説明

掘削土砂の脱水装置

【課題】掘削土砂の処理量が変動しても処理量に応じた適切な加圧力を掘削土砂に作用させる。
【解決手段】本発明に係る掘削土砂の脱水装置1は、脱水機構1aと加圧機構1bとから構成してあり、加圧機構1bを構成する加圧ベルト32は、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体37と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体38とを備えており、該加圧体は、圧縮性流体としての空気が封入された袋体60を内周側ベルト本体37の循環方向に沿って複数並設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水比の高い掘削土砂を脱水する掘削土砂の脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥土圧シールド工法において、シールドマシンのチャンバー内に取り込まれた掘削土砂は、排泥ポンプ、スクリューコンベヤ、ベルトコンベヤ等によって地上に搬出され、土砂ピットに貯留される。
【0003】
ここで、泥土圧シールドは、泥土圧によって切羽の安定を図っている関係上、掘削土砂の含水比が高く、それゆえ産業廃棄物扱いとなって処分費用が高くなる。加えて、土粒子の間隙に多くの水を含むため、単位体積当たりの重量が大きく、運搬費用も高くなる。さらには、トンネル掘削であるため、掘削土砂の発生量は膨大である。
【0004】
ここで、天日干し等の方法で掘削土砂を乾燥させれば、含水比が低下し、一般残土としての利用も可能ではあるが、天日干しのための広大な敷地を都市部に確保することは現実的ではない。また、石灰等のセメント系材料を添加することで含水比の低下と強度の改善とを図れば、建設資材としての再利用も可能であるが、発生土が膨大であるため、セメント系材料の材料コストや添加のための作業コストが高くなり、処理用地の確保とも相まって、やはり経済性の面で適用が困難となる。また、セメント系材料の添加によってpHが大きくなるため、一般残土としての処分が困難になる場合がある。
【0005】
そのため、掘削土砂の減容化・軽量化を効率よく図ることができるさまざまな試みが従来からなされてきた。
【0006】
【特許文献1】特開平9−206759号公報
【特許文献2】特開平7−214094号公報
【特許文献3】実開平6−66890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1には、メッシュベルトと該メッシュベルトの下側から強制的に真空吸引するバキュームユニットを備えた真空吸引式脱水コンベアが開示されており、かかる真空吸引式脱水コンベアによれば、脱水機のイニシャルコストを下げることができる旨、記載されている。
【0008】
加えて、同文献記載の発明においては、メッシュベルトに載って移動する固形物を同期回転で回る押さえベルトの間に挟み、押さえローラで押さえベルトの上から加圧し押さえつけることによって、脱水の効率化が図られている。
【0009】
しかしながら、このような押さえローラは、通常、架台に軸支されているため、メッシュベルトとの離間距離は常に一定である。そのため、脱水の対象となる掘削土砂の処理量が変動する場合には、掘削土砂を一定の大きさで加圧することができないという不都合を生じる。
【0010】
すなわち、脱水処理すべき掘削土砂の量が少ないと、メッシュベルトに載っている土砂の厚みが小さいため、押さえベルトからの加圧作用をほとんど期待できず、掘削土砂の量が多いと、場合によっては土砂の厚みが大きすぎて、メッシュベルトと押さえベルトの間に掘削土砂が閉塞してしまい、コンベアの正常な運転を妨げる懸念があるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、掘削土砂の処理量が変動しても、処理量に応じた適切な加圧力を掘削土砂に作用させることが可能な掘削土砂の脱水装置を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は請求項1に記載したように、第1のヘッドプーリと第1のテールプーリとに掛け渡された無端状をなす透水性ベルトと、該透水性ベルトの搬送区間においてその上に載置された掘削土砂中の水分を前記透水性ベルトを介して吸引除去する吸引機構とからなる脱水機構と、
前記脱水機構の上方に配置され循環経路が前記透水性ベルトの循環経路と逆回りとなるようにかつ循環速度が前記透水性ベルトの搬送速度と等しくなるように第2のヘッドプーリと第2のテールプーリとに掛け渡された無端状をなす加圧ベルトと、該加圧ベルトの裏面側に配置された加圧ローラとからなる加圧機構とを備え、
前記加圧ベルトを、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体とで構成してなり、該加圧体は、圧縮性流体が封入された袋体を前記内周側ベルト本体の循環方向に沿って複数並設してなるものである。
【0013】
また、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は、一対の側方支圧部を前記各袋体が両端で挟み込まれるように前記内周側ベルト本体の両縁部に対向配置したものである。
【0014】
また、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は、前記内周側ベルト本体の循環方向に沿ってかつ前記各袋体の長手方向と平行になるように複数の中間支圧部を所定ピッチで前記内周側ベルト本体に立設するとともに、前記複数の中間支圧部のうち、互いに対向する中間支圧部の間に前記各袋体をそれぞれ設置したものである。
【0015】
また、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は、前記内周側ベルト本体との間に前記加圧体を挟み込む外周側ベルト本体を該加圧体の外側に配置したものである。
【0016】
また、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は、前記外周側ベルト本体の外側に吸水体を設けたものである。
【0017】
また、本発明に係る掘削土砂の脱水装置は、前記透水性ベルトの裏側に該透水性ベルトの裏面と摺動自在になるように反力部材を配置したものである。
【0018】
本発明に係る掘削土砂の脱水装置においては、加圧機構を構成する加圧ベルトで脱水機構を構成する透水性ベルトの搬送面に載置された掘削土砂を加圧することにより、吸引機構による掘削土砂の脱水作用を促進できるように構成してあるが、本発明の加圧ベルトは、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体とで構成してなり、該加圧体は、圧縮性流体が封入された袋体を内周側ベルト本体の循環方向に沿って複数並設してなる。
【0019】
このようにすると、加圧ベルトの厚さが減少する強制変形、換言すれば袋体の高さが減少する強制変形が加圧ベルトに作用したとき、袋体内に封入された圧縮性流体は、圧縮されて内部圧力が高くなり、その内部圧力に応じた反力が強制変形の方向と逆方向に発生する。
【0020】
そのため、掘削土砂の処理量が増加して透水性ベルト上の厚みが大きくなり、加圧ベルトの厚さが減少する強制変形が該加圧ベルトに作用すると、その強制変形の大きさに応じた大きさの反力が掘削土砂に作用する。
【0021】
すなわち、袋体の高さが減少すればするほど、圧縮性流体の圧縮の程度が大きくなって反力が増加するため、掘削土砂の処理量が増加するにつれて掘削土砂に作用する加圧力も増加し、かくして掘削土砂の処理量に見合った大きさの圧力が加圧されることとなる。
【0022】
また、袋体を内周側ベルト本体の循環方向に沿って複数並設してあるため、搬送位置によって掘削土砂の厚みが異なっても、該厚みに加圧力を追従させることが可能となる。すなわち、土砂供給量等の関係で、透水性ベルト上の掘削土砂の厚みが搬送方向に沿って不均一になる場合であっても、掘削土砂の厚みが大きい箇所ほど、より大きな加圧力を作用させることができる。
【0023】
透水性ベルトは、脱水の対象となる掘削土砂の載荷荷重や搬送荷重を支持しつつ該掘削土砂から吸引された水分を通過させることができる限り、その構成は任意であり、例えば、メッシュベルトを採用することができる。
【0024】
吸引機構は、透水性ベルトを介して搬送中の掘削土砂から水分を吸引除去できる限り、その構成は任意であり、例えば、吸引ポンプと、該吸引ポンプに接続された吸引管と、該吸引管に連通接続され内部に減圧空間が形成された吸引部材とで構成することができる。
【0025】
加圧体は、圧縮性流体が封入された袋体を内周側ベルト本体の循環方向に沿って複数並設して構成する限り、袋体の個々の構成や配列の仕方に関する具体的構成は任意であり、例えば、各袋体を外形が筒状になるように構成するとともに、その長さが内周側ベルト本体の幅とほぼ等しくなるようにすることが考えられる。さらに、このような筒状袋体をそれらの長手方向が内周側ベルト本体の循環方向と直交するようにかつ互いに隣り合わせとなるように並べて構成することが考えられる。
【0026】
ここで、上述した各袋体が両端で挟み込まれるように、内周側ベルト本体の両縁部に一対の側方支圧部を対向配置したならば、加圧ベルトの厚さが減少する強制変形が作用したとき、各袋体の側方への膨らみが制限されることとなり、掘削土砂に作用する加圧力が大きくなる。
【0027】
また、各袋体を互いに当接させながら連続配置するようにしてもかまわないが、前記内周側ベルト本体の循環方向に沿ってかつ前記各袋体の長手方向と平行になるように複数の中間支圧部を所定ピッチで前記内周側ベルト本体に立設するとともに、前記複数の中間支圧部のうち、互いに対向する中間支圧部の間に前記各袋体をそれぞれ設置したならば、加圧ベルトの厚さが減少する強制変形が作用したとき、内周側ベルト本体の循環方向に沿った各袋体の膨らみが制限されることとなり、掘削土砂に作用する加圧力は大きくなる。
【0028】
掘削土砂への加圧は、袋体と掘削土砂との直接的な接触によって行ってもかまわないが、内周側ベルト本体との間に加圧体を挟み込む外周側ベルト本体を該加圧体の外側に配置したならば、袋体と袋体との間に掘削土砂が入り込んで加圧作用に悪影響を与えたり、袋体を損傷させたりするのを未然に防止することが可能となる。
【0029】
ここで、外周側ベルト本体の外側に吸水体を設けたならば、加圧機構側においても、掘削土砂の脱水を行うことが可能となる。
【0030】
掘削土砂を介して透水性ベルトに作用する加圧ベルトからの圧力をどのように支持するかは任意であるが、例えば透水性ベルトの裏側に該透水性ベルトの裏面と摺動自在になるように反力部材を配置するようにしたならば、透水ベルトの動きを妨げることなく、加圧ベルトからの圧力を掘削土砂に作用させることが可能となり、加圧による脱水効率の向上をさらに高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る掘削土砂の脱水装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置を示した正面図である。同図に示すように、本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置1は、脱水機構1aと加圧機構1bとから構成してあり、脱水機構1aは、無端状の透水性ベルト2と、該透水性ベルトの搬送区間においてその上に載置された掘削土砂中の水分を透水性ベルト2を介して吸引除去する吸引機構12とを備える。
【0033】
透水性ベルト2は、第1のヘッドプーリであるヘッドプーリ4と第1のテールプーリであるテールプーリ5とに掛け渡し、架台54に据え付けられた駆動モータ31によって両プーリの間を循環するようになっている。
【0034】
吸引機構12は、吸引ポンプ10と、該吸引ポンプに接続された吸引管9と、該吸引管に連通接続され内部に減圧空間が形成された吸引部材8とで構成してある。
【0035】
透水性ベルト2は図2(a)及び図3に示すように、メッシュベルト本体3とその両縁に立設された波桟23,23とからなり、該波桟は、脱水の対象となる掘削土砂が搬送中にこぼれ落ちるのを防止するサイドガードの役目を果たしている。
【0036】
吸引部材8は、これらの図でわかるようにボックス断面状をなし、その開口縁部がメッシュベルト本体3の裏面と摺動自在になるように透水性ベルト2の搬送方向に沿って配置してあるとともに、透水性ベルト2の下方には、その裏面と摺動自在になるように反力部材21を複数本並設してある。
【0037】
反力部材21は、吸引部材8が配置されている箇所を除いた位置に透水性ベルト2の搬送軸線と平行に配置してあり、キャリアローラ22の動作に支障なきよう、その長さを、例えばキャリアローラ22,22のピッチよりも若干短く設定してある。かかる反力部材21は、吸引部材8と同様、架台54に適宜固定すればよい。反力部材21は、摩擦係数の小さい超高分子ポリエチレンで形成することができる。
【0038】
加圧機構1bは図1でわかるように、脱水機構1aの上方に配置してあり、第2のヘッドプーリであるヘッドプーリ33と第2のテールプーリであるテールプーリ34とに掛け渡された無端状をなす加圧ベルト32と、該加圧ベルトの走行角度を調整する一対の走行角度調整ローラ35,35と、該一対の走行角度調整ローラの間に配置された加圧ローラ36とを備える。
【0039】
加圧ベルト32は、循環経路が透水性ベルト2と逆回り(図1では時計回り)となるように、かつ循環速度が透水性ベルト2の搬送速度と等しくなるようにヘッドプーリ33とテールプーリ34とに掛け渡してある。
【0040】
一対の走行角度調整ローラ35,35は、透水性ベルト2の搬送区間において該透水性ベルトの搬送面から加圧ベルト32が所定距離だけ離間するように該加圧ベルトの走行角度を調整するようになっている。
【0041】
加圧ベルト32は図2に示すように、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体37と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体38とを備えており、該加圧体は、圧縮性流体としての空気が封入された袋体60を内周側ベルト本体37の循環方向に沿って複数並設してなる。
【0042】
走行角度調整ローラ35は図4に示すように、ローラ本体51をローラ取付体52に取り付け、該ローラ取付体を調整ネジ53を介して架台54に取り付けて構成してあり、かかる構成により、ローラ本体51で加圧ベルト32をその裏面から押さえて該加圧ベルトの走行角度を決定するようになっているとともに、調整ネジ53でローラ本体51の据付け高さを調整し、ひいては加圧ベルト32の押さえ位置を調整できるようになっている。
【0043】
加圧ローラ36は、コの字状フレーム55及び調整ネジ56,56を介して架台54に取り付けてあり、かかる構成により、加圧ベルト32にその裏面から圧力を載荷できるようになっているとともに、調整ネジ56,56でコの字状フレーム55の据付け高さを調整し、ひいては加圧ベルト32の圧力作用位置を調整できるようになっている。
【0044】
なお、本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置1は、掘削土砂を投入するホッパー14を備えるとともに、その下方に供給フィーダとして機能するベルトコンベヤ15を配置してあり、ホッパー14に投入された掘削土砂をベルトコンベヤ15によって脱水機構1aを構成する透水性ベルト2の搬送開始位置に供給できるようになっている。
【0045】
本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置1を用いて掘削土砂を脱水するには、まず、脱水の対象となる掘削土砂をホッパー14に投入する。掘削土砂は、土木建築工事において発生する含水比の高いすべての掘削土砂が対象となり、例えば泥土圧シールド工事で発生する掘削土砂が対象となる。かかる掘削土砂は、例えば上流側に設置されたベルトコンベヤから搬送されてきたものをホッパー14に投入するようにすればよい。
【0046】
次に、ホッパー14に投入された掘削土砂をベルトコンベヤ15で移送し、搬送開始位置で透水性ベルト2に載せ替える。
【0047】
次に、吸引ポンプ10を駆動して吸引部材8に形成された減圧空間の空気を引き抜く。
【0048】
このようにすると、掘削土砂中の水分は、土粒子から分離して外側に排出される。そして、かかる水分は、透水性ベルト2を通過し、さらに吸引管9内を流れて排水される。
【0049】
一方、加圧機構1bを構成する加圧ベルト32は、透水性ベルト2と同じ搬送速度で循環するとともに、搬送区間における透水性ベルト2の表面から所定距離だけ離間するように、一対の走行角度調整ローラ35,35によって走行角度を調整してある。
【0050】
そのため、図4に示すように掘削土砂57は、加圧ベルト32と透水性ベルト2との間に挟み込まれながら搬送されるとともに、搬送中、一対の走行角度調整ローラ35,35の間に配置された加圧ローラ36で加圧される。そして、掘削土砂57は、加圧機構1bによる加圧作用によって脱水が促進され、水分が除去され含水比が低下した掘削土砂は、搬送区間の終点において、図1で言えばその左側に搬出される。
【0051】
ここで、加圧ベルト32は、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体37と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体38とで構成してなり、該加圧体は、空気が封入された袋体60を内周側ベルト本体37の循環方向に沿って複数並設してなる。
【0052】
このようにすると、加圧ベルト32の厚さが減少する強制変形、換言すれば袋体60の高さが減少する強制変形が加圧ベルト32に作用したとき、袋体60内に封入された空気は、圧縮されて内部圧力が高くなり、その内部圧力に応じた反力が強制変形の方向と逆方向に発生する。
【0053】
そのため、掘削土砂の処理量が増加して透水性ベルト2上の厚みが大きくなり、加圧ベルト32の厚さが減少する強制変形が該加圧ベルトに作用すると、その強制変形の大きさに応じた大きさの反力が掘削土砂に作用する。
【0054】
図5は、掘削土砂57による強制変形によって加圧ベルト32に反力が生じる様子を示した図であり、同図(a)は、掘削土砂57の処理量が比較的少ないために、加圧ベルト32の反力が小さくなる場合を示し、同図(b)は、掘削土砂57の処理量が比較的多いために、加圧ベルト32の反力が大きくなる場合を示したものである。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置1によれば、加圧ベルト32を内周側ベルト本体37と該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体38とで構成するとともに、該加圧体を、内周側ベルト本体37の循環方向に沿って該内周側ベルト本体の外側に空気が封入された袋体60を複数並設することで構成したので、加圧ベルト32の厚さが減少すればするほど、袋体60内で生じる空気圧縮の程度が大きくなって反力が増加し、かくして、掘削土砂57の処理量が増加するにつれて、該掘削土砂に作用する加圧力を増加させることが可能となる。
【0056】
そのため、シールド工事等で掘削土砂57の処理量が日々変動し、あるいは時々刻々変動したとしても、掘削土砂57の処理量が少ない場合には(図5(a))、比較的小さな圧力が加圧ベルト32から掘削土砂57に作用し、掘削土砂57の処理量が多い場合には(図5(b))、比較的大きな圧力が加圧ベルト32から掘削土砂57に作用することとなり、掘削土砂の処理量にかかわらず、均一な脱水が可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る掘削土砂の脱水装置1によれば、袋体60を内周側ベルト本体37の循環方向に沿って複数並設してあるため、搬送位置によって掘削土砂57の厚みが異なっても、該厚みに加圧力を追従させることが可能となり、かくして、土砂供給量等の関係で、透水性ベルト2上の掘削土砂の厚みが搬送方向に沿って不均一になる場合であっても、掘削土砂の厚みが大きい箇所ほど、より大きな加圧力を作用させることが可能となる。
【0058】
本実施形態では特に言及しなかったが、図6に示すように、各袋体60がそれらの両端で挟み込まれるように、内周側ベルト本体37の両縁部に板状をなす一対の側方支圧部71,71を対向配置してなる加圧ベルト32aとしてもよい。
【0059】
かかる構成によれば、加圧ベルト32aの厚さが減少する強制変形が作用したとき、各袋体60の側方への膨らみが制限されることとなり、かくして掘削土砂57に作用する加圧力を大きくすることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、各袋体60を互いに当接させながら連続配置するようにしたが、これに代えて図7に示す変形例としてもよい。
【0061】
同図に示す加圧ベルト32bは、図6で説明した一対の側方支圧部71,71に加えて、内周側ベルト本体37の循環方向に沿ってかつ各袋体60の長手方向と平行になるように、板状をなす複数の中間支圧部72を内周側ベルト本体37に立設するとともに、複数の中間支圧部72のうち、互いに対向する中間支圧部72,72の間に各袋体60をそれぞれ設置してある。
【0062】
かかる構成によれば、加圧ベルト32bの厚さが減少する強制変形が作用したとき、内周側ベルト本体37の循環方向に沿った各袋体60の膨らみが制限されることとなり、掘削土砂57に作用する加圧力は、図6に示す変形例よりもさらに大きくなる。
【0063】
なお、中間支圧部72は、内周側ベルト本体37の循環方向に沿った各袋体60の膨らみを抑えることができるよう、その両端を側方支圧部71,71にそれぞれ接合することで、循環方向の曲げ剛性を高めておくのが望ましい。
【0064】
一方、中間支圧部72は、側方支圧部71,71と必ずしも併用する必要はなく、該側方支圧部とは独立して設けることが可能であり、側方支圧部71,71を省略し中間支圧部72のみを設けるようにしてもかまわない。
【0065】
また、本実施形態では、袋体60と掘削土砂57との直接的な接触によって掘削土砂への加圧を行うようにしたが、これに代えて図8に示す変形例としてもよい。
【0066】
同図に示す加圧ベルト32cは、図6,7でそれぞれ説明した一対の側方支圧部71,71及び中間支圧部72に加えて、内周側ベルト本体37との間に加圧体38を挟み込む外周側ベルト本体73を該加圧体の外側に配置してなる。
【0067】
かかる構成によれば、袋体60,60の間に掘削土砂57が入り込んで加圧作用に悪影響を与えたり、袋体60を損傷させたりするのを未然に防止することが可能となる。
【0068】
ここで、図9に示すように外周側ベルト本体73の外側に吸水体74を設けるようにしてもよい。かかる構成によれば、脱水機構1aのみならず、加圧機構1b側においても、掘削土砂の脱水を行うことが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、本発明に係る掘削土砂の脱水装置をベルトコンベヤとして用いてもかまわない。この場合、要求される搬送距離に応じて透水性ベルト2及び加圧ベルト32の長さを適宜調整すればよい。
【0070】
これに関連して、本発明に係る掘削土砂の脱水装置の使用の形態としては、ベルトコンベヤとして、他のベルトコンベヤとともに連続ベルコンを構成する、掘削土砂の脱水装置として、ベルトコンベヤ間に適宜配置する、据置型の掘削土砂の脱水装置としてプラント内に設置するといった使用形態が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係る脱水装置1の全体図。
【図2】詳細図であり、(a)は搬送方向(循環方向)に直交する透水性ベルト2及び加圧ベルト32の断面図、(b)はA−A線に沿う断面図。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図。
【図4】走行角度調整ローラ35及び加圧ローラ36を示した詳細図。
【図5】本実施形態に係る脱水装置1の作用を示した図。
【図6】変形例に係る加圧ベルト32aを示した詳細断面図。
【図7】変形例に係る加圧体ベルト32bを示した詳細断面図。
【図8】変形例に係る加圧体ベルト32cを示した詳細断面図。
【図9】吸水体74を示した詳細断面図。
【符号の説明】
【0072】
1 掘削土砂の脱水装置
1a 脱水機構
1b 加圧機構
2 透水性ベルト
4 ヘッドプーリ(第1のヘッドプーリ)
5 テールプーリ(第1のテールプーリ)
8 吸引部材
9 吸引管
10 吸引ポンプ
12 吸引機構
32,32a,32b,32c 加圧ベルト
33 ヘッドプーリ(第2のヘッドプーリ)
34 テールプーリ(第2のテールプーリ)
35 走行角度調整ローラ
36 加圧ローラ
37 内周側ベルト本体
38 加圧体
52 反力部材
60 袋体
71 側方支圧部
72 中間支圧部
73 外周側ベルト本体
74 吸水体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヘッドプーリと第1のテールプーリとに掛け渡された無端状をなす透水性ベルトと、該透水性ベルトの搬送区間においてその上に載置された掘削土砂中の水分を前記透水性ベルトを介して吸引除去する吸引機構とからなる脱水機構と、
前記脱水機構の上方に配置され循環経路が前記透水性ベルトの循環経路と逆回りとなるようにかつ循環速度が前記透水性ベルトの搬送速度と等しくなるように第2のヘッドプーリと第2のテールプーリとに掛け渡された無端状をなす加圧ベルトと、該加圧ベルトの裏面側に配置された加圧ローラとからなる加圧機構とを備え、
前記加圧ベルトを、内周側に配置される無端状の内周側ベルト本体と、該内周側ベルト本体の外側に配置された加圧体とで構成してなり、該加圧体は、圧縮性流体が封入された袋体を前記内周側ベルト本体の循環方向に沿って複数並設してなることを特徴とする掘削土砂の脱水装置。
【請求項2】
一対の側方支圧部を前記各袋体が両端で挟み込まれるように前記内周側ベルト本体の両縁部に対向配置した請求項1記載の掘削土砂の脱水装置。
【請求項3】
前記内周側ベルト本体の循環方向に沿ってかつ前記各袋体の長手方向と平行になるように複数の中間支圧部を所定ピッチで前記内周側ベルト本体に立設するとともに、前記複数の中間支圧部のうち、互いに対向する中間支圧部の間に前記各袋体をそれぞれ設置した請求項1記載の掘削土砂の脱水装置。
【請求項4】
前記内周側ベルト本体との間に前記加圧体を挟み込む外周側ベルト本体を該加圧体の外側に配置した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の掘削土砂の脱水装置。
【請求項5】
前記外周側ベルト本体の外側に吸水体を設けた請求項4記載の掘削土砂の脱水装置。
【請求項6】
前記透水性ベルトの裏側に該透水性ベルトの裏面と摺動自在になるように反力部材を配置した請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の掘削土砂の脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−6340(P2009−6340A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168573(P2007−168573)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】