接続端子及びそれを備えたコネクタ
【課題】高い接続信頼性を長期にわたって維持することが可能な接続端子及びそれを備えたコネクタを提供すること。
【解決手段】端子本体51と、端子本体51の先端部に設けられた接触タブ63と、接触タブ63を端子本体51に対して先端側へ向かって付勢するバネ部62a,62bとを備え、互いに突き合わされることにより、接触タブ63同士がバネ部62a,62bの付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続されるオス端子14及びメス端子15であって、接触タブ63同士が押し付けられて導通接続した状態で端子本体51同士を係合させる係合突起71と係合フック75とからなる係合手段を備えたものである。
【解決手段】端子本体51と、端子本体51の先端部に設けられた接触タブ63と、接触タブ63を端子本体51に対して先端側へ向かって付勢するバネ部62a,62bとを備え、互いに突き合わされることにより、接触タブ63同士がバネ部62a,62bの付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続されるオス端子14及びメス端子15であって、接触タブ63同士が押し付けられて導通接続した状態で端子本体51同士を係合させる係合突起71と係合フック75とからなる係合手段を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに電気的に接続される接続端子及びそれを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コネクタは、電線が接続された接続端子がハウジングに収容されて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この接続端子は、図20に示すように、本体1に一体に設けられた波形タブ2を有し、この波形タブ2の先端のヘッド3が、相手方のヘッド3等と接触する。そして、この接続端子では、波形タブ2がバネとなり、良好な接触圧での接続が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−504676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の接続端子は、前述したように、波形タブ2の弾性力によってヘッド3同士を押し付けて電気的接続を行う構造であるため、いずれか一方または両方の接続端子を押し付け過ぎると、接続端子を保持している樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分に大きな負荷がかかる。すると、負荷の作用箇所にクリープ等の損傷が生じ、ヘッドにおける接触荷重の低下による接続不良が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い接続信頼性を長期にわたって維持することが可能な接続端子及びそれを備えたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る接続端子は、下記(1)を特徴としている。
(1) 端子本体と、該端子本体の先端部に設けられた接触タブと、該接触タブを前記端子本体に対して先端側へ向かって付勢するバネ部とを備え、互いに突き合わされることにより、前記接触タブ同士が前記バネ部の付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続される接続端子であって、
前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態で前記端子本体同士を係合させる係合手段を備えたこと。
【0008】
上記(1)の構成の接続端子では、接触タブ同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部の付勢力の反力を、端子本体同士を係合する係合手段に受け止めさせることができる。これにより、接触タブ同士の押し付け時の反力を樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分で受け止めさせるものと比較して、バネ部の付勢力の反力によって生じるクリープ等の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブの導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(2)または(3)を特徴としている。
(2) 上記(1)の構成の接続端子をそれぞれ保持した一対のハウジングを備え、これらのハウジングの一端面からなる接合面が突き合わされることにより、前記接続端子同士が導通接続されるコネクタであって、
前記ハウジングの前記接合面同士が互いに突き合わされることにより、前記ハウジングの前記接続端子の前記端子本体同士が前記係合手段によって係合され、前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態に維持される。
(3) 上記(2)の構成のコネクタにおいて、前記係合手段は、一方の前記接続端子に設けられた係合突起と、他方の前記接続端子に設けられた切欠部を有する係合フックとからなり、
前記ハウジングは、前記接合面同士が相対的にスライド可能とされ、
互いの前記ハウジングの前記接合面同士がスライドされて突き合わされることにより、前記接続端子の前記接触タブ同士が摺接して接触されるとともに、前記係合突起に前記係合フックの前記切欠部が係合されること。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタでは、接触タブ同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部の付勢力の反力を、端子本体同士を係合する係合手段が受け止める接続端子をそれぞれのハウジングに保持させたので、ハウジングへの付勢力の反力の作用をなくすことができる。これにより、ハウジングを樹脂製としても、ハウジングの損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブの良好な導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
上記(3)の構成のコネクタでは、互いのハウジングの接合面同士をスライドさせて突き合わせることにより、極めて容易に、接続端子の接触タブ同士を摺接させて接触させることができ、係合突起に係合フックの切欠部を係合させ、接触タブ同士を導通接続させた状態に維持させることができる。また、接触タブの表面に酸化被膜が形成されていたとしても、接触タブ同士を摺接させて接触させる際に、酸化被膜を除去することができ、接触タブ同士の良好な導通接続状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い接続信頼性を長期にわたって維持することが可能な接続端子及びそれを備えたコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の斜視図である。
【図3】実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の断面図である。
【図4】実施形態に係る接続端子であるオス端子の斜視図である。
【図5】実施形態に係る接続端子であるオス端子の分解斜視図である。
【図6】実施形態に係る接続端子であるメス端子の斜視図である。
【図7】実施形態に係る接続端子であるメス端子の分解斜視図である。
【図8】実施形態に係る接続端子を構成する可動接触子を展開した平面図である。
【図9】オス端子とメス端子との接続状態を示す図であって、(a)は一部を断面視した平面図、(b)は側面図である。
【図10】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図11】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B断面図、(c)は(b)における一部の拡大図である。
【図12】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
【図13】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との係合箇所の拡大側面図である。
【図14】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるD−D断面図である。
【図15】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との接続箇所の拡大断面図である。
【図16】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるE−E断面図である。
【図17】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との係合箇所の拡大側面図である。
【図18】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるF−F断面図である。
【図19】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との接続箇所の拡大断面図である。
【図20】接続端子の従来例を示す接続端子を断面視した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は実施形態に係るコネクタの斜視図、図2は実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の斜視図、図3は実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の断面図である。
【0016】
図1から図3に示すように、本実施形態に係るコネクタ11は、オスハウジング(ハウジング)12と、メスハウジング(ハウジング)13とを有しており、オスハウジング12には、オス端子(接続端子)14が保持され、メスハウジング13には、メス端子(接続端子)15が保持されている。
【0017】
オスハウジング12は、樹脂から成形されたもので、端子保持部21と、収容部22とを有している。
【0018】
端子保持部21には、並列に配置された複数のキャビティ23が上下2段に形成されている。これらのキャビティ23には、オスハウジング12の一端12a側から挿入されたオス端子14がそれぞれ収容されており、キャビティ23の内面に形成されたランス24によってオス端子14が係合されて所定位置に保持されている。
【0019】
この端子保持部21におけるオス端子14の挿入側と反対側は、接合面25とされている。この接合面25は、下段側のキャビティ23が開口された突き合わせ面26aと、上段側のキャビティ23が開口された突き合わせ面26bとを有しており、下段側の突き合わせ面26aは、上段側の突き合わせ面26bよりも突出されている。
【0020】
これらの突き合わせ面26a,26bのキャビティ23の上部側には、それぞれ切欠部27a,27bが形成されており、キャビティ23に挿入されたオス端子14は、その先端における上部が、切欠部27a,27bにおいて露出されている。
【0021】
オスハウジング12の収容部22は、底板部31と、この底板部31の両側部に立設された側壁部32とを有しており、これらの底板部31と側壁部32とから、メスハウジング13が収容可能な収容スペースSが形成されている。
【0022】
収容部22を構成する両側壁部32には、端部における下端近傍に、支持軸33が架け渡されている。この支持軸33は、その下面側が断面視円弧状に形成された摺動円弧面34とされている。
【0023】
また、収容部22の両側壁部32には、端子保持部21側における上端近傍に、係合孔35が形成されており、この係合孔35の上部における側壁部32の内面には、上方へ向かって次第に外方へ傾斜したテーパ面36が形成されている。
【0024】
メスハウジング13も、樹脂から成形されたもので、並列に配置された複数のキャビティ43が上下2段に形成されている。これらのキャビティ43には、メスハウジング13の一端13a側から挿入されたメス端子15がそれぞれ収容されており、キャビティ43の内面に形成されたランス44によってメス端子15が係合されて所定位置に保持されている。
【0025】
このメスハウジング13におけるメス端子15の挿入側と反対側は、接合面45とされている。この接合面45は、下段側のキャビティ43が開口された突き合わせ面46aと、上段側のキャビティ43が開口された突き合わせ面46bとを有しており、上段側の突き合わせ面46bは、下段側の突き合わせ面46aよりも突出されている。そして、キャビティ43に保持されたメス端子15は、その一部が各突き合わせ面46a,46bから突出されている。
【0026】
メスハウジング13のメス端子15の挿入側である一端13a側には、その下端部に、幅方向へわたって係止片47が形成されている。この係止片47は、その上面側が断面視円弧状に凹む摺動円弧凹面48とされている。そして、このメスハウジング13は、オスハウジング12の収容スペースS内へ一端13a側から入れ、係止片47を支持軸33の下方側へ入り込ませ、係止片47の摺動円弧凹面48を支持軸33の摺動円弧面34に当接させることにより、支持軸33を中心として回動可能とされる。この状態でメスハウジング13をオスハウジング12の収容部22の底板部31側へ回動させると、メスハウジング13は、オスハウジング12の収容部22の収容スペースSに収容され、オスハウジング12の接合面25に対してメスハウジング13の接合面45がスライドされて突き合わされて接合され、接合面25の突き合わせ面26a,26bに対して接合面45の突き合わせ面46a,46bが突き合わされる。
【0027】
また、メスハウジング13の接合面45側における両側面には、その上部近傍に、オスハウジング12の収容部22の両側壁部32に形成された係合孔35へ係合可能な突起部49が形成されている。この突起部49は、その下面側が、上方へ向かって次第に突出方向へ傾斜するテーパ面50とされている。
【0028】
次に、オスハウジング12及びメスハウジング13に保持されたオス端子14及びメス端子15について説明する。
【0029】
図4は実施形態に係る接続端子であるオス端子の斜視図、図5は実施形態に係る接続端子であるオス端子の分解斜視図、図6は実施形態に係る接続端子であるメス端子の斜視図、図7は実施形態に係る接続端子であるメス端子の分解斜視図、図8は実施形態に係る接続端子を構成する可動接触子を展開した平面図、図9はオス端子とメス端子との接続状態を示す図であって、(a)は一部を断面視した平面図、(b)は側面図である。
【0030】
まず、オス端子14について説明する。
【0031】
図4及び図5に示すように、オス端子14は、端子本体51と、この端子本体51とは別体の可動接触子52とを備えている。
【0032】
端子本体51及び可動接触子52は、銅、銅合金、ステンレス、またはアルミからなる金属板をプレス加工したもので、その表面には、電気接続性能の向上のためのスズメッキを施すのが好ましい。
【0033】
端子本体51は、後端側が圧着部53とされ、先端側が電気接続部54とされている。
【0034】
後端側の圧着部53は、導体圧着部53aと被覆加締部53bとを有しており、この圧着部53に電線16が圧着されて接続される。
【0035】
具体的には、導体圧着部53aには、電線16の端部において被覆16aから露出された導体16bが圧着され、被覆加締部53bには、電線16の被覆16aが圧着される。
【0036】
先端側の電気接続部54は、角筒状に形成された摺動筒55を有している。この摺動筒55は、軸方向に沿って断面視矩形状の摺動孔56を有しており、この摺動孔56に、可動接触子52が収容されている。また、この摺動筒55には、その両側面に係合孔57がそれぞれ一対ずつ形成されている。
【0037】
上記の摺動筒55に収容されている可動接触子52は、互いに平行に配列された固定板部61と、これらの固定板部61から先端側へ向かって延びるバネ部62a,62bと、これらのバネ部62a,62bの先端を連結する接触タブ63とを有している。
【0038】
固定板部61は、側方へ突出する両側部61aが、摺動筒55に形成された係合孔57へ内面側から係合される。これにより、可動接触子52は、その後端が摺動筒55に固定され、摺動筒55に対して軸方向への移動が規制される。
【0039】
バネ部62a,62bは、線状に形成されており、軸方向に沿って複数の屈曲部66を有する波形に成形されている。これらのバネ部62a,62bは、側面視で互いの波が逆位相とされており、これにより、それぞれの屈曲部66が互い違いに配置されている。
【0040】
接触タブ63は、先端側へ突出するようにU字状に湾曲されており、その両側部にバネ部62a,62bがそれぞれ連結されている。
【0041】
また、オス端子15は、電気接続部54を構成する摺動筒55の先端近傍における両側部に、係合突起(係合手段)71が形成されている。
【0042】
次に、メス端子15について説明する。なお、メス端子15は、オス端子14と略同一構造を有しており、ここでは、オス端子14と異なる部分について説明する。
【0043】
図6及び図7に示すように、このメス端子15では、摺動筒55の先端近傍における両側部に、係合突起71に代えて、係合フック(係合手段)75が設けられている。これらの係合フック75は、摺動筒55の両側面に固定され、電気接続部54の先端から延在されている。これらの係合フック75は、板状に形成されており、その下方側には、それぞれ係合切欠部(係合手段)76が形成されている。
【0044】
ここで、オス端子14及びメス端子15に設けられた可動接触子52を製造するには、図8に示すように、まず、銅、銅合金、ステンレス、またはアルミからなる金属板に対して打ち抜き加工し、接触タブ63となる板部と固定板部61との間に、平面視波形のバネ部62a,62bを成形する。
【0045】
接触タブ63におけるバネ部62a,62bの連結位置Aは、接触タブ63の中心点Oに対して点対称位置とする。また、波形のバネ部62a,62bは、互いに逆位相となる波形に成形する。
【0046】
そして、上記のように打ち抜き加工した金属板を、接触タブ63となる板部を境に同一方向へ折り曲げて接触タブ63をU字状に湾曲させることにより、接触タブ63の後端側へバネ部62a,62bを並列に延在させる。
【0047】
上記のオス端子14及びメス端子15は、図9(a)(b)に示すように、メス端子15の係合フック75の係合切欠部76が、オス端子14の係合突起71に係合することにより、互いに接続される。
【0048】
このように接続されたオス端子14及びメス端子15は、それぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が当接され、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56に押し込まれる。これにより、オス端子14及びメス端子15の接触タブ63は、バネ部62a,62bの付勢力によって互いに押し付けられて接触し、その接触圧によって極めて良好に導通される。
【0049】
ここで、接触タブ63におけるバネ部62a,62bの連結位置Aが、接触タブ63の中心点Oに対して点対称位置であるので、接続相手に押し付けられて摺動する可動接触子52は、摺動時におけるねじれや傾きが極力抑えられる。これにより、接触タブ63の接続相手との接触面が傾くような不具合がなくされる。
【0050】
また、可動接触子52のバネ部62a,62bは、側面視で互いに逆位相の波形に成形されているので、接触タブ63には、バネ部62a,62bの付勢力がバランス良く安定して作用する。
【0051】
次に、オス端子14を備えたオスハウジング12とメス端子15を備えたメスハウジング13とを接続する場合について、図10から図19に示すオスハウジングとメスハウジングとの接続過程を示す図に基づいて説明する。
【0052】
オスハウジング12とメスハウジング13とを接続するには、まず、図10(a)(b)に示すように、メスハウジング13の一端13a側をオスハウジング12の収容スペースS内へ入れ、係止片47を支持軸33の下方側へ入り込ませ、メスハウジング13をオスハウジング12に対して支持軸33を中心として回動可能な状態とする。
【0053】
この状態において、メスハウジング13をオスハウジング12の収容部22の底板部31方向(図10(b)における矢印X方向)へ回動させ、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースS内へ押し込む。
【0054】
すると、図11(a)〜(c)に示すように、メスハウジング13の突起部49がオスハウジング12の側壁部32の内面側へ入り込み、この突起部49のテーパ面50が側壁部32のテーパ面36に接触して摺動する。これにより、側壁部32が外側へ徐々に弾性変形される。
【0055】
さらに、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースSへ押し込むと、図12(a)(b)に示すように、オスハウジング12の接合面25に対してメスハウジング13の接合面45が側方からスライドして近接し、図13に示すように、オスハウジング12のオス端子14に形成された係合突起71に対してメス端子15の係合フック75が上方から次第に近接する。
【0056】
また、このとき、図14(a)(b)及び図15に示すように、オスハウジング12のオス端子14及びメスハウジング13のメス端子15のそれぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が摺接しだし、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56へ次第に押し込まれる。
【0057】
この状態から、さらに、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースSへ押し込むと、メスハウジング13の突起部49がオスハウジング12の側壁部32のテーパ面36を超えて係合孔35へ入り込む。すると、外側へ弾性変形されていた側壁部32が復元して内側へ戻り、よって、突起部49が係合孔35へ確実に係合され、オスハウジング12に対してメスハウジング13が、オスハウジング12の収容スペースS内に確実に収容された状態にロックされる。これにより、図16(a)(b)に示すように、オスハウジング12の接合面25の突き合わせ面26a,26bに対して、メスハウジング13の接合面45の突き合わせ面46a,46bが突き合わされる。
【0058】
すると、図17に示すように、オスハウジング12のオス端子14に形成された係合突起71に、メス端子15の係合フック75の係合切欠部76が係合され、オス端子14とメス端子15とが直線状に配置されて互いに連結状態となる。
【0059】
このとき、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力は、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段が受け止めることとなる。これにより、オス端子14及びメス端子15を保持するオスハウジング12及びメスハウジング13のランス24,44、メスハウジング13を支持するオスハウジング12の支持軸33あるいは互いに係合するオスハウジング12の係合孔35及びメスハウジング13の突起部49へ、バネ部62a,62bの付勢力の反力が作用することはない。
【0060】
そして、この状態において、図18(a)(b)及び図19に示すように、オス端子14及びメス端子15のそれぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が当接され、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56に押し込まれる。これにより、オス端子14及びメス端子15の接触タブ63は、バネ部62a,62bの付勢力によって互いに押し付けられて接触し、その接触圧によって極めて良好に導通される。
【0061】
以上、説明したように、上記実施形態に係るオス端子14及びメス端子15からなる接続端子によれば、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力を、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段に受け止めさせることができる。これにより、接触タブ63同士の押し付け時の反力を樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分で受け止めさせるものと比較して、バネ部62a,62bの付勢力の反力によって生じるクリープ等の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブ63の導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0062】
そして、上記のオス端子14及びメス端子15を備えたコネクタ11によれば、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力を、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段が受け止めるオス端子14及びメス端子15をオスハウジング12及びメスハウジング13にそれぞれ保持させたので、これらのオスハウジング12及びメスハウジング13への付勢力の反力の作用をなくすことができる。これにより、樹脂製のオスハウジング12及びメスハウジング13の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブ63の良好な導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0063】
特に、支持軸33を中心としてメスハウジング13を回動させて、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とをスライドさせて突き合わせることにより、極めて容易に、オス端子14とメス端子15の接触タブ63同士を摺接させて接触させることができ、また、係合突起71に係合フック75の係合切欠部76を係合させ、接触タブ63同士を導通接続させた状態に維持させることができる。また、接触タブ63の表面に酸化被膜が形成されていたとしても、接触タブ63同士を摺接させて接触させる際に、酸化被膜を除去することができ、接触タブ63同士の良好な導通接続状態を得ることができる。
【0064】
なお、上記の実施形態では、支持軸33を中心としてメスハウジング13を回動させて、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とをスライドさせて突き合わせるようにしたが、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とが相対的にスライドする構造であれば、メスハウジング13の回動による方式に限定されない。例えば、オスハウジング12の収容部22の収容スペースSに対して、その側方からメスハウジング13を平行移動させて嵌合させることにより、オスハウジング12とメスハウジング13とを接合させる構造としても良い。この場合も、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とは、相対的にスライドされて互いに突き合われることとなる。
【0065】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0066】
11 コネクタ
12 オスハウジング(ハウジング)
13 メスハウジング(ハウジング)
14 オス端子(接続端子)
15 メス端子(接続端子)
25,45 接合面
51 端子本体
62a,62b バネ部
63 接触タブ
71 係合突起(係合手段)
75 係合フック(係合手段)
76 係合切欠部(係合手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに電気的に接続される接続端子及びそれを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コネクタは、電線が接続された接続端子がハウジングに収容されて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この接続端子は、図20に示すように、本体1に一体に設けられた波形タブ2を有し、この波形タブ2の先端のヘッド3が、相手方のヘッド3等と接触する。そして、この接続端子では、波形タブ2がバネとなり、良好な接触圧での接続が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−504676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の接続端子は、前述したように、波形タブ2の弾性力によってヘッド3同士を押し付けて電気的接続を行う構造であるため、いずれか一方または両方の接続端子を押し付け過ぎると、接続端子を保持している樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分に大きな負荷がかかる。すると、負荷の作用箇所にクリープ等の損傷が生じ、ヘッドにおける接触荷重の低下による接続不良が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い接続信頼性を長期にわたって維持することが可能な接続端子及びそれを備えたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る接続端子は、下記(1)を特徴としている。
(1) 端子本体と、該端子本体の先端部に設けられた接触タブと、該接触タブを前記端子本体に対して先端側へ向かって付勢するバネ部とを備え、互いに突き合わされることにより、前記接触タブ同士が前記バネ部の付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続される接続端子であって、
前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態で前記端子本体同士を係合させる係合手段を備えたこと。
【0008】
上記(1)の構成の接続端子では、接触タブ同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部の付勢力の反力を、端子本体同士を係合する係合手段に受け止めさせることができる。これにより、接触タブ同士の押し付け時の反力を樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分で受け止めさせるものと比較して、バネ部の付勢力の反力によって生じるクリープ等の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブの導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(2)または(3)を特徴としている。
(2) 上記(1)の構成の接続端子をそれぞれ保持した一対のハウジングを備え、これらのハウジングの一端面からなる接合面が突き合わされることにより、前記接続端子同士が導通接続されるコネクタであって、
前記ハウジングの前記接合面同士が互いに突き合わされることにより、前記ハウジングの前記接続端子の前記端子本体同士が前記係合手段によって係合され、前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態に維持される。
(3) 上記(2)の構成のコネクタにおいて、前記係合手段は、一方の前記接続端子に設けられた係合突起と、他方の前記接続端子に設けられた切欠部を有する係合フックとからなり、
前記ハウジングは、前記接合面同士が相対的にスライド可能とされ、
互いの前記ハウジングの前記接合面同士がスライドされて突き合わされることにより、前記接続端子の前記接触タブ同士が摺接して接触されるとともに、前記係合突起に前記係合フックの前記切欠部が係合されること。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタでは、接触タブ同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部の付勢力の反力を、端子本体同士を係合する係合手段が受け止める接続端子をそれぞれのハウジングに保持させたので、ハウジングへの付勢力の反力の作用をなくすことができる。これにより、ハウジングを樹脂製としても、ハウジングの損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブの良好な導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
上記(3)の構成のコネクタでは、互いのハウジングの接合面同士をスライドさせて突き合わせることにより、極めて容易に、接続端子の接触タブ同士を摺接させて接触させることができ、係合突起に係合フックの切欠部を係合させ、接触タブ同士を導通接続させた状態に維持させることができる。また、接触タブの表面に酸化被膜が形成されていたとしても、接触タブ同士を摺接させて接触させる際に、酸化被膜を除去することができ、接触タブ同士の良好な導通接続状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い接続信頼性を長期にわたって維持することが可能な接続端子及びそれを備えたコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の斜視図である。
【図3】実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の断面図である。
【図4】実施形態に係る接続端子であるオス端子の斜視図である。
【図5】実施形態に係る接続端子であるオス端子の分解斜視図である。
【図6】実施形態に係る接続端子であるメス端子の斜視図である。
【図7】実施形態に係る接続端子であるメス端子の分解斜視図である。
【図8】実施形態に係る接続端子を構成する可動接触子を展開した平面図である。
【図9】オス端子とメス端子との接続状態を示す図であって、(a)は一部を断面視した平面図、(b)は側面図である。
【図10】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図11】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B断面図、(c)は(b)における一部の拡大図である。
【図12】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
【図13】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との係合箇所の拡大側面図である。
【図14】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるD−D断面図である。
【図15】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との接続箇所の拡大断面図である。
【図16】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるE−E断面図である。
【図17】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との係合箇所の拡大側面図である。
【図18】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明する図であって、(a)はオスハウジング側から視た正面図、(b)は(a)におけるF−F断面図である。
【図19】オスハウジングとメスハウジングとの接続過程を説明するオス端子とメス端子との接続箇所の拡大断面図である。
【図20】接続端子の従来例を示す接続端子を断面視した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は実施形態に係るコネクタの斜視図、図2は実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の斜視図、図3は実施形態に係るコネクタのオスハウジングとメスハウジングとを分離させた状態の断面図である。
【0016】
図1から図3に示すように、本実施形態に係るコネクタ11は、オスハウジング(ハウジング)12と、メスハウジング(ハウジング)13とを有しており、オスハウジング12には、オス端子(接続端子)14が保持され、メスハウジング13には、メス端子(接続端子)15が保持されている。
【0017】
オスハウジング12は、樹脂から成形されたもので、端子保持部21と、収容部22とを有している。
【0018】
端子保持部21には、並列に配置された複数のキャビティ23が上下2段に形成されている。これらのキャビティ23には、オスハウジング12の一端12a側から挿入されたオス端子14がそれぞれ収容されており、キャビティ23の内面に形成されたランス24によってオス端子14が係合されて所定位置に保持されている。
【0019】
この端子保持部21におけるオス端子14の挿入側と反対側は、接合面25とされている。この接合面25は、下段側のキャビティ23が開口された突き合わせ面26aと、上段側のキャビティ23が開口された突き合わせ面26bとを有しており、下段側の突き合わせ面26aは、上段側の突き合わせ面26bよりも突出されている。
【0020】
これらの突き合わせ面26a,26bのキャビティ23の上部側には、それぞれ切欠部27a,27bが形成されており、キャビティ23に挿入されたオス端子14は、その先端における上部が、切欠部27a,27bにおいて露出されている。
【0021】
オスハウジング12の収容部22は、底板部31と、この底板部31の両側部に立設された側壁部32とを有しており、これらの底板部31と側壁部32とから、メスハウジング13が収容可能な収容スペースSが形成されている。
【0022】
収容部22を構成する両側壁部32には、端部における下端近傍に、支持軸33が架け渡されている。この支持軸33は、その下面側が断面視円弧状に形成された摺動円弧面34とされている。
【0023】
また、収容部22の両側壁部32には、端子保持部21側における上端近傍に、係合孔35が形成されており、この係合孔35の上部における側壁部32の内面には、上方へ向かって次第に外方へ傾斜したテーパ面36が形成されている。
【0024】
メスハウジング13も、樹脂から成形されたもので、並列に配置された複数のキャビティ43が上下2段に形成されている。これらのキャビティ43には、メスハウジング13の一端13a側から挿入されたメス端子15がそれぞれ収容されており、キャビティ43の内面に形成されたランス44によってメス端子15が係合されて所定位置に保持されている。
【0025】
このメスハウジング13におけるメス端子15の挿入側と反対側は、接合面45とされている。この接合面45は、下段側のキャビティ43が開口された突き合わせ面46aと、上段側のキャビティ43が開口された突き合わせ面46bとを有しており、上段側の突き合わせ面46bは、下段側の突き合わせ面46aよりも突出されている。そして、キャビティ43に保持されたメス端子15は、その一部が各突き合わせ面46a,46bから突出されている。
【0026】
メスハウジング13のメス端子15の挿入側である一端13a側には、その下端部に、幅方向へわたって係止片47が形成されている。この係止片47は、その上面側が断面視円弧状に凹む摺動円弧凹面48とされている。そして、このメスハウジング13は、オスハウジング12の収容スペースS内へ一端13a側から入れ、係止片47を支持軸33の下方側へ入り込ませ、係止片47の摺動円弧凹面48を支持軸33の摺動円弧面34に当接させることにより、支持軸33を中心として回動可能とされる。この状態でメスハウジング13をオスハウジング12の収容部22の底板部31側へ回動させると、メスハウジング13は、オスハウジング12の収容部22の収容スペースSに収容され、オスハウジング12の接合面25に対してメスハウジング13の接合面45がスライドされて突き合わされて接合され、接合面25の突き合わせ面26a,26bに対して接合面45の突き合わせ面46a,46bが突き合わされる。
【0027】
また、メスハウジング13の接合面45側における両側面には、その上部近傍に、オスハウジング12の収容部22の両側壁部32に形成された係合孔35へ係合可能な突起部49が形成されている。この突起部49は、その下面側が、上方へ向かって次第に突出方向へ傾斜するテーパ面50とされている。
【0028】
次に、オスハウジング12及びメスハウジング13に保持されたオス端子14及びメス端子15について説明する。
【0029】
図4は実施形態に係る接続端子であるオス端子の斜視図、図5は実施形態に係る接続端子であるオス端子の分解斜視図、図6は実施形態に係る接続端子であるメス端子の斜視図、図7は実施形態に係る接続端子であるメス端子の分解斜視図、図8は実施形態に係る接続端子を構成する可動接触子を展開した平面図、図9はオス端子とメス端子との接続状態を示す図であって、(a)は一部を断面視した平面図、(b)は側面図である。
【0030】
まず、オス端子14について説明する。
【0031】
図4及び図5に示すように、オス端子14は、端子本体51と、この端子本体51とは別体の可動接触子52とを備えている。
【0032】
端子本体51及び可動接触子52は、銅、銅合金、ステンレス、またはアルミからなる金属板をプレス加工したもので、その表面には、電気接続性能の向上のためのスズメッキを施すのが好ましい。
【0033】
端子本体51は、後端側が圧着部53とされ、先端側が電気接続部54とされている。
【0034】
後端側の圧着部53は、導体圧着部53aと被覆加締部53bとを有しており、この圧着部53に電線16が圧着されて接続される。
【0035】
具体的には、導体圧着部53aには、電線16の端部において被覆16aから露出された導体16bが圧着され、被覆加締部53bには、電線16の被覆16aが圧着される。
【0036】
先端側の電気接続部54は、角筒状に形成された摺動筒55を有している。この摺動筒55は、軸方向に沿って断面視矩形状の摺動孔56を有しており、この摺動孔56に、可動接触子52が収容されている。また、この摺動筒55には、その両側面に係合孔57がそれぞれ一対ずつ形成されている。
【0037】
上記の摺動筒55に収容されている可動接触子52は、互いに平行に配列された固定板部61と、これらの固定板部61から先端側へ向かって延びるバネ部62a,62bと、これらのバネ部62a,62bの先端を連結する接触タブ63とを有している。
【0038】
固定板部61は、側方へ突出する両側部61aが、摺動筒55に形成された係合孔57へ内面側から係合される。これにより、可動接触子52は、その後端が摺動筒55に固定され、摺動筒55に対して軸方向への移動が規制される。
【0039】
バネ部62a,62bは、線状に形成されており、軸方向に沿って複数の屈曲部66を有する波形に成形されている。これらのバネ部62a,62bは、側面視で互いの波が逆位相とされており、これにより、それぞれの屈曲部66が互い違いに配置されている。
【0040】
接触タブ63は、先端側へ突出するようにU字状に湾曲されており、その両側部にバネ部62a,62bがそれぞれ連結されている。
【0041】
また、オス端子15は、電気接続部54を構成する摺動筒55の先端近傍における両側部に、係合突起(係合手段)71が形成されている。
【0042】
次に、メス端子15について説明する。なお、メス端子15は、オス端子14と略同一構造を有しており、ここでは、オス端子14と異なる部分について説明する。
【0043】
図6及び図7に示すように、このメス端子15では、摺動筒55の先端近傍における両側部に、係合突起71に代えて、係合フック(係合手段)75が設けられている。これらの係合フック75は、摺動筒55の両側面に固定され、電気接続部54の先端から延在されている。これらの係合フック75は、板状に形成されており、その下方側には、それぞれ係合切欠部(係合手段)76が形成されている。
【0044】
ここで、オス端子14及びメス端子15に設けられた可動接触子52を製造するには、図8に示すように、まず、銅、銅合金、ステンレス、またはアルミからなる金属板に対して打ち抜き加工し、接触タブ63となる板部と固定板部61との間に、平面視波形のバネ部62a,62bを成形する。
【0045】
接触タブ63におけるバネ部62a,62bの連結位置Aは、接触タブ63の中心点Oに対して点対称位置とする。また、波形のバネ部62a,62bは、互いに逆位相となる波形に成形する。
【0046】
そして、上記のように打ち抜き加工した金属板を、接触タブ63となる板部を境に同一方向へ折り曲げて接触タブ63をU字状に湾曲させることにより、接触タブ63の後端側へバネ部62a,62bを並列に延在させる。
【0047】
上記のオス端子14及びメス端子15は、図9(a)(b)に示すように、メス端子15の係合フック75の係合切欠部76が、オス端子14の係合突起71に係合することにより、互いに接続される。
【0048】
このように接続されたオス端子14及びメス端子15は、それぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が当接され、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56に押し込まれる。これにより、オス端子14及びメス端子15の接触タブ63は、バネ部62a,62bの付勢力によって互いに押し付けられて接触し、その接触圧によって極めて良好に導通される。
【0049】
ここで、接触タブ63におけるバネ部62a,62bの連結位置Aが、接触タブ63の中心点Oに対して点対称位置であるので、接続相手に押し付けられて摺動する可動接触子52は、摺動時におけるねじれや傾きが極力抑えられる。これにより、接触タブ63の接続相手との接触面が傾くような不具合がなくされる。
【0050】
また、可動接触子52のバネ部62a,62bは、側面視で互いに逆位相の波形に成形されているので、接触タブ63には、バネ部62a,62bの付勢力がバランス良く安定して作用する。
【0051】
次に、オス端子14を備えたオスハウジング12とメス端子15を備えたメスハウジング13とを接続する場合について、図10から図19に示すオスハウジングとメスハウジングとの接続過程を示す図に基づいて説明する。
【0052】
オスハウジング12とメスハウジング13とを接続するには、まず、図10(a)(b)に示すように、メスハウジング13の一端13a側をオスハウジング12の収容スペースS内へ入れ、係止片47を支持軸33の下方側へ入り込ませ、メスハウジング13をオスハウジング12に対して支持軸33を中心として回動可能な状態とする。
【0053】
この状態において、メスハウジング13をオスハウジング12の収容部22の底板部31方向(図10(b)における矢印X方向)へ回動させ、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースS内へ押し込む。
【0054】
すると、図11(a)〜(c)に示すように、メスハウジング13の突起部49がオスハウジング12の側壁部32の内面側へ入り込み、この突起部49のテーパ面50が側壁部32のテーパ面36に接触して摺動する。これにより、側壁部32が外側へ徐々に弾性変形される。
【0055】
さらに、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースSへ押し込むと、図12(a)(b)に示すように、オスハウジング12の接合面25に対してメスハウジング13の接合面45が側方からスライドして近接し、図13に示すように、オスハウジング12のオス端子14に形成された係合突起71に対してメス端子15の係合フック75が上方から次第に近接する。
【0056】
また、このとき、図14(a)(b)及び図15に示すように、オスハウジング12のオス端子14及びメスハウジング13のメス端子15のそれぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が摺接しだし、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56へ次第に押し込まれる。
【0057】
この状態から、さらに、メスハウジング13をオスハウジング12の収容スペースSへ押し込むと、メスハウジング13の突起部49がオスハウジング12の側壁部32のテーパ面36を超えて係合孔35へ入り込む。すると、外側へ弾性変形されていた側壁部32が復元して内側へ戻り、よって、突起部49が係合孔35へ確実に係合され、オスハウジング12に対してメスハウジング13が、オスハウジング12の収容スペースS内に確実に収容された状態にロックされる。これにより、図16(a)(b)に示すように、オスハウジング12の接合面25の突き合わせ面26a,26bに対して、メスハウジング13の接合面45の突き合わせ面46a,46bが突き合わされる。
【0058】
すると、図17に示すように、オスハウジング12のオス端子14に形成された係合突起71に、メス端子15の係合フック75の係合切欠部76が係合され、オス端子14とメス端子15とが直線状に配置されて互いに連結状態となる。
【0059】
このとき、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力は、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段が受け止めることとなる。これにより、オス端子14及びメス端子15を保持するオスハウジング12及びメスハウジング13のランス24,44、メスハウジング13を支持するオスハウジング12の支持軸33あるいは互いに係合するオスハウジング12の係合孔35及びメスハウジング13の突起部49へ、バネ部62a,62bの付勢力の反力が作用することはない。
【0060】
そして、この状態において、図18(a)(b)及び図19に示すように、オス端子14及びメス端子15のそれぞれの可動接触子52の接触タブ63同士が当接され、バネ部62a,62bの付勢力に抗して、それぞれ摺動孔56に押し込まれる。これにより、オス端子14及びメス端子15の接触タブ63は、バネ部62a,62bの付勢力によって互いに押し付けられて接触し、その接触圧によって極めて良好に導通される。
【0061】
以上、説明したように、上記実施形態に係るオス端子14及びメス端子15からなる接続端子によれば、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力を、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段に受け止めさせることができる。これにより、接触タブ63同士の押し付け時の反力を樹脂製のハウジングのランスやハウジング同士のロック部分で受け止めさせるものと比較して、バネ部62a,62bの付勢力の反力によって生じるクリープ等の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブ63の導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0062】
そして、上記のオス端子14及びメス端子15を備えたコネクタ11によれば、接触タブ63同士が互いに押し付けられる際に生じるバネ部62a,62bの付勢力の反力を、端子本体51同士を係合する係合突起71と係合フック75とからなる係合手段が受け止めるオス端子14及びメス端子15をオスハウジング12及びメスハウジング13にそれぞれ保持させたので、これらのオスハウジング12及びメスハウジング13への付勢力の反力の作用をなくすことができる。これにより、樹脂製のオスハウジング12及びメスハウジング13の損傷による接触荷重の低下を防止することができ、接触タブ63の良好な導通接続状態を長期にわたって維持させることができる。
【0063】
特に、支持軸33を中心としてメスハウジング13を回動させて、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とをスライドさせて突き合わせることにより、極めて容易に、オス端子14とメス端子15の接触タブ63同士を摺接させて接触させることができ、また、係合突起71に係合フック75の係合切欠部76を係合させ、接触タブ63同士を導通接続させた状態に維持させることができる。また、接触タブ63の表面に酸化被膜が形成されていたとしても、接触タブ63同士を摺接させて接触させる際に、酸化被膜を除去することができ、接触タブ63同士の良好な導通接続状態を得ることができる。
【0064】
なお、上記の実施形態では、支持軸33を中心としてメスハウジング13を回動させて、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とをスライドさせて突き合わせるようにしたが、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とが相対的にスライドする構造であれば、メスハウジング13の回動による方式に限定されない。例えば、オスハウジング12の収容部22の収容スペースSに対して、その側方からメスハウジング13を平行移動させて嵌合させることにより、オスハウジング12とメスハウジング13とを接合させる構造としても良い。この場合も、オスハウジング12の接合面25とメスハウジング13の接合面45とは、相対的にスライドされて互いに突き合われることとなる。
【0065】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0066】
11 コネクタ
12 オスハウジング(ハウジング)
13 メスハウジング(ハウジング)
14 オス端子(接続端子)
15 メス端子(接続端子)
25,45 接合面
51 端子本体
62a,62b バネ部
63 接触タブ
71 係合突起(係合手段)
75 係合フック(係合手段)
76 係合切欠部(係合手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子本体と、該端子本体の先端部に設けられた接触タブと、該接触タブを前記端子本体に対して先端側へ向かって付勢するバネ部とを備え、互いに突き合わされることにより、前記接触タブ同士が前記バネ部の付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続される接続端子であって、
前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態で前記端子本体同士を係合させる係合手段を備えたことを特徴とする接続端子。
【請求項2】
請求項1に記載の接続端子をそれぞれ保持した一対のハウジングを備え、これらのハウジングの一端面からなる接合面が突き合わされることにより、前記接続端子同士が導通接続されるコネクタであって、
前記ハウジングの前記接合面同士が互いに突き合わされることにより、前記ハウジングの前記接続端子の前記端子本体同士が前記係合手段によって係合され、前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態に維持されることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記係合手段は、一方の前記接続端子に設けられた係合突起と、他方の前記接続端子に設けられた切欠部を有する係合フックとからなり、
前記ハウジングは、前記接合面同士が相対的にスライド可能とされ、
互いの前記ハウジングの前記接合面同士がスライドされて突き合わされることにより、前記接続端子の前記接触タブ同士が摺接して接触されるとともに、前記係合突起に前記係合フックの前記切欠部が係合されることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項1】
端子本体と、該端子本体の先端部に設けられた接触タブと、該接触タブを前記端子本体に対して先端側へ向かって付勢するバネ部とを備え、互いに突き合わされることにより、前記接触タブ同士が前記バネ部の付勢力に抗して互いに押し付けられて導通接続される接続端子であって、
前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態で前記端子本体同士を係合させる係合手段を備えたことを特徴とする接続端子。
【請求項2】
請求項1に記載の接続端子をそれぞれ保持した一対のハウジングを備え、これらのハウジングの一端面からなる接合面が突き合わされることにより、前記接続端子同士が導通接続されるコネクタであって、
前記ハウジングの前記接合面同士が互いに突き合わされることにより、前記ハウジングの前記接続端子の前記端子本体同士が前記係合手段によって係合され、前記接触タブ同士が押し付けられて導通接続した状態に維持されることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記係合手段は、一方の前記接続端子に設けられた係合突起と、他方の前記接続端子に設けられた切欠部を有する係合フックとからなり、
前記ハウジングは、前記接合面同士が相対的にスライド可能とされ、
互いの前記ハウジングの前記接合面同士がスライドされて突き合わされることにより、前記接続端子の前記接触タブ同士が摺接して接触されるとともに、前記係合突起に前記係合フックの前記切欠部が係合されることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−49083(P2012−49083A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192426(P2010−192426)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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