説明

排水処理システム及び浄化システム

【課題】浄化能力が高く、簡便で省スペース化も可能な排水処理システムを提供する。
【解決手段】排水処理システムは、嫌気槽30と、好気槽40と、浮上分離槽54,接触曝気槽60,生物濾過槽66,浮上物貯留・分解槽58を含む多機能処理装置50と、濾過・放流槽80を中心に構成されている。前記嫌気槽30,好気槽40,生物濾過槽66,濾過槽本体84には、希土類(レアアース)鉱物濾過材32,46A,46B,70,88が設けられており、前記接触曝気槽60には、揺動床62が設けられている。前記希土類鉱物濾過材を利用することにより、簡便かつ省スペースでありながら、畜産排水などを高性能に浄化処理できるとともに、処理時間の短縮も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理システム及び浄化システムに関し、更に具体的には、畜産排水や汚染土壌及び汚染地下水などを浄化するのに適した排水処理システム及び浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産排水などの処理装置としては、例えば、液状の家畜排泄物が無希釈で供給される脱窒槽と、その脱窒槽内の液が供給される硝化槽と、硝化槽内の液を前記脱窒槽へ戻す循環手段が設けられ、前記硝化槽内の液中の活性汚泥を通過させずに液分を通過させる濾過体が、前記硝化槽内の液中に浸漬する状態で設けられ、前記濾過体を通して前記硝化槽内の液を吸引して槽外に排出する吸引手段が設けられている家畜排泄物浄化装置がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−57779号公報
【0003】
また、有害物質で汚染された汚染土壌及び地下水の浄化方法として、例えば下記特許文献2には、土壌及び地下水の汚染の浄化方法が開示されている。当該技術によれば、地下水の上流側に栄養源注入井戸を少なくとも一箇所以上設けたうえ、有害汚染物質が地中に流入する原位置において、地下水の流れる帯水層まで縦方向にドレーン材を打ち込むことにより、ドレーン材によって上部シルト層に地下水や、溶出した栄養源が浸透させることができ、微生物をほぼ均等に分布させることにより、増殖、活性化させ有害汚染物質が浄化させる。
【特許文献2】特開2006−110404公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浄化後の排水や地下水の再利用も視野に入れると、浄化能力の一層の高性能化は必須であり、かつ、簡便で省スペース化の実現も可能であれば、なお好都合である。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、浄化能力が高く、簡便で省スペース化も可能な排水処理システム及び浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の排水処理システムは、排水の嫌気性処理を行う嫌気槽,散気手段を備えており、前記嫌気槽を通過した排水の好気性処理を行う好気槽,微細気泡発生手段を備えており前記好気槽を通過した排水から浮上物を分離する浮上分離槽と、微細気泡発生手段と揺動床が設置されており前記浮上物が分離された排水の曝気処理を行う接触曝気槽と、微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており曝気処理後の排水の濾過を行う生物濾過槽と、前記浮上分離槽で分離された浮上物を貯留して分解する浮上物貯留・分解槽とを含む多機能処理装置,微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており、前記生物濾過槽を通過した排水を更に濾過する濾過槽と、該濾過槽を通過した処理排水を貯留するとともに外部に放流可能な放流槽とを含む濾過・放流槽,を備えたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記嫌気槽又は好気槽の少なくとも一方が、希土類鉱物からなる濾過材を含むことを特徴とする。他の形態は、前記排水が、畜産排水であることを特徴とする。
【0008】
本発明の浄化システムは、汚染土壌の下にある不透水層まで達し遮水効果を有する遮蔽壁によって囲まれた一定の範囲内に設置される浄化システムであって、前記不透水層より上の地下水域から汚染地下水を揚水する揚水ポンプと、揚水した汚染地下水を外部へ送水する送水ポンプとを有する中継タンク,微細気泡発生手段を備えており前記中継タンクから送られた汚染地下水から浮上物を分離する浮上分離槽と、微細気泡発生手段と揺動床が設置されており前記浮上物が分離された汚染地下水の曝気処理を行う接触曝気槽と、微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材とが設置されており曝気処理後の汚染地下水の濾過を行う生物濾過槽と、前記浮上分離槽で分離された浮上物を貯留して分解する浮上物貯留・分解槽とを含む多機能処理装置,微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており、前記生物濾過槽を通過した汚染地下水を更に濾過する濾過槽,該濾過槽を通過した処理後の地下水を、前記地下水域より上方の未改良土壌層へ戻すリターン手段,を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、浮上分離槽と、揺動床を備えた接触曝気槽と、希土類(レアアース)鉱物を濾過材として用いた生物濾過槽とを備えた多機能処理装置の前に、(1)排水の嫌気性及び好気性処理を行う嫌気槽及び好気槽を設ける,あるいは、(2)揚水した汚染地下水を貯留する中継タンクを設ける。そして、前記(1)及び(2)のいずれの場合も、前記多機能処理装置の後に、前記希土類鉱物を濾過材として用いた濾過槽を設けることとした。このため、簡便かつ省スペースでありながら、排水や汚染地下水(及び汚染土壌)の高性能な処理が可能となるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
最初に、図1及び図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明を、畜産(主として養豚場)排水の「脱窒」を目的とした排水処理システムに適用した例である。図1(A)は本実施例による浄化処理の流れを示す図,図1(B)は本実施例のシステムの全体構成を示す平面図,図1(C)は前記(B)の断面図である。図2は、本実施例を構成する多機能処理装置の浮上分離槽及び浮上物貯留・分解槽を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印F2方向から見た側面図,(C)は浮上物移流管を示す図である。本実施例の浄化システムは、嫌気槽30,好気槽40,多機能処理装置50,濾過・放流槽80を中心に構成されており、この他に、既設処理水槽10,計量槽20,ブロア110,制御盤120や、必要に応じてオゾン処理槽100などが設けられる。
【0012】
前記既設処理水槽10は、内部に送水ポンプ12を備えており、該送水ポンプ12に接続された揚水パイプ14によって、排水が計量槽20に送られる。該計量槽20には、前記既設処理水槽10へ排水を戻すための返送パイプ16と、計量された排水を嫌気槽30へ送るための嫌気槽流入パイプ22が設けられている。
【0013】
前記嫌気槽30は、前記計量槽20から送られた排水の嫌気性処理を行うものであって、本実施例では、槽の底部に希土類(レアアース)鉱物からなる希土類鉱物濾過材(レアアース鉱物濾過材)32が設置されている。希土類鉱物には、ランタン[La],セリウム[Ce],プラセオジミウム[Pr],ネオディミウム[Nd],プロメチウム[Pm],サマリウム[Sm],ユーロピウム[Eu],ガドリニウム[Gd],テルビウム[Tb],ジスプロジウム[Dy],ホルミウム[Ho],エルビウム[Er],ツリウム[Tm],イテルビウム[Yb],メテチウム[Lu],スカンジウム[Sc],イットリウム[Y]の元素群(ランタノイド)のいずれかが含まれている。このような希土類鉱物には、遠赤外線の放射体としての働きがあることが分かっており、更に多孔質鉱石には、悪臭ガスを吸収したり、細菌(微生物)を吸着・吸蔵したりする機能もある。本実施例では、嫌気槽30にも希土類鉱物を取り入れることによってその特性とパワーを活かし、従来の濾過材では考えられない現象を引き起こしている。
【0014】
具体的には、次のような機能がある。
(1)強い吸着力:鉱石の有する吸着作用は、超多孔性であり表面積が極めて広いこと、主成分が無水珪酸,酸化アルミニウムであること等から、吸着作用,イオン交換作用が水銀,銅,鉛,カドミウム等の有害重金属をよく除去する。
(2)ミネラルの溶出:これらの鉱石を水中に入れると、水中の遊離塩素や汚濁物質,有機物,雑菌等を吸着除去する。
(3)pH緩衝能:酸性水もアルカリ水も、ともに中性に近づける。
【0015】
本実施例では、前記嫌気槽30のほか、後述する好気槽40,多機能処理装置50,濾過・放流槽80においても、前記希土類鉱物濾過材が用いられている。本実施例の各所で利用しうる希土類鉱物の種類と成分組成の一例を下記表1に示す。
【表1】

【0016】
次に、好気槽40について説明する。好気槽40には、前記嫌気槽30によって嫌気性処理が施された排水が、好気槽流入パイプ34によって送られ、好気性処理が施される。該好気槽40は、底部に散気管42を備えており、その上方には、二段の濾過材設置架台44A,44Bが設けられ、そこに希土類鉱物濾過材46A,46Bが設置されている。前記希土類鉱物濾過材46A,46Bの材料及び機能などは、前記希土類鉱物濾過材32と同様である。該好気槽40で処理された排水は、処理装置流入パイプ48によって、多機能処理装置50に送られる。
【0017】
前記多機能処理装置50は、複数の処理機能を備えたものであって、仕切板52A〜52Cによって、浮上分離槽54,接触曝気槽60,生物濾過槽66,浮上物貯留・分解槽58に区切られている。前記浮上分離槽54は、微細気泡発生装置56を備えており、前記好気槽40を通過した排水から、浮上物を分離させるものである。分離した浮上物の移動は、水位変動による自然流移動を利用している。これについては後述する。前記微細気泡発生装置56は、公知の微細気泡発生機構を備えたノンフィルター多用途簡易浮上泡沫分離装置(例えば、「テックフォーマー」(登録商標)(テック工業有限会社製の微細気泡発生装置))などが利用可能である。
【0018】
前記微細気泡発生装置56によれば、次のような利点がある。
(1)ミクロン気泡:気泡径最頻値が1mm以下のミクロン気泡を発生させる。横方向の拡散力に優れ、槽全体にミクロン気泡が拡散する。これによって、曝気、浮上分離、泡沫分離などの効果が大きくなる。
(2)ポータブル:小型、軽量で持ち運びが容易。
(3)セットフリー:処理槽や処理域に直接沈めて使用できるため、随時使用箇所に合わせて設置が可能。電源があれば設置のための特別な器具が不要である。
(4)メンテナンスフリー:新開発の特殊インペラーが、機械剪断方式でミクロン気泡を発生させるため、使用中の目詰まりなどがない。
(5)省電力:消費電力が小さい(100V・100W〜200V・750W)。特別の電源供給の必要がない。
【0019】
前記浮上分離槽54で浮上物が分離された排水は、中間水移流パイプ54Aによって接触曝気槽60へ送られ、排水から分離された浮上物は、浮上物移流パイプ54Bによって浮上物貯留・分解槽58へ送られる。該浮上物貯留・分解槽58には、図2に示すように、揺動床59Aや微細気泡ディフューザー59Bが設けられており、ここで分解処理された浮上物が、処理水返送用のパイプ58Aから前記既設処理水槽10へ送られる。
【0020】
本実施例の多機能処理装置50では、前記浮上分離槽54で分離された浮上物を、回収器具を使用せずに浮上物貯留・分解槽58へ移流させる方法をとっている。具体的には、図2(B)に示すように、浮上分離槽54から接触曝気槽60への中間水移流パイプ54Aの水位よりも50〜70mm程度上げた位置に、浮上物貯留・分解槽への浮上物移流パイプ54Bの開口55Aを設け、移流口のエルボ55Bを接着固定せずに左右に回転できるようにする(図2(C)参照)。そして、前記エルボ55Bに、200〜300mm長さの単管55Cを接続し、浮上分離槽54の中間水移流パイプ54Aの水位とのバランスをとり、浮上物のみが浮上物貯留・分解槽58に移流するように調節する。これによって、浮上物貯留・分解槽58の処理水返送用のパイプ58Aの水位を前槽との落差に関係なく設定することができる。
【0021】
一方、前記接触曝気槽60は、図示の例では、底部が連通した仕切りによって2つのブロックに区切られており、それぞれに揺動床(揺動濾床)62と微細気泡ディフューザー(微細気泡発生装置)64を備えている。該接触曝気槽60を通過することによって、排水に曝気処理が施される。前記揺動床62は、「バイオフリンジ」(エヌ・イー・ティ株式会社製)のように、繊維濾過材の特長を活かし必要機能を最大限に具備した画期的な接触材であって、表面の微生物層保持性が高く、しかも循環水流による揺動効果で過剰付着分が表面から連続剥離する。
【0022】
これにより従来の接触材のもつ閉塞,一斉離脱の欠点を完全に解消する。表面に微生物層が安定的に保持されることから、食物連鎖が形成され、汚泥沈降性の向上,高MLSS化により汚泥発生量が減少となり、汚泥処理無しの処理フローも可能となる。同時に脱窒効果もあり、コストパフォーマンスは最高である。具体的には、下記のような利点がある。
(1)処理能力が2〜5倍(省スペース・増設不要)。
(2)汚泥発生量が1/5〜1/10(汚泥処理なし)。
(3)油分、SSが高くても凝集前処理不要(SRT増加効果)。
(4)長期間(15年以上)安定使用、メンテナンスフリー効果によりコスト削減。
(5)低濃度(短時間処理:数分)、高濃度(10,000mg・l)も問題なし。
【0023】
前記接触曝気槽60で曝気された排水は、パイプ60Aによって生物濾過槽66へ送られる。生物濾過槽66は、底部が連通した仕切りによって3つのブロックに区切られており、それぞれの底部に微細気泡ディフューザー(微細気泡発生装置)72を備え、その上方には濾過材設置架台68上に設置された希土類鉱物濾過材70を備えている。該希土類鉱物濾過材70の材料や機能は上述した通りである。
【0024】
前記生物濾過槽66を通過して濾過された排水は、濾過槽流入パイプ74によって、濾過・放流槽80へ送られる。濾過・放流槽80は、仕切板82によって濾過槽本体84と放流槽94に分けられている。前記濾過槽本体84は、底部が連接した仕切りによって2つのブロックに区切られており、それぞれの底部に微細気泡ディフューザー90と、その上方に濾過材設置架台86によって支持された希土類鉱物濾過材88を備えており、前記多機能処理装置50の生物濾過槽66で処理された排水を更に濾過する。そして、該濾過槽本体84で濾過された排水は、パイプ92によって隣接する放流槽94へ送られる。
【0025】
該放流槽94の底部には微細気泡ディフューザー96が設けられており、上方には処理済みの排水を外部に放流するためのパイプ98が設けられている。該パイプ98は、濾過・放流槽80の外部で、放流パイプ98Aと希釈水返送パイプ98Bに分岐している。希釈水返送パイプ98Bは、前記多機能処理装置50の浮上物貯留・分解槽58のパイプ58Aと合流し、前記パイプ58Aを流れる分解物を希釈して、前記既設処理水槽10へ送り返している。一方、前記放流パイプ98Aで放流される水は、洗浄水や散水用としてリサイクル利用が可能である。あるいは、前記放流パイプ98Bを、必要に応じてオゾン処理槽100へ接続し、オゾン処理を施してから放流するようにしてもよい。
【0026】
このほか、本実施例の浄化システムでは、ブロア110と制御盤120が設けられている。前記ブロア110は、前記散気管42,微細気泡ディフューザー64,72,90,96に接続されるとともに、前記制御盤120に接続され、その動作が制御されている。また、前記制御盤120は、前記ブロア110のほか、送水ポンプ12,微細気泡発生装置56に接続され、それらの動作を制御している。
【0027】
<実験例>・・・本実施例の浄化システムを利用した実験例について説明する。下記の条件にて処理を行い、原水と、嫌気槽30,好気槽40,浮上分離槽54,接触曝気槽60,生物濾過槽66での処理水を採取して、水素イオン濃度,浮遊物質量,化学的酸素要求量,生物学的酸素要求量,ノルマルヘキサン抽出物含有量,窒素含有量,リン含有量について分析を行った。
【0028】
(1)原水:排水処理施設における処理水槽の処理水(本来であれば放流水)を使用した。
(2)嫌気槽:嫌気槽30のタンク底部に、希土類(レアアース)鉱物を処理対象液80lに対して約8%(容量)を充填した。静置状態で、22時間30分放置。
(3)好気槽:好気槽40の4カ所に、接触材として希土類(レアアース)鉱物1kg/個を吊り下げて曝気した。22時間30分連続曝気。
(4)浮上分離槽:好気槽40の磁気ディスクをはずし、テックフォーマー(微細気泡発生装置)をセットし始動した。テスト的に凝集剤を添加したが、テスト水量に対してテックフォーマーの気泡発生量が大きく極度の攪拌状態となり結果が得られなかった。30分で終了(計量数値は参考値として扱う)。
(5)接触曝気槽:バイオフリンジによる処理。「KF菌」(酵素微生物生剤ないし微生物・酵素製剤)及び活性促進剤「エコロクリスタル」(潮技研株式会社製)若干量を添加した。
(6)生物濾過槽:濾過材として、希土類(レアアース)鉱物80%、バイオフリンジ塊20%を使用した。槽の入りと出を小型ポンプで循環させた。22時間30分連続運転。
【0029】
前記「KF菌」としては、例えば、特許第2581521号に開示されている以下に示すものが使用される。
細菌 1×10 CFU/g
内訳 5×10 CFU/g グラム陽性カン菌
3×10 CFU/g グラム陰性カン菌
2×10 CFU/g グラム陽性球菌
4×10 CFU/g 有芽胞菌
酵母 5×10 CFU/g
糸状菌 9×10 CFU/g
【0030】
以下の表2に、放流規制値とともに分析結果を示す。この結果から、生物濾過槽66を通過した時点で、全ての分析項目について放流規制値を下回ることが確認できた。
【表2】

【0031】
このように、実施例1によれば、浮上分離槽54と、揺動床62を備えた接触曝気槽60と、希土類鉱物濾過材70を備えた生物濾過槽66とを含む多機能処理装置50の前に、嫌気槽30及び好気槽40を設け、前記多機能処理装置50の後に、希土類鉱物濾過材88を備えた濾過・放流槽80を設けることとした。このため、簡便かつ省スペースでありながら、畜産排水の高性能な処理が可能になるという効果が得られる。また、処理時間の短縮によりコストの削減も図ることができる。
【実施例2】
【0032】
次に、図3を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。図3(A)は本実施例による浄化処理の流れを示す図,図3(B)は本実施例のシステムの全体構成を示す平面図,図3(C)は前記(B)の断面図である。本実施例は、本発明の浄化システムを、汚染土壌及び汚染地下水の浄化に適用した例であって、本システムと一般土壌細菌によって汚染物質を浄化・除去するものである。本実施例の浄化システムは、未改良土壌層(汚染土壌層)の下にある不透水層200まで達する遮水効果を有する遮蔽壁208によって囲まれた範囲内に設置されており、中継タンク220,多機能処理装置50,濾過槽240を中心に構成され、この他に、吸引井戸210,計量槽230,リターン井戸260,バイオタンク270,ブロア280,制御盤290などを含んでいる。また、前記不透水層200上は、地下水域202,未改良土壌層204,改良土206の順に層が形成されている。
【0033】
前記吸引井戸210は、改良土206及び未改良土壌層204を貫通しており、その内側に配設された吸引パイプ212の先端が、地下水域202に達している。中継タンク220は、前記吸引パイプ212に接続されており前記地下水域202から汚染地下水を揚水する揚水ポンプ222と、揚水した汚染地下水を送水パイプ226によって計量槽230へ送る送水ポンプ224を備えている。前記計量槽230には、前記中継タンク220へ汚染地下水を戻すための返送パイプ232と、計量された汚染地下水を多機能処理槽50へ送るための処理装置流入パイプ234が設けられている。
【0034】
前記多機能処理装置50は、上述した実施例1と同様の構成となっている。すなわち、
(1)微細気泡発生装置56を備えており前記計量槽230から送られた地下水から微粒夾雑物を浮上分離する浮上分離槽54,
(2)微細気泡ディフューザー64と揺動床62が設置されており、前記浮上物が分離された汚染地下水の曝気処理を行う接触曝気槽60,
(3)微細気泡ディフューザー72と希土類鉱物濾過材70とが設置されており、曝気処理後の汚染地下水の濾過を行う生物濾過槽66,
(4)浮上分離槽54で分離された浮上物を貯留して分解する浮上物貯留・分解槽58,
を含む構成となっている。このような多機能処理装置50では、VOC(揮発性有機化合物)の分解処理も行われる。そして、前記生物濾過層66を通過した汚染地下水が、濾過槽流入パイプ74によって濾過槽240へ送られ、前記浮上物貯留・分離層58で分解処理された浮上物が、パイプ58Aから排出される。
【0035】
前記濾過槽240は、仕切板242A,242Bによって濾過槽本体が3つの濾過室244,246,248に仕切られており、各濾過室は、底部が連接した仕切板242Cによってそれぞれ2つのブロックに区切られている。これら濾過室244,246,248の各ブロックの底部には、微細気泡ディフューザー254と、その上方に濾過材設置架台252によって支持された希土類鉱物濾過材250を備えている。また濾過室244と246はパイプ244Aで接続しており、濾過室246と248はパイプ246Aで接続している。このため、前記多機能処理装置50の生物濾過槽66で処理された汚染地下水は、濾過室244→246→248の順に通過しながら更に濾過,吸着,分解,イオン化処理され、リターンパイプ256へ送られる。なお、前記多機能処理装置50及び濾過槽240で利用される希土類鉱物濾過材の材料や機能は、上述した実施例1と同様である。
【0036】
前記リターンパイプ256は、前記改良土206を貫通するリターン井戸260の内側に配設され、その先端が未改良土壌層204に達している。このため、前記濾過槽240を通過した処理済みの地下水は、前記リターンパイプ256を介して、未改良土壌層204へリターンされる。該未改良土壌層204に処理水を循環させることで、土壌菌が活性化し有害物質の分解を促進する。また、前記リターンパイプ256には、処理水採取バルブ258が設けられており、水質検査などのために処理水の採取をする場合に利用される。
【0037】
このほか、本実施例の浄化システムでは、バイオタンク270,ブロア280,制御盤290が設けられている。前記バイオタンク270は、必要に応じて設けられるもので、定量ポンプ272とパイプ274を備えており、前記多機能処理装置50の浮上分離槽54に、前記パイプ274を介して酵素微生物生剤(前述のKF菌など)を添加するものである。該酵素微生物生剤は、「安定多数の原理」(エンリッチメントカルチャー)に基づいて特殊な培養技術によって得られた分解菌であって、一般細菌数は、1.9×1010であり、あらゆる条件下に対応する働きをする。揺動床62や微細気泡発生装置56との組み合わせにより、短時間(通常処理時間の1/5)での処理が可能となる。BODの除去はもちろん、脱窒の固定菌としても威力を発揮する(酵素微生物活性化剤は、微細気泡発生装置56が供給する高溶存酸素によって強力な分解能力を発揮する)。該酵素微生物生剤の働きにより、処理水には臭気や汚泥がなくなるという利点がある。
【0038】
また、前記ブロア280は、図示しない配線によって、微細気泡ディフューザー64,72,254に接続されるとともに、前記制御盤290に接続され、その動作が制御されている。また、前記制御盤290は、前記ブロア280のほか、揚水ポンプ222,送水ポンプ224,微細気泡発生装置56などに接続され、それらの動作を制御している。
【0039】
このように、本実施例の浄化システムによれば、浄化システムで利用される希土類鉱物濾材と、処理済みの地下水がリターンされる未改良土壌層204における一般土壌細菌の働きを組み合わせることにより、効率よく、土壌・地下水の汚染物質(VOCや重金属類)を浄化・除去できる。また、短時間での処理が可能になることから、コストの削減を図ることもできる。更に、必要に応じて酵素微生物生剤を併用することで、処理時間の大幅な短縮と、処理水から臭気や汚泥をなくすことも可能である。
【0040】
<実験例1>・・・次に、本実施例の実験例1を説明する。希土類鉱物濾材を利用した多機能処理装置50に、前記バイオタンク270から酵素微生物生剤を添加し、48時間連続曝気を行い、汚染物質の除去状態を試験した。試験試料は、千葉県内で採取した汚染土壌1,000gを水道水2lに溶解したものをテスト原水とした。試験結果を以下の表3に示す。表3の結果から、処理水は、計量項目の全てにおいて、土壌溶出量基準を下回ることが確認された。
【表3】

【0041】
<実験例2>・・・ベンゼン含有土壌を想定し、前記実験例1で使用した土壌にベンゼンを乳化混入した。汚染ヘドロ550gに、乳化ベンゼン220cc,水道水1,000ccで溶解させ、微細ふるいを通したのちに試料液とした。処理試験は、土壌用バイオ溶液30l,酵素微生物生剤100gを添加し、48時間連続曝気した。その結果、未処理の試料液では、ベンゼンの含有量が1,590mg/lであったのに対し、処理液では、土壌溶出量基準の0.01mg/lを下回ることが確認された。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した装置構成は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、処理水量に応じて多機能処理装置50を複数連結してもよい。また、前記実施例1では、濾過・放流槽80を一体型としたが、濾過槽と放流槽を独立して用意してもよい。
(2)前記実施例2で示した酵素微生物生剤の添加も一例であり、必要に応じて添加するようにすればよい。また、前記実施例1においても、必要に応じて多機能処理装置50に、前記酵素微生物生剤を添加するようにしてもよい。
(3)前記実施例1では畜産排水の処理に本発明を適用したが、これも一例であり、厨房排水,災害時雑排水,工場排水などの各種排水に本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、浮上分離槽と、揺動床を備えた接触曝気槽と、希土類(レアアース)鉱物を濾過材として用いた生物濾過槽とを備えた多機能処理装置の前に、(1)排水の嫌気性及び好気性処理を行う嫌気槽及び好気槽を設ける,あるいは、(2)揚水した汚染地下水を貯留する中継タンクを設ける。そして、前記(1)及び(2)のいずれの場合も、前記多機能処理装置の後に、前記希土類鉱物を濾過材として用いた濾過槽を設けることとしたので、浄化システムの用途に適用できる。特に、畜産排水の浄化や、汚染土壌及び汚染地下水の浄化用のシステムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は本実施例による浄化処理の流れを示す図,(B)は本実施例のシステムの全体構成を示す平面図,(C)は前記(B)の断面図である。
【図2】本発明のシステムを構成する多機能処理装置の浮上分離槽及び浮上物貯留・分解槽を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印F2方向から見た側面図,(C)は浮上物移流管を示す図である。
【図3】本発明の実施例2を示す図であり、(A)は本実施例による浄化処理の流れを示す図,(B)は本実施例のシステムの全体構成を示す平面図,(C)は前記(B)の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10:既設処理水槽
12:送水ポンプ
14:揚水パイプ
16:返送パイプ
20:計量槽
22:嫌気槽流入パイプ
30:嫌気槽
32:希土類(レアアース)鉱物濾過材
34:好気槽流入パイプ
40:好気槽
42:散気管
44A,44B:濾過材設置架台
46A,46B:希土類(レアアース)鉱物濾過材
48:処理装置流入パイプ
50:多機能処理装置
52A〜52C:仕切板
54:浮上分離槽
54A:中間水移流パイプ
54B:浮上物移流パイプ
55A:開口
55B:エルボ
55C:単管
56:微細気泡発生装置
58:浮上物貯留・分解槽
58A:パイプ
59A:揺動床
59B:微細気泡ディフューザー
60:接触曝気槽
60A:パイプ
62:揺動床
64,72:微細気泡ディフューザー
66:生物濾過槽
68:濾過材設置架台
70:希土類(レアアース)鉱物濾過材
74:濾過槽流入パイプ
80:濾過・放流槽
82:仕切板
84:濾過槽本体
86:濾過材設置架台
88:希土類(レアアース)鉱物濾過材
90,96:微細気泡ディフューザー
92:パイプ
94:放流槽
98:パイプ
98A:放流パイプ
98B:希釈水返送パイプ
100:オゾン処理槽
110:ブロア
120:制御盤
200:不透水層
202:地下水域
204:未改良土壌層
206:改良土
208:遮蔽壁
210:吸引井戸
212:吸引パイプ
220:中継タンク
222:揚水ポンプ
224:送水ポンプ
226:送水パイプ
230:計量槽
232:返送パイプ
234:処理装置流入パイプ
240:濾過槽
242A〜242C:仕切板
244,246,248:濾過室
244A,246A:パイプ
250:希土類(レアアース)鉱物濾過材
252:濾過材設置架台
254:微細気泡ディフューザー
256:リターンパイプ
258:処理水採取バルブ
260:リターン井戸
270:バイオタンク
272:定量ポンプ
274:パイプ
280:ブロア
290:制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の嫌気性処理を行う嫌気槽,
散気手段を備えており、前記嫌気槽を通過した排水の好気性処理を行う好気槽,
微細気泡発生手段を備えており前記好気槽を通過した排水から浮上物を分離する浮上分離槽と、微細気泡発生手段と揺動床が設置されており前記浮上物が分離された排水の曝気処理を行う接触曝気槽と、微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており曝気処理後の排水の濾過を行う生物濾過槽と、前記浮上分離槽で分離された浮上物を貯留して分解する浮上物貯留・分解槽とを含む多機能処理装置,
微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており、前記生物濾過槽を通過した排水を更に濾過する濾過槽と、該濾過槽を通過した処理排水を貯留するとともに外部に放流可能な放流槽とを含む濾過・放流槽,
を備えたことを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記嫌気槽又は好気槽の少なくとも一方が、希土類鉱物からなる濾過材を含むことを特徴とする請求項1記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記排水が、畜産排水であることを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理システム。
【請求項4】
汚染土壌の下にある不透水層まで達し遮水効果を有する遮蔽壁によって囲まれた一定の範囲内に設置される浄化システムであって、
前記不透水層より上の地下水域から汚染地下水を揚水する揚水ポンプと、揚水した汚染地下水を外部へ送水する送水ポンプとを有する中継タンク,
微細気泡発生手段を備えており前記中継タンクから送られた汚染地下水から浮上物を分離する浮上分離槽と、微細気泡発生手段と揺動床が設置されており前記浮上物が分離された汚染地下水の曝気処理を行う接触曝気槽と、微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材とが設置されており曝気処理後の汚染地下水の濾過を行う生物濾過槽と、前記浮上分離槽で分離された浮上物を貯留して分解する浮上物貯留・分解槽とを含む多機能処理装置,
微細気泡発生手段と希土類鉱物からなる濾過材が設置されており、前記生物濾過槽を通過した汚染地下水を更に濾過する濾過槽,
該濾過槽を通過した処理後の地下水を、前記地下水域より上方の未改良土壌層へ戻すリターン手段,
を備えたことを特徴とする浄化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−125361(P2010−125361A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300428(P2008−300428)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(597167449)
【Fターム(参考)】