説明

接合部の良否判定方法及び良否判定装置

【課題】汎用の加熱手段により接合部の一側面を加熱して、その温度分布により該接合部の良否を正確に判定することのできる接合部の良否判定方法及び良否判定装置を提供する。
【解決手段】本良否判定方法は、重合され接合された接合部の他側面を冷却した後、接合部の一側面を加熱する冷却・加熱ステップと、その後、接合部の一側面の温度分布を測定し、その測定結果により接合部の良否を判定する判定ステップとを備えているので、汎用の加熱手段により接合部の一側面を加熱した後の温度分布により該接合部の良否を正確に判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、重ね合わされた2枚の鋼板が接着剤により接合され、該接合部における接着剤の塗布部位と未塗布部位とを正確に判別することで接着剤の塗布分布を検知して、接合部の良否を判定する良否判定方法及び良否判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2枚の鋼板を重ね合わせ、各鋼板を接着剤により接合された接合部の従来の良否判定方法を説明する。
従来の接合部の良否判定方法では、接合部の一側面と対向するように配置された複数のフラッシュランプと、接合部の一側面の温度分布を測定する赤外線サーモグラフィとを備えており、接合部の一側面に向って各フラッシュランプを照射させることで、該接合部の一側面を加熱し、赤外線サーモグラフィにより接合部の一側面の温度分布を測定する。
そして、一側面の温度分布の測定結果により接合部の良否を判定している。すなわち、接合部の接着剤の塗布部位と非塗布部位とでは熱伝導率が相違するので、接合部の一側面の温度分布を測定し、接着剤の塗布部位の測定温度と非塗布部位の既知の測定温度との間の温度差を検出することで、接合部の接着剤の塗布部位と非塗布部位とを判別して該接合部の良否を判定していた。
【0003】
しかしながら、上述した従来の良否判定方法では、図6に示すように、接合部の一側面を加熱した後、接着剤の塗布部位の測定温度と未塗布部位の既知の測定温度との間の温度差Bが微小(0.5℃程度)であるために、接着剤の塗布部位と未塗布部位との判別が極めて難しく、接合部の良否を正確に判定することができなかった。そこで、その対策として、高出力の加熱手段を採用して、接着剤の塗布部位と未塗布部位との間の温度差Bが大きくなるようにしても良いが、市販のフラッシュランプではその出力を上げるには限界があり、しかも、高出力の加熱手段を採用すると、接着剤への影響も懸念される。
【0004】
そこで、接合部の良否判定方法に係る従来技術として特許文献1には、溶接作業の完了した被溶接物を一旦冷却した後、検査すべき溶接部のみを局部的に加熱し、次に、赤外線温度検出器で前記加熱した溶接部から放射される赤外線を検出することにより溶接部近傍の温度分布を測定し、その測定結果を良品の温度分布あるいは不良品の温度分布と比較することにより溶接部の良否を判定することが記載されている。
【特許文献1】特開平3−60882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明の溶接部の良否判定においても、加熱装置の出力を落としてしまうと、正常な溶接ビードの近傍においても急激な温度低下が生じず、温度低下が緩やかになり、溶接部の良否を正確に判定することができない虞があり、この特許文献1の発明を採用することはできない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、汎用の加熱手段により接合部の一側面を加熱して、その温度分布により該接合部の良否を正確に判定することのできる接合部の良否判定方法及び良否判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の接合部の良否判定方法は、重合され接合された接合部の他側面を冷却した後、前記接合部の一側面を加熱する冷却・加熱ステップと、その後、前記接合部の一側面の温度分布を測定し、その測定結果により前記接合部の良否を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴としている。
また、本発明の接合部の良否判定装置は、重合され接合された接合部の他側面を冷却する冷却手段と、前記接合部の一側面を加熱する加熱手段と、前記接合部の一側面の温度分布を測定する温度測定手段と、前記冷却手段により前記接合部の他側面を冷却した後、前記加熱手段により前記接合部の一側面を加熱し、その後、前記温度測定手段により測定された前記接合部の一側面の温度分布に基いて前記接合部の良否を判定する制御装置と、を備えたことを特徴としている。
これにより、汎用の加熱手段により接合部の一側面を加熱した際、該一側面の温度分布において、接合部位の測定温度と非接合部位の既知の測定温度との間の温度差が従来よりも大きくなるので、接合部位と非接合部位との判別が正確となり、接合部の良否を正確に判定することができる。
なお、本発明の接合部の良否判定方法及び良否判定装置の各種態様およびそれらの作用については、以下の発明の態様の項において詳しく説明する。
【0008】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。なお、各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付して、必要に応じて他の項を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施の形態等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要件を付加した態様も、また、各項の態様から構成要件を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項乃至(5)項の各々が、請求項1乃至5の各々に相当する。
【0009】
(1)重合され接合された接合部の他側面を冷却した後、前記接合部の一側面を加熱する冷却・加熱ステップと、その後、前記接合部の一側面の温度分布を測定し、その測定結果により前記接合部の良否を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴とする接合部の良否判定方法。
従って、(1)項の接合部の良否判定方法では、特に、接合部の他側面を冷却した後、その一側面を加熱する冷却・加熱ステップを備えているので、加熱後の接合部の一側面における接合部位の測定温度と非接合部位の既知の測定温度との間の温度差には、冷却時の接合部位と非接合部位との間の温度差が付加されているために、加熱後の温度差が従来よりも大きくなり、接合部位と非接合部位との判別が明確になる。
【0010】
(2)前記冷却・加熱ステップは、前記接合部の他側面を冷却する冷却ステップと、前記接合部の一側面の温度低下を検知する検知ステップと、前記接合部の一側面を加熱する加熱ステップと、からなることを特徴とする(1)項に記載の接合部の良否判定方法。
従って、(2)項の接合部の良否判定方法では、冷却ステップと加熱ステップとの間に、接合部の一側面の温度低下を検知する検知ステップを備えており、接合部の他側面の冷却時、接合部の一側面における接合部位の測定温度と非接合部位の既知の測定温度との間の温度差を検知した後に加熱ステップが実行されるので、加熱後の接合部位と非接合部位との間の温度差には、冷却時の接合部位と非接合部位との間の温度差が付加されているために、加熱後の温度差が従来よりも大きくなる。
【0011】
(3)前記接合部は接着剤で接合されることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の接合部の良否判定方法。
従って、(3)項の接合部の良否判定方法では、接合部における接着剤の塗布分布を正確に検知することができ、接合部の良否を正確に判定することができる。
【0012】
(4)重合され接合された接合部の他側面を冷却する冷却手段と、前記接合部の一側面を加熱する加熱手段と、前記接合部の一側面の温度分布を測定する温度測定手段と、前記冷却手段により前記接合部の他側面を冷却した後、前記加熱手段により前記接合部の一側面を加熱し、その後、前記温度測定手段により測定された前記接合部の一側面の温度分布に基いて前記接合部の良否を判定する制御装置と、を備えたことを特徴とする接合部の良否判定装置。
従って、(4)項の接合部の良否判定装置では、特に、接合部の他側面を冷却する冷却手段を備えているので、接合部の一側面を加熱手段により加熱した後の接合部位の測定温度と非接合部位の既知の測定温度との間の温度差には、冷却時の接合部位と非接合部位との間の温度差が付加されているために、加熱後の温度差が従来よりも大きくなり、制御装置において接合部位と非接合部位との判別が容易となりその判別がより明確となる。
【0013】
(5)前記冷却手段により前記接合部の他側面を冷却する際、前記接合部の一側面の温度低下を検知する検知手段を備えていることを特徴とする(4)項に記載の接合部の良否判定装置。
従って、(5)項の接合部の良否判定装置では、冷却手段により接合部の他側面を冷却した際、その一側面の温度低下を検知する検知手段を備えており、接合部の他側面の冷却時、接合部の一側面における接合部位の測定温度と非接合部位の既知の測定温度との間に温度差を検知した後、加熱手段により接合部の一側面が加熱されるので、加熱後の接合部位と非接合部位との間の温度差には、冷却時の接合部位と非接合部位との間の温度差が付加されているために、加熱後の温度差が従来よりも大きくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汎用の加熱手段により接合部の一側面を加熱して、その温度分布により接合部の良否を正確に判定することのできる接合部の良否判定方法及び良否判定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図5に基いて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る接合部の良否判定装置1は、図1に示すように、重ね合わされた2枚の鋼板2、3が接着剤5により接合され、接着剤5により接合された2枚の鋼板2、3の接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位とを正確に判別して、接合部4の良否を判定するものである。
本良否判定装置1は、図1に示すように、接合部4の他側面(鋼板3側)7を冷却するペルチェ素子や冷風機等の冷却手段8と、該冷却手段8により接合部4の他側面7を冷却した際、接合部4の一側面(鋼板2側)6の温度低下を検知する温度センサー9(検知手段)と、該温度センサー9による検知に基いて接合部4の一側面6を非接触で加熱する複数のフラッシュランプ11(加熱手段)と、接合部4の一側面6の温度分布を測定する赤外線サーモグラフィ10(温度測定手段)と、冷却手段8により接合部4の他側面7を冷却した後、各フラッシュランプ11により接合部4の一側面6を加熱し、その後、赤外線サーモグラフィ10により測定された接合部4の一側面6の温度分布に基いて接合部4の良否を判定する制御装置14とを備えている。
【0016】
フラッシュランプ11は、特別な仕様ではなく市場で購入可能な汎用品が採用され、接合部4の一側面6を非接触で加熱する熱源の役割を果すものである。図1に示すように、フラッシュランプ11は、接合部4の一側面6と対向する位置に2箇所備えられている。各フラッシュランプ11は、出力の大きさ等を制御するランプ制御装置12が接続されており、該ランプ制御装置12からの作動信号に基いて作動する。
赤外線サーモグラフィ10は、図1に示すように、接合部4の一側面6と対向するように配置されており、解析装置13を介して制御装置14に接続されている。この赤外線サーモグラフィ10は、接合部4の一側面6から放射される赤外線の強度を検出しその結果を解析装置13にて増幅演算処理し、接合部4の一側面6の温度分布を画像信号として制御装置14に伝送している。
【0017】
冷却手段8は、図1に示すように、接合部4の他側面7と接触または非接触にて配置され、接合部4の他側面7の冷却温度を制御可能な冷却制御装置15と接続されている。冷却手段8は、ペルチェ素子や冷風機等で構成される。
温度センサー9は、図1に示すように、接合部4の一側面6に接触して配置され、温度データ収集装置16と接続されている。温度データ収集装置16には温度センサー9からの測定温度が常時伝送され、接合部4の一側面6の温度変化を検知できる構成となっている。
【0018】
制御装置14は、図1に示すように、解析装置13を介して赤外線サーモグラフィ10に接続されており、各フラッシュランプ11により接合部4の一側面6を加熱した後、赤外線サーモグラフィ10により測定された接合部4の一側面6の温度分布に基いて接合部4の良否を判定している。
詳述すると、まず、制御装置14には、予め、図3(a)、(b)に示す、接着剤5が未塗布部位である接合部4の一側面6のA点の測定温度が入力される。なお、このA点の温度測定方法は、後述する本良否判定方法を採用した。しかしながら、冷却ステップS11にて、接合部4の他側面7を冷却したが接合部4の一側面6の温度低下が認められなかったため、接合部4の他側面7の冷却後、適宜時間経過した後に各フラッシュランプ11を照射して、赤外線サーモグラフィ10により接合部4の一側面6のA点の温度を測定した。
そして、制御装置14に、各フラッシュランプ11により接合部4の一側面6を加熱した後の赤外線サーモグラフィ10により測定された接合部4の一側面6の温度分布が入力されると、制御装置14では、例えば、図4(a)、(b)に示す接合部4の一側面6のA’点の測定温度と未塗布部位(A点)の既知の測定温度(図3(b)に示す)との温度差C(図5も参照)が基準値より大きければそのA’点には正常に接着剤5が塗布されていると判定され、一方、接合部4の一側面6のA’点の測定温度と未塗布部位(A点)の既知の測定温度(図3(b)に示す)との温度差Cが基準値より小さければそのA’点には正常に接着剤5が塗布されていないと判定される。
これにより、制御装置14では、接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位とが判別されると共に、制御装置14のモニタに接着剤5の塗布分布が出力されて、接合部4の良否を判定することができる。
【0019】
次に、本発明の実施の形態に係る良否判定装置1を使用した良否判定方法を図1及び図2に基いて説明する。
本良否判定方法を大別すると、冷却手段8により接合部4の他側面7を冷却した後、各フラッシュランプ11により接合部4の一側面6を加熱する冷却・加熱ステップS1と、その後、赤外線サーモグラフィ10により接合部4の一側面6の温度分布を測定し、その測定結果に基いて制御装置14により接合部4の良否を判定する判定ステップS2とからなる。
【0020】
本良否判定方法を詳述すると、まず、冷却ステップS11において、冷却制御装置15により作動信号が冷却手段8に伝送され、冷却手段8が作動し、接合部4の他側面7が冷却される。
次に、接合部4の他側面7が冷却されている間、検知ステップS12において、温度センサー9から接合部4の一側面6の測定温度が温度データ収集装置16に伝送され、温度データ収集装置16にて接合部4の一側面6の温度低下が検知される。なお、温度低下を検知するタイミングは、温度低下の始まりではなく、温度低下の推移が略止まった時点である(図5の冷却区間における塗布部位の温度の右下がりの推移を参照)。温度センサー9により接合部4の一側面6の温度低下(温度低下が略止まる時点)を検知した後、冷却手段8の作動が停止されると共に、温度センサー9が接合部4の一側面6から取り除かれる。
次に、加熱ステップS13において、ランプ制御装置12から各フラッシュランプ11へ作動信号が伝送され、各フラッシュランプ11が照射されて接合部4の一側面6が加熱される。
なお、冷却ステップS11と、検知ステップS12と、加熱ステップS13とが上述した冷却・加熱ステップS1に属する。
【0021】
次に、温度分布測定ステップS21において、赤外線サーモグラフィ10及び解析装置13により接合部4の一側面6の温度分布が解析される。
次に、良否判定ステップS22において、制御装置14に解析装置13から接合部4の一側面6の温度分布が入力される。すると、制御装置14にて、上述したように、接合部4の一側面6のA’点の測定温度と未塗布部位(A点)の既知の測定温度との温度差Cが基準値より大きければそのA’点には正常に接着剤5が塗布されていると判定され、一方、接合部4の一側面6のA’点の測定温度と未塗布部位の測定温度との温度差Cが基準値より小さければそのA’点には正常に接着剤5が塗布されていないと判定される。その結果、接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位とが判別されると共に、制御装置14のモニタに接着剤5の塗布分布が出力されて、接合部4の良否を判定することができる。ここで、基準値は1.0〜3.0℃の所定値に設定される。但し、この基準値は、鋼板(材質)、表面の色、光沢によって変動する。
なお、温度分布測定ステップS21と、良否判定ステップS22とが上述した判定ステップS2に属する。
【0022】
そこで、判定ステップS2の良否判定ステップS22において、接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位とが判別されるが、本実施の形態では、冷却ステップS11において、冷却手段8により接合部4の他側面7が冷却されるので、図5に示すように、各フラッシュランプ11を照射する前段階(接合部4の他側面7の冷却時)で、接合部4の一側面6における、接着剤5の塗布部位(仮にA’点が塗布部位)と未塗布部位(A点)との間で既に温度差C’が現出される。その結果、各フラッシュランプ11の照射後の接合部4の一側面6における接着剤5の塗布部位(仮にA’点が塗布部位)と未塗布部位(A点)との間の温度差Cには、冷却時の接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差C’が付加されているために、加熱後の接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差Cが従来の温度差B(図6参照)よりも3倍以上大きくなっている。これにより、制御装置14において、接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位との判別が容易となり、その判別がより明確になる。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、特に、冷却・加熱ステップS1において、冷却手段8により接合部4の他側面7を冷却(冷却ステップS11)し、接合部4の一側面6の温度低下を温度センサー9により検知(検知ステップS12)した後、各フラッシュランプ11を接合部4の一側面6に向って照射し該一側面6を加熱(加熱ステップS13)するので、各フラッシュランプ11の照射後の接合部4の一側面6における接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差Cには、冷却時の接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差C’が付加されているために、加熱後の接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差Cが従来(冷却手段8を使用しない形態)の温度差Bよりも3倍以上大きくなる。
これにより、制御装置14において、接合部4における接着剤5の塗布部位と未塗布部位との判別が容易でより明確になり、正確な接着剤5の塗布分布を検知することができ、ひいては、接合部4の良否を正確に判定することができる。
また、本発明の実施の形態では、汎用のフラッシュランプ11を使用し、冷却手段8により接合部4の他側面7を冷却することで、加熱後の接着剤5の塗布部位と未塗布部位との間の温度差Cを従来の温度差Bよりも大きくすることができたので、高出力の加熱手段を採用する必要がなく実用的となる。
【0024】
なお、本発明の実施の形態では、冷却・加熱ステップS1において、冷却ステップS11と加熱ステップ13との間に、温度センサー9により接合部4の一側面6の温度低下を検知する検知ステップS12を備えており、この形態が最も好ましい形態であるが、冷却ステップS11の開始から、接合部4の一側面6の温度低下の推移が略止まった時点までの時間を予め測定し、冷却ステップS11にて接合部4の他側面7を冷却する時間を設定しておけば、必ずしも検知ステップS12を備える必要はない。
【0025】
また、本発明の実施の形態では、2枚の鋼板2、3を接着剤5により接合された接合部4の良否判定に採用したが、これに限らず、2枚の鋼板2、3を溶接により接合された接合部の良否判定に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る接合部の良否判定装置の模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る接合部の良否判定方法のフロー図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態によって測定された、接合部の接着剤の未塗布部位における接合部の一側面のA点の温度推移を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態によって測定された、接合部の接着剤の塗布部位における接合部の一側面のA’点の温度推移を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態によって測定された、接合部の接着剤の塗布部位と未塗布部位における接合部の一側面の温度差を示す図である。
【図6】図6は、従来の方法によって測定された、接合部の接着剤の塗布部位と未塗布部位における接合部の一側面の温度差を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 良否判定装置、2、3 鋼板,4 接合部,5 接着剤,6 一側面,7 他側面,8 冷却手段,9 温度センサー(検知手段),10 赤外線サーモグラフィ(温度測定手段),11 フラッシュランプ(加熱手段),14 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合され接合された接合部の他側面を冷却した後、前記接合部の一側面を加熱する冷却・加熱ステップと、
その後、前記接合部の一側面の温度分布を測定し、その測定結果により前記接合部の良否を判定する判定ステップと、
を備えたことを特徴とする接合部の良否判定方法。
【請求項2】
前記冷却・加熱ステップは、前記接合部の他側面を冷却する冷却ステップと、
前記接合部の一側面の温度低下を検知する検知ステップと、
前記接合部の一側面を加熱する加熱ステップと、
からなることを特徴とする請求項1に記載の接合部の良否判定方法。
【請求項3】
前記接合部は接着剤で接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の接合部の良否判定方法。
【請求項4】
重合され接合された接合部の他側面を冷却する冷却手段と、
前記接合部の一側面を加熱する加熱手段と、
前記接合部の一側面の温度分布を測定する温度測定手段と、
前記冷却手段により前記接合部の他側面を冷却した後、前記加熱手段により前記接合部の一側面を加熱し、その後、前記温度測定手段により測定された前記接合部の一側面の温度分布に基いて前記接合部の良否を判定する制御装置と、
を備えたことを特徴とする接合部の良否判定装置。
【請求項5】
前記冷却手段により前記接合部の他側面を冷却する際、前記接合部の一側面の温度低下を検知する検知手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の接合部の良否判定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−128183(P2009−128183A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303394(P2007−303394)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】