説明

掘削機

【課題】カッタに動力を伝達するベベルギヤへの負担を軽減し、動力の伝達性能に優れていることで、維持管理の手間を省略し、かつ、効率的な地盤の切削を可能とした、掘削機を提案する。
【解決手段】所定の間隔を有して配置されてそれぞれ縦軸回りに回転する一対の動力軸2,2と、動力軸2の回転より縦軸回りに回転する原動ベベルギヤ3と、一対の動力軸2,2から伝達された動力により回転することで地山の切削を行うカッタ4,4とを備えていて、このカッタ4は、先端が切羽方向に突出した状態で互いに近接し、基端が動力軸2に近接するように動力軸2に対して斜めに設けられて、軸芯回りに回転するカッタ軸41と、原動ベベルギヤ3と噛み合うようにカッタ軸41の基端側に形成されて、原動ベベルギヤ3から伝達された動力によりカッタ軸41回りに回転する従動ベベルギヤ42と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の切削および地盤改良を行う、掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
地中連続壁の構築について、水平軸回りに回転し、互いに対向するように配置された少なくとも一対のドラムカッタを備えた掘削機により地盤を切削および攪拌を行う場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、図5(a)に示すように、互いに対向するように配置されており、水平に配置された同一のカッタシャフト101に固定され、水平軸回りに回転するドラムカッタ102,102と、垂直軸回りに回転するメインシャフト103と、メインシャフト103の垂直軸回りの回転を水平軸回りの回転に変換して各ドラムカッタ102,102(カッタシャフト101)に伝達する動力伝達機構(ギヤケース)104と、メインシャフト103に動力を付与する駆動モータ105と、を備えた掘削機100が開示されている。
【0004】
掘削機100は、一対のドラムカッタ102,102の間に掘り残し部分が生じることがないように、ドラムカッタ102同士の間であって、メインシャフト103の直下にリングカッタ120が配置されている。
【0005】
また、他の従来の掘削機として、図5(b)に示す掘削機200のように、各ドラムカッタ202のドラムカッタ側の切削刃220,220,…が揺動式に構成されていることで、掘り残し部分が生じることがないように構成されたものがある。
【0006】
さらに、その他の従来の掘削機として、図5(c)に示す掘削機300のように、一対のドラムカッタ302,302に対して、個々に駆動モータ305,305を備えるものもある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−269913号公報([0008]〜[0024]、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記従来の掘削機100,200は、一対のドラムカッタ102,102(202,202)に対して一台配置された駆動モータ105(205)の動力により切削を行うため、駆動モータ105(205)に対する負担が大きい。また、一対のドラムカッタ102,102(202,202)に動力を伝達するメインシャフト103(203)は、ドラムカッタ102,102(202,202)の間に配設されるため、シャフト径が細く、小さいトルクしか受けることができない。そのため、ギヤケース104(204)が大きくなり、掘削機100(200)が大規模となる場合があった。
【0009】
また、前記従来の掘削機100,200は、いずれも一つの原動ベベルギヤ130,230から伝達される動力が二つに分割されるため、掘削の効率が低下するという問題点を有していた。
【0010】
一方、掘削機300は、各ドラムカッタ302,302に対して個々に駆動モータ305,305が配設されているため、駆動モータ305,305に対する負担や、シャフト径に対する問題点は解決されるが、ドラムカッタ302,302に内部に駆動モータ305,305を配設することにより掘削機300の小型化に限界があることや、ドラムカッタ302,302同士の間に掘り残し部分が生じることなどの問題点を有していた。
【0011】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、カッタに動力を伝達するベベルギヤへの負担を軽減し、動力の伝達性能に優れていることで、維持管理の手間を省略し、かつ、効率的な地盤の切削を可能とした、掘削機を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明の掘削機は、所定の間隔を有して配置されてそれぞれ縦軸回りに回転する複数の動力軸と、前記動力軸に固定されて、該動力軸の回転より縦軸回りに回転する原動ベベルギヤと、前記複数の動力軸に対して個々に配置されて、該動力軸から伝達された動力により回転するカッタと、を備える掘削機であって、前記カッタが、前記動力軸に対して斜めに設けられて、軸芯回りに回転するカッタ軸と、前記原動ベベルギヤと噛み合うように前記カッタ軸の基端側に形成されて、前記原動ベベルギヤから伝達された動力によりカッタ軸回りに回転する従動ベベルギヤと、前記カッタ軸に固定されて、前記カッタ軸の回転により該カッタ軸回りに回転するカッタ本体部と、を備えており、前記カッタ軸の先端が、互いに近接し、基端が前記動力軸に近接するように配置されていることを特徴としている。
【0013】
かかる掘削機は、各カッタが、それぞれ個別の動力軸により動力が伝達されるため、個々のカッタの掘削力が向上し、効率的な切削が可能となる。また、各カッタに対して各々個別に設けられた動力軸により動力が伝達されるため、原動ベベルギヤへの負担が小さい。したがって、原動ベベルギヤを長期的に使用することが可能となり、掘削機の維持管理に要する手間や費用を省略することが可能となる。また、動力軸は、カッタに挟まれることなく配置されているため、シャフト径を太くすることができ、比較的大きなトルクを受け持つことを可能としている。
【0014】
前記掘削機において、前記カッタ本体部同士の一部が互いにラップするように配置されていれば、掘り残し部分が生じることなく地山を切削することができるとともに、カッタ本体部への掘削土の粘着を防止し、攪拌効率が向上する。
【0015】
前記掘削機において、一対のカッタ軸が、略V字状に配置されていてもよい。さらに、この一対のカッタが、複数組並設されていてもよい。かかる掘削機によれば、掘削幅を広げることができるため、連続地中壁の施工などにおいて、早期施工が可能となる。
また、一対の動力軸に対応して設けられた一対のカッタが、カッタ軸の先端が互いに近接し、切羽側に突出するように略V字状に配置されていれば、掘り残し部分を縮小化することができる。さらに、カッタにより切削させる掘削孔の切羽が、略V字状に形成されれば、掘削時に掘削土砂を中央に集めやすく、排土性能が向上する。
【0016】
さらに、前記掘削機の前記動力軸が3軸であって、前記カッタ軸が、略三角錐状に配置されていてもよい。かかる掘削機によれば、掘削性能が向上し、好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の掘削機によれば、カッタに動力を伝達するベベルギヤへの負担が軽減されて、維持管理の手間や費用を省略し、かつ、動力の伝達性能に優れているため、効率的な地盤の切削(攪拌)を行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
ここで、図1は、本実施形態の掘削機の使用状況を示す横断面図である。図2は、本実施形態の掘削機を示す図であって、(a)は横断面図、(b)は側面図、(c)は下方から上方向に臨む平面図である。
【0019】
掘削機Mは、図1に示すように、揚重機であるクレーンCにより吊下げられた状態で、地盤Gの切削を行う機械であって、ワイヤWにより吊り下げられている。
【0020】
掘削機Mは、図2(a)に示すように、主に掘削機本体1と、所定の間隔を有して配置されてそれぞれ縦軸回りに回転する一対の動力軸2,2と、動力軸2にそれぞれ固定されて、動力軸2の回転より縦軸回りに回転する原動ベベルギヤ3,3と、一対の動力軸2,2に対して個々に配置されて、それぞれ動力軸2から伝達された動力により回転することで地山の切削を行うカッタ4,4と、を備えて構成されている。本実施形態に係る掘削機Mは、図2(a)および(b)に示すように、一対のカッタ4,4を前後に二組配置するものとするが、掘削機Mに配置されるカッタ4,4の数は、例えば一組とするなど、限定されるものではなく、施工規模や現場状況等に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
掘削機本体1は、図2(a)および(b)に示すように、各動力軸2に回転力を付与する複数(本実施形態では4台)の駆動モータ10,10,…を備えており、駆動モータ10は、鋼材を加工して組み合わせることにより形成された外殻12の内部空間に配設されることにより保護されている。
【0022】
駆動モータ10,10は、図2(a)および(b)に示すように、掘削機本体1の内部において、それぞれ所定の間隔を有して配置された一対の動力軸2,2に対応して、掘削機本体1の横断方向の左右両端に配置される。本実施形態では、一対のカッタ4,4を二組備えているので、合計4台の駆動モータ10,10,…を配置するものとする。本実施形態では、各駆動モータ10,10,…を、それぞれ動力軸2,2,…の直上に配置している。
【0023】
この駆動モータ10は、図2(a)に示すように、下方向に突出する出力軸11を備えている。この出力軸11には、動力軸2の上端が一体に接合されている。そして、駆動モータ10を駆動させることにより、出力軸11が回転し、出力軸11の回転に伴い動力軸2が動力軸2の軸回り(縦軸回り)に回転する。
なお、駆動モータ10の形式や出力等は、限定されるものではなく、掘削機Mの規模、地盤Gの強度、掘削孔Hの形状等に応じて、適宜公知の駆動モータから選定して、使用すればよい。また、駆動モータ10の設置台数が限定されるものではなく、カッタ4(動力軸2)の数量に応じて適宜設定されることはいうまでもない。また、駆動モータ10は、駆動モータ10の動力が動力軸2に伝達することが可能に構成されていれば、必ずしも動力軸2の直上に配置される必要はないことはいうまでもない。
【0024】
外殻12は、図2(a)および(b)に示すように、例えば、L形鋼材や溝型鋼等を組み合わせることにより直方体の上面に四角錐を組み合わせたような形状であって、断面視が略五角形の枠部材を形成してなる。そして、この枠部材の外周囲は、図示しない鋼板により覆われている。なお、外殻12の構成や形状等は限定されるものではなく、適宜設定すればよいことはいうまでもない。また、外殻12の側面から、掘削孔Hの壁面に当接し、掘削機Mのブレを抑えるための複数のガイド部材を突出させてもよい。このガイド部材がジャッキ等により伸縮可能に構成されていれば、ガイド部材を介して正確な位置に掘削機Mを誘導することを可能とし、また、掘削機Mの回収時等に、掘削孔Hの孔壁へのガイド部材の接触を防止することが可能となる。
【0025】
動力軸2は、図2(a)および(b)に示すように、駆動モータ10,10,…に対応して、掘削機本体1の横断方向の左右両端、掘削機本体1の前後に合計4本配置されている。
この動力軸2は、棒状の部材であって、掘削機本体1の下端(駆動モータ10の直下)から、下方向に突出するように配置されている。
【0026】
動力軸2の上端は、図2(a)に示すように、駆動モータ10の下端から下方向に突出する出力軸11に、一体に固定されている。一方、動力軸2の下端には、原動ベベルギヤ3が一体に固定されている。
そして、動力軸2は、駆動モータ10の駆動に伴う出力軸11の回転により、縦軸回りに回転する。さらに動力軸2の回転に伴い、動力軸2に固定された原動ベベルギヤ3が動力軸2と同じ方向に回転する。
【0027】
原動ベベルギヤ3は、図2(a)に示すように、動力軸2の下端の外周囲に形成されている。原動ベベルギヤ3は、動力軸2の回転力をカッタ4へと伝達する部材であって、それぞれカッタ軸41の従動ベベルギヤ42と噛み合うように構成されている。つまり動力軸2が回転することにより、原動ベベルギヤ3が回転し、従動ベベルギヤ42へと動力を伝達する。
【0028】
カッタ4は、図2(a)〜(c)に示すように、円筒状に形成されたカッタ本体部40,40,…と、カッタ本体部40の内部中央にそれぞれ形成されたカッタ軸41,41,…と、カッタ軸41の外周囲に一体に形成された従動ベベルギヤ42と、各カッタ本体部40の外周囲の地盤との当接面に複数個取り付けられて、地山の切削を行うカッタビット(切削刃)43,43,…と、から構成されている。
【0029】
本実施形態では、一対のカッタ4,4を2列配置することで、4つのカッタ4,4,…が配置されている。そして、カッタ4,4,…は、横断方向において、互いの先端のカッタビット43a,43a,…がラップしており(図2(a)および(c)の符号L1参照)、縦断方向において、互いのカッタビット43,43,…がラップするように構成されている(図2(b)および(c)の符号L2参照)。
【0030】
掘削機4の横断方向に対して左右に設けられた一対のカッタ軸41,41は、図2(a)に示すように、先端が切羽方向に突出した状態で互いに近接し、基端がそれぞれ掘削機の左または右に設けられた動力軸2の下端に近接するように動力軸2(縦軸)に対して斜めに設けられている。そして、一対のカッタ軸41,41は、図2(c)に示すように、その軸心が平面視で直線状に配置されている。
【0031】
一対のカッタ軸41,41は、図2(a)に示すように、それぞれ動力軸2側が高くなるように動力軸2に対して傾斜していることで、略V字状に配設されている。
【0032】
カッタ軸41の基端には、原動ベベルギヤ3と噛み合うように、外周囲に従動ベベルギヤ42が一体に形成されている。この構成により、原動ベベルギヤ3から伝達された動力により従動ベベルギヤ42がカッタ軸41回りに回転し、カッタ軸41が軸回りに回転する。
【0033】
カッタ本体部40は、図2(a)に示すように、断面視でコの字を示す、円筒形状の部材からなる、いわゆるドラムカッタである。そして、カッタ本体部40は、コの字の開口側が動力軸2に向くように配置されている。
カッタ本体部40は、その先端の内側に、カッタ軸41の先端が固定されており、カッタ軸41の軸回りの回転に伴って、カッタ軸41回りに回転する。また、一対のカッタ本体部40,40は、図2(a)に示すように、カッタ軸41,41に対応して、略V字を呈するように、動力軸2に対して傾斜している。
【0034】
カッタ本体部40の回転方向に沿った周面には、図2(a)に示すように、複数のカッタビット43,43,…が配置されている。また、カッタ本体部40の先端面(対向する他のカッタ本体部40側の端面)には、背の低いカッタビット44,44,…が複数個配置されている。
図2(a)に示すように、カッタ本体部40の基端部側に配置されたカッタビット43a,43a,…は、それぞれカッタ本体部40の端面から突出するようにカッタ軸41に対して斜めに配置されており、カッタ4による切削孔H(図1参照)が、掘削機Mの幅と同等または掘削機Mの幅よりも大きくなるように構成されている。また、各カッタ本体部40の先端部側に配置されたカッタビット43a,43a,…は、他方のカッタ本体部40のカッタビット43a,43a,…とラップするようにカッタ軸41に対して斜めに配置されており、カッタ本体部40同士の間に未切削部分が形成されることがないように構成されている。
【0035】
なお、カッタビット43,43,…としては、公知のカッタビットを使用すればよく、その形状や構成等は限定されるものではない。また、カッタ本体部40に設置されるカッタビット43の数は適宜設定すればよく、限定されるものではない。
また、動力軸2、原動ベベルギヤ3、従動ベベルギヤ42等は、ギヤボックス30内に配置されており、土砂等が浸入して絡むことにより破損が生じることがないように構成されている。
【0036】
本実施形態に係る掘削機Mによる地盤の切削(攪拌)は、図1に示すように、クレーンCにより、ワイヤWを介して吊持された状態で行う。
【0037】
掘削機Mが、所定の位置に配置されたら、駆動モータ10を駆動させることにより、地盤Gの切削を行う。駆動モータ10が作動すると、出力軸11が回転するため、出力軸11に固定された動力軸2が縦軸回りに回転する。
【0038】
動力軸2は、駆動モータ10から伝達された動力により、動力軸2の軸回りに回転する。そして、動力軸2が回転することにより、動力軸2に固定された原動ベベルギヤ3が動力軸2の軸回りに回転する。
さらに、原動ベベルギヤ3が回転すると、動力が従動ベベルギヤ42に伝達されて、カッタ軸41がカッタ軸41の軸回りに回転する。つまり、原動ベベルギヤ3と従動ベベルギヤ42とにより、縦軸回り(動力軸回り)の回転方向を、カッタ軸41回りへと変更する。このカッタ軸41の回転により、カッタ本体部40が回転して、地盤Gの切削を行う。
【0039】
以上、本実施形態に係る掘削機Mによれば、駆動モータ10や動力軸2を掘削本体1の外側に配置しているため、整備等がしやすく、維持管理が容易である。
【0040】
各カッタ軸41に対して、各々動力軸2(駆動モータ10)から個々に動力を伝達するため、個々のカッタ本体部40の掘削力が向上し、効率的な切削が可能となる。
【0041】
掘削機Mの一対のカッタ軸41,41が、それぞれ動力軸2側の端部(基端)が他方の端部(先端)よりも高くなるように動力軸2に対して傾斜しており、これに固定された筒状のカッタ本体部(ドラムカッタ)40,40も斜めに配置されているため、カッタ4による切削幅が広く、効率的な切削が可能である。
【0042】
カッタ4は、隣接する他のカッタ4とカッタビット43,43,…が互いにラップ(L1,L2)するように配置されているため、掘削機Mによる掘削孔(切削溝)Hに堀残し部分が生じることなく切削することが可能となる。故に、掘り残し部分の存在により掘削機Mの下降が妨げられることがなく、より効率的な切削が可能となる。また、カッタビット43a,43a,…をラップさせることにより、掘削土砂の粘着力が低減されるため、掘削土砂の撹拌効率が向上する。
【0043】
カッタ4は、カッタ本体部40の端部のカッタビット43aがカッタ軸41に対して傾斜していることで、掘削機Mよりも掘削孔Hを広く切削することが可能となり、掘削機本体1の側面が掘削孔(切削溝)Hの壁面に接することが無く、カッタビット43のみが地山に接触する。そのため、摩擦抵抗等によりカッタ4の回転や下降が妨げられることがないため、さらに効率的な切削が可能となる。
【0044】
掘削機本体1の内部の動力軸2の直上に、それぞれ駆動モータ10を備えられているため、地上に別途駆動装置を配置するための作業スペースを確保する必要がない。また、動力を伝達する動力軸2の小規模化も可能となるため、掘削装置全体の小型化が可能となる。これにより、比較的狭隘な箇所における作業が可能となり、好適である。
【0045】
カッタ軸41の上方に動力軸2を配置することで、駆動モータ10および動力軸2の周囲の空間に余裕ができ、出力軸11および動力軸2の直径を太くすることができる。これにより、大トルクをカッタ4に伝達することが可能となり、ギヤ等を介して減速する必要がない。そのため、掘削機Mの小型化が可能となる。さらに、掘削機Mの小型化に伴い、カッタビット43(切削刃)を長くすることが可能となるため、掘削土砂が攪拌されて粘着しにくくなり、切削効率が向上することが可能となる。
【0046】
本発明の掘削機Mによれば、地中連続壁の掘削や地盤改良等を高精度、かつ、容易に行うことが可能となる。
【0047】
前記実施形態では、動力軸を4本配置する構成としたが、動力軸の本数(カッタの数)は限定されるものではない。例えば、図3(a)および(b)に示す掘削機M’ように、3本の動力軸2,2,2を有した構成としてもよい。掘削機M’は、3本のカッタ軸41,41,41が、互いの先端が近接し、基端が動力軸2,2,2に近接するように配置されているため、略三角錐状に配置されている。
この構成によれば、3つのカッタ4,4,4により、カッタ4同士の間に礫を集め、これらの礫のクラッシング効果が向上し、より優れた掘削性能を得ることが可能となる。
なお、この構成において、カッタ4同士をラップさせてもよいことはいうまでもない。
【0048】
また、図4(a)および(b)に示すように、カッタ本体部40の形状として、先端が細くなるように構成してもよい。この構成によれば、3軸の掘削機M’と同様に、礫のクラッシングについて、機能を向上させることが可能となる。
【0049】
さらに、図4(c)および(d)に示すように、カッタ本体部40の形状として、先端が細くなるようにして、掘削孔Hの底部中央が平らになるように構成してもよい。この構成によれば、掘削孔Hの底部(切羽)が、側壁から中央に向かって傾斜した後、中央が平らとなるように形成されるため、掘削土砂が中央に集まりやすくなり、掘削土砂の回収は、掘削孔Hの中央部から行うことにより、排土性能が向上する。
【0050】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、本発明に係る掘削機Mを、リバース工法に使用される場合には、掘削機本体に排土ポンプを配置してもよい。この場合において、排土ポンプの構成や排土管の配管等は、限定されるものではなく、適宜設定すればよいことはいうまでもない。
【0051】
また、前記実施形態では、揚重機として、クレーンを使用するものとしたが、掘削機を吊り下げる機械が限定されないことはいうまでもない。
【0052】
また、前記実施形態では、カッタを前後に二組配置する構成としたが、掘削機に配置されるカッタの数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0053】
また、前記実施形態では、カッタを互いにラップするように配置したが、必ずしもカッタはラップしていなくてもよい。例えば、掘り残し部分が生じないように、隣接するカッタ同士を互いに隙間なく配置してもよい。このように、各カッタ同士が、ラップしないように配置されていれば、カッタ同士の回転を同じにする必要がないため、回転を制御するための部材を省略することが可能となり、経済的であるとともに、装置の簡略化が可能となる。
【0054】
なお、カッタの配置は、前記に示したものに限定されないことはいうまでもなく、適宜設定すればよい。つまり、動力軸が3本以上配置された場合は、複数のカッタ軸の先端が中央において近接するように配置してもよいし(図3参照)、カッタ軸を2本ずつ略V字を呈するように配置したものを複数列並設してもよい(図2または図4参照)。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る掘削機の使用状況を示す横断面図である。
【図2】本発明に係る掘削機を示す図であって、(a)は横断面図、(b)は側面図、(c)は下方から臨む平面図である。
【図3】本発明に係る掘削機の変形例を示す図であって、(a)は横断図、(b)は下方から臨む平面図である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る掘削機のその他の変形例を示す横断図と下方から臨む平面図であって、(c)および(d)は、それぞれ本発明に係る掘削機のさらにその他の変形例を示す横断図と下方から臨む平面図で
【図5】(a)、(b)、(c)はいずれも従来の掘削機を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 掘削機本体
10 駆動モータ
11 出力軸
2 動力軸
3 原動ベベルギヤ
4 カッタ
40 カッタ本体部
41 カッタ軸
42 従動ベベルギヤ
43 カッタビット
H 掘削孔
M,M’ 掘削機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を有して配置されてそれぞれ縦軸回りに回転する複数の動力軸と、
前記動力軸に固定されて、該動力軸の回転より縦軸回りに回転する原動ベベルギヤと、
前記複数の動力軸に対して個々に配置されて、該動力軸から伝達された動力により回転するカッタと、を備える掘削機であって、
前記カッタが、前記動力軸に対して斜めに設けられて、軸芯回りに回転するカッタ軸と、前記原動ベベルギヤと噛み合うように前記カッタ軸の基端側に形成されて、前記原動ベベルギヤから伝達された動力によりカッタ軸回りに回転する従動ベベルギヤと、前記カッタ軸に固定されて、前記カッタ軸の回転により該カッタ軸回りに回転するカッタ本体部と、を備えており、
前記カッタ軸の先端が、互いに近接し、基端が前記動力軸に近接するように配置されていることを特徴とする、掘削機。
【請求項2】
前記カッタ同士の一部が互いにラップするように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の掘削機。
【請求項3】
一対の前記カッタ軸が、略V字状に配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の掘削機。
【請求項4】
一対の前記カッタが、複数組並設されていることを特徴とする、請求項3に記載の掘削機。
【請求項5】
前記動力軸が3軸であって、前記カッタ軸が、略三角錐状に配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−262819(P2007−262819A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91861(P2006−91861)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】