説明

排水搬送システム

【課題】有機廃棄物が詰まりにくいように形成された建築物における排水搬送システムを提案する。
【解決手段】建築物Bの縦方向一部から下へ延びる第1縦主管部6Aの下端部を拡開して中継槽14とし、この中継槽から横方向に延びる第1横主管部6Bを経て排水口へ至る主管路6と、上記建築物の一部に設置された複数のディスポーザ4で発生したDSP排水を第1縦主管部へ圧送するために、各ディスポーザ毎に配管した横向きの従管路2と、中継槽に入ったDSP排水を第1横主管部へ圧送するための搬送ポンプ34と、上記第1縦主管部の上部に開口した第1通気口8及び中継槽に開口した第2通気口24とを具備し、従管路から主管路へ連続する管路系のうち、従管路及び第1横主管部はそれぞれ搬送ポンプで液体を圧送可能に、第1縦主管部は、上記通気口を介して外部と連通し、DSP排水が重力作用により落下する開放流路に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における排水搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大きなビルなどの建築物では、厨房から上下方向に距離があるゴミ捨て場まで、生ごみなどの厨芥類を台車などで運搬すると手間がかかる。
【0003】
そこで厨房の近くに配置されたディスポーザと、ディスポーザから比較的粘性の高い泥状物を圧送可能なルーツポンプなどのポンプを含み、ディスポーザで細断した有機廃棄物と水との混合物(以下「DSP排水」という)を、排水管を介して外部へ圧送するシステムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、建築物内に複数のディスポーザがある場合に、各ディスポーザから外部へ延びる排水管を配管すると、配管総延長が増大するとともに、建物の面積のうち排水管の断面で占める割合が増加し、好ましくない。
【0005】
これに対して、マンションなどの台所排水搬送システムとして、各住宅毎に設置したディスポーザからそれぞれ従管路を介して横主管路の基部へDSP排水を集めるとともに、この横主管路の基部に固液分離装置を配置したものが提案されている(特許文献2)。固液分離装置で分離した固形成分は、屋上などに貯蔵した雨水などで、高度差を利用した水勢を利用して押し流すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−29097
【特許文献2】特開2008−150863
【特許文献3】特許第559350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように建築物の上部から下部へ配管を縦設する場合に、配管のルートの途中に各種設備など配管上の障害物があったときには、配管の一部を横向きにして障害物を迂回する必要がある。そうすると、迂回用の横管部分を含む管路系全体の流体抵抗が増加し、圧送ポンプの負荷が大となる。また横管部分に有機廃棄物が詰まってしまう可能性がある。
【0008】
予めそうした障害物を避けた直線的な配管ルートが選択できればよいが、建物の階数が多くなると、そうした配管ルートをとることが出来ないことがある。
【0009】
特許文献2の固液分離装置付きの排水搬送システムは、比較的有機物の濃度が高い業務用の厨房排水に適用することが難しい。厨房排水の量が固液分離装置の処理能力を超えてしまう可能性があるからである。
【0010】
前述のように複数の従管路から一本の主管路へ排水を集水する管路系の構造は、省スペースという点では有利であるが、有機物を多量に含むDSP排水が管に詰らないようにするためには、ポンプの圧力を高くしなければならず、そうすると下流側の従管路へ逆流してしまうおそれもある。
【0011】
本発明の第1の目的は、DSP排水を複数の横方向の従管路から縦方向の主管路に集めるように設け、かつ建築物の特定箇所を迂回するように構成した排水搬送システムであって、排水の搬送をスムーズに行えるものを提案することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、上記構成の排水搬送システムであって、管路を効果的に洗浄できるものを提案することである。
【0013】
本発明の第3の目的は、上記構成の排水搬送システムであって、有機廃棄物が詰まりにくいものを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の手段は、
建築物の縦方向一部から下へ延びる第1縦主管部の下端部を拡開して中継槽とし、この中継槽から横方向に延びる第1横主管部を経て排水口へ至る主管路と、
上記建築物の一部に設置された複数のディスポーザで発生したDSP排水を第1縦主管部へ圧送するために、各ディスポーザ毎に配管した横向きの従管路と、
中継槽に入ったDSP排水を第1横主管部へ圧送するための搬送ポンプと、
上記第1縦主管部の上部に開口した上流側通気口及び中継槽に開口した下流側通気口と、
を具備し、
従管路から主管路へ連続する管路系のうち、従管路及び第1横主管部は、それぞれDSP排水を圧送するように設け、また第1縦主管部は、上記通気口を介して外部と連通させ、DSP排水が重力作用により落下する開放流路に形成している。
【0015】
本手段では、図1に示す複数の従管路2から主管路6へ流れる排水が、横向きの従管路内を圧送され、第1縦主管部6A内を圧力開放状態で落下し、第1横主管部6Bで再び圧送される仕組みを提案する。これにより第1縦主管部での逆流を避けている。通常の排水では、落下の勢いを削がないように縦管と横管との間にエルボ管を適用すればよいが、DSP排水の場合には有機物がエルボ管に付着して閉塞させる虞がある。そこで本手段では、第1縦主管部の下端部を拡開して中継槽14としている。
【0016】
「主管路」は建築物の一定範囲で生ずるDSP排水を集めるための管路、「従管路」は主管路に連なる管路である。主管路は、一本の管路であることが望ましい。図示の従管路はディスポーザを含んでいるが、従管路とディスポーザとを別個の物としても構わない。「通気口」は第1縦主管部内に入った排水の搬送圧力を解消することが可能な面積を有する。「中継槽」は排水及び洗浄水の液留めとして第1縦主管部及び第1横主管部より大内径に形成する。「搬送ポンプ」は容積形ポンプとするとよい。
【0017】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつさらに上記中継槽より上流の管路系の適所に設けた洗浄水供給手段と、この洗浄水供給手段及び搬送ポンプを制御する制御装置とを具備し、
上記搬送ポンプは、少なくとも中継槽中の堆積物である固形成分とDSP排水との混合流体、中継槽内の空気、中継槽内の洗浄水である水のいずれをも第1横主管部へ圧送することが可能な流体ポンプであり、
上記制御装置は、
搬送ポンプを作動させて、中継槽の液位が中継槽の底面近くになるまで中継槽内の堆積物及びDSP排水を排出する第1の工程、
搬送ポンプを停止させるとともに洗浄水供給手段を作動させて、中継槽を洗浄水で充填させる第2の工程、
洗浄水供給手段を停止させるとともに搬送ポンプを作動させて中継槽の液位が中継槽の底面近くになるまで洗浄水を排出するとともに中継槽内へ空気を導入する第3の工程、
を実行させることができるように構成している
【0018】
本手段は、中継槽の洗浄機能に関して提案する。堆積物・水・空気の何れも圧送できるルーツポンプなどを用いてDSP排水を底面近くまで排水し、次に洗浄水を貯水して底面近くまで排水する。その制御手法は図4の説明で述べる。洗浄水を一気に放水するので、洗浄機能が高まる。これに対して水中ポンプを用いることも考えられるが、水槽の容積を十分に確保しないとエアロックを生じる虞がある。「底面近くまで…排出する」とは、底面が露出するまで排出することを含む。
【0019】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ中継槽は、制御装置と接続された液位計測手段を有し、
かつ第1縦主管部のうち中継槽に接続する部分を、鉛直方向に対して30°〜45°の角度をなす傾斜管路に形成している。
【0020】
本手段では、図2に示すように、中継槽への流入管路を傾斜管12とすることを提案している。これにより槽内の液面が波立つことを抑制し、液位の測定を正確に測定することができる。
【0021】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のうちの何れか一の手段に記載した排水搬送システムであって、
複数の従管路から第1縦主管部を経て第1横主管部へ至る管区を、最も上側の管区として、複数の従管路から縦主管部を経て横主管部へ至る複数の管区を建築物の上側から下側へ構築し、
最も上側の管区では、一番上の従管路との合流箇所より上方に第1縦主管部分に上流側通気口を開口し、
2番目以降の管区では、その縦主管部を、当該管区より一つ上の管区の横主管部の末端に連続させ、かつ当該管区の主管路部分及び従管路は、上流側通気口を省略することを除いて最も上側の主管路部分及び従管路に関して上記一の手段に記載した構造を有する。
【0022】
本手段では、図5に示す如く複数の従管路と一本の縦主管部と一本の横主管部とからなる管区A、A…を順次連続させて構築することを提案している。これにより配管パターンがさらに増大する。また横主管部の前に下流側通気口を有する中継槽を配置することで管路系を複数管区に区切ったから、各管区毎の堆積物を除去するための搬送圧力を加えれば足りる。中継槽の洗浄を制御する制御装置は、各管区毎に設けてもよく、また建築物全体で一つの制御装置を設けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
第1の手段に係る発明によれば、従管路から主管路を経て排水口へ至る管路系のうち横主管部の上流側に通気口付き中継槽を配したから、管路系の上流側のポンプから下流まで管が詰まらないように送水する場合と比べて搬送に要する圧力を低減できる。
【0024】
第2の手段に係る発明によれば、開放流路である第1縦主管部の下端部の中継槽内へ空気を導入するから、槽内の液位が底面近くになるまで水位を下げることができ、中継槽及び第1横主管部内から堆積物を効率よく除去できる。
【0025】
第3の手段に係る発明によれば、第1縦主管部のうち中継槽に接続する部分を傾斜管としたから、液位の測定を正確に行うことができる。
【0026】
第4の手段に係る発明によれば、従管路と縦主管部と横主管部とからなる管区を複数連続して構築したから、建築物における配管パターンの自由度を確保できるとともに、管路系全体を効果的に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排水搬送システムの全体図である。
【図2】図1のシステムの要部を正面方向から見た断面図である。
【図3】図2の要部を側面方向から見た断面図である。
【図4】図1のシステムの作用を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る排水搬送システムの全体図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る排水搬送システムの要部の正面方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図4は、本発明の第1の実施形態に係る排水搬送システムを示す。
【0029】
本システムは、図1に示す如く、複数の従管路2と、一本の主管路6と、給水手段38と、制御装置46とで構成している。
【0030】
従管路2は、建築物Bの各階に設置されたディスポーザ4を含み、各ディスポーザ4から後述の主管路6の第1縦主管部へ横向きに延びている。従管路は、全体として横向き方向に延びていればよく、完全に水平である必要はない。
【0031】
上記ディスポーザ4は、給水部4aと、有機廃棄物の投入口4bと、細断手段4cと、従管路付きポンプ4dとで構成されている。もっともその構成は適宜変更することができる。図示のディスポーザは、厨房の流し台と一体になったものであり、給水部4aは流し台の蛇口として、投入口4bは、流し口として構成している。
【0032】
主管路6は、第1縦主管部6Aと第1横主管部6Bと延長管部6Cとで構成する。これら各管部の流路面積は、全部の従管路からの排水流量に対応して、全排水が滞りなく流れるように設計する。
【0033】
上記第1縦主管部6Aは、厨房設備Kのある階から配管上の障害物O付近の階まで垂直に縦設されている。建築物の水平面積のうちできるだけ第1縦主管部6Aを長くすることが出来るように、第1縦主管部の配置を選択することができる。
【0034】
図示例の第1縦主管部6Aは、上流側通気口8を上端に開口する垂直管10と、垂直管から斜め下方へ突出する傾斜管12と、傾斜壁部の下端に連結した中継槽14とで形成する。
【0035】
上記垂直管10は、複数階に亘って長く延び、各階のディスポーザ4から延出した複数の従管路2とそれぞれ連結している。垂直管10は、基本的に直筒状の管壁で形成する。但し各従管路の合流に応じて、合流点下方の管壁をその上流側に比べて太い管(好ましくは同心大径管)とすることができる。
【0036】
上記垂直管10の上端部には、上流側通気口8を開口する。これにより複数のディスポーザからのDSP排水がスムーズに流れるようにしている。上流側通気口8と最も上側の従管路2との合流箇所との間には逆流防止に必要な距離を確保する。図示の例では、垂直管が建築物の外壁を貫通して、上流側通気口8を建築物の外へ開放させるとよい。
【0037】
上記傾斜管12は、垂直管10内から落下したDSP排水を減速させる機能を有し、鉛直方向に対して傾斜角θで傾いている。中継槽内の水面の擾乱を低減するためである。傾斜角θは、30〜45°程度とするとよい。傾斜角が小さ過ぎると減速効果が足りなくなり、傾斜角度が大き過ぎると管内に有機物が付着し易くなるからである。
【0038】
上記中継槽14は、図2に示すように第1縦主管部6Aの管壁の下端部を拡開して大内径部に形成している。図示の中継槽14は、傾斜管12の下端部から斜め下方へ広がる頂壁16と、頂壁16から垂下する大径周壁18と、この大径周壁の下端に付設した内向きフランジ状の底壁20とで形成しており、この底壁の内縁を第1横主管部6Bに接続している。もっともこの構成は適宜変更することができる。
【0039】
上記中継槽14の頂壁16の一部には、下流側通気口24を開口している。この下流側通気口24は、少なくとも垂直管10の流路面積、及び傾斜管12の下面で形成する流入口22の面積と同程度の開口面積を有する。
【0040】
図示例では、下流側通気口24から通気管26を上方へ突出しており、下流側通気口24からの排水の漏れ出しを防止している。
【0041】
上記中継槽14の底壁20は、図3に示すように、流出口28に向かって水平面に対して傾斜している。傾斜角度θは30°以上とするとよい。この流出口28は、エルボ管30を介して、第1横主管部に連続させている。これにより、中継槽14内の堆積物を容易に吸引することができる。また、流出口28の径Dは、流出口に連なる管の径dの1.5倍以上とするとよく、またその管の管軸に対して流出口28を偏心させることが望ましい。
【0042】
さらに中継槽14には、水位測定手段32を設けている。図2に示す水位測定手段32は、上下方向の複数箇所(図示例では2箇所)にフロートスイッチF、F…を有し、中継槽内の液面がその液位に達したことを検知するように構成している。この構成は適宜変更することができる。なお、中継槽のうち水位測定手段32の横側方を囲うように図示しない仕切り板を設けてもよい。
水位測定手段は、中継槽14が空槽になったことを検知できるようにするとよい。図示例の場合には、水位がLWLになったことを検知した時点から、搬送ポンプの搬送能力に応じた一定のタイムラグをおいて、中継槽14が空槽になったものと推定することができる。
【0043】
エルボ管30の出口には、搬送ポンプ34として定量性に優れた容積形ポンプを設ける。限られた時間内に所定量の流体を確実に搬送できることが排水搬送システムの中継槽として重要だからである。容積形ポンプのうちでもエアロックが起きにくいルーツポンプが特に好適である。
【0044】
ルーツポンプは、従来公知の如く、楕円形のケーシング内を例えば2つの瓢箪形のローターが回転することによる容積変化により気体や液体を圧送するものである。この作動原理から吸引力が強く、液体に空気が混合しても連続吸引することができ、エアロックを生じにくい。またローターをポリウレタンゴム製ロータとすることで、小さな固形物が混入してもポンプ内部で詰らないものが提案されている(特許文献3)。
【0045】
中継槽14の排水手段として、仮に通常の水中吸引式のポンプを採用すると、エアロックを避けるためにポンプ設置箇所より高く設定した位置までしか排水を行うことができない。容積形ポンプ、例えばルーツポンプのような気液兼用の圧送ポンプを用いることで、中継槽をコンパクト化することが可能となる。
【0046】
上記第1縦主管部6Aは管路系の外に連通する開放流路である。本明細書において「開放流路」とは、水が流れている状態で流路の上流側及び下流側の少なくとも一方或いは双方が管路系の外部と連通している流路という程度の意味である。本実施形態では、第1縦主管部6Aの上下両端部に上記上流側通気口8及び下流側通気口24を開口している。
【0047】
上記第1横主管部6Bは、搬送ポンプ34から配管上の障害物Oを迂回するために横方向に延びている。
【0048】
上記延長管部6Cは、第1横主管部6Bの端部から建築物の下層部へ延びており、その下端部を排出口36としている。この排出口36は、後述の水槽Tの上方に配置している。延長管部6Cは必ずしも垂直に形成する必要はない。
【0049】
給水手段38は、図1に示す例では給水タンク40と給水管42で形成しており、給水管42の先部は第1縦主管部6Aに接続している。しかしながら、その構成は適宜変更することができる。例えば、ディスポーザの給水部で兼ねることもできる。
【0050】
制御装置46は、従管路付きポンプ4dと搬送ポンプ34と給水手段38とを制御し、後述する「通常の排水モード」及び「洗浄モード」の運転及び切替えを行うことができる。また制御装置は中継槽の水位測定手段32と接続されている。制御装置46は、図4に示す制御のフローチャートを実行可能なコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)で構成することが好適である。制御装置の具体的な機能は、本発明のシステムの作用の説明の中で述べる。
【0051】
上記構成によれば、利用者がディスポーザ4に有機廃棄物を投入すると、これがディスポーザで細断され、DSP排水として従管路付きポンプ4dにより第1縦主管部6A側へ圧送される。このとき管路系内の空気が上流側通気口8及び下流側通気口24を介して外部へ排出されるので、DSP排水の圧送はスムーズに行われる。
【0052】
第1縦主管部6Aの垂直管10内に入ったDSP排水は、搬送圧力を失い、重力作用のみで垂直管10内を落下する。落下したDSP排水は傾斜管12内へ入り、やや減速して中継槽14内に入る。中継槽14内に入ったDSP排水は、中継槽14の底面に開口した流出口28を経由して、搬送ポンプ34により強力に吸引され、さらに第1横主管部6B内を強制的に搬送される。
【0053】
上記制御装置46は、通常の排水モードにおいて、水位測定手段32により中継槽内の水位を監視し、搬送ポンプ34の作動をコントロールする。標準的な運転パターンとして、中継槽14内の水位が図2に示すLWLより下がったときに搬送ポンプ34を停止し、LWL以上となったときに搬送ポンプ34を作動させることが好適である。搬送ポンプであるルーツポンプは、空槽でもロックすることはないが、省エネルギーの点から無駄な動作は省くべきだからである。
【0054】
また、中継槽14内の水位がHWLを超えたときには、中継槽からの排水の漏出を避けるための措置を採る。これについては後述する。
【0055】
上記第1横主管部6Bを出たDSP排水は、延長管部6C内を流下し、排水口36を出て、水槽T内へ入る。水槽に入った排水は必要により有機廃棄物を除去する措置を施した後に建築物の外に排出するとよい。
【0056】
次に図4に基づいて洗浄作業について説明する。以下の解説では、説明を簡単にするため、専ら洗浄作業を行うケースを説明する。
すなわち、図4のS−1のように、予め通常の排水モードを停止させる(制御装置46から従管路付きポンプ4dへ停止信号を送る)ものとする。実際には、例えば中継槽内の堆積物及び排水を除去している間に新たな排水が投入される場合もあり得る。
【0057】
制御装置46は、洗浄モードとして次の動作を行う。
図4のS−3のように、搬送ポンプ34に制御信号を送り、中継槽14内の堆積物及び排水を空槽になるまで排水する。
図4のS−4のように、空槽を検知したとき、すなわち水位が零になったときには、搬送ポンプを停止する。
図4のS−5のように、給水手段38に対して給水信号を送り、洗浄水を中継槽14内に注入し、貯水する。
図4のS−6のように、水位が所定量に達したときには、給水を停止する。
図4のS−7のように、搬送ポンプ34に再び制御信号を送り、中継槽内の洗浄水を第1横主管部に対し一気に放水させる。
図4のS−8〜S−9のように、空槽を検知したとき、すなわち中継槽14内の洗浄水が無くなったときには、搬送ポンプを停止する。
【0058】
洗浄モードが完了したら、図4のS−10のように通常の排水モードに復帰する。制御装置46は、洗浄水を貯水しかつ放水する工程を予め定められた回数繰り返すように構成するとよい。作業を繰り返すことで第1横主管部6B内の堆積物を全て流すためである。その繰返し回数nは、中空槽の容量と第1横主管部の長さとに応じて予め設計者が決め、制御装置に記憶させ、制御条件として取り込むようにするとよい(S−2)。上記の洗浄作業は一日に少なくとも一度行うことが望ましい。一日程度の作業スパンであれば堆積物が管壁内面に固着しないことが一般的だからである。
【0059】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付することで解説を省略する。
【0060】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る排水搬送システムを示している。
【0061】
このシステムでは、システム全体の管路系を第1管区Aと第2管区Aとに分けて、第1管区Aでは、第1実施形態のディスポーザから第1横主管部に至る流路及び関連設備の構成をそのまま適用し、第2管区Aでは、その構成のうち上流側通気口を省略している。第1管区の搬送ポンプの下流で通気口を設けると排水が漏出する可能性があるからである。
【0062】
ここで第2管区の縦主管部を第2縦主管部6A’と、また第2管区の横主管部を第2横主管部6B’と呼ぶものとする。第2管区の第2縦主管部6A’は、第1横主管部6Bの下流側端部に連結させている。図面では省略しているが、同様に第3管区以降の構成も設けることができる。
【0063】
本実施形態の構成によれば、複数の配管上の障害物に応じて横主管部6B、6B’…を設けることができ、建築物での配管の自由度が向上する。また複数の配管上の障害物Oを迂回するために縦主管部及び横主管部を幾つ設けても、各管区毎に管区内の堆積物を除去するのに必要な搬送圧力をDSP排水に加えれば足りる。縦主管部の下端部である中継槽に下流側通気口を形成したからである。
【0064】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る排水搬送システムを示す。この実施形態は第1の実施形態に係るシステムの要部(中継槽及びその周囲)の変形例であり、一つの中継槽に、同じ第1横主管部6Bに連続する複数(図示例では2つ)の流出口28を設ける。一つの搬送ポンプ34が正常動作しない場合に待機中の他の搬送ポンプ34での送水に切替えたり、或いはDSP排水の流入量が過剰になったときに複数のポンプを同時運転させるためである。
【0065】
上記流出口28は、それぞれ搬送ポンプ34を有する複数の並列管48に接続し、第1横主管部6Bの上流側で合流する。以下に本実施形態の具体的な運用方法を説明する。
【0066】
(1)中継槽内の水位が高水位(HWL)で停止する標準的な運転パターン下に於いて、一つの搬送ポンプ34を起動した後、一定時間経過してもフロートスイッチF1の接点が解除されないとき、すなわち水位が低下しないときには、排水不良と見倣して、他の搬送ポンプに運転を切替える。或いは突発的な流入量で搬送ポンプ34の能力が不足していると見倣して、待機中のポンプを同時に運転させる。但し、先発の搬送ポンプを継続して運転できるのは過負荷運転などの異常な状態が無い場合とする。
【0067】
(2)中継槽底部の堆積物の完全排出を行う為に定期的に低水位(LWL)を検知するフロートスイッチF2の検知を無視し、搬送ポンプ34が空気を吸い込むまで運転させる。尚この運転動作はタイマーで行うのとする。
【0068】
(3)一方の搬送ポンプ34が過負荷運転状態となった場合、損傷を未然に防止させるため電気的な保護装置を備えるのが一般的であるが、この保護装置が動作した時、自動的にもう一方の待機中の搬送ポンプ34に運転を切替える。切替運転後、搬送ポンプはLWLで自動停止し、水位上昇し、HWLに達した時、保護装置の動作で停止した搬送ポンプを運転させる再起動回路を備え、この運転状態を数回繰り返した後、異常が継続する場合、異常運転警報を発報する。一過性の過負荷であれば、再起動で解除できることもある。
【符号の説明】
【0069】
2…従管路 4…ディスポーザ 4a…給水部 4b…投入口
4c…細断手段 4d…従管路付きポンプ
6…主管路 6A…第1縦主管部 6B…第1横主管部 6C…延長管部
6A’…第2縦主管部 6B’…第2横主管部
8…上流側通気口 10…垂直管 12…傾斜管 14…中継槽
16…頂壁 18…大径周壁 20…底壁 22…流入口
24…下流側通気口 26…通気管 28…流出口 30…エルボ管
32…水位測定手段 34…搬送ポンプ 36…排出口
38…給水手段 40…給水タンク 42…給水管 46…制御装置
48…並列管
、A…管区 B…建築物 K…厨房設備 O…障害物 T…水槽


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の縦方向一部から下へ延びる第1縦主管部の下端部を拡開して中継槽とし、この中継槽から横方向に延びる第1横主管部を経て排水口へ至る主管路と、
上記建築物の一部に設置された複数のディスポーザで発生したDSP排水を第1縦主管部へ圧送するために、各ディスポーザ毎に配管した横向きの従管路と、
中継槽に入ったDSP排水を第1横主管部へ圧送するための搬送ポンプと、
上記第1縦主管部の上部に開口した上流側通気口及び中継槽に開口した下流側通気口と、
を具備し、
従管路から主管路へ連続する管路系のうち、従管路及び第1横主管部は、それぞれDSP排水を圧送するように設け、また第1縦主管部は、上記通気口を介して外部と連通させ、DSP排水が重力作用により落下する開放流路に形成したことを特徴とする、排水搬送システム。
【請求項2】
さらに上記中継槽より上流の管路系の適所に設けた洗浄水供給手段と、この洗浄水供給手段及び搬送ポンプを制御する制御装置とを具備し、
上記搬送ポンプは、少なくとも中継槽中の堆積物である固形成分とDSP排水との混合流体、中継槽内の空気、中継槽内の洗浄水である水のいずれをも第1横主管部へ圧送することが可能な流体ポンプであり、
上記制御装置は、
搬送ポンプを作動させて、中継槽の液位が中継槽の底面近くになるまで中継槽内の堆積物及びDSP排水を排出する第1の工程、
搬送ポンプを停止させるとともに洗浄水供給手段を作動させて、中継槽を洗浄水で充填させる第2の工程、
洗浄水供給手段を停止させるとともに搬送ポンプを作動させて中継槽の液位が中継槽の底面近くになるまで洗浄水を排出するとともに中継槽内へ空気を導入する第3の工程、
を実行させることができるように構成したことを特徴とする、請求項1記載の排水搬送システム。
【請求項3】
中継槽は、制御装置と接続された液位計測手段を有し、
かつ第1縦主管部のうち中継槽に接続する部分を、鉛直方向に対して30°〜45°の角度をなす傾斜管路に形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の排水搬送システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか一の項に記載した排水搬送システムであって、
複数の従管路から第1縦主管部を経て第1横主管部へ至る管区を、最も上側の管区として、複数の従管路から縦主管部を経て横主管部へ至る複数の管区を建築物の上側から下側へ構築し、
最も上側の管区では、一番上の従管路との合流箇所より上方に第1縦主管部分に上流側通気口を開口し、
2番目以降の管区では、その縦主管部を、当該管区より一つ上の管区の横主管部の末端に連続させ、かつ当該管区の主管路部分及び従管路は、上流側通気口を省略することを除いて最も上側の主管路部分及び従管路に関して上記一の項に記載した構造を有する
ことを特徴とする、排水搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190595(P2011−190595A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56716(P2010−56716)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】