説明

接着方法

【課題】高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、特に接着強さの耐冷熱サイクル性に優れた接着方法の提供。
【解決手段】2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法であって、前記2−シアノアクリレート系接着剤は、(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、(b)数平均分子量が1000〜50000の2−シアノアクリロイル基を2個以上有する多官能シアノアクリル酸エステル1〜400質量部を含有する接着剤組成物であり、接着剤の厚さを10〜200μmに調整することを特徴とする接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリレート系接着剤は、主成分である2−シアノアクリル酸エステルが有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。しかし、この接着剤は、その硬化物が硬く脆いため、優れたせん断接着強さを有する反面、剥離接着強さ及び衝撃接着強さが低く、特に異種の被着体間での耐冷熱サイクル性に劣るという問題点を有する。従来、このような問題点を改良するため、種々のエラストマー及び添加剤等を配合する改質方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。更に、難溶性のゴムやエラストマー粒子を配合する方法も提案されている(例えば、特許文献3、4)。また、接着剤に多官能シアノアクリル酸エステルを配合することも知られている(例えば、特許文献5、6)。
【0003】
一方、2−シアノアクリレート系接着剤以外の接着剤では、接着剤中に所定の粒径を有する粒子を配合することにより、接着剤厚さを制御することも知られている(例えば特許文献7、8、9)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−290484号公報
【特許文献2】特開平6−57214号公報
【特許文献3】特開平6−240209号公報
【特許文献4】特開平6−271817号公報
【特許文献5】特表平10−500968号公報
【特許文献6】特開平11−302602号公報
【特許文献7】特開平10−36796号公報
【特許文献8】特表2005−519150公報
【特許文献9】特開2007−283515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1、2に記載された改質方法では、特に異種の被着体間での耐冷熱サイクル性を十分に向上させることができないことがある。また、上記の特許文献3、4は剥離強度、衝撃強度の向上に主眼が置かれており、耐冷熱サイクル性の改善は十分でない。更に、上記の特許文献5、6では、多官能シアノアクリル酸エステルを配合する目的は接着剤の耐熱性、耐湿熱性等を向上させることであり、耐冷熱サイクル性については何ら言及されていない。また、上記の特許文献7、8、9で粒子を配合し、接着部材間の間隔を一定にする目的は、絶縁性・初期接着強度の確保であり、耐冷熱サイクル性の改善については何ら開示されておらず、2−シアノアクリレート系接着剤の接着耐久性は依然として問題があった。
【0006】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法であって、高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、特に接着強さの耐冷熱サイクル性に優れた接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着するにあたり、2−シアノアクリル酸エステル及び特定の多官能シアノアクリル酸エステルを所定量含む2−シアノアクリレート系接着剤を用いて、接着剤の厚さを所定の範囲に調整することにより、高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、耐冷熱サイクル性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法であって、前記2−シアノアクリレート系接着剤は、(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、(b)数平均分子量が1000〜50000の2−シアノアクリロイル基を2個以上有する多官能シアノアクリル酸エステル1〜400質量部を含有する接着剤組成物であり、接着剤の厚さを10〜200μmに調整することを特徴とする接着方法。
2.上記(b)多官能シアノアクリル酸エステルが、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルであることを特徴とする上記1.に記載の接着方法。
3.上記2−シアノアクリレート系接着剤は、シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体を更に含有し、上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該共重合体は2〜40質量部であることを特徴とする上記1.又は2.に記載の接着方法。
4.シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る上記単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る上記単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方であることを特徴とする上記3.に記載の接着方法。
5.上記2−シアノアクリレート系接着剤は、ヒュームドシリカを更に含有し、上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該ヒュームドシリカは1〜30質量部であることを特徴とする上記1.乃至4.のいずれか1項に記載の接着方法。
6.上記2−シアノアクリレート系接着剤は、平均粒子径が10〜200μmの粒子を更に含有し、且つ上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該粒子は0.1〜10重量部であることを特徴とする上記1.乃至5.のいずれか1項に記載の接着方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着方法は、2−シアノアクリル酸エステルと、所定の数平均分子量を有する多官能シアノアクリル酸エステルとを、所定の質量割合で含有した2−シアノアクリレート系接着剤を用い、更に接着面間に介在する接着剤の厚さを10〜200μmに調整するため、2−シアノアクリレート系接着剤が本来有する高いせん断接着強さを有するとともに、従来、必ずしも良好ではなかった剥離接着強さ、衝撃接着強さも十分であり、特に優れた耐冷熱サイクル性を有する。
また、(b)多官能シアノアクリル酸エステルが、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルである場合は、高いせん断接着強さ等と、より優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着方法とすることができる。
加えて、(b)多官能シアノアクリル酸エステルが、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルである場合は、優れた耐冷熱サイクル性と耐温水性とを併せて有する接着方法とすることができる。
更に、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体を含有し、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、共重合体が2〜40質量部である場合は、高いせん断接着強さを有するとともに、剥離接着強さ、衝撃接着強さも十分であり、より優れた耐冷熱サイクル性を有する接着方法とすることができる。
また、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方である場合は、容易に2−シアノアクリル酸エステルに適度に可溶な共重合体とすることができ、高いせん断接着強さ等と、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着方法とすることができる。
更に、ヒュームドシリカを含有し、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、ヒュームドシリカが1〜30質量部である場合は、高いせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着方法とすることができる。
また、平均粒子径が10〜200μmの粒子を含有し、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、粒子が0.1〜10重量部である場合は、接着剤層の最小厚みを制御することができ、接着剤の厚さが均一になり易い。その結果、速やかに硬化し、かつ、高いせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着方法とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の接着方法について詳しく説明する。
本発明の接着方法は、2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法であって、前記2−シアノアクリレート系接着剤は、(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、(b)特定の多官能シアノアクリル酸エステル1〜400質量部を含有する接着剤組成物であり、更に接着剤の厚さを10〜200μmに調整することを特徴とする。
【0010】
上記「(a)2−シアノアクリル酸エステル」としては、この種の2−シアノアクリレート系接着剤に一般に使用される2−シアノアクリル酸エステルを特に限定されることなく用いることができる。この2−シアノアクリル酸エステルとしては、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、i−プロピル、アリル、プロパギル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、オキソノニル、n−デシル、n−ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合、組み合わせは特に限定されないが、例えば、2−シアノアクリル酸エチルと2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル、2−シアノアクリル酸イソブチルと2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル、2−シアノアクリル酸イソプロピルと2−シアノアクリル酸2−オクチル、及び2−シアノアクリル酸イソブチルと2−シアノアクリル酸2−オクチル、等の各々の組み合わせが挙げられる。
【0011】
上記「(b)多官能シアノアクリル酸エステル」は、2−シアノアクリロイル基を2個以上有しておればよく、特に限定されない。この多官能シアノアクリル酸エステルとしては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、エチレン−ブチレン共重合体ポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂及び両末端にヒドロキシル基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物等の2−シアノアクリル酸エステルが挙げられる、これらの多官能シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
多官能シアノアクリル酸エステルとしては、硬化物が柔軟且つ強靭なため、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールは特に限定されず、ポリエチレングリコール、ポリエチレントリオール、ポリエチレンテトラオール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール等、及び前記ポリオール或いは他のグリコールとの共重合体などを用いることができる。また、ポリエステルポリオールも特に限定されず、アジピン酸等の二塩基酸とグリコール、トリオール等との反応により生成する一般的なポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合させたポリカプロラクトンポリオール等を用いることができる。更に、ポリカーボネートジオールも特に限定されず、エチレンカーボネート等から誘導される一般的なポリカーボネートジオールやカーボネートとグリコールとを共重合させたものなどを用いることができる。また、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、疎水性の高いポリエステルポリオールの2−シアノアクリル酸エステルは、硬化物が柔軟、且つ強靱なだけでなく、耐温水性にも優れているため好ましい。
【0013】
多官能シアノアクリル酸エステルの数平均分子量は1000〜50000であり、1500〜40000、特に2000〜30000、更に2000〜25000であることが好ましい。多官能シアノアクリル酸エステルの数平均分子量が1000〜50000であれば、2−シアノアクリル酸エステルと十分な相溶性を有し、高いせん断接着強さと、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着剤とすることができる。
尚、本発明における平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)で測定した値である。GPC測定の際には、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用し、分子量の値はポリスチレン換算値で求めた。
【0014】
2−シアノアクリレート系接着剤における多官能シアノアクリル酸エステルの含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、1〜400質量部である。この多官能シアノアクリル酸エステルの好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステル及び多官能シアノアクリル酸エステルの各々の種類等にもよるが、1〜300質量部、特に1〜250質量部、更に1〜200質量部であることが好ましく、1〜150質量部であることが特に好ましい。多官能シアノアクリル酸エステルの含有量が1〜400質量部、特に1〜200質量部であれば、十分なせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤とすることができる。
【0015】
上記「(a)2−シアノアクリル酸エステル」及び「(b)多官能シアノアクリル酸エステル」を含有する2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する際、接着面間に介在する接着剤の厚さを10〜200μmに調整することが必要である。接着剤の厚さは、特に15〜200μm、更に15〜150μmであることが好ましい。10μm未満では、十分な耐冷熱サイクル性が発現せず、200μmを超えると硬化速度が非常に遅くなり、初期接着強度が発現しない。接着面間に介在する接着剤の厚さが10〜200μm、特に15〜150μmであれば、硬化速度が速く、十分なせん断接着強さ等と優れた耐冷熱サイクル性を併せて有することができる。
【0016】
接着剤の厚さは、接着剤の粘度と接着剤の厚み方向から押圧する圧力を適切に設定することにより調整することができる。また、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルムや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム等を接着面に部分的に挟み込み、接着剤の厚さを調整することもできる。更に、後述する粒子を接着剤中に配合することにより、より容易に接着剤の厚さを10〜200μmに調整することができる。
【0017】
上記2−シアノアクリレート系接着剤には、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体、及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体を含有させることができる。この共重合体は、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる難溶性セグメントと、可溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる可溶性セグメントとを備える。
【0018】
2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体は特に限定されず、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、1−ヘキセン及びシクロペンテン等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。難溶性の重合体となり得る単量体としては、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン及びクロロプレンが用いられることが多い。
【0019】
また、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体も特に限定されず、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン及びアクリロニトリル等が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル及びアクリル酸エトキシプロピル等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
更に、メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシエチル及びメタクリル酸エトキシプロピル等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを併用してもよい。
【0021】
難溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる難溶性セグメントと、可溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる可溶性セグメントとの割合は特に限定されず、これらのセグメントの合計を100モル%とした場合に、難溶性セグメントが5〜90モル%、好ましくは10〜80モル%、可溶性セグメントが10〜95モル%、好ましくは20〜90モル%であればよい。この割合は、難溶性セグメントが30〜80モル%、可溶性セグメントが20〜70モル%、特に難溶性セグメントが40〜80モル%、可溶性セグメントが20〜60モル%、更に難溶性セグメントが50〜75モル%、可溶性セグメントが25〜50モル%であることがより好ましい。難溶性セグメントが5〜90モル%であり、可溶性セグメントが10〜95モル%であれば、特に難溶性セグメントが30〜80モル%であり、可溶性セグメントが20〜70モル%であれば、共重合体を2−シアノアクリル酸エステルに適度に溶解させることができる。その結果、高いせん断接着強さ等と、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する2−シアノアクリレート系接着剤とすることができる。
各々のセグメントの割合は、プロトン核磁気共鳴分光法(以下「1H−NMR」と表記する。)測定によるプロトンの積分値により算出することができる。
【0022】
2−シアノアクリレート系接着剤には、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体及び難溶性の重合体となり得る単量体と、少量のカルボキシル基含有単量体とを用いてなる共重合体を含有させることもできる。カルボキシル基含有単量体も特に限定されず、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及び桂皮酸等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸及びメタクリル酸が用いられることが多く、これらはいずれか一方を用いてもよく、併用してもよい。このカルボキシル基含有単量体が重合してなるカルボキシル基含有セグメントは、親水性の高い2−シアノアクリル酸エステルに可溶性のセグメントになる。また、適量のカルボキシル基含有単量体を用いることにより、共重合体と、疎水化処理されていないヒュームドシリカ表面、又は親水性の高い2−シアノアクリル酸エステルとの親和性を高めることができる。
【0023】
カルボキシル基含有セグメントの割合も特に限定されないが、難溶性セグメント、可溶性セグメント、及びカルボキシル基含有セグメントの合計を100モル%とした場合に、0.1〜5モル%、特に0.3〜4モル%、更に0.4〜3モル%であることが好ましい。また、この含有量は、0.5〜2.5モル%、特に0.5〜2モル%であることがより好ましい。カルボキシル基含有セグメントが0.1〜5モル%、特に0.5〜2.5モル%であれば、被着体に塗布後、速やかに硬化し、且つ高いせん断接着強さと、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する2−シアノアクリレート系接着剤とすることができる。
カルボキシル基含有セグメントの割合は、JIS K0070に準じ、電位差滴定法又は指示薬滴定法により測定することができる。
【0024】
共重合体としては、例えば、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ブタジエン/アクリル酸メチル共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体、及びブタジエン/スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチル共重合体等を用いることができる。この共重合体としては、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体が特に好ましい。また、上記の各々の共重合体に用いられる単量体と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体とを重合させてなる共重合体を用いることもできる。これらの共重合体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよく、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体と、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体とを併用してもよい。更に、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体と、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体とは、いずれを使用してもよいが、疎水性が高い、例えば、炭素数4以上、特に5以上のアルキル基を用いてなる2−シアノアクリル酸エステルでは、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体を使用することが相溶性の観点から好ましい。一方、親水性が高い、例えば、炭素数3以下、特に2以下のアルキル基、又はアルコキシアルキル基を用いてなる2−シアノアクリル酸エステルでは、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体を使用することが相溶性の観点から好ましい。
【0025】
共重合体の平均分子量も特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が5000〜500000であればよく、10000〜200000、特に15000〜150000、更に20000〜100000であることが好ましい。共重合体の数平均分子量が5000〜500000、特に10000〜200000であれば、共重合体が2−シアノアクリル酸エステルに容易に溶解し、特に耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率が高い2−シアノアクリレート系接着剤とすることができる。また、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5000〜1000000、特に10000〜1000000であることが好ましく、Mw/Mnは1.00〜10.0、特に1.00〜8.0であることが好ましい。
共重合体の平均分子量は、前記のように、GPCにより測定することができる。
【0026】
2−シアノアクリレート系接着剤における共重合体の含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、2〜40質量部である。この共重合体の好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの種類、共重合体の製造に用いた単量体の種類及び割合、並びにヒュームドシリカの種類及び含有量等にもよるが、3〜35質量部、特に5〜30質量部であることが好ましい。共重合体の含有量が2〜40質量部、特に3〜35質量部であれば、十分なせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤とすることができる。
【0027】
2−シアノアクリレート系接着剤にはヒュームドシリカを含有させることもできる。このヒュームドシリカは、超微粉(一次粒子が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであり、この無水シリカは、例えば、四塩化ケイ素を原料とし、高温の炎中において気相状態での酸化により生成する超微粉(一次粒子が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであって、親水性の高い親水性シリカと、疎水性の高い疎水性シリカとがある。このヒュームドシリカとしては、いずれも用いることができるが、2−シアノアクリル酸エステル及び共重合体への分散性がよいため疎水性シリカが好ましい。また、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、可溶性セグメント(カルボキシル基含有セグメントを含む。)が多い共重合体を用いる場合は、親水性シリカを組み合わせて用いることが好ましく、難溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、難溶性セグメントが多い共重合体を用いる場合は、疎水性シリカを組み合わせて用いることが好ましい。
【0028】
親水性シリカとしては市販の各種の製品を用いることができ、例えば、アエロジル50、130、200、300及び380(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である。)等が挙げられる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ50±15m2/g、130±25m2/g、200±25m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。また、市販の親水性シリカとしては、レオロシールQS−10、QS−20、QS−30及びQS−40(以上、商品名であり、トクヤマ社製である。)等を用いることができる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ140±20m2/g、220±20m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。この他、CABOT社製等の市販の親水性シリカを用いることもできる。
【0029】
更に、疎水性シリカとしては、親水性シリカと、親水性シリカの表面に存在するヒドロキシル基と反応し、疎水基を形成し得る化合物、又は親水性シリカの表面に吸着され、表面に疎水性の層を形成し得る化合物と、を溶媒の存在下又は不存在下に接触させ、好ましくは加熱し、親水性シリカの表面を処理することにより生成する製品を用いることができる。
【0030】
親水性シリカを表面処理して疎水化するのに用いる化合物としては、n−オクチルトリアルコキシシラン等の疎水基を有するアルキル、アリール、アラルキル系の各種のシランカップリング剤、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル、ステアリルアルコール等の高級アルコール、及びステアリン酸等の高級脂肪酸などが挙げられる。疎水性シリカとしては、いずれの化合物を用いて疎水化された製品を用いてもよい。
【0031】
市販の疎水性シリカとしては、例えば、シリコーンオイルで表面処理され、疎水化されたアエロジルRY200、R202、ジメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR974、R972、R976、n−オクチルトリメトキシシランで表面処理され、疎水化されたアエロジルR805、トリメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR811、R812(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である。)及びメチルトリクロロシランで表面処理され、疎水化されたレオロシールMT−10(商品名であり、トクヤマ社である。)等が挙げられる。これらの疎水性シリカの比表面積は、それぞれ100±20m2/g、100±20m2/g、170±20m2/g、110±20m2/g、250±25m2/g、150±20m2/g、150±20m2/g、260±20m2/g、120±10m2/gである。
【0032】
2−シアノアクリレート系接着剤におけるヒュームドシリカの含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、1〜30質量部である。このヒュームドシリカの好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの種類、共重合体の製造に用いた単量体の種類及び割合、並びにヒュームドシリカの種類等にもよるが、1〜25質量部、特に2〜20質量部であることが好ましい。ヒュームドシリカの含有量が1〜30質量部、特に1〜25質量部であれば、高いせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤とすることができる。
尚、ヒュームドシリカの含有量の増加とともに2−シアノアクリレート系接着剤の粘度が高くなる傾向にあるため、この含有量は、接着剤の調製及び接着剤の被着体への塗布等における作業性などを考慮して設定する必要がある。
【0033】
2−シアノアクリレート系接着剤に配合する粒子は、貼合された際の接着剤の厚さを調整するためのものである。平均粒子径は10〜200μm、特に15〜200μm、更には15〜150μmであることが好ましい。粒子の材質は、「(a)2−シアノアクリル酸エステル」に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部、更に1〜3質量部であることが好ましい。粒子の含有量が0.1〜10質量部である場合は、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
尚、本発明の粒子の平均粒子径は、電気的検知帯式粒度分布測定装置、又はレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した値である。
【0034】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤には、上記の必須成分の他に、従来、2−シアノアクリレート系接着剤に配合して用いられているアニオン重合促進剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的等に応じて、2−シアノアクリレート系接着剤の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0035】
アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号、特公平1−43790号、特開昭63−128088号、特開平3−167279号、米国特許第4386193号、米国特許第4424327号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2236号、特開平3−167279号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号、特開昭62−235379号、特開昭63−88152号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−butyl−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、公表平5−505835号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−又はγ−シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。これらのアニオン重合促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、安定剤としては、(1)二酸化イオウ、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;三弗化ホウ素ジエチルエーテル、三弗化ホウ素メタノール等の三弗化ホウ素錯体;HBF4及びトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール、ピロガロール及びヒンダードフェノール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
可塑剤は、特に、難溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、難溶性セグメントが多い共重合体(難溶性セグメントの割合が65モル%以上の共重合体)を用いる場合に、適量含有させることにより、その溶解性を向上させることができる。この可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、可塑剤の含有量は特に限定されないが、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、3〜50質量部、特に10〜45質量部、更に20〜40質量部であることが好ましい。可塑剤の含有量が3〜50質量部であれば、特に難溶性セグメントが多い共重合体であるときに、共重合体の2−シアノアクリル酸エステルへの溶解を容易とし、特に耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率を向上させることができる。
【0038】
更に、増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−2−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]多官能シアノアクリル酸エステルの合成
合成例1(化合物A)
攪拌機、温度計、リービッヒ冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを備える容量500ミリリットルのフラスコに、シアノアクリル酸クロライド2.40g(20.8ミリモル)と、ベンゼン135ミリリットルとを仕込んだ。その後、反応系を60℃に昇温させ、窒素吹き込み管から窒素ガスを吹き込みながら、ポリプロピレングリコール[数平均分子量;10000(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、旭硝子社製、商品名「プレミノールS−4011」]94.5gを60ミリリットルのベンゼンに溶解させた溶液を加えた。次いで、温度を60℃に維持し、30分間攪拌した。その後、室温(15〜35℃)まで冷却後、減圧下、ベンゼンを留去して、無色で粘ちょうなオイル状の多官能シアノアクリル酸エステル97.8gを得た。
尚、ベンゼンとしては乾燥ベンゼンを使用し、ガラス器具は十分加熱乾燥させたものを用いた。以下の合成例でも同様である。
【0040】
合成例2〜10
合成例1で用いたポリプロピレングリコールに代えて、主鎖骨格を形成する化合物として表1に記載した各種のポリオールを使用し、化合物の数平均分子量及び官能基数に応じた仕込み量とした他は、合成例1と同様にして多官能シアノアクリル酸エステルを合成した。
合成例1〜10の多官能シアノアクリル酸エステルの数平均分子量は、GPC(ウォーターズ社製、型式「アライアンス2695」)により、[カラム:東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」2本+東ソー社製「TSKgel SuperHZ−2500」2本連結、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、分子量の値はポリスチレン換算値である。]の条件で測定した値である。
【0041】
【表1】

【0042】
[2]2−シアノアクリレート系接着剤の製造
実施例1及び比較例3
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部とする。)配合し、これに更に合成例1で得られた多官能シアノアクリル酸エステルAを20質量部配合し、室温(15〜35℃)で、5分間攪拌し、混合して接着剤を製造した。
実施例2〜5、比較例1及び2
2−シアノアクリル酸エステルの種類、並びに多官能シアノアクリル酸エステルの種類及び含有量が表2の記載となるように配合した他は、実施例1と同様にして接着剤を製造した(実施例2〜5)。また、多官能シアノアクリル酸エステルを配合しなかった他は、実施例1と同様にして(比較例1)、又は実施例5と同様にして(比較例2)接着剤を製造した。
【0043】
[3]耐冷熱サイクル性の評価
アルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)とABS樹脂製(ABS樹脂として新神戸電機社製、商品名「ABS−N−WN」を用いた。)の試験片とを、実施例1〜5及び比較例1〜3の2−シアノアクリレート系接着剤を用いて接着させ、23℃で3日間静置して養生させた後、JIS K 6861に準じて引張せん断接着強さを測定し(これを初期強度とする。)、次いで、冷熱衝撃試験機を用いて、−40℃で1時間保持し、その後、80℃で1時間保持する冷熱サイクルを1サイクルとして10サイクル後の引張せん断接着強さを上記と同様にして測定し(これを試験後強度とする。)、下記のようにして保持率を算出した。
保持率(%)=(試験後強度/初期強度)×100
なお、比較例3は、実施例1と同じ接着剤を用い、接着剤厚さを変えて接着させたものである。接着剤の厚さは、実施例1〜12、20〜24、26〜31、34、35、及び比較例4、6、7、10〜17では、接着面(12.5mm×25mm)の長辺の両端に、所定の厚さのスペーサー(材質:ポリエチレンテレフタレート)を幅1mmになるように挟み込んで調整した。その他の実施例、比較例においては、前記スペーサーを使用せず、0.06MPaの圧力をかけて接着することにより、接着剤の厚さを調整した。また、接着剤の厚さの測定は、マイクロメータで被着体であるアルミニウム板とABS樹脂製の試験片のそれぞれの厚さ、及び接着養生後の一対の接着物の厚さを測定し、その差から算出した。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果によれば、実施例1、2、5の接着剤は、十分な耐冷熱サイクル性を有していることが分かる。また、実施例3の接着剤では、初期強度は低いが、冷熱サイクル時に接着強さが向上し、保持率は100%を越えており、耐冷熱サイクル性は優れている。更に、実施例4の接着剤では、初期強度が高く、且つ優れた耐冷熱サイクル性を有していることが分かる。一方、多官能シアノアクリル酸エステルを含有していない比較例1、2の接着剤では、初期強度は高いものの、保持率は0であり、劣っていることが分かる。また、多官能シアノアクリル酸エステルを含有していても、接着剤厚さが10μm未満である比較例3では、保持率は低く、耐冷熱サイクル性が劣っていることが分かる。
【0046】
実施例6、比較例4及び5
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部とする。)配合し、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac MR」)を15質量部溶解させた。これに合成例1で得られた多官能シアノアクリル酸エステルAを30質量部(共重合体、多官能シアノアクリル酸エステルともに、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部としたときの「質量部」である。)配合し、室温(15〜35℃)で、5分間攪拌し、混合して接着剤を製造し、実施例1と同様にして耐冷熱サイクル性を評価した。また、多官能シアノアクリル酸エステルを配合しなかった他は、実施例6と同様にして接着剤を製造し、耐冷熱サイクル性を評価した(比較例4)。更に実施例6と同じ接着剤を用い、接着剤厚さを変えて耐冷熱サイクル性を評価した(比較例5)。結果は表3のとおりである。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例7、比較例6及び7
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部とする。)配合し、これに合成例1で得られた多官能シアノアクリル酸エステルAを7質量部配合した。その後、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル RY200」)を7質量部(多官能シアノアクリル酸エステル、ヒュームドシリカともに、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部としたときの「質量部」である。)配合し、温度20〜40℃で、15分間攪拌し、混合して接着剤を製造し、実施例1と同様にして耐冷熱サイクル性を評価した。また、多官能シアノアクリル酸エステルの配合に代え、ポリプロピレングリコール[数平均分子量;10000(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、旭硝子社製、商品名「プレミノールS−4011」]を配合(比較例6)、又は多官能シアノアクリル酸エステルを配合しなかった(比較例7)他は、実施例7と同様にして接着剤を製造し、耐冷熱サイクル性を評価した。結果は表4のとおりである。
【0049】
【表4】

【0050】
表3の結果によれば、共重合体を含有させた実施例6の接着剤は、十分な耐冷熱サイクル性を有していることが分かる。一方、多官能シアノアクリル酸エステルが配合されていない比較例4の接着剤では、保持率が低く、劣っていることが分かる。また、多官能シアノアクリル酸エステルを含有していても、接着剤厚さが10μm未満である比較例5では、保持率は低く、耐冷熱サイクル性が劣っていることが分かる。更に、表4の結果によれば、ヒュームドシリカを含有させた実施例7の接着剤は、初期強度も高く、耐冷熱サイクル性も優れていることが分かる。一方、ポリプロピレングリコールが配合された比較例6の接着剤、及び多官能シアノアクリル酸エステルを含有していない比較例7の接着剤では、試験後強度が0であり、従って、保持率が0であり、劣っていることが分かる。
【0051】
製造例1
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部とする。)配合し、これに更に合成例1で得られた多官能シアノアクリル酸エステルAを7質量部、及びエチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac MR」)を10質量部溶解させ、その後、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル RY200」)8質量部(共重合体、ヒュームドシリカはともに2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを100質量部としたときの「質量部」である。)配合し、温度20〜40℃で、15分間攪拌し、混合して接着剤aを製造した。
【0052】
製造例2
多官能シアノアクリル酸エステルの含有量、共重合体の種類及び含有量、ヒュームドシリカの種類及び含有量が表5の記載となるように配合した他は、製造例1と同様にして接着剤bを製造した。
【0053】
【表5】

【0054】
実施例8〜12、比較例8及び9
製造例1及び2で製造した接着剤を用い、種々の接着剤厚さになるよう塗布、接着し、実施例1と同様にして耐冷熱サイクル性を評価した。結果は表6のとおりである。
【0055】
【表6】

【0056】
尚、上記の実施例6、8〜12、比較例4〜5、8〜9及び後記の実施例13〜36、比較例10、12〜17のデュポンエラストマー社製の商品名「Vamac」シリーズの組成並びに数平均分子量及び重量平均分子量は表7のとおりである。また、上記の実施例7〜12、比較例6〜9及び後記の実施例13〜36、比較例6〜9、11〜15、17の日本アエロジル社製の商品名「アエロジル」シリーズのヒュームドシリカの表面処理の有無及び表面処理剤並びに親水性、疎水性の指標となるSiOH残存量は表8のとおりである。
尚、表7において、「E」はエチレン、「MA」はアクリル酸メチル、「AA」はアクリル酸、「BA」はアクリル酸ブチルを表す。
更に、共重合体の組成のうちエチレンとアクリル酸エステルの比は前記の1H−NMR測定(日本電子社製、型式「ECA−400」を用いた。)により、溶媒:重クロロホルム、温度:室温の条件で測定した値であり、アクリル酸の組成比はJIS K0070に準じ、酸価測定により求めた値である。また、平均分子量は、GPC(ウォーターズ社製、型式「アライアンス2695」)により、[カラム:東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」2本+東ソー社製「TSKgel SuperHZ−2500」2本連結、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、分子量の値はポリスチレン換算値である。]の条件で測定した値である。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
実施例13〜29及び比較例10〜15
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル、2−シアノアクリル酸2−オクチル又は2−シアノアクリル酸イソブチルに、表10に記載の多官能シアノアクリル酸エステル、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac MR、GLS)又はエチレン/アクリル酸メチル共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac DP」)又はエチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac Ultra LT」)(実施例13〜29及び比較例10、12〜15)、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル RY200、200」)、及び表9に記載の粒子(実施例13〜29及び比較例11〜15)を、表10に記載の含有量となるように配合した他は、実施例1と同様にして接着剤を製造し、同様にして耐冷熱サイクル性を評価した。結果は表11のとおりである。
[粒子]
・球状シリカ(トクヤマ社製、商品名「エクセリカSE−40」)
・球状ポリメタクリル酸メチル粒子(積水化成品社製、商品名「テクポリマーMBX−30、MBX−50」)
・ポリエチレンパウダー(三井化学製、商品名「ミペロン」)
・球状シリコーン系粒子(信越化学社製、商品名「KMP−602」)
・ポリテトラフルオロエチレンワックス(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「CERAFLOUR965」)
【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

【0063】
表11の結果によれば、シアノアクリル酸エステルの種類、多官能シアノアクリル酸エステルの種類と含有量、共重合体の種類と含有量、ヒュームドシリカの種類と含有量、及び粒子の種類と含有量により保持率がやや相違するものの、実施例13〜29の接着剤では、冷熱サイクル後の引張せん断接着強さの保持率は70%以上(70〜160%)であり、優れた耐冷熱サイクル性を有していることが分かる。一方、比較例10〜15の接着剤では、保持率は33%以下であり、特に、多官能シアノアクリル酸エステルと共重合体とを含有していない比較例11では、試験後強度が0であり、従って、保持率が0であり、劣っていることが分かる。
【0064】
実施例30
2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルのみの使用に代えて、表12に記載された2種の2−シアノアクリル酸エステルを併用した他は、実施例13と同様にして接着剤を製造し、同様にして耐冷熱サイクル性を評価した。結果を表12に併記する。
【0065】
【表12】

【0066】
表12の結果によれば、2−シアノアクリル酸イソブチルと2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルとを併用した場合、保持率は、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルのみを用いたときと同様に極めて高く、且つ初期強度も向上することが分かる。
【0067】
実施例31
2−シアノアクリル酸イソブチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸イソブチルを100質量部とする。)配合し、これに更に合成例7で得られた多官能シアノアクリル酸エステルGを50質量部、及びエチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac G」)を表13に記載の含有量となるように溶解させ、その後、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル RY200」)を表13に記載の含有量となるように(共重合体、ヒュームドシリカともに2−シアノアクリル酸イソブチルを100質量部としたときの「質量部」である。)配合し、温度20〜40℃で、15分間攪拌し、混合して接着剤を製造し、実施例1と同様にして耐冷熱サイクル性を評価し、また、下記の方法により耐温水性を評価した。結果は表14のとおりである。
【0068】
実施例32〜36、比較例16及び17
2−シアノアクリル酸イソブチル又は2−シアノアクリル酸イソプロピルに、表13に記載の多官能シアノアクリル酸エステル(実施例32〜36)、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac G」)又はエチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac Ultra LT」)又はエチレン/アクリル酸メチル共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac DP」)(実施例32〜36及び比較例17)、及びヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル RY200」、「R974」)(実施例32〜36及び比較例16、17)を、表13に記載の含有量となるように配合した他は、実施例32と同様にして接着剤を製造し、同様にして耐冷熱サイクル性及び耐温水性を評価した。結果は表14のとおりである。
【0069】
【表13】

【0070】
[4]耐温水性の評価
前記の耐冷熱サイクル性の評価のときと同様のアルミニウム板とABS樹脂製の試験片とを、実施例31〜36及び比較例16、17の接着剤を用いて同様の条件で接着させ、23℃で3日間静置して養生させた後、JIS K 6861に準じて引張せん断接着強さを測定し(これを初期強度とする。)、次いで、60℃の温水に1週間浸漬した後の引張せん断接着強さを上記と同様にして測定し(これを試験後強度とする。)、下記のようにして保持率を算出した。結果は表14のとおりである。
保持率(%)=(試験後強度/初期強度)×100
【0071】
【表14】

【0072】
表14の結果によれば、実施例31〜36の接着剤は、十分な耐冷熱サイクル性を有しており、且つ耐温水性にも優れていることが分かる。また、ポリブタジエングリコールを用いて合成された多官能シアノアクリル酸エステルGを含有する実施例34は、ポリプロピレングリコールを用いて合成された多官能シアノアクリル酸エステルAを含有する実施例35より、耐温水性が優れており、ポリブタジエングリコール等を用いたときの作用効果が裏付けられている。一方、多官能シアノアクリル酸エステルを含有していない比較例16、17の接着剤では、初期強度は高いものの、冷熱サイクル試験後の保持率は低く、更に耐温水性試験後の保持率も劣っていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、特定の2−シアノアクリレート系接着剤を用いた接着方法であって、一般家庭用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−シアノアクリレート系接着剤を用いて被着体を接着する方法であって、前記2−シアノアクリレート系接着剤は、(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、(b)数平均分子量が1000〜50000の2−シアノアクリロイル基を2個以上有する多官能シアノアクリル酸エステル1〜400質量部を含有する接着剤組成物であり、接着剤の厚さを10〜200μmに調整することを特徴とする接着方法。
【請求項2】
上記(b)多官能シアノアクリル酸エステルが、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールの2−シアノアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
上記2−シアノアクリレート系接着剤は、シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体を更に含有し、上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該共重合体は2〜40質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着方法。
【請求項4】
シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る上記単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る上記単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項3に記載の接着方法。
【請求項5】
上記2−シアノアクリレート系接着剤は、ヒュームドシリカを更に含有し、上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該ヒュームドシリカは1〜30質量部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着方法。
【請求項6】
上記2−シアノアクリレート系接着剤は、平均粒子径が10〜200μmの粒子を更に含有し、且つ上記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該粒子は0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接着方法。

【公開番号】特開2011−241290(P2011−241290A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114133(P2010−114133)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】