説明

排煙脱硫装置の排水処理方法

【課題】排煙脱硫装置の排水処理において、排ガス中の硫黄酸化物を吸収した吸収液を排出する際の中和に用いるアルカリ剤の無駄な消費を防止するとともに、中和後、固液分離するフィルターの目詰まりによるトラブルを防止することが可能な排水処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】硫黄酸化物を含む排ガスをアルカリ吸収液と接触して硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置における排水処理方法であって、硫黄酸化物を吸収したアルカリ吸収液を吸収塔から抜き出して第1の処理槽に送り、酸化してpH4以下に調整する酸化工程と、pH4以下に調整された吸収液を第2の処理槽に送り、アルカリ剤を用いてpH5〜8に調整する中和工程と、中和された吸収液をろ過する固液分離工程とを含むことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラや加熱炉などの排ガス中に含まれる硫黄酸化物、特に亜硫酸ガス(SO)などの除去に適用される湿式排煙脱硫装置の廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の排ガス中の硫黄酸化物を除去する排煙脱硫装置には、各種の方式があり、湿式法、乾式法及び半乾式法によるものに大別できるが、本発明の対象は湿式法による排煙脱硫装置における排水処理方法である。
【0003】
湿式排煙脱硫の代表的な方法として水酸化マグネシウム法(水マグ法)が挙げられる。水マグ法は、例えば、ボイラや各種加熱炉などからの燃焼排ガスを脱硫吸収塔に供給し、水酸化マグネシウム水溶液(スラリー)などの吸収液と接触させて、排ガス中の硫黄酸化物を吸収液に物理的、化学的に取り込み、脱硫処理する。硫黄酸化物が除去された排ガスは排出口より、通常煙突を経由して大気に排出される。一方、排ガス中の硫黄酸化物を吸収した吸収液は、最終的には排水として、排水基準を遵守するよう適切に処理されて、河川や海域に放流される。
【0004】
排煙脱硫装置は、脱硫吸収塔と、硫黄酸化物を吸収した吸収液のCODやpHを調整する処理槽、さらに処理された吸収液(排水)中の固形分を除去するろ過器、COD調整のため酸化用空気を供給するブロワ、吸収液を循環するポンプ、処理槽からろ過器に吸収液を送るポンプなどから構成されている。脱硫吸収塔の内部には、排ガスと吸収液とを効果的に気液接触するための噴霧ノズル、さらには、棚段、充填層、スプレーノズル等があり、排ガスと吸収液とを効果的に接触するための噴霧ノズル、さらには充填層と、硫黄酸化物を吸収し、脱硫吸収塔底部の滞液部には、貯留する吸収液に空気を吹き込み撹拌及び酸化するための酸化用空気の曝気ノズルさらにはミキサーと、吸収液のpHを監視するpH計などが設けられている。
【0005】
脱硫吸収塔に導入された排ガスは、当該吸収塔の中で噴霧ノズルにより噴霧された吸収液と接触し脱硫される。一般的には、噴霧ノズル下部に設けられた気液接触部を流下する吸収液と上昇する排ガスとが向流で接触し、硫黄酸化物やダストを吸収液に吸収し、排ガスを脱硫する。脱硫後の排ガスには吸収液のミストなどが含まれるが、噴霧ノズル上部に設けられたデミスタで補集され、吸収液として回収、循環使用される。こうして、硫黄酸化物、ダストのどが除去された排ガスは排出口から煙突を経由して大気に放出される。
【0006】
また、硫黄酸化物を吸収した吸収液は、上記吸収塔底部に貯留され、吸収塔外部に設けられた循環ポンプにより、前記噴霧ノズルに循環供給され噴霧され、気液接触部を流下する。この間に排ガスと接触し、硫黄酸化物、ダスト等を吸収して吸収塔底部に落下して貯留される。吸収液は、このように循環使用されるため、循環液ともいうことがある。硫黄酸化物を吸収した吸収液は、吸収するにつれて、pHが低下し、硫黄酸化物の吸収能力が低下してゆく。そこで、通常、フレッシュなアルカリ成分を補給し、pHを一定に保つと共に、塩の析出を防止するに必要な循環液の抜き出しを行い、硫黄酸化物の吸収能力を保持するよう調整される。
【0007】
この吸収塔へのアルカリ成分の供給を制御する方法は各種の方法があり、例えば、処理する排ガス中のSO濃度に応じて水酸化マグネシウムの注入量を調節する方法(特許文献1参照)や、処理する排ガス中のSO濃度に応じて酸化マグネシウム粉末を煙道内に粉体吹込む方法(特許文献2参照)などが提案されている。また、排煙脱硫装置において、酸化マグネシウムや軽焼マグネシウム粉を吸収剤として使用する方法なども提案されている(特許文献3、4)。
【0008】
従来、排煙脱硫装置の循環液のpHは、排ガス中のSO濃度を排出基準に合わせるように、アルカリ成分を間欠又は連続的に注入して制御していた。
また、排煙脱硫装置において、SOの吸収反応は、亜硫酸塩を生成するかたちで進むが、硫黄酸化物を吸収した吸収液を公共用水域に放流するには、少なくともCOD、pHを規定の範囲内に調整することが求められる。このために、抜き出された循環液(吸収液)を処理する排水処理設備を吸収塔の後段に設置し、吸収液を酸化して亜硫酸イオンを硫酸イオンにしてCODを下げ、さらに、排水基準のpHを満足させるためにアルカリを添加してpH調整(中和)を同時に行なっていた。
しかしながら、酸化と中和を単一槽内で実施しているためか、使用する水酸化マグネシウムのリークによると思われるろ過による固液分離工程でフィルター目詰まり頻度が高く、運転員を煩わせていた。この煩わしさのメカニズム、原因ははっきりしてないが、中和を滴定点付近で行っているために、負荷変動による滴定量のずれに対し、水酸化マグネシウムの追従遅れで一部の水酸化マグネシウムがリークしていると思われる。
【特許文献1】特開平9−66219号公報
【特許文献2】特開平7−24252号公報
【特許文献3】特開平7−60057号公報
【特許文献4】特開平7−232029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、排煙脱硫装置の排水処理において、排ガス中の硫黄酸化物を吸収した吸収液を排出する際の中和に用いるアルカリ剤、例えば水酸化マグネシウムの無駄な消費を防止するとともに、中和後、固液分離するフィルターの目詰まりによるトラブルを防止することが可能な排水処理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法は、
硫黄酸化物を含む排ガスをアルカリ吸収液と吸収塔内で接触して硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置における排水処理方法であって、硫黄酸化物を吸収したアルカリ吸収液を吸収塔から抜き出して第1の処理槽に送り、酸化してpH4以下に調整する酸化工程と、pH4以下に調整された前記吸収液を第2の処理槽に送り、アルカリ剤を用いてpH5〜8に調整する中和工程と、中和された液をろ過する固液分離工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法は、前記中和工程において使用するアルカリ剤は水酸化マグネシウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法は、吸収塔の後段に第1の処理槽として酸化槽、次いで第2の処理槽として中和槽を設置し、各槽のpHをそれぞれ所定範囲に制御することにしたことから、固液分離(ろ過)工程において、フィルター前後の差圧の上昇が少なく、しかもこの低い差圧上昇が長時間にわたって持続した。この結果、水酸化マグネシウム量の無駄な消費が削減、防止されるとともに、珪藻土などのろ過助剤を使用しなくても、中和槽後流に設置されるフィルターの目詰まりによるトラブルが回避され、処理効率が向上し、フィルターの交換頻度を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を、図面等を参照してより詳しく説明する。図1は本発明の排水処理方法が適用される排煙脱硫装置の一例を示す簡略化されたフローシートである。図1に示すように、通常、湿式排煙脱硫装置の脱硫吸収塔1(単に吸収塔ともいう。)には、その内部に上から、デミスタ5、循環液(吸収液)の噴霧ノズル4、気液接触部6、該気液接触部6の下部の側壁部に排ガスの吸入口2が設けられている。なお、デミスタ5の上部に脱硫された排ガスの排出口3が設けられ、普通煙突につながっている。また、脱硫吸収塔1の底部には、循環液を保持する貯留槽が設けられ、その側部には、補給されるフレッシュな水酸化マグネシウムスラリーの供給配管及び循環液を循環ポンプ7に導く配管が設けられており、さらに、撹拌及び貯留槽の循環液を酸化するための空気を供給する配管が貯留槽の側壁部を貫通するかたちで設けられ、貯留槽内部の空気供給配管には複数の酸化用空気の曝気ノズル8が配置されている。
【0013】
排ガスは、吸入口2から脱硫吸収塔1に導入され、気液接触部6を通過して、噴霧ノズル4から噴霧される吸収液と接触する。この間に、かかる接触により排ガス中のSOなどの硫黄酸化物は、吸収液に吸収されて、排ガスは、脱硫される。脱硫された排ガスは、噴霧ノズル4上部に設けられたデミスタ5で、同伴する飛沫などが捕捉され、落下して吸収液(循環液)として回収、再使用される。また、排ガス中のダストなども、気液接触部6からデミスタ5を通過する間に吸収液と接触して捕捉される。
【0014】
脱硫吸収塔1底部の貯留槽に保持される吸収液(循環液)は、吸収塔1の外部に設けられた循環ポンプ7により、噴霧ノズルに導かれ、噴霧される。噴霧された吸収液は、気液接触部6を流下して、例えば充填層の充填物をくまなく湿らせるように、均一に分散、流下して、上昇してくる排ガスと接触し、硫黄酸化物などを吸収して、排ガスの脱硫を行っている。
脱硫吸収塔1として、気液接触部6に充填層を有するものを例示しているが、本発明は、脱硫吸収塔のタイプを特に限定するものでなく、排ガスと吸収液(循環液)とが効果的に気液接触されて、排ガス中の硫黄化合物が効率よく吸収液に移動するものであれば、どのようなタイプのものでも使用することができる。脱硫吸収塔として、充填物を有する充填塔のほかに、例えば、棚段塔、スプレー塔、濡れ壁塔、気泡塔、サイクロンスクラバなどを挙げることができる。
【0015】
硫黄酸化物などを吸収した吸収液は、デミスタ5で捕集されて落下する液体と共に、吸収塔1底部の貯留槽に集まる。貯留槽では、底部に複数の酸化用空気の曝気ノズル8が設けられており、空気をバブリングして吸収液を撹拌して、硫黄化合物のアルカリ中和物や亜硫酸を酸化することによって、特には、亜硫酸塩を硫酸塩に酸化することによって、吸収液の化学的酸素消費量(COD)の改善(低減)を図っている。
なお、排ガス中の硫黄酸化物の吸収能力を保持すために、フレッシュな水酸化マグネシウムスラリーがメイクアップされ、その量に相当する貯留槽の吸収液は、循環ポンプ7吐出で噴霧ノズルに供給される配管から分岐して、排出される。
湿式排煙脱硫において、水酸化マグネシウムスラリー以外のアルカリ吸収液も使用されるが、水酸化マグネシウムは最も一般的に使用されるアルカリ成分である。その他のアルカリ成分としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。これらのアルカリ成分は、通常はアルカリ水溶液のスラリーとして、典型的には水酸化マグネシウム水溶液のスラリーとして吸収塔に供給され、循環使用される。
【0016】
吸収塔1のSOを吸収するエリアでは、次の反応が進む。
SO+HO→HSO
SO+Mg(OH)→MgSO+2H
MgSO+HSO→Mg(HSO
Mg(OH)+SO→MgSO+H
MgSO+SO+HO→Mg(HSO
【0017】
吸収塔下部の液中では
Mg(HSO+Mg(OH)→2MgSO+2H
SO+1/2O→HSO
SO+Mg(OH)→MgSO+2H
MgSO+1/2O→MgSO
の反応が起きている。
【0018】
水酸化マグネシウムがSOと反応してゆくと、循環液はSOを吸収して脱硫する能力が低下してゆくから、この脱硫能力を維持するために、フレッシュな水酸化マグネシウムスラリーがメイクアップされる。メイクアップ量は、排ガス中のSO濃度や流量、循環液のpH、流量などを目安にコントロールされ、特には脱硫処理後の排ガス中の硫黄濃度が所定の値以下になるよう調整される。吸収液の一部、すなわち、メイクアップ量に相当する量の吸収液は、吸収塔1から抜き出され、後段の排水処理設備としての第1の処理槽9である酸化槽に送られる。吸収塔1から抜き出されたスラリー(廃スラリー)は、亜硫酸水素マグネシウム(Mg(HSO)や亜硫酸マグネシウム(MgSO)を含有しているため、化学的酸素消費量(COD)が高く、そのまま公共用水域に放流することはできない。そのため、抜き出された循環液は、第1の処理槽9である酸化槽において、次の酸化反応を進めて、化学的酸素消費のない硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸(HSO)などのかたちに変換する。
Mg(HSO+1/2O→MgSO+HSO
SO+1/2O→HSO
Mg(HSO+O→MgSO+HSO
MgSO+1/2O→MgSO
MgSO+2H0→Mg(OH)+2H+2SO2−
【0019】
図1において、第1の処理槽9における廃スラリーの酸化は、吸収塔1の底部における酸化と同様に空気を曝気ノズル8より廃スラリーに吹き込んでバブリングし、撹拌して空気中の酸素で酸化を行っている。第1の処理槽9における酸化は、空気のバブリングに限らず、効率的に推進する方法であれば、どのような方法、手段で行っても良く、空気の替わりに酸素や、オゾンなどを吹き込む方法、あるいは過酸化水素を投入する方法などが挙げられる。空気を吹き込む方法は安全性が高く、操作が面倒ではないので、本発明で用いることのできる好ましい方法の一つである。
【0020】
本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法では、上記第1の処理槽(酸化槽)9において吸収液を酸化してpH4以下、好ましくはpH3.5以下に調整する。酸化槽9における排液のpHが4を超えると、水酸化マグネシウムのリークが発生し、フィルターの目詰まりを起こしやすくなる。
【0021】
また、公共用水域へ放流する際にはCODの他に、環境への影響からpHを中性付近に制御することが望ましい。酸化槽9では酸化されてHSOが生成するため、酸化処理した吸収液(酸化処理液)のpHは酸性側に偏っている。そこで、本発明においては、酸化処理液を酸化槽9に続く第2の処理槽10である中和槽に送り、アルカリ剤で中和する中和工程が必須である。すなわち、本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法は、この第2の処理槽10において、第1の処理槽9で酸化した酸化処理液に、アルカリ剤を適宜の濃度の水溶液ないしスラリーとして投入して、必要ならば、撹拌羽、空気バブリングなど公知の手段を用いて適宜撹拌、混合して中和する。中和後の液(中和処理液)のpHが、pH5〜8、好ましくはpH5.5〜7.5になるように調整する。pHがこの範囲にないと、公共用水域へ放流したときに環境に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0022】
第2の処理槽(中和槽)10で使用するアルカリ(中和)剤は、脱硫吸収塔のアルカリ吸収液と同じものを、すなわち、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを使用することができる。当該装置への腐食性、コスト、毒性等を考慮すると、水酸化マグネシウムが好ましい。水酸化マグネシウムは弱アルカリ性であるが、毒性、腐食性もほとんどなく、水酸化ナトリウムのような劇物でもないため、危険性がなく、取り扱いも容易である。また、アルカリ(中和)剤は、脱硫吸収塔のアルカリ吸収液と同じものを使用する必要はないが、同じものを用いれば、管理、取り扱いの利便性が高くなり、好都合である。
【0023】
第2の処理槽で中和された中和処理液は、次いで固液を分離する固液分離工程に送られ、そこで、スケール、スラッジ分などの固体成分が除去される。スケール、スラッジ分が除去された中和処理液は、中和工程でpHも排水基準内にコントロールされているため、そのまま排水として、公共用水域に放流することができる。固液分離工程は、特にその種類を限定するものではなく、固体成分と液体成分が、面倒な操作を要せず、安価で、効率的に分離できれば、どのような固液分離設備や、装置を用いてもよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0024】
本発明においては、固形分を分離除去したいので、例えば、ミウラ化学装置(株)製の全自動ケーキ回収フィルター「ABC型」(Automatic Backwash Clean Filter)が好ましく用いることができる。このろ過装置は、特殊成型された断面星型円筒に円筒状のろ布をかぶせたフィルターエレメントを多数、垂直に、ろ過装置のケーシング内に配列されている。処理液は、フィルターエレメントの外側に供給され、ろ布を通過する間にろ過され、ろ液は円筒状エレメントの内部に進み、円筒の一方の開口(もう一端の開口は塞がれている)から、他のエレメントのろ液と一緒になってろ過装置から排出される。
ろ布の外側(エレメント表面)にはスケール、スラッジなどのケーキが堆積してゆくため、ろ過圧力(又はエレメント前後の差圧(ΔP))が上昇する。この圧力が所定の圧力に達したら、処理液の供給を止め、ろ過を中止して、液体の流れとは逆に、エレメント内部から外側に向かって適宜の流体を流す(逆ブローする)ことによって、ろ布外側表面に堆積したケーキを剥離する。剥離されたケーキは、公知の適宜な方法で、ろ過装置の外部に取り出されて廃棄される。逆ブローの流体としては空気が好ましく、フィルターのろ布の細孔内の固形物も除去され、フィルターは繰り返してろ過に供される。
ろ過装置では、ろ過と、逆ブローによるケーキの剥離とを順繰りに行い、ケーキの剥離の間は、ろ過することができないため、通常は、上流にバッファータンクを設けて、ケーキの剥離やろ布交換時に流出する処理液を一時的に貯蔵する。
【0025】
本発明の排水処理方法においては、上記のように、排煙脱硫装置の吸収塔1の後段に第1の処理槽9として酸化槽と、第2の処理槽10として中和槽とを設置し、各槽においてpHを所定範囲に制御することした。これによって、固液分離工程におけるフィルターの目詰まりによるトラブルは解消され、アルカリ中和剤の消費量も低減することができた。これは、排煙脱硫装置の排水処理(酸化及び中和)を一つの処理槽で行っていた従来の方法において、無駄に消費された水酸化マグネシウムスラリーが、中和処理液の移送経路の詰まりや固液分離工程におけるフィルターの目詰まりによるトラブルを発生させていたためと考えられる。これらのトラブルは、本発明の廃水処理方法により、防止することが可能となり、さらに、水酸化マグネシウムの過剰添加、無駄な消費を防止することができた。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0027】
本発明の排煙脱硫装置の排水処理方法のフローシートを図1に示す。図1に示す排煙脱硫装置の排水処理工程を、以下のように実行して、評価した。
SO濃度が2000〜3000ppmであり、ダスト分を約100mg/Nm含有する重質重油焚きボイラの排ガスを脱硫吸収塔1に吸入口2から導入した。排ガスは、気液接触部6を上昇する間に、噴霧ノズル4で噴霧され充填物表面を流下する水酸化マグネシウムを主成分とするスラリー状の吸収液と気液接触する。排ガス中のSOなどの硫黄酸化物等が吸収液に吸収されて排ガスから硫黄分が除去される。吸収塔上部から系外に排出される排ガスのSO濃度は60ppm以下、ダスト分は30mg/Nm以下に低減されていた。
【0028】
吸収液は、塔底の貯留槽に貯留され、塔外に設けられた循環ポンプ7で上記の噴霧ノズル4に送られ循環使用される。吸収塔底部の貯留槽には、吸収液に吸収された硫黄化合物を酸化するための空気を供給する配管とそれにつながる複数の曝気ノズルが設けられている。酸化用空気を曝気ノズルから吸収液に吹き込んで、バブリングし、撹拌して吸収液中の亜硫酸や亜硫酸のアルカリ中和物などを酸化する。
また、吸収塔底部の貯留槽には、吸収液の硫黄化合物の吸収性能を保持すために、フレッシュな水酸化マグネシウムスラリーを一定量供給し、その量に相当する量の吸収液を吸収塔から抜き出した。抜き出した吸収液のpHは6.0、SO2−は0.5〜0.9重量%、スラッジ量は100〜300mg/Lであった。
【0029】
吸収塔から抜き出した吸収液は、第1の処理槽である酸化槽へ送り、そこで、酸化槽底部に設けられた曝気ノズルから空気を吹き込み、吸収液をエアーバブリング、撹拌して、吸収液を空気中の酸素で酸化して、pHが3.4〜3.6になるように制御した。次いで酸化された吸収液(酸化処理液)を第2の処理槽である中和槽に移送した。このとき、酸化処理液は、pHが3.5、SO2−が0.0〜0.1重量%、ダスト量が100〜300mg/Lであった。
【0030】
中和層では、酸化槽でCODを改善するために特にSO2−をSO2−に変えてpHが約3.5まで低下した吸収液に、水酸化マグネシウムスラリーを添加し、空気をバブリングし撹拌してpHが7.0になるように中和した。中和実施後の吸収液(中和処理液)を、次いでろ過器へ送った。このとき、中和処理液は、pHが7.0、SO2−が0.0〜0.1重量%、ダスト量が100〜300mg/Lであった。
ろ過器(ミウラ化学装置(株)製の全自動ケーキ回収フィルター)は、タイマー設定時間によりろ過運転からケーキ剥離運転、ろ過運転からケーキ剥離運転、に切り替える運転を交互に繰り返した。ろ過器のフィルター前後における差圧が0.2MPaに達するか、ろ過時間のタイマー設定は12時間とし、先にきたほうで、自動的にケーキ剥離運転に切り換わる。ケーキ剥離運転には通常30分程度を要した。予備基への切り替えは行わず、すなわち、ケーキ剥離運転期間中にはろ過を行わず、中和処理液はバッファータンクに貯蔵した。10ヶ月連続運転したが、ろ過器のフィルター前後における差圧は0.1MPaを超えることはなく、ろ液(排水)中のスラッジ量は14mg/L以下にろ過され、6ヶ月以上の連続運転においてもフィルター目詰まりによるトラブルは発生しなかった。
【0031】
比較例
前記実施例で用いた第1の処理槽である酸化槽と第2の処理槽である中和槽に替えて、1つの処理槽(酸化・中和槽)を用い、その酸化・中和槽の運転条件が、前記実施例と異なる以外は、実施例と同じ条件で排水処理を行った。吸収塔から抜き出した吸収液(pH=6.0、SO2−=0.5〜0.9重量%、スラッジ量=100〜300mg/L)を、1つの処理槽(酸化・中和槽)でエアーバブリングによる吸収液の空気酸化と、水酸化マグネシウムスラリーによる中和処理を同時に実施した。酸化用空気の供給量は、実施例の酸化槽での供給量と同じ量に設定し、pHが実施例の中和槽と同様にpH7.0となるように水酸化マグネシウムスラリーを添加した。
酸化及び中和処理後の吸収液(酸化・中和処理液)を、実施例で用いたものと同じろ過器に送り、差圧設定及びタイマー設定は実施例と全く同じ条件で、固液分離処理を行った。ろ布交換後、1ヶ月以内にろ過圧力が0.15MPaを超えた。さらに、3ヶ月程度で、ケーキ剥離直後のろ過圧力が0.2MPaに達し所定の処理量が保てなくなり、ろ布交換を余儀なくされた。なお、ろ液中のスラッジ量は14mg/Lを超えることはなかった。
なお、pH、SO2−濃度及びスラッジ量は、次の方法によって測定した。
pH:JIS K 0102のガラス電極法にて測定した。
SO2−濃度:JIS K 0102のヨウ素滴定法にて測定した。
スラッジ量:JIS K 0102の懸濁物質の測定方法にて測定した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の排水処理方法が適用される排煙脱硫装置の一例を示す簡略化されたフローシートである。
【符号の説明】
【0033】
1 脱硫吸収塔
2 吸入口
3 排出口
4 噴霧ノズル
5 デミスタ
6 気液接触部
7 循環ポンプ
8 曝気ノズル
9 第1の処理槽
10 第2の処理槽
11 ろ過器
12 廃液ポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄酸化物を含む排ガスをアルカリ吸収液と吸収塔内で接触して硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置における排水処理方法であって、硫黄酸化物を吸収したアルカリ吸収液を吸収塔から抜き出して第1の処理槽に送り、酸化してpH4以下に調整する酸化工程と、pH4以下に調整された吸収液を第2の処理槽に送り、アルカリ剤を用いてpH5〜8に調整する中和工程と、中和された吸収液をろ過する固液分離工程とを含むことを特徴とする排煙脱硫装置の排水処理方法。
【請求項2】
中和工程において使用するアルカリ剤が水酸化マグネシウムである請求項1に記載の排煙脱硫装置の排水処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−181756(P2007−181756A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532(P2006−532)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】