説明

接点装置および該接点装置を備えた車載用アンテナ装置

【課題】接点装置の導電性ゴム材と端子板を付勢するバネ材を金属製とせずに樹脂製とすることにより、接点装置の構造を簡素化し、接点装置を小型化する。
【解決手段】樹脂製のケース内に、導体(アンテナエレメント)に一面側を弾性接触させる導電性ゴム材22と、前記導電性ゴム材22の他面側に配置すると共にリード線25と接続した金属製の端子板24と、前記端子板24を前記導電性ゴム材22側に付勢する樹脂製のバネ材23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点装置および該接点装置を備えた車載用アンテナ装置に関し、特に、自動車のウインドウガラスに設けたガラスアンテナのアンテナエレメントの接点部に接続する接点装置として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載されているラジオやテレビのアンテナは、外観上の理由等により、ウインドウガラスにアンテナエレメントを設けたガラスアンテナが主流となっている。
前記ガラスアンテナのアンテナエレメントと、該アンテナエレメントで受信した信号を処理する処理回路は接点装置により接続されており、この種の接点装置が特開2005−166307号公報(特許文献1)において提供されている。
特許文献1で提供されている接点装置1は、図6に示すように、回路基板2に固定したケース3内に金属製のコイルスプリング4を配置し、該コイルスプリング4で導電性ゴムからなる接点部材5を付勢して自動車のウインドウガラス6に設けたアンテナエレメント7に接触させている。前記接点部材5に電線8の一端に接続した金属リード部9を接続し、該電線8の他端を信号処理回路を構成する基板2の導体に接続し、接点部材5、金属リード部9および電線8を介して、アンテナエレメント7で受信された信号が回路基板2の処理回路に入力される構成としている。
【0003】
しかしながら、金属リード部9と電線8からなる導通路に近接する位置に金属製のコイルスプリング4を配置すると、高周波信号の伝送特性に悪影響を及ぼしたり、導通路とコイルスプリング4との間に寄生キャパシタンスが発生するため、特許文献1の接点装置1では、導通路を金属製のコイルスプリング4から離れた位置に設ける構造としている。
例えば、図6(A)に示すように、電線8を大きく迂回させてケース3に設けた係止部3aで電線8の配線位置を規制したり、図6(B)に示すように、金属リード部9とコイルスプリング4との間に絶縁体10を配置し、さらに、比誘電率が低くなるように絶縁体10に空隙Sを設けている。
このように、特許文献1で提供されている接点装置1は、導通路と金属製のコイルスプリング4を離れた位置に配置するために構造が複雑になると共に、部材が増加して大型化する問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−166307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、接点装置の導電性ゴム材を付勢する金属製のスプリングを無くして、接点装置の構造を簡素化し、接点装置を小型化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、導体に一面側を弾性接触させる導電性ゴム材と、
前記導電性ゴム材の他面側に配置すると共にリード線と接続した金属製の端子板と、
前記端子板を前記導電性ゴム材側に付勢する樹脂製のバネ材と、
を備えたことを特徴とする接点装置を提供している。
【0007】
前記構成の接点装置では、導電性ゴム材と端子板を付勢するバネ材を金属製ではなく樹脂製としているため、導電性ゴム材、端子板およびリード線からなる導通路とバネ材を近接する位置に配置したり接触させても、従来例で示したような高周波信号の伝送特性への悪影響や寄生キャパシタンスの問題が生じない。
よって、本発明の接点装置では、導通路とバネ材を離れた位置に配置するための構造を設ける必要がなく、構造を簡素化できると共に、例えば端子板とバネ材との間に配置する部材を不要として部品点数を低減し、小型化することができる。
また、バネ材を絶縁性を有する樹脂により成形しているため、導通路を構成する端子板にバネ材を直接接触させて、該端子板を導電性ゴム材側へ付勢することができる。これにより、端子板とバネ材との間に絶縁体を配置する必要もなくなる。
【0008】
詳細には、前記導電性ゴム材、端子板およびバネ材は樹脂製のケースの内部に積層して収容しており、
前記導電性ゴム材は凸形状とし、前記ケースの先端側の閉鎖壁に設けた開口より先端の突起部を突出させて前記導体の一部に弾性接触させており、該導電性ゴム材の裏面に平板形状とした前記端子板を当接させると共に該端子板に接続するリード線を前記ケースの側壁から引き出し、
前記樹脂製のバネ材は、「く」の字形状とした板バネを対向配置した構成あるいは、コイルスプリング形状としている。
【0009】
特に、前記ケースは他端側は開口として蓋で閉鎖し、該蓋の内面に前記バネ材を一体成形し、前記導電性ゴム材および端子板を前記ケース内部に収容した状態で前記蓋で閉鎖して、前記バネ材で前記端子板を付勢していることが好ましい。
前記構成によれば、バネ材をケースの蓋に一体に設けているため、部品点数および製造工程を低減することができ、低コスト化を図ることができる。
【0010】
前記導電性ゴム材と前記端子板との間にコンデンサを介在させていることが好ましい。
前記構成によれば、前記導電性ゴム材と端子板との間に、両端に電極を備えたコンデンサを配置し、両端の電極をそれぞれ導電性ゴム材と端子板に接触させるだけで導通路にコンデンサを容易に介設することができる。
【0011】
また、本発明は、前記接点装置の導電性ゴム材を、自動車のウインドウガラスに設けられたアンテナエレメントの接点部と弾性接触させ、前記端子板は前記リード線を介して自動車内部に搭載した信号処理ユニット内の回路基板と接続している車載用アンテナ装置を提供している。
【発明の効果】
【0012】
前述したように、本発明によれば、導電性ゴム材と端子板を付勢するバネ材を金属製ではなく樹脂製としているため、導電性ゴム材、端子板およびリード線からなる導通路とバネ材を近接する位置に配置したり接触させても、高周波信号の伝送特性への悪影響や寄生キャパシタンスの問題が生じない。よって、本発明の接点装置では、導通路とバネ材を離れた位置に配置するための構造を設ける必要がなく、構造を簡素化できると共に部品点数を低減でき、小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の車載用アンテナ装置100は、対向配置されるルーフパネル40の縁部とリアウインドウ50の縁部との間で、リアウインドウ50の室内側の面に位置させたアンテナエレメント51(導体)の接点部51aと、ルーフパネル40にボルトBとナットNにより固定されたアンプユニット60の金属ケース61に内蔵されたプリント基板30の処理回路とを接点装置20により接続するものである。該処理回路はアンテナエレメント51で受信された信号を処理する回路である。
【0014】
前記接点装置20は、プリント基板30に固定される樹脂製のケース21と、該ケース21内に収容された導電性ゴム材22と、該導電性ゴム材22を付勢する樹脂製のバネ材23と、該バネ材23に付勢され導電性ゴム材22と接続される金属製の端子板24と、該端子板24が一端に接続される一方、他端がプリント基板30の導体からなる処理回路入力部31と接続されるリード線25を備えている。
【0015】
接点装置20のケース21は、筒形状のケース本体26と、該ケース本体26の一端開口26aを閉鎖する蓋27とからなる。
ケース本体26の開口26aに対向する閉鎖壁に開口26bを設け、該開口26bはケース本体26の中空部よりも小径とし、導電性ゴム材22の突出口としている。また、ケース本体26の開口26a側には、内周面に蓋27を取り付けるための係止溝26cを設ける一方、外周面にボルト孔26dを設けた基板取付部26eを突設している。さらに、ケース本体26の側面の略中央に端子板24を引き出すための側面開口26fを設けており、該開口26fの上下方向(ケース本体26の軸線方向)の幅は端子板24の上下移動を許容できる大きさとし、上下方向に直交する左右方向の幅は端子板24のタブ24aがケース本体26から抜けない大きさとしている。
【0016】
一方、ケース本体26に組み付ける蓋27は外径をケース本体26の内径と略一致させ、内面にバネ材23を一体成形して設けている。該バネ材23は、蓋27と同様の樹脂成形品からなり、一対の「く」の字状とした板バネを対向配置し、突出側の先端は安定した状態で導電性ゴム材22と端子板24を付勢できるように蓋27の内面と平行な水平部としている。また、蓋27の外周面にはケース本体26の係止溝26cに係止する係止突起27aを設けている。
【0017】
前記ケース21内に収容される導電性ゴム材22は段差部を介して大径の基部22aと小径の突起部22bとからなる凸形状としている。基部22aはケース21の内部に配置される一方、突起部22bはケース本体26の開口26bから突出し、その突出側の端面を接点部22cとしている。
【0018】
前記端子板24は平板形状のタブ24aとリード線25に圧着接続する電線圧着部24bからなり、先端側のタブ24aはケース21の内部に配置される一方、基部側の電線圧着部24bがケース本体26の開口26fより外部側方に引き出された状態としている。一端に端子板24が圧着接続されたリード線25は他端がプリント基板30の処理回路入力部31に接続されるものであり、端末の絶縁被覆が剥離されて芯線が露出している。
【0019】
前記導電性ゴム材22と端子板24をケース本体26に収容した状態で、ケース本体26の開口26aに蓋27を内嵌して取り付けている。このとき、蓋27に設けたバネ材23が端子板24に直接接触して、該端子板24と導電性ゴム材22を開口26b側へ付勢し、導電性ゴム材22の突起部22bが開口26bを通して外部へ突出すると共に、導電性ゴム材22の内端面と端子板24のタブ24aが当接して接続される。
【0020】
前記接点装置20は、ルーフパネル40に取り付けられるアンプユニット60内のプリント基板30にボルト(B)締め固定すると共に、リード線25の他端をプリント基板30の処理回路入力部31と半田付け接続している。
【0021】
前記のように、接点装置20をルーフパネル40側に取り付けた状態で、ルーフパネル40とリアウインドウ50を組み付けると、導電性ゴム材22の接点部22cがリアウインドウ50の室内側に設けたアンテナエレメント51の接点部51aと弾性接触する。これにより、導電性ゴム材22、端子板24及びリード線25からなる導通路を介してアンテナエレメント51とプリント基板30の処理回路入力部31が接続され、アンテナエレメント51で受信された信号がプリント基板30の処理回路に入力される。
【0022】
前記構成によれば、導電性ゴム材22を付勢するバネ材23を金属製ではなく樹脂製としているため、導電性ゴム材22、端子板24およびリード線25からなる導通路とバネ材23を近接する位置に配置したり接触させても、高周波信号の伝送特性への悪影響や寄生キャパシタンスの問題が生じない。よって、本実施形態の接点装置20では、導通路とバネ材23を離れた位置に配置するための構造を設ける必要がなく、構造を簡素化できると共に、部品点数を低減し、小型化することができる。
なお、ケース本体26としたカバー27は別体に限らず、薄肉ヒンジを介して一体成形し、ケース内に導電性ゴム材22と端子板24を収容した後、薄肉ヒンジを支点として回動させ、ケース本体26の開口を蓋27で閉鎖する構成としてもよい。
【0023】
また、樹脂製のバネ材23は蓋27に一体成形したものに限らず、図2及び図3に示すように、バネ材23を蓋27と別体に設けてもよい。
図2に示す構成では、バネ材23’を対向する「く」の字状の弾性部23a’を水平方向の連結部23b’で連結した形状としている。
また、図3に示す構成では、バネ材23”をコイルスプリング形状としている。
【0024】
図4に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、導電性ゴム材22と端子板24の間に両端に電極28a、28bを設けたコンデンサ28を配置しており、一方の電極28aを導電性ゴム材22の内端面と接触させる一方、他方の電極28bを端子板24と接触させ、導電性ゴム材22と端子板24との間にコンデンサ28を介在させている。
【0025】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、接点装置20の構成を簡単にできると共に、簡単な構成で導電性ゴム材22、端子板24およびリード線25からなる導通路中にコンデンサ28を介設することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図5に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態の車載用アンテナ装置100では、接点装置20をプリント基板30に実装せずにルーフパネル40にボルト(B)締め固定しており、アンテナエレメント51で受信した信号を処理する処理回路を備えたプリント基板30は、自動車内部の接点装置20から離れた位置に搭載したアンプユニット60(信号処理ユニット)内に収容している。よって、接点部材20のリード線25をアンプユニット60まで配線して、該リード線25をプリント基板30の処理回路と接続している。ここで接点装置20とアンプユニット60間が遠く離れている場合は、リード線接続だとノイズの影響を受けやすいため、同軸線で接続、あるいはリード線経路途中で同軸線に変換後に同軸線にて引回すようにしてもよい。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用アンテナ装置を示す図面である。
【図2】第1実施形態の第1変形例を示す図面である。
【図3】第1実施形態の第2変形例を示す図面である。
【図4】本発明の第2実施形態の車載用アンテナ装置を示す図面である。
【図5】本発明の第3実施形態の車載用アンテナ装置を示す図面である。
【図6】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0028】
20 接点装置
21 ケース
22 導電性ゴム材
23 バネ材
24 端子板
25 リード線
26 ケース本体
27 蓋
28 コンデンサ
30 プリント基板(回路基板)
40 ルーフパネル
50 リアウインドウ
51 アンテナエレメント
60 アンプユニット信号処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に一面側を弾性接触させる導電性ゴム材と、
前記導電性ゴム材の他面側に配置すると共にリード線と接続した金属製の端子板と、
前記端子板を前記導電性ゴム材側に付勢する樹脂製のバネ材と、
を備えたことを特徴とする接点装置。
【請求項2】
前記導電性ゴム材、端子板およびバネ材は樹脂製のケースの内部に積層して収容しており、
前記導電性ゴム材は凸形状とし、前記ケースの先端側の閉鎖壁に設けた開口より先端の突起部を突出させて前記導体の一部に弾性接触させており、該導電性ゴム材の裏面に平板形状とした前記端子板を当接させると共に該端子板に接続するリード線を前記ケースの側壁から引き出し、
前記樹脂製のバネ材は、「く」の字形状とした板バネを対向配置した構成あるいは、コイルスプリング形状としている請求項1に記載の接点装置。
【請求項3】
前記ケースは他端側は開口として蓋で閉鎖し、該蓋の内面に前記バネ材を一体成形し、前記導電性ゴム材および端子板を前記ケース内部に収容した状態で前記蓋で閉鎖して、前記バネ材で前記端子板を付勢している請求項1または請求項2に記載の接点装置。
【請求項4】
前記導電性ゴム材と前記端子板との間にコンデンサを介在させている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接点装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の接点装置の導電性ゴム材を、自動車のウインドウガラスに設けられたアンテナエレメントの接点部と弾性接触させ、前記端子板は前記リード線を介して自動車内部に搭載した信号処理ユニット内の回路基板と接続している車載用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−226757(P2008−226757A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66551(P2007−66551)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】