説明

接着ライナー

本発明は、押出フィルムまたはシートの形態の義歯接着ライナーであって、(a)義歯接着に有効な量のアルギネートと、(b)熱可塑性ポリマーと、(c)可塑剤とを含み、前記組成物が湿った粘膜表面に接着可能なフィルムに押し出されることが可能である義歯接着ライナーを提供する。本発明は、(a)義歯接着に有効な量のアルギネート、熱可塑性ポリマー、および可塑剤の組成物を調製するステップと、(b)該組成物から義歯接着ライナーを形成するステップとを含む、義歯接着ライナーを調製するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、歯科補綴物向けの接着ライナーに関する。より詳細には、本発明は、押出フィルム形態の接着ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、喪失歯用の代替物であり、口腔内に存在する歯の全部または一部を置換するものとして働く。時間の経過とともに、良好に適合した義歯でも、歯肉または粘膜組織が自然に収縮および変化するために適合が不良になる恐れがある。
【0003】
したがって、接着性のクリーム、液体、粉末、およびライナーを使用することによって義歯を口の中に固定する場合が多い。ライナーは、それが補綴物と口蓋または顎の間に配置されるのに望ましいある種の強度および一体性を備えた薄いフィルム、ストリップまたはウエーハの形態の義歯接着剤であり、支持体を使用しなくても口の中の水分と接触した場合膨張する。
【0004】
従来技術で開示された義歯接着ライナーは、通常、織物複合材または多層ストリップの形態である。例として、米国特許第3990149号には、圧縮繊維マットを含む接着性ホイルが開示されている。米国特許第4880702号には、異なる3層からなるストリップの形態の義歯安定材が開示されている。米国特許第5158825号には、接着剤を含浸させた不織布の形態の義歯ライナーが開示されている。米国特許第4503116号には、織物の繊維面を重ねた積層体を含む義歯接着ライナーが開示されており、織物の一方の面の繊維が、熱可塑性エチレンオキシドポリマーによって対向する織物上の繊維に加熱結合されている。米国特許第5877233号には、接着成分を被覆した少なくとも1つの非接着自己支持層を備えた多層義歯接着ライナーが開示されている。米国特許出願公開第2004/0028930号には、マレイン酸コポリマーの混合部分塩を接着成分として使用して義歯接着用押出フィルムを作製する方法が記載されている。
【0005】
米国特許第4373036号には、単層ストリップまたはフィルムの形態の義歯固定剤が開示されている。開示の単層義歯接着ライナーは、低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸の部分中和コポリマー43.6部、ヒドロキシプロピルセルロース64.4部、着色剤1部、芳香剤、酸化防止剤、および防腐剤を合わせて全部で120部からなる組成物を水472部、およびグリセリン8部と混合し、粘性溶液を形成して、真空下55.5℃でフィルムキャスティング法を使用して調製される。この手法は、金型によって移動式キャリアテープ上に鋳込まれ、その後フィルムが形成され、該フィルムを高温真空下で乾燥することができる溶液中にヒドロキシプロピルセルロースを溶解させるために組成物中で固有に要した水を蒸発させるのに必要な、時間およびエネルギー量のために経済的に魅力がない。
【0006】
強力な接着特性を有し、しかも製造が効率的で、消費者にとって使用が容易である義歯ライナーに対する当技術分野での必要性が依然として存在する。本発明は、こうした必要性を満たすものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
押出フィルムまたはシートの形態の義歯接着ライナーを提供することが本発明の目的である。
【0008】
唯一の接着成分としてアルギネートを含むかかる義歯接着ライナーを提供することが本発明の他の目的である。
【0009】
押出中に発泡剤を添加することによってクッション効果を提供する発泡フィルムであるかかる義歯接着ライナーを提供することが本発明のさらなる他の目的である。
【0010】
単層フィルムであるかかる義歯接着ライナーを提供することが本発明のさらなる他の目的である。
【0011】
効率的に製造されるかかる義歯接着ライナーを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0012】
強力な接着特性を有するかかる義歯接着ライナーを提供することがさらに本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のこれらおよび他の目的は、押出フィルムまたはシートの形態の義歯接着ライナーによって実現される。義歯接着ライナーは、(a)義歯接着に有効な量のアルギネート、(b)熱可塑性ポリマー、および(c)可塑剤を含み、それらから基本的になり、またはそれらからなることができ、前記組成物は、湿った粘膜表面に接着が可能であるフィルムに押し出されることが可能である。
【0014】
本発明は、(a)義歯接着に有効な量のアルギネート、熱可塑性ポリマー、および可塑剤の組成物を調製するステップと、(b)該組成物から義歯接着ライナーを形成するステップとを含む、義歯接着ライナーを調製するための方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
驚くべきことに、本発明による義歯ライナー中の唯一の接着成分として接着に有効な量のアルギネートを使用すると、製造が容易で経済的である、例外的に優れた接着特性を備えた接着ライナーがもたらされることが発見された。
【0016】
本発明の接着成分は、1つまたは複数のアルギネートである。本発明の接着ライナー中の接着成分として1つまたは複数のアルギネートのみを使用すると、従来技術の接着ライナーと比較して、それに匹敵するおよび/またはそれより優れた接着特性がライナーに提供されることが予想外にも見出された。
【0017】
本発明で使用するのに適したアルギネートとして、限定されないが、アルギン、アルギン酸、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムなどのアルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸トリエタノールアミン、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。アルギネートは、ケルプから抽出される高分子量ポリサッカライドである。それらは、3つの異なるポリマーセグメント;すなわち、ポリマンヌロン酸セグメント(Mブロック)、ポリグルロン酸セグメント(Gブロック)、および交互のマンヌロン酸、グルロン酸単位(MGブロック)からなる、1,4結合したβ−Dマンヌロン酸とα−Lグルロン酸の線状コポリマーの塩形態またはエステル形態である。
【0018】
1つまたは複数のアルギネートが、義歯接着に有効な量の中に存在する。義歯接着に有効な量とは、良好な義歯接着特性、例えば、シール部を破壊し、それにより義歯を除去しようと働く咀嚼応力に耐えるのに十分な接着強度を示すこと;コーヒーまたは他の熱い飲料を飲むなどの通常の行為の間に口腔内で起こる極端な環境変化の下での耐劣化性;ならびに義歯装着者が、洗浄およびメンテナンスのために義歯を取りはずすことができるような取りはずし可能性を備えた可撓性で均一な義歯接着ライナー生成物の十分な量を意味する。
【0019】
本発明の一実施形態では、アルギネートは、約5重量%から約60重量%の量で存在する。他の実施形態では、その量は、約10重量%から約30重量%である。
【0020】
本発明による接着ライナーは、1つまたは複数の熱可塑性ポリマーも含む。その1つまたは複数の熱可塑性ポリマーは、水溶性である。「熱可塑性ポリマー」とは、溶融加工が可能な材料を指す。本明細書では、用語「熱可塑性」とは、熱に暴露されると軟化および/または可撓化し、室温まで冷却されるとその元の条件に概して戻る材料を指す。
【0021】
本明細書では、材料が過剰の水中に実質的に溶解することによって溶液を形成し、それによってその最初の形態を失い、水溶液全体に基本的に分子として分散するようになる場合に該材料は「水溶性である」と見なされよう。架橋は材料を水不溶性にする傾向があるので、通常、水溶性材料は実質的な程度の架橋を有さないであろう。本明細書ではまた、用語「水不溶性である」とは、過剰の水に暴露されると、分散はするが溶解はしない材料を指す。このために、水不溶性材料は、一般に、その元の同一性または物理構造を保持しているが、高度に分散した状態でも、流動に抵抗し、近傍の材料と融合するのに抵抗するだけの十分な物理的一体性を有さなければならない。
【0022】
本発明で使用するのに適した熱可塑性ポリマーとして、限定されないが、ポリエチレンオキシドポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0023】
重量平均分子量が80,000〜1,150,000であるヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)ポリマーは、本発明の目的のために有用である。HPCは、熱可塑性ポリマー成分として、それ自体、または他の熱可塑性ポリマー成分、すなわち、PEOなどと組み合わせて使用し得る。HPCは、商標KLUCELでHercules,Inc.(デラウェア州Wilmington)から市販されている。一実施形態では、HPCは、本発明の義歯接着ライナー組成物中で0〜90重量%の量で存在する。他の実施形態では、HPCは、他の熱可塑性ポリマーと組み合わせて、5〜20重量%の量で存在する。さらなる第3の実施形態では、HPCは、唯一の熱可塑性ポリマーとして、60〜90重量%の量で存在する。
【0024】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)は、可塑剤と組み合わせて使用された場合、熱可塑性ポリマーの加工特性を示す他の水溶性セルロースである。HPMCは、熱可塑性ポリマー成分として、それ自体、または他の熱可塑性ポリマー成分、すなわち、PEOなどと組み合わせて使用し得る。HPMCは、商標METHOCELで米国ミシガン州MidlandのDow Chemical Companyから市販されており、METHOCELは、HPMCであり、水中の濃度2%で粘度400cPsをもたらす。
【0025】
一実施形態では、HPMCは、本発明の義歯接着ライナー組成物中で0〜90重量%の量で存在する。他の実施形態では、HPMCは、他の熱可塑性ポリマーと組み合わせて、5〜20重量%の量で存在する。さらなる第3の実施形態では、HPMCは、唯一の熱可塑性ポリマーとして、60〜90重量%の量で存在する。
【0026】
ポリエチレンオキシドポリマー(「PEO」)を使用する場合、該材料は、義歯接着ライナー組成物が、十分な粘着強度および耐劣化特性を示すのに有効である重量平均分子量を示すことが所望される。一般に、PEOポリマーの重量平均分子量が過度に大きい場合、ポリマー鎖が著しく絡まる場合があり、そのために加工が困難である熱可塑性ポリマーがもたらされる恐れがある。一実施形態では、本発明で使用するのに適したPEOポリマーは、約100,000〜約20,000,000の重量平均分子量を示す。他の実施形態では、分子量は、約200,000〜約8,000,000である。
【0027】
一実施形態では、PEOは、本発明の義歯接着ライナー組成物中で0〜90重量%の量で存在する。他の実施形態では、PEOは、50〜90重量%の量で存在する。さらなる第3の実施形態では、PEOは、他の熱可塑性ポリマーと組み合わせて、30〜70重量%の量で存在する。
【0028】
さらなる第4の実施形態では、PEOは、唯一の熱可塑性ポリマーとして、30〜90重量%の量で存在する。
【0029】
毒性が許容される相溶剤または可塑剤を第3の所望の成分として、義歯接着組成物を所望の押出加工特性を示すのに十分な量で使用することが一般に所望されている。
【0030】
本明細書で使用される用語「毒性が許容される」とは、ヒトおよび/または下等動物への投与に対するその毒性プロフィールが適切である材料をいう。
【0031】
適切な可塑剤として、限定されないが、水;ポリエチレンオキシド;ポリプロピレンオキシド;プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコール;グリセロールトリアセタートなどのグリセロールエステル;脂肪酸トリグリセリド;ナフテン酸油;芳香族油;ヒマシ油などの植物油;または低分子量ロジンエステル、ポリテルペン;またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0032】
HPMC自体を熱可塑性ポリマーとして使用する場合、プロピレングリコールを溶融加工中に可塑剤として使用し得る。PEO自体を熱可塑性ポリマーとして使用する場合、水を溶融加工中にPEO用の逃散性可塑剤として使用し得ることが示唆されている。
【0033】
可塑剤は、約1〜約30重量%の濃度で存在してよい。好ましくは、可塑剤は、約5〜約25重量%、より好ましくは、約3重量%〜約6重量%の量で含まれる。
【0034】
所望により義歯接着ライナー組成物は、粘膜または局部投与に適した1つまたは複数の治療活性成分を含み得る。本明細書で使用される句、「粘膜または局部投与に適した」とは、口腔などの身体の内部粘膜表面から吸収される、または皮膚の表面に施用される場合薬理的に活性である薬剤をいう。治療活性成分は、全組成物の約0〜約30重量%の濃度で存在し得る。
【0035】
これらの組成物中で有用である治療活性成分として、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニド、フェノール剤などの抗菌剤;テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、またはクリンダマイシンなどの抗生物質;アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセンおよびその塩、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、シメチジン、オイゲノール、またはヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤;硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、またはフッ化ナトリウムなどの象牙質脱感作剤;リドカインまたはベンゾカインなどの麻酔薬;抗菌剤;ショウノウ、ユーカリ油、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド誘導体などの芳香族化合物;インスリン;ステロイド;および抗腫瘍薬が挙げられる。ある種の治療の形態では、最適の効果を得るために同じデリバリー系でこれらの薬剤の組合せが有用であり得ることが理解される。したがって、例えば、単一デリバリー系で抗菌剤と抗炎症剤とを合わせることによって複合効果を提供することができる。
【0036】
本発明の組成物は、1つまたは複数の抗菌剤を含み得る。本発明の組成物で使用するのに適した抗菌剤として、限定されないが、セチルピリジウムクロリド、ドミフェンブロミド、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニドまたはフェノール剤、安息香酸および安息香酸ナトリウム;パラベン;ソルビン酸およびソルベート;プロピオン酸およびプロピオネート;酢酸およびアセテート;硝酸塩および亜硝酸塩;二酸化硫黄およびスルフィット;抗生物質;ジエチルピロカーボネート;エポキシド;過酸化水素;ホスフェート;またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0037】
1つまたは複数の抗菌剤は、組成物に有効な抗菌特性を提供するような組成物中の量において提供し得る。1つまたは複数の抗菌剤は、組成物の約0.0001から約2.0重量%、好ましくは組成物の0.001から約1.0重量%、より好ましくは約0.01から約0.5重量%の量で存在し得る。
【0038】
本発明の組成物は、1つまたは複数の臭気吸着剤成分を含み得る。適切な臭気吸着剤成分として、限定されないが、シクロデキストリン、活性炭、重炭酸ナトリウム、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。本発明で使用するのに適したシクロデキストリンとして、限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、カルボキシルメチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、第四級アンモニウムシクロデキストリン、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0039】
1つまたは複数の臭気吸着剤成分は、約0から約30重量%の量で存在し得る。
【0040】
組成物は、限定されないが、二酸化ケイ素、アスコルビン酸などの酸化防止剤、着色剤、メチルおよびプロピルパラベンなどの防腐剤、増粘剤、香味料、香料、五感増強剤、またはそれらの任意の組合せを含めての1つまたは複数の適切な追加成分を含み得る。
【0041】
香味、芳香、および/または五感増強を提供するのに適した成分として、限定されないが、天然または人工甘味料、メントール、メンチルラクテート、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、青葉アルコール、3−メントキシプロパン−1,2−ジオールおよびパラメンタンなどの清涼剤、N−エチル−メンタン−3−カルボキサミドなどのカルボキサミド剤が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物中で、1つまたは複数の適切な追加成分は、組成物の全重量に対して、約0から約20重量%の量で存在し得る。
【0043】
本組成物は、以下の任意の方法または方法の組合せによって調製し得る。本明細書で使用される用語「混合物」とは、溶液、スラリーまたは懸濁液を指す。
【0044】
一実施形態では、1つまたは複数のアルギネートは、高せん断ミキサー内で、フィルム形成成分(複数可)および所望の成分と一緒に混合される。形成されるならば易流動性混合物になるまで可塑剤を徐々に添加する。混合は、2軸押出機などの押出機内で直接行うこともできる。混合物は、押出機、例えば、70〜120℃に予熱された共回転2軸押出機または単一段押出機中に供給され、次いで、ある種のミル間隔、例えば10ミル間隔で予め設定された金型から押し出される。押し出されたフィルム生成物は、油圧プレスまたはフラットローラまたは他の適切な手段で平滑にプレスされ、次いで、スタンピングマシンによって所望の形状および大きさにダイカットすることができる。
【0045】
適切には、本発明の義歯ライナーは、多層共押出機を使用して多層フィルムとして押し出し得る。しかし、これは可能ではあるが、追加のコストを考慮すれば不必要である。得られた生成物は、本発明の義歯ライナー組成物である1つまたは複数の層と、プラスチック、微晶ワックス、クロス、フリースなどの非接着材料から調製される1つまたは複数の層とを有する。
【0046】
限定されないが、二酸化炭素ガスを含めての発泡剤を押出中に注入することによって義歯接着発泡ライナーを作製し得る。
【0047】
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに説明し、実証する。該実施例は、例示のためにのみ提供されるものであり、本発明を限定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
上記参照のライナーを調製するために、可塑剤を除く成分の全てを一緒にブレンドすることによって、基材粉末ブレンドを創出する。基材粉末ブレンドを押出工程に導入し、そこで、可塑剤を押出中に粉末ブレンドに注入する。粉末ブレンドをリボンブレンダを使用して調合した。
【0051】
3つの加熱ゾーンを備えた円錐型二軸押出機、可塑剤用の注入口、および4インチリップ金型を使用した。工程の温度の範囲は、粉末供給ステーションの約85℃から、金型リップステーションの約110℃までであった。押出機の速度は、約2kg/時間であった。
【0052】
得られた生成フィルムは、可撓性で均一であり、白色からオフホワイトの半透明であった。フィルムの厚さは、約0.01インチから約0.013インチである。
【0053】
接着試験の手順
本接着力試験では、ライナー試料(1平方インチの断片に切断されている)約0.50gを、ChatillonゲージモデルTCD200の低部プラットホーム(特別に切断されたペトリ皿によって端部が囲まれている)の中心に置く。ライナー試料が水中に完全に浸漬されている間に、Chatillon器具が咀嚼をシミュレートする。連続的な力を印加するのではなく、距離が一定で、繰り返される。ヘッドとプラットホームの間にわずかな力が感じられるまでChatillonラムを下げる。0.00〜0.10ポンドの力のみが実現されるようにラムを調整する。これがゼロ点である。ヘッドの高さを基部より0.20mm上に設定する。脱イオン水50gをペトリ皿内に注ぐ。設定点から距離0.10mmで上下に移動しながら、1回の試験で機械は250回のシミュレーションを行う。1回の試験の継続時間は45分間である。ポンドで表した接着/圧縮力を記録してグラフにプロットする。
【0054】
剥離力の手順
剥離力試験では、ライナー試料0.50gを除去可能な下部アクリルプレート上に置く。特注の器具によって、試験材料を接着したアクリルプレートから試験材料を離すのに要する力が測定される。除去可能な上部アクリルプレートを、脱イオン水1mlで湿らせた一片の布で覆う。チャンバを、水浴の内部チャンバ内で一定温度37℃に保った(上部および下部プレートを完全に浸漬させるのに十分な)脱イオン水で満たす。5分間空気圧縮力10ポンドを印加する。5分後、空気圧縮力を解放し、下部プレートを引き離す。プレートを離すのに要した力の量をポンドで測定する。60分の間、5分間隔で試験を繰り返す(5分毎に読み取る)。ポンドで表した剥離力を記録してグラフにプロットする。上部および下部プレートを離すのに要した力が大であるほど、義歯接着性能が良好である。
【0055】
図1を参照すると、本発明に記載の義歯ライナー(実施例A)は、比較のライナー(実施例F)に対して、同等の初期剥離力特性を示し、水和時間30分後ではより優れた剥離力特性を示すことが明白である。
【0056】
図2および3を参照すると、本発明による接着ライナー(実施例A)は、比較例のライナー(実施例Dおよび実施例F)より優れた接着および圧縮力特性を有することが明白に実証されている。
【0057】
本発明は、義歯を使用者の口に接着するための方法をも提供する。該方法は、義歯に1つまたは複数の本発明による義歯接着ライナーを施用するステップと、(b)義歯を使用者の口の中に位置させるステップとを含む。使用者の口の中の湿った粘膜表面に接触すると、義歯接着ライナーは、接着性になり、義歯を使用者の口に接着させる。
【0058】
上記は、その好ましい実施形態を含む本発明を説明する。本明細書で具体的に開示された実施形態の改変形態および改良形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることを理解されたい。前記説明を与えられた当業者は、さらなる詳細な説明なしで、本発明を完全に利用し得ると考えられる。したがって、任意の実施例は、単に例示的であり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではないと見なすべきである。その中で独占権または優先権が主張される本発明の実施形態は、以下のように定義される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】分で表した水和時間に対してポンドで表した剥離力をプロットし、本発明の接着組成物を比較例と比較したグラフである。
【図2】分で表した時間に対してポンドで表した接着力および圧縮力をプロットし、本発明の10ミル接着ライナーを比較例と比較したグラフである。
【図3】分で表した時間に対してポンドで表した接着力および圧縮力をプロットし、本発明の13ミル接着ライナーを比較例と比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、(a)義歯接着に有効な量の1種または複数のアルギネートからなる群より選択される接着成分;(b)熱可塑性ポリマー成分;および(c)可塑剤からなる義歯接着性ライナー組成物であって、湿った粘膜面に対して接着能を有するフィルムまたはシートの形態における一の義歯接着性ライナーに押出可能である、義歯接着性ライナー組成物。
【請求項2】
1種または複数のアルギネートが、アルギン、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸トリエタノールアミン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項3】
義歯接着に有効な量が、組成物の全重量に基づいて、約5重量%ないし約60重量%である、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項4】
熱可塑性ポリマー成分が、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリマー成分が、義歯接着性ライナー組成物の全重量に基づいて、約30重量%ないし約90重量%の量にて存在する、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項6】
熱可塑性ポリマー成分が、義歯接着性ライナー組成物の全重量に基づいて、約70重量%ないし約80重量%の量にて存在する、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項7】
可塑剤が、水、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、グリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、多価アルコール、グリセリン、ソルビトール、グリセロールエステル、グリセロールトリアセタート、脂肪酸トリグリセリド、ナフテン酸油、芳香族油、植物油、ヒマシ油、低分子量ロジンエステル、ポリテルペンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項8】
可塑剤が、義歯接着性ライナー組成物の全重量に基づいて、約1重量%ないし約30重量%の量にて存在する、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項9】
可塑剤が、義歯接着性ライナー組成物の全重量に基づいて、約3重量%ないし約6重量%の量にて存在する、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項10】
義歯接着性ライナーが単層押出性フィルムまたは発泡性シートである、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項11】
義歯接着剤組成物の全重量に基づいて、約0ないし約30重量%の1種または複数の治療用活性剤をさらに含む、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項12】
1種または複数の治療用活性剤が、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニド、フェノール剤、抗生物質、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、抗炎症剤、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセン、ナプロキセン塩、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、シメチジン、オイゲノール、ヒドロコルチゾン、象牙質脱感作剤、硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウム、麻酔剤、リドカイン、ベンゾカイン、抗真菌剤、芳香族剤、ショウノウ、ユーカリ油、アルデヒド誘導体、ベンズアルデヒド、インスリン、ステロイド、抗腫瘍薬、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項13】
組成物の全重量に基づいて、約0重量%ないし約30重量%の1種または複数の臭気吸着剤成分をさらに含む、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項14】
1種または複数の臭気吸着性成分が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリン、カルボキシルメチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、第四級アンモニウムシクロデキストリン、活性炭、炭酸ナトリウム、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項13記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項15】
二酸化ケイ素、抗酸化剤、アスコルビン酸、ビタミンE、着色剤、防腐剤、メチルパラベン、プロピルパラベン、増粘剤、香味料、香料、五感増強剤、およびそれらの組合せからなる群より選択される、1種または複数の付加的な成分をさらに含む、請求項1記載の義歯接着性ライナー組成物。
【請求項16】
(a)本質的に、(i)義歯接着に有効な量の1種または複数のアルギネートからなる群より選択される義歯接着剤;(ii)熱可塑性ポリマー成分;および(iii)可塑剤からなる組成物を調製する工程;および(b)該組成物を加圧下で押出機を介し、フィルムまたはシートを形成するようなダイを通して押し出すことで、該組成物より義歯接着性ライナーを形成する工程を含む、義歯接着性ライナーの調製方法。
【請求項17】
義歯接着性ライナーが単層押出性フィルムまたは発泡性シートの形態である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
義歯接着性ライナーが共押出機を用いて押し出され、多層押出性フィルムを形成する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
熱可塑性ポリマー成分が、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
熱可塑性ポリマー成分が、組成物の全重量に基づいて、約50重量%ないし約90重量%の量にて存在する、請求項16記載の方法。
【請求項21】
可塑剤が、水、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、グリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、多価アルコール、グリセリン、ソルビトール、グリセロールエステル、グリセロールトリアセタート、脂肪酸トリグリセリド、ナフテン酸油、芳香族油、植物油、ヒマシ油、低分子量ロジンエステル、ポリテルペンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
可塑剤が、組成物の全重量に基づいて、約1重量%ないし約30重量%の量にて存在する、請求項16記載の方法。
【請求項23】
組成物の全重量に基づいて、約0ないし約30重量%の、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニド、フェノール剤、抗生物質、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、抗炎症剤、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセン、ナプロキセン塩、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、シメチジン、オイゲノール、ヒドロコルチゾン、象牙質脱感作剤、硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウム、麻酔剤、リドカイン、ベンゾカイン、抗真菌剤、芳香族剤、ショウノウ、ユーカリ油、アルデヒド誘導体、ベンズアルデヒド、インスリン、ステロイド、抗腫瘍薬、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1種または複数の治療用活性剤をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
組成物の全重量に基づいて、約0ないし約20重量%の、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリン、カルボキシルメチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、第四級アンモニウムシクロデキストリン、活性炭、炭酸水素ナトリウム、およびそれらの組合せからなる群より選択される、1種または複数の臭気吸着剤成分をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項25】
二酸化ケイ素、抗酸化剤、アスコルビン酸、ビタミンE、着色剤、防腐剤、メチルパラベン、プロピルパラベン、増粘剤、香味料、香料、五感増強剤、およびそれらの組合せからなる群より選択される、1種または複数の付加的な成分をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項26】
義歯を使用者の口腔に接着させる方法であって、(a)本質的に、義歯接着に有効な量にて存在する1種または複数のアルギネートからなる群より選択される接着成分;熱可塑性ポリマー;および可塑剤からなる1種または複数の義歯接着性ライナーを、該義歯に適用する工程;および(b)該義歯を使用者の口腔内に位置付ける工程を含み、
その1種または複数の義歯接着性ライナーが使用者の口腔内の湿った粘膜面と接触して接着するようになり、それにより義歯をその使用者の口腔に接着させるところの、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516754(P2009−516754A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542505(P2008−542505)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/061089
【国際公開番号】WO2007/062346
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】