説明

接着構造部材

【課題】FRP製補強部材を有する接着構造用部材において、優れた接着強度を発現するための接着構造部材を提供する。
【解決手段】少なくとも一枚の連続した繊維強化材層が積層された補強部材と、主構造材から構成される接着構造用部材であって、前記補強部材の主構造材と接着される面に強度向上機構の加工を有することを特徴とする接着構造部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材と主構造材より構成される接着構造用部材に関し、特にFRP(繊維強化樹脂)製補強部材および主構造材の接着面の形状に関する。詳しくは、本発明の接着構造部材は、接着材と接する面に溝加工部が存在しており、接着強度が高い接着構造部材を提供する。
【背景技術】
【0002】
CFRP 材などの高分子系複合材料は、大型旅客機の構造材料として広く使用されるようになるなど、これまで以上に広範な分野での応用が期待されている。CFRP材を含むFRP材はその特性上、部材間の接合に接着材を用いた接合が使用される場合が多く、設計や保証などを含めた強度面での問題が実用上の大きな課題の一つとなっている。しかし、一般的には接着材の強度は、接着される各部材の層間強度よりも低く、亀裂は接着材で発生し、接着材内を進展して破壊に至るため、接着材の強度が構造部材全体の強度を支配することが多い。
【0003】
図9は、図1のA―A‘断面において補強部材1および主構造材2に溝加工部を設けない従来技術の断面図である。溝加工部がないため、接着材内部で発生して伝播する際も、亀裂先端が補強部材1や主構造材2の内部にいたることはほぼなく、接着材内や接着材と補強部材1もしくは接着材と主構造材2との界面を進行して構造の破壊にいたり、破壊強度は低くなる。
【0004】
高分子材料から構成される接着材は、高速荷重下において強度が低下することが知られており、自動車構造部材など、特に衝撃力が加わる用途においては接着強度を上げる必要性が増している。
【0005】
この問題に対して、例えば特許文献1では、リブやスティフナといった補強部材を適宜取り付けた主構造材に対して、接着部に隣接する主構造材の一部に切欠きを設けることによって、接着部位への応力集中を減らしているが、接着部位自体の強度を増す手法ではない。
【0006】
接着強度を増す方法としては、例えば特許文献2では、接着材にナノコンポジットなどの材料を添加することにより、接着強度を増す方法を試みている。この方法では、さらに接着時に加圧することにより接着材を主構造材に入り込ませ、より強固な接着構造を得ている。しかしこの方法は接着時に加圧装置を必要とするなど、大型構造物に一般的に使用できる方法とは言えず、より汎用的に低コストで適用できる方法が望まれている。
【0007】
また異種材料を接着する試みとしては、特許文献3に示すような、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂からなる積層板を成形する方法がある。この方法によると材料界面が入り組むことにより、亀裂伝播を阻害して強度を向上する効果はあるが、この方法は、単体の積層板を成形する際にしか用いることができず、部材同士を接着して構成される構造体の作成方法としては用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−291219号公報
【特許文献2】特開2010−234524号公報
【特許文献3】特開2008−230238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点の改善を試み、FRP製補強部材を有する接着構造用部材において、優れた接着強度を発現する接着構造部材を提供することを目的とする。この接着構造部材を用いた成形品は、電気、電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器、自動車部品、自転車部品、航空機部品、建築材料およびスポーツ用品の構造材に好適に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明によれば、主構造材と、少なくとも一枚の連続した繊維強化材層が積層され、前記主構造材の一方の面に接着された補強部材とから構成される接着構造部材であって、前記補強部材の前記主構造材と接着される面に溝が加工された溝加工部を有することを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0011】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記溝加工部は、接着面の長辺に略平行方向に沿って設けられていることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0012】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記溝が加工された前記補強部材に含まれる前記繊維強化材層は、織物から構成されていることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0013】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記繊維強化材層は、前記補強部材の積層構成において、接着材に接する面側に積層されていることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、少なくとも一枚の連続した繊維強化材層を含む積層板であることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、前前記主構造材の前記補強部材と接する面に溝が加工された溝加工部を有することを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記繊維強化材層の厚みT1は0.2〜3mmの範囲であることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0017】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記溝加工部の溝の深さtは、前記繊維強化材層の厚みに対して、20%〜60%の範囲であることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記溝加工部の溝と接着面となす角度θは、30度〜150度の範囲にあることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0019】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記溝加工部の断面形状が三角形であり、底面のなす角度θが、45度〜90度の範囲にあることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0020】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記連続した繊維強化材が炭素繊維であることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0021】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着材がエポキシ系接着材、シアノアクリル系接着材、ビニール系接着材、プラスチック系接着材の少なくとも1種の接着材から構成されることを特徴とする接着構造部材が提供される。
【0022】
また、本発明の好ましい形態によれば、電気、電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器、自動車部品、自転車部品、航空機部品、建築材料およびスポーツ用品のいずれかに用いられる接着構造部材が提供される。
【0023】
以下に用語を定義する。
【0024】
本発明において、「主構造材」とは、接着材により補強材を接合する構造全体の主体となる母材をいう。主構造材の接着面形状は平面である必要は無く、曲面を形成していたり、表面に微小な穴や貫通穴があったりしても良い。
【0025】
本発明において、「補強部材」とは、接着面に強度向上機構を設け、接着材により主構造材に接合される構造体をいう。主構造材と同様に、接着面において被着材の形状は平らである必要は無く、曲面を形成していたり、表面に微小な穴や貫通穴があっても良い。補強部材は、主構造材の剛性および強度を向上させる目的で用いられることが多く、大きさに制約は無く、また一つの主構造材に対して複数の補強部材が接合されることもある。軽量化の観点から、主構造材に接合した状態で中空となるモノコック構造であることもある。また、主構造材と補強部材を合わせて「被着材」と呼称する。
【0026】
本発明において、「接着部」とは、補強部材を主構造材に接合する際に、接着材を介して両者が接合している領域を示し、接着強度を向上させたい部位における補強部材および主構造材の接着面には、後述するような溝加工部が少なくとも一箇所は存在する。
【0027】
本発明において、「溝加工部」とは、補強部材および主構造材の接着面の表面に溝加工を行った部位を示す。補強部材や主構造材の成形後、接着強度が必要な箇所に加工を行う。接着材が破壊し、亀裂が伝播した際に亀裂を補強部材もしくは主構造材の内部に伝播させるための伝達経路となる。
【0028】
本発明において、「接着材」とは、接合部をともに形成する被着材とは別の材料で構成される物質であり、リベット接合や溶接接合とは異なり、被着材との接合の時には、被着材よりも低いヤング率をもった非定形の物体として被着材表面に沿って密着し、ついで加熱や乾燥でもって硬化することにより被着材同士を接合するための材料などをいう。典型的には硬化前においては液体やジェル状の物体である。エポキシ系接着材、シアノアクリル系接着材、ビニール系接着材、プラスチック系接着材などの種類が広く用いられており、それらを組み合わせて使用することもある。
【0029】
接着材は結合力を向上させる観点から、被着材に前処理を行っても良いし、複数の成分から構成しても良い。また、液体だけではなく、固体や粉体でも良い。さらに接着材は、主構造材ではなく補強部材に塗布しても、また双方に塗布しても良い。
【0030】
本発明において、「FRP」とは、繊維により強化された繊維強化樹脂によって構成される複合材料を指し、用いる繊維材としては、炭素繊維の他、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維からなる強化繊維を使用することも可能である。構造用部材の剛性や強度等の制御の容易性の面からは、特に炭素繊維が好ましい。FRPのマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、さらには、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂も使用可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の接着構造部材によれば、単に主構造材と補強部材を接着した接合体よりも、高い強度を有する接着構造部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施態様にかかるFRP製補強部材と主構造材の接着略記図である。
【図2】図1の前記略図のA−A′断面における前記略断面図である。
【図3】図1の接着面における上面図である。
【図4】図2の前記略断面図における、補強部材1に設けた溝加工部の設計例である。
【図5】図2の前記略断面図において、溝加工部4にそって亀裂進展が発生した場合の亀裂の進展を模擬的に示した一例である。
【図6】図1の前記略図のA−A′断面における前記略断面図の一例である。
【図7】図1の前記略図のA−A′断面における前記略断面図の一例である。
【図8】図1の前記略図のA−A′断面における前記略断面図の一例である。
【図9】補強部材1および主構造材2に溝加工部を設けない従来技術の前記略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態の一例を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本実施形態における接着構造体の概略斜視図を示したものである。100は補強部材1と接着材3および主構造材2から構成される接着部を示す。接着材3は補強部材1を主構造材2に接合する目的で塗布され、接着部100を形成している。
【0035】
図2は、図1のA―A‘断面における接着部100の断面図の一例を示したものである。補強部材1の接着部には四角形断面を有する溝加工部4が設けられている。接着部における溝加工部4の数や形、長さや配置には特に制限はなく、求められる接着強度や荷重によって部位ごとに変更してよい。
【0036】
図3は、図1の補強部材1を上から見た図である。接着面に外力が加わった場合、接着面には剛性が低い方向に亀裂が入りやすいため、例えば図3(a)に示す長方形の接着部においては、長辺から反対の長辺へと亀裂が進展しやすい。溝加工部は、その亀裂の伝播を阻害する目的で設けるものであるため、溝加工部4の形状は、図3(a)に示すように、接着して曲面が形成されている稜線と略直角方向、すなわち、接着面の長辺に平行に配列するのが望ましい。
【0037】
図3(a)の連続した溝形状は、最も加工しやすくて望ましいが、図3(b)に示すような千鳥配列や、図3(c)のような弓形形状は、溝加工部内で亀裂先端が滞留し、被着材内部へ亀裂先端を誘導しやすくなるため強度向上効果が高く、より望ましい。また、どの接着端部から亀裂が伝播した場合でも捕らえやすいように、図3(d)のように全ての接着材端部に略平行となる溝配置もまた強度向上効果が高く、より望ましい。いずれの場合においても、溝加工部の形状は、先に示したように、亀裂の伝播を阻害するように設けるものであり、その接着面において想定される荷重によって発生する亀裂の伝播方向に略直角となるような成分を含む溝が加工されていればよい。
【0038】
溝加工の方法は、溝の加工精度を確保するため、一般的にはFRP用の砥石を用いた研削盤を使用することが多いが、特にその方法を限定するものではない。溝加工時に層内に亀裂を発生させないような方法を用いるのが望ましい。
【0039】
また、接着材の厚さや亀裂の進行位置によっては、溝加工部4に入り込まない場合も考えられるので、溝加工部は接着面に1箇所ではなく、数箇所設けておくほうがより好ましい。
【0040】
図4は、この接着部位に亀裂が発生した場合の図2の部位Bにおける拡大図を示す。
【0041】
本例では補強部材1は1a,1b,1cの3枚の積層材で構成されており、それぞれ繊維強化材料を用いた例である。接着材の強度は、主構造材2および補強部材1の強度よりも低いため、構造体に荷重が加わり、接着部が破壊した場合、亀裂はまず接着材内部で発生し、接着材内や、接着材と主構造材2もしくは補強部材1との界面を伝播する。亀裂先端は応力が高くなるため、亀裂は亀裂先端からさらに進展し、接合部を切り裂くように破壊が進行する。接着材と主構造材2もしくは補強部材1との界面を亀裂が伝播するとき、主構造材もしくは補強部材に溝加工部4が存在すると、亀裂は溝加工部4に入り込み、溝加工部内で応力が高くなる。溝加工部4に入った亀裂先端周辺では応力が高くなるため、溝加工部の角が破壊して補強材内部に亀裂が進展しやすくなる。接着材から離れ、補強部材内に入った亀裂は、繊維材料の強度と比べて強度の低い補強部材内の積層層間を進行するが、積層層間の強度は接着材の強度よりも高いため、接着部の破壊強度は、溝加工部がない従来の接着構造を有する従来構造の場合に比べて高くなる。
【0042】
亀裂は亀裂先端で応力が高いため、通常は亀裂先端から亀裂が進行するが、亀裂先端が一旦積層層間に入り込んだ後、再び接着層内で亀裂の途中から枝分かれし、接着層内を亀裂が進行することも考えられる。しかしこの場合においても、亀裂の枝分かれに余分な破壊エネルギーを必要とするため、溝加工部を設けない従来の接着構造体のように抵抗が少ない接着材内だけを亀裂先端が伝播した場合に比べると、接着部の強度は高くなる。
【0043】
補強部材および主構造材に用いられる材料は、亀裂到達後に亀裂先端を部材内に取り入れると同時に、再び亀裂先端を接着面に戻さないことが重要であるため、少なくとも一層の繊維強化材を用いていることが必要である。またさらに望ましくは、接着材内部を伝播してきた亀裂を誘導しやすくするため、その繊維強化材が接着面に接する側に積層されていること、すなわち、図4においては積層材1aが少なくとも繊維強化材であることが望ましい。
【0044】
補強部材および主構造材に用いられる繊維強化材の厚みTは、亀裂が層間に到達し、進展する際にも層間強度を保ち、構造を維持する必要から、厚みが薄いものは好ましくなく、また亀裂を層間で安定させて進展させるため、厚みが厚くて表面の凹凸が大きいものは好ましくない。すなわち、繊維強化材の厚みT1は0.2〜3mmの範囲にあることが望ましい。また同様の理由により、繊維強化材は、マット材ではなく、剛性がより高い連続繊維より構成されているのが望ましく、さらには織物を用いていることが成形品の生産性から好ましい。
【0045】
図5は、補強部材1の断面における溝加工部4の模式図を示したものである。本例では補強部材1は1a,1b,1cの3枚の積層材で構成されている。3枚のうち、最も主構造材2に近く、接着材と接する積層材1aは、前述のとおり溝加工部4が設けられ亀裂を層間に伝達させる必要から、繊維強化材であることが望ましい。また溝加工部4の溝の深さtは、浅すぎると繊維強化材の強度が高すぎ、亀裂先端が溝加工部に入っても繊維強化材に亀裂を誘導させることができず、深すぎると亀裂の誘導がしやすくなるが補強部材自体の強度が大幅に低下してしまうことから、繊維強化材層の厚みTaに対して、20%〜60%の範囲であることが必要である。また溝加工部を複数設ける場合、溝の深さtは全て同じである必要はなく、溝ごとに深さtを変えても良い。
【0046】
接着部における溝加工部の間隔dは、あまり小さすぎると補強部材の剛性が低下しすぎること、および補強部材内への亀裂伝播後に補強部材において層間剥離が発生しやすくなることから、少なくとも補強部材の厚さhよりも大きいことが望ましい。
【0047】
図6は、図1のA―A‘断面における接着部の断面図の別の一例を示したものである。補強部材1の接着部には溝加工部4が設けられているのに加え、接着面において補強部材と対向する主構造材2にも溝加工部5が設けられている。両側の接着面に溝加工部を設けることにより、補強部材1に設ける溝加工部4の数を減らすことができ、補強部材1の部材強度の低下を低減できるほか、亀裂先端の補足性が高まる利点がある。
【0048】
また図7は、図1のA―A‘断面における接着部の断面図のさらに別の一例を示したものである。本例では、補強部材1の接着部に設けられた溝加工部6と接着面のなす角度が直角ではなく、θの角度を有している。
【0049】
本例に示すような接着部を有する構造体の場合、荷重方向は構造体によってほぼ予測可能であることが多く、たとえば図4に示した接着面では、亀裂は右端側から左端側へ伝播する例を示している。
【0050】
図7の構造体においては、亀裂は図4と同様に、亀裂は右端側で発生し、左端側へ伝播することが予測される場合にも設けられる溝加工部の形状を示したものである。亀裂の伝播方向に沿うように溝加工部の掘り込み角度を小さくすると、溝加工部に亀裂先端が入りやすく、かつ亀裂先端が溝加工部から出にくくなるため、亀裂先端が溝加工部から補強材内部に伝播しやすくなり、より安定的に亀裂先端を補強材内に取り込むことができる。θは加工のしやすさから30度以上150度以下であることが望ましい。
【0051】
また図8は、図1のA―A‘断面における接着部の断面図のさらに別の一例を示したものである。図8(a)においては、補強部材1の接着部には、断面が三角形である溝加工部7が設けられており、三角形の底の角度がθとなるように加工されている。また、図8(b)は、三角形の溝加工部7の底の角度θが特に90°である場合を示している。
【0052】
接着面において、亀裂の発生、および伝播方向が明確である場合、溝加工部7は三角形の断面形状であっても良い。θは、亀裂を安定的に溝加工部に誘導させるため、45度以上であることが望ましく、さらに亀裂先端を補強材内部に伝播させやすくするため、90度以下であることが望ましい。
【0053】
本発明を用いて構成した接着構造部材は、従来構造に比べて高い強度が提供される。そのため構造部材としては、電気、電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器などに幅広く用いることができる。特に動的な荷重付与に対する衝撃強度が高くなるため、自動車部品、自転車部品、航空機部品およびスポーツ用品に用いることが好ましい。
【0054】
また補強部材1を構成するFRP材料としては、少なくとも1枚のCFRP織物材を接着材と接する側に積層していることが望ましい。すなわち溝加工により補強部材1の剛性が適度に低下するため、溝加工部を介して接着材内を伝播した亀裂先端を補強部材内の層間に誘導され、亀裂が安定して積層された補強部材内の層間を伝播しやすい。
【符号の説明】
【0055】
1 補強部材
1a 補強部材1を構成する繊維強化層(厚みTa)
1b 補強部材1を構成する繊維強化層(厚みTb)
1c 補強部材1を構成する繊維強化層(厚みTc)
2 主構造材
3 接着材
4 溝加工部
5 溝加工部
6 溝加工部
7 溝加工部
8 亀裂
100 接着部
θ 溝加工部の溝が接着面となす角度
θ 三角形の溝加工部の底面のなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主構造材と、少なくとも一枚の連続した繊維強化材層が積層され、前記主構造材の一方の面に接着された補強部材とから構成される接着構造部材であって、前記補強部材の前記主構造材と接着される面に溝が加工された溝加工部を有することを特徴とする接着構造部材。
【請求項2】
前記溝加工部は、接着面の長辺に略平行方向に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の接着構造部材。
【請求項3】
前記溝が加工された前記補強部材に含まれる前記繊維強化材層は、織物から構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の接着構造部材。
【請求項4】
前記繊維強化材層は、前記補強部材の積層構成において、接着材に接する面側に積層されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項5】
前記主構造材は、少なくとも一枚の連続した繊維強化材層を含む積層板であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項6】
前記主構造材の前記補強部材と接する面に溝が加工された溝加工部を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項7】
前記繊維強化材層の厚みT1は0.2〜3mmの範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項8】
前記溝加工部の溝の深さtは、前記繊維強化材層の厚みに対して、20%〜60%の範囲であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項9】
前記溝加工部の溝と接着面となす角度θは、30度〜150度の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項10】
前記溝加工部の断面形状が三角形であり、底面のなす角度θが、45度〜90度の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項11】
前記繊維強化が炭素繊維であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項12】
前記接着材がエポキシ系接着材、シアノアクリル系接着材、ビニール系接着材、プラスチック系接着材の少なくとも1種の接着材から構成されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の接着構造部材。
【請求項13】
電気、電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器、自動車部品、自転車部品、航空機部品、建築材料およびスポーツ用品のいずれかに用いられる、請求項1〜12のいずれかに記載の接着構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171221(P2012−171221A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35712(P2011−35712)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】