説明

掘削装置

【課題】掘削中に中空ビット軸より連通管路に流入した玉石を細かく破砕して、ポンプ内部で詰まりや部品の破損を回避することができる掘削装置を提供する。
【解決手段】回転駆動されるドリルパイプ1の先端部に本体ケース2を固定し、本体ケース2の先端部にビット3の中空ビット軸4を固定し、本体ケース2内においてドリルパイプ1と中空ビット軸4とを連通管路5によって連通連結すると共に、連通管路5の途中に水中ポンプ6を設け、掘削箇所に水を供給してビット3で掘削しつつ、掘削土砂を水と一緒に中空ビット軸4より連通管路5及びドリルパイプ1を通じて地上に排出するようにした掘削装置において、本体ケース2内の連通管路5における水中ポンプ6とビット3との間に、中空ビット軸4より連通管路5に流入してくる玉石を細かく破砕するクラッシャー7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の基礎工事に使用される掘削装置に関するもので、地盤の掘削箇所に水を供給しながら掘削し、その掘削した土砂をドリルパイプ内に水とともに吸い込んで地上に排出するようにした掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の掘削装置として、特許公報等の公知文献を具的的に挙げることはできないが、図5に従来使用されている掘削装置を示す。この掘削装置は、回転駆動手段20によって回転駆動されるドリルパイプ1の先端部に円筒状の本体ケース2を固定し、本体ケース2の先端部にビット3の中空ビット軸4を固定し、本体ケース2内においてドリルパイプ1と中空ビット軸4とを連通管路5によって連通連結すると共に、連通管路5の途中に水中ポンプ6を設けてなるもので、掘削箇所に水を供給しつつ、回転駆動手段20によるドリルパイプ1の回転により本体ケース2を介しビット3を回転させて地盤を掘削し、その掘削土砂を水と一緒に中空ビット軸4から連通管路5及びドリルパイプ1を通じて地上に排出しながら掘孔を行なうようになっている。
【0003】
回転駆動手段20は、図5に示すように、地上に設置した基枠21上に設けてあって、ドリルパイプ1を回転駆動するようになっている。図5において、22はドリルパイプ1の上端側に設けられたスイベル機構で、クローラクレーン等で鉛直姿勢に保持されている。このスイベル機構22の上端部からは排泥用ホース23が延出されている。このスイベル機構22は、基枠21上に設置された油圧ユニット24から延出した固定側油圧ホース25a,25bと、本体ケース2内の水中ポンプ6まで延びてドリルパイプ1と共に回転する回転側油圧ホース26a,26bとを接続するものでもある。
【0004】
また図5において、27はスイベル機構22から本体ケース2内の水中ポンプ6まで延びる回転側油圧ホース26a,26bの巻き取り及び繰り出しを行なうリールである。28は排泥用ホース23から排出される土砂及び水を溜めるスラッシュコンテナであり、29はスラッシュコンテナ28内の上澄み水を吸引して掘孔側に戻すためのポンプであり、30は掘孔の上端部側に嵌入されたスタンドパイプである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の掘削装置では、掘削中に掘削土及び水と一緒に中空ビット軸4より連通管路5に流入した玉石が、水中ポンプ6内に吸い込まれてポンプ6内部で詰まりを生じたり、その玉石によって部品を破損する、といった問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑み、掘削中に中空ビット軸より連通管路に流入した玉石を細かく破砕して、ポンプ内部で詰まりの発生や部品の破損等を回避できるようにした掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、回転駆動されるドリルパイプ1の先端部に本体ケース2を固定し、本体ケース2の先端部にビット3の中空ビット軸4を固定し、本体ケース2内においてドリルパイプ1と中空ビット軸4とを連通管路5によって連通連結すると共に、連通管路5の途中に水中ポンプ6を設け、掘削箇所に水を供給してビット3で掘削しつつ、掘削土砂を水と一緒に中空ビット軸4より連通管路5及びドリルパイプ1を通じて地上に排出するようにした掘削装置において、本体ケース2内の連通管路5における水中ポンプ6とビット3との間に、中空ビット軸4より連通管路5に流入してくる玉石Gを細かく破砕するクラッシャー7を設けてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の掘削装置において、クラッシャー7は、ボディ8内部の密閉状カッター収容室10に設けた回転軸14に、夫々周方向に複数の刃部9aを形成した複数のロータリーカッター9を軸方向一定間隔に固定し、前記カッター収容室10の所要部に連通管路5から玉石Gを導入する玉石導入部11を設けると共に、この玉石導入部11に隣接するカッター回転方向先方側所要部には、前記導入部からの玉石を各ロータリーカッター9との間で細かく破砕する固定刃12を複数設け、これら固定刃12のカッター回転方向先方側所要部に破砕片gを連通管路5に排出する排出孔13を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の掘削装置によれば、掘削中にビット3の中空ビット軸4から連通管路5に流入した玉石Gは、水中ポンプ6の手前側に設けてあるクラッシャー7により細かく破砕されるから、水中ポンプ6の内部で詰まりを生じたり、ポンプ6の部品を破損するようなことがなく、従って掘削作業を能率良く行なうことができると共に、水中ポンプ6の使用寿命を延ばすことができる。
【0010】
請求項2に係る発明の掘削装置によれば、クラッシャー7は、密閉状カッター収容室10に設けた回転軸14に、複数のロータリーカッター9を軸方向一定間隔に固定し、カッター収容室10の所要部に連通管路5から玉石Gを導入する玉石導入部11を設けると共に、玉石導入部11に隣接するカッター回転方向先方側所要部には、玉石導入部からの玉石を各ロータリーカッター9との間で細かく破砕する固定刃12を複数設け、これら固定刃12の先方側所要部に破砕片gを連通管路5に排出する排出孔13を設けてなるため、中空ビット軸4から連通管路5に流入した玉石Gを、各ロータリーカッター9と固定刃12との間で効果的に細かく破砕して連通管路5へ有効に排出させることができると共に、構造が小形でコンパクトになって、本体ケース2内への設置が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(a) は掘削装置における本体ケース2部分の縦断面図、(b) はビット3をその先端側から見た底面図である。図2は図1に示すクラッシャー7の正面図、図3の(a) は図2に示すクラッシャー7の右側面図であり、(b) はその平面図である。図4の(a) はクラッシャー7の要部拡大縦断面図、(b) は(a) のX−X線断面図である。本発明に係る掘削装置は、本体ケース2内の連通管路5における水中ポンプ6とビット3との間に、中空ビット軸4より連通管路5に流入してくる玉石を細かく破砕するクラッシャー7を設けた点が特徴であって、他の構成については図5に示す従来の掘削装置と同様である。
【0012】
図1に示すように、円筒状の本体ケース2にはその内周面の上端側及び下端側に取付フランジ31,32が固着されていて、上端側の取付フランジ31が、ドリルパイプ1の下端部に固着された取付フランジ33とボルト接合されることによって、ドリルパイプ1の下端部に本体ケース2が垂下連結され、また本体ケース2下端部の取付フランジ32が、中空ビット軸4の上端部に固着された取付フランジ34とボルト接合されることにより、ビット3が本体ケース2の下端部に垂下連結される。
【0013】
ビット3は、図1の(b) に示すように、中空ビット軸4に、刃物取付枠aを周方向に120°の間隔で取り付け、各刃物取付枠aの下端縁に複数個の刃物bを固着してなる周知構造のものである。
【0014】
連通管路5は、ビット3の中空ビット軸4とクラッシャー7とをつなぐ管路部5aと、クラッシャー7と水中ポンプ6とをつなぐ管路部5bと、水中ポンプ6とドリルパイプ1の下端部とをつなぐ管路部5cとからなる。尚、水中ポンプ6に対する油圧の給排は、図1及び図5に示すように、基枠21上方のリール27からドリルパイプ1に沿って本体ケース2内に垂下されている油圧ホース26a,26bによって行なわれる。この油圧ホース26a,26bは、ドリルパイプ1に巻き付いたりしないようにドリルパイプ1の適当箇所に設けた保持枠41(図5参照)に保持させるようにする。尚、後述するクラッシャー駆動用油圧モーターへの給油は、上記油圧ホース26a,26bと同様にして配備された別の油圧ホースによって行なう。
【0015】
クラッシャー7は、図2〜図4に示すように、ボディ8内部に形成される密閉状のカッター収容室10に回転軸14を軸受42により軸支し、この回転軸14に、夫々周方向に複数の刃部9aを形成した複数のロータリーカッター9を軸方向に一定間隔で固定し、前記カッター収容室10の所要部に連通管路5から玉石Gを導入する玉石導入部11を設けると共に、この玉石導入部11に隣接するカッター回転方向先方側所要部には、隣り合うロータリーカッター9,9間に介在して、前記導入部11からの玉石Gを各ロータリーカッター9の刃部9aとの間で細かく破砕する固定刃12を複数設け、そしてこれら固定刃12のカッター回転方向先方側所要部に、破砕片gを連通管路5に排出するための排出孔13を設けてなるものである。
【0016】
上記クラッシャー7の構造を更に説明すると、ロータリーカッター9は、図4に示すように、回転軸14にスペーサー43を介して一定間隔おきに複数枚(ここでは4枚)固定されており、ロータリーカッター9は、その刃部9aがカッター収容室10の所要部に固定された隣り合う固定刃12,12によって挟まれるような状態に配置され、また両端のカッター9は、図4の(b) に示すように、その刃部9aがボディ8を形成する側壁板8oと固定刃12とによって挟まれるように配置されている。各固定刃12は、図4の(a) に示すように、ボルト44によってボディ8に取付け固定されている。
【0017】
また、回転軸14は、図3の(a) に示す油圧モーター37に連動連結されている。この油圧モーター37に対する油圧の給排は、図示は省略するが、図5に示す水中ポンプ6用の油圧ホース26a,26bと同様にドリルパイプ1に沿って本体ケース2内に垂下挿入されている別の油圧ホースによって行なうようになっている。
【0018】
また図4の(a) に示すように、ビット3の中空ビット軸4とクラッシャー7とをつなぐ管路部5aの上端部5aoは、玉石導入部11に通じるように連結され、その管路部5aに吸い込まれて流入してくる玉石Gを玉石導入部11に導入するようになっている。
【0019】
図1の(a) において、38は本体ケース2の外周側に周方向に一定間隔で取り付けられたスタビライザーである。各スタビライザー38は、実線位置から仮想線位置まで拡径できるようになっている。
【0020】
次に、上記のように構成されるクラッシャー7を本体ケース2内の連通管路5に介設した掘削装置の作用について、図1、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0021】
先ず、図5に示すように、クレーン等によって鉛直姿勢に保持したドリルパイプ1を、基枠21上の回転駆動手段20により回転させながら、ドリルパイプ1下端部のビット3によって地盤を掘削する。この際、スラッシュコンテナ28に溜めてある水をポンプ29で吸引して給水ホース40で掘削箇所に供給する。尚、このポンプ29は、スラッシュコンテナ28の外に設けているが、コンテナ28内に浸漬させる水中ポンプでもよい。
【0022】
上記のようにドリルパイプ1の回転によりビット3を回転させて地盤を掘削しながら、その掘削土砂を水と一緒にビット3の中空ビット軸4より本体ケース2内の連通管路5及びドドリルパイプ1更に排泥用ホース23を通じて、地上のスラッシュコンテナ28内に放出する。
【0023】
こうした地盤の掘削中に、掘削土や水と一緒に、玉石Gが中空ビット軸4より連通管路5の管路部5aに流入すると、その玉石Gは、図4から分かるように、当該管路部5aの上端部5aoからクラッシャー7の玉石導入部11に導入されて、回転するロータリーカッター9の刃部9aと固定刃12との間で細かく破砕される。破砕された玉石Gの破砕片gは、カッター収容室10の排出孔13より吸引されて、連通管路5の管路部5bに排出され、水中ポンプ6を通過してドリルパイプ1から排泥用ホース23を通じてスラッシュコンテナ28内に放出される。掘削土砂は、図5に示すようにスラッシュコンテナ28内に沈殿する。
【0024】
上記のように掘削中にビット3の中空ビット軸4から連通管路5に流入した玉石Gは、水中ポンプ6の手前側に設けてあるクラッシャー7により細かく破砕されるから、水中ポンプ6の内部で詰まりを生じたり、ポンプ6の部品を破損するようなことがなく、従って掘削作業を能率良く行なうことができると共に、水中ポンプ6の使用寿命を延ばすことができる。
【0025】
また、上記クラッシャー7は、密閉状カッター収容室10に設けた回転軸14に、複数のロータリーカッター9を軸方向一定間隔に固定し、カッター収容室10の所要部に連通管路5から玉石Gを導入する玉石導入部11を設けると共に、玉石導入部11に隣接するカッター回転方向先方側所要部には、玉石導入部からの玉石を各ロータリーカッター9との間で細かく破砕する固定刃12を複数設け、これら固定刃12の先方側所要部に破砕片gを連通管路5に排出する排出孔13を設けてなるため、中空ビット軸4から連通管路5に流入した玉石Gを、各ロータリーカッター9と固定刃12との間で効果的に細かく破砕して連通管路5へ有効に排出させることができると共に、構造が小形でコンパクトになって、本体ケース2内への設置が容易となる。
【0026】
尚、地上から或る深さまで掘削したならば、図1に示すように掘孔の上端部側にスタンドパイプ30を嵌入し、掘孔上端部の崩落を防止する。
【0027】
上記のようにドリルパイプ1の回転によりビット3を回転させて地盤を掘削しながら、その掘削土砂を水とともに、ビット3の中空ビット軸4より本体ケース2内の連通管路5、ドドリルパイプ1及び排泥用ホース23を通じてスラッシュコンテナ28内に放出する一方、スラッシュコンテナ28内の上澄み水をポンプ29で吸引して、給水ホース40により掘削中の掘孔内に戻してやる。こうして所定深さまで掘削していくことになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a) は掘削装置における本体ケース部分の縦断面図、(b) はビットをその先端側から見た底面図である。
【図2】図1に示すクラッシャーの正面図である。
【図3】(a) は図2に示すクラッシャーの右側面図であり、(b) はその平面図である。
【図4】(a) はクラッシャーの要部拡大縦断面図、(b) は(a) のX−X線断面図である。
【図5】従来の掘削装置の全体を示す一部断面説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ドリルパイプ
2 本体ケース
3 ビット
4 中空ビット軸
5 連通管路
5a 管路部
5b 管路部
5c 管路部
6 水中ポンプ
7 クラッシャー
8 ボディ
9 ロータリーカッター
10 カッター収容室
11 玉石導入部
12 固定刃
13 排出孔
G 玉石
g 玉石の破砕片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるドリルパイプの先端部に本体ケースを固定し、本体ケースの先端部にビットの中空ビット軸を固定し、本体ケース内においてドリルパイプと中空ビット軸とを連通管路によって連通連結すると共に、連通管路の途中に水中ポンプを設け、掘削箇所に水を供給してビットで掘削しつつ、掘削土砂を水と一緒に中空ビット軸より連通管路及びドリルパイプを通じて地上に排出するようにした掘削装置において、本体ケース内の連通管路における水中ポンプとビットとの間に、中空ビット軸より連通管路に流入してくる玉石を細かく破砕するクラッシャーを設けてなることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
クラッシャーは、ボディ内部の密閉状カッター収容室に設けた回転軸に、夫々周方向に複数の刃部を形成した複数のロータリーカッターを軸方向一定間隔に固定し、前記カッター収容室の所要部に連通管路から玉石を導入する玉石導入部を設けると共に、この玉石導入部に隣接するカッター回転方向先方側所要部には、前記導入部からの玉石を各ロータリーカッターとの間で細かく破砕する固定刃を複数設け、これら固定刃のカッター回転方向先方側所要部に破砕片を連通管路に排出する排出孔を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−107272(P2007−107272A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299041(P2005−299041)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(390016458)三和機工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】