説明

排熱回収発電装置およびこれを備えた船舶

【課題】内燃機関の排ガスよりも温度レベルが低く従来利用価値の低かったエンジン冷却水の排熱を有機ランキンサイクルの熱源とすることができる排熱回収発電装置を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジンのシリンダジャケット2を冷却するジャケット冷却水、及び、ディーゼルエンジンの過給機から吐出される圧縮空気を冷却する第1空気冷却器5とから熱回収する排熱回収経路7と、排熱回収経路7にて回収された回収熱によって有機流体を蒸発させる蒸発器30と、蒸発器30によって蒸発させられた有機流体によって駆動されるパワータービン32と、パワータービン32の回転出力によって発電する発電機38と、パワータービン32を通過した有機流体を凝縮させる凝縮器36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排熱を回収して発電する排熱回収発電装置およびこれを備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排ガス等の排熱を回収して発電する技術が種々提案されている。下記特許文献1には、ディーゼル発電機からの排熱を熱源とする有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)によって発電する排熱回収発電装置が開示されている。
同文献には、ディーゼル発電機の排ガスから熱回収することが主として記載されているとともに、水冷式のディーゼルエンジンの場合には、そのエンジン冷却水(ジャケット冷却水)を利用することができることも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3044386号公報([0010])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エンジン冷却水は、温度レベルがせいぜい80〜90℃であり、有機ランキンサイクルを駆動させる熱源としては温度レベルが低いという問題がある。
一方、舶用主機として用いられるディーゼルエンジンでは、排ガスの熱回収としては蒸気タービンやパワータービン(ガスタービン)が検討されており、既に所定の効率を達成した実績もある。したがって、舶用主機の排ガスを有機ランキンサイクルの熱源として用いることは、高効率な熱回収を達成する上では必ずしも得策とはいえない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、内燃機関の排ガスよりも温度レベルが低く従来利用価値の低かったエンジン冷却水の排熱を有機ランキンサイクルの熱源とすることができる排熱回収発電装置およびこれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の排熱回収発電装置およびこれを備えた船舶は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる排熱回収発電装置は、内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水、及び、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却器とから熱回収する排熱回収経路と、該排熱回収経路にて回収された回収熱によって有機流体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器によって蒸発させられた前記有機流体によって駆動されるタービンと、該タービンの回転出力によって発電する発電機と、タービンを通過した前記有機流体を凝縮させる凝縮器と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
有機流体は、蒸発器にて蒸発された後、タービンで膨張し、凝縮器で凝縮するサイクル、即ち有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)を行う。本発明では、有機ランキンサイクルの熱源として、エンジン冷却水と空気冷却器から熱回収した熱を用いることとした。このように、例えば250℃以上といった温度レベルが高い内燃機関の排ガスを用いるのではなく、排ガスよりも温度レベルが低く有効利用されていなかったエンジン冷却水(例えば80〜90℃)および空気冷却器(例えば130〜140℃)を用いることができる。特に、有機ランキンサイクルを駆動する熱源の温度レベルとして、エンジン冷却水のみでは低いので、空気冷却器からも熱回収することとして、有機ランキンサイクルによる発電の実現性を高めている。
内燃機関としては、典型的には舶用ディーゼルエンジン(主機)が挙げられる。ただし、舶用に限らず、例えば発電等に用いられる陸用の内燃機関であっても良い。
空気冷却器からの排熱回収は、圧縮空気の上流側(高温側)から行うのが好ましい。
エンジン冷却水としては、典型的には、内燃機関本体のシリンダジャケットを流通するジャケット冷却水が挙げられる。
【0008】
さらに、本発明の排熱回収発電装置では、前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水と熱交換を行う第1排熱回収器と、前記空気冷却器としての第2排熱回収器とを備え、前記第1排熱回収器および前記第2排熱回収器にて熱回収した排熱回収媒体が前記蒸発器にて前記有機流体と熱交換することを特徴とする。
【0009】
排熱回収経路を流れる排熱回収媒体(例えば水)が第1排熱回収器にてエンジン冷却水から排熱を回収し、さらに第2排熱回収器にて圧縮空気から排熱を回収した後に、蒸発器にて有機流体を蒸発させることとした。このように、エンジン冷却水および圧縮空気から熱回収した排熱回収媒体を、他の熱媒を介することなく蒸発器に直接導くので、少ない熱損失で回収熱を蒸発器に導くことができる。
【0010】
さらに、本発明の排熱回収発電装置では、前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水を排熱回収媒体とするとともに、該エンジン冷却水と前記圧縮空気との熱交換を行う前記空気冷却器としての第3排熱回収器を備え、該第3排熱回収器にて熱回収した前記エンジン冷却水が前記蒸発器にて前記有機流体と熱交換することを特徴とする。
【0011】
排熱回収経路を流れるエンジン冷却水が第3排熱回収器にて空気冷却器から排熱を回収した後に、蒸発器にて有機流体を蒸発させることとした。このように、排熱回収経路を流れるエンジン冷却水を排熱回収媒体として用いることとしたので、エンジン冷却水と熱交換する熱交換器(上記発明の第1排熱回収器)を省略することができ、簡素化した構造を実現できる。また、空気冷却器から熱回収したエンジン冷却水を、他の熱媒を介することなく蒸発器に直接導くので、少ない熱損失で回収熱を蒸発器に導くことができる。
【0012】
さらに、本発明の排熱回収発電装置では、熱媒が循環するとともに、前記蒸発器にて該熱媒が有機流体と熱交換する熱媒循環経路を備え、前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水と熱交換を行う第1排熱回収器と、前記空気冷却器としての第2排熱回収器と、前記第1排熱回収器および前記第2排熱回収器にて熱回収した排熱回収媒体が前記熱媒循環経路の熱媒と熱交換することを特徴とする。
【0013】
排熱回収経路を流れる排熱回収媒体が第1排熱回収器にてエンジン冷却水から排熱を回収し、さらに第2排熱回収器にて空気冷却器から排熱を回収した後に、熱媒循環経路の熱媒(例えば水または熱媒油)と熱交換させることとした。そして、回収熱を受け取った熱媒によって、有機流体を蒸発器にて蒸発させることとした。このように、熱媒循環経路を介して回収熱を有機流体に導くこととしても良い。
【0014】
さらに、本発明の排熱回収発電装置では、熱媒が循環するとともに、前記蒸発器にて該熱媒が有機流体と熱交換する熱媒循環経路を備え、前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水を排熱回収媒体とするとともに、該エンジン冷却水と前記圧縮空気との熱交換を行う前記空気冷却器としての第3排熱回収器を備え、該第3排熱回収器にて熱回収した前記エンジン冷却水が前記熱媒循環経路の熱媒と熱交換することを特徴とする。
【0015】
排熱回収経路を流れるエンジン冷却水が第3排熱回収器にて空気冷却器から排熱を回収した後に、熱媒循環経路の熱媒(例えば水または熱媒油)と熱交換させることとした。そして、回収熱を受け取った熱媒によって、有機流体を蒸発器にて蒸発させることとした。このように、熱媒循環経路を介して回収熱を有機流体に導くこととしても良い。
また、排熱回収経路を流れるエンジン冷却水を排熱回収媒体として用いることとしたので、エンジン冷却水と熱交換する熱交換器(上記発明の第1排熱回収器)を省略することができ、簡素化した構造を実現できる。
【0016】
さらに、本発明の排熱回収発電装置は、前記内燃機関の排ガスと熱交換する排ガス熱交換器にて生成された蒸気によって駆動される蒸気タービン発電機を備えている。
【0017】
例えば250℃以上といった温度レベルが高い内燃機関の排ガスについては高効率が期待できる蒸気タービンにて発電することとした。これにより、広い温度範囲に対して高効率に排熱回収発電が可能となる。
【0018】
さらに、本発明の排熱回収発電装置では、前記排ガス熱交換器は、給水を蒸発させる蒸発部と、該蒸発部にて生成された蒸気を過熱する過熱部とを備え、前記排熱回収経路は、前記蒸発部にて得られた蒸気と熱交換する第4排熱回収器を備えていることを特徴とする。
【0019】
第4排熱回収器にて、排ガス熱交換器(排ガスエコノマイザ)の蒸発部にて得られた蒸気と排熱回収媒体とを熱交換させることとしたので、さらに有効に排熱回収することができる。
【0020】
さらに、本発明の排熱回収発電装置は、前記内燃機関の排ガスによって駆動されるガスタービン発電機を備えていることを特徴とする。
【0021】
例えば250℃以上といった温度レベルが高い内燃機関の排ガスについては高効率が期待できるガスタービン(パワータービン)にて発電することとした。これにより、広い温度範囲に対して高効率に排熱回収発電が可能となる。
また、蒸気タービン発電機と組み合わせることにより、さらに高効率とすることができる。
【0022】
また、本発明の船舶は、上記のいずれかの排熱回収発電装置を備えていることを特徴とする。
【0023】
上記のいずれかの排熱回収発電装置を備えているので、有効に排熱回収できる省エネルギー性の高い船舶を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有機ランキンサイクルを駆動する熱源として、エンジン冷却水と空気冷却器とから回収した熱を用いることとした。これにより、従来利用価値の低かったエンジン冷却水の排熱を有効に利用して発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【図4】本発明の第4実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【図5】本発明の第5実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【図6】本発明の第6実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる各実施形態について、排熱回収発電装置が船舶の推進用主機(ディーゼルエンジン;内燃機関)の排熱回収として設置された構成を例として、図面を参照して説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態にかかる排熱回収発電装置が概略的に示されている。
排熱回収発電装置は、ディーゼルエンジンのシリンダブロック等を冷却するシリンダジャケット2内を流れるジャケット冷却水(エンジン冷却水)から熱回収する予熱器(第1排熱回収器)1と、ディーゼルエンジンの過給機から吐出される圧縮空気を冷却して熱回収する第1空気冷却器(第2排熱回収器)5と、これら予熱器1及び第1空気冷却器5から排熱を受け取る熱媒水(排熱回収媒体)が循環する排熱回収経路7と、排熱回収経路7の熱媒水から熱を受け取り、有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)を構成する有機流体経路9とを備えている。
【0028】
なお、図1において、2点鎖線で囲まれた領域は、有機ランキンサイクル用発電装置10を示している。例えば、この有機ランキンサイクル用発電装置10を既存の船舶に設置することにより、更なる排熱回収を簡便に追加することができる。
【0029】
シリンダジャケット2内を流れるジャケット冷却水は、ジャケット冷却水ポンプ12によって、ジャケット冷却水循環流路14内を循環する。このジャケット冷却水循環流路14は、シリンダジャケット2、予熱器1、温度調整用三方弁16、ジャケット冷却水ポンプ12という順番でジャケット冷却水が流れるように形成されている。
ジャケット冷却水循環流路14には、予熱器1をジャケット冷却水がバイパスするバイパス流路23が設けられている。このバイパス流路23を流れる流量を図示しないバイパス弁で調整することによって、予熱器1へ流れるジャケット冷却水の流量を調整できるようになっている。
【0030】
温度調整用三方弁16は、シリンダジャケット2へ流入するジャケット冷却水が所望の入口温度となるように動作する。具体的には、ジャケット冷却水がシリンダジャケット2に流入する入口温度が設定値よりも高い場合には、第2空気冷却器18から導かれる約30℃程度の清水をジャケット冷却水循環流路14へ多く流すように動作する。
温度調整用三方弁16の上流側には、清水ポンプ20へと分岐する分岐流路22が設けられている。この分岐流路22からジャケット冷却水循環流路14内を流れるジャケット冷却水が清水ポンプ20側へと排出されることにより、ジャケット冷却水循環流路14内を流れる循環流量のマスバランスが保たれるようになっている。
【0031】
第2空気冷却器18は、過給機から吐出された圧縮空気の流れに対して、第1空気冷却器5の下流側に設置されている。したがって、第1空気冷却器5の方が、第2空気冷却器18よりも温度レベルが高くなるように設置されている。
第2空気冷却器18内を流れる清水は、図示しないセントラル冷却器によって冷却された後に導かれる。第2空気冷却器18にて圧縮空気を冷却した清水は、一部が温度調整用三方弁16へ導かれ、残部が清水ポンプ20によって再びセントラル冷却器へと返送される。
【0032】
次に、排熱回収経路7について説明する。
排熱回収経路7は閉回路とされており、熱媒水を循環させるための排熱回収用ポンプ24が設けられている。この排熱回収用ポンプ24により、熱媒水は、予熱器1、第1空気冷却器5及び蒸発器30と熱交換するように循環する。
【0033】
蒸発器30の熱媒水入口温度は例えば約130〜140℃とされる。この蒸発器30にて、熱媒水によって有機流体が蒸発させられる。
【0034】
次に、有機流体経路9について説明する。
有機流体経路9を流れる有機流体としては、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素や冷媒として用いられるR134a、R245fa等を用いることができる。
有機流体経路9は閉回路とされており、有機流体を循環させるための有機流体用ポンプ31が設けられている。有機流体は、蒸発器30、パワータービン32、エコノマイザ34、凝縮器36を通過するように相変化を繰り返しながら循環する。
【0035】
パワータービン32は、蒸発器30によって蒸発した有機流体の熱落差(エンタルピー落差)によって回転駆動される。パワータービン32の回転動力は発電機38に伝達され、発電機38にて電力が得られるようになっている。発電機38で得られた電力は、図示しない電力線を介して船内系統へと供給される。
【0036】
パワータービン38にて仕事を終えた有機流体(気相)は、エコノマイザ34にて、有機流体用ポンプ31から送られた有機流体(液相)を予熱する。
エコノマイザ34を通過した有機流体は、凝縮器36にて海水によって冷却されて凝縮液化する。凝縮液化した有機流体は、有機流体用ポンプ31によってエコノマイザ34及び蒸発器30へと送られる。
このように、有機流体経路9は、蒸発器30、パワータービン32、エコノマイザ34及び凝縮器36とともに有機ランキンサイクルを構成する。
【0037】
次に、上記構成の排熱回収発電装置の動作について図1を用いて説明する。
ジャケット冷却水ポンプ12によってシリンダジャケット2へと導かれたジャケット冷却水は、シリンダジャケット2にてシリンダブロック等を冷却することによって昇温させられた後、予熱器1へと導かれる。予熱器1にて、排熱回収経路7を流れる熱媒水とジャケット冷却水との間で熱交換が行われ、ジャケット冷却水の顕熱が排熱回収経路7の熱媒水に回収される。ジャケット冷却水から熱回収した後の熱媒水温度は、例えば、80〜90℃とされる。
【0038】
ディーゼルエンジンの過給機によって圧縮された空気が第1空気冷却器5によって冷却される。この際に第1空気冷却器5内を流れる排熱回収経路7の熱媒水が圧縮空気によって昇温させられることにより、圧縮空気から熱を回収する。第1空気冷却器5にて熱回収した後の熱媒水温度は、例えば、130〜140℃とされる。
【0039】
予熱器1で排熱を回収し、さらに第1空気冷却器5で排熱を回収して高温となった熱媒水は、蒸発器30へと導かれ、有機流体経路9を循環する有機流体と熱交換する。有機流体は、蒸発器30にて熱媒水の顕熱によって加熱され蒸発気化する。蒸発気化して高エンタルピとなった有機流体は、パワータービン32へと導かれ、その熱落差によってパワータービン32を回転駆動させる。パワータービン32の回転出力を得て、発電機38にて発電が行われる。
パワータービン32にて仕事を終えた有機流体(気相)は、エコノマイザ34にて蒸発器30流入前の有機流体(液相)に予熱を与えた後、凝縮器36へと導かれ、海水等の冷却水によって冷却されることにより凝縮液化する。
【0040】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
有機ランキンサイクルの熱源として、ジャケット冷却水(エンジン冷却水)と第1空気冷却器5にて熱回収した熱を用いることとした。このように、例えば250℃以上といった温度レベルが高いディーゼルエンジンの排ガスを用いるのではなく、排ガスよりも温度レベルが低く有効利用されていなかったジャケット冷却水(例えば80〜90℃)および第1空気冷却器(例えば130〜140℃)を用いることができる。特に、有機ランキンサイクルを駆動する熱源の温度レベルとして、ジャケット冷却水のみでは低いので、第1空気冷却器5からも熱回収することとして、有機ランキンサイクルによる発電の実現性を高めている。
【0041】
また、排熱回収経路7を流れる熱媒水がジャケット冷却水から排熱を回収し、さらに第1空気冷却器5にて排熱を回収した後に、蒸発器30にて有機流体を蒸発させることとした。このように、ジャケット冷却水および第1空気冷却器5から熱回収した熱媒水を、他の熱媒を介することなく蒸発器30に直接導くので、少ない熱損失で回収熱を蒸発器30に導くことができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図2を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の排熱回収発電装置を船舶の排熱回収システムに適用した場合の構成について、電力系統を含めた状態で示されている。したがって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図2に示されているように、シリンダジャケット2を冷却して昇温したジャケット冷却水は予熱器1へと流れ、排熱回収用ポンプ24によって排熱回収系統7を循環する熱媒水と熱交換する。予熱器1にて排熱回収した熱媒水は、第1空気冷却器5へと導かれ、過給機40から吐出された圧縮空気から圧縮熱を除去して昇温させられた後、蒸発器30へと導かれる。蒸発器30にて熱媒水によって加熱されて蒸発した有機流体は、パワータービン32を駆動し、これにより発電機38にて発電が行われる。発電機38にて発電された電力は、インバータ装置42にて周波数調整された後、船内系統44へと導かれる。
【0044】
推進用主機であるディーゼルエンジンの排ガスは、排ガスエコノマイザ(排ガス熱交換器)46へと導かれる。排ガスエコノマイザ46では、排ガスの顕熱を回収して過熱器48にて過熱蒸気を生成し、蒸気タービン50を駆動する。蒸気タービン50には、クラッチ52を介して排ガスパワータービン(ガスタービン)54が接続されている。排ガスパワータービン54は、ディーゼルエンジンの排気マニホールド56から導かれる排ガスによって駆動される。
これら蒸気タービン50及びパワータービン54によって得られた回転出力は、減速機58を介して発電機60へと伝達され、この発電機60にて発電が行われる。発電機60にて発電された電力は、船内系統44へと出力される。
【0045】
船内系統44には、複数(図2おいては3台)の発電用ディーゼルエンジン62及び発電機64が並列に接続されている。これら発電用ディーゼルエンジン62は、船内需要電力に応じて起動および停止が行われる。
さらに船内系統44には、軸発電機モータ66が接続されている。軸発電機モータ66は、船内系統44から電力を得て船舶推進用プロペラ68を加勢できるようになっている一方で、船舶推進用プロペラ68からの動力を回収して発電し、船内系統44へと給電できるようになっている。
【0046】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
130〜140℃で作動する有機ランキンサイクルによる排熱回収発電装置に加え、例えば250℃以上といった温度レベルが高い船舶推進用ディーゼルエンジンの排ガスについては高効率が期待できる蒸気タービン50にて発電することとした。これにより、広い温度範囲に対して高効率に排熱回収発電が可能となる。
また、排ガスによって駆動される排ガスパワータービン54を更に備えて発電を行うこととしたので、より高効率にて排熱回収発電を実現することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、蒸気タービン50及び排ガスパワータービン54の両方を用いて発電することとしたが、本発明はこれに限定されず、蒸気タービン50のみ、或いは排ガスパワータービン54のみを用いることとしても良い。
【0048】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図3を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態に加えて、排ガスエコノマイザ46にて得られた蒸気を有機ランキンサイクルの熱源として用いる点が各上記実施形態と異なる。したがって、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
排ガスエコノマイザ46には、過熱器48よりも低温側(排ガス流れ下流側)に位置する蒸発器49が設けられている。蒸発器49にて蒸発した蒸気は、蒸気ドラム72へと導かれる。この蒸気ドラム72の上方に滞留する蒸気は、加熱器(第4排熱回収器)70へと導かれる。加熱器70では、排熱回収系統7を流れる熱媒水が加熱され、蒸発器30へと導かれる。
【0050】
このように、本実施形態では、第1空気冷却器5にて加熱された熱媒水が、加熱器70にて更に加熱されるので、蒸発器30における有機冷媒の加熱温度を高めることができる。これにより、有機ランキンサイクルによる発電を高効率とすることができる。また、排ガスエコノマイザ46にて得られた蒸気を有効利用することができるので、排熱回収発電を更に高効率とすることができる。
【0051】
なお、図3において、符号3は船舶推進用ディーゼルエンジンを示しており、その側方にはシリンダジャケット2が模式的に示されている。また、符号74は蒸気タービン50の下流側に接続された蒸気タービンコンデンサ、符号76は復水ポンプ、符号78はグランドコンデンサ、符号80は大気圧コンデンサ、符号82は給水ポンプを示している。さらに、符号84は蒸気ドラム72内の水を蒸発器49へと送るボイラドラム水循環ポンプを示し、符号86は、蒸気ドラム72内の水位を調整する蒸気ドラムレベル制御弁を示している。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図4を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、排熱回収経路7’の構成が異なる。したがって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図4に示されているように、本実施形態は、排熱回収経路7’の熱媒水としてジャケット冷却水をそのまま用いるようにしている。すなわち、シリンダジャケット2から流出したジャケット冷却水は、第1空気冷却器(第3排熱回収器)5へと流れる。第1空気冷却器5にて圧縮空気を冷却して昇温したジャケット冷却水は、蒸発器30にて有機流体を蒸発させた後、ジャケット冷却水ポンプ12へと戻る。
【0054】
このように、本実施形態によれば、ジャケット冷却水を排熱回収用の熱媒体として用いることとしたので、ジャケット冷却水と熱交換する予熱器1(図1参照)を省略することができ、簡素化した構造を実現できる。また、第1空気冷却器5から熱回収したジャケット冷却水を、他の熱媒を介することなく蒸発器30に直接導くので、少ない熱損失で回収熱を蒸発器30に導くことができる。
【0055】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図5を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、排熱回収経路7と有機流体経路9との間に熱媒循環経路8が設けられている点が異なる。したがって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図5に示されているように、排熱回収経路7と有機流体経路9との間に熱媒循環経路8が設けられている。この熱媒循環経路8は閉回路とされており、熱媒体を循環させるための熱媒循環ポンプ11が設けられている。この熱媒循環ポンプ11により、熱媒は、排熱回収熱交換器13及び蒸発器30を通過して循環する。排熱回収13では、排熱回収経路7の熱媒水から熱回収するように熱交換が行われる。
熱媒循環経路8を流れる熱媒は、排熱回収経路7の熱媒水よりも沸点が高い、例えば熱媒体油などが用いられる。熱媒体油としては、例えば、松村石油株式会社から入手可能なバーレルサーム(登録商標)が用いられる。
【0057】
このように、第1実施形態のように熱媒体経路7の熱媒水を蒸発器30に導くのではなく、熱媒循環経路8を介して回収した排熱を蒸発器30に導くようにしても良い。
排熱回収経路7には水が用いられるため、水が沸騰し蒸気にならないように排熱収経路7内を加圧する必要があり、第1空気冷却器5の入口空気温度次第では高圧仕様になる。そこで、本実施形態のように熱媒循環経路8を設け、水よりも沸点の高い熱媒油等を主に使用すれば、熱媒循環経路8の圧力を大気圧で使用でき、排熱回収経路7から分離した低圧ラインとして構成可能となる。
また、有機ランキンサイクル用発電装置10を、排熱回収経路7のあるディーゼルエンジン近くに設置できない配置上の制約がある場合においては、熱媒循環経路8を導入することで、排熱回収経路7のラインが遠距離になることを回避した上で、熱媒循環経路8の低圧ラインを用いて有機ランキンサイクル用発電装置10に排熱を導くことが可能となる。
【0058】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図6を用いて説明する。本実施形態は、第4実施形態に対して、排熱回収経路7’と有機流体経路9との間に、第5実施形態と同様の熱媒循環経路8(図5参照)が設けられている点が異なる。したがって、第4実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図6に示されているように、排熱回収経路7’と有機流体経路9との間に熱媒循環経路8が設けられている。この熱媒循環経路8は閉回路とされており、熱媒体を循環させるための熱媒循環ポンプ11が設けられている。この熱媒循環ポンプ11により、熱媒は、排熱回収熱交換器13及び蒸発器30を通過して循環する。排熱回収13では、排熱回収経路7’のジャケット冷却水から熱回収するように熱交換が行われる。
熱媒循環経路8を流れる熱媒は、排熱回収経路7の熱媒水よりも沸点が高い、例えば熱媒体油などが用いられる。熱媒体油としては、例えば、松村石油株式会社から入手可能なバーレルサーム(登録商標)が用いられる。
【0060】
このように、第4実施形態のように熱媒体経路7’のジャケット冷却水を蒸発器30に導くのではなく、熱媒循環経路8を介して回収した排熱を蒸発器30に導くようにしても良い。
本実施形態も第5実施形態と同様に、熱媒循環経路8を導入することで、排熱回収経路7のラインが遠距離になることを回避した上で、熱媒循環経路8の低圧ラインを用いた構成が可能となる。
【0061】
なお、上述した各実施形態の排熱回収発電装置は、船舶への適用を例として説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば発電等に用いられる陸用の内燃機関に適用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 予熱器(第1排熱回収器)
5 第1空気冷却器(第2排熱回収器,第3排熱回収器)
7,7’ 排熱回収経路
8 熱媒循環経路
9 有機流体経路
10 排熱回収発電装置
30 蒸発器
31 有機流体用ポンプ
32 パワータービン(タービン)
36 凝縮器
38 発電機
70 加熱器(第4排熱回収器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水、及び、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却器とから熱回収する排熱回収経路と、
該排熱回収経路にて回収された回収熱によって有機流体を蒸発させる蒸発器と、
該蒸発器によって蒸発させられた前記有機流体によって駆動されるタービンと、
該タービンの回転出力によって発電する発電機と、
タービンを通過した前記有機流体を凝縮させる凝縮器と、
を備えていることを特徴とする排熱回収発電装置。
【請求項2】
前記排熱回収経路は、
前記エンジン冷却水と熱交換を行う第1排熱回収器と、
前記空気冷却器としての第2排熱回収器と、
を備え、
前記第1排熱回収器および前記第2排熱回収器にて熱回収した排熱回収媒体が前記蒸発器にて前記有機流体と熱交換することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収発電装置。
【請求項3】
前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水を排熱回収媒体とするとともに、
該エンジン冷却水と前記圧縮空気との熱交換を行う前記空気冷却器としての第3排熱回収器を備え、
該第3排熱回収器にて熱回収した前記エンジン冷却水が前記蒸発器にて前記有機流体と熱交換することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収発電装置。
【請求項4】
熱媒が循環するとともに、前記蒸発器にて該熱媒が有機流体と熱交換する熱媒循環経路を備え、
前記排熱回収経路は、
前記エンジン冷却水と熱交換を行う第1排熱回収器と、
前記空気冷却器としての第2排熱回収器と、
前記第1排熱回収器および前記第2排熱回収器にて熱回収した排熱回収媒体が前記熱媒循環経路の熱媒と熱交換することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収発電装置。
【請求項5】
熱媒が循環するとともに、前記蒸発器にて該熱媒が有機流体と熱交換する熱媒循環経路を備え、
前記排熱回収経路は、前記エンジン冷却水を排熱回収媒体とするとともに、
該エンジン冷却水と前記圧縮空気との熱交換を行う前記空気冷却器としての第3排熱回収器を備え、
該第3排熱回収器にて熱回収した前記エンジン冷却水が前記熱媒循環経路の熱媒と熱交換することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収発電装置。
【請求項6】
前記内燃機関の排ガスと熱交換する排ガス熱交換器にて生成された蒸気によって駆動される蒸気タービン発電機を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の排熱回収発電装置。
【請求項7】
前記排ガス熱交換器は、給水を蒸発させる蒸発部と、該蒸発部にて生成された蒸気を過熱する過熱部とを備え、
前記排熱回収経路は、前記蒸発部にて得られた蒸気と熱交換する第4排熱回収器を備えていることを特徴とする請求項6に記載の排熱回収発電装置。
【請求項8】
前記内燃機関の排ガスによって駆動されるガスタービン発電機を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の排熱回収発電装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の排熱回収発電装置を備えていることを特徴とする船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−231636(P2011−231636A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100792(P2010−100792)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】