説明

接合装置および製造方法

【課題】全面にわたって均一な条件で、効率よく安全に基板を接合する。
【解決手段】一対の基板を接合する接合装置であって、一方の基板の位置を検出して、検出した位置に基づいて、前記一方の基板が他方の基板に近接する方向及び前記一方の基板が前記他方の基板から離反する方向への前記一方の基板の移動を制御する位置制御部と、前記一対の基板が所定の大きさの間隔以下の大きさの間隔で互いに近接していること、または、前記一対の基板が互いに接触していることを検出する近接検知部と、近接検知部が前記一対の基板の近接または接触を検知した後に、前記一対の基板の間で作用する圧力を検出し、当該圧力が所与の目標圧力に到達するまで、前記一方の基板を前記他方の基板に向けて加圧する圧力制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置および製造方法に関する。より詳細には、ウエハ等の基板を貼り合わせる場合に用いる接合装置と、当該接合装置を用いた接合基板の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の実効的な実装密度を向上させる技術のひとつとして、複数のチップを積層させた構造がある。特に、パッケージング前のチップを積層した積層チップ半導体モジュールは、実装基板上のチップの実装密度向上に止まらず、チップ相互の配線を短縮して高速な処理も実現している。
【0003】
積層チップ半導体モジュールを製造する場合には、チップ単位で接合するよりも、ウエハ単位で接合した後にチップを切り分ける手順の方が生産性は高い。ただし、チップに比較して面積の広いウエハを接合する場合には、ウエハ全体を均一な条件の下に圧接して接着することが求められる。そこで、接合する基板の微小な傾き、圧力の分布等を解消する技術が求められている。
【0004】
下記の特許文献1には、球面摺動部材を有する倣い機構を設けて、基板を自律的に水平にさせるボンディング装置が記載されている。また、下記の特許文献2には、互いに軸が交差する円筒面を介して支持された載置台を備え、載置した基板を自律的に水平にさせるボンディング装置が記載されている。更に、下記の特許文献3には、個別に動作する複数のアクチュエータにより支持したステージを備え、半導体基板の傾きを調整する基板保持装置が記載されている。
【特許文献1】特開平03−179757号公報
【特許文献2】特開平05−090341号公報
【特許文献3】特開2007−035669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接合対象の傾き等を調整する機能を有する接合装置を用いた場合においても、傾きを調整して圧力分布を均一にする作業に時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の第1の形態として、一対の基板を接合する接合装置であって、一方の基板の位置を検出して、検出した位置に基づいて、一方の基板が他方の基板に近接する方向及び一方の基板が他方の基板から離反する方向への一方の基板の移動を制御する位置制御部と、一対の基板が所定の大きさの間隔以下の大きさの間隔で互いに近接していること、または、一対の基板が互いに接触していることを検出する近接検知部と、近接検知部が一対の基板の近接または接触を検知した後に、一対の基板の間で作用する圧力を検出し、当該圧力が所与の目標圧力に到達するまで、一方の基板を他方の基板に向けて加圧する圧力制御部とを備える接合装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の形態として、一対の基板を接合して接合基板を製造する接合基板の製造方法であって、一方の基板の位置を検出して、一方の基板の位置が目標位置に到達するまで、一方の基板を他方の基板に対して近接移動させ、一対の基板が十分に近接していること、または、接触していることを検出し、一対の基板の近接または接触を検知した後に、一対の基板の間で作用する圧力を検出し、当該圧力が所与の目標圧力に到達するまで、一方の基板を他方の基板に向けて加圧する製造方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決に必須であるとは限らない。
【実施例】
【0010】
図1は、ウエハ162、164を均一な圧力で重ね合わせる場合に用いる接合装置100の構造を模式的に示す断面図である。接合装置100は、枠体110の内側に配置された、加圧部120、加圧ステージ130、受圧ステージ140、圧力検知部150を備える。
【0011】
枠体110は、互いに平行で水平な天板112および底板116と、天板112および底板116を結合する複数の支柱114とを備える。天板112、支柱114および底板116は、それぞれ剛性が高い材料により形成され、後述する接合におけるウエハ162、164への加圧の反力が作用した場合も変形が生じない。
【0012】
枠体110の内側において、底板116の上には、加圧部120が配置される。加圧部120は、底板116の上面に固定されたシリンダ122と、シリンダ122の内側に配置されたプランジャ124とを有する。プランジャ124は、図示されていない流体回路、カム、輪列等により駆動されて、図中に矢印Zにより示す、底板116に対して直角な方向に昇降する。
【0013】
プランジャ124の上端には、加圧ステージ130が搭載される。加圧ステージ130は、プランジャ124の上端に結合された水平な板状の支持部132と、支持部132に平行な板状の基板保持部134とを有する。支持部132は、上方に開口して形成された球面座131を上面中央に有する。一方、基板保持部134は、下方に向かって突出した球面部133を、下面中央に有する。
【0014】
球面座131および球面部133は互いに相補的な形状および寸法を有して嵌合する。これにより、基板保持部134は、支持部132の上で傾斜角度を変えることができる。また、支持部132の上で基板保持部134の傾斜角度が変わった場合も、プランジャ124が支持部132を押上げる力が基板保持部134に伝達される。更に、支持部132は、基板保持部134の変位を下方から規制して、基板保持部134が過剰に傾斜することを防止する。
【0015】
なお、基板保持部134は、静電吸着、負圧吸着等により上面にウエハ162を吸着する。これにより基板保持部134に吸着されたウエハ162は、基板保持部134と共に揺動する一方、基板保持部134からの移動あるいは脱落が抑制される。
【0016】
受圧ステージ140は、基板保持部142および複数の懸架部144を有する。懸架部144は、天板112の下面から垂下される。基板保持部142は、懸架部144の下端近傍において下方から支持され、加圧ステージ130に対向して配置される。また、基板保持部142も、静電吸着、負圧吸着等による吸着機構を有し、下面にウエハ164を吸着する。
【0017】
基板保持部142は、下方から懸架部144により支持される一方、上方への移動は規制されない。ただし、天板112および基板保持部142の間には、複数のロードセル152、154、156が挟まれる。複数のロードセル152、154、156は、圧力検知部150の一部を形成して、基板保持部142の上方移動を規制すると共に、基板保持部142に対して上方に印加された圧力を検出する。
【0018】
図1に示された状態は、後述する接合装置100の動作のうち、初期の状態に相当する。この状態では、加圧部120の支柱114はシリンダ122の中に引き込まれており、加圧ステージ130は降下した状態にある。従って、加圧ステージ130および受圧ステージ140の間には広い間隙がある。
【0019】
接合の対象となる一対のウエハ162、164のうち、一方のウエハ162は、上記間隙に対して側方から挿入されて、加圧ステージ130の上に載せられる。他方のウエハ164も同様に挿入され、ウエハ162に対向して受圧ステージ140に保持される。ウエハ162、164の対面する接合面のうち、少なくとも一方の接合面には接着樹脂としての熱硬化性樹脂を塗布されている。また、ウエハ162、164は、Z方向に直交する平面内で相互に位置合わせされている。
【0020】
図2は、圧力検知部150におけるロードセル152、154、156のレイアウトを示す斜視図である。圧力検知部150は、天板112の下面に固定された複数のロードセル152、154、156を含む。ロードセル152、154、156の各々は、天板112から上方へ向けて圧力が印加された場合に、当該圧力に比例した電気信号を出力する。従って、加圧ステージ130の上昇によりウエハ162がウエハ164に接触した場合、いずれかのロードセル152、154、156が当該接触により生じた圧力を検知する。
【0021】
また、ロードセル152、154、156は、天板112の下面において、互いに異なる位置に配置される。従って、天板112と平行な面内における圧力分布も併せて検出できる。ここで、既に説明した通り、加圧部120はプランジャ124により加圧ステージ130を押し上げる。従って、圧力検知部150により圧力分布が検出された場合は、加圧ステージ130が受圧ステージ140に対して異なる傾斜を有することを意味する。このような圧力検知部150の機能に鑑みて、ロードセル152、154、156の数は、3基に限られることはないが、3基以上であることが好ましい。
【0022】
図3は、接合装置100において使用する位置検出機構200の構造を示す斜視図である。位置検出機構200は、一対の撮像部212、222と、一対の照明部214、224とを備える。
【0023】
一方の撮像部212は、ウエハ162、164の接合面と平行な面内において、一方の照明部214と対向して配置される。撮像部212は、コネクタ216を介して、撮像した画像を外部へ送り出す。照明部214は、電源ケーブル218を介して電力の供給を受ける。同様に、他方の撮像部222は、ウエハ162、164の接合面と平行な面内において、一方の照明部224と対向して配置される。撮像部222も、コネクタ226を介して、撮像した画像を外部へ送り出す。照明部224は、電源ケーブル228を介して電力の供給を受ける。なお、説明の便宜上、以下の説明では、撮像部212および照明部214の配列方向をX方向、撮像部222および照明部224の配列方向をY方向と記載する。
【0024】
図4は、位置検出機構200の側面図である。照明部214が出射した照明光は、ウエハ162、164の間隙を伝播して撮像部212に受光される。また、照明部224が出射した照明光も、ウエハ162、164の間隙を伝播して撮像部222に受光される。換言すれば、撮像部212、222の各々は、照明部214、224の出射した照明光を遮るウエハ162、164の像を撮像する。従って、撮像部212、222が撮像した画像から、ウエハ162、164のそれぞれの位置を検出できる。
【0025】
また、例えば、ウエハ162がY方向の軸の回りに回転して傾斜している場合は、傾斜したウエハ164の画像が撮像部212により撮像される。これにより、加圧ステージ130が移動した場合に生じ得るウエハ162の傾斜を検出することができる。
【0026】
更に、ウエハ162、164が相互に接触した場合は、ウエハ162、164の間で照明光が遮られる。従って、撮像部212、222のいずれかが撮像した画像から、ウエハ162、164の接触を検知することもできる。
【0027】
ただし、撮像部212、222の解像度は、その光学系および撮像素子の解像度に依存する。従って、ウエハ162、164の間隙が撮像部212、222の解像度よりも小さい場合は、ウエハ162、164が接触したタイミングと接触検知のタイミングとがずれる場合がある。しかしながら、撮像部212、222が検知できない間隙は非常に狭いので、ウエハ162、164の間隙を撮像できなくなった場合は、ウエハ162、164が接触したと看做しても差し支えない。
【0028】
なお、図3および図4に示した構造は位置検出機構200の一例に過ぎず、他の構造で同様の機能を形成することもできる。例えば、撮像部212、222に換えて干渉計を用いることにより、より分解能の高い位置検出機構200を形成できる。一方、リニアスケールを用いて、より簡潔な位置検出機構200を形成することもできる。これらの種々の構造は、目的とする接合ウエハまたは接合基板の仕様に応じて当業者が適宜選択できる。
【0029】
図5は、接合装置100の制御系300の構造を模式的に示す図である。制御系300は、位置検出機構200を含む接合装置100に対して設けられた、圧力制御部310、位置制御部320、近接検知部330および制御切替部340を含む。
【0030】
接合装置100は、加圧ステージ130および受圧ステージ140の基板保持部134、142の各々に、ウエハ162、164を保持する。また、位置検出機構200は、接合装置100に保持されたウエハ162、164の側方に配置される。
【0031】
圧力制御部310は、圧力検知部150が検出した圧力を参照して、加圧部120の駆動量を制御する制御信号を発生する。従って、圧力制御部310の制御により、圧力検知部150が検出する圧力が所与の目標圧力に到達するまで、加圧部120を動作させることができる。
【0032】
位置制御部320は、目標位置設定部322および目標位置更新部324を有する。目標位置設定部322は、位置検出機構200が検出したウエハ162、164の位置を参照して、位置検出機構200が検出したときのウエハ162の位置よりもウエハ164に近い位置に目標位置を設定する。位置制御部320は、ウエハ162が当該目標位置に到達するまで、加圧部120を動作させて、ウエハ162を上昇させる。
【0033】
目標位置更新部324は、既に目標位置に到達しているウエハ162がウエハ164に未だ接触していない場合に、既に設定された目標位置よりもウエハ164に近接した位置に新しい目標位置を設定する。これにより、位置制御部320は、更新された目標位置にウエハ162が到達するまで、引き続き加圧部120を動作させる。こうして、ウエハ162、164が相互に接触するまですなわちウエハ162がウエハ164に接触する位置と目標位置とが一致するまで、目標位置更新部324は目標位置を更新し、位置制御部320は、加圧部120を動作させてウエハ162を上昇させる。
【0034】
近接検知部330は、位置制御部320を介して位置検出機構200の出力を参照して、ウエハ162、164の接触を検出する。具体的には、近接検知部330は、位置検出機構200の撮像部212,222から出力される画像に基づいて、両ウエハ162,164の中央部間の距離とウエハ164に対するウエハ162の傾斜角度とを検出し、検出した距離及び傾斜角度から、ウエハ162の縁部のウエハ164に最も近接した部分とウエハ164との間隔を算出し、算出した該間隔の大きさが所定の大きさ以下であるかを判断し、前記間隔の大きさが所定の大きさ以下である場合、両ウエハ162,164が互いに近接していると判断する。近接検知部330は、近接を検出した場合は、その旨を制御切替部340に通知する。ただし、近接検知部330が検知する「近接」は、例えば、ウエハ162、164の間隔が位置検出機構200の分解能を越えて狭くなった場合である。この場合、ウエハ162、164が相互に当接している場合も含まれる。
【0035】
なお、例えば、位置検出機構200の撮像部212、222としてCCDカメラを用いた場合の分解能は0.6μm程度になる。また、接合するウエハ162、164の表面には、予め判明しているTTV(総合膜厚分散性)に応じた起伏がある。従って、ウエハ162、164の間隔が、これらの要素を勘案した位置検出機構200の検出限界に近づいた場合、ウエハ162を上昇させる速度を低下させることが好ましい。
【0036】
具体的には、撮像部212、222の分解能の限界よりも僅かに大きな間隔を閾値として設定し、ウエハ162、164の間隔が当該閾値よりも狭くなった場合に、位置制御部320の制御下で加圧部120によるウエハ162の上昇速度を低下させてもよい。これにより、ウエハ162、164が接触した場合に生じる衝撃を緩和できる。
【0037】
制御切替部340は、圧力制御部310および位置制御部320が出力する制御信号のいずれか一方を選択的に有効にして、加圧部120の動作量を制御する。制御信号を切り替えるタイミングは、制御切替部340が近接検知部330から受ける通知に依存する。これにより、制御切替部340は、近接検知部330がウエハ162、164の接触を検知した後に、加圧部120の動作制御を、位置制御部320による制御から圧力制御部310による制御に切り替える。
【0038】
図6は、次の動作段階における接合装置100の状態を示す断面図である。この状態では、加圧部120が動作して、加圧ステージ130が上昇している。これにより、ウエハ162、164は相互に接触している。
【0039】
ただし、この例では、ウエハ162が加圧ステージ130と共に傾斜している。このため、ウエハ162、164は縁部の一部で接触し、相互に密着していない。なお、ウエハ162を加圧ステージ130に載せたときにウエハ162が水平になるように調整しても、加圧部120が動作した場合に傾斜が生じる場合もある。
【0040】
図7は、更に次の動作段階における接合装置100の状態を示す断面図である。この状態では、加圧ステージ130が図6に示された位置から更に上昇し、ウエハ162、164は相互に密着している。従って、加圧ステージ130はこれよりも上方に移動することはない。
【0041】
ただし、ウエハ162、164に挟まれた接着樹脂の状態が安定するまでは、達成された目標圧力が維持される。このため、加圧ステージ130の上昇が終わった後も、目標圧力を維持する加圧部120の動作は継続される。
【0042】
このようにして接合されたウエハ162、164には、接合された状態を維持するホルダ等が装着され、接合ウエハの半完成品として次工程に送られる。次工程では、加圧により接合状態を維持したままウエハ162、164が加熱され、これにより接着樹脂が硬化され、接合ウエハが完成する。なお、接合装置100の基板保持部134、142に加熱装置を組み込んで、接合に引き続いて接着樹脂を硬化させることもできる。
【0043】
図8は、接合装置100を用いた接合工程の手順を示すフローチャートである。接合装置100によるウエハ162、164の接合が開始された当初、制御切替部340は、位置制御部320の制御により加圧部120を動作させる。これにより、加圧部120は位置制御により加圧ステージ130を駆動する。
【0044】
即ち、位置制御部320は、撮像部212、222が検出した映像を参照してウエハ162、164のそれぞれの位置を検出する。目標位置設定部322は、検出されたウエハ162、164の位置を参照して、加圧ステージ130に搭載されたウエハ162の現在の位置に対して、受圧ステージ140に保持されたウエハ164の位置により近い目標位置を設定する(ステップS101)。位置制御部320は、設定された目標位置に加圧ステージ130を移動させるべく加圧部120を動作させる。
【0045】
ウエハ164が当該目標位置に到達すると(ステップS103)、位置制御部320において、目標位置更新部324は、近接検知部330の出力を参照する。ここで、ウエハ162、164が依然として離れている場合(ステップS104;NO)、目標位置更新部324は、目標位置設定部322に新しい目標位置を設定させる。新しい目標位置は、その時点のウエハ162の位置よりもウエハ164に近い。
【0046】
なお、位置制御部320は、上記の位置制御において、一対のウエハ162、164が近接するほど近接移動の速度を小さくすることが好ましい。これにより、ウエハ162、164が接触した瞬間に大きな衝撃が生じることが防止される。
【0047】
一方、ウエハ162、ウエハ164の間隔が、撮像部212、222の分解能の限界を越えて近接した場合(ステップS104;YES)は、近接検知部330がその旨を通知して、制御切替部340が圧力制御部310を有効にする(ステップS105)。これにより、以後、加圧部120は圧力制御の下に動作する。なお、圧力制御部310が有効になった後は、位置制御は無効になるので、位置制御部320の動作を停止してもよい。
【0048】
圧力制御部310は、ウエハ162、164を接合する場合に加圧部120がウエハ162に印加することが求められる圧力を目標圧力として、圧力検知部150が検知する圧力を参照しつつ加圧部120を動作させ、ウエハ162を加圧する(ステップS106)。換言すれば、検出される圧力が目標圧力に達しない場合(ステップS107;NO)は、継続して加圧部120を動作させる。
【0049】
ここで、加圧部120は、当初から接合に求める圧力を印加するのではなく、圧力制御部310は、圧力検知部150の出力を参照して、ウエハ162、164に印加される押圧力が小さい場合には押圧力の増加の度合いを小さくし、押圧力が大きくなるにつれて押圧力を大きく増加させるように、加圧部120の作動を制御してもよい。このような増圧量の制御により、図6に示したようにウエハ162、164が密着していない場合に、ウエハ162、164の一部に偏った大きな押圧力が印加されることが防止される。
【0050】
圧力検知部150により目標圧力が検知された場合(ステップS107;NO)、圧力制御部310は、ウエハ162、164に挟まれた接着樹脂の状態が安定するまで、加圧部120がその圧力を維持するように制御する(ステップS108)。
【0051】
こうして、一対のウエハ162、164を接合して接合ウエハを製造する製造方法であって、一方のウエハ164の位置を検出して、他のウエハ162の位置が目標位置に到達するまで、当該ウエハ162を他方のウエハ164に対して近接移動させ、一対のウエハ162、164が十分に近接していること、または、接触していることを検出し、十分に近接していること、または、接触していることが検知された場合は、一対のウエハ162、164の間で作用する圧力を検出し、その圧力が所与の目標圧力に到達するまで、一方のウエハ162を他方のウエハ164に向けて加圧する製造方法が実行される。
【0052】
図9は、図8に示した手順のうちのステップS106に換えて実行できる手順を示す部分的なフローチャートである。なお、説明の便宜を図って、図8に示すステップS105およびステップS107を重複して記載するが、それ以前および以後のステップは図8と共通なので重複する説明は省く。
【0053】
既に説明した通り、近接検知部330がウエハ162、164の接触または近接を検出した場合、制御切替部340は、加圧部120の制御を圧力制御部310に切り替える(ステップS105)。これにより、加圧部120は圧力制御の下に加圧ステージ130を駆動する。
【0054】
しかしながら、図6に示したように、この段階ではウエハ162、164が密着しているとは限らず、接合に求められる大きな圧力を印加すると、ウエハ162、164の間の空隙が急速に閉じて、ウエハ162、164に衝撃が加わる場合がある。そこで、圧力制御に切り替わった当初は、圧力制御部310の目標圧力を小さく設定して加圧部120を動作させる(ステップS201)。これにより、ウエハ162、164に生じ得る衝撃を小さくする。
【0055】
続いて、圧力検知部150を形成する複数のロードセル152、154、156の各々が検出する圧力を比較する。ここで検出された圧力に偏りが無くなると(ステップS202;YES)、圧力制御部310は、目標圧力を接合に求められる大きな圧力に切り替えて圧力制御を継続する(ステップS203)。
【0056】
このような段階(ステップS201〜ステップS203)を導入することにより、ウエハ162、164に加わり得る衝撃を軽減し、ウエハ162、164の損傷等を未然に防止できる。なお、ロードセル152、154、156の各々が検出する圧力が相互に異なる期間(ステップS202;NO)は、圧力制御部310は、小さな目標圧力により加圧部120の動作を制御する。
【0057】
このような一連の制御による接合方法は、Si単結晶の接合の他、化合物半導体基板等の他の材料の基板、あるいは、Si単結晶基板および化合物半導体基板の組み合わせのように異種の基板を接合する場合にも適用できる。また、素子、回路等を既に形成された基板を接合して積層チップ等を製造する場合にも適用できる。
【0058】
なお、上記の実施形態において、近接検知部330は、位置検出機構200の出力を参照してウエハ162、164の近接を検知していた。しかしながら、例えば、圧力検知部150の出力を参照してウエハ162、164の接触圧を検知することによりウエハ162、164の近接を検出する近接検知部330とすることもできる。
【0059】
この場合、近接検知部330は、撮像部212、222の解像度に関わりなくウエハ162、164の近接を検知できる。ただし、ウエハ162、164が相互に接触した場合の衝撃を緩和する目的で、撮像部212、222によりウエハ162、164の間隙の変化を観察して、接触が間近になった場合にウエハ162の上昇速度を低下させることも好ましい。
【0060】
図10は、他の実施例に係る接合装置100の構造を模式的に示す断面図である。なお、接合装置100は、以下に説明する部分を除いて、図1に示した接合装置100と同じ構造を有する。そこで、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0061】
この接合装置100において、基板保持部134は、球面座131および球面部133に換えて、複数のアクチュエータ135を介して、支持部132から支持される。アクチュエータ135は、図示された一対のアクチュエータ135の他に、紙面に対して前方および後方にも配置される。
【0062】
また、これらアクチュエータ135の各々は、位置制御部320及び圧力制御部310の制御下で、相互に独立して動作する。このような構造により、アクチュエータ135を適宜動作させることにより、基板保持部134の傾斜を任意に変えることができる。基板保持部134の傾斜は、図5に示したように配置された撮像部212、222から得られる映像を監視しながら変更される。
【0063】
なお、接合装置100における撮像部212、222の撮像範囲Mを、図中に点線で示す。図示のように、ウエハ162を基板保持部134に載せた当初は、ウエハ162は、撮像部212、222の画角からはずれている。一方、ウエハ164は、当初より撮像範囲Mに入っている。
【0064】
図11は、接合装置100が動作し始めた状態を示す断面図である。加圧部120が動作して支持部132および基板保持部134が上昇すると、やがて、ウエハ162が撮像範囲Mに入る。これにより、撮像部212、222の映像を監視しながら、ウエハ162、164の接合を実行できる。
【0065】
換言すれば、ウエハ162が撮像部212、222に撮像されるまでは、ウエハ162、164が相互に当接することはない。従って、ウエハ162が撮像部212、222に撮像されるまでの間は、支持部132および基板保持部134を高速に上昇させても差し支えない。
【0066】
一方、ウエハ162が撮像部212、222に撮像され始めた場合は、支持部132および基板保持部134の上昇速度を低下させることが好ましい。これにより、接合装置100の動作を確実に制御でき、ウエハ162、164が不用意に衝突することが防止される。
【0067】
図12は、撮像部212、222が撮像した画像を監視しつつ実行される接合作業を、作業段階を追って示す図である。図12(A)に示すように、撮像範囲Mにウエハ162が入ると、画像による監視が開始される。ここで、図12(B)に示すように、ウエハ162に傾きが生じている場合は、撮像部212,222が撮像した画像に基づいて位置制御部320の制御下でアクチュエータ135を動作させてウエハ162を水平にする。これにより、ウエハ164へのウエハ162の移動とウエハ162の傾動とを同時に行うことができるので、ウエハ162の傾動を例えばウエハ162の移動を一旦停止した状態で行う場合に比べて、ウエハ162が上昇し始めてからウエハ164に近接するまでの時間をより短縮することができる。
【0068】
ウエハ162が水平になった後は、図12(C)に示すように、引き続き位置制御部320の制御の下にウエハ162を上昇させる。やがて、図12(D)に示すように、撮像部212、222の解像度の限界までウエハ162がウエハ164に近接した場合は、加圧部120の制御を圧力制御部310に切り替える。こうして、ウエハ162およびウエハ164を接合できる。
【0069】
なお、加圧部120の制御が圧力制御部310に切り替わった後も、ロードセル152、154、156の検出した圧力を参照してアクチュエータ135の動作を制御してもよい。これにより、ウエハ162の面内に圧力分布が生じた場合に、当該圧力分布を補償して、ウエハ162、164を全面にわたって均一に接合させることができる。
【0070】
図10乃至図12に示す例では、支持部132および基板保持部134を高速で上昇させた後、ウエハ162が撮像部212、222の撮像範囲M内に入ったときに支持部132および基板保持部134の上昇速度を低下させる例を示したが、これに代えて、支持部132および基板保持部134を高速で上昇させた後、ウエハ162が撮像部212、222の撮像範囲M内に入ったとき、位置制御部320の制御下で、ウエハ162がウエハ164に平行になるようにアクチュエータを作動させると同時に、支持部132および基板保持部134の上昇速度を低下させることなく高速でウエハ162を上昇させ、撮像部212、222の解像度が限界に達した後、加圧部120の制御を圧力制御部310に切り替えると同時に支持部132および基板保持部134の上昇速度を低下させることができる。
【0071】
この場合、ウエハ162が上昇し始めてからウエハ164に近接するまでの時間をより短縮することができるので、一組のウエハ162,164を互いに接合するのに費やされる時間をより確実に短縮することができる。
【0072】
図10乃至図12に示す例及び上記した変形例において、図12(D)に示す状態で加圧部120の制御を圧力制御部310に切り替えた後、支持部132および基板保持部134の上昇速度を更に低下させるように加圧部120の作動を圧力制御部310で制御することができる。この場合、ウエハ162からウエハ164に作用する力によって各ウエハ162,164に破損が生じることを、より確実に防止することができる。
【0073】
また、図10乃至図12に示す例では、基板保持部134が、球面座131および球面部133に換えて、複数のアクチュエータ135を介して、支持部132に支持された例を示したが、これに代えて、基板保持部134を球面座131及び球面部133に加えて複数のアクチュエータ135を介して支持部132に支持させることができる。
【0074】
本実施例では、単一のウエハ162、164同士を互いに重ね合わせる例を示したが、これに代えて、例えば複数のウエハを互いに接合することにより形成される積層体とウエハとを互いに接合するために本発明に係る接合装置100を用いることができ、また、前記積層体同士を互いに重ね合わせるために本発明に係る接合装置100を用いることができる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。また、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。更に、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】接合装置100の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】圧力検知部150におけるロードセル152、154、156のレイアウトを示す図である。
【図3】位置検出機構200の構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】位置検出機構200の側面図である。
【図5】接合装置100の制御系300の構造を模式的に示す図である。
【図6】ひとつの動作段階における接合装置100の状態を示す断面図である。
【図7】他の動作段階における接合装置100の状態を示す断面図である。
【図8】接合装置100を用いた接合工程の手順を示すフローチャートである。
【図9】図8に示した手順の一部に換えて実行できる制御手順を示す部分的なフローチャートである。
【図10】他の実施例に係る接合装置100の構造を模式的に示す断面図である。
【図11】接合装置100が動作し始めた状態を示す断面図である。
【図12】接合装置100を用いた接合作業を、段階を追って示す図である。
【符号の説明】
【0077】
100 接合装置、 110 枠体、 112 天板、 114 支柱、 116 底板、 120 加圧部、 122 シリンダ、 124 プランジャ、 130 加圧ステージ、 131 球面座、 132 支持部、 133 球面部、 134、142 基板保持部、 135 アクチュエータ、 140 受圧ステージ、 144 懸架部、 150 圧力検知部、 152、154、156 ロードセル、 162、164 ウエハ、 200 位置検出機構、 212、222 撮像部、 214、224 照明部、 216、226 コネクタ、 218、228 電源ケーブル、 300 制御系、 310 圧力制御部、 320 位置制御部、 322 目標位置設定部、 324 目標位置更新部、 330 近接検知部、 340 制御切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を接合する接合装置であって、
一方の基板の位置を検出して、検出した位置に基づいて、前記一方の基板が他方の基板に近接する方向及び前記一方の基板が前記他方の基板から離間する方向への前記一方の基板の移動を制御する位置制御部と、
前記一対の基板が所定の大きさの間隔以下の大きさの間隔で互いに近接していること、または、前記一対の基板が互いに接触していることを検出する近接検知部と、
前記近接検知部が前記一対の基板の近接または接触を検知した後に、前記一対の基板の間で作用する圧力を検出し、当該圧力が所与の目標圧力に到達するまで、前記一方の基板を前記他方の基板に向けて加圧する圧力制御部と
を備える接合装置。
【請求項2】
前記位置制御部は、検出した前記一方の基板の位置に基づいて目標位置を設定する目標位置設定部と、
前記近接検知部が前記一対の基板の近接または接触を検知するまで、前記目標位置を、既に設定された前記目標位置よりも前記他方の基板に近接した位置に更新する目標位置更新部とを有する請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記位置制御部は、前記一対の基板の間隔が小さくなるほど前記近接の移動速度を小さくする請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記圧力制御部は、前記圧力が小さいほど、増圧量を小さくする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項5】
前記接合装置は、前記他方の基板を保持する基板保持部をさらに備え、
前記圧力制御部は、前記基板保持部に配されて、前記他方の基板に対向する面内の異なる三以上の位置において前記他方の基板が受ける圧力を測定する複数の圧力検知部を含む請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項6】
前記近接検知部は、前記一対の基板の各中央部間の距離と前記他方の基板に対する前記一方の基板の傾斜角度とを検出し、検出した距離及び傾斜角度から、前記一方の基板の縁部の前記他方の基板に最も近接した部分と該他方の基板との間隔を算出し、算出した該間隔の大きさが所定の大きさ以下であるかを検出し、前記間隔の大きさが前記所定の大きさ以下である場合、前記一対の基板が互いに近接していると判断する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項7】
前記位置制御部は、前記近接検知部が前記一対の基板の近接または接触を検知したとき、前記他方の基板へ向けての前記一方の基板の移動速度を減速させる請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項8】
前記一対の基板を撮影する撮像部を更に備え、前記近接検知部は、前記一対の基板間の間隔が前記撮像部の解像度の限界に達したときに前記一対の基板が互いに近接または接触したと判断し、前記圧力制御部は、前記一対の基板の間隔が撮像部の解像度の限界に達した後、前記一方の基板の移動速度が、前記撮像部の解像度が限界に達する前の前記一方の基板の速度よりも遅くなるように該一方の基板の移動を制御する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項9】
前記撮像部は、その撮像範囲内に前記他方の基板が入るように配置されており、前記位置制御部は、前記一方の基板が前記撮像部の撮像範囲内に入ったとき、前記一方の基板の移動速度が、前記一方の基板が前記撮像範囲内に入る前の前記一方の基板の速度よりも遅くなるように該一方の基板の移動を制御する請求項8に記載の接合装置。
【請求項10】
前記一方の基板を傾動させるべく少なくとも前記位置制御部の制御下で作動するアクチュエータを更に備え、前記位置制御部は、前記近接検知部が前記一対の基板の近接または接触を検知するまで、前記一方の基板の移動を制御すると共に、前記一方の基板が前記他方の基板に平行になるように前記アクチュエータの作動を制御する請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項11】
一対の基板を接合して接合基板を製造する接合基板の製造方法であって、
一方の基板の位置を検出して、前記一方の基板の位置が目標位置に到達するまで、前記一方の基板を他方の基板に対して近接移動させ、
前記一対の基板が十分に近接していること、または、接触していることを検出し、
前記一対の基板の近接または接触を検知した後に、前記一対の基板の間で作用する圧力を検出し、当該圧力が所与の目標圧力に到達するまで、前記一方の基板を前記他方の基板に向けて加圧する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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