説明

採光性建材

【課題】採光性に優れ、かつ、それを介して太陽を見ても眩しくないような採光性建材の提供。
【解決手段】全光線透過率が60%以上で、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときに、光線透過率が50%になる受光角が20゜以上であることを特徴とする採光性建材である。透明樹脂と、平均粒径1〜20μmで、透明樹脂との屈折率差が0.05以上である微粒子とを含む光拡散層を備え、この光拡散層100質量%中、微粒子量が2〜20質量%であり、光拡散層の厚みが20〜1200μmである構成が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材や側板として好適な採光性建材に関し、詳細には、採光することができ、しかも、人間が、板材を介して太陽を直視しても、眩しさを感じることのない採光性建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂製の板材を、カーポート、テラス、ベランダ等の屋根材や側板として使用することが知られている。このような板材においては、太陽光線の熱さを遮るための遮光性と、明るさを取り込むための採光性とのバランスが必要であり、板材製造時に、無機充填剤を配合して乳白色にしたり、顔料を配合して着色したりしてきた。しかし、乳白色の板材を屋根材として使用すると、採光性に劣り、暗くなりがちである。また、着色タイプの板材は、これを介して太陽を見ると眩しすぎて直視できないという問題があった。
【0003】
一方、特許文献1には、目隠し性を保持しながら採光性を向上させた合成樹脂板として、エンボス部と透明な模様部を設けたものが開示されているが、模様部の光線透過率は高くなるように構成されているため、模様部から太陽を見透かすと、やはり眩しくて直視できないものであった。
【特許文献1】特開2005−82960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明では、採光性に優れ、かつ、それを介して太陽を見ても眩しくないような採光性建材の提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得た本発明は、全光線透過率が60%以上で、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときに、光線透過率が50%になる受光角が20゜以上であることを特徴とする採光性建材である。
【0006】
上記採光性建材は、透明樹脂と、平均粒径1〜20μmで、透明樹脂との屈折率差が0.05以上である微粒子とを含む光拡散層を備え、この光拡散層100質量%中、微粒子量が2〜20質量%であり、光拡散層の厚みが20〜1200μmである構成が好ましい。
【0007】
光拡散層の厚みをt(μm)、光拡散層中の微粒子濃度をc(質量%)、平均粒径をd(μm)としたときに、下式を満足することが好ましい。
250≦(t・c)/d≦2000
【0008】
紫外線吸収層を最外層に備えた構成および透明樹脂がポリカーボネートである構成は、いずれも本発明の好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の採光性建材は、採光性が良好なため、例えば、カーポートの屋根材として用いた場合、曇天時や降雨時でも、カーポート内は充分な明るさを確保できるようになった。また、光拡散性に優れているので、この採光性建材を介して太陽を直視しても眩しくなく、使用者に優しい採光性建材を提供することができた。
【0010】
従って、本発明の採光性建材は、カーポート、テラス、ベランダ等の屋根材や側板として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の採光性建材は、全光線透過率が60%以上であることが必要であり、70%以上がより好ましい。採光性を良好にするためである。全光線透過率は、JIS K7361−1に規定される方法で測定した値を採用する。測定機器としては、例えば、日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000等が使用できる。
【0012】
また、本発明の採光性建材は、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときに、光線透過率が50%になる受光角が20゜以上でなければならない。この値は、光拡散性の目安となるものであり、この受光角が20゜以上であれば、太陽を直視しても眩しくなくなる。30°以上がより好ましい。なお、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときの光線透過率が50%になる受光角(D50)は、分光色変角色差計(例えば、日本電色工業社製のGC5000等)を用い、受光角を変えながら光線透過率を測定することで求められる。
【0013】
上記の要件を満たすには、採光性建材として、透明樹脂と、平均粒径1〜20μmで、透明樹脂との屈折率差が0.05以上である微粒子とを含む光拡散層を備えたものを用いることが好ましい。光拡散層100質量%中、上記微粒子量は2〜20質量%が好ましく、光拡散層の厚みは20〜1200μmであることが好ましい。なお、採光性建材が、上記光拡散層のみからなるものであってもよい。
【0014】
微粒子の平均粒径が1μmより小さいと二次凝集が発生し、光拡散効果が不充分となるおそれがあり、20μmを超えると光拡散層を通過する散乱光量が減少し、全光線透過率が大きくなり過ぎるおそれがある。平均粒径の下限は2μmがより好ましい。また、上限は10μmがより好ましく、4μmがさらに好ましい。なお、この平均粒径は、顕微鏡で観察した際に、任意に選択した微粒子100個について粒径を測定し、単純平均した値である。微粒子が真球状ではない場合、例えば楕円球状では、(長径+短径)/2を平均粒径とし、その他の形状の場合は最大径と最小径との平均を平均粒径とする。
【0015】
マトリックスとなる透明樹脂の屈折率と微粒子の屈折率との差(屈折率差:絶対値)が0.05以上であると、樹脂と微粒子との界面において光が大きく屈折するので、光を充分に拡散させることができ、太陽を直視しても眩しくなくなるため好ましい。屈折率差の絶対値は、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.09以上である。屈折率差の絶対値の上限は、特に限定されるものではないが、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。なお、樹脂や粒子の屈折率は、カタログ値か、多波長アッベ屈折計(例えば、DR−M2、(株)アタゴ製)で測定した値を採用すればよい。
【0016】
上記のような光拡散効果を発現させるためには、光拡散層100質量%中、微粒子は2〜20質量%が好ましい。2質量%より少ないと光拡散効果が不充分となるおそれがあり、20質量%より多いと全光線透過率が小さくなるおそれがある。
【0017】
光拡散層の厚みは20〜1200μmであることが好ましい。20μmより薄いと光拡散効果が不充分となるおそれがあり、1200μmより厚いと全光線透過率が小さくなるおそれがある。より好ましい厚みの下限は30μmであり、さらに好ましくは80μmであり、特に好ましくは100μmである。また、より好ましい厚みの上限は1000μm、さらに好ましくは700μmである。
【0018】
また、光拡散層の厚みをt(μm)、光拡散層中の微粒子濃度をc(質量%)、平均粒径をd(μm)としたときに、下式を満足させることが好ましい。
250≦(t・c)/d≦2000
【0019】
(t・c)/dが250以上、2000以下であれば、全光線透過率と光拡散性のバランスが良好になるからである。
【0020】
光を拡散させるための上記微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;メラミンやベンゾグアナミン等のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であるアミノ系ホルマリン架橋樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエステル系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂;これらの共重合体等の有機微粒子;スメクタイト、カオリナイト等の粘土化合物;シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、中空もしくは中実のガラス粒子等の無機微粒子;透明もしくは半透明樹脂とシリカ微粒子とのシリカ複合樹脂粒子等が挙げられる。これらの材質のうち、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミノ系ホルマリン架橋樹脂、シリコーン系樹脂等の有機微粒子が、硬度が適度で、傷を付けにくい点で光拡散剤として好適である。また、例えば、日本触媒社製のエポスター(登録商標)シリーズ等が入手可能な光拡散用微粒子として好適である。
【0021】
微粒子は単一の材質から形成されていても2種以上の材質から形成されていてもよい。微粒子の形状としては、例えば、球状、板状、楕円体状、椀型、多角形状、円盤型、星型、表面しわ状等が挙げられる。
【0022】
マトリックス樹脂である透明樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、MS樹脂等のスチレン系樹脂;ラクトン環含有樹脂;酢酸ビニル系樹脂;ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;これらの共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの樹脂のうち、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、MS樹脂、ポリスチレン等が好適である。中でも特に、ポリカーボネート系樹脂が、耐衝撃性、耐熱温度、吸湿寸法安定性、難燃性等の点で優れており、好ましい。
【0023】
ポリカーボネート系樹脂は、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られる。
【0024】
二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの二価フェノールのうち、ビスフェノールAが特に好適である。
【0025】
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられ、具体的には、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が用いられる。
【0026】
上記のような二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート系樹脂を製造する際には、必要に応じて、触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を用いてもよい。
【0027】
また、ポリカーボネート系樹脂は、3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート系樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート系樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート系樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0028】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、粘度平均分子量で好ましくは15,000以上、40,000以下、より好ましくは18,000以上、35,000以下である。なお、粘度平均分子量は、塩化メチレン100mLにポリカーボネート系樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた値である。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2
[η]=1.23×10-40.83
(ただし、c=0.7、[η]は極限粘度、Mは粘度平均分子量)
【0029】
ポリカーボネート系樹脂には、必要に応じて、例えば、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤;トリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル系等の紫外線吸収剤;ブルーイング剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェニレンエーテル等の難燃剤;三酸化アンチモン等の難燃助剤;等の添加剤を、その性能を発現する添加量で配合してもよい。
【0030】
また、ポリカーボネート系樹脂には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、リン含有熱安定剤、フェノール系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤等の熱安定剤を配合することができる。中でもリン含有熱安定剤が好ましい。リン含有熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクダデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオキソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−イソプロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイト、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。これらのリン含有熱安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのリン含有熱安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイトが特に好適である。
【0031】
熱安定剤の使用量は、共重合ポリカーボネート系樹脂またはポリカーボネート系樹脂ブレンド物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、0.15質量部以下である。
【0032】
さらに、ポリカーボネート系樹脂には、成形時の金型からの離型性を改良する目的等で、脂肪酸エステルを配合してもよい。脂肪酸エステルとしては、炭素数1以上、20以下の一価または多価アルコールと炭素数10以上、30以下の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。これらの脂肪酸エステルは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの脂肪酸エステルのうち、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが特に好適である。このような脂肪酸エステルの使用量は、共重合ポリカーボネート系樹脂またはポリカーボネート系樹脂ブレンド物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、0.5質量部以下である。
【0033】
ポリカーボネート系樹脂には、ポリカーボネート系樹脂や紫外線吸収剤に基づく採光性建材の黄色味を打ち消すために、ブルーイング剤や蛍光増白剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネート系樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的には、アントラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0034】
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725](例えば、ランクセス社製「マクロレックス(登録商標)バイオレットB」、三菱化学社製「ダイアレジン(登録商標)ブルーG」、住友化学社製「スミプラスト(登録商標)バイオレットB」等)、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210](例えば、三菱化学社製「ダイアレジンバイオレットD」等)、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725](例えば、三菱化学社製「ダイアレジンブルーJ」等)、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500](例えば、三菱化学社製「ダイアレジンブルーN」等)、一般名SolventViolet36[CA.No 68210](例えば、ランクセス社製「マクロレックスバイオレット3R」等)、一般名Solvent Blue97[例えば、ランクセス社製「マクロレックスバイオレットRR」等]および一般名Solvent Blue45[CA.No 61110](例えば、サンド社製「テトラゾールブルーRLS」等)が代表例として挙げられる。これらのブルーイング剤は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、2×10-4質量部以下の割合で配合される。
【0035】
蛍光増白剤としては、従来公知のいかなる蛍光増白剤を用いてもよく、特に限定されるものではないが、例えば、オキサゾール系蛍光増白剤、クマリン系蛍光増白剤、スチルベン系蛍光増白剤、イミダゾール系蛍光増白剤、トリアゾール系蛍光増白剤、ナフタルイミド系蛍光増白剤、ローダミン系蛍光増白剤等が挙げられる。これらの蛍光増白剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、オキサゾール系蛍光増白剤とクマリン系蛍光増白剤が特に好適である。蛍光増白剤の使用量は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下である。使用量が0.1質量部を超えると、光の均一性が損なわれることがあり、また、高価な蛍光増白剤を必要以上に使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0036】
光拡散層用の透明樹脂には、例えば、ポリマーアロイ用のゴム、熱可塑性エラストマーやその他のポリマー等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その種類等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
【0037】
本発明の採光性建材の製造方法は、特に限定されず、押出成形、射出成形、プレス成形等各種採用できる。光拡散用微粒子を均一に分散させるには、溶融状態の透明樹脂に剪断力をかけて撹拌したり、成形の際に剪断力のかかる押出成形や射出成形を用いればよい。板の形状も、一般的な平板状から、波板状、球面状、ドーム状等様々な形状にすることができる。
【0038】
本発明の採光性建材は、1層の光拡散層のみからなる構成であっても、2層以上が積層された構成であってもよく、この場合、各層は、素材や性質が同一であってもよいし、異なっていてもよい。なかでも、光拡散層と、非光拡散層とが1層ずつまたは複数層積層された態様が好ましい。この場合、光拡散層と非光拡散層のマトリックス樹脂は同種であっても異種であっても構わない。また、光拡散層はどこに設けても構わないが、出光側(太陽光が入光する方向と反対側)に設けることが好ましい。最も好ましいのは、光拡散層の上または両面に紫外線吸収能を有する紫外線吸収層を形成した態様である。紫外線吸収層は、低分子型紫外線吸収剤を上記透明樹脂にブレンドした樹脂組成物や、高分子型紫外線吸収剤を用いて、光拡散層の形成と同時に共押出し法で設けたり、光拡散層の成形後に、塗布法で形成する等の方法で製造することができる。紫外線吸収層を先に成形し、その後に光拡散層を形成してもよい。また、紫外線吸収性を有するフィルムをラミネートや接着する方法で紫外線吸収層を設けることもできる。
【0039】
紫外線吸収剤としては、従来公知のいかなる紫外線吸収剤を用いてもよく、特に限定されるものではないが、例えば、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、環状イミノエステル型紫外線吸収剤、分子内にヒンダードフェノールの構造とヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系紫外線吸収剤等の低分子型紫外線吸収剤や、これらの低分子型紫外線吸収剤が高分子に懸垂するような形の高分子型紫外線吸収剤(例えば、日本触媒社製のハルスハイブリッド(登録商標)ポリマー等)が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、ヒンダードアミン系紫外線安定剤を併用すると、より光劣化を抑制できるため、好ましい。
【0040】
サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0041】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0042】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等が挙げられる。
【0043】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0044】
環状イミノエステル形紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0045】
ヒンダードアミン系紫外線安定剤としては、具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6−)テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0046】
分子内にヒンダードフェノールの構造とヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0047】
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの紫外線吸収剤のうち、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が特に好適である。
【0048】
紫外線吸収剤の使用量は、それを含有する紫外線吸収層を構成するマトリックス樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、50質量部以下、より好ましくは0.8質量部以上、40質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上、30質量部以下である。使用量が0.5質量部未満であると、太陽光等の影響を防止する効果が少ないことがある。逆に、使用量が50質量部を超えると、太陽光等の影響を防止する効果が飽和することがある。
【実施例】
【0049】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、以下の説明では、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。また、採光性建材の評価方法は以下の通りである。
【0050】
[全光線透過率(%)]
日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000を用い、JIS K7361−1に規定される方法で測定した。全光線透過率の評価基準は、70%以上を◎、60%以上70%未満を○、60%未満を×とした。
【0051】
[D50
製造した採光性建材を用いて、分光色変角色差計(日本電色工業社製のGC5000)により、自動で受光角を5°ずつ変えながら光線透過率を測定し、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときに光線透過率が50%になる受光角(D50)を求めた。D50の評価基準は、30°以上を◎、20゜以上30°未満を○、20゜未満を×とした。
【0052】
実施例1
ポリカーボネート(PC)樹脂(「カリバー(登録商標)302−6」:住友ダウ社製:屈折率1.59)98部に、光拡散用微粒子として、「エポスター(登録商標)MA−1002」(ポリメタクリル酸メチル架橋物:平均粒径2μm:屈折率1.49:日本触媒社製)2部加え、押出機に供給し、押出温度280℃で、採光性建材の押出成形を行った。厚み1000μmの平板状採光性建材が得られた。評価結果を表1に示した。
【0053】
実施例2
光拡散層用として、上記PC樹脂85部と、「エポスター(登録商標)MA−1004」(平均粒径4μm:屈折率1.49:日本触媒社製)15部とを第1押出機に供給した。第2押出機には、上記PC樹脂のみを供給した。共押出し法で、光拡散層と非光拡散層とが積層された厚み1000μmの平板状採光性建材を製造した。光拡散層の厚みは100μmである。評価結果を表1に示した。
【0054】
実施例3
光拡散層用として、上記PC樹脂83部と、「エポスター(登録商標)MA−1004」15部および紫外線吸収剤の「TINUVIN(登録商標)1577」(チバジャパン社製)2部を第1押出機に供給した以外は、実施例2と同様にして、光拡散層と非光拡散層とが積層された厚み1000μmの平板状採光性建材を製造した。光拡散層の厚みは100μmである。評価結果を表1に示した。
【0055】
実施例4
光拡散層用として、上記PC樹脂97部と「エポスター(登録商標)MA−1004」3部を第1押出機に供給し、非光拡散層用として、上記PC樹脂に上記紫外線吸収剤が2%となるように添加して第2押出機に供給した以外は、実施例2と同様にして、光拡散層と紫外線吸収層とが積層された厚み740μmの平板状採光性建材を製造した。光拡散層の厚みは700μmである。評価結果を表1に示した。
【0056】
実施例5
光拡散層用として、上記PC樹脂80部と「エポスター(登録商標)MA−1002」20部を第1押出機に供給し、非光拡散層用として、上記PC樹脂のみを第2押出機に供給した以外は、実施例2と同様にして、光拡散層と非光拡散層とが積層された厚み1950μmのシートを得た。光拡散層の厚みは100μmである。このシートの非光拡散層側に紫外線吸収性を有する耐候性アクリル系ラミネートフィルム(「アクリプレン(登録商標)」:三菱レイヨン社製:厚み50μm)を熱ラミネートして、2mm厚の平板状採光性建材を製造した。評価結果を表1に示した。
【0057】
比較例1
実施例2と同じ組成の光拡散層と非光拡散層とが積層された厚み740μmの平板状採光性建材を製造した。光拡散層の厚みは10μmである。評価結果を表1に示した。
【0058】
比較例2
実施例1において、PC樹脂を99部、「エポスター(登録商標)MA−1002」を1部とした以外は、実施例1と同様にして厚み1mmの平板状採光性建材を製造した。評価結果を表1に示した。
【0059】
比較例3
実施例1と同様にして厚み2mmの平板状採光性建材を製造した。評価結果を表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、本発明の採光性建材はいずれも全光線透過率および光拡散性(D50)を兼ね備えており、高性能なものであった。比較例1は光拡散層が薄いため、比較例2は光拡散用微粒子の量が少ないため、光拡散性(D50)が劣っていた。比較例3は光拡散層の厚みが厚すぎて、全光線透過率に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の採光性建材は、採光性が良好なため、例えば、屋根材として用いた場合、曇天時や降雨時でも充分な明るさを確保できる。また、光拡散性に優れており、この採光性建材を介して太陽を直視しても眩しくない。従って、本発明の採光性建材は、カーポート、テラス、ベランダ等の屋根材や側板として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線透過率が60%以上で、出光角0°かつ受光角0°での光線透過率を100%としたときに、光線透過率が50%になる受光角が20゜以上であることを特徴とする採光性建材。
【請求項2】
透明樹脂と、平均粒径1〜20μmで、透明樹脂との屈折率差が0.05以上である微粒子とを含む光拡散層を備え、この光拡散層100質量%中、微粒子量が2〜20質量%であり、光拡散層の厚みが20〜1200μmである請求項1に記載の採光性建材。
【請求項3】
光拡散層の厚みをt(μm)、光拡散層中の微粒子濃度をc(質量%)、平均粒径をd(μm)としたときに、下式を満足する請求項1または2に記載の採光性建材。
250≦(t・c)/d≦2000
【請求項4】
紫外線吸収層を最外層に備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の採光性建材。
【請求項5】
透明樹脂がポリカーボネートである請求項2〜4のいずれか1項に記載の採光性建材。



【公開番号】特開2009−275456(P2009−275456A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129735(P2008−129735)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(390018050)日本ポリエステル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】