水中の金属濃度分析のための分析システム。
【請求項5】
前記分析装置はICP発光分析装置である請求項4記載の分析システム。
【請求項6】
測定対象となる金属はAs、Se、Cd、Pd、Sb、Cu及びZnよりなる群から選択される1種以上である請求項4又は5記載の分析システム。
【請求項7】
試料液を試料採取手段で採取するサンプリング工程と;
試料採取手段から試料液を受取容器へ移す工程と;
受取容器中の試料液に酸を添加して固形分を溶解する工程と;
酸を添加した後の試料液にガラスボールフィルターを介して空気を送り込み、試料液を攪拌する工程と;
攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程とを含む前処理プロセス;及び、
試料採取手段を洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター、測定槽及び受取容器に洗浄水を流し、これらを洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口及びガラスボールフィルターに空気を流し、これらに残留する洗浄水を追い出す工程と;
受取容器及び測定槽中の残留洗浄水を排出する工程とを含む洗浄プロセス;
を電気制御によって自動で行うことを含む排水中の金属濃度分析のための前処理方法。
【請求項8】
試料液を試料採取手段で採取するサンプリング工程と;
試料採取手段から試料液を受取容器へ移す工程と;
受取容器中の試料液に酸を添加して固形分を溶解する工程と;
酸を添加した後の試料液にガラスボールフィルターを介して空気を送り込み、試料液を攪拌する工程と;
攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程と;
測定槽中の試料液を分析用配管を介して分析装置に投入する工程と;
分析装置によって試料液中の金属濃度を測定する工程とを含む分析プロセス;及び
試料採取手段を洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口、ガラスボールフィルター、測定槽及び受取容器に洗浄水を流し、これらを洗浄する工程と;
試料液配管、試料液出口及びガラスボールフィルターに空気を流し、これらに残留する洗浄水を追い出す工程と;
受取容器及び測定槽中の残留洗浄水を排出する工程と;
分析装置及び分析用配管を洗浄する工程とを含む洗浄プロセス;
を電気制御によって自動で行うことを含む排水中の金属濃度分析方法。
【請求項9】
前記酸は硝酸である請求項7記載の前処理方法又は請求項8記載の分析方法。
【請求項10】
攪拌後の試料液をガラスボールフィルターを介して試料液配管に通して試料液出口から排出し、測定槽に送る工程は、試料液を試料液配管の途中に設けられた採取管に一旦移した後に、採取管から試料液出口に試料液を送る請求項7記載の前処理方法又は請求項8記載の分析方法。
【請求項11】
前記分析装置はICP発光分析装置である請求項8記載の分析方法。
【請求項12】
測定対象となる金属はAs、Se、Cd、Pd、Sb、Cu及びZnよりなる群から選択される1種以上である請求項7記載の前処理方法又は請求項8記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−210333(P2009−210333A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52213(P2008−52213)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】