説明

接合方法および装置

【課題】接合前には接合部同士を確実に接合に適した清浄な状態にし、容易に常温接合までを可能とすることのできる接合方法および装置を提供する。
【解決手段】基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、減圧下で前記接合部の表面をエネルギー波により洗浄した後接合部同士を接合する接合方法であって、洗浄に適した所定の真空度にて洗浄を行った後、さらに真空度を高めてから接合部同士を接合することを特徴とする接合方法、および接合装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップやウエハー、各種回路基板等の、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する接合方法および装置に関し、とくに、プラズマ等のエネルギー波により表面を洗浄した後接合部同士を接合するようにした接合方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属接合部を有する被接合物同士を接合する方法として、シリコンウエハーの接合面同士を接合するに際し、接合に先立って室温の真空中で不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス高速原子ビームを照射してスパッタエッチングする、シリコンウエハーの接合法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。この接合法では、シリコンウエハーの接合面における酸化物や有機物等が上記のビームで飛ばされて活性化された原子で表面が形成され、その表面同士が、原子間の高い結合力によって接合される。したがって、この方法では、基本的に、接合のための加熱を不要化でき、活性化された表面同士を単に接触させるだけで、常温またはそれに近い低温での接合が可能になる。
【0003】
また、上記のようなエネルギー波によるエッチングにより接合面を表面活性化するに際し、エネルギー波として、表面洗浄効果、取り扱い易さ等の面から、プラズマが好適であることも知られている(たとえば、特許文献2参照)。さらに一般に、プラズマを容易に発生させ、発生するプラズマの強度等を容易に制御できるようにするためには、減圧下で(つまり、真空度をたかめて)、反応ガス、たとえばArガスを供給し、そのガス雰囲気でプラズマを発生させることが好ましいことも知られている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2791429号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2002−64266号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように、反応ガス(たとえばArガス)を供給し、そのガス雰囲気でプラズマ等のエネルギー波を発生させて被接合物の接合表面を洗浄するだけでは、洗浄時に反応ガス成分が接合表面に残ったり、また、真空度が低い場合には浮遊している不純物が再付着したりするおそれがあるという問題が残されている。接合表面に反応ガス成分が比較的多量に残されたまま、あるいは、不純物が付着したまま、接合に入ると、良好な接合が難しくなるばかりか、接合のために高温加熱や高圧圧着が要求され、簡単な形態での常温接合等は困難になる。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記のような不都合の発生を防止し、接合前には接合部同士を確実に接合に適した清浄な状態にし、容易に常温接合までを可能とすることのできる接合方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る接合方法は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、減圧下で前記接合部の表面をエネルギー波により洗浄した後接合部同士を接合する接合方法であって、洗浄に適した所定の真空度にて洗浄を行った後、さらに真空度を高めてから接合部同士を接合することを特徴とする方法からなる。
【0008】
すなわち、洗浄後に、接合部周りの雰囲気を吸引して真空度を高めることにより、残留していた反応ガス成分や不純物が取り除かれるので、より清浄な状態で、エネルギー波洗浄により表面が活性化された接合部同士を接合することができるようになり、良好な接合がより容易に行われる。
【0009】
また、本発明に係る接合方法は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、減圧下で前記接合部の表面をエネルギー波により洗浄した後接合部同士を接合する接合方法であって、洗浄中に真空度を高めていくことを特徴とする方法からなる。
【0010】
すなわち、接合部の表面を洗浄しながら吸引により真空度を高めていくので、洗浄中に反応ガス成分そのものや浮遊していた不純物が吸引により取り除かれ、より清浄な状態で、エネルギー波洗浄により表面が活性化された接合部同士を接合することができるようになり、良好な接合がより容易に行われる。また、場合によっては、冷却した後接合すれば、接合における熱膨張の影響は防げる。上記各方法において、基材の表面の接合部は、金属からなることが、つまり金属接合部であることが好ましい。
【0011】
これら本発明に係る接合方法においては、上記洗浄後接合までの間に接合部を加熱することもできる。このように加熱を併用すれば、表面に吸着されていたあるいは表面に入り込んでいた反応ガス成分が表面から飛び出しやすくなり、表面をより清浄な活性化された状態にすることが可能になる。また、場合によっては、冷却した後接合すれば、接合における熱膨張の影響は防げる。
【0012】
上記エネルギー波としては、取り扱いやすさや強度制御の行いやすさの点から、プラズマを用いることが好ましい。中でも、広い真空度範囲で発生可能なRFプラズマを用いることが好ましい。
【0013】
とくにこのようにエネルギー波としてプラズマを用いる場合には、プラズマが良好に発生できる真空度の範囲が存在し、つまり、洗浄に適した真空度の範囲が存在し、一般に、その範囲よりも真空度を高めると、プラズマは消失してしまう。したがって、真空度の制御は、このような特性を考慮して行わなければならない。たとえば、洗浄時の真空度を1.3Paよりも高い圧力とし、洗浄後接合までの間に真空度を1.3Paよりも低い圧力として真空度を高めるようにすることができ、このような制御はとくにプラズマにより洗浄を行う場合に好ましい。なお、本文中でいう真空度1.3Pa以下とは、圧力を高める方向であり、真空度を高めるとは、圧力を低くする方向を指す。
【0014】
また、洗浄前に真空度を一旦1.3Paよりも低い圧力として雰囲気中の不純物を極力低減させた後に、不活性ガスを導入して、洗浄に最適な真空度まで戻し、たとえば、不活性ガスを導入することにより真空度が1.3Paよりも高い圧力となるように増圧した状態にて洗浄することもできる。洗浄後には、上記同様、真空度をを1.3Paよりも低い圧力として真空度を高めるようにすればよい。
【0015】
また、前記洗浄中に真空度を高めていく方法においては、真空度を高めすぎると、それまで発生していたエネルギー波(たとえば、プラズマ)が発生しなくなり、洗浄が中途半端になるおそれがあるので、このようなおそれを除去し、所定の洗浄が終了するまで確実にエネルギー波発生状態に維持するために、洗浄中に真空度を高めつつ、上下両電極をプラズマのカソード・アース電極としておけば、接合部同士間の距離を縮めていくようにすることもできる。接合部同士間の距離が縮まる程、エネルギー波は発生しやすくなるので、その分エネルギー波発生状態に維持しつつ真空度を高めることが可能になり、所定の洗浄が終了するまでエネルギー波発生状態を維持することが可能になる。プラズマ電極の構成は、上下どちらかの電極をカソード・アースとして切り替えることにより両面洗浄する方法と、チャンバ壁をアースとして上下どちらかの電極をカソードとして切り替えて両面洗浄する方法とがある。
【0016】
上記エネルギー波による洗浄では、接合部の接合される全表面で1nm以上の深さにエッチングすることが好ましい。このような深さ以上にエッチング可能なエネルギーのエネルギー波で洗浄することにより、接合部同士を常温接合する場合においても、接合に必要な表面性状を得ることが可能になる。
【0017】
本発明に係る接合方法は、とくに、表面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている接合部同士を接合する場合に好適である。たとえば、互いに接合される接合部の組み合わせとして、金、銅、Al、In、Snのいずれかの同種金属同士、あるいは任意の2つの異種金属同士、あるいは、一方を金とし他方を銅、Al、In、Snのいずれかとする組み合わせとすることができる。中でも、金同士の接合の場合、常温でも確実に接合できるようになる。ただし、金同士の接合以外の場合でも(たとえば、金/銅、金/アルミニウム等の接合等)、常温あるいはそれに近い低温での接合を可能とすることができる。また、少なくとも一方の金属接合部を特定の金属、たとえば金で構成する場合、金属接合部を形成する電極等の全体を金で構成することもできるが、表面だけを金で構成することもできる。表面を金で構成するための形態はとくに限定されず、金めっきの形態や金薄膜をスパッタリングや蒸着等により形成した形態を採用すればよい。
【0018】
上記接合部同士の接合に際し、表面同士が良好に密着できるように、少なくとも一方の接合部の表面硬度がビッカース硬度Hvで120以下、さらに好ましくはアニーリングにより硬度を100以下に下げたものがよい。たとえば、表面硬度Hvを30〜70の範囲内(たとえば、平均Hvを50)とすることが好ましい。このような低硬度としておくことで、接合荷重印加時に接合部の表面が適当に変形し、より密接な接合が可能となる。
【0019】
本発明に係る接合装置は、基材の表面に接合部を有する被接合物の前記接合部の表面を、チャンバ内において減圧下でエネルギー波により洗浄した後、接合部同士を接合する接合装置において、前記チャンバに、洗浄時にはチャンバ内をエネルギー波による洗浄に適した真空度に制御し、洗浄後接合前にはチャンバ内の真空度をさらに高めるように制御可能な真空度制御手段を接続したことを特徴とするものからなる。
【0020】
また、本発明に係る接合装置は、基材の表面に接合部を有する被接合物の前記接合部の表面を、チャンバ内において減圧下でエネルギー波により洗浄した後、接合部同士を接合する接合装置において、前記チャンバに、洗浄中にチャンバ内の真空度を高めていくように制御可能な真空度制御手段を接続したことを特徴とするものからなる。これら各装置において、基材の表面の接合部は、金属からなることが、つまり金属接合部であることが好ましい。
【0021】
このような本発明に係る接合装置においては、接合前に洗浄された接合部を加熱する手段(たとえば、接合手段に内蔵されたヒータ)を有することが好ましい。
【0022】
エネルギー波により洗浄する手段としてはプラズマ発生手段からなることが好ましく、中でも、RFプラズマ発生手段からなることが好ましい。
【0023】
また、真空度制御のためには、前記チャンバに、流量制御弁を備えた吸引路が接続されていることが好ましい。一つの吸引路に流量制御弁を設けて吸引流量を制御し、チャンバ内の真空度を制御することも可能であるが、流量制御弁は一般に高価であるので、極力小型の安価な流量制御弁を用いて所定の制御を行うことができるようにすることが好ましい、このためには、たとえば、前記チャンバに、吸引路が接続されており、該吸引路が流量制御弁を備えた吸引路(流量制御用)と流量制御弁を備えていない吸引路(大量吸引用)とに切換弁を介して分岐されている構造を採用し、該流量制御弁に比較的小型の安価なものを使用するようにすることが可能である。
【0024】
また、前述の如く、真空度制御手段により洗浄中にチャンバ内の真空度が高められていく形態とする場合には、接合部同士間の距離を縮めていく手段を有することが好ましく、これによって前述の如く、所定の洗浄が終了するまでエネルギー波の発生状態を維持することが可能になる。
【0025】
また、前記エネルギー波により洗浄する手段としては、接合部の接合される全表面で1nm以上の深さのエッチングが可能なエネルギー以上のエネルギー波を発生させる手段からなることが好ましい。
【0026】
また、接合される両接合部の表面金属種の組み合わせは、前述したように、金、銅、Al、In、Snのいずれかの同種金属同士、あるいは任意の2つの異種金属同士、あるいは、一方を金とし他方を銅、Al、In、Snのいずれかとする組み合わせとすることができる。中でも、金同士の組み合わせとする場合、接合が最も容易になる。
【0027】
また、少なくとも一方の接合部の表面硬度がビッカース硬度Hvで120以下、好ましくは100以下とされていることが好ましい。
【0028】
なお、本発明では、基本的に所定の洗浄を行った後、接合までの間に、真空度を高めることとしているが、必要に応じて、接合前に雰囲気をArガスや窒素ガスに置換してもよい。たとえば、接合部が金からなる場合のように、雰囲気の真空度が多少高められても問題が生じない場合には、このような形態を採ることが可能となる。
【0029】
上記のような本発明に係る接合方法および装置においては、エネルギー波による所定の洗浄後あるいは洗浄中に、真空度がさらに高められるので、接合表面に残っていた反応ガス成分や、浮遊していた不純物の大半が除去され、清浄な状態にて、表面活性化された接合部同士が良好に接合されることになる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る接合装置1を示している。本実施態様においては、互いに接合される被接合物として、一方はチップ2で他方は基板3である場合を例示している。チップ2上には電極を構成する複数の金属接合部4(図1には2つ示してある)が設けられており、基板3には対応する電極を構成する金属接合部5が設けられている。チップ2は一方の被接合物保持手段としてのチップ保持手段6に保持されており、基板3は他方の被接合物保持手段としての基板保持手段7に保持されている。本実施態様では、チップ保持手段6はZ方向(上下方向)に位置調整できるようになっており、基板保持手段7はX、Y方向(水平方向)および/または回転方向(θ方向)に位置調整できるようになっている。
【0031】
上記のような基板保持手段7は、一般には、平行移動および/または回転可能に装着されるが、必要に応じて、それらと昇降(Z方向移動)とを組み合わせた態様に装着してもよい。また、チップ保持手段6側についても、昇降動作のみならず、平行移動および/または回転動作を行うことができる装置形態であってもよい。
【0032】
なお、上記において、チップ2とは、たとえば、ICチップ、半導体チップ、光素子、表面実装部品、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、基板3と接合させる側の全てのものをいう。また、基板3とは、たとえば、樹脂基板、ガラス基板、フィルム基板、チップ、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、チップ2と接合される側の全てのものをいう。
【0033】
本実施態様では、チップ保持手段6において直接チップ2を保持する部分、および、基板保持手段7において直接基板3を保持する部分は、電極ツール8、9に構成されており、それぞれプラズマ発生用電極として機能可能に構成されている。本実施態様では、これら電極ツール8、9の一方にRFプラズマ発生用電源10が接続されており、他方は接地されている。RFプラズマ発生用電源10から、減圧条件下にて所定の高周波電圧が印加されることにより、電極ツール8、9間でチップ2の金属接合部4の表面および基板3の金属接合部5の表面に洗浄用のプラズマ11を照射することができるようになっている。
【0034】
RFプラズマで洗浄するに際し、本実施態様では、装置全体を囲むのではなく、対向配置されたチップ2と基板3、およびその周囲を局部的に囲むローカルチャンバ12が設けられている。チャンバ12内には、ガス供給手段13としてのポンプあるいは流量調整可能なマスフローコントローラにより、不活性ガス、たとえばArガスが供給される。そして、チャンバ12内を減圧するが、このとき真空度制御手段として、チャンバ12に接続された吸引路14が設けられている。この吸引路14に直接流量制御弁を設けてチャンバ12内の真空度を制御することも可能であるが、本実施態様では、切換弁15を介して吸引路14が流量制御弁16を備えた吸引路17と流量制御弁を備えていない吸引路18とに分岐されており、各吸引路17、18にそれぞれ吸引ポンプ19、20が設けられている。すなわち、大流量を吸引するときには吸引路18を用い、その後に小流量を吸引して所定の真空度に制御するときには吸引路17を用いることにより、比較的高価な流量制御弁16として小型かつ安価なものを採用することが可能になる。
【0035】
このような真空度制御手段を用いてチャンバ12内が所定の真空度に制御されるが、RFプラズマで洗浄する場合の真空度としては、1.3Pa以下、たとえば、1.3×102 Pa〜1.3Pa程度に制御され、洗浄後接合までの間に真空度を1.3Paよりも低い圧力として真空度を高めるよう制御される。洗浄時にあまり真空度を高めると、プラズマを発生させずらくなるので、上記真空度程度に制御して、プラズマを良好に発生させて良好なエッチング洗浄を行うことに重点を置く。プラズマ洗浄においては、接合表面の表面異物層を除去し十分に表面活性化するために、金属接合部の接合される全表面で1nm以上エッチングできるようにプラズマ強度、時間を設定することが好ましい。
【0036】
洗浄時には真空度をそれほど高めないので、多かれ少なかれ、反応ガス(この場合、Arガス)21が洗浄表面に残留したり雰囲気中に残留し、また、洗浄により飛ばされた不純物22が浮遊している。そこで、所定の洗浄後には、上述の真空度制御手段を用いてチャンバ12内の真空度をさらに高め、たとえば1.3Paよりも低い圧力として真空度を高める。吸引路14から、洗浄表面に残留していた反応ガス21や浮遊していた不純物22が排出、除去されるので、金属接合部の洗浄表面が、清浄で、かつ良好に表面活性化された状態に保たれ、後述の接合に供される。
【0037】
このとき、プラズマ洗浄中に、チャンバ12内の真空度を高めていくこともできる。ただし、この場合、真空度があるレベルよりも高くなると、プラズマを発生させずらくなるので、それを回避するためには、プラズマ電極8、9間の距離を縮めて、高真空度になってもプラズマが立つようにすればよい。チャンバ12にはベローズ等の伸縮自在のシール手段23が設けられているので、たとえばチップ保持手段6を下降させることによりプラズマ電極8、9間の距離を縮めながら、チャンバ12内に対するシール性を確保し、チャンバ12内の真空度を徐々に高めていくことが可能である。
【0038】
ここで真空度を高めるとは、圧力を低くする方向を指す。また、プラズマ電極の構成は、前述したように、上下どちらかの電極をカソード・アースとして切り替えることにより両面洗浄する方法と、チャンバ壁をアースとして上下どちらかの電極をカソードとして切り替えて両面洗浄する方法とがある。
【0039】
また、上記いずれの方法においても、所定の洗浄が終了した後、接合に入るまでの間に、なお若干の表面付着反応ガスや再付着した不純物等が残留している可能性がある。このような残留反応ガスや付着不純物をさらに除去するためには、金属接合部を加熱することが有効である。たとえば図1に示すように、チップ保持手段6や基板保持手段7にヒータ24、25を内蔵しておけば、ヒータ24、25による加熱により、残留反応ガスや付着不純物を飛ばすことが可能になり、それを吸引除去することにより、接合前に一層清浄な望ましい接合表面状態とすることができる。
【0040】
上記のように所定の洗浄が行われ、洗浄後にチャンバ12内が所定の真空度に高められた状態にて、接合が行われる。本実施態様では、接合前にまず両被接合物の相対位置が所定の精度に入るようにアライメントが行われ、その後に接合される。
【0041】
アライメントは、たとえば図2に示すように、認識手段26として、たとえば下方に挿入される赤外線カメラを用いて、基板3側およびチップ2側に付された認識マークを読み取り、両者の相対位置が所定の精度範囲内に納まるよう、基板保持手段7側の位置を制御することによって行われる。このアライメント時には、チップ2および基板3、さらにはそれらの保持手段6、7の温度は低下されているので、熱膨張に伴う精度悪化の問題は回避され、高精度のアライメントが可能になる。
【0042】
なお、認識マークの読み取りのために上記のように下方に赤外線カメラを配置する場合には、たとえば基板保持手段7側の基板保持部の背面側に赤外線を透過可能な部材(たとえば、バックアップガラス)をマーク読み取り範囲にわたって設けておき、その範囲を基板保持手段7の位置調整手段が遮らないように構成しておくことで、下方から基板3側およびチップ2側に付された両認識マークを読み取ることが可能となる。
【0043】
上記アライメント後に、たとえば図3に示すように、チップ保持手段6とともにチップ2が下降され、その電極4が基板3の電極5に圧着されて両者が接合される。このとき、接合面、つまり、チップ2の電極4の表面と基板3の電極5の表面は、前記プラズマ洗浄および洗浄後の高真空度制御により、極めて清浄な表面活性化された状態に保たれているので、敢えて特別な加熱を行う必要はなく、常温あるいはそれに近い低温にて、両接合面が原子レベルで強固に接合される。
【0044】
なお、本実施態様ではチップと基板を示したが、電極のないチップ同士やウエハー同士の接合にも本発明は適用でき、上下被接合物が金属以外の半導体やガラス、セラミック等の異種材料である場合もある。また、アライメントマークが無い場合には、外形でアライメントする場合もある。
【0045】
また、上記実施態様では剛体のチャンバ12と弾性体のシール手段23により実質的に密閉された、真空度制御用のローカルチャンバを形成するようにしたが、このローカルチャンバの形成構造は特に限定されない。たとえば図4に示すような構成を採用することもできる。
【0046】
図4に示す接合装置においては、図1に示した態様と同様に、電極ツール8、9間でチップ2の金属接合部4の表面および基板3の金属接合部5の表面に電極を切り替えることにより洗浄用のプラズマを照射することができるようになっている。チップ保持手段6および基板保持手段7には、ヒーターが内蔵されて少なくとも一方の電極ツールを介して被接合物を加熱可能となっており、かつ、静電チャック手段を備え少なくとも一方の被接合物を静電気的に保持することができるようになっている。ヒーターおよび静電チャック手段については図示を省略してある。図4における30aは基板保持手段7側に内蔵された静電チャック用の電極端子、31aはプラズマ電極用の端子、32aはヒーター用の端子をそれぞれ示しており、電極コネクター33aを介して給電されるようになっている。パターンとしては、表層から静電チャック、プラズマ電極、ヒーターとなっていることが好ましい。同様に、30bはチップ保持手段6側に内蔵された静電チャック用の電極端子、31bはプラズマ電極用の端子、32bはヒーター用の端子、33bは給電用の電極コネクターを、それぞれ示している。
【0047】
本実施態様では、両被接合物2、3の周囲には、一方の被接合物保持手段(本実施態様では基板保持手段7)に当接するまで移動して内部に両被接合物2、3を閉じ込める局部的な密閉空間を持つローカルチャンバ構造(図4に2点鎖線にてローカルチャンバ34を示す。)を形成することが可能で、かつ、上記当接状態にて、前記被接合物保持手段(本実施態様ではチップ保持手段6)の移動に追従してローカルチャンバ34の容積を縮小する方向(本実施態様では下降方向への移動)に移動可能な可動壁35が設けられている。この可動壁35は、筒状の剛体壁構造に構成されており、可動壁上昇ポート36、可動壁下降ポート37および内部シール機構38を備えたシリンダ手段39により、図1の上下方向に移動可能となっている。可動壁35の先端部には、弾性変形可能なシール材40が設けられており、上記当接状態にて、ローカルチャンバ34内部を外部に対してより確実にシール、密閉することができるようになっている。
【0048】
基板保持手段7側には、上記のように形成されるローカルチャンバ34に対し、該ローカルチャンバ34内を減圧して所定の真空状態にする真空吸引手段としての真空ポンプ41が接続されている。ローカルチャンバ34内の空気あるいはガスは、吸引路42を通して真空ポンプ41により吸引される。また、この吸引路42とは別に、あるいはこの吸引路42と兼用させて、基板保持手段7側にはアルゴンガス(Arガス)などの特定の不活性ガスをローカルチャンバ34内に供給するガス供給路43が設けられている。そして、上記吸引路42に対して、図1に示したのと同様の真空度制御手段が接続され、本発明に係る真空度制御を行うことができるようになっている。このような可動壁35を備えたローカルチャンバ構成においても本発明を実施でき、前述の実施態様と同様の作用、効果が得られる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る接合方法および装置によれば、エネルギー波による接合表面洗浄時には洗浄に最適な真空度に制御し、洗浄後あるいは洗浄中にに真空度を高めて、より清浄な良好に表面活性化された状態の接合部を接合工程に供することができるようにしたので、一層良好な接合状態を得ることができるようになり、常温あるいはそれに近い温度での接合までを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る接合装置の概略構成図である。
【図2】図1の接合装置におけるアライメント工程を示す概略構成図である。
【図3】図1の装置における接合工程を示す概略構成図である。
【図4】本発明の別の実施態様に係る接合装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 接合装置
2 チップ
3 基板
4 チップの電極(金属接合部)
5 基板の電極(金属接合部)
6 チップ保持手段
7 基板保持手段
8、9 電極ツール
10 プラズマ発生用電源
11 プラズマ
12 チャンバ
13 ガス供給手段
14 吸引路
15 切換弁
16 流量制御弁
17、18 吸引路
19、20 吸引ポンプ
21 反応ガス
22 不純物
23 シール手段
24、25 ヒータ
26 認識手段
30a、30b 静電チャック用の電極端子
31a、31b プラズマ電極用の端子
32a、32b ヒーター用の端子
33a、33b 電極コネクター
34 ローカルチャンバ
35 可動壁
36 可動壁上昇ポート
37 可動壁下降ポート
38 内部シール機構
39 シリンダ手段
40 シール材
41 真空ポンプ
42 吸引路
43 ガス供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、減圧下で前記接合部の表面をエネルギー波により洗浄した後接合部同士を接合する接合方法であって、洗浄に適した所定の真空度にて洗浄を行った後、さらに真空度を高めてから接合部同士を接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、減圧下で前記接合部の表面をエネルギー波により洗浄した後接合部同士を接合する接合方法であって、洗浄中に真空度を高めていくことを特徴とする接合方法。
【請求項3】
前記接合部が金属である、請求項1または2の接合方法。
【請求項4】
前記洗浄後接合までの間に加熱する、請求項1〜3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記エネルギー波としてプラズマを用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記エネルギー波としてRFプラズマを用いる、請求項5の接合方法。
【請求項7】
前記洗浄時の真空度を1.3Paよりも高い圧力とし、洗浄後接合までの間に真空度を1.3Paよりも低い圧力とする、請求項1〜6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記洗浄前に真空度を1.3Paよりも低い圧力とした後、不活性ガスを導入することにより真空度が1.3Paよりも高い圧力となるように増圧して洗浄する、請求項1〜7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記洗浄中に真空度を高めつつ、接合部同士間の距離を縮めていく、請求項2〜8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記エネルギー波による洗浄により、前記接合部の接合される全表面で1nm以上の深さにエッチングする、請求項1〜9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
表面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている接合部同士を接合する、請求項1〜10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
少なくとも一方の接合部の表面硬度をビッカース硬度Hvで120以下にする、請求項1〜11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
基材の表面に接合部を有する被接合物の前記接合部の表面を、チャンバ内において減圧下でエネルギー波により洗浄した後、接合部同士を接合する接合装置において、前記チャンバに、洗浄時にはチャンバ内をエネルギー波による洗浄に適した真空度に制御し、洗浄後接合前にはチャンバ内の真空度をさらに高めるように制御可能な真空度制御手段を接続したことを特徴とする接合装置。
【請求項14】
基材の表面に接合部を有する被接合物の前記接合部の表面を、チャンバ内において減圧下でエネルギー波により洗浄した後、接合部同士を接合する接合装置において、前記チャンバに、洗浄中にチャンバ内の真空度を高めていくように制御可能な真空度制御手段を接続したことを特徴とする接合装置。
【請求項15】
前記接合部が金属である、請求項13または14の接合装置。
【請求項16】
接合前に洗浄された接合部を加熱する手段を有する、請求項13〜15のいずれかに記載の接合装置。
【請求項17】
前記エネルギー波により洗浄する手段がプラズマ発生手段からなる、請求項13〜16のいずれかに記載の接合装置。
【請求項18】
前記エネルギー波により洗浄する手段がRFプラズマ発生手段からなる、請求項17の接合装置。
【請求項19】
前記チャンバに、流量制御弁を備えた吸引路が接続されている、請求項13〜18のいずれかに記載の接合装置。
【請求項20】
前記チャンバに、吸引路が接続されており、該吸引路が流量制御弁を備えた吸引路と流量制御弁を備えていない吸引路とに切換弁を介して分岐されている、請求項13〜18のいずれかに記載の接合装置。
【請求項21】
前記真空度制御手段により洗浄中にチャンバ内の真空度が高められていく際に、接合部同士間の距離を縮めていく手段を有する、請求項14〜20のいずれかに記載の接合装置。
【請求項22】
前記エネルギー波により洗浄する手段が、前記接合部の接合される全表面で1nm以上の深さのエッチングが可能なエネルギー以上のエネルギー波を発生させる手段からなる、請求項13〜21のいずれかに記載の接合装置。
【請求項23】
接合される両接合部の表面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている、請求項13〜22のいずれかに記載の接合装置。
【請求項24】
少なくとも一方の接合部の表面硬度がビッカース硬度Hvで120以下とされている、請求項13〜23のいずれかに記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−134900(P2006−134900A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−346111(P2002−346111)
【出願日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】