説明

採暖用ヒータの制御装置

【課題】静電気による制御回路素子の破損を防止するとともに、小型で、安価な採暖用ヒータの制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制御回路部品を実装したプリント基板1を収納するケース2にコネクタ3を外部に臨ませるための開口部4を形成し、前記プリント基板1の開口部4と対応する部位には電源のグランドラインへ接続された導電性パターン5を設けたものである。これによって、静電気が制御回路部品まで侵入するのを防止し、制御回路部品の破損を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌の座席やハンドルに取り付けて採暖に用いられる採暖用ヒータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の採暖用ヒータの制御装置は、制御回路部品を実装したプリント基板を樹脂製ケースに収納して、できるだけ静電気が侵入し難い構造を採っているが、電源や採暖用ヒータなどとプリント基板とを接続するコネクタまたはワイヤーハーネスを通すために、樹脂製ケースに開口部を設ける必要があり、この開口部から静電気が侵入してプリント基板上の回路素子を破損させる可能性があった。
【0003】
図3は、その具体的構成を示すもので、プリント基板101は上部樹脂製ケース102と下部樹脂製ケース103によって囲われており、そのコネクタ104を外部へ導出するための開口が前記上部、下部ケース102,103に形成してあった。
【0004】
開口部から侵入した静電気がプリント基板101上の回路素子105を破損させないように、開口部からこの回路素子105を離して実装している。
【0005】
一般的な目安として、静電気1kVにつき1mmの空間距離が必要とされ、25kVの静電気を想定した場合には25mm以上開口部から離した位置に回路素子105を実装しなければならない。
【0006】
また、構造上可能であればリブ106のような壁を設けて沿面距離を延ばす工夫がなされることもある。
【0007】
構造上、開口部からの距離を十分確保できない場合には、コネクタにアース用端子を設け、気中放電された静電気をアース用端子へ導く静電気誘導部を設ける提案がなされ(例えば、特許文献1参照)、また、プリント基板の近傍にヒートシンクなどの接地された金属部がある場合にターミナルとヒートシンク間の静電気に対する抵抗値をターミナルから回路基板への抵抗値より小さくして、静電気をヒートシンク側へ逃がす提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、ターミナルなどへの静電気の侵入を十分に防止できない場合には、抵抗、コンデンサ、ダイオード、ツェナーダイオードなどを組み合わせてフィルター回路を構成し、静電気耐量の向上を図っている例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−19233号公報
【特許文献2】特開平9−180891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、ケース開口部から回路素子までの距離を確保するために樹脂製ケースのサイズが大きくなり、また、特殊なコネクタは汎用コネクタに比べてコスト的に不利であり、採暖用ヒータの制御装置には通常、ヒートシンクは用いられていない。
【0011】
さらに、静電気対策のためにフィルター回路を追加すると、本来の機能を果たすのには必要でない電子部品を増やすことになるので、コスト面でもサイズ面でも好ましくない。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、静電気耐量を確保すると伴に、小型で安価な採暖用ヒータの制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の採暖用ヒータの制御装置は、制御回路部品を実装したプリント基板を収納するケースにコネクタを外部に臨ませるための開口部を形成し、前記プリント基板の開口部と対応する部位には電源のグランドラインへ接続された導電性パターンを設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の採暖用ヒータの制御装置によれば、静電気を受け、静電気をグランドラインへ誘導する導電性パターンをプリト基板上に形成するスペースのみでよく、ケースの開口部から静電気が侵入しないだけの距離を確保して制御回路部品を実装しなければならないという制約がないので、小型の採暖用ヒータの制御装置を提供することができ、また、他の電子部品を追加する必要がないので、安価な採暖用ヒータの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における採暖用ヒータ制御装置の概略縦断面図
【図2】本発明の実施の形態2における採暖用ヒータ制御装置の概略横断面図
【図3】従来の採暖用ヒータ制御装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、制御回路部品を実装したプリント基板を収納するケースにコネクタを外部に臨ませるための開口部を形成し、前記プリント基板の開口部と対応する部位には電源のグランドラインへ接続された導電性パターンを設けたものである。
【0017】
これによって、静電気が制御回路部品まで侵入するのを防止し、静電気による制御回路部品の破損を防ぐことができる。
【0018】
第2の発明は、特に、前記した第1の発明において、導電性パターンがケースの開口部に向かって尖った形状を有し、静電気をより確実に受け止めてグランドラインへ誘導するようにした。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1において、プリント基板1を収納したケース2にはコネクタ3を外部へ臨ませるための開口部4が形成してある。
【0021】
前記ケース2は、合成樹脂などにより成型され、上、下ケース部材2a,2bを一体化して構成されている。
【0022】
前記プリント基板1上の開口部4と対応部位には銅箔などの導電性パターン5が設けられており、前記開口部4に静電気が帯電した人体などが近接すると同開口部4を通してこ
の導電性パターン5に放電されるようにしてある。
【0023】
仮に、導電性パターン5がなければ、プリント基板1に装着された制御回路素子6や制御回路の導電性パターンへ静電気が印加され、制御回路素子6の破損や誤動作を引き起こす。
【0024】
導電性パターン5は、電源のグランドラインへ接続されているので、この導電性パターン5が受けた静電気は電源のグランドラインへ逃がされる。
【0025】
導電性パターン5の代わりに、ケース2の開口部4の近傍に金属板などを設置しても同様のことが期待できるが、金属板やリード線などプリント基板1以外の部品が必要になり、コスト面でもサイズ面でも不利である。
【0026】
導電性パターン5は、制御回路パターンと伴にエッチングによってプリント基板1上に形成され、かつ、電源のグランドラインへの接続も導電性パターン5でできるので、他の部品を追加することなく実現できる。
【0027】
また、制御回路素子6、および制御回路パターンへ静電気が印加されるのを防止するので、本来の機能を果たすのには必要でない、抵抗、コンデンサ、ダイオード、ツェナーダイオードなどを組み合わせた静電気対策用のフィルター回路を必要としない。
【0028】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2を示すもので、図1に示す構成と同作用を行うところには同一符号を付し、具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0029】
実施の形態1との相違点は、導電性パターン5aがケース2の開口部4に向かって尖った形状を有しているところである。
【0030】
静電気が先端の尖った金属部へ放電しやすい性質を利用して、静電気を受け易くし、制御回路素子6の方へ静電気が印加されるのを防いでいる。
【0031】
銅箔パターン5aの尖った形状の個数については、ケース2の開口部4の幅によって決められるが、開口部4から制御回路素子6までの距離より、この開口部4に近い位置に1個以上の導電性パターン5aの尖った形状の先端が存在するように配設する。
【0032】
一般に、プリント基板には、はんだブリッジを防止するために部品ランド以外の部分にソルダーレジストの被膜をつけるが、導電性パターン5aの尖った形状の先端部分には、ソルダーレジストの被膜をつけないようにした方がより静電気を受け易くなる。
【0033】
銅箔パターン5aは、電源のグランドラインが接続されているコネクタ端子へパターンで繋がれている。銅導電性パターン5aで受けた静電気はこのパターンを介してグランドラインへ逃がされる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる採暖用ヒータの制御装置は、ケースの開口部に近接するプリント基板上に導電性パターンを設けて電源のグランドラインへ接続し、開口部からの距離が前記導電性パターンより離れた部分に他の制御回路の導電性パターンを配設した構成にしているので、静電気による制御回路素子の破損を防止することができ、静電気対策用の部品を追加する必要がないので、小型で、安価な車載用の採暖用ヒータの制御装置などに利用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 プリント基板
2 ケース
3 コネクタ
4 開口部
5,5a 導電性パターン
6 制御回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路部品を実装したプリント基板を収納するケースにコネクタを外部に臨ませるための開口部を形成し、前記プリント基板の開口部と対応する部位には電源のグランドラインへ接続された導電性パターンを設けた採暖用ヒータの制御装置。
【請求項2】
導電性パターンはケースの開口部に向かって尖った形状を有する請求項1記載の採暖用ヒータの制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−18495(P2011−18495A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161338(P2009−161338)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】