説明

接続口回動分岐継手

【課題】水道配管の中間位置に分岐設定する従来の三方向分岐継手は、何れも固定的なT型継手を基本としているもので、1次側接続口と2次側接続口が対設されない異なる方位に存在する配管環境においては、スプリンクラー等の端末機器の分岐配設に対応できない問題があった。
【解決手段】一端を接続継手口21、他端を本体嵌合基部22に構成した2つのエルボ型継手体2、2を、継手胴本体1の上面に並列形成した嵌合孔3、3に回動可能に水密嵌着すると共に、継手胴本体1の底部に端末機器取付け機構4を設けて接続口回動分岐継手に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道配管の1次側端末と2次側端末が直線位置になく、異なった方位に配置された水道配管の中間位置に、スプリンクラーヘッド等の端末機器や分水路を設定する場合に用いる接続口回動分岐継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー用の給水回路として貯水タンクや給水ポンプ等の給水回路を特別に設備する商業ビルの場合と異なり、一般の住宅やアパート、マンション等にスプリンクラーを取り付ける場合は、特別な給水回路を設けず上水道から分岐することが認められているため、水道配管の中間位置にスプリンクラーを配設することが行われてきている。
【0003】
一方、水道水取込みスプリンクラーヘッド等の配管部中間機器の設定位置については、分岐継手を挟んでその両側に水道配管の1次側接続口と2次側接続口が直線位置に配置されるものではなく、1次側接続口と2次側接続口が対設されない配管環境においては、固定的なT型継手によってはスプリンクラー等の端末機器の分岐配設が困難であった。
【0004】
また、天井裏での配管は、地中配管のように管が土砂等によって支持されることがないので宙空配管となり、梁材などを支持固定材として利用しなければ、安定した配管を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
従来、一般の住宅用のスプリンクラー設備は、上水道設備から分岐した給水管の途中に特許文献1のようにT型継手を接続し、このT型継手の分岐管部にスプリンクラーヘッドを接続している。しかし、水道配管の中間位置にスプリンクラーを配設するとその部分に停滞水(死水)が生じ、その停滞水が水道配管内に混入して衛生上好ましくない問題があった。
【0006】
このような水道水取込みスプリンクラーヘッド用の分岐継手における死水防止対策としては、T型継手内に隔壁を設けて平常時にも分岐管部内に強制的に水を流入させ、分岐管部内の水を流動させて死水の発生を防止する特許文献2のような手段やT型分岐管部に接続する導水口の内径を放水口の断面積より大きい断面積の渦流室とする特許文献3のような対策も講じられてきている。
【0007】
また、1次側接続口と2次側接続口が対設されない配管環境に対応するものとして、リング状の継手本体と、この継手本体に下部にスプリンクラーヘッドの取付口を偏心させて設けた中空回転体を回転自在に嵌合して中空回転体を回転範囲でスプリンクラーヘッドの取付位置を調整できるようにした特許文献4のような提案もなされている。
【特許文献1】実開昭54−5399号公報
【特許文献2】特開2011−30865号公報
【特許文献3】特開平2−239878号公報
【特許文献4】実用新案登録第2567707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水道配管の中間位置に分岐設定する従来の三方向継手は、上記のように様々な工夫が凝らされているものの、何れも固定的なT型継手を基本としているもので、1次側接続口と2次側接続口が対設されない配管環境においては、スプリンクラー等の端末機器の分岐配設に対応できないものであった。
【0009】
即ち、給水回路を特別に設けることなく上水道設備から分岐した給水管の途中にスプリンクラーを設定する場合、スプリンクラーヘッドの配管空間たる天井内において「各部屋の中央等、スプリンクラーヘッドを配置したい箇所」と「水道管として配管したいライン」とは必ずしも一致せず、分岐継手の1次側接続口と2次側接続口が異なった方位にならざるを得ないことも多い。
【0010】
また、水道配管の1次側と2次側末端の設定位置が近い場合は、図4に示すように継手胴本体の側面部を底辺としたU字型の配管となるが、鋼管等硬質管ではエルボ等別途の継手機器が必要となり、ポリエチレン管等軟質配管においても、急激な曲がりは管の折れの原因となり、通水量の低下や管の損傷を引き起こす問題がある。
【0011】
更に、スプリンクラーヘッドへの給水配管のような天井裏での配管は、地中配管のように管が土砂等によって支持されることがないので宙空配管となり、振動や加熱に耐える堅固な支持組織を持つ配管機構を構成することが困難な環境にあり配管支持施工上の問題も含んでいる。
【0012】
更に、宙空部での配管は水平施工を測定する水平機器を設定する基準スペースが存在しないため、宙空部での配管のため水平機器の測定基準スペースを確保できず、配管設計の施工が不正確なものとならざるを得ない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、一端を接続継手口、他端を本体嵌合基部に構成した2つのエルボ型継手体を、継手胴本体の上面に並列形成した嵌合孔に回動可能に水密嵌着すると共に、本体底面に端末機器取付け機構を設けるようにした。
【0014】
また、継手胴本体の側部等の適宜箇所に、直近の支持部材に継手胴本体を締着するボルト孔を設けた耳片を胴本体と一体に突設して、胴本体を天井梁材などの支持固定材に直接締着固定して宙空においても、天井部の支持固定材を利用した安定した配管を行うことができるようにした。
【0015】
更に、エルボ型継手体の曲面頂部に接続継手口の頂部を水平に拡幅延長する基台部を形成し、取付け配管施工時に水平機器の測定基準スペースとして利用し、或いは沿設部材との接合平面として沿設部材に当接できるようにした。
【0016】
また、分岐継手の形状は全体的に曲面によって形成されているため、梁材等に面接着して安定した支持力を得ることができない。このような事態に対処するため継手胴本体の支持材と接触する外形部位の曲面を盛り上げて接触平面を形成するようにして安定した配管システムの配設を行えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のように構成したことにより、従来のチーズのような固定形状のT型継手のように1次側接続口と2次側接続口の方位に合わせてエルボ等の複数の継手を組み合わせて方位調整を行う必要がなくなるため、より自由な配管システムの設計を可能とした。
【0018】
また、2つのエルボ型継手体が並列形成されるので、継手胴本体底部を底辺としたU字型の配管となる場合でも、エルボ型継手体が1次側と2次側に湾曲流路を形成して送水エネルギーの減損を防止する一方、本体底面に設けられた端末機器取付け機構に対するU字型配管の急激な折れ曲がりを無理なく形成し、機器取付け機構部における死水の発生を防止する。
【0019】
また、1次側接続口と2次側接続口が直線状に対設されない配管環境においても、分岐配管が可能となるためスプリンクラーのような配管部中間機器の設定を可能にすると共に、多種類の多様な形状の継手を用意することなく、自由な設計に対応する配管施工を行える効果がある。
【0020】
更に、継手胴本体に木螺子やビスを挿通する締着耳片を形成すれば、天井裏等宙空部での配管を梁等の支持材に支持させることを可能にし、更に、外形部の曲面を平面修正した接触平面を形成することにより、安定した配管システムの配設を行える。
【0021】
加えて、エルボ型継手体接続継手口の頂部を水平に拡幅延長して基台部を形成すれば、取付け配管施工時に水平機器の測定基準スペースとなり、直流部の水平配管施工の正確性を担保する施工に寄与する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例を示すもので、エルボ型継手体を、継手胴本体の上面に並列形成した嵌合孔に回動可能に水密嵌着した構造を示す接続口回動分岐継手の縦断面側面図
【図2】同じく、エルボ型継手体の接続口をワンタッチ挿入機構に構成すると共に、継手胴本体に締着耳片を形成し、接続継手口の頂部に基台部を形成した実施例の構造を示す接続口回動分岐継手の縦断面側面図
【図3】同じく、継手胴本体に締着耳片を形成すると共に、同本体の曲面外形部に接触平面を形成した実施例を示す接続口回動分岐継手の側面図
【図4】同じく、継手胴本体に締着耳片を形成し、接続継手口の頂部に基台部、同本体の曲面外形部に接触平面を形成した実施例による分岐継手のエルボ型継手体をV字形に回動した状態を示す接続口回動分岐継手の平面図
【図5】同じく、継手胴本体に締着耳片を形成し、曲面外形部に接触平面を形成した実施例による分岐継手のエルボ型継手体を曲折状態に回動した状態を示す接続口回動分岐継手の平面図
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。1は継手胴本体で、上面には2つのエルボ型継手体2a、2bを回動可能に水密嵌着する嵌合孔3、3が並列形成され、底面には分岐水路4若しくは端末機器取付け機構41が設けられている。
【0024】
エルボ型継手体2a、2bは、それぞれ、一端を接続継手口21、他端を継手胴本体1の嵌合孔3、3に嵌合する本体嵌合基部22に構成され、スラストリング23によって継手胴本体1の嵌合孔3に回動可能に嵌着されると共に、Oリング24によって水密性が保持される。
【0025】
1次側配管11から水道水は、エルボ型継手体2aのエルボ型湾曲流路によって継手胴本体1に流入し、スプリンクラー等の端末機器取付け機構41が閉鎖状態にある場合には、U字型に屈曲してエルボ型継手体2bから2次側配管12に流出するが、このU字型屈曲によって発生する渦流によって端末機器取付け機構41の部位への水流の停滞がなくなり死水の発生が防止される。
【実施例1】
【0026】
実施例1は、図1に示すように継手胴本体1の嵌合孔3、3に、エルボ型継手体2a、2bを回動可能に水密嵌着し、継手胴本体1の底部に分岐水路4を形成したもので、通常の水道配管の三方継手として用い、給水配管の接合方位を自由に調整できるようにしたものである。
【0027】
この実施例は、エルボ型継手体2a、2bを1次側、2次側に限定することなく、上記のような合流システム配管にも広く活用することができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、図2に示すようにエルボ型継手体2a、2bの接続継手口21をワンタッチ継手に構成したもので、この場合は樹脂管によって構成された配管11、12の端部を接続継手口21の挿入口25に挿入すると抜け止めリングの係止片26が挿入配管の外周面に食い込み、抜去方向への離脱が不能となるようになっている。なお、実施例2は配管11、12が樹脂管によって構成されている場合に適用されるもので、配管11、12が金属管の場合は接続継手口21の形態は図1、3乃至5のようになる。
【実施例3】
【0029】
この実施例は、継手胴本体1の底部をスプリンクラー14等の端末機器取付け機構41に構成する場合に、配管部中間位置における継手構造を単純化することによって接続口回動分岐継手の自由な配設と位置固定の幅を広げるようにしたもので、継手胴本体1の側部等適宜箇所に、直近の支持部材Gに継手胴本体1を締着する木螺子、ビス等の締着材Hを挿通する孔を設けた耳片13が胴本体と一体に突設されている。
【0030】
耳片13は胴本体1と一体に突設されて本体を支持部材Gにしっかりと固定する構造であれは良く、平板状の突片形状でも良いが、図3に示すように両側をリブhによって補強し中央部の肉を薄く構成したり、或いは締着材Hを挿通支持する筒状の支片を本体と一体に形成しても良い。
【0031】
なお、実施例3は便宜図2によって図示したが、接続継手口21の形態は配管11、12が金属管であるか、樹脂管であるかによって実施例1或いは実施例2のように構成されるものである。この点は他の実施例においても同じである。
【実施例4】
【0032】
実施例4は、実施例3の締着耳片13と併せて支持部材Gによる支持力を強化するための平面構造を形成するようにしたもので、継手胴本体1の支持部材Gと接触する外形部位の曲面を盛り上げて接触平面28を形成するようにしたものである。
【0033】
この接触平面28は、継手胴本体1の支持部材Gと接触する外形部位の曲面を盛り上げて表面を単純な平滑平面としても良いが、図3、図4に示すように接触平面の両側部位に相当する所定の間隔をもって接触条体28a、28bを形成して支持部材Gとの安定接触部を形成するようにしたものである。
【0034】
このようにすることにより、平滑平面の不正確な加工による凹凸が密接部にがたつきを発生させるなどのリスクを避けることができると共に、材料の節減と製品の軽量化を図ることができる。
【実施例5】
【0035】
実施例5は、図2、図4に示すようにエルボ型継手体2a、2bのの曲面頂部に接続継手口21の頂部を水平に拡幅延長する基台部27、27を形成し、取付け配管施工時に水平機器Kの測定基準スペースとなり、直流部配管施工の水平度を測定しながら水平部の配管施工を行えるようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る接続口回動分岐継手は、近代産業の血管にも似た水道配管の継手構造を基本的に変革するもので、接合配管の配設部位を自由に設定できることにより、配管システムの自由な設計範囲を大幅に拡張できるので、水道配管産業上の利用価値は極めて高いものである。
【符号の説明】
【0037】
1 継手胴本体
11 1次側配管
12 2次側配管
13 支持部材への締着耳片
14 スプリンクラーヘッド
2 エルボ型継手体
2a 1次側エルボ型継手体
2b 2次側エルボ型継手体
21 接続継手口
22 本体嵌合基部
23 スラストリング
24 Oリング
25 接続継手口の接合配管端部挿入口
26 抜け止めリングの係止片
27 水平機器Kの測定基準スペース基台部
28 支持部材との接触平面
28a 支持部材との接触条体
28b 支持部材との接触条体
3 エルボ型継手体嵌合孔
4 分岐水路
41 端末機器取付け機構
G 梁材等の支持部材
H 木螺子、ビス等の締着材
K 取付け配管水平施工測定水平機器
h 耳片の両側補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を接続継手口、他端を本体嵌合基部に構成した2つのエルボ型継手体を、継手胴本体の上面に並列形成した嵌合孔に回動可能に水密嵌着すると共に、本体底面に分岐水路を設けて成る接続口回動分岐継手
【請求項2】
継手胴本体側部等の適宜箇所に、直近の支持部材に継手胴本体を締着する木螺子、ボルト等を挿する孔を設けた耳片を胴本体と一体に突設するようにした請求項1記載の接続口回動分岐継手
【請求項3】
継手胴本体の支持材と接触する外形部位の曲面を盛り上げて支持材と面で着接する接触平面を形成するようにした請求項1又は請求項2記載の接続口回動分岐継手
【請求項4】
継手胴本体の支持材と接触する外形部位に形成する接触平面を、接触平面の両側部位に相当する所定の間隔をもって接触条体を形成して支持部材との安定接触部を形成するようにした請求項3記載の接続口回動分岐継手
【請求項5】
エルボ型継手体の曲面頂部に接続継手口の頂部を水平に拡幅延長する基台部を形成するようにした請求項1又は請求項2又は請求項3記載の接続口回動分岐継手

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2610(P2013−2610A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137194(P2011−137194)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】