説明

排熱回収装置

【課題】内燃機関の低温時にその排熱を利用して潤滑油を迅速に昇温させることによって内燃機関の燃費の向上を図る排熱回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】排熱回収装置101は、エンジン本体1の冷却水が流通する冷却水流路121と、冷却水流路121と間隙を有して設けられ、エンジン本体1の排気ガスが流通可能な第一排気流路111eと、冷却水流路121及び第一排気流路111eに対して熱交換可能に設けられ、エンジン本体1の潤滑油が流通する潤滑油流路131とを備える。冷却水流路121及び第一排気流路111eの間には、潤滑油流路131の少なくとも一部が介在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排熱回収装置に係り、特に内燃機関の排熱を利用する排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を備える車両のエネルギーを有効に利用する技術が検討されており、特に、車両の排熱を利用する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、内燃機関であるエンジンの排気ガスの熱を冷却水及び潤滑油(オイル)の昇温に利用することによって、エンジンの暖気性能を向上させる内燃機関の排気通路構造が記載されている。
【0003】
特許文献1において、エンジンにはEGR装置が設けられている。EGR装置は、排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気系統に還流させ、吸入空気に混入させることによって、エンジンにおける燃焼温度を下げ、窒素酸化物の発生を抑制するものである。そして、このEGR装置におけるEGRガスを還流させる再循環通路には、還流させるEGRガスを冷却するためのEGRクーラとオイルを冷却するためのオイルクーラとが一体になったクーラ装置が設けられている。さらに、再循環通路には、クーラ装置の下流側で再循環通路から分岐するバイパス通路と、バイパス通路を開放又は閉鎖する開閉弁が設けられており、分岐したバイパス通路は、エンジンの排気系統に接続している。
【0004】
また、クーラ装置の内部には、EGRガス、エンジンの冷却水、エンジンのオイルが流通するようになっており、EGRガスが冷却水及びオイルと熱交換を行うことができるように、それぞれの流路が積層配置されている。
そして、エンジンの低温時にバイパス通路の開閉弁が開放されることによって、排気ガスがバイパス通路に積極的に導かれる。バイパス通路に積極的に導かれる排気ガスは、クーラ装置を通過してバイパス通路に流入するため、クーラ装置の内部の冷却水及びオイルと熱交換を行ってこれらを昇温する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−100665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷間始動時等のエンジンの低温時、冷却水の温度がエンジンの燃費に与える影響は少ないが、低温では粘度が高くなる潤滑油は、潤滑油が供給されるエンジンの摺動部及び回転部に対してフリクションを増大させるため、エンジンの燃費を悪化させる。このため、エンジンの低温時に潤滑油をより迅速に昇温させることが、エンジンの燃費の向上に対してより効果的となる。しかしながら、特許文献1のクーラ装置は、EGRガスつまり排気ガスの熱がエンジンの冷却水及び潤滑油に同等に伝達される構成を有しているため、効果的なエンジンの燃費の向上を達成できていないという問題がある。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、内燃機関の低温時にその排熱を利用して潤滑油を迅速に昇温させることによって内燃機関の燃費の向上を図る排熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明に係る排熱回収装置は、内燃機関の冷却水が流通する冷却水流路と、冷却水流路と間隙を有して設けられ、内燃機関の排気ガスが流通可能な第一排気ガス流路と、冷却水流路及び第一排気ガス流路に対して熱交換可能に設けられ、内燃機関の潤滑油が流通する潤滑油流路とを備え、冷却水流路及び第一排気ガス流路の間には、潤滑油流路の少なくとも一部が介在する。
【0009】
また、上記排熱回収装置は、冷却水流路、第一排気ガス流路及び潤滑油流路と間隙を有して設けられ、内燃機関の排気ガスが流通可能な第二排気ガス流路と、第一排気ガス流路及び第二排気ガス流路のいずれか一方を選択可能に閉鎖する切換弁とをさらに備えてもよい。
また、上記排熱回収装置には、内燃機関の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置の下流の排気ガスが流通してもよい。
冷却水流路及び第一排気ガス流路は、潤滑油流路の内部を通過してもよい。
冷却水流路及び第一排気ガス流路は、潤滑油流路を挟んで層状に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る排熱回収装置によれば、内燃機関の低温時にその排熱を利用して潤滑油を迅速に昇温させることによって内燃機関の燃費を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排熱回収装置及びその周辺の構成を示す模式図である。
【図2】図1の排熱回収装置の構成を示す模式断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す模式断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る排熱回収装置の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る排熱回収装置101及び排熱回収装置101を備える内燃機関の構成を説明する。なお、以下の実施形態において、内燃機関として水冷式のディーゼルエンジンを搭載する車両に排熱回収装置101を使用した場合の例について説明する。
【0013】
図1を参照すると、ディーゼルエンジンのエンジン本体1は、複数の気筒1aを備え、各気筒1aの図示しない吸気ポートには、車両の外部から吸入された空気である吸入空気を各気筒1aに分配するための吸気マニフォールド2が接続されている。さらに、各気筒1aの図示しない排気ポートには、各気筒1aから排出される排気ガスを1つに集約するための排気マニフォールド3が接続されている。そして、吸気マニフォールド2には、吸入空気を車両の外部から導入するための吸気通路5が接続され、排気マニフォールド3には、排気ガスを車両の外部に導出するための排気通路6が接続されている。
【0014】
吸気マニフォールド2は、吸気通路5の第三吸気通路部5cを介して、第三吸気通路部5cを通過してエンジン本体1に流入する吸入空気を冷却するためのインタークーラ7に連通する。さらに、インタークーラ7は、吸気通路5の第二吸気通路部5bを介して、ターボチャージャ4のコンプレッサハウジング4aに連通する。
さらに、ターボチャージャ4のコンプレッサハウジング4aは、吸気通路5の第一吸気通路部5a及び図示しないエアクリーナを介して、外気に連通する。
【0015】
また、排気マニフォールド3は、ターボチャージャ4のタービンハウジング4bを介して、排気通路6の第一排気通路部6aに接続されている。
なお、ターボチャージャ4は、コンプレッサハウジング4a内部の図示しないコンプレッサホイールと、タービンハウジング4b内部の図示しないタービンホイールとが互いにタービンシャフトを介して連結された構造を有している。そして、ターボチャージャ4は、エンジン本体1から排気マニフォールド3を介して供給される排気ガスがタービンホイールを回転させることによって、タービンホイールと共に回転するコンプレッサホイールが吸入空気を加圧してエンジン本体1に供給し、それによって、エンジン本体1の出力を向上させるものである。
【0016】
さらに、排気通路6の第一排気通路部6aは、ターボチャージャ4のタービンハウジング4bを、排気ガス浄化装置8に連通する。排気ガス浄化装置8は、排気ガスを浄化処理するための一連の装置であり、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕捉するフィルタであるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の含有量を低減する触媒を含む触媒装置等によって構成されている。
また、排気ガス浄化装置8は、排気通路6の第二排気通路部6bを介して、排熱回収装置101に連通し、排熱回収装置101は、排気通路6の第三排気通路部6c及び図示しないマフラー(消音器)を介して、外気に連通する。なお、排熱回収装置101の詳細な構成は、後述で示す。
【0017】
また、排気マニフォールド3の途中から分岐してEGR通路部11が延びており、分岐したEGR通路部11は、第三吸気通路部5cに接続している。さらに、EGR通路部11の途中には、排気マニフォールド3から第三吸気通路部5cに向かって、EGRクーラ12及びEGR開閉弁13がこの順で設けられている。なお、EGRクーラ12は、EGR通路部11を流通する排気ガスを冷却するものであり、EGR開閉弁13は、EGR通路部11を開放及び閉鎖するものである。そして、このEGR通路部11、EGRクーラ12及びEGR開閉弁13はEGRシステム10を構成し、EGRシステム10は、不活性ガスである排気ガスの一部をエンジン本体1の吸気系統に還流させて吸入空気に混入させることによって、エンジン本体1における燃焼温度を下げ、排気ガスにおける窒素酸化物の発生量を抑制するものである。
【0018】
また、水冷式のエンジン本体1では、気筒1a内での燃焼による温度上昇を抑えるために、気筒1a及び図示しない気筒ヘッドの周りに冷却水が流通するウォータージャケットが形成されている。さらに、エンジン本体1の外部には、ウォータージャケットを流通する冷却水を冷却するための冷却系統が設けられている。そして、上記の冷却系統は、外気及び冷却水の間で熱交換させるラジエータ22と、ラジエータ22及びウォータージャケットを連通する冷却水通路21とによって構成されている。
【0019】
冷却水通路21は、エンジン本体1の図示しないウォータージャケットに接続されてウォータージャケットから冷却水が流入する第一冷却水通路部21aを含み、さらに、第一冷却水通路部21aから2つに分岐する第二冷却水通路部21b及び第三冷却水通路部21cを含んでいる。そして、第二冷却水通路部21bは、ラジエータ22の入口に接続され、第三冷却水通路部21cは、排熱回収装置101の冷却水流入口122c(図2参照)に接続されている。
【0020】
さらに、冷却水通路21は、ラジエータ22の出口に接続される第四冷却水通路部21dと、排熱回収装置101の冷却水流出口122d(図2参照)に接続される第五冷却水通路部21eと、第四冷却水通路部21d及び第五冷却水通路部21eを1つに集約してエンジン本体1のウォータージャケットに図示しないウォーターポンプを介して接続する第六冷却水通路部21fを含む。なお、ウォーターポンプは、第六冷却水通路部21fの冷却水をエンジン本体1のウォータージャケットに圧送するものである。
【0021】
よって、冷却水通路21は、冷却水がエンジン本体1からラジエータ22を経由してエンジン本体1に戻る循環経路と、冷却水がエンジン本体1から排熱回収装置101を経由してエンジン本体1に戻る循環経路との二系統の循環経路によって構成されている。
【0022】
また、エンジン本体1は、その内部の摺動部や回転部に潤滑油を供給する図示しない潤滑装置を有しており、それによって、摺動部や回転部における焼き付きを防ぐと共に摩擦抵抗を減らし、エンジン本体1の機能を十分に発揮させている。なお、潤滑装置は、オイルポンプによって潤滑油を圧送する一般的な既知のものである。
そして、エンジン本体1には、潤滑油を外部に流出させて再びエンジン本体1に戻す循環経路を構成する潤滑油通路31が設けられている。
【0023】
潤滑油通路31は、上記の潤滑装置に連通し潤滑装置によって潤滑油が供給される第一潤滑油通路部31aを含み、第一潤滑油通路部31aは、排熱回収装置101の潤滑油流入口132c(図2参照)に接続されている。さらに、潤滑油通路31は、排熱回収装置101の潤滑油流出口132d(図2参照)に接続されてエンジン本体1の内部に連通する第二潤滑油通路部31bを含んでいる。
よって、潤滑油通路31は、潤滑油がエンジン本体1から排熱回収装置101を経由してエンジン本体1に戻る循環経路によって構成されている。
【0024】
また、図2を参照すると、排熱回収装置101の詳細な構成が示されている。
排熱回収装置101は、排気ガス流路111を形成する筐体112を有している。
筐体112は、その上流側に第二排気通路部6bが接続される排気流入口112aと、その下流側に第三排気通路部6cが接続される排気流出口112bを有している。さらに、筐体112は、その内部に、排気流入口112aに連通する空間である上流チャンバ111cを形成し、そして、上流チャンバ111cより下流側に、排気流出口112bに連通する空間である下流チャンバ111dを上流チャンバ111cと別個に形成している。
【0025】
また、筐体112は、上流チャンバ111cを下流チャンバ111dに連通する2つの排気流路、すなわち第一排気流路111e及び第二排気流路111fを形成している。なお、第一排気流路111e及び第二排気流路111fはそれぞれ、いずれも筒状をした第一排気流路壁部112e及び第二排気流路壁部112fによってそれぞれの内部に形成されており、第一排気流路壁部112e及び第二排気流路壁部112fは互いに間隔をあけて形成されている。(図3参照)
よって、上流チャンバ111c、第一排気流路111e、第二排気流路111f及び下流チャンバ111dは、排気ガス流路111を形成している。
ここで、第一排気流路111e及び第二排気流路111fはそれぞれ、第一排気ガス流路及び第二排気ガス流路を構成している。
【0026】
さらに、図3を合わせて参照すると、排熱回収装置101は、筐体112の上流チャンバ111cと下流チャンバ111dとの間に、筒状をした潤滑油流路壁部132を有している。潤滑油流路壁部132は、第一排気流路111eを形成する第一排気流路壁部112eの周囲を取り囲むようにして、上流チャンバ111cの下流側壁部を形成する筐体112の壁部112cから下流チャンバ111dの上流側壁部を形成する筐体112の壁部112dにわたって、形成されている。そして、潤滑油流路壁部132は、その外側で、第二排気流路111fを形成する第二排気流路壁部112fとの間に間隙を有している。
【0027】
潤滑油流路壁部132には、第一潤滑油通路部31aに接続される潤滑油流入口132cを有する潤滑油流入管部132aと、第二潤滑油通路部31bに接続される潤滑油流出口132dを有する潤滑油流出管部132bとが外側に向かって突出形成されている。なお、潤滑油流入管部132aは、潤滑油流出管部132bより下流側、すなわち下流チャンバ111d側に設けられている。
従って、潤滑油流路壁部132、潤滑油流入管部132a、潤滑油流出管部132b、並びに筐体112の壁部112c及び112dがそれらの内部に形成する空間によって、第一排気流路111eの周囲を取り囲んで隣接する潤滑油流路131が形成されている。つまり、第一排気流路111eは、潤滑油流路131の内部を通過するようにして設けられている。
【0028】
これにより、潤滑油流路131を流通する潤滑油は、取り囲んでいる第一排気流路111eを流通する排気ガスと熱交換を行うことができる。一方、上流チャンバ111c及び下流チャンバ111dと潤滑油流路131との間は、筐体112の壁部112c及び112dに設けられた図示しない断熱材によって熱的に遮断されており、潤滑油流路131を流通する潤滑油は、上流チャンバ111c及び下流チャンバ111dを流通する排気ガスと熱交換を行うことができないようになっている。また、潤滑油流路壁部132との間に間隙を有する第二排気流路壁部112fの第二排気流路111fを流通する排気ガスとも、潤滑油流路131を流通する潤滑油は熱交換を行うことができない。
【0029】
さらに、排熱回収装置101は、潤滑油流路131の内部を通過し且つ冷却水流路121をその内部に形成する筒状の冷却水流路管122を有している。冷却水流路管122は、潤滑油流路131内では第一排気流路111eに並行するようにして延びており、第三冷却水通路部21cに接続される冷却水流入口122cを有する冷却水流入管部122aと、第五冷却水通路部21eに接続される冷却水流出口122dを有する冷却水流出管部122bとを潤滑油流路壁部132の外側に突出させている。なお、冷却水流路管122は、第一排気流路111eの第一排気流路壁部112eに対して間隙を有するようにして形成されており、冷却水流入管部122aは、冷却水流出管部122bより下流側、すなわち下流チャンバ111d側に設けられている。よって、冷却水流路管122は、第一排気流路111eと間隔をあけて潤滑油流路131の内部を通過する冷却水流路121を形成している。
【0030】
これにより、冷却水流路121を流通する冷却水は、周囲の潤滑油と熱交換を行うことができる。一方、第一排気流路壁部112eとの間に間隙を有し且つこの間隙に潤滑油が介在する冷却水流路管122の冷却水流路121を流通する冷却水は、第一排気流路111eを流通する排気ガスと直接的に熱交換を行うことができない。
【0031】
また、筐体112の上流チャンバ111cの内部には、上流チャンバ111cとの連結部に位置する第一排気流路111eの第一流入口112e1及び上流チャンバ111cとの連結部に位置する第二排気流路111fの第二流入口112f1のいずれか一方を閉鎖すると共に他方を開放するように選択可能に動作するバタフライ型の電磁弁である切換弁141が設けられている。
【0032】
切換弁141は、弁体141aと、弁体141aに一体形成された回転軸部141bによって構成されている。弁体141aは、図示しないアクチュエータによって回転駆動される回転軸部141bを中心として、回転軸部141bと共に旋回することができ、弁体141aの旋回動作は図示しない車両のECUによって制御される。
そして、切換弁141は、回転軸部141bが紙面上で反時計回りの方向Pに回転された場合、弁体141aが回転軸部141bを中心に方向Pに旋回して第二排気流路111fの第二流入口112f1を閉鎖すると共に、第一排気流路111eの第一流入口112e1を開放する。反対に、切換弁141は、回転軸部141bが紙面上で時計回りの方向Qに回転された場合、弁体141aが回転軸部141bを中心に方向Qに旋回して第一排気流路111eの第一流入口112e1を閉鎖すると共に、第二排気流路111fの第二流入口112f1を開放する。
【0033】
次に、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る排熱回収装置101及び排熱回収装置101を備えるディーゼルエンジンの動作を説明する。
図1を参照すると、エンジン本体1が稼動することによって、図示しないエアクリーナ及び第一吸気通路部5aを介して、ターボチャージャ4のコンプレッサハウジング4aに外気が吸入空気として吸入される。そして、吸入空気は、コンプレッサハウジング4a内の図示しないコンプレッサホイールにより過給されて第二吸気通路部5bに送られ、さらにインタークーラ7を通過する際に外気との熱交換によって冷却された後、第三吸気通路部5cを経由して、エンジン本体1の気筒1aの内部に流入する。そして、気筒1aの内部の吸入空気は、気筒1aの内部に供給された燃料(軽油)と混合されて、自己着火により燃焼する。
【0034】
燃焼した吸入空気及び燃料は、排気ガスとして気筒1aから排気マニフォールド3に排出され、さらに、排気マニフォールド3内の流通過程で1つに集約されて、ターボチャージャ4のタービンハウジング4bに流入する。流入した排気ガスは、タービンハウジング4b内の図示しないタービンホイール及びタービンホイールに連結されたコンプレッサホイールの回転を上昇させつつ、第一排気通路部6aに排出される。さらに、排気ガスは、第一排気通路部6aから排気ガス浄化装置8に流入し、排気ガス浄化装置8において、粒子状物質の除去及び窒素酸化物の含有量の低減をなされた後、第二排気通路部6bを経由して排熱回収装置101に流入する。そして、排気ガスは、排熱回収装置101を通過した後、第三排気通路部6c及び図示しないマフラーを経由して車両の外部に排出される。なお、図1及び2において、実線矢印は、排気ガスの流通方向を示している。
【0035】
エンジン本体1では、エンジン本体1が稼動することによって、図示しないウォーターポンプが稼働され、それにより、冷却水が圧送されて、エンジン本体1の内部、冷却水通路21及び排熱回収装置101を冷却水が循環する。なお、図1及び2において、一点鎖線矢印は、冷却水の流通方向を示している。
同時に、エンジン本体1では、図示しないオイルポンプが稼働され、それにより、潤滑油通路31に潤滑油が圧送されて潤滑油通路31及び排熱回収装置101を潤滑油が循環する。なお、図1及び2において、二点鎖線矢印は、潤滑油の流通方向を示している。
【0036】
また、EGR開閉弁13は、エンジン本体1の回転数及び負荷に応じて開放及び閉鎖が制御される。そして、EGR開閉弁13が開放されると、排気マニフォールド3の排気ガスの一部がEGR通路部11を通過して吸入空気に混入され、エンジン本体1の気筒1aに流入する。このとき、酸素濃度が低い排気ガスが混入した吸入空気の酸素濃度が低くなるため、エンジン本体1での燃焼温度が低くなり、燃焼により生成される窒素酸化物の量が低減する。
【0037】
また、エンジン本体1の冷間始動時における暖気運転状態時のようにエンジン本体1が低温である時では、潤滑油の温度が低くて粘度が高くなるため、潤滑油は、エンジン本体1の摺動部及び回転部に与えるフリクションを増大させる。
このため、潤滑油の温度を迅速に上昇させるために、図示しない車両のECUは、冷間始動時に、排熱回収装置101の切換弁141に第二排気流路111fの第二流入口112f1を閉鎖するように動作させる(図2参照)。
【0038】
図2及び図3を合わせて参照すると、このとき、第二排気通路部6bから排熱回収装置101に流入した排気ガスは、上流チャンバ111cに流入した後、第一排気流路111eを通過して下流チャンバ111dに流入し、そして、第三排気通路部6cに流出する。
暖気運転状態時のようなエンジン本体1(図1参照)の低温時でも、排気ガスの温度は潤滑油の温度と比べて大幅に高いため、第一排気流路111eを流通する排気ガスは、第一排気流路111eの周囲を取り囲んで排気ガスの流通方向と対向する方向に流通している潤滑油流路131の潤滑油と熱交換を行い、潤滑油を昇温する。
また、冷却水は、ウォータージャケットにおける熱交換により、潤滑油より温度の上昇が早く、暖気運転状態時のようなエンジン本体1(図1参照)の低温時でも、例えば、潤滑油より5〜10℃程度、その温度が高くなっている。このため、冷却水流路121を流通する冷却水は、冷却水流路121の周囲を取り囲んで冷却水の流通方向と並行する方向に流通している潤滑油流路131の潤滑油と熱交換を行い、潤滑油を昇温する。
【0039】
よって、排熱回収装置101は、車両の外部に排出される排気ガスに含まれる熱、及び冷却水に含まれる熱を利用して、潤滑油を加熱するオイルウォーマとして作用する。そして、潤滑油は、排気ガス及び冷却水により昇温されることによって、その粘度を低下させ、エンジン本体1(図1参照)の摺動部及び回転部に与えるフリクションを低下させる。
【0040】
また、暖気運転状態が終了した後のエンジン本体1(図1参照)が十分に昇温された状態になると、冷却水の温度より潤滑油の温度の方が高くなる。このため、図示しない車両のECUは、排熱回収装置101の切換弁141に第一排気流路111eの第一流入口112e1を閉鎖するように切り換え動作させる。
このとき、第二排気通路部6bから排熱回収装置101の上流チャンバ111cに流入した排気ガスは、紙面上の破線矢印に示す方向に流通し、第二排気流路111fを通過して下流チャンバ111dに流入し、そして、第三排気通路部6cに流出する。
また、第一排気流路111eに排気ガスが流通しない潤滑油流路131では、潤滑油と排気ガスとの間の熱交換はなく、冷却水流路121を流通する潤滑油より温度が低い冷却水が、周囲の潤滑油流路131の潤滑油と熱交換を行い、潤滑油を冷却する。よって、排熱回収装置101は、潤滑油を冷却するオイルクーラとして作用する。
【0041】
なお、車両のECUによる切換弁141を切り換え動作させる時期の決定は、潤滑油の温度と冷却水の温度との比較に基づいて行われてよい、すなわち、潤滑油の温度が冷却水の温度以上であるか否かに基づいて行われてよい。又は、車両のECUによる切換弁141を切り換え動作させる時期の決定は、潤滑油の温度のみに基づいて行われてもよい。つまり、切換弁141に第一排気流路111eの第一流入口112e1を閉鎖させる時の潤滑油の温度は、エンジン本体1(図1参照)の摺動部及び回転部へ与える潤滑油のフリクションが許容レベルを満足するような潤滑油温度に設定することができ、車両及びエンジン本体1の種類によって異なるが、例えば、80℃等とすることができる。
【0042】
上述の説明から、この発明に係る排熱回収装置101は、エンジン本体1の冷却水が流通する冷却水流路121と、冷却水流路121と間隙を有して設けられ、エンジン本体1の排気ガスが流通可能な第一排気流路111eと、冷却水流路121及び第一排気流路111eに対して熱交換可能に設けられ、エンジン本体1の潤滑油が流通する潤滑油流路131とを備える。そして、冷却水流路121及び第一排気流路111eの間には、潤滑油流路131の少なくとも一部が介在する。
【0043】
これによって、暖気運転時のようなエンジン本体1の低温時すなわち潤滑油の低温時、第一排気流路111e及び冷却水流路121の間に介在する潤滑油流路131の潤滑油は、より高い温度を有する第一排気流路111eの排気ガスの熱及び冷却水流路121の冷却水の熱の両方によって加熱されるため、迅速に昇温される。このため、エンジン本体1では、その摺動部及び回転部への潤滑油によるフリクションが早期に低い状態とすることができる。さらに、潤滑油の昇温に利用される排気ガスの熱は、車両の外部にそのまま廃棄される熱であり、すなわちエンジン本体1の排熱であるため、潤滑油の昇温に新たな熱エネルギーの生成を必要としない。従って、排熱回収装置101は、エンジン本体1の低温時にエンジン本体1の排熱を利用して潤滑油を迅速に昇温させることによってエンジン本体1の燃費を向上させることが可能になる。
【0044】
さらに、冷却水流路121及び第一排気流路111eの間に潤滑油流路131が介在するため、ウォータージャケットにおける熱交換により加熱される必要が低い冷却水流路121の冷却水を必要以上に加熱することなく、排気ガスの熱は潤滑油の昇温に、有効に利用することが出来る。
【0045】
また、排熱回収装置101は、冷却水流路121、第一排気流路111e及び潤滑油流路131と間隙を有して設けられ、エンジン本体1の排気ガスが流通可能な第二排気流路111fと、第一排気流路111e及び第二排気流路111fのいずれか一方を選択可能に閉鎖する切換弁141とをさらに備えている。これによって、潤滑油の温度が低い状態では、第一排気流路111eに排気ガスを流通させて潤滑油流路131の潤滑油を昇温し、潤滑油の温度が十分に昇温された状態では、第二排気流路111fに排気ガスを流通させて潤滑油流路131の潤滑油の過度な加熱を防ぎ、潤滑油のオイルコーキング(炭化)を防ぐことができる。さらに、潤滑油の温度が十分に昇温された状態では、冷却水の方が潤滑油より温度が低くなるため、潤滑油流路131の潤滑油は冷却水流路121の冷却水によって冷却され、排熱回収装置101はオイルクーラとして機能することもできる。
【0046】
また、排熱回収装置101は、エンジン本体1の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置8の下流の排気ガスが流通するようにして設けられている。排気ガス浄化装置8では、触媒の活性化のための昇温、DPFに堆積した粒子状物質の燃焼除去等のために、排気ガスの熱が利用される。排熱回収装置101は、排気ガス浄化装置8の下流の排気ガスを流通させることによって、排気ガス浄化装置8における排気ガスの熱の利用を妨げることなく、本来、車両の外部に廃棄されるだけである排気ガスの熱を利用して潤滑油を昇温させる。よって、排熱回収装置101は、車両の外部に廃棄される排熱を有効に利用することが可能になる。
【0047】
また、排熱回収装置101では、冷却水流路121及び第一排気流路111eは、潤滑油流路131の内部を通過するように形成されている。これによって、潤滑油流路131の潤滑油との熱交換過程では、冷却水流路121の冷却水の熱及び第一排気流路111eの排気ガスの熱はすべて、潤滑油流路131の内部以外に放出されることなく潤滑油との熱交換に利用される。よって、冷却水流路121の冷却水及び第一排気流路111eの排気ガスと潤滑油流路131の潤滑油との熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0048】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る排熱回収装置201は、実施の形態1における排熱回収装置101の第一排気流路111e、冷却水流路121及び潤滑油流路131を互いに隣接する層状の形状に形成したものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図4を参照すると、実施の形態1の排熱回収装置101を示す図3と同様にして排熱回収装置201における上流から下流に向かう方向と垂直な方向に沿った断面図が示されている。
排熱回収装置201は、内部に冷却水流路221を形成する筒状の冷却水流路壁部222と、冷却水流路壁部222との間に間隙を有しつつ冷却水流路壁部222の外側周囲を取り囲むようにして形成された筒状の潤滑油流路壁部232とを有している。そして、冷却水流路壁部222と潤滑油流路壁部232との間の間隙は、筒状の潤滑油流路231を形成している。
さらに、排熱回収装置201は、潤滑油流路壁部232との間に間隙を有しつつ潤滑油流路壁部232の外側周囲を取り囲むようにして形成された筒状の第一排気流路壁部212eを有している。そして、潤滑油流路壁部232と第一排気流路壁部212eとの間の間隙は、筒状の第一排気流路211eを形成している。
【0050】
よって、排熱回収装置201は、冷却水流路221の外側に冷却水流路221の周囲を取り囲んで隣接する層状の潤滑油流路231が形成され、さらに、潤滑油流路231の外側に潤滑油流路231の周囲を取り込んで隣接する層状の第一排気流路211eが形成された構成を有している。そして、冷却水流路221の冷却水と潤滑油流路231の潤滑油とが熱交換可能であり、潤滑油流路231の潤滑油と第一排気流路211eの排気ガスとが熱交換可能となっている。
また、第二排気流路111fを形成する第二排気流路壁部112fは、第一排気流路壁部212eの外側で第二排気流路壁部112fと間隙を有して配置されている。
また、この発明の実施の形態2に係る排熱回収装置201のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
このように、実施の形態2における排熱回収装置201によれば、上記実施の形態1の排熱回収装置101と同様な効果が得られる。
また、実施の形態2における排熱回収装置201では、冷却水流路221及び第一排気流路211eは、潤滑油流路231を挟んで層状に形成されている。そして、第一排気流路211e及び潤滑油流路231は、筒状の形状に形成されている。これによって、外側の層を形成する第一排気流路211eとその内側に隣接する層を形成する潤滑油流路231との間では、実施の形態1の排熱回収装置101より熱交換面積が増大するため、第一排気流路211e及び潤滑油流路231の間の交換熱量を増大させることが可能になる。
【0052】
また、実施の形態1の排熱回収装置101における第一排気流路壁部112e及び冷却水流路管122、並びに、実施の形態2の排熱回収装置201における潤滑油流路壁部232及び冷却水流路壁部222は、内側及び外側の壁面が平坦であったがこれに限定されるものでない。内外の壁面に凹凸を形成してもよく、内外の壁面に複数のフィンを設けてもよい。これにより、第一排気流路壁部112e、冷却水流路管122、潤滑油流路壁部232及び冷却水流路壁部222と、潤滑油、冷却水及び排気ガスの各流体との接触面積を増大させることができるため、流体間の熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0053】
また、実施の形態1の排熱回収装置101では、潤滑油流路131の内部に、1つの第一排気流路111eと1つの冷却水流路121が形成されていたが、これに限定されるものでなく、第一排気流路111e及び冷却水流路121は複数形成されてもよい。複数の第一排気流路111e及び冷却水流路121を形成することによって、第一排気流路111eの排気ガス及び冷却水流路121の冷却水と潤滑油流路131の潤滑油との間の熱交換面積を増大させることができるため、熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0054】
また、実施の形態2の排熱回収装置201において、冷却水流路221、潤滑油流路231及び第一排気流路211eは、環状の断面形状を有して形成されていたがこれに限定されるものでない。矩形状断面を有する直線状をした冷却水流路221、潤滑油流路231及び第一排気流路211eを、この順序で並列に隣接させて配置してもよい。そして、並列に配置した冷却水流路221、潤滑油流路231及び第一排気流路211eの組み合わせが、複数設けられていてもよい。このとき、例えば、冷却水流路221、潤滑油流路231、第一排気流路211e、潤滑油流路231、冷却水流路221、潤滑油流路231、及び第一排気流路211eをこの順序で並列に配置する構成のように、冷却水流路221と第一排気流路211eとの間に潤滑油流路231を配置する組み合わせを複数設けることができる。
【0055】
また、実施の形態1及び2において、排熱回収装置101及び201をディーゼルエンジンに使用した場合について説明したが、これに限定されるものでない。排熱回収装置101及び201は、ガソリンエンジン、LNGエンジン、エタノールエンジン等の排気ガスと共に熱を車両の外部に放出する内燃機関に使用することができる。さらに、排熱回収装置101及び201は、車両に限定されず、発電機、船舶等の内燃機関を備えるものに使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン本体(内燃機関)、8 排気ガス浄化装置、111e,211e 第一排気流路(第一排気ガス流路)、111f 第二排気流路(第二排気ガス流路)、121,221 冷却水流路、131,231 潤滑油流路、141 切換弁、101,201 排熱回収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却水が流通する冷却水流路と、
前記冷却水流路と間隙を有して設けられ、前記内燃機関の排気ガスが流通可能な第一排気ガス流路と、
前記冷却水流路及び前記第一排気ガス流路に対して熱交換可能に設けられ、前記内燃機関の潤滑油が流通する潤滑油流路と
を備え、
前記冷却水流路及び前記第一排気ガス流路の間には、前記潤滑油流路の少なくとも一部が介在する排熱回収装置。
【請求項2】
前記冷却水流路、前記第一排気ガス流路及び前記潤滑油流路と間隙を有して設けられ、前記内燃機関の排気ガスが流通可能な第二排気ガス流路と、
前記第一排気ガス流路及び前記第二排気ガス流路のいずれか一方を選択可能に閉鎖する切換弁と
をさらに備える請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記内燃機関の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置の下流の排気ガスが流通する請求項1または2に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記冷却水流路及び前記第一排気ガス流路は、前記潤滑油流路の内部を通過する請求項1〜3のいずれか一項に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記冷却水流路及び前記第一排気ガス流路は、前記潤滑油流路を挟んで層状に形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の排熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−107599(P2012−107599A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258946(P2010−258946)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】