説明

接点ばね付きシート及びスイッチ装置

【課題】導光シートの斜面部に十分な厚みの遮光部を形成して、導光シート内に入光された光が傾斜部から外部に漏れることを防止することができる接点ばね付きシート及びスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】接点ばね25を保持する保持シート23と、保持シート23に積層され、光源17からの光を導光する導光シート21とを備え、導光シート21の一部に光源17からの光を入光する入光部31を設けると共に、入光部31からの光を反射または吸収する遮光部36が形成された斜面部32を設け、斜面部32に、導光シートのシート上面から下方に向かって緩やかに傾斜する緩斜面34と、緩斜面34の下部から下方に向かって緩斜面34よりも大きな傾斜角度で傾斜する急斜面35とを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点ばね付きシート及びスイッチ装置に関し、特に、携帯電話等の操作パネルに使用される接点ばね付きシート及びスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話のような携帯端末の操作ボタンを照光する接点ばね付きシートが開発されている。この接点ばね付きシートは、透光性材料で形成された導光シートを備えて形成されており、携帯端末の回路基板上に取り付けられる。導光シートの端面近傍には、光源が配置され、光源から出射された光は、導光シートの端面からシート内に入射される。シート内に入射された光は、携帯端末の操作ボタンに対応する位置に形成された照光領域で拡散され、操作ボタンを内側から点灯させる。
【0003】
一般に、このような接点ばね付きシートにおいては、導光シート内を進行する光を遮光する遮光部がインクジェット印刷により形成されている。この場合、遮光部が形成される導光シートの端面は、垂直に形成されているため、対象部分に向けて液滴を精度よく吐出することが困難となっていた。この問題を解決するものとして、導光シートの端面を約45度に傾斜させ、この傾斜面に対して印刷により遮光部を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この導光シートによれば、導光シートの端面が傾斜されるため、対象部分に向けて液滴を精度よく吐出できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−275700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接点ばね付きシートのシート端面を約45度に傾斜して形成した場合には、斜面に着弾した液滴が斜面を下方に流れ落ちて、一様な厚みの遮光部をシート端面に形成することができないという問題があった。このため、シート端面の一部において遮光部の厚みが薄くなり、外部に光が漏れてしまっていた。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、導光シートの斜面部に十分な厚みの遮光部を形成して、導光シート内に入光された光が傾斜部から外部に漏れることを防止することができる接点ばね付きシート及びスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接点ばね付きシートは、接点ばねを保持する保持シートと、前記保持シートに積層され、光源からの光を導光する導光シートとを備え、前記導光シートの一部に前記光源からの光を入光する入光部を設けると共に、前記入光部からの光を反射または吸収する遮光部が形成された斜面部を設け、前記斜面部には、前記導光シートのシート上面から下方に向かって緩やかに傾斜する緩斜面と、前記緩斜面の下部から下方に向かって前記緩斜面よりも大きな傾斜角度で傾斜する急斜面とが形成されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、印刷により斜面部に遮光部を形成する場合に、斜面部の上側を緩斜面としたことから、印刷液の付着しにくい斜面部の上側に印刷液を塗布することができる。斜面部の下側については、急斜面に沿って液溜まりが形成され、この液溜まりにより十分な印刷液が塗布される。このように、斜面部を緩斜面と急斜面とで形成することで、斜面部に十分な厚みの遮光部が形成され、遮光部での遮光性を向上することができる。また、斜面部の下側を急斜面とすることで、斜面部全体を緩斜面で形成する場合と比較して、斜面幅を短くすることができ、遮光スペースの省スペース化を図ることができる。なお、ここでいう斜面とは、一定の角度で傾斜する傾斜平面でもよいし、傾斜角度が変化する傾斜曲面でもよい。
【0009】
また本発明は、上記接点ばね付きシートにおいて、前記斜面部は、前記保持シートと前記導光シートとを跨るように設けられたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、保持シート及び導光シートに跨るように遮光部が形成されるため、導光シート内に導光された光が保持シートと導光シートとの隙間から漏れることを確実に防止することが可能となる。
【0011】
また本発明は、上記接点ばね付きシートにおいて、前記遮光部は、前記斜面部に対し、まばらに液滴を付着させて凹凸面を形成する第1の塗布工程と、前記斜面部に対し、前記凹凸面を埋めるように液滴を付着させる第2の塗布工程とにより形成されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1の塗布工程によって形成された凹凸面により、第2の塗布工程によって塗布された印刷液が斜面部を流れ落ちることが抑制される。よって、斜面部に対してより均一な遮光部が形成され、遮光部での遮光性をさらに向上することができる。また、凹凸面によって斜面部に対する印刷液の付着性が向上されるため、斜面部の傾斜角度をさらに大きくしても、斜面部に対して印刷液を付着させることができる。よって、斜面部の傾斜幅をより狭めることができ、遮光スペースのさらなる省スペース化を図ることができる。
【0013】
また本発明は、上記接点ばね付きシートにおいて、シート外縁の少なくとも一部に沿って前記斜面部が延在し、前記斜面部によりもシート外方に前記保持シート及び前記導光シートにより延長部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の接点ばね付きシートは、接点ばねを保持する保持シートと、前記保持シートに積層され、光源からの光を導光する導光シートとを備え、前記導光シートの一部に前記光源からの光を入光する入光部を設けると共に、シート外縁の少なくとも一部に沿って延在し、前記入光部からの光を反射または吸収する遮光部が形成された斜面部を設け、前記斜面部よりもシート外方に前記保持シート及び前記導光シートにより延長部が設けられたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、接点ばね付きシートの切断工程において、斜面部よりもシート外方に設けられた延長部を切断代とし、斜面部に形成された遮光部が切断刃に付着することがなく、斜面部から遮光部がバリ状に剥がれることを防止することができる。なお、接点ばね付きシートの切断工程とは、複数の接点ばね付きシートが形成されたシート材を個々の接点ばね付きシートに分割する工程である。
【0016】
また本発明のスイッチ装置は、上記接点ばね付きシートと、前記接点ばねが離接する固定接点が設けられた基板とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、導光シート内に入光された光が外部に漏れることを防止することができるスイッチ装置を簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導光シートの斜面部に十分な厚みの遮光部を形成して、導光シート内に入光された光が傾斜部から外部に漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る接点ばね付きシートの第1の実施の形態を示す図であり、操作パネルの側断面図である。
【図2】本発明に係る接点ばね付きシートの第1の実施の形態を示す図であり、斜面部周辺の部分拡大図である。
【図3】本発明に係る接点ばね付きシートの第2の実施の形態を示す図であり、遮光部の製造工程の説明図である。
【図4】本発明に係る接点ばね付きシートの第3の実施の形態を示す図であり、斜面部周辺の部分拡大図である。
【図5】本発明に係る接点ばね付きシートの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が適用されるスイッチ装置は、主として携帯電話等の小型の電子機器の筐体内に組み込まれて使用される。このスイッチ装置には、操作ボタンを内部から照らす導光シートが設けられている。導光シートには、シート内から漏れた光が筐体内での光の乱反射により筐体の隙間から視認されないように、遮光部が形成されている。遮光部は、導光シートに接点ばねの保持シートを貼りあわせた状態で斜面部を形成し、この斜面部に対してインクジェット印刷することで形成される。
【0021】
この場合、斜面部は、印刷液の粘度が高くないため、印刷液が付着するように浅い傾斜角度で形成される。しかしながら、斜面部の傾斜角度が浅い場合には、斜面部に対して一様に印刷液を付着させることができるものの、斜面幅が長くなって遮光スペースが広くなる。このため、省スペース化が求められる小型の電子機器の設計においては好ましくない。一方、斜面部の傾斜角を深く形成した場合には、遮光スペースを狭くできるものの、斜面部の上部に付着した印刷液が下方に流れ落ち、斜面部の上部に十分な厚みの遮光部を形成することができない。
【0022】
本発明の骨子は、導光シートが設けられたスイッチ装置において、斜面部の上側を緩斜面、下側を急斜面とすることで、遮光スペースを狭めて装置の小型化を図りつつ、導光シート内に入光された光が傾斜部から外部に漏れることを防止することである。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る接点ばね付きシートは、例えば、携帯電話装置の操作パネルなどに利用されるものであるが、これに限定されるものではない。接点ばね付きシートは、光源からの光を導光シートにより導光すると共に、導光シートの一部で遮光する必要がある操作パネルを備えた任意の端末装置に適用することが可能である。例えば、携帯型のパーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistance)などの端末装置に適用することが考えられる。以下においては、本実施の形態に係る接点ばね付きシートが携帯電話装置の操作パネルに適用される場合について説明するものとする。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置が適用される操作パネルの側断面図である。図1に示すように、スイッチ装置1は、携帯電話装置が備えるパネル2の内部に配設され、携帯電話装置のプリント回路基板(PCB)3にスペーサ4を介して接点ばね付きシート5が貼り付けられて構成される。このPCB3は、フェノール樹脂などの絶縁性の積層板などで形成されており、その上面には、カーボンなどを印刷し、或いは、銀箔などをエッチング加工することにより後述する複数の周辺固定接点11及び中央固定接点12の回路パターンが設けられている。
【0025】
パネル2には、操作者の押圧操作を受け付ける複数の操作ボタン13が設けられている。操作ボタン13は、後述する接点ばね25に対応する位置に配設されており、操作者により押圧される操作部14と、接点ばね25を反転させるための押圧突起15が設けられている。また、操作ボタン13は、透光性を有する合成樹脂などで形成されており、後述する導光シート21を介して導光された光により操作部14が照光されるものとなっている。
【0026】
接点ばね付きシート5は、後述する光源17からの光を導光する導光シート21と、導光シート21の下面の所定位置に設けられる粘着部22(図1に不図示、図2参照)と、粘着部22を介して導光シート21に積層される保持シート23とを有している。保持シート23は、周辺固定接点11に対応する所定位置で接点ばね25を保持して構成されている。
【0027】
導光シート21は、例えば、ウレタン或いはポリカーボネートなどの合成樹脂からなる絶縁材をフィルム状にして形成されている。より具体的には、導光性を有する樹脂材料で構成されている。粘着部22は、導光シート21の下面に接着材を塗布することで設けられている。粘着部22を構成する接着剤も導光性を有する接着材料が利用されている。
【0028】
保持シート23は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂からなる絶縁材をフィルム状にして形成されている。保持シート23には、蓄光又は夜光顔料が練り込み又は塗布などの方法により含有されている。保持シート23の下面には、接着剤が塗布され、不図示の粘着部が設けられている。この粘着部によって接点ばね25が保持されると共に、スペーサ4を介して接点ばね付きシート5自体がPCB3に貼着される。
【0029】
接点ばね25は、ステンレス又はリン青銅などのばね性を有する金属材により形成されている。接点ばね25は、頂部26を有するドーム形状を有しており、この頂部26の下面が後述する中央固定接点12に接離する接点部を構成している。保持シート23には、このような接点ばね25を収納する膨出部27が設けられており、接点ばね25は、この膨出部27の下面に配置された粘着部に貼着された状態となっている。導光シート21には、この保持シート23の膨出部27を収容する膨出部29が設けられている。この膨出部29の上面に操作ボタン13の押圧突起15が載置された状態となっている。
【0030】
接点ばね25に対応するPCB3の位置には、接点ばね25の外縁部が配置される環状の周辺固定接点11と、周辺固定接点11の中央に位置する円形状の中央固定接点12とが配置されている。中央固定接点12は、操作者の押圧操作に応じて接点ばね25が反転した場合に接点ばね25の頂部26の下面と接触する。また、接点ばね付きシート5の一方の側面近傍のPCB3の位置には、LED(発光ダイオード)などで構成される光源17が設けられている。光源17は、発光素子をパネル2の内側、すなわち、接点ばね付きシート5側に向けて配置している。
【0031】
接点ばね付きシート5における光源17側の一端側には、導光シート21の一部として光源17からの光を入光する入光部31が設けられている。入光部31を介して入光された光は、導光シート21内を導光される。接点ばね付きシート5における他端側には、入光部31に対向して斜面部32が設けられている。斜面部32には、傾斜面に沿って遮光部36が形成されている。なお、この斜面部32及び斜面部32に形成される遮光部36については後述する。
【0032】
このようなパネル2において、操作ボタン13が押圧されると、接点ばね25が反転され、接点ばね25の頂部26の下面が中央固定接点12に接触される。そして、中央固定接点12と周辺固定接点11とが接点ばね25を介して導通され、その旨を示す信号が携帯電話装置の制御部に出力される。また、操作ボタン13の押圧が解除されると、接点ばね25の復元力により操作ボタン13が上方に押し戻される。
【0033】
以下、第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5の斜面部32が設けられた他端側について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5の斜面部32周辺の部分拡大図である。
【0034】
図2に示すように、接点ばね付きシート5の他端側においては、導光シート21が粘着部22を介して保持シート23に積層されている。接点ばね付きシート5の他端側は、レーザーによるテーパ加工等により導光シート21、粘着部22及び保持シート23に跨るように斜面部32が形成されている。また、斜面部32の対向には、切断工程における切断代となる延長部33が設けられている。斜面部32及び延長部33は、接点ばね付きシート5の他端側の一部を、シート上面から凹状に除去することで形成される。
【0035】
斜面部32は、シート上面から下方に向けて緩やかに傾斜する緩斜面34と、緩斜面34の下部から下方に向けて急傾斜する急斜面35とを有している。緩斜面34は、印刷液の液垂れを抑制可能な傾斜角度で形成され、例えば、約20度に傾斜している。また、急斜面35は、緩斜面34よりも大きな傾斜角度を有し、例えば、40度以上に傾斜している。この構成により、印刷液が付着しにくい斜面部32の上側に印刷液が塗布されると共に、急斜面35に沿って形成された液溜まりにより斜面部32の下側に印刷液が塗布される。
【0036】
また、斜面部32の下側を急斜面35とすることで、斜面部32全体を緩斜面で形成する場合と比較して、斜面幅を短くすることができ、遮光スペースの省スペース化が図られている。なお、緩斜面34の傾斜角度は、印刷液の液垂れを抑制可能な角度であればよく、印刷液の粘度等に応じて可変可能である。また、急斜面35の傾斜角度は、液溜まりを形成可能な角度であればよく、印刷液の粘度や遮光スペース等に応じて可変可能である。
【0037】
接点ばね付きシート5には、斜面部32に付着された印刷液により、導光シート21内に導光された光が外部に漏れ出るのを防止する遮光部36が形成される。遮光部36は、例えば、黒色のUV硬化インクを用いたインクジェット印刷により、緩斜面34及び急斜面35を覆うようにして形成される。そして、遮光部36は、導光シート21内の光を接点ばね付きシート5の他端側で吸収して遮光する。また、遮光部36は、斜面部32に沿って導光シート21、粘着部22及び保持シート23に跨るように形成されているため、導光シート21内に導光された光が導光シート21、粘着部22、保持シート23の隙間から漏れることが防止される。
【0038】
このように、インクジェット印刷により遮光部36を形成する場合には、斜面部32に十分な厚みのインクを塗布することができ、インクの不足部分において光が外部に漏れることが防止される。なお、印刷液としては、上記した黒色インクに限定されず、光を吸収または反射可能するものであればよい。例えば、接点ばね付きシート5の斜面部32に遮光部36として反射膜を形成した場合には、導光シート21内により多くの光を取り込むことが可能となる。
【0039】
延長部33は、切断工程において切断代となる部分であり、斜面部32よりもシート外側に設けられている。ここでいう切断工程とは、遮光部36の印刷後において、複数の接点ばね付きシートが形成されたシート材を個々の接点ばね付きシートに分割する工程である。この延長部33を切断代とすることで、斜面部32に形成された遮光部36が切断刃に付着することがなく、斜面部32から遮光部36がバリ状に剥がれることが防止される。また、延長部33は、急斜面35と共に印刷液の液溜まりを形成し、急斜面35に十分な厚みの印刷液を塗布させている。
【0040】
ここで、第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5の斜面部32の形成処理について説明する。最初に、導光シート21、粘着部22及び保持シート23を積層して接点ばね付きシート5を形成し、接点ばね付きシート5の他端側にレーザー加工を施して斜面部32及び延長部33を形成する。このとき、斜面部32には、傾斜角度の浅い緩斜面34と、傾斜角度の深い急斜面35とが形成される。
【0041】
次に、接点ばね付きシート5に対して上方から印刷が施され、斜面部32に印刷液が塗布される。この斜面部32に対する印刷は、少なくとも斜面部32をカバーする範囲で印刷液が塗布され、好ましくは図2に示すように、延長部33の一部を含む範囲に印刷液が塗布される。これにより、斜面部32に対して確実に印刷液を塗布することが可能となる。また、斜面部32に対する印刷によって、緩斜面34には液垂れの抑制により印刷液が付着され、急斜面35には液溜まりにより印刷液が付着される。
【0042】
次に、印刷液に対する紫外線の照射により、印刷液が硬化されて斜面部32に遮光部36が形成される。このとき、斜面部32には十分の厚みの遮光部36が形成され、導光シート21内に入光された光が斜面部32から外部に漏れることが防止される。また、斜面部32の下側を急斜面35とすることで、遮光スペースを狭めて接点ばね付きシート5の小型化が図られている。本実施の形態では、印刷液としてUV硬化インクを用いて、UV硬化により遮光部36を形成する構成としたが、印刷液として熱硬化インクを用いて、熱硬化により遮光部36を形成してもよい。
【0043】
このようにして、接点ばね付きシート5が形成されると、分割工程において延長部33の印刷液が塗布されていない部分を切断刃により切断し、シート材から切り離される。そして、切り離された接点ばね付きシート5がスペーサ4を介してPCB3の上面に取り付けられ、スイッチ装置1が形成される。
【0044】
このように第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5においては、斜面部32の上側を緩斜面としたことから、印刷液の付着しにくい斜面部32の上側に印刷液を塗布することができる。斜面部32の下側については、急斜面に沿って液溜まりが形成され、この液溜まりにより十分な印刷液が塗布される。このように、斜面部32を緩斜面34と急斜面35とで形成することで、斜面部32に十分な厚みの遮光部36が形成され、遮光部36での遮光性を向上することが可能となる。また、斜面部32の下側を急斜面35とすることで、斜面部32全体を緩斜面34で形成する場合と比較して、斜面幅を短くすることができ、遮光スペースの省スペース化を図ることが可能となる。
【0045】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の接点ばね付きシートについて説明する。本発明の第2の実施の形態に係る接点ばね付きシート41は、上記した第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5と遮光部36の製造工程についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係る接点ばね付きシート41の遮光部53の製造工程の説明図である。
【0046】
図3(a)に示すように、最初に、導光シート42、粘着部43及び保持シート44を積層して接点ばね付きシート41を形成し、接点ばね付きシート41の他端側にレーザー加工を施して斜面部51及び延長部52を形成する。このとき、斜面部51には、傾斜角度の浅い緩斜面54と、傾斜角度の深い急斜面55とが形成される。
【0047】
次に、接点ばね付きシート41に対して上方から第1の印刷工程が施され、斜面部51に対してまだら状に液滴が付着される。この斜面部51に対する第1の印刷は、少なくとも斜面部51をカバーする範囲で印刷液が塗布され、延長部52の一部を含む範囲に印刷液が塗布される。次に、印刷液に対する紫外線の照射により、印刷液が硬化されて斜面部51に凹凸面が形成される。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、接点ばね付きシート41に対して上方から第2の印刷工程が施され、斜面部51に対して凹凸面を埋めるように液滴が付着される。このとき、凹凸面が斜面部51の液垂れを抑制するため、斜面部51に対してより均一な厚みで印刷液が付着される。また、凹凸面によって液垂れに対する抑制効果が高められるため、緩斜面54及び急斜面55の傾斜角度をさらに深く形成することも可能である。この斜面部51に対する第2の印刷においても、少なくとも斜面部51をカバーする範囲で印刷液が塗布され、延長部52の一部を含む範囲に印刷液が塗布される。
【0049】
次に、印刷液に対する紫外線の照射により、印刷液が硬化されて斜面部51に遮光部53が形成される。このとき、斜面部51には十分の厚みの遮光部53が形成され、導光シート42内に入光された光が斜面部51から外部に漏れることが防止される。また、上記したように、この塗布方法では、緩斜面54及び急斜面55の傾斜角度をより深く形成可能なため、斜面幅をさらに狭めて遮光スペースの省スペース化を図ることが可能となる。また、本実施の形態では、第1、第2の印刷工程で、同一の印刷液を用いてもよいし、粘度や色等の性質の異なる印刷液を用いること可能である。このようにして、接点ばね付きシート41が形成されると、分割工程において延長部52の印刷液が塗布されていない部分を切断刃により切断し、シート材から切り離される。
【0050】
このように第2の実施の形態に係る接点ばね付きシート41においては、第1の印刷工程によって形成された凹凸面により、第2の印刷工程によって塗布された液滴が斜面部51を流れ落ちることが抑制される。よって、斜面部51に対してより均一な遮光部53が形成され、遮光部53での遮光性をさらに向上させることができる。また、凹凸面によって斜面部51に対する印刷液の付着性が向上されるため、緩斜面54及び急斜面55の傾斜角度を第1の実施の形態よりも深く形成することが可能となる。このため、第1の実施の形態と比較してさらに斜面部51の傾斜幅を狭めることができ、遮光スペースの省スペース化を図ることが可能となる。
【0051】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態の接点ばね付きシートについて説明する。本発明の第3の実施の形態に係る接点ばね付きシート61は、上記した第1の実施の形態に係る接点ばね付きシート5と斜面部32の構成についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。図4は、本発明の第3の実施の形態に係る接点ばね付きシート61の斜面部71周辺の部分拡大図である。
【0052】
図4に示すように、第3の実施の形態に係る接点ばね付きシートの斜面部71は、レーザーによるテーパ加工等により導光シート62、粘着部63及び保持シート64に跨るように一定の傾斜角度を有して形成されている。また、斜面部71の対向には、切断工程における切断代となる延長部72が設けられている。斜面部71及び延長部72は、接点ばね付きシート61の他端側の一部を、シート上面から凹状に除去することで形成される。
【0053】
斜面部71は、シート上面から下方に向けて緩やかに傾斜し、印刷液の液垂れを抑制可能な傾斜角度で形成されている。この構成により、印刷液が付着しにくい斜面部71の上側に印刷液が塗布され、斜面部71に対して一様な厚みで遮光部73が形成される。なお、斜面部71の傾斜角度は、印刷液の液垂れを抑制可能な角度であればよく、印刷液の粘度等に応じて可変可能である。
【0054】
また、遮光部73は、斜面部71に沿って導光シート62、粘着部63及び保持シート64に跨るように形成されているため、導光シート62内に導光された光が導光シート62、粘着部63、保持シート64の隙間から漏れることが防止される。なお、印刷液としては、光を吸収または反射可能するものであればよい。また、遮光部73については、上記した第1、第2の実施の形態のいずれの製造工程で形成してもよい。
【0055】
延長部72は、切断工程において切断代となる部分であり、斜面部71よりもシート外側に設けられている。この延長部72を切断代とすることで、斜面部71に形成された遮光部73が切断刃に付着することがなく、斜面部71から遮光部73がバリ状に剥がれることが防止される。
【0056】
このように第3の実施の形態に係る接点ばね付きシート61においては、斜面部71に対して均一に遮光部73を形成することができ、遮光部73での遮光性を向上することが可能となる。また、斜面部71よりもシート外側に延長部72を設けたことで、印刷液が塗布されない延長部72を切断代とすることができる。これにより、斜面部71から遮光部73の剥がれを防止することが可能となる。
【0057】
なお、上記した第1から第3の実施の形態においては、斜面部が一定の角度を有する傾斜平面で斜面を形成する構成としたが、この構成に限定されるものではない。斜面は、傾斜角度が変化する傾斜曲面で形成してもよい。また、図5に示すように、斜面部は、傾斜平面と傾斜曲面とを組み合わせて形成してもよいし、傾斜曲面と傾斜曲面とを組み合わせて形成してもよい。この場合、傾斜曲面は、凸状に傾斜してもよいし、凹状に傾斜してもよい。
【0058】
また、上記した各実施の形態においては、接点ばね付きシートは、光源近傍に入光部を設け、入光部に対向するように遮光部を設ける構成としたが、この構成に限定されない。遮光部は、入光部を介して入光された光を遮光したい部分に形成でき、例えば、接点ばね付きシートの中央部分にスリットを設けて、このスリットに形成する構成としてもよい。これにより、導光シートを複数の領域に分けて分割照光することも可能である。
【0059】
また、上記した各実施の形態においては、導光シート、保持シート、粘着部に跨るように斜面部を形成する構成としたが、この構成に限定されるものではない。少なくとも導光シートに斜面部が形成されていればよい。
【0060】
また、上記した各実施の形態においては、遮光部は、インクジェット印刷等によって、斜面部に対する印刷液の付着により形成される構成としたが、この構成に限定されるものではない。遮光部は、斜面部に対する遮光用の液体の塗布によって形成されるのであれば、どのような装置や方法によって形成されてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態においては、保持シートによりPCBに接点ばねが保持されたスイッチ装置を例示して説明したが、この構成に限定されるものではない。本発明に係る導光シートを用いるスイッチ装置であれば、どのような構成でもよい。
【0062】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、導光シートの斜面部に十分な厚みの遮光部を形成して、導光シート内に入光された光が傾斜部から外部に漏れることを防止することができるという効果を有し、特に、携帯電話等の操作パネルに使用される接点ばね付きシート及びスイッチ装置に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 スイッチ装置
3 PCB(プリント回路基板)
4 スペーサ
5、41、61 接点ばね付きシート
11 周辺固定接点(固定接点)
12 中央固定接点(固定接点)
17 光源
21、42、62 導光シート
22、43、63 粘着部
23、44、64 保持シート
31 入光部
32、51、71 斜面部
33、52、72 延長部
34、54 緩斜面
35、55 急斜面
36、53、73 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点ばねを保持する保持シートと、前記保持シートに積層され、光源からの光を導光する導光シートとを備え、
前記導光シートの一部に前記光源からの光を入光する入光部を設けると共に、前記入光部からの光を反射または吸収する遮光部が形成された斜面部を設け、
前記斜面部には、前記導光シートのシート上面から下方に向かって緩やかに傾斜する緩斜面と、前記緩斜面の下部から下方に向かって前記緩斜面よりも大きな傾斜角度で傾斜する急斜面とが形成されたことを特徴とする接点ばね付きシート。
【請求項2】
前記斜面部は、前記保持シートと前記導光シートとを跨るように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の接点ばね付きシート。
【請求項3】
前記遮光部は、前記斜面部に対し、まばらに液滴を付着させて凹凸面を形成する第1の塗布工程と、前記斜面部に対し、前記凹凸面を埋めるように液滴を付着させる第2の塗布工程とにより形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接点ばね付きシート。
【請求項4】
シート外縁の少なくとも一部に沿って前記斜面部が延在し、前記斜面部よりもシート外方に前記保持シート及び前記導光シートにより延長部が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接点ばね付きシート。
【請求項5】
接点ばねを保持する保持シートと、前記保持シートに積層され、光源からの光を導光する導光シートとを備え、
前記導光シートの一部に前記光源からの光を入光する入光部を設けると共に、シート外縁の少なくとも一部に沿って延在し、前記入光部からの光を反射または吸収する遮光部が形成された斜面部を設け、前記斜面部よりもシート外方に前記保持シート及び前記導光シートにより延長部が設けられたことを特徴とする接点ばね付きシート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の接点ばね付きシートと、前記接点ばねが離接する固定接点が設けられた基板とを備えたことを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−181226(P2011−181226A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42011(P2010−42011)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】