説明

接着剤付き半導体ウエハ、積層物及びこれらの製造方法

【課題】接着フィルムと半導体ウエハの回路面との間における気泡の巻き込みが抑制され未接着部分の少ない接着剤付き半導体ウエハ、積層物及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハの製造方法は、基材1と基材1上に設けられた接着層2とを備える接着フィルム10を、減圧下で、半導体ウエハ5の回路面5a上にラミネートするラミネート工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付き半導体ウエハ、積層物及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIとリードフレームとの接合にはAu−Si共晶合金、半田、銀ペースト、フィルム状接着剤等が用いられてきた。フィルム状接着剤を用いる場合、次のように使用することが多い。まず、ロールを用いて半導体ウエハより大きいフィルムを当該半導体ウエハに圧着してラミネートする。その後、フィルムの外周部をカットする。さらに、半導体ウエハをダイシングテープに貼り合わせた後、当該半導体ウエハをダイシングして、個片化する。個片化したチップの裏にはフィルム状接着剤が付いた状態である。さらに、フィルム状接着剤付きチップをダイシングテープからピックアップし、被着体、例えば、シリコン、リードフレーム、有機基板等へ直接接着させる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3605651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、上記ロールによる接着フィルムのラミネートは半導体ウエハの裏面に行われる。半導体ウエハの裏面は比較的平滑であり、表面粗さは数ミクロン程度である。一方、半導体ウエハの回路面(表面)には凹凸が形成されており、高さ数十ミクロンの凹凸が形成されていることが多い。このような半導体ウエハの回路面に接着フィルムをラミネートする場合、凹凸による気泡の巻き込みが多く発生する。また、このようにロールを用いて貼り付けされる接着フィルムは破断しにくいものが用いられる。
【0004】
アルカリ現像可能な接着フィルムは、他の接着フィルムと比べ露光後のフィルム強度がもろく、破断しやすい。したがって、従来と同じ使用方法では、接着フィルムが作業工程中に欠ける恐れがある。また、アルカリ現像可能な接着フィルムを用いる場合、ウエハサイズで、半導体ウエハと被着体(例えばガラス)とを貼り合せる工程は新規の工程であり、アルカリ現像可能な接着フィルムを用いて半導体ウエハと被着体(例えばガラス)とをきれいに密着させる知見がほとんどない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、アルカリ現像可能な接着フィルムと半導体ウエハの回路面との間における気泡の巻き込みが抑制され未接着部分の少ない接着剤付き半導体ウエハ、積層物及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の接着剤付き半導体ウエハの製造方法は、基材と前記基材上に設けられた接着層とを備える接着フィルムを、減圧下で、半導体ウエハの回路面上にラミネートするラミネート工程を含む。ここで、「減圧下」とは例えば300Pa以下を意味する。
【0007】
本発明の接着剤付き半導体ウエハの製造方法では、低荷重で接着フィルムを半導体ウエハの回路面上にラミネートすることができる。よって、接着フィルムと回路面との間における気泡の巻き込みを抑制することができる。また、接着フィルムと半導体ウエハとの未接着部分を少なくすることができる。さらに、接着フィルムの厚みばらつきを小さくすることができる。
【0008】
また、接着フィルムを150℃以下でラミネートすることが好ましい。ラミネートする際の温度が150℃を超えると、基材の耐熱性が低い場合に、シワ、よれが発生しやすくなる。なお、150℃を超える耐熱性を有する基材を用いる場合は問題ない。また、例えば、樹脂の流動性が高くなり、装置の汚染や、接着フィルム厚みの均一性が懸念される。さらに、例えば、樹脂に含まれる溶剤による発泡も懸念される。一方、ラミネートする際の温度が25℃未満であると、例えば、十分な樹脂の流動性が得られず気泡の巻き込みが懸念される。用いる樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度でラミネートすることが好ましい。
【0009】
また、前記接着フィルムの外径が、前記半導体ウエハの外径より小さいことが好ましい。ここで、「外径」とは、形状が例えば円の場合には直径を意味する。
【0010】
接着フィルムの外径が、半導体ウエハの外径と同等以上の場合、接着フィルムが装置に付着し、当該装置を汚染してしまう可能性がある。また、接着フィルムが剥離してしまう起点が生じやすい。よって、接着フィルムの外径は半導体ウエハの外径より小さいほうが良い。接着面積の観点から、接着フィルムの外径は半導体ウエハの外径より1mm〜4mm程小さいことが好ましい。
【0011】
また、半導体ウエハ上に一括して接着層をパターニングする場合、前記接着層が感光性を有することが好ましい。
【0012】
この場合、フォトリソグラフィー法を用いて接着層をパターニングすることができる。
【0013】
また、前記基材は光透過性を有し、上記接着剤付き半導体ウエハの製造方法は、前記ラミネート工程の後、フォトマスク及び前記基材を介して前記接着層に露光を施す露光工程と、前記露光工程の後、前記基材を前記接着層から剥離し、アルカリ現像液を用いて、前記接着層を現像する現像工程とを更に含むことが好ましい。
【0014】
本発明の積層物の製造方法は、上記接着剤付き半導体ウエハの製造方法によって得られる接着剤付き半導体ウエハと、被着体とを減圧下で貼り合わせる工程を含む。
【0015】
本発明の積層物の製造方法では、接着剤付き半導体ウエハと被着体との間における気泡の巻き込みを抑制することができる。また、接着剤付き半導体ウエハと被着体との未接着部分を少なくすることができる。
【0016】
本発明の接着剤付き半導体ウエハは、本発明の接着剤付き半導体ウエハの製造方法によって得られる。
【0017】
本発明の接着剤付き半導体ウエハでは、接着フィルムと半導体ウエハの回路面との間における気泡の巻き込みが抑制される。また、接着フィルムと半導体ウエハの回路面との未接着部分が少ない。
【0018】
本発明の積層物は、本発明の積層物の製造方法によって得られる。
【0019】
本発明の積層物では、接着剤付き半導体ウエハと被着体との間における気泡の巻き込みが抑制される。また、接着剤付き半導体ウエハと被着体との未接着部分が少ない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接着フィルムと半導体ウエハの回路面との間における気泡の巻き込みが抑制され未接着部分の少ない接着剤付き半導体ウエハ、積層物及びこれらの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0022】
実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハ及び積層物は、例えば以下のように製造される。
【0023】
(接着フィルム準備工程)
図1に示されるように、接着フィルム10aを準備する。図1は、接着フィルムの一例を模式的に示す断面図である。図1に示される接着フィルム10aは、基材1と、基材1上に設けられた接着層2と、接着層2上に設けられたカバー3とを備える。接着フィルム10aはカバー3を備えなくてもよい。以下の工程では、カバー3を備えない接着フィルム10(図2参照)を用いる。
【0024】
基材1は光透過性を有することが好ましい。波長400nm以下の光が基材1を透過することがより好ましい。基材1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を使用することができる。これらの中でも、耐熱性の観点から、120℃以上の耐熱性を有するPETやPPが特に好ましい。さらに、波長400nm以下の光に対する基材1の透過率は高い方が好ましい。接着層2は接着剤組成物を含有する。接着剤組成物としては、例えば樹脂等を使用することができる。カバー3の材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)等を使用することができる。
【0025】
(ラミネート工程)
接着フィルム準備工程の後、図2に示されるように、基材1と接着層2とを備える接着フィルム10を、減圧下かつ150℃以下で、半導体ウエハ5の回路面5a上にラミネートする。接着フィルム10は、接着層2と回路面5aとが対向するようにラミネートされる。ここで、「減圧下」とは例えば300Pa以下を意味する。これにより、図3に示される接着剤付き半導体ウエハ20が得られる。図2は、本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハの製造方法における一工程を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハを模式的に示す断面図である。ラミネート工程は、例えば、真空ラミネータ16を用いて行われる。ラミネート工程では、真空ラミネータ16の真空チャンバー12内を減圧し、真空チャンバー12内に設置され半導体ウエハ5を載置するためのステージ14の温度を150℃以下に設定する。
【0026】
半導体ウエハ5の回路面5aには、例えば回路を形成するための配線等の凸部(バンプ)4が形成されている。接着層2の厚みは、凸部4の最大高さよりも大きいことが好ましい。凸部4の最大高さは、1〜10μmであることが好ましい。接着層2の厚みは、10μm以上であることが好ましく、隣り合う凸部4間の埋め込み性を向上させるために30μm以上であることがより好ましい。
【0027】
接着フィルム10の外径d1は、半導体ウエハ5の外径d2より小さいことが好ましい。ここで、「外径」とは、形状が例えば円の場合には直径を意味する。接着層2が軟らかく流動し易い場合には、接着層2の材料がはみ出ることに起因する真空ラミネータ16の汚染を抑制する観点から、接着フィルム10の外径d1は、半導体ウエハ5の外径d2よりも小さいことが好ましい。
【0028】
(露光工程)
ラミネート工程の後、図4に示されるように、フォトマスク30及び基材1を介して接着層2に光Lを照射する。これにより、接着層2に露光を施す。図4は、本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハの製造方法における一工程を示す断面図である。基材1は、光Lに対する光透過性を有する。接着層2は、光Lに対する感光性を有する。光Lは平行光であることが好ましい。光Lは波長400nm以下の光を含むことが好ましい。フォトマスク30は、光Lを透過させる光透過部30aと、光Lを遮断する遮光部30bとを有する。
【0029】
(現像工程)
露光工程の後、基材1を接着層2から剥離し、アルカリ現像液を用いて、接着層2を現像する。これにより、図5に示されるように、半導体ウエハ5の回路面5a上に形成されたパターン2aを有する接着剤付き半導体ウエハ40が得られる。図5は、本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハを模式的に示す断面図である。パターン2aは、開口2bを有する。例えば接着層2がネガ型の感光性樹脂からなる場合、アルカリ現像液は、光Lが照射されなかった部分(未露光部)を溶解させる。その結果、開口2bが形成される。アルカリ現像液の濃度等は特に制限されない。パターン2aを形成した後、純水を用いてパターン2aを洗浄してもよい。洗浄の際には、純水と超音波とを併用してもよい。
【0030】
本実施形態の接着剤付き半導体ウエハの製造方法では、低温かつ低荷重で接着フィルム10を半導体ウエハ5の回路面5a上にラミネートすることができる。よって、接着フィルム10と回路面5aとの間における気泡の巻き込みを抑制することができる。また、接着フィルム10と半導体ウエハ5との未接着部分を少なくすることができる。さらに、半導体ウエハ5の薄型化や半導体ウエハ5の耐熱性の低下が進んでも、気泡の巻き込みを抑制し、未接着部分を少なくすることができる。
【0031】
ラミネートする際の温度が150℃を超えると、基材1の耐熱性が低い場合に、シワ、よれが発生しやすくなる。なお、150℃を超える耐熱性を有する基材1を用いる場合は問題ない。また、例えば、樹脂の流動性が高くなり、装置の汚染や、接着フィルム10厚みの均一性が懸念される。さらに、例えば、樹脂に含まれる溶剤による発泡も懸念される。一方、ラミネートする際の温度が25℃未満であると、例えば、十分な樹脂の流動性が得られず気泡の巻き込みが懸念される。用いる樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度でラミネートすることが好ましい。
【0032】
また、接着フィルム10の外径d1が、半導体ウエハ5の外径d2より小さいと、接着フィルムによる装置の汚染や、接着フィルムが装置等に接触することによる接着フィルムの剥離が起こらなくなる。
【0033】
また、接着層2が感光性を有すると、フォトリソグラフィー法を用いて接着層2をパターニングすることができる。さらに、基材1が光透過性を有し、露光工程及び現像工程を実施すると、半導体ウエハ5全面にパターン2aを形成できる。従来、チップ1個ずつに接着層を付けていたが、半導体ウエハ5全面にパターン2aを形成することにより生産性が大きく向上する。
【0034】
(貼り合わせ工程)
現像工程の後、図6に示されるように、接着剤付き半導体ウエハ40と被着体6とを減圧下で貼り合わせる。具体的には、接着剤付き半導体ウエハ40の回路面5aと被着体6とを貼り合わせる。これにより、図7に示される積層物50が得られる。図6は、本実施形態に係る積層物の製造方法における一工程を示す断面図である。図7は、本実施形態に係る積層物を模式的に示す断面図である。貼り合わせ工程は、例えば、真空ラミネータ16を用いて行われる。貼り合わせ工程では、真空ラミネータ16の真空チャンバー12内を減圧し、真空チャンバー12内に設置され半導体ウエハ5を載置するためのステージ14の温度を200℃以下に設定することが好ましい。
【0035】
貼り合わせの際の温度は、200℃以下であることが好ましく、パターン2aの流動性や被着体6及び半導体ウエハ5の耐熱性及び熱ストレスの観点から150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。貼り合わせの際の真空度は、特に制限されないが、気泡が抜け易いので高い方が好ましい。被着体6としては、例えば、ガラス基板等の無機基板、シリコン基板等の半導体基板、樹脂基板等の有機基板等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の積層物の製造方法では、接着剤付き半導体ウエハ40と被着体6との間における気泡の巻き込みを抑制することができる。また、接着剤付き半導体ウエハ40と被着体6との未接着部分を少なくすることができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
波長400nm以下の光を少なくした環境において、真空ラミネータTEAM−100(タカトリ(株)製)を用いて、アルカリ現像可能な接着フィルムDF−OP1(接着層厚み50μm)(日立化成工業(株)製)を、6インチの半導体ウエハの表面上にラミネートした。具体的には、まず、接着フィルムDF−OP1のカバー(ポリエチレンフィルム)を剥がして得られる接着フィルムを真空ラミネータTEAM−100にセットした。その後、接着フィルムを半導体ウエハ外径より1.5mm小さいサイズに切断した後、吸着し、真空チャンバー内へ搬送した。一方、半導体ウエハも真空チャンバー内のホットステージにセットし、真空チャンバーを閉じて、真空チャンバー内の圧力が100Paとなるように減圧した。ホットステージの温度は80℃とした。続いて、真空チャンバー内において半導体ウエハ上に接着フィルムをラミネートした。その後、真空チャンバー内の圧力を常圧に戻して接着フィルム付き半導体ウエハを取り出した。このようにして、ラミネートを完了した。
【0040】
接着フィルム付き半導体ウエハの接着フィルム上にフォトマスクを設置し、露光機を用いてフォトマスクを介して露光量1000mJの光を接着フィルムに照射した。その後、フォトマスクを取り外し、接着フィルムのポリプロピレンフィルムを剥離除去した。この時点で接着層厚みをダイヤルゲージ(MITUTOYO製ID-C112)で測定したところ、ウエハ中央部では厚みが50±1μmであり、ウエハ周辺部(ウエハエッジから内側に3mmから2cmまでの範囲)でもウエハ中央部と同じ50±1μmであった。さらに、アルカリ現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.38%)を用いて接着フィルム付き半導体ウエハを2分間現像した。続いて、純水を用いて接着フィルム付き半導体ウエハを3分間洗浄した後、脱水することにより、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハを作製した。150℃/10分乾燥後、さらに、真空プレス機WSM-300M(タカトリ(株)製)を用いて、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハに、半導体ウエハと同じサイズの6インチのガラス板を減圧下(250Pa)で、120℃/0.8MPa/120secの条件で貼り合わせた。このようにして積層物を作製した。
【0041】
接着フィルム付き半導体ウエハの表面を顕微鏡により観察したところ、気泡の巻き込みは見られなかった。また、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハとガラス板とを貼り合わせてなる積層物において、接着フィルムとガラス板との間に気泡の巻き込みは見られなかった。また、接着フィルムとガラス板との未接着部分を少なくすることにより、接着フィルムとガラス板とを均一に密着することができた。
【0042】
(比較例1)
波長400nm以下の光を少なくした環境において、ロールラミネータDAM812M(タカトリ(株)製)を用いて、アルカリ現像可能な接着フィルムDF−OP1(日立化成工業(株)製)を、6インチの半導体ウエハの表面上にラミネートした。具体的には、まず、接着フィルムDF−OP1のカバー(ポリエチレンフィルム)を剥がして得られるロール状接着フィルムをロールラミネータにセットした。一方、半導体ウエハもホットステージにセットした。ホットステージの温度は80℃とした。続いて、10N/cm、5mm/secの条件で、半導体ウエハ上に接着フィルムをラミネートした。このようにして、ラミネートを完了した。
【0043】
半導体ウエハからはみ出した接着フィルムをカッターにより除去した後、接着フィルム付き半導体ウエハの接着フィルム上にフォトマスクを設置し、露光機を用いてフォトマスクを介して露光量1000mJの光を接着フィルムに照射した。その後、フォトマスクを取り外し、接着フィルムのポリプロピレンフィルムを剥離除去した。この時点で接着層厚みをダイヤルゲージ(MITUTOYO製ID-C112)で測定したところ、ウエハ中央部では厚みが49±1μmであり、ウエハ周辺部(ウエハエッジから内側に3mmから2cmまでの範囲)では49±5μmであった。さらに、アルカリ現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.38%)を用いて接着フィルム付き半導体ウエハを2分間現像した。続いて、純水を用いて接着フィルム付き半導体ウエハを3分間洗浄した後、脱水することにより、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハを作製した。しかしながら、半導体ウエハエッジ部上の接着フィルムでは工程中に一部剥がれが生じた。150℃/10分乾燥後、さらに、真空プレス機WSM-300M(タカトリ(株)製)を用いて、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハに、半導体ウエハと同じサイズの6インチのガラス板を減圧下(250Pa)で、130℃/0.8MPa/120secの条件で貼り合わせた。このようにして積層物を作製した。
【0044】
接着フィルム付き半導体ウエハの表面を顕微鏡により観察したところ、気泡の巻き込みが見られた。この気泡の巻き込みは、半導体ウエハの凸部の一方の側面(ラミネートが進行する方向に位置する側面)上に多く見られた。また、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハとガラス板とを貼り合わせてなる積層物において、接着フィルムとガラス板との間に気泡の巻き込みが多く見られた。特にガラスエッジ部周辺に未接着部がリング状に見られた。
【0045】
(実施例2)
接着フィルムの外径を半導体ウエハの外径と同じにしたこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。その結果、接着フィルム付き半導体ウエハの表面を顕微鏡により観察したところ、気泡の巻き込みは見られなかった。また、パターン形成された接着フィルム付き半導体ウエハとガラス板とを貼り合わせてなる積層物において、接着フィルムとガラス板との間に気泡の巻き込みは見られなかった。また、接着フィルムとガラス板との未接着部分を少なくすることにより、接着フィルムとガラス板とを均一に密着することができた。しかしながら、半導体ウエハエッジ部上の接着フィルムに剥がれが生じた。
【0046】
実験結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】接着フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハを模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る接着剤付き半導体ウエハを模式的に示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る積層物の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図7】本実施形態に係る積層物を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…基材、2…接着層、5…半導体ウエハ、5a…回路面、6…被着体、10,10a…接着フィルム、20,40…接着剤付き半導体ウエハ、30…フォトマスク、50…積層物、L…光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材上に設けられた接着層とを備える接着フィルムを、減圧下で、半導体ウエハの回路面上にラミネートするラミネート工程を含む、接着剤付き半導体ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記接着フィルムの外径が、前記半導体ウエハの外径より小さい、請求項1に記載の接着剤付き半導体ウエハの製造方法。
【請求項3】
前記接着層が感光性を有する、請求項1又は2に記載の接着剤付き半導体ウエハの製造方法。
【請求項4】
前記基材は光透過性を有し、
前記ラミネート工程の後、フォトマスク及び前記基材を介して前記接着層に露光を施す露光工程と、
前記露光工程の後、前記基材を前記接着層から剥離し、アルカリ現像液を用いて、前記接着層を現像する現像工程と、
を更に含む、請求項3に記載の接着剤付き半導体ウエハの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接着剤付き半導体ウエハの製造方法によって得られる接着剤付き半導体ウエハと、被着体とを減圧下で貼り合わせる工程を含む、積層物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤付き半導体ウエハの製造方法によって得られる、接着剤付き半導体ウエハ。
【請求項7】
請求項5に記載の積層物の製造方法によって得られる、積層物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate