説明

排水処理装置

【課題】各種の生産設備から排出される排水を処理するための効率的な排水処理方法を提供する。
【解決手段】排水処理装置10は、処理対象成分の濃度が低い排水を処理するための低濃度排水処理手段13と、処理対象成分の濃度が高い排水を処理するための高濃度排水処理手段14と、生産設備から低濃度排水処理手段と高濃度排水処理手段とに排水を送る排水路4,11,12と、排水路を通る排水を前記低濃度排水処理手段又は前記高濃度排水処理手段に切り替えて排水させる流路切り替え手段15,16と、生産設備での生産工程のプロセスデータ信号を送信するプロセスデータ信号送信手段17と、プロセスデータ信号を受信して、該プロセスデータ信号に基づいて、排水路を通る排水の処理対象成分の濃度を判断して、該濃度に基づいて、流路切り替え手段に動作信号を送る制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の生産設備から排出される排水であって、該排水中の処理対象成分の濃度が生産工程によって変化するものに適用される排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業において限りある水資源の節約および地球環境保全の観点から産業排水の再利用が積極的に行われている。また、生産している製品により様々な薬品が使用されているため、排水処理が必須である。
【0003】
例えば、半導体製造工場では半導体のエッチング処理のため大量のフッ酸が使用されており、その処理にはカルシウム塩を利用した凝集沈澱処理が行われている。これは、フッ素イオン混入排水にカルシウム塩を添加して不溶性のフッ化カルシウムを生成させ、凝集沈殿させることにより、産業排水中のフッ素イオンを除去する処理方法である。この凝集沈澱処理においてはフッ素の不溶化はフッ素とカルシウムの化学反応であるので、両者の濃度が濃い方が反応速度が早く、短時間で、高効率でフッ素イオンを除去することができる。フッ素イオンの排出基準値は8mg/L以下であるので、各メーカーではこの基準値を超えないような排水処理を実施している。
【0004】
一方、半導体製造工揚での半導体のエッチング処理ではフッ酸による処理ののち大量の純水による洗浄が行われる。そのため、生産設備から排出される排水には大きく分けて、フッ酸濃度が濃い使用済みフッ酸とフッ酸濃度が薄い洗浄排水が発生することになる。
【0005】
従来、この半導体製造工場から排出される排水は、例えば図5に示すような排水処理装置1によって行われている。この排水処理装置1は、半導体製造設備2と、該設備から排出される排水を処理する排水処理手段3と、半導体製造設備2で発生する排水を排水処理手段3に送る排水路4とを備えている。半導体製造設備2は、基板等の原料に対して、少なくともエッチング処理工程Aと洗浄処理工程Bとを行って、製品を得るように構成されており、エッチング処理工程Aによって発生する高濃度排水と、洗浄処理工程Bによって発生する低濃度排水とは、いずれも排水路4を通って排水処理手段3に送られるようになっている。排水処理手段4では、排水にカルシウム塩や凝集剤を添加して、フッ素を凝集沈殿させて、排水中のフッ素濃度を低減するようにしている。
【0006】
しかしながら、半導体製造設備2から排出されるフッ酸濃度が薄い洗浄排水は、高濃度排水よりも大量であるためフッ素の凝集沈澱処理において、カルシウム塩や凝集剤を過剰に投入する必要がある。そのため、薬品の使用量および汚泥発生量が増大し、処理費用の増大および地球環境の汚染につながっていた。また、処理不良のためフッ素イオンの排水基準を超過したりする恐れがあった。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1には、半導体工場における排水処理システムに関する発明が開示されている。その排水処理システムでは、排水の電導度とフッ素イオン濃度及びpH値の相関から設定された電導度により、各工程排水を中間槽に分離し適切な排水処理施設への送水を自動かつ連続で制御できるように構成したので、各処理施設の負荷を軽減でき、また人手が要らず安全に分離を行える効果があるとされている(特許文献1の〔発明の効果〕参照)。
【0008】
また、特許文献2には、排水処理の負担を軽減して排水処理コストを低減することができ、かつ工場設備等の源水の使用量を低減することができる排水処理方法に関する発明が開示されている。その排水処理方法では、各種の製造装置から排出された排水の不純物濃度を測定する工程と、前記不純物濃度の測定結果に基づいて、不純物濃度が基準値以上のものと基準値よりも低いものとに分離する工程と、不純物濃度が基準値以上の排水に所定の排水処理を施して放流する工程と、不純物濃度が基準値よりも低い排水を回収する工程とを具備する構成とされている(特許文献2の〔請求項10〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−123685号公報
【特許文献2】特開2000−176434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の排水処理方法は、排水の電導度や、排水中の処理対象成分や不純物の濃度を測定して排水処理の制御を行うので、測定器の高濃度排水に対する性能面での耐久性などを考慮する必要があった。また、生産設備の各種工程の処理時間、排水の排出時間、排出量などに応じた効率的な排水処理を行うことができなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、各種の生産設備から排出される排水であって、該排水中の処理対象成分の濃度が生産工程によって変化するものに適用される排水処理装置であって、生産工程の処理の状況に即した効率的な排水処理ができるようにした排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、各種の生産設備から排出される排水であって、該排水中の処理対象成分の濃度が生産工程によって変化するものに適用される排水処理装置において、
前記処理対象成分の濃度が低い排水を処理するための低濃度排水処理手段と、
前記処理対象成分の濃度が高い排水を処理するための高濃度排水処理手段と、
前記生産設備から前記低濃度排水処理手段と前記高濃度排水処理手段とに排水を送る排水路と、
前記排水路を通る排水を前記低濃度排水処理手段又は前記高濃度排水処理手段に切り替えて排水させる流路切り替え手段と、
前記生産設備での生産工程の前記処理対象成分濃度データを含むプロセスデータ信号を送信するプロセスデータ信号送信手段と、
前記プロセスデータ信号を受信して、該プロセスデータ信号に基づいて、前記排水路を通る排水の前記処理対象成分の濃度を判断して、該濃度が所定値よりも低いか高いかを判定し、該濃度が所定値よりも低いと判定したときは、該排水を前記低濃度排水処理手段に流し、該濃度が所定値よりも高いと判定したときは、該排水を前記高濃度排水処理手段に流すように、前記流路切り替え手段に動作信号を送る制御手段とを備えていることを特徴とする排水処理装置を提供するものである。
【0013】
本発明の排水処理装置によれば、プロセスデータ信号送信手段が、生産設備での生産工程のプロセスデータ信号を送信し、制御手段が、該プロセスデータ信号を受信して、該プロセスデータ信号に基づいて、排水路を通る排水の処理対象成分の濃度を判断して、該濃度が所定値よりも低いか高いかを判定し、該濃度が所定値よりも低いと判定したときは、該排水を低濃度排水処理手段に流し、該濃度が所定値よりも高いと判定したときは、該排水を高濃度排水処理手段に流すように、流路切り替え手段に動作信号を送るので、排水の電導度や、排水中の処理対象成分の濃度等を測定しなくても、排水中の処理対象成分の濃度に応じて、排水を低濃度排水処理手段と高濃度排水処理手段とに効率的に切り分けて流すことができる。
【0014】
本発明の排水処理装置においては、前記プロセスデータ信号送信手段が送信するプロセスデータは、前記処理対象成分濃度データと、前記生産設備でなされる各処理の処理時間と、該処理によって発生する排水の排出時間と、該排水の排水量とを含み、前記制御手段は、前記生産設備でなされる処理が変更されて、前記処理対象成分の濃度が変化した排水がなされるとき、該排水によって前記排水路を通る排水の処理対象成分の濃度が変化する時間を求め、その時間を考慮して前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されていることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、生産設備でなされる各処理の処理時間と、該処理によって発生する排水の排出時間と、該排水の排水量とによって、処理対象成分の濃度が変化した排水がなされるとき、該排水によって排水路を通る排水の処理対象成分の濃度が変化する時間を求めることができるので、低濃度排水と高濃度排水とを正確に切り分けて、それぞれに対応する排水処理手段に流すことができる。
【0016】
本発明の排水処理装置においては、前記排水路には、前記排水中の処理対象成分の濃度を直接又は間接的に測定する濃度測定手段が設けられており、前記制御手段は、前記プロセスデータ信号と、前記濃度測定手段によって測定された濃度とに基づいて、前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、プロセスデータ信号に基づいて、排水路を通る排水の処理対象成分の濃度を迅速に判断して、流路を効率よく切り替えることができると共に、排水中の処理対象成分の濃度が突発的に変化した場合などでも、濃度測定手段により測定された濃度に基づいて、流路を適正な方向に切り替えることができる。
【0018】
本発明の排水処理装置においては、前記濃度測定手段は、前記流路切り替え手段から前記低濃度排水処理手段に至る排水路の途中に設けられており、前記制御手段は、前記濃度測定手段によって測定される排水中の処理対象成分の濃度が所定値よりも高いときには、該排水を前記高濃度排水処理手段に流すように、前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されていることが好ましい。
【0019】
上記態様によれば、濃度測定手段が、流路切り替え手段から低濃度排水処理手段に至る排水路の途中に設けられているので、濃度測定手段が高濃度排水とできるだけ接触しないようにして、濃度測定手段の耐久性を向上させることができると共に、排水が低濃度排水処理手段へ送られている状態で、排水の処理対象成分の濃度が突発的に上昇した場合には排水を高濃度排水処理手段に送るように切り替えることができる。
【0020】
本発明の排水処理装置においては、前記生産設備が半導体生産設備であり、前記処理対象成分がフッ酸であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の排水処理装置によれば、プロセスデータ信号送信手段が、生産設備での生産工程のプロセスデータ信号を送信し、制御手段が、該プロセスデータ信号を受信して、該プロセスデータ信号に基づいて、排水路を通る排水の処理対象成分の濃度を判断して、該濃度が所定値よりも低いか高いかを判定し、該濃度が所定値よりも低いと判定したときは、該排水を低濃度排水処理手段に流し、該濃度が所定値よりも高いと判定したときは、該排水を高濃度排水処理手段に流すように、流路切り替え手段に動作信号を送るので、排水の電導度や、排水中の処理対象成分の濃度等を測定しなくても、排水中の処理対象成分の濃度に応じて、排水を低濃度排水処理手段と高濃度排水処理手段とに効率的に切り分けて流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の排水処理装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】同排水処理装置における制御手段のフローチャートである。
【図3】本発明の排水処理装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】同排水処理装置における制御手段のフローチャートである。
【図5】従来の排水処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の排水処理装置の実施形態を説明する。ただし、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
図1,2には、本発明を半導体製造設備における排水処理に適用した一実施形態が示されている。なお、本発明における生産設備は、半導体製造設備に限らず、例えば液晶製造、太陽電池製造、金属表面加工等の生産設備の排水処理にも適用することができる。
【0025】
図1に示すように、この排水処理装置10は、半導体製造設備2の排水処理に適用されるものであり、半導体製造設備2は、エッチング処理工程A、洗浄処理工程Bを行うようになっている。そして、エッチング処理工程A時には、フッ酸濃度の高い高濃度排水を排出し、洗浄処理工程B時には、フッ酸濃度が比較的低い低濃度排水を排出するようになっている。この実施形態では、フッ酸が本発明における処理対象成分となる。これらの排水は、配管4を通して流出する。
【0026】
配管4は、分岐配管11、12に分岐し、一方の分岐配管11は低濃度排水処理手段13に連結され、他方の分岐配管12は高濃度排水処理手段14に連結されている。これらの配管4,11,12が、本発明における排水路を構成している。低濃度排水処理手段13は、この実施形態の場合、活性炭処理および陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を用いた排水からイオン成分の除去を行う手段からなっており、そこで処理された排水は、洗浄水として再利用することができる。また、高濃度排水処理手段14は、例えば、フッ酸を含む排水に塩化カルシウムを加え、排水中のフッ素をフッ化カルシウムとして析出させ、さらにポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤によりフッ化カルシウムを沈降させ除去を行う手段からなっており、処理された排水は下水として放流される。
【0027】
分岐配管11には、バルブ15が設けられ、分岐配管12には、バルブ16が設けられており、これらのバルブ15,16が、本発明における流路切り替え手段をなしている。ただし、流路切り替え手段としては、上記のようなバルブに限らず、分岐配管11、12の分岐部に設けられた三方弁などを用いることもできる。
【0028】
半導体製造設備2には、該設備におけるプロセスデータ信号を送信するプロセスデータ信号送信手段17が設けられている。このプロセスデータ信号としては、例えば、排水を生じる各処理の処理時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水量、処理に使用するフッ酸液の濃度、処理に使用するフッ酸液量などが挙げられる。
【0029】
また、上記プロセスデータ信号送信手段17から送信されるプロセスデータ信号を受信して、前記バルブ15,16に作動信号を送る制御手段18が設けられている。制御手段18は、流路切り替え手段であるバルブ15,16に接続されており、上記プロセスデータ信号に基づいて、バルブ15、16に作動信号を送るようになっている。
【0030】
制御手段18における制御フローを図2に基づいて説明すると、まず、プロセスデータ信号を受信し(ステップS1)、このプロセスデータ信号に基づいて排水中のフッ酸濃度を判断する(ステップS2)。例えば、プロセスデータ信号として、排水を生じる各処理の処理時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水時間(開始時間、終了時間等)、各処理によって生じる排水量が受信された場合、それらに基づいて、処理に使用するフッ酸の濃度、フッ酸の使用量から排水中のフッ酸の総量を算出し、排水中のフッ酸の総量を受信された排水量で除算する方法で、排水中のフッ酸濃度を判断することができる。
【0031】
この判断の際、半導体製造設備2でなされる処理が変更されて、フッ酸濃度が変化した排水がなされるとき、該排水によって配管4,11,12を通る排水の処理対象成分の濃度が変化する時間、言い換えると、配管4,11,12に残っている排水が流出して濃度が変化した排水が流入するまでの時間を求め、その時間を考慮して上記フッ酸濃度を判断することが好ましい。
【0032】
そして、上記フッ酸濃度が所定以上か否かを判断し(ステップS3)、フッ酸濃度が所定以上の場合には、バルブ15を閉じ、バルブ16を開き(ステップS4)、ルーチンを終了する。その結果、排水は、高濃度排水処理手段14に送られ、そこでフッ酸を含む排水に塩化カルシウムを加え、排水中のフッ素をフッ化カルシウムとして析出させ、さらにポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤によりフッ化カルシウムを沈降させ除去する処理を受けて、フッ酸濃度を低減されて下水に放流される。
【0033】
また、フッ酸濃度が所定値未満の場合には、バルブ15を開き、バルブ16を閉じ(ステップS5)、ルーチンを終了する。その結果、排水は、低濃度排水処理手段13に送られ、そこで活性炭処理および陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を用いた排水からイオン成分を除去する処理を受けて、洗浄水として再利用される。
【0034】
このように、この排水処理装置10によれば、半導体製造設備2のプロセスデータ信号に基づいて、排水が、フッ酸濃度の低い低濃度排水か、フッ酸濃度が高い高濃度排水かを判断し、低濃度排水の場合は、低濃度排水処理手段13に送り、高濃度排水の場合は、高濃度排水処理手段14に送るようにしたので、簡単な装置によって流路切り替えを効率よく行い、排水処理手段の負荷をできるだけ軽減できると共に、洗浄水の再利用を図ることができる。なお、低濃度排水は、低濃度排水処理手段13で処理した後、そのまま下水に放流してもよい。
【0035】
図3,4には、本発明を半導体製造設備における排水処理に適用した他の実施形態が示されている。なお、図中、図1,2に示した実施形態と実質的に同一部分には、同符号を付してその説明を省略することとする。
【0036】
図3に示すように、この排水処理装置10aは、基本的に、図1,2に示した排水処理装置10と同様な構成をなしている。ただし、分岐管11のバルブ15と低濃度排水処理手段13との間に、排水中のフッ酸濃度を直接又は間接的に測定する濃度測定手段19が設けられており、この濃度測定手段19は、制御手段18に接続されていて、制御手段18は、プロセスデータ信号送信手段17から送信されるプロセスデータ信号と、濃度測定手段19から送信されるフッ酸濃度との両方に基づいて、バルブ15,16を制御するようになっている点が相違する。
【0037】
上記濃度測定手段19としては、例えばフッ素イオン電極を用いたフッ素イオン測定装置のようなフッ酸濃度を直接測定する装置や、排水中の塩濃度、電気伝導度、pHなどを測定して、フッ酸濃度を間接的に測定する装置などが用いられる。このような測定装置としては、例えばフッ酸濃度モニタ(堀場製作所)が知られている。
【0038】
制御手段18における制御フローを図4に基づいて説明すると、まず、プロセスデータ信号を受信し(ステップS1)、このプロセスデータ信号に基づいて、前記実施形態と同様に、排水中のフッ酸濃度を判断する(ステップS2)。
【0039】
この判断の際、半導体製造設備2でなされる処理が変更されて、フッ酸濃度が変化した排水がなされるとき、該排水によって配管4,11,12を通る排水の処理対象成分の濃度が変化する時間、言い換えると、配管4,11,12に残っている排水が流出して濃度が変化した排水が流入するまでの時間を求め、その時間を考慮して上記フッ酸濃度を判断することが好ましい。
【0040】
そして、上記フッ酸濃度が所定以上か否かを判断し(ステップS3)、フッ酸濃度が所定以上の場合には、バルブ15を閉じ、バルブ16を開き(ステップS4)、ルーチンを終了する。その結果、排水は、高濃度排水処理手段14に送られ、フッ酸濃度を低減されて下水に放流される。
【0041】
また、フッ酸濃度が所定値未満の場合には、濃度測定手段19の信号を受信して、そのフッ酸濃度が所定値以上か否かを判断する(ステップS6)。そして、フッ酸濃度が所定値以上の場合には、ステップS3でフッ酸濃度が所定値以上と判断された場合と同様に、バルブ15を閉じ、バルブ16を開く(ステップS4)。その結果、排水は、高濃度排水処理手段14に送られ、フッ酸濃度を低減されて下水に放流される。
【0042】
また、フッ酸濃度が所定未満の場合には、バルブ15を開き、バルブ16を閉じる(ステップS7)。その結果、排水は、低濃度排水処理手段13に送られ、そこで再生処理を受けて、洗浄水として再利用される。
【0043】
したがって、この実施形態では、プロセスデータ信号に基づいて判断されるフッ酸濃度と、濃度測定手段19によって測定されるフッ酸濃度との両方が所定値未満のときだけ、低濃度排水処理手段13に排水が流されるようになっている。したがって、低濃度排水処理手段13に排水が流されている状態で、突発的に高濃度のフッ酸を含有する排水が流されてきたときには、直ちに流路が切り替えられて、高濃度排水処理手段14に流れるようになるので、排水処理をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【0044】
また、濃度測定手段14は、分岐管11のバルブ15と低濃度排水処理手段13との間に配置されているので、通常は高濃度排水に曝されることはなく、高濃度のフッ酸排水による腐食から保護することができる。また性能面で高濃度排水には使用できない測定器であっても使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
2 半導体製造設備
4 配管
10,10a 排水処理装置
11,12 分岐管
13 低濃度排水処理手段
14 高濃度排水処理手段
15,16 バルブ
17 プロセス信号送信手段
18 制御手段
19 濃度測定手段
A エッチング処理工程
B 洗浄処理工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の生産設備から排出される排水であって、該排水中の処理対象成分の濃度が生産工程によって変化するものに適用される排水処理装置において、
前記処理対象成分の濃度が低い排水を処理するための低濃度排水処理手段と、
前記処理対象成分の濃度が高い排水を処理するための高濃度排水処理手段と、
前記生産設備から前記低濃度排水処理手段と前記高濃度排水処理手段とに排水を送る排水路と、
前記排水路を通る排水を前記低濃度排水処理手段又は前記高濃度排水処理手段に切り替えて排水させる流路切り替え手段と、
前記生産設備での生産工程の前記処理対象成分濃度データを含むプロセスデータ信号を送信するプロセスデータ信号送信手段と、
前記プロセスデータ信号を受信して、該プロセスデータ信号に基づいて、前記排水路を通る排水の前記処理対象成分の濃度を判断して、該濃度が所定値よりも低いか高いかを判定し、該濃度が所定値よりも低いと判定したときは、該排水を前記低濃度排水処理手段に流し、該濃度が所定値よりも高いと判定したときは、該排水を前記高濃度排水処理手段に流すように、前記流路切り替え手段に動作信号を送る制御手段とを備えていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記プロセスデータ信号送信手段が送信するプロセスデータは、前記処理対象成分濃度データと、前記生産設備でなされる各処理の処理時間と、該処理によって発生する排水の排出時間と、該排水の排水量とを含み、前記制御手段は、前記生産設備でなされる処理が変更されて、前記処理対象成分の濃度が変化した排水がなされるとき、該排水によって前記排水路を通る排水の処理対象成分の濃度が変化する時間を求め、その時間を考慮して前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されている請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記排水路には、前記排水中の処理対象成分の濃度を直接又は間接的に測定する濃度測定手段が設けられており、
前記制御手段は、前記プロセスデータ信号と、前記濃度測定手段によって測定された濃度とに基づいて、前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されている請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記濃度測定手段は、前記流路切り替え手段から前記低濃度排水処理手段に至る排水路の途中に設けられており、前記制御手段は、前記濃度測定手段によって測定される排水中の処理対象成分の濃度が所定値よりも高いときには、該排水を前記高濃度排水処理手段に流すように、前記流路切り替え手段に動作信号を送るように構成されている請求項2記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記生産設備が半導体生産設備であり、前記処理対象成分がフッ酸である請求項1〜4のいずれか1つに記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250218(P2012−250218A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127071(P2011−127071)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】