説明

接着性樹脂組成物

【課題】本発明は、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、金属やガラスなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどのような非極性材料の両方に対する接着性が低いシール温度から発現される樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】不飽和エステル含量が3〜40重量%の、メルトフローレイトが10〜100g/10分のエチレン−不飽和エステル共重合体(A)40〜80重量%、
メルトフローレイトが2〜50g/10分であるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)10〜40重量%、
粘着付与樹脂(C)10〜30重量%からなる
メルトフローレイトが20〜100g/10分である接着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、金属やガラスなどのような極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどのような非極性材料の両方に対する接着性が低いシール温度から発現する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどのような非極性材料に対する接着性を有する樹脂組成物としては、低密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン、ポリプロピレン、エチレン−不飽和エステル共重合体などのエチレン系重合体と粘着付与樹脂をブレンドして得られる樹脂組成物などが知られている。エチレン−不飽和エステル共重合体の不飽和エステル含有率の高いものやメルトフローレイト(以下、MFRと略記する場合がある)の大きいものを用いると低いシール温度でも接着性を発現する樹脂組成物を得ることができる。しかし、ガラスや金属などの極性材料に対する接着性は無い場合がほとんどである。
【0003】
一方、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、アルミなどの金属やガラスなどの極性材料やポリエステルなどへの接着性を有する樹脂として、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物などのエチレン系重合体やエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン−不飽和エステル共重合体などを不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせたグラフト変性物などが知られており、これらと粘着付与樹脂とをブレンドして得られる樹脂組成物などが知られている。不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせたグラフト変性物は金属やガラスなどの極性材料やポリエステルへの接着性を有することから、これを含有する樹脂組成物は、例えば、包装用フィルムに使用されるポリビニルアルコール、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチレンメタアクリレート、ポリプロピレンなどから成る多層フィルムの層間接着用樹脂、合わせガラス用中間膜、容器蓋材のシール層などとして用いられている。
【0004】
エチレン・α−オレフィンに不飽和カルボン酸あるいはその誘導体をグラフトしたものとエチレン−不飽和エステル共重合体と粘着付与樹脂との樹脂組成物が提案されているが、これらは極性材料に対する接着性は有しているが、一般にエチレン・α−オレフィンの融点はエチレン−不飽和エステル共重合体に比べて高く、さらにその不飽和カルボン酸によるグラフト変性物の融点も高く、低い温度でシールしても接着性が発現されないことが多い。
【0005】
近年、接着性フィルムに求められる性能は、生活様式の多様化などにより多岐に渡っており、例えば、被着材が耐熱性の低いものである場合、高い温度でヒートシールすることができない。その場合には低い温度でヒートシールしても十分な接着性が得られる性能が接着性フィルムに求められる(以下、低温シール性と略記する場合がある)。さらに、産業資材や電子機器等の分野では極性材料と非極性材料の両方に接着する接着性フィルムが求められる場合がある。したがって、極性材料と非極性材料の両方に対して低温シール性を有する樹脂組成物ならびにその樹脂組成物を押出しラミネートによりフィルム化した積層フィルムは非常に有用であるが、現状ではこのような樹脂組成物は未だ得られていないようである。
【0006】
本出願人らが検討を重ねた結果、本願の(A)成分および(B)成分が、本願で特定される成分同士の組み合わせであり、かつ、組成物としての特定のMFRを有する場合、すなわち、不飽和エステル含量が3〜40重量%、MFRが10〜100g/10分のエチレン−不飽和エステル共重合体40〜80重量%、MFRが2〜50g/10分のα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体10〜40重量%、粘着付与樹脂10〜30重量%からなるMFRが20〜100g/10分の樹脂組成物が、押出しラミネーターによるフィルム化が可能であり、極性材料と非極性材料の両方に低いシール温度から接着性が発現することを見出した。
【0007】
特許文献1には、(a)エチレン−α・オレフィン共重合体またはエチレン−エチレン性不飽和エステル共重合体の少なくとも一種約30〜70重量%、(b)これら共重合体のいずれか一種に不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフト反応させたグラフト変性物10〜60重量%、(c)粘着付与樹脂10〜30重量%を溶融混合してなる樹脂組成物が提案されている。しかし、特許文献1の(a)成分および(b)成分が、本願で特定される成分同士の組み合わせでなく、また、組成物としての特定のMFRを有さないために、低温シール性に劣ったものになることがある。
【0008】
特許文献2には、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体又はエチレン・α,β−不飽和カルボン酸・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)10〜80重量部、一部又は全部が不飽和ジカルボン酸又はその無水物によってグラフト変性されたエチレン・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)10〜80重量部及び粘着付与樹脂(C)5〜30重量部からなる樹脂組成物が提案されている。しかし、特許文献2の(A)成分および(B)成分が、本願で特定される成分同士の組み合わせでなく、さらに、組成物としての特定のMFRを有さないために、アルミやガラスへの接着性は有するものの低温シール性が不足する場合がある。
【0009】
特許文献3には、(a)不飽和エステル含有量が5〜35重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体35〜90重量%、(b)低結晶性又は結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体もしくはエチレン・不飽和エステル共重合体から選ばれるエチレン共重合体の不飽和カルボン酸もしくはその無水物によるグラフト変性体5〜40重量%及び(c)粘着付与樹脂5〜25重量%からなる樹脂組成物が提案されている。エチレン・不飽和エステル共重合体のMFRは0.1〜20g/10分、特に0.3〜10g/10分のものを用いるのがよいとされているが、10g/10分以下のものを用いた場合には、樹脂組成物のMFRが小さくなり、低温シール性を有する樹脂組成物が得られ難い。これは低温シール性にとって重要な因子である。特許文献3においても、(a)成分および(b)成分が、本願で特定される成分同士の組み合わせであり、さらに、組成物としての特定のMFRを有する場合に、極性材料と非極性材料の両方に低いシール温度から接着性が発現することに関する記載も示唆もない。
【特許文献1】特許第1773742号公報
【特許文献2】特許第2503260号公報
【特許文献3】特許第3048002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、金属やガラスなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどのような非極性材料の両方に対する接着性が低いシール温度から発現される樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、不飽和エステル含量が3〜40重量%の、MFRが10〜100g/10分のエチレン−不飽和エステル共重合体(A)40〜80重量%、
MFRが2〜50g/10分のα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)10〜40重量%、
粘着付与樹脂(C)10〜30重量%からなる
MFRが20〜100g/10分の接着性樹脂組成物に関する。
【0012】
更に本発明は、エチレン−不飽和エステル共重合体(A)がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする接着性樹脂組成物に関する。
【0013】
更に本発明は、α、β−不飽和カルボン酸がアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸のいずれか1種類以上であることを特徴とする接着性樹脂組成物に関する。
【0014】
更に本発明は、α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)がラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトされた樹脂であることを特徴とする接着性樹脂組成物に関する。
【0015】
更に本発明は、粘着付与樹脂が石油系粘着付与樹脂とロジン系粘着付与樹脂の両方を使用することを特徴とする接着性樹脂組成物に関する。
【0016】
更に本発明は、接着性樹脂組成物を、金属箔が積層してある基材に、あるいは金属、金属酸化物、無機酸化物いずれかが蒸着してある基材に積層してなる接着性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、押出しラミネートによるフィルム化が可能であり、金属やガラスなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの無極性材料の両方に対する接着性が低いシール温度から発現される樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の接着性樹脂組成物は、不飽和エステル含量が3〜40重量%、MFRが10〜100g/10分のエチレン−不飽和エステル共重合体(A)40〜80重量%、MFRが2〜50g/10分のα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)10〜40重量%、粘着付与樹脂(C)10〜30重量%からなる。
【0019】
本発明の接着性樹脂組成物のMFRは20〜100g/10分である。好ましくは20〜70g/10分、より好ましくは30〜50g/10分である。MFRが10g/10分以下であると低温シール性に劣ったものにやすく、100g/10分以上であると押出しラミネートによるフィルム化が困難なものになりやすい。
【0020】
本発明におけるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)の不飽和エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)は上記いずれの種類でもよいが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記する場合がある)が好適に用いられる。エチレン−不飽和エステル共重合体のメルトフローレイトは10〜100g/10分である。好ましくは20〜50g/10分、より好ましくは30〜50g/10分である。メルトフローレイトはJIS K 7210に準拠して測定される、190℃、2160g荷重での10分間の流出量(g/10分)である。不飽和エステル含量は3〜40重量%である。好ましくは3〜15重量%、より好ましくは3〜7重量%である。
【0022】
本発明におけるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)のα、β−不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。この中でもマレイン酸が好適に用いられる。
【0023】
本発明におけるα、β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸エステル、酸アミド、酸ハロゲン化物などが挙げられる。この中では、酸無水物が好ましい。
【0024】
本発明におけるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)は、一般に市販されているものでもよく、例えばHPR VR101、HPR VR103、HPR VR105−1(三井・デュポンポリケミカル社製)、OREVAC G 18211(アルケマ社製)等が挙げられる。
【0025】
また、エチレン−不飽和エステル共重合体をα、β−不飽和カルボン酸またはその無水物をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせたα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体を用いることもできる。エチレン−不飽和エステル共重合体をα、β−不飽和カルボン酸またはその無水物をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせる方法は特開平11−335427号公報等により既に公知である。
【0026】
ラジカル開始剤はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられるものであればよい。中でも、1分間半減期温度が120〜200℃の範囲にあるものが好ましく、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、アゾジイソブチロニトリル等のジアゾ化合物が挙げられる。EVA樹脂のグラフト化に当たっては、特にα,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が好ましい。
【0027】
α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)のメルトフローレイトは、2〜50g/10分である。好ましくは3〜20g/10分、より好ましくは5〜15g/10分である。
【0028】
本発明における粘着付与樹脂(C)とは一般に天然系粘着付与樹脂と合成系粘着付与樹脂に分類され、天然系としてはガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジン−グリセリンエステル、ロジン−ペンタエリスリトールエステル、マレイン化ロジンおよびこれらの水素化物、酸変性ロジン、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素化テルペン樹脂等である。ロジン系粘着付与樹脂が好適に用いられ、中でも酸変性ロジン系粘着付与樹脂が好適に用いられる。
【0029】
合成系粘着付与樹脂とは脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5/C9系)石油樹脂、水素添加石油樹脂(脂環族系石油樹脂)、DCPD系石油樹脂(脂環族系石油樹脂)、ピュアーモノマー系石油樹脂(スチレン系、置換スチレン系石油樹脂)、クマロン・インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等である。この中でも脂環族系石油樹脂が好適に用いられる。
【0030】
本発明に使用される粘着付与樹脂(C)の配合量は10〜30重量%である。好ましくは10〜25重量%、更に好ましくは15〜25重量%である。10重量%未満では接着性が得難く、30重量%より多いとブロッキング性に劣るものとなってしまう。
【0031】
天然系粘着付与樹脂、合成系粘着付与樹脂のなかからいずれか1種類が用いられてもよいし、2種類以上が用いられてもよい。好ましくは、天然系粘着付与樹脂と合成系粘着付与樹脂からそれぞれ1種類以上を用いる。
【0032】
本発明において使用される粘着付与樹脂の軟化点は80℃以上150℃以下である。好ましくは90℃以上135℃以下であり、更に好ましくは100℃以上110℃以下である。80℃未満では積層フィルムにした場合にブロッキングが起こりやすく、150℃より高いと低温シール性が劣ったものになりやすい。
【0033】
他の添加剤として、必要により各種のものが使用可能である。例えば着色剤やブロッキイング防止剤、酸化防止剤などである。着色剤としては酸化チタンなどが挙げられる。ブロッキング防止剤としてはシリコーン、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミドなどが挙げられる。酸化防止剤としては、高分子量ヒンダード多価フェノール、トリアジン誘導体、高分子量ヒンダード・フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、2、2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、4、4−メチレン−ビス−(2、6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2、6−ジ−第三−ブチルフェノール−p−クレゾール、2、5−ジ−第三−ブチルヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、4、4−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール。
【0034】
本発明の接着性樹脂組成物は、種々の極性材料または非極性材料に積層して接着性フィルムとして用いることができる。好ましい例として、プラスチックなどの、フィルム状あるいは板状の、アルミニウムなどの金属が積層してある基材に、あるいは、アルミニウムなどの金属あるいはアルミナなどの金属酸化物やシリカなどの無機酸化物が蒸着してある基材に、本発明の接着性樹脂組成物を積層してなる接着性フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明を具体的に示す。
<グラフト変性物の作成>
<合成例1>
EVA樹脂(商品名:ウルトラセン710、東ソー社製、MFR18g/10分)100部に対し、無水マレイン酸5部、ラジカル開始剤として、ビス(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(商品名「パーブチルP」日本油脂社製)0.2部を加えヘンシェルミキサーにて5分間プリブレンドした。
ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダを用いて押出機に供給した。ベント口から、真空ポンプにより減圧度760mmHgとして未反応モノマーを除去した。
得られた押出物を精製し、未反応モノマーを除去し評価したところMFR5g/10分、酸価16であった。
押出機:アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32−40.5
バレル温度:200℃(供給口160℃)
スクリュー回転速度:100rpm
供給速度:5kg/hr
MFRは、JIS K 7210により190℃において、2160gの荷重において測定した。酸価の測定は以下の方法により実施した。精製物約1gを精秤し、加熱したキシレン100mlに完全に溶解させた後、0.1重量%アルコール性フェノールフタレイン溶液を加え0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で熱時に滴定した。フェノールフタレインの赤変色が30秒間消えなくなった時を滴定の終点とした。
<合成例2>
EVA樹脂をLLDPE樹脂(商品名:スミカセン−L FS240、住友化学工業社製、MFR2.2g/10分)に変えた以外は合成例1と同様にした。MFR1.5g/10分、酸価10であった。
<接着性樹脂組成物の作成方法>
表1および表2に示したEVA、グラフト変性体、粘着付与樹脂および各種添加剤をヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダを用いて押出機に供給し樹脂組成物を作成した。
押出機;アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32−40.5
バレル温度:140℃(供給口100℃)
スクリュー回転速度:100rpm
供給速度:5kg/hr
<積層フィルムの作成方法>
押出しラミネーターを用いて、アルミニウム箔(35μ)に厚さ30μmで樹脂組成物を積層し積層フィルムを作成した。積層フィルム化可:○、積層フィルム化不可:×とした。以下に加工条件を示した。
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーター
ダイ直下樹脂温度:140〜240℃(樹脂組成物のMFR等により適宜調整した)
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:15〜20℃
<エチレン−不飽和エステル共重合体>
EVA−1:ウルトラセン680(東ソー社製、酢酸ビニル含量20%、MFR160g/10分)
EVA−2:エバテートCV5053(住友化学工業社製、酢酸ビニル含量20%、MFR70g/10分)
EVA−3:エバフレックスEV150(三井・デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含有量33%、MFR30g/10分)
EVA−4:ウルトラセン539(東ソー社製、酢酸ビニル含量6%、MFR28g/10分)
EVA−5:スミテートH4021(住友化学工業社製、酢酸ビニル含有量13%、MFR20g/10分)
EVA−6:ウルトラセン625(東ソー社製、酢酸ビニル含有量15%、MFR14g/10分)
EVA−7:エバテートK2010(住友化学工業製、酢酸ビニル含量25%、MFR6g/10分)
EVA−8:ウルトラセン515(東ソー社製、酢酸ビニル含有量6%、MFR2.5g/10分)
<グラフト変性体>
変性体−1:HPR VR103(三井・デュポンポリケミカル社製、無水マレイン酸グラフトEVA、MFR8g/10分)
変性体−2:HPR VR105−1(三井・デュポンポリケミカル社製、無水マレイン酸グラフトEVA、MFR15g/10分)
変性体−3:OREVAC G 18216(アルケマ社製、無水マレイン酸グラフトEVA、MFR3.5g/10分)
変性体−4:合成例1により合成したグラフト変性物(MFR5g/10分)
変性体−5:合成例2により合成したグラフト変性物(MFR1.5g/10分)
<粘着付与樹脂>
TF−1:アルコンP−125(荒川化学工業社製、脂環族飽和炭化水素樹脂、軟化点125℃)
TF−2:FTR6100(三井化学社製、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系、軟化点95℃)
TF−3:スーパーエステルA−100(荒川化学工業社製、ロジンエステル、軟化点100℃)
<添加剤>
酸化防止剤:IRGANOX 1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
ブロッキング防止剤:インクロスリップC(クローダ社製)
<剥離強度の測定方法>
積層フィルムを15mm幅に断裁したものとアルミ板、ガラス板、HDPE板、CPP板それぞれとを80℃×0.3MPa×1秒および120℃×0.3MPa×1秒でヒートシールした。24時間放置後、引張強度試験機で180°角剥離、剥離速度200mm/分の条件で接着強度を測定した。5N/15mm以上:○、2〜5N/15mm:△、2N/15mm以下:×とした。
引張強度試験機:オリエンテック社製テンシロンRTA−100型
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和エステル含量が3〜40重量%の、メルトフローレイトが10〜100g/10分のエチレン−不飽和エステル共重合体(A)40〜80重量%、
メルトフローレイトが2〜50g/10分であるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)10〜40重量%、
粘着付与樹脂(C)10〜30重量%からなる
メルトフローレイトが20〜100g/10分である接着性樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン−不飽和エステル共重合体(A)がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
α、β−不飽和カルボン酸がマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸のいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン−不飽和エステル共重合体(B)がラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトされた樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
粘着付与樹脂(C)が石油系粘着付与樹脂とロジン系粘着付与樹脂の両方を使用することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
金属箔が積層してある基材あるいは金属、金属酸化物、無機酸化物いずれかが蒸着してある基材に請求項1〜5いずれか記載の接着性樹脂組成物を積層してなる接着性フィルム。

【公開番号】特開2008−69295(P2008−69295A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250318(P2006−250318)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋ペトロライト株式会社 (51)
【Fターム(参考)】