説明

排煙脱硝装置

【課題】ダクトの圧力損失の増加を抑制しながら合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせる。
【解決手段】本発明の排煙脱硝装置は、主流ダクト16を通流して節炭器22により降温された主流排ガスと、節炭器22をバイパスするバイパスダクト24を通流して高温を保ったバイパス排ガス28との合流排ガスに、アンモニアガスを供給した後脱硝反応器で脱硝するものである。特に、主流ダクト16内の主流排ガス26とバイパス排ガス28の合流部には、主流排ガス26の通流方向に並行して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガス28の流入方向に板面を対向させた3枚の仕切板44が、主流排ガス26の通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガス28の流入側から順に主流排ガス26の上流側にずらせて流入するバイパス排ガス28に臨ませて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどの火炉から排出された硫黄酸化物及び窒素酸化物を含む燃焼排ガスの排煙脱硝装置に係り、特に、燃焼排ガスを通流させる主流ダクトから分岐して熱交換器をバイパスして主流ダクトに合流するバイパスダクトが設けられた排煙脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボイラなどの火炉で燃焼され発生した燃焼排ガスは、主流ダクトを通流する過程で熱交換器、及び節炭器にて熱回収された後、排ガス中の窒素酸化物を還元除去するためにアンモニアガスが供給され、そして窒素酸化物を除去するための触媒が充填された脱硝反応器へ導かれる。
【0003】
ここで、排ガス中に硫黄酸化物(特にSO)が存在し、かつ排ガス温度が低い場合(排ガス中のアンモニア、硫黄酸化物濃度によって異なるが通常おおよそ250〜330℃程度以下)、硫黄酸化物とアンモニアガスとが反応して酸性硫安が析出される。
【0004】
この酸性硫安は液状であり、触媒表面に付着して触媒活性点を覆うため、触媒の性能低下を招く。したがって、排煙脱硝装置に流入する排ガス温度を酸性硫安が析出される温度以上に保つことが、排煙脱硝装置を運用する条件として求められる。
【0005】
この条件を満たすために、例えば、特許文献1に記載されているように、節炭器の上流側から分岐して節炭器の下流側に合流するバイパスダクトを設けることが知られている。つまり、バイパスダクトを通流して節炭器をバイパスするバイパス排ガスは降温されず高温を保っているため、主流ダクトを通流する主流排ガスと合流した排ガスの温度を、酸性硫安が析出される温度以上に保つことを可能とするものである。
【0006】
【特許文献1】実開平1―81447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることについて考慮されていない。
【0008】
すなわち、主流排ガスに対してバイパス排ガスが大きな運動エネルギーで流入してきた場合、高温のバイパス排ガスの大部分が流入方向の奥側(主流ダクト壁側)まで達し、流入方向の手前側にはあまり行き渡らないため、合流後の排ガスが混合されて温度が均一になるまでには時間がかかる。
【0009】
したがって、合流した排ガスの温度を均一に酸性硫安が析出される温度以上に保つためには、排ガスの合流部からアンモニアガスが供給される部位までのダクト寸法を長くする必要があるが、これは装置のコンパクト設計の要請の観点から好ましくない。
【0010】
ダクト寸法を短くしながら合流後の排ガス温度の均一化を素早くさせるためには、例えば合流後の排ガスの混合を促進させるためのミキサーをダクト内に設けることなどが考えられるが、この場合、ミキサーにより通風抵抗が生じ、ダクトの圧力損失が増加するので好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、ダクトの圧力損失の増加を抑制しながら合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の排煙脱硝装置は、火炉から排出された硫黄酸化物及び窒素酸化物を含む燃焼排ガスを通流させる主流ダクトと、主流ダクト内に配置され燃焼排ガスを熱交換により降温させる熱交換器と、主流ダクトの熱交換器よりも上流側から分岐して熱交換器をバイパスして主流ダクトに合流するバイパスダクトと、主流ダクトを流れる主流排ガスとバイパスダクトを流れるバイパス排ガスの合流後の燃焼排ガスにアンモニアガスを供給するアンモニア供給装置と、アンモニアガスが供給された燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝反応器とを備えることを基本構成としている。
【0013】
特に、上記課題を解決するため、主流ダクト内の主流排ガスとバイパス排ガスの合流部には、主流排ガスの通流方向に並行して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガスの流入方向に板面を対向させた複数の仕切板が、主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられてなることを特徴とする。
【0014】
すなわち、このように仕切板を設けることにより、主流ダクトに流入してきたバイパス排ガスは、各仕切板に接触して通流方向を変え、各仕切板により形成された各流路で主流排ガスと混合されながら主流排ガスの下流へ流れる。したがって、バイパス排ガスは、バイパス排ガスの流入方向の手前側から奥側へかけて均一に、言い換えれば主流ダクトの径方向に均一に行き渡り、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比を均一にすることができる。また、これらの仕切板は、主流排ガスの通流方向に並行して設けられているため、通風抵抗にあまり影響を与えない。その結果、ダクトの圧力損失の増加を抑制しながら、合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることができる。
【0015】
この場合において、バイパスダクトの主流ダクトとの合流部に、バイパス排ガスが主流ダクトに流入する際の流れ方向を調整する回動可能な調整羽根を設けることが好ましい。
【0016】
つまり、バイパスダクトにダンパなどを設けて、例えば合流排ガスの温度などに基づきバイパス排ガス流量を調整する場合、主流排ガスとバイパス排ガスとの流量比は変化することとなる。このような場合であっても、調整羽根の回動角度を調整してバイパス排ガスが主流ダクトに流入する際の流れ方向を調整することにより、仕切板により形成された各流路にバイパス排ガスを均一に行き渡らせて、各流路における両排ガスの流量比を均一にすることができる。
【0017】
また、主流排ガスとバイパス排ガスの流量比がある程度固定されている場合であっても、仕切板により形成された各流路に流れるバイパス排ガスが設計値と異なりばらつくような場合に、この調整羽根を用いて均一に流れるように調整することもできる。
【0018】
調整羽根48の回動角度の調整は、主流排ガス26とバイパス排ガス28との流量比に基づいて行うことができる。例えば、各排ガスの流量比と、これに対応して各流路において両排ガス流量比が均一になるような調整羽根の回動角度をあらかじめ実験などで求めて、テーブル或いは数式などでメモリに保存しておけば、両ダクトに流量計を設け、これらの値を入力値として回動角度を出力し、出力値に基づいて回動角度を調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダクトの圧力損失の増加を抑制しながら合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を適用してなる排煙脱硝装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態の排煙脱硝装置を用いた排ガスラインの全体構成を模式的に示す縦断面図である。なお、本実施形態では、排ガス発生源としてボイラを例に挙げて、ボイラから排出される燃焼排ガスに対して排煙脱硝装置を用いているが、これに限らず、硫黄酸化物及び窒素酸化物を含んで排出された燃焼排ガスに適用することができる。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の排煙脱硝装置10は、ボイラ12の火炉14から排出された硫黄酸化物及び窒素酸化物を含む燃焼排ガスを通流させる主流ダクト16と、主流ダクト16内に配置され燃焼排ガスを熱交換により降温させる熱交換器18,20と、同じく主流ダクト16内に配置され燃焼排ガスを熱交換により降温させる節炭器22が備えられている。なお、燃焼排ガスの上流側から順に、熱交換器18,20、節炭器22が直列に設けられている。
【0023】
また、主流ダクト16の熱交換器20と節炭器22との間から分岐して節炭器22をバイパスして主流ダクト16に合流するバイパスダクト24と、主流ダクト16を流れる主流排ガス26とバイパスダクト24を流れるバイパス排ガス28の合流後の燃焼排ガスにアンモニアガスを供給するアンモニア供給装置30と、アンモニアガスが供給された燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝反応器32が備えられている。
【0024】
主流ダクト16のアンモニアガスが供給される部位の上流側の近接する箇所には、燃焼排ガスの温度を検出する温度センサ34が設けられている。また、バイパスダクト24内には、温度センサ34で検出された温度に基づいてバイパスダクト24を通流するバイパス排ガス28の通流量を制御する回動可能なバイパスダンパ36が設けられている。
【0025】
なお、アンモニア供給装置30は、燃焼排ガス中の窒素酸化物を還元除去するためのアンモニアガスを、導管37を介して主流ダクト内に導き、注入ノズル38を用いて燃焼排ガスに供給するものである。脱硝反応器32内には、燃焼排ガス中の窒素酸化物を除去するための触媒40が充填されている。
【0026】
続いて、ボイラ12の火炉14から排出される燃焼排ガスが排煙脱硝装置で処理される工程を説明する。
【0027】
ボイラ12の火炉14にて燃焼され発生した燃焼排ガスは、熱交換器18,20、及び最下流に設置された節炭器22にて熱回収された後、アンモニア供給装置30によってアンモニアガスが注入されて脱硝反応器32へ導入され、触媒40の作用により燃焼排ガス中の窒素酸化物が除去される。
【0028】
ここで、燃焼排ガス中に硫黄酸化物(特にSO)が存在し、かつ排ガス温度が低い場合(排ガス中のアンモニア、硫黄酸化物濃度によって異なるが通常おおよそ250〜330℃程度以下)、アンモニアガスと反応したときに酸性硫安が析出される。
【0029】
この酸性硫安は液状のため触媒40の表面に付着して触媒活性点を覆い触媒の性能低下を招く。そのため排煙脱硝装置10を運用する条件として、アンモニアガスの供給される部位に流入する排ガス温度は酸性硫安の析出する温度以上の温度とする必要がある。
【0030】
ボイラ出口排ガス、すなわち節炭器22の出口排ガス温度は、ボイラ負荷に連動し、ボイラ負荷が低い条件では低く、負荷が上昇するに従い高くなるものであるが、近年、ボイラの最低運用負荷はより低く設計される傾向にある。これはボイラ運用可能負荷帯をより広くすることにより、給電事情の変化に、より柔軟に対応できる運用性に優れたプラントが求められているためである。
【0031】
しかしながら、求められる低負荷運転では排ガス温度が低く脱硝装置の運用温度を満たさない場合が考えられる。
【0032】
さらに、プラント起動時の排ガス温度が低い段階より脱硝装置を運用することが求められている。これは、プラント運用時にできるだけ脱硝装置を運用し、より低公害のプラントとすることが社会のニーズとして求められているからである。
【0033】
この場合も同様に、排ガス温度が低く脱硝装置の運用温度を満たさない条件から脱硝装置を運用する必要が生じる。
【0034】
このような点に鑑みて、節炭器22をバイパスするバイパスダクト24が設けられている。すなわち、バイパスダクト24を通流するバイパス排ガス28は、節炭器22で降温されないため、高い温度を保ったまま主流ダクト16を通流して降温された主流排ガス26と合流するので、合流後の排ガス温度をより高く、脱硝装置の運用温度を満たすよう保つことができる。
【0035】
なお、節炭器22をバイパスするバイパス排ガス28の流量は、温度センサ34の検出温度に基づいて、アンモニアガスが供給される部位での排ガス温度が脱硝装置の運用可能な温度以上となるように、節炭器バイパスダンパ36によりコントロールすることができる。
【0036】
ところで、合流した低温の主流排ガスと高温のバイパス排ガスは、アンモニアガスが注入されるまで、言い換えれば注入ノズル38に至るまでに混合されて、主流ダクト16の径方向の温度分布が均一となっていることが望ましい。なぜなら、温度分布がばらついている場合、低温部分で酸性硫安が生じてしまうか、或いは低温部分で酸性硫安が生じないとすれば高温部分は必要以上に温度が高いということになるからである。言い換えれば、温度分布が均一であり、かつその温度が酸性硫安の生じない最低限の余裕をもった温度となることが理想的である。
【0037】
そこで、主流排ガスとバイパス排ガスとの合流燃焼排ガスの温度分布が均一になるようにするためには、図1に示す合流部から注入ノズル38までのダクト寸法L1を、各排ガスが十分に混合される長さにする必要がある。
【0038】
ところで、主流排ガスとバイパス排ガスの合流部での各排ガスの流れを考えると、例えば図2に示すようになる。図2は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、主流排ガスとバイパス排ガスの合流部での流れの一例を示すものである。図2のように、主流排ガスに対してバイパス排ガスが大きな運動エネルギーで流入してきた場合、高温のバイパス排ガスの大部分が流入方向の奥側(主流ダクト壁側)まで達し(d2が大きくなり)、流入方向の手前側にはあまり行き渡らないため、合流後の排ガス温度が混合されて均一になるまでには時間がかかる。
【0039】
すると、必然的にL1寸法を長くとる必要がある。しかし、これは脱硝装置のコンパクト設計の要請に反することとなり好ましくない。
【0040】
一方で、L1寸法を短くしつつ、各排ガスの混合を十分行うためには、両排ガスの合流部から注入ノズル38までの間に、排ガスの混合を促進するミキサーを設けることなどが考えられる。しかし、この場合、主流ダクト16に通風損失が生じ圧力損失の面で好ましくない。この通風損失はボイラ負荷が高くなれば、排ガス温度が高くなるため、節炭器バイパスの運用は不要であるにもかかわらず、高負荷運用時にもミキサーの通風抵抗が発生する。
【0041】
このような問題に対応すべくなされた本実施形態の排煙脱硝装置は、主流ダクト16の主流排ガス26とバイパス排ガス28の合流部に複数の仕切板を設けることを特徴としており、以下、この特徴部の詳細を、各実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0042】
図3は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、排煙脱硝装置の特徴部の第1実施例を示す図である。図に示すように、主流ダクト16内の主流排ガス26とバイパス排ガス28の合流部には、主流排ガス26の通流方向に並行して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガス28の流入方向に板面を対向させた3枚の仕切板44が設けられている。また、これら仕切板44は、主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられている。
【0043】
このように仕切板44が設けられていることにより、主流ダクト16に流入してきたバイパス排ガス28は、主流排ガス26の下流側から上流側にかけて順次仕切板44に接触して、各仕切板により形成された各流路で主流排ガス26と混合されながら主流排ガスの下流へ流れる。
【0044】
このため、バイパス排ガス28は、バイパス排ガスの流入方向の手前側から奥側へかけて均一に、言い換えれば主流ダクトの径方向に均一に行き渡り、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比を均一にすることができる。また、これらの仕切板44は、主流排ガス26の通流方向に並行して設けられているため、通風抵抗にあまり影響を与えず、その結果、プラント性能に影響を与えない。
【0045】
したがって、主流ダクト16の圧力損失の増加を抑制しながら、合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることができる。また、これにより、両排ガスの合流部から注入ノズル38までのダクト寸法L1を短くしながらも、長い場合と同様の混合効果を得ることができるので、装置をコンパクトに設計することが可能となる。
【0046】
本実施例では、主流ダクト内に3枚の仕切板44を設けて、当該部分に略均一な5つの流路を形成する例を示したが、仕切板の枚数は、主流排ガス26とバイパス排ガス28の合流部から注入ノズル38までのダクト寸法L1と主流ダクト直径Dとの比率で適宜選択される。
【0047】
すなわち、主流排ガス26とバイパス排ガス28が混合される距離L1に対してダクト径Dが大きくなればなるほど、ダクト径方向の温度分布のばらつきは顕著になり混合による温度の均一化に時間がかかるため、仕切板44の枚数を多くしなければならない。また、言い換えれば、仕切板44によって区切られたダクト相当直径Dと混合距離L1の比率により混合特性が影響を受けることから、もし混合距離L1が短い場合、仕切板枚数を多くして混合を促進する必要がある。
【0048】
一方、流入するバイパス排ガス28に臨ませる各仕切板44の寸法S1〜S3、及びダクト壁と仕切板間の寸法d1〜d3は、バイパス排ガス28の運動エネルギーと主流排ガス26の運動エネルギーを考慮して決定される。すなわち、S1〜S3の寸法、及びd1〜d3の寸法は、仕切板44により形成される各流路に流入する主流排ガス流量とバイパス排ガス流量の比が同じになるように設定される。
【0049】
具体的な検討に際しては、近年電算機の発達で計算精度が飛躍的に向上した流動シミュレーションソフトを用いるのが有効である。
【実施例2】
【0050】
図4は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、排煙脱硝装置の特徴部の第2実施例を示す図である。本実施例は、第1実施例と同様に仕切板44を設け、さらに、バイパスダクト24に調整羽根を設けるものであるので、第1実施例と異なる部分のみ説明しその他の部分の説明は省略する。
【0051】
図4に示すように、バイパスダクト24の主流ダクト16との合流部には、バイパス排ガス28が主流ダクト16に流入する際の流れ方向を調整する回動可能な調整羽根48が設けられている。
【0052】
上述のように、バイパスダクト24にバイパスダンパ36が設けられており、温度センサ34の検出値に基づいて回動角度を変えてバイパス排ガス28の流量を調整する場合、主流排ガス26とバイパス排ガス28との流量比は変化することとなる。
【0053】
例えば、ボイラ起動初期段階には節炭器出口排ガス温度は低いため、特性的に主流排ガス26に対するバイパス排ガス28の流量比は大きく、その後ボイラ負荷の上昇とともにこの比率は小さくなる。すなわち、両排ガスの流量比が変化するので、バイパス排ガス28の主流ダクト16への流入パターンは変化する。
【0054】
本実施例によれば、このような場合であっても、調整羽根48の回動角度を調整してバイパス排ガス28が主流ダクト16に流入する際の流れ方向を調整することにより、仕切板44により形成される各流路に流入する主流排ガス流量とバイパス排ガス流量の比が同じになるように調節することができる。
【0055】
例えば、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比が均一であり良好な状態から、主流排ガス流量が減りバイパス排ガス流量が増えた場合、調整羽根48を回動させてバイパス排ガスの流入方向を主流排ガスの下流側へ変えるなど、流動解析により適宜調整することができる。
【0056】
また、主流排ガス26とバイパス排ガス28の流量比がある程度固定されている場合であっても、仕切板44により形成された各流路に流れるバイパス排ガス28量が設計値と異なりばらつくような場合に、この調整羽根48を用いて均一に流れるように調整することもできる。
【0057】
調整羽根48の回動角度の調整は、主流排ガス26とバイパス排ガス28との流量比に基づいて行うことができる。例えば、各排ガスの流量比と、これに対応して各流路において両排ガス流量比が均一になるような調整羽根の回動角度をあらかじめ実験などで求めて、テーブル或いは数式などでメモリに保存しておけば、両ダクトに流量計を設け、これらの値を入力値として回動角度を出力し、出力値に基づいて回動角度を調整することができる。
【実施例3】
【0058】
図5は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、排煙脱硝装置の特徴部の第3実施例を示す図である。本実施例は、第1実施例の態様に対して、主流ダクト16及び仕切板44の態様の変形例であるので、第1実施例と異なる部分のみ説明しその他の部分の説明は省略する。
【0059】
図5に示すように、本実施例は、主流ダクト16の形状が、両排ガスの合流部付近から下流に向かうにしたがって除々に拡径している場合の例である。この場合、仕切板44は、合流部付近ではストレートに主流排ガス26の通流方向に並行に延在し、主流ダクトの拡径にともなって通流方向に並行するように拡がりながら延在して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガス28の流入方向に板面を対向させている。また、主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられている。
【0060】
本実施例の場合も第1実施例と同様に、バイパス排ガス28は、バイパス排ガスの流入方向の手前側から奥側へかけて均一に、言い換えれば主流ダクトの径方向に均一に行き渡り、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比を均一にすることができる。
【実施例4】
【0061】
図6は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、排煙脱硝装置の特徴部の第4実施例を示す図である。本実施例は、第1実施例の態様に対して、主流ダクト16及び仕切板44の態様の変形例であるので、第1実施例と異なる部分のみ説明しその他の部分の説明は省略する。
【0062】
図6に示すように、本実施例は、主流ダクト16の形状が、上流側から両排ガスの合流部付近に向かうにしたがって除々に縮径している場合の例である。この場合、仕切板44は、合流部付近では主流ダクトの縮径にともなって互いの距離を狭めながら主流排ガス26の通流方向に並行に延在し、その後ダクト形状にあわせてストレートに主流排ガス26の通流方向に並行に延在している。
【0063】
また、この場合も主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガス28の流入方向に板面を対向させており、さらに主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられている。
【0064】
本実施例の場合も第1実施例と同様に、バイパス排ガス28は、バイパス排ガスの流入方向の手前側から奥側へかけて均一に、言い換えれば主流ダクトの径方向に均一に行き渡り、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比を均一にすることができる。
【実施例5】
【0065】
図7は、図1における主流ダクト16とバイパスダクト24の合流部42を拡大した図であり、排煙脱硝装置の特徴部の第5実施例を示す図である。本実施例は、第1実施例の態様に対して、主流ダクト16及び仕切板44の態様の変形例であるので、第1実施例と異なる部分のみ説明しその他の部分の説明は省略する。
【0066】
図7に示すように、本実施例は、主流ダクト16の形状が、合流部付近から下流側に曲がって形成されている場合の例である。この場合、仕切板44は、合流部付近では主流ダクトの形状にあわせてストレートに主流排ガスの通流方向に並行に延在し、その後ダクトの形状にあわせてカーブして延在している。
【0067】
この場合も、主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガス28の流入方向に板面を対向させており、さらに主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられている。
【0068】
本実施例の場合も第1実施例と同様に、バイパス排ガス28は、バイパス排ガスの流入方向の手前側から奥側へかけて均一に、言い換えれば主流ダクトの径方向に均一に行き渡り、各流路における主流排ガスとバイパス排ガスの流量比を均一にすることができる。
【0069】
要は、主流ダクトが拡大、縮小、曲がりなどの形状を有している場合であっても、主流ダクト内の主流排ガスとバイパス排ガスの合流部に、主流排ガスの通流方向に並行して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガスの流入方向に板面を対向させた複数の仕切板を設け、かつこの仕切板の主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませることにより、ダクトの圧力損失の増加を抑制しながら合流後の排ガスの温度を素早く均一にさせることができる。
【0070】
加えて、主流ダクトの拡大、縮小、曲がりなどの形状は、ガス流れに乱れを生じさせる要因になり得るが、仕切板44がガス流れの整流の役割も果たすため好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態の排煙脱硝装置を用いた排ガスラインの全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】主流排ガスとバイパス排ガスの合流部での流れの一例を示す図である。
【図3】排煙脱硝装置の特徴部の第1実施例を示す図である。
【図4】排煙脱硝装置の特徴部の第2実施例を示す図である。
【図5】排煙脱硝装置の特徴部の第3実施例を示す図である。
【図6】排煙脱硝装置の特徴部の第4実施例を示す図である。
【図7】排煙脱硝装置の特徴部の第5実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10 排煙脱硝装置
12 ボイラ
14 火炉
16 主流ダクト
18,20 熱交換器
22 節炭器
24 バイパスダクト
26 主流排ガス
28 バイパス排ガス
30 アンモニア供給装置
32 脱硝反応器
36 バイパスダンパ
44 仕切板
48 調整羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉から排出された硫黄酸化物及び窒素酸化物を含む燃焼排ガスを通流させる主流ダクトと、該主流ダクト内に配置され前記燃焼排ガスを熱交換により降温させる熱交換器と、前記主流ダクトの前記熱交換器よりも上流側から分岐して熱交換器をバイパスして主流ダクトに合流するバイパスダクトと、前記主流ダクトを流れる主流排ガスと前記バイパスダクトを流れるバイパス排ガスの合流後の燃焼排ガスにアンモニアガスを供給するアンモニア供給装置と、前記アンモニアガスが供給された燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝反応器とを備えてなる排煙脱硝装置において、
前記主流ダクト内の前記主流排ガスと前記バイパス排ガスの合流部には、前記主流排ガスの通流方向に並行して主流排ガス流路を複数に仕切り、かつバイパス排ガスの流入方向に板面を対向させた複数の仕切板が、主流排ガスの通流方向の上流側の端部を、前記バイパス排ガスの流入側から順に主流排ガスの上流側にずらせて流入するバイパス排ガスに臨ませて設けられてなる排煙脱硝装置。
【請求項2】
前記バイパスダクトの前記主流ダクトとの合流部には、前記バイパス排ガスが前記主流ダクトに流入する際の流れ方向を調整する回動可能な調整羽根が設けられてなる請求項1の排煙脱硝装置。
【請求項3】
前記調整羽根は、前記主流排ガスと前記バイパス排ガスとの流量比に基づいて回動角度が調整される請求項2の排煙脱硝装置。
【請求項4】
前記熱交換器は直列に複数設けられ、前記バイパスダクトは少なくとも最下流の熱交換器をバイパスするよう設けられてなる請求項1の排煙脱硝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−48537(P2010−48537A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215992(P2008−215992)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】