説明

採血管準備装置

【課題】簡易小型でポータブルでもあり、机上等にも容易に設置でき、災害時等の緊急対応性にも優れ、且つ医師からの採血指示に応じて種類の異なる採血管を準備することができるようにする。
【解決手段】一つの搬送ベルトの往復するベルトどうしの中に採血管保持部材をベルトに沿って配置し、採血管のキャップの下端面を採血管保持部材と往き側送りベルトの上端面とで支持している。そして、往き側ベルトによってキャップを通じて採血管に送り(フィード)を与えている。またこれらのストッカー1を構成する部材を一つのモジュール内に搭載し、装置本体の装着部に脱着自在に装着している。またモジュール方式であるので、故障した場合やメンテナンス時の作業が極めて容易である。更に、機器の設定状態や患者情報などを表示するディスプレイ37を備えており、作業者は目視で確認しながら行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血検査の前工程における採血工程での採血管の事前準備作業を行なうものであって、エンドレス状の送りベルトを利用して採血管(試験管を含む。)を吊下げ方式で吊下げ保持すると共に、容易に脱着可能なモジュール方式にした採血管ストッカーを採用し、医師からの採血指示に応じて種類の異なる採血管を前記モジュール方式のストッカーから選択し、患者IDや前記採血指示内容等の採血情報を印字したラベルを貼り付け、ラベル貼付後の採血管を患者別に受皿へ収容することのできる小型且つ簡単な構造で移動性に優れた採血管準備装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院、診療所その他の医療機関における血液検査部門では、採血作業者(看護師等)により、患者から血液を採血管へ採取収容して検査部門へ移送するようにしている。血液検査では、その血液検査項目に応じて、多種類の採血管が準備されており、通常、一人の患者に対して複数種類の検査が同時に行われる。そのため、採血管の準備も一人の患者に対して複数種類のものが採血管準備装置によって自動的に準備されるようになっている。そして、採血室では多数の患者を取り扱うのが当たり前であり、前記採血管準備装置で準備された各採血管には患者情報、採血検査情報等のバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
また患者には、採血受付時に受付番号等のバーコードが印刷された採血受付票が発行されている。採血作業に際しては、これらのラベルや受付票の内容をバーコードリーダ等の光学的機器により読み取って患者及び採血管の取り間違いが起こらないようにしている。
【0003】
このような採血業務の自動化を図り、採血業務を支援する技術として、特許文献1に示す技術がある。この特許文献1の技術は、縦方向(垂直方向)に回転駆動するエンドレス状のベルト駆動装置を利用するものである。このベルト駆動装置では、ベルト幅が採血管の長さ寸法以上に設定され、ベルト面から外径方向へ突出して設けられたキャタピラー状の仕切り板を有し、ベルト面の前後の仕切り板どうしの間を一個の採血管収容部(ストック部)とし、一つのベルト面上に多数の採血管収容部を構成するようにしている。この場合、一つのベルト駆動装置は同一種類の採血管を収容するように設定されている。そして、このようなキャタピラー方式で採血管を収容するベルト駆動装置を利用したストッカー機構を、複数段上下方向に重ねて配置することで、複数種類の採血管を取り扱うことができるようにしている。
医師からの採血オーダ情報に基づいて患者の採血に必要な採血管を、対応する採血管ストッカー機構部から取り出し、ラベル印字・貼付手段を用いて患者の採血に関する情報をラベルへ印字し、印字後のラベルを取り出した採血管に貼り付けるようにしている。そして、ラベル貼付後の採血管を排出手段で採血管回収部まで移送し、採血管回収部にて患者毎に受皿へ収容するようにしている。
【0004】
このような採血管準備装置であると、ストッカー機構部が上下に重ねて配置される関係上、高さ方向の寸法がかなりのものとなり、装置自体が大型化するという問題があった。
一方、従来の上記問題点を解決する方法として、特許文献2及び特許文献3に示すような採血管の形状に類似した製品を吊下げ方式で搬送する技術を、ストッカーとして利用することが考えられる。これらの搬送技術は、樹脂ボトル等の口部近傍に設けられる環状の鍔部(リング)を利用し、左右二つの搬送ベルトどうしの間において、搬送ベルトに前記リングを係合支持し得るアタッチメントを取り付け、当該対向する一対のアタッチメント間に樹脂ボトル等のリングを係止して吊下げた状態で搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−67660号公報
【特許文献2】特開2006−21854号公報
【特許文献3】特開2007−145493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献2及び3に示す技術では、左右に配置した二つの搬送ベルトを一対として一つの搬送装置を構成するものであり、一つの搬送装置のために二つの搬送ベルトの駆動機構が必要であった。
また二つの搬送ベルトを水平方向で回転駆動するように配置すると、左右の搬送ベルトの二つのプーリーの直径を足した寸法と、ベルトの厚み寸法及びアタッチメントの寸法と、搬送する製品の幅寸法とが必須となる。従って、全体としては幅方向の寸法がかなりのものとなり、多種類の採血管を自動的に準備する装置として構成した場合、装置全体の大型化は避けられず、前記特許文献2及び3の技術をそのまま採血管準備装置へ適用することはできないという問題があった。
【0007】
このように特許文献1に示す技術では、多種類の採血管の収容部を上下方向に重ねて配置する関係上、上下方向の高さ寸法が大きくなるという大型化の問題があり、特許文献2及び3に示す技術をそのまま採血管準備装置の技術へ利用した場合は、水平方向の幅寸法が大きくなり、やはり多種類の採血管を取り扱う装置として構成したときには、装置自体が大型化するという問題があった。また特許文献2及び3に示す技術をそのまま利用した場合は、取り扱う採血管の種類の数の2倍の搬送機構を必要とするという問題があった。
このような採血管準備装置の大型化の問題は、レイアウト変更などのときには、容易に採血管準備装置を移動させたりすることができず、また特に小規模の病院へ適用するにはスペース的に制限を受けるという問題があった。更に、大型化の問題は、災害時等において、簡易に設置する必要のある場合などにも対処することができない原因の一つとなり、緊急対応が出来ないという欠点があった。
【0008】
そこで、本出願人は従来の前記課題を改良除去した装置であって、簡易小型でポータブルでもあり、病床脇や机上等にも載置するだけで容易に設置でき、災害時等の緊急対応性にも優れ、医師からの採血指示に応じて種類の異なる採血管を準備することのできる吊下げ方式で且つ脱着容易としたモジュール方式の採血管ストッカー及びこれを利用した採血管準備装置(特願2009−167245)を既に出願済みである。
本発明は、本出願人が先に出願した採血管準備装置に機能を付加して更に改良したものであって、採血管準備装置としての機能を全て内臓するようにしたオールインワンタイプの改良型採血管準備装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、採血管準備装置の起動用のスイッチがリモートコントロールによりON,OFF制御されるようにしたことを特徴とする採血管準備装置である。
【0010】
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項2の手段は、両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、装置本体の外表面には当該採血管準備装置の設定状態の表示及び各操作スイッチに連動して設定変更案内の表示をするための設定状態表示部が設けられていることを特徴とする採血管準備装置である。
【0011】
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項3の手段は、両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、当該採血管準備装置は内臓又は外部接続されたCPUを有し、当該CPUには採血管準備装置を制御するためのソフトプログラムがインストールされており、装置本体の外表面には前記CPUの入力部及びモニターを兼用するタッチパネルディスプレイが設けられていることを特徴とする採血管準備装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にあっては、採血管準備装置の起動用のスイッチがリモートコントロールによりON,OFF制御されるようになっている。例えば、病院などにおいて、採血検査の作業の開始又は終了に際し、採血検査室の技師長又はオペレータは採血管準備装置の起動用のスイッチのON又はOFF操作と、当該採血管準備装置を制御するためのCPUの起動用スイッチのON又はOFF操作とをしなければならない。ところが、この請求項1の発明のようにその起動用スイッチのON,OFFをリモートコントロールできるようにしておけば、CPU及び採血管準備装置の起動又は遮断を上位の操作者が病院内のLANなどを通じてリモートコントロールでき、極めて便利である。
またCPUの入力部から採血管準備装置の起動用スイッチのON,OFF制御を行うことも可能である。この場合は、CPUにおいて、当該CPUと採血管準備装置との電源のON,OFFをCPU側で同時に行うことができ、便利である。
【0013】
請求項2の発明にあっては、装置本体の外表面に設定状態表示部が設けられている。この設定状態表示部は、当該装置の設定状態を表示すると共に、装置本体の各部の機能操作用のスイッチに連動して設定変更の案内表示をするためのものである。これにより、現在の装置の設定状態がどのようになっているかを目視で確認することができ、また設定変更する場合は変更の内容等を表示することができる。
そのため、オペレータは何ら外部付加装置を接続することなく設定状態の確認を確実に行うことができると共に、設定変更が行えるという利点もある。
【0014】
請求項3の発明における採血管準備装置は、内臓又は外部接続されたCPUを有し、当該CPUには採血管準備装置を制御するためのソフトプログラムがインストールされている。そして、装置本体の外表面には、前記CPUの入力部及びモニターを兼用するタッチパネルディスプレイが設けられている。このタッチディスプレイには、当該採血管準備装置の上位システムである病院情報システム(Hospital Information System)及び検査情報システム(Laboratory
Information System)から取得した患者情報や検査情報を表示することができる。患者情報としては、患者ID、患者が新型インフルエンザやHIV等の感染症患者であるとかの情報、身障者であるなどの情報である。これにより、オペレータは、患者が誰であるかを認識したり、当該患者用の受皿(トレイ)に特殊病原菌の感染者であるなどの識別用のマークを施したり、通常の患者のトレイと分けて採血現場へ供給するなどの対策を個別に採ることができ、採血作業者にとってもこれらの情報に基づいてそれぞれに対応した対策を採ることができ、安全な採血作業を実施することができる。
【0015】
検査情報としては、例えば、生化学検査、免疫学検査、血糖検査、血液学検査、凝固検査等の検査の種類、患者氏名、採血管の容器の名称、患者に関する任意のIDたるバーコード、採血容量等の採血検査に関する項目を表示することで、オペレータに当該検査用の採血管がセットされているかどうかの確認を目視で行うことができ、セットされていない採血管の場合は手差しの準備を行うことが可能である。
【0016】
またタッチディスプレイには、CPUの機能操作を行うためのタッチキーを表示することができるようになされており、CPUの入力部としての機能も有している。従って、オペレータは内臓CPUの場合は、このタッチディスプレイに表示されたタッチキーから採血管準備装置をコントロールすることが可能であり、また外部接続方式のCPUの場合は外部接続されたCPUのキーボードから入力するか又はこのタッチディスプレイに表示されたタッチキーから入力することが可能である。このタッチディスプレイを利用することにより、オペレータは複数の機器の操作とその為の移動をすることなく、当該採血管準備装置ですべての操作を行うことが可能となり、便利であり、作業者の負担も軽減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る採血管準備装置の全体を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る採血管準備装置の全体を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る採血管準備装置の全体を示す背面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る採血管準備装置の全体を示す左側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る採血管ストッカーの基本構成を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る採血管ストッカー全体を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るものであり、図5のA−A線断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るものであり、第一及び第二のストッパーを示す平面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る採血管準備装置を示す縦断面正面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係るものであり、ラベル貼付装置を構成する部材の位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。先ず、採血管準備装置Aを構成する機器及び機構などのレイアウトについて、図1乃至図4を参照して説明する。図1乃至図4は採血管準備装置Aの全体を示すものであり、図1は平面図、図2は正面図、図3は背面図、図4は左側面図である。図1の平面図に示すように、この採血管準備装置Aは、複数個の採血管ストッカー1の装着部Bが左側半分程度の領域を占めて設けられている。この実施例では、ストッカー1は、モジュール方式で六個のものが並行して設置されており、装置本体33側の装着部に対してストッカー1のモジュールを脱着自在に装着するようにしている。このストッカー装着部Bの右側で装置本体内部にはラベルの印字・貼付手段の設置部Cが設けられている。そして、ストッカー装着部Bの各ストッカー1の採血管排出部の下方には、各ストッカー1と直交する方向で、装置本体33の左端側から印字・貼付手段の設置部Cを横切って装置本体33の右端側へ至る搬送ベルト20の設置部Dが設けられている。
【0019】
また装置本体33の手前側の前面板33bには、ディスプレイ設置部Hが設けられている。ディスプレイ設置部Hは、作業者が装置の前面に立った状態でディスプレイに表示された情報を見やすくするために、傾斜面に形成されている。該ディスプレイ設置部Hには、タッチパネルディスプレイ37と、設定状態表示部38との二種類のディスプレイが設けられている。タッチパネルディスプレイ37は、内臓されたボードコンピュータ(CPU)の入力部及びモニターを兼用するものであり、8インチ程度の大きさのものである。このディスプレイ37には、例えば初期動作画面、メイン画面、詳細ステータス画面、メンテナンスメニュー画面がある。初期動作画面にはロゴとメニューとが表示される。メニューとしては、運用開始、メンテナンス、シャットダウン、再起動、プログラム終了などがある。メイン画面には、ファンクションキーの表示と、各ストッカーが正常であるか異常であるかの状態表示と、メインのプリンタ及び多用途の別置きプリンタの各プリンタエンジンが正常であるか異常であるかの表示とがある。ファンクションキーは、例えばF1〜F6までの六つのキーがあり、F1キーはストップ/再開ボタン、F2キーはリセットボタン、F3〜F6は各画面への切り替えボタンなどに機能設定されている。
【0020】
詳細設定画面には、プリンタエンジンの設定と、ストッカーの設定と、ラベルのフォーマット設定と、上位インターフェース設定とを選択できる画面がある。プリンタエンジン設定を選択すると、メインのプリンタエンジン及び内臓する多目的プリンタの各プリンタエンジンの設定を行うことができる。プリンタエンジンの設定項目としては、プリンタエンジン番号設定、エンジンの有効/無効の選択、バーコードスキャナの有効/無効の選択、在管チェックセンサーの有効/無効の選択、ラベル貼付位置の設定などができるようになっている。ストッカーの設定項目としては、ストッカー番号設定、ストッカー表示名の設定、当該ストッカーの有効/無効の選択、管長の設定、ラベル貼付位置の設定が行えるようになっている。ラベルフォーマットの設定は、ラベルに印字する項目の配置を設定できるようになっている。ラベルに印字する項目としては、生化学検査、免疫学検査、血糖検査、血液学検査、凝固検査等の検査の種類、患者氏名、採血管の容器の名称、バーコード、採血容量などがある。上位インターフェースの設定は、シリアル接続であるか又はソケット接続であるかの設定、TCP/IP通信プロトコルの設定などができるようになっている。
【0021】
設定状態表示部38は、採血管準備装置の各部の設定状態を表示したり、設定変更の案内表示を行うためのものである。この設定状態表示部38は、例えば採血管準備装置自体の操作ボタンと連動して設定状態を表示し、設定を変更するようになっており、操作ボタンの例としてはリスタートボタン、フィードボタン、F1〜F3のファンクションキーボタン等がある。表示される設定状態としては、アイドリング中、初期通信コマンド待ち、印刷コマンド受信済み、メンテナンスモード中、カバーオープン、ラベル切れ検出、ヘッドオープン検出、台紙押し付けローラオープン検出、用紙送りモータエラー、押し込みモータエラー、位置決めモータエラー、幅寄せモータエラー、在管チェックエラー、ストッカ空、ストッパーエラー、コンベア搬送タイムアウト、コンベア詰まり検出、採血管落とし込みエラー等がある。
【0022】
更に、図2の正面図に示すように、印字・貼付手段の設置部Cの手前側には受皿載置部Eが設けられており、患者情報や採血検査情報等が印字されたラベル貼付後の採血管を患者ごとにここに準備された受皿(トレイ)30内へ収容するようにしている。この受皿載置部Eには、受皿30の有無を検知するための光学的センサー36a及び36b(図1参照)が配置されている。センサーは、投光器36aから照射された光を受光器36bで検知するタイプのものを図示しているが、反射型のものであってもよい。
【0023】
更にまた、ストッカー装着部Bの下方には、ボードコンピュータ設置部Fが設けられている。ボードコンピュータ(CPU)には、当該装置全体を制御するための制御ソフトがインストールされており、採血管ストッカー1の制御、ラベル貼付装置7及び印字装置25の制御を行う。またこのボードコンピュータは、上位のHIS又はLISとの情報の送受信を行い、上位からの情報を入力することが可能である。また上位システム側の機器から又はLAN接続された医師や検査技師のPCからリモートコントロールされるようになっている。例えば、採血作業の終了時において、LISにおける採血作業管理者側のPCからボードコンピュータの電源及び採血管準備装置の電源をシャットオフできるように構成したり、タッチパネルディスプレイ37の画面に表示されるボードコンピュータの入力画面からボードコンピュータ自体の電源と採血管準備装置の電源とを同時にシャットオフできるように構成することも可能である。
【0024】
図3の背面図に示すように、装置本体33の背面側には前記ボードコンピュータとのインターフェースとして、無線ボードや外部接続機器用ボード等の差込スロットルS1〜S3、R232C端子R、音声入出力端子V1,V2、例えば、FAX等との接続やその他の外部機器との接続に用いられるUSBポートU1〜U4、LAN接続ポートL1〜L3、電源端子Xなどが設けられている。
【0025】
更に、図4に示すように、装置本体33の左側面板33aには、前記搬送ベルト20の設置部Dに臨む開口部Gが設けられており、通常は開閉扉34によって閉塞されている。この開口部Gは、手作業で採血管を搬送ベルト20上へ投入するためのものである。これにより、開口部Gを通じて、滅多に使用されない採血管や特殊サイズの採血管を、個別に印字・貼付手段の方へ供給することが可能である。
【0026】
次に、採血管準備装置Aを構成する各機器及び機構について、個別に説明する。先ず、採血管ストッカー1について、図5乃至図8を参照して説明する。図5はストッカー1の平面図、図6は同側面図、図7は同縦断面図、図8はストッパーの拡大平面図である。図7の縦断面図に示すように、この実施の形態の採血管ストッカー1は、ステンレスやアルミ合金、鋼板等の薄い金属板を折り曲げることで断面U字状の採血管搬送用の通路(溝)を形成した筐体を有している。この筐体に各構成部材を連結結合して採血管ストッカー1の全体を一つのモジュールMとして構成している。従って、採血管ストッカー1の交換修理などは、モジュールMを単位としてワンタッチ式で行うことが可能であり、モジュールMのみをセンドバックすることにより、遠隔地の保守・交換修理作業が行える。しかも、モジュールMの代替品を先に準備しておくことで、採血業務を停止する必要もない。また前記通路(溝)の幅寸法を変更することで、採血管の大きさ(直径)に対応することが可能であり、これらの各大きさごとのモジュールMを準備しておくことで、多種類の採血管に迅速に対応することも可能である。
【0027】
図5の平面図に示すように、採血管ストッカー1は、両端に平置きで配置した従動プーリー8A及び駆動プーリー8B間に跨ってエンドレス状の送りベルト2が懸架されている。送りベルト2は、往き側送りベルト2Aと戻り側送りベルト2Bとが対向するその内面側に突起9が多数設けられたいわゆる歯付きベルトである。歯付きベルトにすることで、駆動プーリー8Bとの間の滑りをなくし、当該駆動プーリー8Bの駆動力を確実に送りベルト2へ伝達できるようにしている。なお、この送りベルト2は、平ベルトであってもよいことは当然である。
【0028】
この送りベルト2の往き側送りベルト2Aと戻り側送りベルト2Bとの間の空間領域には、ベルトに沿って配設された採血管保持部材3が設けられている。これにより、往き側送りベルト2Aと、採血管保持部材3との間に、採血管4を収容するための空間(溝)が形成される。また採血管保持部材3は、レール状又は板状部材等の上端面が平滑面とされたガイドフレームであって、上端面の高さは送りベルト2の上端面の高さと同一高さ寸法に設定されている。
【0029】
而して、往き側送りベルト2Aの突起9の先端面と採血管保持部材3との間に形成される溝幅の寸法は、採血管4の外径寸法と同一か若しくは僅かに大きく(最大で1mm程度)設定されている。この溝幅の間隔は、ストックする採血管4の外径寸法の大きさにより可変できるようになされている。大きさの変更は、一つの方法として、採血管保持部材3を往き側送りベルト2Aに対して平行移動できるように、採血管保持部材3の取付ステー(図示せず)を長孔とビス等の方式により筐体本体に固定する手段を採用すればよく、連続的に寸法調整ができるようになされている。また別の方法として、予め溝幅の異なるモジュールMを準備しておくようにしてもよい。採血管4のサイズは、一般的には、生化学検査、免疫学検査、血糖検査、血液学検査、凝固検査などについては、直径13mmと、直径16mmのものとがあり、血沈検査用としては直径8mmのものがある。
【0030】
採血管4は、図6及び図7に示すように、チューブ状の採血管本体4Aとキャップ10とからなり、キャップ10の下端面は採血管本体4Aの外径寸法よりも大きい外径寸法(前記溝幅よりも大きい寸法)を有している。この採血管4は、図7に示すように、往き側の送りベルト2Aの上端面と、採血管保持部材3の上端面とにキャップ10の対向する下端面が載置されてこれらの部材に吊下げ保持されている。つまり、採血管4を吊下げ方式でストックするようにしている。送りベルト2の駆動力は、往き側送りベルト2Aに載置されたキャップ10の下端面の接合部分を通じて採血管4に伝達される。反対側のキャップ10の下端面は、採血管保持部材3の上端面との間で摺動するのみである。
【0031】
往き側送りベルト2Aの背面側は、図7に示すように、モジュールMの筐体を構成する部材がバックアップ部材を兼用しており、中間のベルトが撓まないようになされている。往き側送りベルト2Aのバックアップ部材としては、ガイドフレームとしての採血管保持部材3と同様に構成されたバックアップ部材を用いるようにしてもよい。往き側の送りベルト2Aの背面側をバックアップすることにより、このベルト2Aの上端面が採血管4のキャップ下端面と確実に当接接合するようになされている。これにより、往き側の送りベルト2Aがキャップ10の下端面から逸脱することがなく、往き側の送りベルト2Aによって、吊下げ保持された採血管4に確実に送り(フィード)を与えることが可能である。
【0032】
採血管保持部材3の終端側には、採血管4の排出部12が設けられている。この排出部12は採血管保持部材3の終端側とプーリー8Aとの間の空間領域に設けられている。採血管4が採血管保持部材3の終端側に至ることによって、キャップ10の下端面が採血管保持部材3との係合を解放されて自然的に自重により落下することで行われる。
【0033】
ところで、排出部12に臨む位置には、第一及び第二のストッパー5,6が設けられている。これらの第一及び第二のストッパー5,6は、図8の平面図に最もよく表されているように、同一の軸13に中間部分を揺動自在に枢支されたアーム14,15の一端側下面に二股状の棒状突起が5A,5B及び6A,6Bが直立した状態で設けられている。第一及び第二のストッパー5及び6において、これらの棒状突起5A,5B及び6A,6Bが設けられる部分は、平面視した状態でL型に折れ曲がった部分が前後して相互に入り込み、干渉しないようになされている。第一のストッパー5は、先頭の採血管4のキャップ前面側に当接し得るように進退自在に構成されており、第二のストッパー6は、先頭と第二番目の採血管4,4のキャップどうしの間に形成される隙間に対して進退自在に構成されている。
【0034】
またアーム14,15の他端側下面には、ソレノイド16,17のロッド16A,17Aが連結されている。この場合のソレノイド16,17は、小型化を目的としてボールペンとほぼ同じ外径寸法を有するものが採用され、電源をONにするとロッド16A,17Aが退入動作をし、アーム14,15を図2の鎖線で示すように上昇位置へ揺動させるようになっている。なお、これらのソレノイド16,17は、通常は交互に動作するように設定されている。各アーム14,15の枢軸13と棒状突起5A,5B及び6A,6Bとの間には、それぞれリターンスプリング(引張りばね)18,19が取り付けられている。これはソレノイド16,17の電源をOFFにしたときに、リターンスプリング18,19の引張り力により、アーム14,15が水平の姿勢に復帰するようにするためのものである。またリターンスプリング18及び19は、落下する採血管4が前方側へ飛び出さないようにする働きもある。
【0035】
この実施の形態においては、上記のように構成された吊下げ方式の採血管ストッカー1が、図1及び図9に示すように、6列併設されている。排出部12の下方には、送りベルト2の搬送方向と直行する方向に配設された一本の搬送ベルト20が配設されており、6列の各ストッカー1から落下供給される採血管4を、この搬送ベルト20で図1及び図9の左側から右側方向に向けて搬送する。このとき、採血管4は、採血管保持部材3の終端側でキャップ10の下端面との係合が解放されるので、キャップ10側が採血管保持部材3から解放された側へ傾斜する。これにより、図9の鎖線で示すように、採血管4の底部側は必ず搬送方向の前方側へ向けて揃えられることになり、この状態で搬送ベルト20上に落下供給される。
【0036】
なお、搬送ベルト20は、図9の実施例では一本の連続したもので構成したが、ストッカー1の領域と、ラベルの印字貼付手段7の領域とに分割して二つの搬送ベルトで構成し、採血管4が自動的に二つの搬送ベルト間を乗り移ることができるようにすることも可能である。このようにした場合、採血管準備装置をストッカー装置と、ラベルの印字貼付装置とに分離する構成をとることができ、ストッカー装置の独立した使用が可能であり、またメンテナンスも分離して行えるので便利である。
【0037】
搬送ベルト20の終端側には、採血管4の到着検知板21が設けられている。到着検知板21は、通常の状態では、図9の鎖線で示すように、斜めに傾斜した姿勢で待機しており、採血管4が送り込まれるとこれに押圧されて実線で示すように直立の状態となり、同時に採血管4の停止位置を決定するようになる。到着検知板21は、コ字状に折曲された部分を有し、傾斜した待機状態では赤外線センサーやフォトセンサー等の投受光器からなる検知センサー(図示せず)の照射光が遮られ、採血管4が到着した直立の状態では投光器から照射された光が受光器で受光されるようになっている。更に、採血管4の停止位置の側面部には、図9及び図10に示すように、搬送ベルト20の搬送方向と直交する方向へ往復動作する採血管4の切出用スライダー22が設けられており、採血管4を搬送ベルト20から押し出してラベル貼付装置7の貼付位置へ落下供給するようになっている。
【0038】
なお、到着検知板21の直前には採血管4の向きを検知するための方向検知手段が設けられている(図示せず)。これは誤ってキャップ10が先頭になって到着検知板21に当接して停止したときに、キャップ10によって投光器からの照射光が遮られ、採血管4の向きを検知することができるようにしたものである。
【0039】
ラベル貼付装置7は、図10に示すように、連続した剥離紙上に貼付されたラベルの供給ロール23と、剥離紙を巻き取るための巻取ロール24とを有している。供給ロール23から繰り出されるラベルと剥離紙は、鋭角的に折り返して移動させることにより、腰が強い(剥離紙より弾力があって折れにくい)ラベルのみが剥離紙から剥離される。ラベルはそのまま直進して貼付手段29側へ供給され、後の残った剥離紙のみが巻取りロール24で巻き取られる。この剥離部の上流側には、ラベルへの患者情報等を印字するための印字装置25が配設されている。印字する情報は、当該採血管準備装置の制御部を内臓されたボードコンピュータ(CPU)のインターフェースを通じて上位の医事システム等のコンピュータ若しくは医師のコンピュータ端末などへ接続してこれらのデータベース若しくはハードディスクなどから取得するようになされている。更に、剥離紙から剥離されたラベルの進行方向には、駆動ローラ26及び支持ローラ27並びに進退自在な加圧ローラ28から成る貼付手段29が配設されている。更に、貼付手段29の斜め下方には、受皿30の載置部が設けられている。
【0040】
また図1乃至図3並びに図10に示すように、ラベル貼付装置7及び印字装置25の隣で受皿30に臨む位置には、内蔵で多目的のプリンタ31が配設されている。この多目的プリンタ31は、例えば、採血指示書をプリントアウトして受皿30へ投入するためのものである。また病棟などにおいて、採血しようとする患者のコンディションが採血を実施できるような状態にあるか不明である場合に、採血管にラベルを貼らずに、ラベルに患者情報や検査情報等の必要事項の印字のみをこの別置き用プリンタ31で行い、ラベルを受皿30へ排出するようにしたものである。これであれば、当該患者の様子に応じて当該患者のベットサイドで直接採血を行い、採血後に前記手貼りラベルを採血管へ貼り付けることが可能である。当該患者が採血できない状態であれば、手貼りラベルは受皿30の中へ入れたままにしておけばよい。
【0041】
更に、ラベル貼付装置7及び印字装置25と、多目的プリンタ31とは、図3及び図10に示すように、スライドテーブル32の上に搭載されてユニット化されており、電気的接続(カプラー)及び位置決めロック機構などを取り外すことで、装置本体33の外部へ引き出すことが可能である。そのため、これらのラベル貼付装置7及び印字装置25と、別置きプリンタ31が故障した場合などにおいては、故障した機器を交換するだけで迅速な修理が行えるという利点がある。これらのラベル貼付装置7及び印字装置25と、別置きプリンタ31は市販されている汎用製品を使用することができ、安価に供給できるという利点もある。またこれらの機器は、装置本体33の外部へ引き出してメンテナンスが行えるのでその作業も容易である。
【0042】
次に、上記の如く構成された採血管準備装置Aの動作態様を説明する。先ず、装置本体33の上面に設けられたストッカー設置部Bの6列の装着部に、それぞれ異なる種類の採血管をストックするための採血管ストッカー1のモジュールMをセットする。モジュールMの固定は、ビス固定式でもよく、ワンタッチクリップ方式等のほかの固定方法であってもよい。然る後は、各採血管ストッカー1の採血管保持部材3と往き側送りベルト2Aとの間に形成される各溝(採血管4のストック部)に、手作業でそれぞれ別々の種類の採血管4をセットする。採血管4のセットは、採血管4をその底部側から前記溝へ挿入するだけでよい。これにより、各採血管4のキャップ10の対向する下端面が採血管保持部材3の上端面と、往き側送りベルト2Aの上端面とに跨って載置され、これに吊下げ保持される。動作開始前の状態にあって、採血管準備装置の第一のストッパー5の棒状突起5A,5Bは、先頭の採血管4のキャップ10の前面側に当接してその前進移動を拘束している。また第二のストッパー6の棒状突起6A,6Bは、先頭と二番目に位置する採血管4,4のキャップ10,10どうしの間に形成される左右両側面の隙間31,31に入り込み、第二番目の採血管4の前進移動を拘束している。
【0043】
このような状態で装置本体33の電源スイッチをONにし、内蔵されたボードコンピュータのCPUを動作させて制御ソフトウェアを機能させ、上位のコンピュータ若しくは医師のコンピュータ端末などから採血する患者の採血情報を入手する。なお、採血管準備装置Aの制御部(ファームウェア)は、受皿載置部Eから、前の患者の受皿30が取り出されたことを検知した後であって、そして新たに当該患者のための別の受皿30が準備されていない状態では各機器を動作させないようになされている。これは、前の患者の受皿30へ次の患者の採血管が投入されて混同しないようにするためである。
【0044】
制御部は、前記入手した情報に基づいて、選択する採血管の種類を決定し、該当する種類の採血管4がストックされている採血管ストッカー1の駆動プーリ−8Bを回転駆動させる。これらの設定情報及び上位から入手した情報は、タッチパネルディスプレイ37に表示される。駆動プーリー8Bの駆動により、当該ストッカー1の全ての採血管4は、往き側送りベルト2Aの上端面と接合しているキャップ10の下端面が前記往き側送りベルト2Aのフィードを受けるようになる。なお、この状態では、第一及び第二のストッパー5及び6の働きにより、先頭と二番目の採血管4がそれぞれ移動を拘束されているので、全ての採血管4は停止したままである。
【0045】
次に、採血管準備装置Aの制御部は、該当するストッカー1の第一のストッパー5のソレノイド16をON動作させる。これにより、ソレノイド16は、そのロッドが退入動作をし、アーム14を枢軸13を支点として図10の半時計方向へ回動させるようになる。そのため、アーム14の一端側に取り付けられた棒状突起5A,5Bが先頭の採血管4のキャップ10の前面側から離れ、先頭の採血管4の拘束を解放する。先頭の採血管4は、フリーの状態となり、往き側の送りベルト2Aのフィードを受けて、停止位置から前進を始める。やがて先頭の採血管4は、採血管保持部材3の終端側の排出部12に至り、採血管保持部材3との係合が解放されるので、キャップ10が採血管保持部材3の無くなった方へ傾斜した姿勢となって往き側送りベルト2Aに片持ち支持され、ついには往き側送りベルト2Aとの係合も解放されて図9の鎖線で示すように、採血管4の底部側が搬送ベルト20の前進方向へ向けた状態で自重により搬送ベルト20の上に落下する。
【0046】
一方、第一のストッパー5は、ソレノイド16がOFF動作するので、アーム14はリターンスプリング18によって、元の水平状態へ復帰する。続いて、第二のストッパー6のソレノイド17がON動作し、アーム15を図10の鎖線で示す位置まで半時計方向へ回動させるようになる。これにより、棒状突起6A,6Bが第二番目の採血管4のキャップ10との接合を解放する。そのため、第二番目以降の残りの全ての採血管4は、往き側送りベルト2Aの駆動力を受けて前進し、新たに先頭になった採血管4が第一のストッパー5の棒状突起5A,5Bにそのキャップ10の前面側を当接して停止するようになる。最後に、第二のストッパー6のソレノイド17がOFF動作し、リターンスプリング19によって水平状態へ復帰し、新たに先頭になった採血管4と二番目に位置する採血管4とのキャップ10どうしの隙間に進入し、次の採血管4の供給指令が発せられるまでこの状態で待機する。
【0047】
前記搬送ベルト20は、第一のストッパー5のソレノイド16がON動作するのと同じタイミングで駆動を開始している。そのため、自重により落下供給された採血管4は、搬送ベルト20により図9の左方向から右方向へ向けて搬送され、到着検知板21を押圧付勢するようになる。なお、採血管4は搬送ベルト20へ直立の状態で落下供給されたとしても、搬送ベルト20が同図の左方向から右方向へ駆動していることにより、足元を掬われるようになり、底部側が先頭になって搬送されるようになる。搬送ベルト20上の採血管4は、搬送路の終端側でその底部が到着検知板21に当接してこれを押圧し、到着検知板21を傾斜した姿勢から直立の姿勢に揺動させて停止するようになる。
なお、この停止位置では、図示しない採血管4の方向検知センサーが採血管4のキャップ10を検知するようにしている。キャップが検出された場合は、キャップが先頭になって搬送されたということであり、逆向きであるので音声や発光素子の点滅信号などにより警報を発し、作業者に知らせるようになっている。またタッチパネルディスプレイ37には、採血管4の向きが逆であることがエラーとして表示される。この場合、作業者は採血管4を取り出し、向きを変えて作業を続行するようにすればよい。
【0048】
到着検知板21が直立の姿勢に押圧付勢されることで、投受光センサー等の到着検知手段が働き、採血管4が供給されて来たことを検知することができる。この到着検知信号により、搬送ベルト20の搬送方向に直行する方向へ往復動作するスライダー22が動作を開始し、到着した採血管4を横方向へ押し出してラベル貼付装置7の貼付手段29側へ落下させて供給する。貼付手段29では、加圧ローラ28が後退位置にあり、採血管4を受け取ると前進し、採血管4を駆動ローラ26と支持ローラ27側へ押圧付勢し、駆動ローラ26の駆動力を採血管4に伝達し、採血管4を周方向へ回転させる。
【0049】
一方、ラベルの印字装置25では、供給ローラ23から繰り出されるラベルに上位コンピュータ及び医師のコンピュータ端末等から取得した患者ID、検査項目、採血管種、採血量などの採血情報の必要項目を印字する。印字する内容は、タッチパネルディスプレイ37に表示され、作業者は確認することができる。印字後のラベルは、剥離紙が図10に示すように、鋭角的に折り返して移動することで、腰の強いラベルのみがそのまま直進し、前記剥離紙から自然的に剥離される。そして、剥離されたラベルは、駆動ローラー26と採血管4の外周面との間に進入して巻き取られ、採血管4の外周面に貼付される。ラベル貼付後の採血管4は、加圧ローラ28が斜め下方(図10の左下方)へ後退復帰することにより、貼付部から解放されて自重により落下し、受皿30内へ収容される。
【0050】
以上により、一つの管種の一本の採血管の準備が完了する。以後は、他にも要求されている採血管があれば、その管種のストッカー1を駆動させ、順次、上述の動作を繰り返して採血管4を受皿30内へ収容する。また手挿しの採血管があれば、装置本体の左側面に設けた手挿し開口部から個別に搬送ベルと20上へ供給し、ラベルを貼着して受皿30内へ収容すればよい。このようにして、上位コンピュータ及び医師のコンピュータ端末等からの情報で要求されている全ての管種の採血管の準備が完了すれば、一人の患者分についての採血用採血管の準備が完了したことになる。以後は同様にして他の患者の採血管を準備すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、採血管ストッカー1に使用する送りベルト2は、歯付きベルトの場合を説明したが、通常の平ベルトであってもよい。また採血管ストッカー1は、6個を併設した場合を説明したが、1個、2個、3個等の6個以下であってもよく、6個以上であってもよい。目的に応じてその数を任意に設定することが可能である。これらの採血管ストッカー1は、モジュール方式で装置本体33に対してセットすることができるので、出荷後であっても、容易に採血管のサイズの変更が可能である。また採血管ストッカー1のモジュールを例えば、10本入りのものや15本入りのもの、20本入りのもの等のように収容できる採血管の本数に変化を持たせて複数種類のものを準備し、簡単に交換できるようにすることも可能である。
【0052】
更に、ソレノイド16,17はON動作時にロッドが退入する場合を説明したが、突出と退入の往復動作をするものであってもよい。この場合、リターンスプリング18,19は省略することが可能である。
【0053】
更にまた、搬送ベルト20をストッカー1の領域と、ラベル貼付装置7の領域とに分割して二つの搬送ベルトが連続するように構成し、採血管4が自動的に乗り移ることができるようにすることも可能である。この場合は、採血管準備装置の筐体を構成する外部カバーを、ストッカー1の領域とラベル貼付装置7の領域とに分離することができ、それぞれの領域で固有のメンテナンス作業を実施することができる。また採血管ストッカー装置と、ラベル貼付装置7とを別々に構成し、採血管ストッカー装置を単独販売し、ラベル貼付装置をオプション製品として両者を連結して採血管準備装置を構成することも可能である。
【0054】
更に、多目的プリンター31は、内臓タイプとして説明したが、本装置Aと通信接続することで、別売りの多目的プリンターを本装置Aの横に載置して別置きラベルをプリントアウトするようにすることも可能である。また多目的プリンタの設置位置は、メインのプリンタ25の隣に併設したが、装置本体内の他の機器と干渉しない位置であれば、任意の場所へ内蔵するようにしてもよく、その場合に手貼りラベルなどの取出し口はトレイ供給口に臨んでいなくてもよい。
【0055】
更に、タッチパネルディスプレイ37に表示される情報及びファンクションキーの割付や数、ボタン表示の例、並びに設定状態表示部38の表示内容や選択するボタンの種類、機能などは適宜の変更が可能であることは言うまでもない。またこれらのタッチパネルディスプレイ37及び設定状態表示部38の設置位置やレイアウト等も適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…採血管ストッカー
2…送りベルト
2A…往き側送りベルト
2B…戻り側送りベルト
3…採血管保持部材
4…採血管
5…第一のストッパー
5A,5B…棒状突起
6…第二のストッパー
6A,6B…棒状突起
7…ラベル貼付装置
8A,8B…プーリー
9…歯
10…キャップ
37…タッチパネルディスプレイ
38…設定状態表示部
A…採血管準備装置
B…ストッカー設置部
C…印字・貼付手段の設置部
D…搬送ベルトの設置部D
E…受皿載置部E
F…PCのボードコンピュータ設置部
G…手差し開口部
M…採血管ストッカーのモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、
採血管準備装置の起動用のスイッチがリモートコントロールによりON,OFF制御されるようにしたことを特徴とする採血管準備装置。
【請求項2】
両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、装置本体の外表面には当該採血管準備装置の設定状態の表示及び各操作スイッチに連動して設定変更案内の表示をするための設定状態表示部が設けられていることを特徴とする採血管準備装置。
【請求項3】
両端側に配設されたプーリー間に懸架され、水平方向に回転駆動するエンドレス状の送りベルトと、該送りベルトの往復するベルトどうしの間にあって送りベルトに沿って配設された採血管保持部材とを有し、往き側の送りベルトの上端面と前記採血管保持部材の上端面との間に、採血管キャップの対向する下端面を載置すると共に、採血管保持部材の終端側には採血管が自重により落下排出される排出部を設け、該排出部の下方には採血管の搬送ベルトを配設し、該搬送ベルトの終端側にラベルの印字・貼付手段を設け、該印字・貼付手段の排出部近傍に採血管収納用の受皿載置部を設けた採血管準備装置において、当該採血管準備装置は内臓又は外部接続されたCPUを有し、当該CPUには採血管準備装置を制御するためのソフトプログラムがインストールされており、装置本体の外表面には前記CPUの入力部及びモニターを兼用するタッチパネルディスプレイが設けられていることを特徴とする採血管準備装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58904(P2011−58904A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207765(P2009−207765)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(709005094)株式会社エーエフシー (4)
【Fターム(参考)】