説明

排水処理方法及び排水処理設備

【課題】 焼却プラントから排水される排水の排水処理方法であって、RO膜を劣化させにくく、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱を効率よく回収できる排水処理方法等を提供することを課題としている。
【解決手段】 有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定工程と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させる減温工程とを実施する排水処理方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却プラントから排出される排水の排水処理方法及び該排水の排水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、該熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法としては、該排水を凝集剤などによって凝集処理した後にろ過処理する排水処理方法などが知られている。
【0003】
従来の排水処理方法としては、例えば、焼却プラントから排出される排水を凝集剤などによって凝集処理した後に生物処理を行い、さらに砂ろ過によってろ過処理する排水処理方法などが知られている(特許文献1)。この種の排水処理方法には、浄化された浄化水の大部分を放流できることが記載されている。
【0004】
ところで、焼却プラントから排出される排水の排水処理方法としては、いわゆる環境問題に対応すべく、排水処理によって浄化された浄化水を極力放流しない方式を採用したものが強く求められている。
【0005】
しかしながら、斯かる排水処理方法においては、浄化水を極力放流しないようにするために、大半の浄化水を減温塔などの減温装置に噴射して気化させ浄化水の容量を減らすことなどが行われている。詳しくは、廃熱ボイラなどの熱回収装置で熱回収された後の燃焼排ガスに対して、減温装置において浄化水を噴射等することにより、浄化水を気化させてその容量を減らし、一方で、熱回収された燃焼排ガスを浄化水の気化熱によって減温することなどが行われている。即ち、斯かる排水処理方法においては、比較的多量の浄化水が減温装置における減温のために用いられることとなる。
【0006】
このように、排水処理によって浄化された浄化水を極力放流しない方式を採用した排水処理方法においては、減温装置に噴射等される浄化水が比較的多量であるが故に、その気化熱により減温する温度幅を比較的大きく設定することとなる。その分だけ、減温装置の上流側にある廃熱ボイラなどの熱回収装置において、燃焼排ガスから回収する熱量を少なく設定せざるを得ない。即ち、減温装置において減温させる温度幅を比較的大きくすることに伴い、熱回収装置における燃焼排ガスからの熱回収量をより小さくすることとなり、焼却プラントにおける燃焼排ガスからの熱回収効率が低くなりやすいという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平10−99898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、焼却プラントから排水される排水の排水処理方法であって、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱を効率よく回収できる排水処理方法が要望されている。
【0009】
また、焼却プラントから排出される排水の排水処理方法においては、排水に次亜塩素酸イオンなどの酸化性物質が含まれることがあり、しかもその濃度が突発的に上昇することがあるため、排水に含まれる酸化性物質によって、排水処理設備として用いる逆浸透膜が特に劣化しやすいという問題がある。そこで、突発的な酸化性物質濃度の上昇に対しても酸化性物質を迅速に低減させることができ、逆浸透膜を劣化させにくい排水処理方法が要望されている。
【0010】
本発明は、上記問題点、要望点等に鑑み、焼却プラントから排水される排水の排水処理方法であって、逆浸透膜を劣化させにくく、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱を効率よく回収できる排水処理方法を提供することを課題とする。また、焼却プラントから排水される排水の排水処理設備であって、逆浸透膜を劣化させにくく、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱を効率よく回収できる排水処理設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明に係る排水処理方法は、有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定工程と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させる減温工程とを実施することを特徴とする。
【0012】
上記構成からなる排水処理方法によれば、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程を実施することにより、前記排水に添加される脱塩素剤によって前記排水に含まれる遊離残留塩素が低減され、前記排水に含まれる遊離残留塩素の濃度は、比較的低濃度に保たれ得る。さらに、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程とを実施することにより、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量が突発的に上昇した場合であっても、遊離残留塩素濃度の上昇を迅速に検知でき、それに対応して前記排水に添加する脱塩素剤を迅速に増加させることができる。従って、前記排水に含まれる遊離残留塩素の濃度が突発的に上昇した場合であっても、前記排水に含まれる遊離残留塩素を迅速に低減させることができる。
【0013】
また、上記構成からなる排水処理方法によれば、前記焼却プラントから排出され不純物等を含む前記排水を逆浸透膜によって濃縮し、容積が減じられた前記濃縮水として分離除去できる。前記濃縮水を前記減温装置内に噴射等するなど、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させるに際して、濃縮によって容積が減じられている分、気化させる水量が少ないため、前記燃焼排ガスを減温する温度幅を小さくすることができる。また、前記減温装置で減温される熱回収された燃焼排ガスは、その上流側で熱回収装置により熱を回収されたものであり、熱回収された燃焼排ガスを前記減温装置において減温する温度幅を小さくする分、その上流側にある前記熱回収装置において燃焼排ガスから回収する熱量を大きくすることができる。
【0014】
また、本発明に係る排水処理方法は、前記脱塩素剤添加工程を実施する前に、前記排水に含まれる浮遊物を減少させる前処理工程を実施することが好ましい。前記脱塩素剤添加工程を実施する前に、前記前処理工程を実施することにより、前記排水に含まれ得る浮遊物を減少させることができ、前記逆浸透膜の目詰まりを抑制できる。従って、前記逆浸透膜の交換頻度が低くなり、より効率的に前記分離水を得ることができ、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できるという利点がある。
【0015】
また、本発明に係る排水処理方法は、前記前処理工程で、前記排水に含まれる浮遊物を減少させるべく、前記排水を精密ろ過膜(MF膜)によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去することが好ましい。前記前処理工程で、前記排水をMF膜によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去することにより、前記排水に含まれる浮遊物をより減少させることができ、前記RO膜分離工程における逆浸透膜の目詰まりがより起こりにくく、前記逆浸透膜の継続使用期間がより長くなり得る。従って、前記逆浸透膜の交換頻度が低くなり、より効率的に前記分離水を得ることができ、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できるという利点がある。
【0016】
本発明に係る排水処理設備は、有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理設備であって、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定手段と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加手段と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加手段と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離手段と、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させる減温手段とが備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る排水処理方法は、前記排水に添加される脱塩素剤によって前記遊離残留塩素が低減され、前記排水に含まれる遊離残留塩素の濃度は、比較的低濃度に保たれ得る。また、前記排水に含まれる遊離残留塩素濃度が突発的に上昇した場合であっても、遊離残留塩素濃度の上昇を迅速に検知でき、それに対応して前記排水に添加する脱塩素剤を迅速に増加させることができるため、前記排水に含まれる遊離残留塩素を迅速に低減させることができる。従って、前記排水に含まれ得る遊離残留塩素によって前記逆浸透膜が劣化しにくい。
また、本発明に係る排水処理方法は、上述の通り、前記排水を逆浸透膜によって濃縮し、容積が減じられた前記濃縮水を前記排水から分離除去でき、濃縮によって容積が減じられている分、熱回収された燃焼排ガスを気化熱により減温させる水量が少ないため、熱回収された燃焼排ガスを前記減温装置で減温する温度幅を小さくすることができる。また、熱回収された燃焼排ガスを前記減温装置において減温する温度幅を小さくする分、前記熱回収装置において燃焼排ガスから回収する熱量を大きくすることができる。
従って、本発明の排水処理方法は、逆浸透膜を劣化させにくく、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱を効率よく回収できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る排水処理方法の一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の排水処理方法は、有機物を燃焼させる焼却装置1と、該焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置2と、該熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガス(以下、熱回収燃焼排ガスともいう)をさらに減温させる減温装置3とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定工程と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(以下、RO膜ともいう)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、前記熱回収燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置3で減温させる減温工程とを実施する排水処理方法である。
【0020】
詳しくは、本実施形態の排水処理方法は、有機物を燃焼させる焼却装置1と、該焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置2と、該熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置3とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、
前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を継続的に測定する塩素量測定工程と、前記排水に所定量の脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、前記熱回収燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置3で減温させる減温工程とを実施し、さらに前記脱塩素剤添加工程を実施する前に、前記排水に含まれる浮遊物を減少させる前処理工程を実施する排水処理方法である。
【0021】
さらに詳しくは、本実施形態の排水処理方法は、有機物を燃焼させる焼却装置1と、該焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置2と、該熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置3とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、
前記排水に含まれる浮遊物を減少させるべく前記排水を精密ろ過膜(以下、MF膜ともいう)によって分離し該精密ろ過膜(MF膜)を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去する前処理工程と、前記MF膜透過排水に含まれる遊離残留塩素の量を継続的に測定する塩素量測定工程と、前記遊離残留塩素を所定量以下にし得る量の脱塩素剤を前記排水に添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、前記熱回収燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置3で減温させる減温工程とを実施する排水処理方法である。
【0022】
ここで、前記焼却プラントに備えられている前記焼却装置1、前記熱回収装置2、及び前記減温装置3について説明する。なお、前記焼却プラントには、必要に応じて適宜、他の装置等が備えられ得る。
前記焼却装置1、前記熱回収装置2、及び前記減温装置3を備えた焼却プラントの概略図を図1に示す。
【0023】
前記焼却装置1は、有機物を燃焼させるものであり、具体的には、例えば、焼却炉が挙げられる。燃焼する有機物としては、特に限定されるものではないが、例えば、都市ごみ、産業廃棄物、廃木材、下水汚泥、スラッジなどが挙げられる。なお、前記焼却装置1としては、ストーカ炉、流動床焼却炉、ガス化溶融炉、灰溶融炉等焼却プラントの技術分野において従来公知の一般的なものを用いることができる。
【0024】
前記熱回収装置2は、前記焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収するものである。前記熱回収装置2としては、例えば、燃焼排ガスの熱を回収して水に伝え、水蒸気や温水に換える廃熱ボイラなどが挙げられる。前記熱回収装置2に導入される燃焼排ガスは、通常、800〜1300℃程度の温度になっている。なお、前記熱回収装置2としては、焼却プラントの技術分野において従来公知の一般的なものを用いることができる。
【0025】
前記減温装置3は、前記熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させるものである。前記減温装置3としては、特に限定されるものではないが、前記熱回収装置2から導入される前記熱回収燃焼排ガスに水を噴射又は噴霧し、水の気化熱を利用して前記熱回収燃焼排ガスの温度を下げる減温塔などが挙げられる。前記熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガスは、通常、250〜400℃程度の温度になっている。なお、前記減温装置3としては、焼却プラントの技術分野において従来公知の一般的なものを用いることができる。
【0026】
前記熱回収燃焼排ガスが前記減温装置3によって減温された後のガスの温度は、通常、150〜200℃程度になっている。このガスは前記濃縮水の水が気化した水蒸気を含んでおり、集塵器等でさらに塵などが取り除かれ、大気中に放出される。
【0027】
前記焼却プラントから排出される排水は、少なくとも焼却装置1の周辺機器を冷却した後の機器冷却排水を含んでいる。他にも該排水としては、例えば、廃熱ボイラなどの熱回収装置2からブローされるブロー排水、焼却プラントから発生する焼却残渣やスラグを冷却する残渣冷却排水、廃棄物収集車を洗浄したときに発生する洗車排水、生活排水など、又はその他焼却プラント内で発生する排水が挙げられる。
【0028】
次に、本実施形態の排水処理方法で実施する各工程について詳しく説明する。なお、本実施形態の排水処理方法で用いる装置類の概略図を図2に示す。
【0029】
本実施形態の排水処理方法は、まず、焼却プラントから排出される排水に含まれる浮遊物を減少させる前処理工程を前記脱塩素剤添加工程の前に実施する。
【0030】
前処理工程を前記脱塩素剤添加工程の前に実施することにより、前記排水に含まれ得る浮遊物を減少させることができ、前記脱塩素剤添加工程後に実施する前記RO膜分離工程で用いる前記RO膜の目詰まりを抑制できる。従って、前記RO膜の交換頻度が低くなり、より効率的に前記分離水を得ることができ、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できる。従って、前記RO膜の交換頻度が低くなり、より効率的に前記分離水を得ることができ、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できる。
【0031】
前記浮遊物としては、有機性微粒子、無機性微粒子などが挙げられ、その他の固体状微粒子なども挙げられる。これら浮遊物は、前記焼却プラントから排出される排水に含まれ得る。
【0032】
前記前処理工程では、図2に示すように、前記排水に含まれる浮遊物を減少させるべく、前記排水をMF膜によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去する。
【0033】
前記前処理工程において、前記排水をMF膜によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去することにより、前記排水に含まれ得る比較的小さい浮遊物を前記MF膜によって除去でき、前記RO膜分離工程で用いられる前記逆浸透膜(RO膜)の目詰まりをより抑制できる。従って、前記逆浸透膜(RO膜)の交換頻度が低くなり、より効率的に前記濃縮水を得ることができる。即ち、上述のごとく焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できるうえに、より効率的に前記分離水を得ることができる。
【0034】
また、前記前処理工程においては、未だ前記脱塩素剤添加工程が実施されていない排水をMF膜によって分離するため、前記排水には遊離残留塩素が含まれ得る。遊離残留塩素が含まれ得る排水を前記精密ろ過膜(MF膜)によって分離することにより、該精密ろ過膜(MF膜)における微生物の繁殖が抑制され得る。即ち、排水に含まれている遊離残留塩素によって前記精密ろ過膜(MF膜)における微生物の繁殖が抑制され得る。このように、前記精密ろ過膜(MF膜)における微生物の繁殖を抑制し得る点、及び、後述するように前記RO膜の劣化を抑制する点において、本実施形態の排水処理方法は、前記前処理工程の後であって前記RO膜分離工程の前に、前記脱塩素剤添加工程を実施する。
【0035】
前記精密ろ過膜(MF膜)としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な精密ろ過膜を用いることができる。詳しくは、前記精密ろ過膜(MF膜)としては、多孔質の膜が挙げられ、ろ過膜ユニットとなっているものが用いられ得る。ろ過膜ユニットとしては、例えば、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜がベッセル内に保持されたものが挙げられる。また、前記精密ろ過膜(MF膜)としては、中空糸膜あるいは平膜をそのまま被処理水中に浸漬して用いるものも例示される。なお、前記精密ろ過膜(MF膜)は、通常、50nm〜10μm程度の孔径の孔を有している。
【0036】
なお、前記前処理工程においては、前記精密ろ過膜(MF膜)以外にも、前記RO膜の孔径より大きい孔径を備えた、通常、2nm〜200nm程度の孔径を有する、例えば限外ろ過膜(UF膜)などを用いることができ、また、これらのうちいずれかを複数用いたもの、又はこれらを組み合わせたものなどを用いることができる。
【0037】
さらに、前記前処理工程では、前記排水に含まれる前記浮遊物を減少させる目的で、前記排水に凝集剤を添加し、主に前記浮遊物が凝集してなる凝集物を発生、沈殿させる凝集沈殿工程を実施することができる。該凝集沈殿工程を実施することにより、凝集物を前記排水から除去し、前記排水に含まれ得る前記浮遊物を減少させることができる。
【0038】
前記排水に凝集剤を添加することにより、前記浮遊物が凝集物となって沈殿しやすくなるという利点がある。前記凝集物が沈殿した後の上澄み水を、続いてMF膜によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去する。これにより、前記RO膜の目詰まりをさらに抑制することができる。
【0039】
前記凝集剤としては、従来公知の一般的な凝集剤を用いることができる。前記凝集剤としては、例えば、硫酸第一鉄,硫酸第二鉄,塩化第二鉄などの鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミ系凝集剤、これらの混合物等が例示される。なお、前記凝集剤の添加量は、適宜調整され得る。
【0040】
前記凝集沈殿工程は、前記排水が所定量貯留され、前記凝集剤が添加されるように備えられている凝集装置を用いて実施できる。前記凝集装置は、前記凝集剤が適宜、適量、適当な時期に前記排水へ添加されるように備えられている。前記排水に含まれる浮遊物が凝集剤によって凝集物として沈殿した後の上澄み水は、図2に示すように次の工程で用いられ得る。
【0041】
加えて、前記前処理工程では、前記排水に含まれる前記浮遊物を減少させる目的で、前記凝集沈殿工程を実施した後に、砂ろ過工程を実施することができる。前記凝集沈殿工程を実施した後に、前記凝集物が沈殿した後の上澄み水を用いて前記砂ろ過工程を実施することにより、凝集物として沈殿しなかった浮遊物であってもさらに減少され得るため、前記排水に含まれた前記浮遊物をより確実に低減できるという利点がある。
【0042】
前記砂ろ過工程は、例えば、砂利の層の上に砂やアンスラサイト等ろ過メディアの層を敷いた砂ろ過装置を用いて実施できる。該砂ろ過装置は、主に前記排水に含まれる浮遊物を減少させるものであり、前記砂ろ過装置としては、一般的に用いられているものが挙げられる。前記砂ろ過装置を透過した水は、図2に示すように次の工程で用いられ得る。また、前記砂ろ過装置を透過した水の一部は、前記濃縮水と混合されて、詳細を後述する前記減温工程で用いられ得る。
【0043】
次に、前記塩素量測定工程、前記脱塩素剤添加工程、及び前記脱塩素剤増加工程について説明する。図3は、これら各工程で用いる装置類の概略図であり、図2における脱塩素水槽4をより詳細に表したものである。また、脱塩素剤貯留槽5を表したものである。
【0044】
本実施形態の排水処理方法は、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を継続的に測定する塩素量測定工程を前記前処理工程の後に実施する。詳しくは、前記塩素量測定工程を前記前処理工程の後であって、前記RO膜分離工程の前に実施する。
【0045】
また、本実施形態の排水処理方法は、前記遊離残留塩素を所定量以下に保つことができる量の脱塩素剤を前記排水に添加する脱塩素剤添加工程を前記前処理工程の後に実施する。詳しくは、前記脱塩素剤添加工程を前記前処理工程の後であって、前記RO膜分離工程の前に実施する。
【0046】
また、本実施形態の排水処理方法は、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程を前記前処理工程の後に実施する。詳しくは、前記脱塩素剤増加工程を前記前処理工程の後であって、前記RO膜分離工程の前に実施する。
【0047】
なお、前記塩素量測定工程、及び前記脱塩素剤添加工程は、通常、同時に実施し、継続的に実施する。即ち、継続的に前記排水の遊離残留塩素濃度を検知しながら、継続的に前記排水に所定量の脱塩素剤を添加する。また、前記脱塩素剤増加工程は、遊離残留塩素濃度の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤の量を増加させる工程であり、必要に応じて実施するものである。即ち、前記塩素量測定工程において遊離残留塩素濃度が所定値以上に上昇した場合に、前記排水に添加する脱塩素剤の量を増加させて、前記排水に含まれる次亜塩素酸イオンなどの遊離残留塩素を還元させて低減させる。
【0048】
前記塩素量測定工程は、詳しくは、前記排水の酸化還元電位又は遊離残留塩素濃度を計測し、前記排水に含まれる次亜塩素酸イオンなどの遊離残留塩素の量を検知する工程である。具体的には、前記塩素量測定工程は、例えば、図3に示した、前記MF膜を透過したMF膜透過排水を一時的に貯留する脱塩素水槽4と、該脱塩素水槽4に備えられた遊離残留塩素量検知装置とを用いることにより実施することができる。前記遊離残留塩素量検知装置としては、酸化還元電位計(ORP)又は塩素計などを用いることができる。
なお、酸化還元電位計(ORP)又は塩素計としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な、市販されているものを用いることができる。
【0049】
前記遊離残留塩素とは、詳しくは、次亜塩素酸イオン(ClO-)、次亜塩素酸(HClO)、塩素分子(Cl2)である。
なお、焼却プラントから排出される排水は、前記焼却プラントの操業状態、プラント内での作業によって、酸化性物質である遊離残留塩素の濃度が突発的に上昇することがある。前記排水に含まれる遊離残留塩素の濃度が上昇すると、排水の酸化還元電位が上昇するため、該酸化還元電位の値は、前記排水に含まれる遊離残留塩素の濃度を示す指標となる。
【0050】
前記脱塩素剤添加工程は、詳しくは、酸化性物質である前記遊離残留塩素による前記RO膜の劣化を抑制する目的で、前記排水に所定量の脱塩素剤を添加する工程である。具体的には、前記脱塩素剤添加工程は、例えば、図3に示した、脱塩素剤を貯留する脱塩素剤貯留槽5と、前記MF膜透過排水がRO膜へ導かれる途中の段階で脱塩素剤貯留槽5から脱塩素剤をポンプにより供給して添加する手段とを用いることにより実施できる。前記脱塩素剤添加工程を実施することにより、酸化性物質である遊離残留塩素による前記RO膜の劣化、特に芳香族ポリアミドで形成されたRO膜の劣化を抑制することができる。
【0051】
ここで、所定量の脱塩素剤とは、前記RO膜分離工程を実施する前の排水における遊離残留塩素の量を所定量以下に保つことのできる通常の量の脱塩素剤であり、例えば、前記排水の酸化還元電位を100mV以下、又は前記排水の遊離残留塩素濃度を10ppm以下に保つことのできる通常の量の脱塩素剤である。なお、前記焼却プラントにおける操業状態、プラント内での作業によって、前記排水に含まれる遊離残留塩素の量が変動し得るため、添加される脱塩素剤の所定量は変動し得る。また、上述のごとく前記排水の遊離残留塩素濃度は、突発的に上昇することがあり、所定量の脱塩素剤だけでは、RO膜で分離される前記排水の遊離残留塩素濃度の上昇を抑えられなくなり得る。
【0052】
前記脱塩素剤としては、添加された後の排水のCODを上昇させにくいという点で、無機還元剤が好ましい。前記無機還元剤としては、例えば、重亜硫酸ソーダ(亜硫酸水素ソーダ)などの重亜硫酸塩、チオ硫酸ソーダなどのチオ硫酸塩、など、水処理の技術分野において従来公知の一般的なものを用いることができる。なお、これらの脱塩素剤は、例えば、水に溶解させて水溶液としてから前記排水に添加させることができる。
【0053】
前記脱塩素剤増加工程は、具体的には、例えば、図3に示すように、必要に応じて前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に脱塩素剤を供給できるように備えられたポンプと、前記酸化還元電位計又は塩素計とを用いて、前記ポンプを酸化還元電位計又は塩素計と連動させて、酸化還元電位又は遊離残留塩素濃度が所定値より大きくなった場合に前記ポンプを作動させて、前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に脱塩素剤を添加することにより実施できる。前記脱塩素剤増加工程を実施することにより、前記排水に含まれる次亜塩素酸イオンなどの遊離残留塩素が突発的に増加した場合であっても、前記排水に含まれる次亜塩素酸イオンなどの遊離残留塩素の濃度上昇を抑えることができ、酸化性物質である遊離残留塩素による前記RO膜の劣化を抑制することができる。
【0054】
ここで、前記脱塩素剤増加工程において酸化還元電位又は遊離残留塩素濃度の上昇に対応する方法としては、特に限定されず、例えば、酸化還元電位や遊離残留塩素濃度が所定値より大きくなった場合に対応する方法、酸化還元電位や遊離残留塩素濃度の連続的な上昇が認識された場合に対応する方法、酸化還元電位や遊離残留塩素濃度の経時的な上昇傾向が認識された場合に対応する方法などが挙げられる。このようにして、前記脱塩素剤増加工程では、酸化還元電位や遊離残留塩素濃度の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤の量を増加させることができる。
【0055】
なお、前記脱塩素剤添加工程及び前記脱塩素剤増加工程は、上述のごとく図3に示すように、別々の手段によって実施することもできるが、同じ手段を用いて実施することもできる。具体的には、例えば、前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に脱塩素剤を供給できるように備えられたポンプによって、前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に所定量の脱塩素剤を添加することにより前記脱塩素剤添加工程を実施し、該ポンプを酸化還元電位計又は塩素計と連動させて、酸化還元電位や遊離残留塩素濃度が所定値より大きくなった場合に前記ポンプの供給能力を上げて、前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に供給する脱塩素剤の量を増加することにより前記脱塩素剤増加工程を実施できる。
【0056】
本実施形態の排水処理方法は、前記RO膜分離工程を前記前処理工程の後であって前記減温工程の前に実施する。前記RO膜分離工程では、前記排水からRO膜によって濃縮水を分離除去する。即ち、前記焼却プラントから排出される排水をRO膜によって分離して、前記排水に含まれる不純物が濃縮され実質的に容積が減少した前記濃縮水を分離除去する。従って、前記RO膜分離工程を実施して前記排水から前記濃縮水を分離除去することにより、前記排水の一部を汚染度がより高められた水にすることができると認識することもできる。汚染度が比較的高い水は、通常、放流等できず、前記排水と混合されるなどして再度排水処理されるところ、本実施形態の排水処理方法での減温工程(後述)におけるように、汚染度が比較的高くなった前記濃縮水を気化させてその容量を減らすことは、排水処理の効率化の点において好ましい。
【0057】
一方、前記RO膜分離工程では、前記焼却プラントから排出される排水をRO膜によって分離して、前記排水に含まれる不純物を減少させ、実質的に容積が減少した前記透過水を分離除去できる。前記透過水は、前記排水に含まれる不純物等が減少されて、工業用水と同程度の比較的浄化度の高いものになっており、比較的高浄化度が要求される用途で用いられ得る。即ち、例えば、前記透過水を放流することができ、又は、焼却プラント内において高浄化度の求められるボイラ原水、機器冷却水、プラント内で使用するプラント用水等の用途向けなど、汚染されている前記排水をそのまま適用することができない用途で用いることができる。従って、前記RO膜分離工程を実施して前記排水から前記透過水を分離除去することにより、前記排水の一部を比較的浄化度の高い水とし、より高い浄化度が求められる用途に適用することができる。
【0058】
ここで、前記不純物としては、イオン成分、有機物などが挙げられる。前記不純物の前記イオン成分としては、例えば、陽イオン性物質、陰イオン性物質などが挙げられ、具体的には、陰イオンとイオン結合して水に溶解しにくいスケールを発生させやすいカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが例示される。また、前記有機物としては、前記原水に溶解している水溶性有機物などが挙げられる。
【0059】
前記逆浸透膜(RO膜)としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な逆浸透膜を用いることができる。詳しくは、前記逆浸透膜としては、例えば、逆浸透膜ユニットとなっているものが用いられ得る。逆浸透膜ユニットとしては、中空糸膜、スパイラル膜、管状膜等の状態で設置されたろ過膜が、ベッセル内に保持され高い圧力に耐えられるようになったものが挙げられる。また、前記逆浸透膜としては、例えば、非対称膜の緻密層と微細多孔層とで構成される複合膜が挙げられる。なお、前記逆浸透膜にある孔の孔径としては、通常、2nm以下が例示される。
【0060】
また、前記RO膜分離工程では、該RO膜によって濃縮された濃縮水に、析出物(いわゆるスケール)が発生することを防止する目的で、前記MF膜を透過したMF膜透過排水にスケール防止剤を添加することができる。前記MF膜透過排水にスケール防止剤を添加することにより、前記MF膜透過排水に含まれるスケールになり得る成分(イオン状シリカ、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの硬度成分、溶解性蒸発残留物、重炭酸など)がスケールとなって析出することを抑制することができる。
【0061】
前記スケール防止剤としては、具体的には、キレート剤作用を有する化合物、より具体的には、ポリリン酸、ホスホン酸、カルボン酸系高分子電解質(一般に低分子量ポリマーと呼ばれる)等を用いることができる。
【0062】
また、前記RO膜分離工程では、前記RO膜に発生し得るバイオファウリングを防止する目的で、前記MF膜透過排水にバイオファウリング抑制剤を添加することができる。前記MF膜透過排水にバイオファウリング抑制剤を添加することにより、前記RO膜の目詰まりを生じさせるバイオファウリングを抑制することができる。
【0063】
前記バイオファウリング抑制剤としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的なものを用いることができる。
【0064】
なお、前記RO膜分離工程では、前記逆浸透膜(RO膜)のユニットを2つ直列につなげて(図示せず)実施することができる。前記逆浸透膜(RO膜)のユニットを2つ直列につなげることにより、逆浸透膜を透過した透過水の浄化度をさらに高めることができ、該透過水を例えば廃熱ボイラに供給される純水などの浄化度の極めて高い水として適用できる。
【0065】
本実施形態の排水処理方法は、前記減温工程を前記RO膜分離工程の後に実施する。前記減温工程では、前記濃縮水の気化熱により前記熱回収ガスを減温させる。
【0066】
詳しくは、前記減温工程では、前記熱回収装置2を通過して熱が回収された前記熱回収燃焼排ガスに対して、前記減温装置3において前記濃縮水を噴射することによって、前記熱回収燃焼排ガスをさらに減温する。該減温、即ち温度を低下させることは、前記濃縮水が蒸発する際の気化熱を利用しておこなう。
【0067】
前記減温工程においては、前記濃縮水を前記減温装置3内に噴射等するなど、前記熱回収燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により減温させるに際して、前記排水の容積が減じられて前記濃縮水となっている分、気化させる水の量が少ないため、前記熱回収燃焼排ガスを減温する温度幅を小さく設定することができる。また、前記減温装置3で減温される前記熱回収燃焼排ガスは、その上流側で熱回収装置2により燃焼排ガスから熱を回収されたものであり、前記熱回収燃焼排ガスを前記減温装置3において減温する温度幅を小さくする分、その上流側にある前記熱回収装置2において燃焼排ガスから回収する熱量を大きく設定することができる。なお、前記濃縮水の水分は、前記減温工程を実施することにより、通常、水蒸気となって大気中に放出される。
【0068】
具体的には、例えば、前記燃焼排ガスが1000℃であって、前記熱回収燃焼排ガスを前記減温工程により150℃にまで減温するように設定すると、本実施形態の排水処理方法では、前記濃縮水が比較的少ないため、前記熱回収燃焼排ガスを前記減温工程によって300℃から150℃、即ち150℃の温度幅で減温するように設定し得る。従って、前記熱回収装置2においては、1000℃から300℃、即ち700℃分の熱を回収できる。
一方、従来の排水処理方法では、前記減温工程で用いる水が比較的多いため、例えば、前記熱回収燃焼排ガスを前記減温工程によって400℃から150℃、即ち(上記の例における150℃の温度幅より大きい)250℃の温度幅で減温するように設定し得る。従って、前記熱回収装置2においては、1000℃から400℃、即ち(上記の例における700℃分より少ない)600℃分の熱しか回収できない。
【0069】
なお、前記MF膜濃縮水中に含まれる浮遊物(SS)が多い場合には、前記濃縮水を前記減温装置3内に噴射等する際に、配管やノズルの目詰まりを起こす可能性がある。斯かる現象を防ぐべく、前記MF膜濃縮水の全部又は一部を上流側へ返送して、斯かるMF膜濃縮水の全部又は一部に対して前記前処理工程を実施し、前記MF膜濃縮水中に含まれる浮遊物を除去する処理を行ってもよい。
【0070】
本実施形態の排水処理方法は、前記RO膜分離工程及び前記減温工程を実施することにより、前記熱回収装置2において燃焼排ガスから回収する熱量をより大きくすることができることは上述の通りであり、好ましくは、排水処理後の水を極力放流しない方式、より好ましくは、前記排水を実質的に放流しない方式において実施する。
【0071】
詳しくは、従来の排水処理方法においては、排水処理後の水を極力放流しないようにする目的で、排水処理後の水の一部を焼却装置1周辺機器の冷却、その他プラント用水などに利用できるものの、排水処理後の水の大半は、減温装置3内を通過する前記熱回収燃焼排ガスに噴射して気化させ、排水処理後の水の容量を減らすことなどを行う。即ち、比較的多量の水が減温装置3における減温のために用いられることとなる。減温装置3に噴射等される水が比較的多量であるが故に、その気化熱により減温する温度幅を比較的大きく設定することとなる。その分だけ、減温装置3の上流側にある熱回収装置2において、燃焼排ガスから回収する熱量を少なく設定せざるを得ない。即ち、減温装置3において減温する温度幅を大きくすることに伴い、熱回収装置2における燃焼排ガスからの熱回収量を小さくすることとなり、焼却プラントにおける燃焼排ガスからの熱回収効率が低くなりやすい。
【0072】
そこで、本実施形態の排水処理方法のごとく、前記RO膜分離工程によって前記焼却プラントから排出される排水をRO膜によって分離して、前記排水に含まれる不純物が濃縮され汚染度がより高められた前記濃縮水を分離除去する。汚染度が比較的高い水は、通常、放流等できず、前記排水と混合されるなどして再度排水処理されるところ、汚染度が比較的高くなった前記濃縮水を気化させてその容量を減らすことは、排水処理後の水を極力放流しないようにする目的を達成する点において好ましい。
【0073】
一方、前記RO膜分離工程では、前記焼却プラントから排出される排水をRO膜によって分離して、前記排水に含まれる不純物を減少させ、実質的に容積が減少した前記透過水を分離除去できる。前記透過水は、前記排水に含まれる不純物等が減少されて、工業用水等と同程度の比較的浄化度の高いものになっており、比較的高い浄化度が要求される用途で用いられ得る。即ち、例えば、焼却プラント内において比較的高い浄化度の求められるボイラ原水、機器冷却水、プラント内で使用するプラント用水等の用途向けなどで用いることができる。従って、前記RO膜分離工程を実施して、前記排水の一部を比較的浄化度の高い前記透過水を生じさせることは、該透過水を焼却プラントにおける様々な用途に適用できることにつながり、排水処理後の水を極力放流しないようにする目的を達成する点において好ましい。
【0074】
さらに付言するならば、前記減温工程で用いる濃縮水は、焼却プラントから排出される排水に含まれる不純物が濃縮され、汚染度が高まったものであり、例えばボイラ原水、機器冷却水、プラント内で使用するプラント用水などのように比較的高浄化度が要求される用途においてそのまま利用できるものではない。よって、前記濃縮水を極力放流しないようにするためには、再度排水処理することとなり、再度排水処理する分だけ排水処理量が増える。そこで、前記濃縮水を前記排水と混合する代わりに、本実施形態の排水処理方法のように前記減温工程を実施し、前記濃縮水を前記減温装置3で蒸発させ、前記濃縮水の気化熱により前記熱回収燃焼排ガスを減温させることにより、上述のごとく前記熱回収装置2において燃焼排ガスから回収する熱量を大きくすることができるうえに、排水処理量が増加することを抑制できる。
【0075】
なお、前記前記減温工程で用いる濃縮水には、前記前処理工程においてMF膜によって前記排水が濃縮されたMF膜濃縮水を混合させることができる。また、前記濃縮水には、前記MF膜を逆流洗浄(逆洗)したときや薬品洗浄したときの排水を混合させることができる。即ち、前記濃縮水には、必要に応じて、他の排水等を混合させることができる。
【0076】
本実施形態の排水処理方法は、前記RO膜分離工程においてRO膜を透過した透過水をさらに取り扱う後処理工程を、前記RO膜分離工程の後に実施することができる。
【0077】
具体的には、前記後処理工程では、前記透過水が純水と同等の水質となることから、前記透過水を直接廃熱ボイラへ給水することができる。なお、前記後処理工程においては、焼却プラントにおいて必ずしも完全なクローズドシステムを採用していない場合、前記透過水を海、河川、又は下水等へ放流することができる。
【0078】
なお、前記前処理工程の前に、例えば、従来公知の水処理方法を採用する態様も本発明に含まれ得る。また例えば、前記後処理工程の後に、従来公知の水処理方法を採用する態様も本発明に含まれ得る。
【0079】
続いて、本発明に係る排水処理設備の一実施形態について説明する。
【0080】
本実施形態の排水処理設備は、有機物を燃焼させる焼却装置1と、該焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置2と、前記熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガス(熱回収燃焼排ガス)をさらに減温させる減温装置3とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理設備であって、
前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定手段と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加手段と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加手段と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離手段と、前記熱回収燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置3で減温させる減温手段とが備えられていることを特徴とする。
【0081】
前記塩素量測定手段としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な装置が挙げられ、例えば、酸化還元電位計又は塩素計を備え前記MF膜透過排水を一時的に貯留する脱塩素水槽4などが挙げられる。
【0082】
前記脱塩素剤添加手段としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な装置が挙げられ、例えば、脱塩素剤を貯留する脱塩素剤貯留槽5、MF膜透過排水がRO膜へ導かれる途中の段階で脱塩素剤貯留槽5から脱塩素剤を添加するように備えられた配管などが挙げられる。
【0083】
前記脱塩素剤増加手段としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な装置が挙げられ、例えば、必要に応じて前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に脱塩素剤を添加できるように備えられたポンプ、該ポンプが酸化還元電位計又は塩素計と連動して酸化還元電位又は遊離残留塩素濃度が所定値より大きくなった場合に前記ポンプが作動して前記脱塩素剤貯留槽5から前記脱塩素水槽4に脱塩素剤が添加されるように備えられた装置などが挙げられる。
【0084】
前記RO膜分離手段としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な装置が挙げられ、例えば、上述したRO膜、又はRO膜ユニットなどが挙げられる。
【0085】
前記減温手段としては、水処理の技術分野において従来公知の一般的な装置が挙げられる。例えば、前記熱回収装置2から導入される前記熱回収燃焼排ガスに水を噴射又は噴霧し、前記熱回収燃焼排ガスの温度を水の気化熱により下げる減温塔などの減温装置3にまで前記濃縮水を引き込む装置(図示せず)などが挙げられる。
【0086】
また、本実施形態の排水処理設備は、前記排水に含まれる浮遊物を減少させるべく前記排水を精密ろ過膜(以下、MF膜ともいう)によって分離し該精密ろ過膜(MF膜)を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去する前処理手段が備えられ得る。
【0087】
本実施形態の排水処理設備は、他に、前記排水が所定量貯蓄され前記凝集剤が適宜、適量、適当な時期に前記排水へ添加される凝集装置や、砂利の層の上に砂やアンスラサイト等ろ過メディアの層を敷いたものなど、一般的に用いられている砂ろ過装置が備えられ得る。
【0088】
本実施形態の排水処理設備は、一般的な方法によって製造することができる。即ち、前記MF膜、前記RO膜、前記凝集装置、前記砂ろ過装置などとしては、水処理の技術分野において一般的に用いられているものを採用することができ、これらに必要な配管、配線等を設置するなどして組み合わせ、通常の方法で本実施形態の排水処理設備を製造することができる。
【0089】
本発明は、上記例示の焼却プラントから排出される排水の排水処理方法および排水処理設備に限定されるものではない。
また、一般の水処理方法および水処理設備において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】焼却プラントを簡略的に表した簡略図。
【図2】本実施形態の排水処理方法で用いる装置類の概略図。
【図3】塩素量測定工程、脱塩素剤添加工程、及び脱塩素剤増加工程で用いる装置類の概略図。
【符号の説明】
【0091】
1・・・焼却装置(焼却炉)
2・・・熱回収装置(廃熱ボイラ)
3・・・減温装置(減温塔)
4・・・脱塩素水槽
5・・・脱塩素剤貯留槽
6・・・遊離残留塩素量検知装置(酸化還元電位計又は塩素計)
P・・・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理方法であって、
前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定工程と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加工程と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加工程と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離工程と、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させる減温工程とを実施することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記脱塩素剤添加工程を実施する前に、前記排水に含まれる浮遊物を減少させる前処理工程を実施する請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記前処理工程では、前記排水に含まれる浮遊物を減少させるべく、前記排水を精密ろ過膜(MF膜)によって分離し該MF膜を透過したMF膜透過排水を前記排水から分離除去する請求項2記載の排水処理方法。
【請求項4】
有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の排水処理設備であって、
前記排水に含まれる遊離残留塩素の量を測定する塩素量測定手段と、前記排水に脱塩素剤を添加する脱塩素剤添加手段と、前記遊離残留塩素の量の上昇に対応して前記排水に添加する脱塩素剤を増加させる脱塩素剤増加手段と、前記脱塩素剤が添加された前記排水から逆浸透膜(RO膜)によって濃縮水を分離除去するRO膜分離手段と、熱回収された燃焼排ガスを前記濃縮水の気化熱により前記減温装置で減温させる減温手段とが備えられていることを特徴とする排水処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−64016(P2010−64016A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233385(P2008−233385)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】