説明

接着作業用の車両ボデー加温装置

【課題】搬送されてくる車両のボデー側面に対して粘着層を有する部材を押圧して接着する作業に際して、搭載位置のずれを伴うか否かに拘らずボデー側面の温度に適合した熱量で加温し得る接着作業用の車両ボデー加温装置を提供する。
【解決手段】複数個の赤外線ランプ11を備えた加温装置本体10に、この本体を搬送路に対して前進又は後退させる進退駆動機構16〜18が付属すると共に、加温装置本体10及びその対向するボデー側面、例えばサイドドアパネル1a間の離間距離を検知する距離センサと、その温度を検知する温度センサと、距離検知信号Rに応答して加温装置本体10を所定の離間距離に位置付けするように進退駆動機構16〜18を駆動制御する進退制御部21と、サイドドアパネル1aを所定の温度に加温するように、作動すべき赤外線ランプ11の個数を内蔵の個数データを基に温度検知信号Tに応答して選択して作動させる熱源制御部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上を搬送されてくる車両のボデー側面に、粘着層を有する部材を押圧して接着する作業に際して、ボデー側面を加温するために搬送路の側方に配置される接着作業用の車両ボデー加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、自動車のサイドドアパネルの下方領域に、その保護のためにプロテクタモールをドアパネルに設けた取付け構造を介して取付けるためのプロテクタモールの取付け構造が開示されている。その取付け方法に関しては、プロテクタモールの裏面に両面粘着テープの一方を接着しておき、自動車の製造工程において表面側の離型紙を剥がして接着する方法も行われている。その際、粘着層の接着力を長期にわたり確保するために、搬送されてくる自動車のサイドドアパネルを赤外線ランプで加温し、その直後に粘着テープを押圧接着している。
【特許文献1】特開平7−205731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両ボデーの温度は周囲の温度により変動するために低温期用に熱量に余裕を持たせており、したがって周囲温度が相対的に高い場合無駄なエネルギーを消費することになり、装置構造も嵩張ることになる。また、搬送路への搭載位置のずれに起因してボデー側面の加温される温度が変動したり、或は車両ボデーの温度の如何に拘らず出力熱量が一定であることにより、接着品質上も問題がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて、搬送されてくる車両のボデー側面に対して搭載位置のずれを伴うか否かに拘らず離間位置からボデー側面の温度に適合した熱量で加温し得る接着作業用の車両ボデー加温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この目的を達成するために、請求項1により、搬送路上を搬送されてくる車両のボデー側面に、粘着層を有する部材を押圧して接着する作業に際して、ボデー側面を加温するために搬送路の側方に配置される接着作業用の車両ボデー加温装置において、搬送路に沿って配列された複数個の熱源を備えた加温装置本体に、この加温装置本体を搬送路に対して前進又は後退させる進退駆動機構が付属すると共に、加温装置本体及びその対向するボデー側面間の離間距離を検知する距離センサと、ボデー側面の温度を検知する温度センサと、距離センサの距離検知信号に応答して加温装置本体をボデー側面に対して所定の離間距離に位置付けするように進退駆動機構を駆動制御する進退制御部と、ボデー側面を所定の温度に加温するように、作動すべき熱源の個数をボデー側面の温度に対応して規定する内蔵の個数データを基に、温度センサの温度検知信号に応答して選択した個数の熱源を作動させる熱源制御部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
進退制御部は、距離検知信号に応答して加温装置本体をボデー側面に対して所定の離間距離に進退制御すると共に、熱源制御部は、温度検知信号に対応した個数の熱源を選択して作動させる。
【0007】
加温装置本体が所定の離間距離に接近し得ない可能性がある場合、請求項2により、熱源制御部が、ボデー側面間の離間距離が所定の離間距離よりも遠いずれ距離及びボデー側面の温度に対応して作動すべき熱源の追加個数を規定する内蔵の追加個数データを基に、加温装置本体の最前進位置において距離センサで検知されたずれ距離及び温度検知信号に応答して追加選択した個数の熱源を作動させる。
【0008】
非接触式の熱源としては、請求項3により熱源が赤外線ランプであり、また非接触式の温度センサとしては、請求項4により温度センサが非接触式の表面温度センサである。接着される部材がサイドドアパネルのプロテクタモールである場合、請求項5により接着作業用の車両ボデー加温装置が、搬送路の両側に配置されると共に、粘着層を有する部材が、自動車のサイドドアパネルの下方領域に接着されるように、両面粘着テープの片面が接着されているプロテクタモールである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、車両のボデー側面に対する所定の接近位置で、その温度に応じた熱量で加温することにより、高温時の無駄なエネルギ消費が回避されると共に搭載位置のずれ或は加温の過不足による接着品質の低下も抑制され、省スペース化も実現される。その際、請求項2の発明によれば、搬送路への接近制御範囲が制限されていることにより、標準的な離間距離に接近し得ない場合でも接着品質を確保できる。
【0010】
請求項3の発明によれば、赤外線ランプを用いることにより、非接触状態で加温可能であり、また個数により熱量制御が高精度に、かつ即座に行われ、無駄なエネルギ消費が一層確実に回避される。請求項4の発明によれば、非接触式にボデー側面の温度を検知することにより、ボデー側面が周囲温度と異なる場合でも加温する温度が高精度に設定可能となる。請求項5の発明によれば、本発明の加温装置を搬送路の両側に配置することにより、両側のサイドドアにドアパネル用プロテクタモールの粘着テープによる接着が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図3を基に本発明の実施の形態による接着作業用の車両ボデー加温装置を説明する。図1に示すように、自動車ボデー1が、順に搬送されてくる搬送路5の両側には、所属の側のボデー側面であるサイドドアパネル1aを加温する接着部材用加温装置が配置されている。その下流側に続く作業領域において、図3に示すように、サイドドアパネル1aの下方領域に接着部材としてのプロテクタモール9を接着される。
【0012】
この加温装置の各加温装置本体10には、図2に示すように、搬送路5に沿って上下2段に6個づつ熱源として赤外線ランプ11が配列・収納されると共に、、モータ18で回転駆動されるねじ棒17を用いた搬送路5に対する進退駆動機構が付属している。この進退駆動機構は、加温装置本体10のスライダ13が下設された基底部12のナット部16にねじ棒17を螺合させると共に、搬送路5に対して直交方向に敷設されたガイドレール15にスライダ13をスライド可能に載置し、このガイドレールに沿って加温装置本体10を前進又は後退方向へ駆動するように構成されている。
【0013】
加温装置本体10には、図2に示すように、サイドドアパネル1aにおけるプロテクタモール9が接着される領域までの離間距離を例えば超音波による非接触式で計測する距離センサ20と、その領域から放射される赤外線を検知する非接触式の表面温度センサ25とが設けられると共に、距離センサ20の距離検知信号Rに応答して、加温装置本体10を15cm程度の範囲で進退させてサイドドアパネル1aに対して所定の離間距離例えば10cmに位置付けするように、モータ18をフィードバック制御する進退制御部21と、サイドドアパネル1aの温度に対応した作動すべき赤外線ランプ11の個数データを表面温度センサ25の温度検知信号Tに応答して選択して、その個数分の赤外線ランプ11を作動させる熱源制御部26とが付属している。
【0014】
この熱源制御部は、プロテクタモール9の裏面に接着された両面粘着テープの 粘着層に好適な30℃程度にドアパネル1aを加温するように、検知温度の変化に対応して略同一温度に加温し得る赤外線ランプ11の個数を試験により例えば4個乃至10個の範囲で確認した個数データを作成して格納しておき、検知温度に応答して個数を検索して、その個数分の赤外線ランプ11を例えば搬送方向の上流U側から選択して給電する。さらに、搬送路5への自動車ボデー1の搭載位置が特に通常より大幅にずれることにより、加温装置本体10が、その最前進位置で所定の離間距離10cmに数cmの範囲で接近し得ない場合、検知温度及びそのずれ距離に対応した追加個数データも格納され、1個又は2個の赤外線ランプ11を追加選択して給電する。したがって、赤外線ランプ11は、最多12個の範囲で検知温度及び例外的なずれ距離に応じて点灯する。
【0015】
このような熱源制御部26は、個数データ又は追加個数データをメモリに格納しておき、CPUをプログラムに従い作動させて、温度検知信号T或は距離検知信号Rから算出したずれ距離に応答してデータを検索するよう構成することができる。モータ18を駆動制御する進退制御部21は、所定の離間距離に対する距離検知信号Rの誤差信号を発生して駆動回路を介してモータ18を正転又は逆転させるように、差動増幅器等の個別回路素子、或は前述のCPUを共用して構成することができる。
【0016】
このように構成された接着作業用の車両ボデー加温装置の動作は次の通りである。自動車ボデー1が搬送路5上を所定位置に搬送されてくると、その搬入検知信号に同期して両側の接着作業領域の上流側においてそのサイドドアパネル1aの所定領域の表面温度及び離間距離が検知され、加温装置本体10はドアパネル1aに対して10cmの標準の離間位置に自動的に進退制御されると共に、その表面温度に対応した個数の赤外線ランプ11が点灯して、移動しているサイドドアパネル1aの接着作業領域を適合した熱量で即座に加温する。
【0017】
即ち、高温期には、作動する赤外線ランプ11の個数が対応して少なくなり、最小4個になる。低温期には、逆に増加して最大10個点灯し、さらに1日の内の温度変動に応じても個数が制御される。これにより、プロテクタモール9の裏面に片面が接着された粘着テープの表面側の粘着層が好適な温度に加温されたドアパネル1aに押圧されることにより接着され、以後粘着力が長期にわたり十分に確保される。
【0018】
自動車ボデー1の搬送路5への搭載位置が側方へ通常よりも大幅にずれることにより、所定の離間位置に接近できない場合、そのずれ距離に応じて表面温度に対応する1個又は2個の赤外線ランプ11が追加選択される。
【0019】
別の実施の形態による熱源制御部として、周囲の温度環境によっては、例えば18℃から25℃の範囲か或はそれ以下かもしくは以上かの3段階の温度範囲に応じて、赤外線ランプ11を例えば10個、8個及び6個等の3群のいずれかを選択して3通りに作動させることも考えられる。また、搬送路5の周辺状況に左右されず、加温装置本体10の所定の離間距離への接近が常時保証される場合、敢えて追加個数を配慮する必要はなくなる。さらに、温度センサとしては、ボデー側面の温度が周囲温度と略同一であるとの前提で、敢えて非接触式の表面温度計を用いることなく、両側に共通に室温センサを用いることもできる。
【0020】
本発明は、両側のボデー側面に接着する場合に限らず、一方側のボデー側面に何らかのモール等の部材を粘着層の押圧作業により接着する場合にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による接着作業用の車両ボデー加温装置の構成を説明する図である。
【図2】同装置の加温装置本体を説明する斜視図である。
【図3】同装置によりサイドプロテクタモールを接着された自動車ボデーの側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 自動車ボデー
1a サイドドアパネル
5 搬送路
9 プロテクタモール
10 加温装置本体
11 赤外線ランプ
13 スライダ
15 ガイドレール
16 ナット部
17 ねじ棒
20 距離センサ
25 表面温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を搬送されてくる車両のボデー側面に、粘着層を有する部材を押圧して接着する作業に際して、ボデー側面を加温するために搬送路の側方に配置される接着作業用の車両ボデー加温装置において、
搬送路に沿って配列された複数個の熱源を備えた加温装置本体に、この加温装置本体を搬送路に対して前進又は後退させる進退駆動機構が付属すると共に、前記加温装置本体及びその対向するボデー側面間の離間距離を検知する距離センサと、前記ボデー側面の温度を検知する温度センサと、前記距離センサの距離検知信号に応答して前記加温装置本体を前記ボデー側面に対して所定の離間距離に位置付けするように進退駆動機構を駆動制御する進退制御部と、前記ボデー側面を所定の温度に加温するように、作動すべき前記熱源の個数を前記ボデー側面の温度に対応して規定する内蔵の個数データを基に、前記温度センサの温度検知信号に応答して選択した個数の前記熱源を作動させる熱源制御部とを備えたことを特徴とする接着作業用の車両ボデー加温装置。
【請求項2】
熱源制御部が、ボデー側面間の離間距離が所定の離間距離よりも遠いずれ距離及び前記ボデー側面の温度に対応して作動すべき熱源の追加個数を規定する内蔵の追加個数データを基に、加温装置本体の最前進位置において距離センサで検知されたずれ距離及び温度検知信号に応答して追加選択した個数の前記熱源を作動させることを特徴とする請求項1記載の接着作業用の車両ボデー加温装置。
【請求項3】
熱源が、赤外線ランプであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の接着作業用の車両ボデー加温装置。
【請求項4】
温度センサが、非接触式の表面温度センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の接着作業用の車両ボデー加温装置。
【請求項5】
請求項1記載の接着作業用の車両ボデー加温装置が、搬送路の両側に配置されると共に、粘着層を有する部材が、自動車のサイドドアパネルの下方領域に接着されるように、両面粘着テープの片面が接着されているプロテクタモールであることを特徴とする接着作業用の車両ボデー加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−230482(P2007−230482A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57597(P2006−57597)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】