説明

接着剤塗布装置

【課題】シリンジ内の接着剤残量に拘わらず安定した塗布量を確保すると共に、使用しない吐出口から接着剤が漏洩したり、吐出口先端を汚すことがないようにする。
【解決手段】接着剤供給部(シリンジ20)から供給される接着剤10を、ノズルにより対象物上に吐出して塗布するための接着剤塗布装置において、接着剤を吐出するための複数のノズルと、該ノズルの一つを接着剤供給部(20)と接続するためのノズル交換機構(ロータリーノズル50)と、該ノズル交換機構(50)の接着剤流路50B内で、不使用ノズルからの接着剤の漏出を防止する手段(棒状シャッター80、スプリング82、リニアアクチュエータ84)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤塗布装置に係り、特に、電子部品の表面実装装置で接着剤をプリント基板上に塗布する際に用いるのに好適な、接着剤供給部から供給される接着剤を、ノズルにより対象物上に吐出して塗布するための接着剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の表面実装装置において、実装部品の仮止めのために、プリント基板上に接着剤を塗布する接着剤塗布装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来の接着剤塗布装置は、例えば図1に示すように、接着剤10が充填されたシリンジ20と、該シリンジ20の下方先端に接続されて用いられる、プリント基板8上に接着剤10を吐出するためのノズル30を備えている。
【0004】
前記シリンジ20及びノズル30を含む塗布ヘッド40は、図2に示す如く、プリント基板8に対してX方向及びY方向に相対移動可能な、X移動手段42X及びY移動手段42Yを備えた位置決め機構に搭載されている。
【0005】
前記ノズル30は、図1に詳細に示す如く、ボディ部32と、ニードル部34と、塗布ヘッド40(図2参照)に固定するためのフランジ部36と、ニードル部34先端の吐出口の高さを決定するためのストッパ部38とを備えている。
【0006】
該ノズル30をシリンジ20の下方先端に取り付けた状態で、シリンジ20に詰められた接着剤10を、例えば空気圧で加圧することにより、図3に示されるように、接着剤10がノズル30を経由して、プリント基板8上の決められた位置に自動的に塗布される。
【0007】
又、特許文献2には、接着剤が供給されるホルダを中心に、放射状に複数のノズルを設けることが記載されている。
【0008】
又、特許文献3には、ノズルの途中に棒状のシャッターを設けて接着剤流路を開閉することが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−170538号公報
【特許文献2】特許第2945713号公報
【特許文献3】特開2002−282757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら従来は、次のような問題があった。
【0011】
まず、接着剤10の吐出を行なうための動力源が空気圧であり、電磁弁等を利用して断続的に吐出と停止を繰り返す機構であったため、シリンジ20内の接着剤残量が減少し、シリンジ内が空になるに従って、接着剤満杯時よりもシリンジ内圧が上昇する上で多くの時間を必要とする。このため、同じ空気圧、同じ時間で吐出を行なった場合、接着剤が減少するに従って、得られる接着剤吐出量が減少してしまう。
【0012】
この問題を解決するため、シリンジ内の接着剤残量を検出し、吐出圧力若しくは吐出時間を接着剤満杯時よりも多くする方法があるが、この方法では、周囲温度や接着剤保管期間、保管状態等により粘度が変化してしまう接着剤の吐出量を精密に制御するのは困難である。
【0013】
又、複数のノズルを持つ場合、吐出口に蓋を圧接して閉じ、目的とする吐出口のみから接着剤を吐出する方法が考えられるが、この方法では、圧接する蓋に微量ながら接着剤が残るため、蓋に付着したゴミがノズルに移り、長時間使用し続けると吐出口が汚れて、安定した吐出ができなくなるという問題を有していた。
【0014】
更に、従来の技術では、シリンジ20とノズル30を交換すると、シリンジとノズルの境界付近にある接着剤10の中に空気が入ってしまうという問題も有していた。この場合、使用する接着剤が高粘度であるため、接着剤10中の空気は、図1に示すように、そのまま気泡12として残ってしまう。この状態で接着剤10の塗布を行ない続けると、残された気泡12は、接着剤10の流動に合わせてノズル30の出口へ移動していき、最終的には吐出口より外に出てしまう。従って、接着剤が一点又は複数点にわたり吐出されないという不具合が発生してしまう。
【0015】
このため従来の接着剤塗布装置は、ノズル30を自動的に交換することができず、シリンジ20とノズル30をセットで用いていた。
【0016】
市場が要求する生産では、対象となる素子の形や大きさ等により、複数の種類の塗布が必要となるため、複数のノズルを使用しなければならず、従来の接着剤塗布装置は複数のシリンジが必要となり、図2に示した如く、結果として複数(図2では3個)の塗布ヘッド40を搭載する必要があった。
【0017】
しかしながら、特許文献1や3では、ノズルが固定されており、ノズルを自動的に交換することはできなかった。又、特許文献2には、複数のノズルがホルダを中心として放射状に固定されたロータリーノズルが記載されているが、多点塗布を迅速に行うためのもので、ノズル交換を自動的に行うことは考えられていなかった。
【0018】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、安定した塗布量を確保でき、使用しない吐出口から接着剤が漏洩したり、吐出口先端を汚すことがない接着剤塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、接着剤供給部から供給される接着剤を、ノズルにより対象物上に吐出して塗布するための接着剤塗布装置において、接着剤を吐出するための複数のノズルと、該ノズルの一つを接着剤供給部と接続するためのノズル交換機構と、該ノズル交換機構の接着剤流路内で、不使用ノズルからの接着剤の漏出を防止する手段とを備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0020】
前記接着剤の漏出を防止する手段が、例えばシャッターを用いて、通常は接着剤流路を閉じておき、使用時に、使用されるノズルに通ずる接着剤流路のみを開くようにすることができる。
【0021】
更に、前記接着剤の漏出を防止する手段は、接着剤を吐出する位置に設けられた単一のアクチュエータを含むようにして、構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電磁弁を開閉せず、接着剤を押出すために供給する圧力(例えば空気圧)が一定であるため、シリンジ内の接着剤残量がどのような状態であっても、安定した塗布量を確保できる。又、使用しない吐出口から接着剤が漏洩することがない。更に、吐出口先端での蓋による開閉を行なわないため、吐出口先端は前回吐出を行なった後の状態をそのまま保つことができ、吐出口先端を汚すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
本実施形態は、図4(斜視図)及び図5(断面図)に示す如く、接着剤10が充填され、接着剤が空になったときにカートリッジ式に交換可能なシリンジ20と、複数(図では4個)のノズル取付口50Aを備えた、回転可能なノズル交換機構であるロータリーノズル50と、該ロータリーノズル50を回転させるための駆動モータ60と、該モータ60の回転をロータリーノズル50に伝達するためのタイミングプーリ62、64及びタイミングベルト66と、前記シリンジ20とロータリーノズル50の間で接着剤10の経路70A(図5参照)を確保しているジョイントブロック70とを備えている。
【0025】
前記ロータリーノズル50は、図5に詳細に示した如く、ロータリーノズル50を固定するロータリーベース52と、前記ロータリーノズル50を回転可能にする軸受54と、前記ロータリーノズル50の各ノズル取付口50Aに対応して、それぞれの吐出口直前に設けられた棒状シャッター80と、該棒状シャッター80を常に接着剤流路50Bを塞ぐ方向(図の左方向)に付勢するためのスプリング82と、前記ジョイントブロック70の使用ノズル側(図の下側)に取り付けられた、プランジヤ84Aを出入れすることにより、前記スプリング82に抗して棒状シャッター80を付勢するためのリニアアクチュエータ84と、前記棒状シャッター部からの接着剤10の漏洩を防止するためのOリング86とを備えている。
【0026】
前記棒状シャッター80には、図6に示す如く、接着剤流路80Aが設けられ、流路80Aがロータリーノズル50の流路50Bに対してずれないよう、回り止めが施されている。
【0027】
前記リニアアクチュエータ84は、ロータリーノズル50の複数流路50Bに対し1つだけ設けられており、複数流路の中で、唯一、吐出を目的とした吐出口(図の下側の吐出口)を塞いでいるシャッターの位置に設けられている。
【0028】
前記ノズル取付口50Aに取り付られるノズル90の形状の一例を図7に示す。
【0029】
以上の構成において、従来は電磁弁等の開閉によって接着剤の吐出を行なっていたが、本発明では、吐出を目的とした電磁弁等の機構は使用せずに、接着剤の充填されたシリンジ20内には、常に一定の空気圧を供給したままとする。
【0030】
断続的に行なう吐出に関しては、リニアアクチュエータ84の動作により、棒状のシャッター80を図の右方向にスライドさせ、接着剤の流路50Bを開閉することにより、接着剤10の吐出/停止を行なう。
【0031】
前記のように、シリンジ20内には常に高圧の空気が供給されているため、リニアアクチュエータ84を動作させると、吐出したい吐出口のシャッターだけが開閉される。これによって、接着剤は断続的に吐出される。
【0032】
ここで、前記リニアアクチュエータ84は、ロータリーノズル50の複数流路50Bに対し1つだけ設けられており、複数流路の中で、唯一、吐出を目的とした吐出口(図の下側の吐出口)を塞いでいるシャッターの位置に設けられているので、1つのアクチュエータの動作で、ロータリーノズルの回転により選択された唯一の吐出口を開閉することができる。
【0033】
本実施形態においては、リニアアクチュエータ84を用いて、棒状シャッター80を直線移動させることにより接着剤の流路50Bを開閉していたが、接着剤の流路50Bを開閉する方法はこれに限定されず、例えば棒状シャッター80を回動自在とし、モータを用いて棒状シャッター80を回動させることにより、流路の開閉を行なっても良い。付勢手段もスプリングに限定されない。
【0034】
又、前記実施形態においては、駆動モータ60にパルスモータ又はサーボモータを用いてロータリーノズル50の回転角を制御していたが、ロータリーノズル50にスリット板及びその読取りセンサを備えたロータリエンコーダ等を設けて制御することにより、ロータリーノズルの停止位置の精度を向上することもできる。
【0035】
又、ロータリーノズル50の回転方法も、タイミングベルト66とタイミングプーリ62、64の組合せに限定されず、チェーンとギヤ等を組合せて用いてもよい。更に、ラックアンドピニオンやボールねじとウォームギヤ、ボールねじと傘歯歯車、ダイレクトモータ化、モータの代わりに空圧機器の使用等、ロータリーノズルを回動する方法は、任意である。
【0036】
又、ノズルの回転面も垂直面に限定されず、水平面内をノズルが回転するようにしたり、あるいは、例えば45度の斜めの面内をロータリーノズルが回転するようにすることもできる。
【0037】
又、前記実施形態においては、ロータリーノズル50を回転することによりノズルを交換するようにされていたが、スライド機構によりノズルを交換することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来の接着剤塗布装置の要部構成を示す断面図
【図2】同じく全体構成を示す斜視図
【図3】同じく接着剤を塗布している状態を示す拡大断面図
【図4】本発明の実施形態の構成を示す斜視図
【図5】同じく断面図
【図6】同じく棒状シャッターを示す斜視図
【図7】同じくノズルの形状の例を示す斜視図
【符号の説明】
【0039】
10…接着剤
20…シリンジ
40…塗布ヘッド
50…ロータリーノズル(ノズル交換機構)
50A…ノズル取付口(吐出口)
50B…接着剤流路
52…ロータリーベース
60…駆動モータ
70…ジョイントブロック
80…棒状シャッター
82…スプリング
84…リニアアクチュエータ
90…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤供給部から供給される接着剤を、ノズルにより対象物上に吐出して塗布するための接着剤塗布装置において、
接着剤を吐出するための複数のノズルと、
該ノズルの一つを接着剤供給部と接続するためのノズル交換機構と、
該ノズル交換機構の接着剤流路内で、不使用ノズルからの接着剤の漏出を防止する手段と、
を備えたことを特徴とする接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記接着剤の漏出を防止する手段が、通常は接着剤流路を閉じておき、使用時に、使用されるノズルに通ずる接着剤流路のみを開くようにされていることを特徴とする請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記接着剤の漏出を防止する手段が、接着剤を吐出する位置に設けられた、単一のアクチュエータを含むことを特徴とする請求項2に記載の接着剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−296468(P2007−296468A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126356(P2006−126356)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】