説明

接近車両検出装置及び接近車両検出方法

【課題】最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる接近車両検出装置及び接近車両検出方法を提供することを課題とする。
【解決手段】複数の集音器13A,14A,15A,16Aで集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、狭い間隔の集音器対11A(13A,14A),12A(15A,16A)を用いて音源(特に、車両の走行音)の検出を行うとともに、集音器対11A,12Aの間隔よりも広い間隔で配置された集音器対13A,16Aを用いて音源の接近を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置及び接近車両検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接近車両検出装置では、複数の集音器で周囲の音をそれぞれ集音し、その各音の位相差に基づいて音源(特に、車両の走行音)の移動方向を特定する。特許文献1に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホンが出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波帯域と高周波帯域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【特許文献2】特開平8−202999号公報
【特許文献3】特開平9−128697号公報
【特許文献4】特開平9−136573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の集音器(例えば、2個の集音器)を用いて接近車両(音源)を検出する場合、図4に示すように、2個の集音器が配置される間隔が広いと、空間分解能(最大検出距離性能または距離の同定性能)は向上するが、耐ノイズ性能は低下する。つまり、集音器の間隔が広いほど、音源に対する2個の集音器による角度分解能が向上し、音源を検出できる最大検出距離が長くなる。しかし、集音器の間隔が広いほど、集音器間に存在するノイズ要因(例えば、機械部品からのノイズ音、機械部品の電磁ノイズ、空気のゆらぎ)の影響を受け易く、集音器間の空間の広さの影響によって各集音器に異なる音が入力され易くなる。そのため、一方の集音器に近い位置にノイズとなる音源が存在する場合、その集音器ではそのノイズ音源の音を良く集音できるが、ノイズ音源から離れた他方の集音器ではノイズ音源の音を殆ど集音できないので、各集音器で集音した音の相関が低下し、ノイズに対する耐性が低下する。逆に、2個の集音器が配置される間隔が狭いと、耐ノイズ性能は向上するが(ノイズ音が入力されたとしても2個の集音器には同程度のノイズ音が入力されるので)、空間分解能(最大検出距離性能)は低下する。このように、集音器間隔に対して、空間分解能(最大検出距離性能)と耐ノイズ性能とはトレードオフの関係にある。特に、高速で移動する車両の場合、遠方の接近車両の情報が必要となりので、最大検出距離が長いことが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる接近車両検出装置及び接近車両検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接近車両検出装置は、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、少なくとも1対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、1対の集音器の間隔よりも広い間隔で配置された他の1対の集音器を用いて音源の接近を検出することを特徴する。
【0007】
この接近車両検出装置では、少なくとも1対の集音器とその1対の集音器よりも広い間隔で配置された他の1対の集音器が配置されている。接近車両検出装置では、狭い間隔の集音器対でそれぞれ集音した各音を用いて音源の検出を行う(つまり、音源が存在しているか否かを判断する)。この検出では、集音器対の間隔が狭いので、ノイズとなる音源がある場合でも両方の集音器でノイズ音源の音を同程度に集音でき、ノイズに対する耐性が高い。そして、接近車両検出装置では、音源が存在する場合には広い間隔の他の集音器対でそれぞれ集音した各音を用いて音源の接近検出を行う(つまり、音源(特に、車両の走行音)が接近しているか否かや接近方向等を判断する)。この検出では、集音器対の間隔が広いので、音源に対する集音器対の角度分解能が高く、音源を検出できる最大検出距離が長くなる。このように、接近車両検出装置では、間隔の狭い集音器対と間隔の広い集音器対を用いてそれぞれ検出を行うことにより、最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる。
【0008】
なお、車両の接近検出では、車両の左右方向(車幅方向)から接近しているか否かだけでなく、車両の前後方向から接近しているか否かの検出も含む。左右方向からの接近車両の場合、右方向からの接近車両と左方向からの接近車両がある。前後方向からの接近車両の場合、前方向からの接近車両と後方向からの接近車両がある。
【0009】
本発明の上記接近車両検出装置では、車両の車幅方向における左側と右側にそれぞれ配置される2対の集音器を備え、2対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、2対の集音器の一方の対の集音器のうちの車幅方向における外側の集音器と他方の対の集音器のうちの車幅方向における外側の集音器とを用いて音源の接近を検出する構成としてもよい。
【0010】
この接近車両検出装置では、車両の車幅方向における左側に1対の集音器が配置されるとともに右側に1対の集音器が配置される。接近車両検出装置では、この2対の集音器(間隔の狭い集音器対)でそれぞれ集音した各音を用いて音源の検出を行う。そして、接近車両検出装置では、音源が存在する場合には2対の集音器の一方の集音器対のうちの車幅方向における外側の集音器と他方の集音器対のうちの車幅方向における外側の集音器(間隔の広い集音器対)でそれぞれ集音した各音を用いて音源の接近検出を行う。このように、接近車両検出装置では、4個の集音器によって間隔の狭い2対の集音器と間隔の広い1対の集音器を構成でき、最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる。
【0011】
本発明の上記接近車両検出装置では、車両の車幅方向に配置される3個の集音器を備え、3個の集音器のうちの中央の集音器と車幅方向における外側の集音器とを用いて音源の検出を行うとともに、3個の集音器のうちの車幅方向における両外側の2個の集音器を用いて音源の接近を検出する構成としてもよい。
【0012】
この接近車両検出装置では、車両の車幅方向に並べて3個の集音器が配置される。接近車両検出装置では、3個の集音器のうちの中央の集音器と外側の集音器とを対(間隔の狭い集音器対)としてそれぞれ集音した各音を用いて音源の検出を行う。そして、接近車両検出装置では、音源が存在する場合には3個の集音器のうちの車幅方向における左外側と右外側の2個の集音器を対(間隔の広い集音器対)としてそれぞれ集音した各音を用いて音源の接近検出を行う。このように、接近車両検出装置では、3個の集音器によって間隔の狭い2対の集音器と間隔の広い1対の集音器を構成でき、最小の集音器数で最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる。
【0013】
本発明の上記接近車両検出装置では、広い間隔で配置された他の1対の集音器は、無指向性の集音器であり、車両の車幅方向の両端部に配置されると好適である。
【0014】
この接近車両検出装置では、広い間隔の集音器対として車両の車幅方向における右端部と左端部に集音器が配置される。この両端部の集音器は、無指向性の集音器であり、全ての方向の音源からの音を集音できる。一方、車幅方向の内側に配置される集音器は、車体自体が遮音物体となり、両端部の集音器と比較して後方(なお、集音器が後部に配置される場合には前方)の音源からの音を集音し難くなる。そこで、接近車両検出装置では、両端部の集音器対で集音した音と内側の集音器対で集音した音とを比較することにより、前方向からの接近かあるいは後方向からの接近かを検出できる。このように、接近車両検出装置では、広い間隔の集音器対として車両の車幅方向の両端部に無指向性の集音器を配置することにより、前方からの接近車両と後方からの接近車両とを判別できる。
【0015】
本発明の上記接近車両検出装置では、車両の前後方向において各対の集音器が配置される側と反対側に、少なくとも1個の集音器が配置される構成としてもよい。
【0016】
この接近車両検出装置では、車両の前後方向において各対の集音器が配置される側と反対側に(例えば、各対の集音器が車両の前部に配置される場合には後部に)、少なくとも1個の集音器が配置される。例えば、この少なくとも1個の集音器が車両の後部に配置される場合(すなわち、各対の集音器が車両の前部に配置される場合)、後方と右前端部との集音器対では右後方からの音源からの音を集音し易く、後方と左端部との集音器対では左後方からの音源からの音を集音し易い。そこで、接近車両検出装置では、前後方向の反対側に配置される集音器と右端部の集音器対で集音した音と、前後方向の反対側に配置される集音器と左端部の集音器対で集音した音とを比較することにより、後方(あるいは前方)における右方向からの接近かあるいは左方向からの接近かを検出できる。このように、接近車両検出装置では、前後方向の反対側に少なくとも1個の集音器を配置することにより、後方(あるいは前方)における右方向からの接近車両と左方向からの接近車両とを判別できる。
【0017】
本発明の上記接近車両検出装置では、複数の集音器の間隔は、フィボナッチ数列で指定される間隔で設定してもよい。
【0018】
この接近車両検出装置では、複数の集音器の間隔をフィボナッチ数列で指定される間隔で設定され、その間隔で複数の集音器が配置される。このように、接近車両検出装置では、フィボナッチ数列で指定される間隔で複数の集音器を配置することにより、少ない集音器数でより多くの集音器間隔の集音器対を構成できる。ちなみに、音は周期性のある波形を持っているため、その周期と集音器対の間隔が一致したりあるいは倍数の関係になると、その集音器対を用いて音源検出を行う際に行う際に検出性能が低下する場合がある。そのような場合に、他の間隔の集音器対を用いると、検出が可能となる。したがって、集音器対の間隔としては様々なバリエーションがあると、様々な周期の音を検出でき、検出性能が向上する。
【0019】
本発明の上記接近車両検出装置では、集音器の故障を診断する故障診断手段を備え、故障診断手段で故障と診断された集音器がある場合には故障と診断された集音器を接近車両の検出に用いる集音器から除外する構成としてもよい。
【0020】
この接近車両検出装置では、故障診断手段によって各集音器の故障を診断し、故障と診断された集音器を徐外して接近車両の検出を行う。このように、接近車両検出装置では、故障した集音器を除外して検出を行うことにより、検出の信頼性を向上できる。
【0021】
本発明の上記接近車両検出装置では、故障診断手段で故障と診断された集音器がある場合には接近車両の検出の信頼度を低くする構成としてもよい。
【0022】
この接近車両検出装置では、故障診断手段で集音器が故障と診断した場合、接近検出に用いことができる集音器の数が減るので、接近車両の検出の信頼度を低くする。接近車両検出の信頼度を低くすることにより、接近車両の検出情報に基づいて警報出力や車両制御等の運転支援を行う際に、信頼度に応じて、警報出力や車両制御を行うか否かの基準を上げたり、警報や車両制御を弱く設定するなど、運転支援の度合いを変えることができる。なお、故障の集音器の数が多いほど信頼度をより低下させたり、全体の集音器の数と使用可能な集音器の数の比や故障の集音器の数と使用可能な集音器の数の比に応じて信頼度を低下させてもよい。
【0023】
本発明の上記接近車両検出装置では、特定の周波数成分の音を発生する音発生手段を備え、音発生手段で発生した音を複数の集音器でそれぞれ集音し、複数の集音器が特定の周波数成分の音に対して感度が一定になるように調整する構成としてもよい。
【0024】
この接近車両検出装置では、音発生手段によって特定の周波数成分の音を発生し、その特定の周波数成分の音を複数の集音器でそれぞれ集音する。集音器が経年劣化等によって感度が落ちている場合、複数の集音器で同じ周波数成分の音をそれぞれ集音しても、複数の集音器から出力される音のレベルが異なる。感度が異なる集音器対を用いて検出を行うと、検出性能が低下する。そこで、接近車両検出装置では、複数の集音器が特定の周波数成分の音に対して感度が一定になるように調整する。このように、接近車両検出装置では、周波数成分毎に複数の集音器の感度が一定になるように調整することにより、検出性能が向上する。
【0025】
本発明に係る接近車両検出方法は、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出方法であって、少なくとも1対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、1対の集音器の間隔よりも広い間隔で配置された他の1対の集音器を用いて音源の接近を検出することを特徴とする。この接近車両検出方法は、上記の接近車両検出装置と同様に作用し、同様の効果を有している。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、間隔の狭い集音器対と間隔の広い集音器対を用いてそれぞれ検出を行うことにより、最大検出距離性能と耐ノイズ性能を共に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1及び第2の実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【図3】位相差変化と音圧変化に基づく車両の接近方向の判別表である。
【図4】集音器間隔に応じた最大検出距離性能(空間分解能)と耐ノイズ性能の関係図である。
【図5】第1の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【図7】第2の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。
【図9】第3の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【図10】第3の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【図12】第5の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図と集音器間隔である。
【図13】第6の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【図14】第7の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図と集音器間隔である。
【図15】第7の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の一部が故障した場合の集音器間隔の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係る接近車両検出装置及び接近車両検出方法の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
本実施の形態では、本発明を、車両に搭載される接近車両検出装置に適用する。本実施の形態に係る接近車両検出装置は、複数(少なくとも3個)の集音器(マイクロホン)で集音された各音に基づいて自車両に接近する車両を検出し(つまり、周辺車両の走行音の音源の移動方向を特定し)、接近車両の情報を運転支援装置に提供する。本実施の形態には、複数の集音器の配置及び接近車両の検出方法が異なる第1〜第3の実施の形態、複数の集音器の配置の様々なバリエーションを示す第4〜第7の実施の形態がある。
【0030】
なお、車両の走行音は、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))である。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0031】
図1〜図4を参照して、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1Aについて説明する。図1は、第1及び第2の実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。図3は、位相差変化と音圧変化に基づく車両の接近方向の判別表である。図4は、集音器間隔に応じた最大検出距離性能(空間分解能)と耐ノイズ性能の関係図である。
【0032】
接近車両検出装置1Aは、4個の集音器を有しており、2個の集音器(集音器対)からなる集音器ユニットが車幅方向の左側と右側に配置されている。まず、接近車両検出装置1Aでは、耐ノイズ性能を向上させるために、各集音器ユニット(間隔の狭い集音器対)を用いて音源の検出を行う。次に、接近車両検出装置1Aでは、最大検出距離性能を向上させるために、検出できた音源に対して、各集音器ユニットの外側の集音器(間隔の広い集音器対)を用いて音源の移動方向の判別(音源の定位)を行う。なお、この接近車両検出装置1Aにおける接近車両の検出処理が、基本となる検出処理である。
【0033】
接近車両検出装置1Aは、集音器アレイ10A(左側集音器ユニット11A(第1集音器13A、第2集音器14A)、右側集音器ユニット12A(第3集音器15A、第4集音器16A))及びECU[Electronic Control Unit]20A(フィルタ21A、相互相関計算部22A、位相差分散計算部23A、音源検出部24A、音源周波数成分計算部25A、音源周波数成分フィルタ26A、位相差変化計算部27A、音圧変化計算部28A、移動方向判別部29A、接近車両判断部30A)を備えている。
【0034】
集音器アレイ10Aは、左側集音器ユニット11Aと右側集音器ユニット12Aを有している。左側集音器ユニット11Aと右側集音器ユニット12Aとは、図2に示すように、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向(左右方向)の左側と右側に配置される。この配置される間隔は、各集音器ユニット11A,12A内の集音器対の間隔よりも広い間隔である。
【0035】
左側集音器ユニット11Aは、第1集音器13Aと第2集音器14Aを有している。第1集音器13Aは、車幅方向の左側の外側に配置される。第2集音器14Aは、第1集音器13Aから所定の間隔をあけて車両中心側に配置される。右側集音器ユニット12Aは、第3集音器15Aと第4集音器16Aを有している。第4集音器16Aは、車幅方向の右側の外側に配置される。第3集音器15Aは、第4集音器16Aから所定の間隔をあけて車両中心側に配置される。各集音器ユニット11A,12A内の集音器対の間隔は狭い間隔で配置され、間隔が狭いほど耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0036】
各集音器13A,14A,15A,16Aは、無指向性の集音器であり、車外の周囲の音を集音する。各集音器13A,14A,15A,16Aは、音響電気変換器であり、集音した音を電気信号に変換し、その電気信号をECU20Aに送信する。
【0037】
図4に示すように、2個の集音器の車幅方向の間隔が広いほど、最大検出距離性能(空間分解能)が高く、耐ノイズ性能が低い。逆に、2個の集音器の車幅方向の間隔が狭いほど、最大検出距離性能が低く、耐ノイズ性能が高い。したがって、各集音器ユニット11A,12Aの狭い間隔の集音器対を用いて検出を行うことにより、耐ノイズ性能を向上できる。特に、この集音器対の間隔を狭くするほど、耐ノイズ性能を向上できる。また、左側集音器ユニット11A内の外側の第1集音器13Aと右側集音器ユニット12A内の外側の第4集音器16Aからなる広い間隔の集音器対を用いて検出を行うことにより、最大検出距離性能を向上できる。特に、この集音器対の間隔を広くするほど、最大検出距離性能を向上できる。
【0038】
ECU20Aは、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Aを統括制御する。ECU20Aでは、ROMに記憶されている接近車両検出用のアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行することにより、フィルタ21A、相互相関計算部22A、位相差分散計算部23A、音源検出部24A、音源周波数成分計算部25A、音源周波数成分フィルタ26A、位相差変化計算部27A、音圧変化計算部28A、移動方向判別部29A、接近車両判断部30Aが構成される。そして、ECU20Aでは、第1集音器13A、第2集音器14A、第3集音器15A、第4集音器16Aから各電気信号をそれぞれ入力し、一定時間毎に各電気信号を用いて各フィルタ21A,26A及び各処理部22A,23A,24A,25A,27A,28A,29A,30Aでの各処理を行う。
【0039】
フィルタ21Aは、電気信号から所定の周波数帯域を除去するフィルタである。フィルタ21Aでは、各集音器13A,14A,15A,16Aから電気信号が入力される毎に、電気信号から、車両の走行音の周波数帯域を十分に含む帯域よりも高い高周波数帯域と低い低周波数帯域を除去する。このフィルタリングによって、車両の走行音の特徴が良く表れる周波数帯域の電気信号のみが出力される。
【0040】
相互相関計算部22Aでは、各集音器対について、フィルタ21A又は音源周波数成分フィルタ26Aでフィルタリングされた2個の集音器の電気信号間の相互相関値を計算する。ここでは、集音器対の電気信号の波形がどの程度似ているか(波形が近いか)を示す相関値を計算する。第1の実施の形態では、左側集音器ユニット11Aの第1集音器13Aと第2集音器14Aとの電気信号間の相互相関値、右側集音器ユニット12Aの第3集音器15Aと第4集音器16Aとの電気信号間の相互相関値、第1集音器13Aと第4集音器16Aとの電気信号間の相互相関値が計算される。
【0041】
位相差分散計算部23Aでは、各集音器ユニット11A,12Aの集音器対について、相互相関計算部22Aで相互相関が計算されると、2個の集音器の電気信号間の位相差を計算する。さらに、位相差分散計算部23Aでは、一定時間毎に計算される位相差を用いて、位相差の分散(ばらつき)を計算する。
【0042】
なお、相互相関値や位相差を計算する場合、例えば、相互相関関数を用いたり、フーリエ変換によって得ることができる周波数情報を用いて計算する。
【0043】
音源検出部24Aでは、各集音器ユニット11A,12Aの集音器対について、相互相関値と位相差の分散に基づいて継続的に存在する音源を検出する。ここでは、相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上か否かを判定し、集音器対でそれぞれ集音した音が似た音か否かを判定する。この閾値(相互相関値判定用)は、相互相関値から電気信号の波形が似ているか否か判定するための閾値であり、実験等によって予め設定される。また、位相差の分散が閾値(位相差分散判定用)以下か否かを判定し、集音器対でそれぞれ集音した音がある位置に継続的に存在するかを判定する。この閾値(位相差分散判定用)は、位相差分散から音源がある位置に継続的に存在しているか否か判定するための閾値であり、実験等によって予め設定される。そして、相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上かつ位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下の場合には音源が継続的に存在していると判定し、この条件を満たさない場合には音源が存在しないと判定する。
【0044】
音源周波数成分計算部25Aでは、音源検出部24Aで音源を検出できた場合、検出できた集音器対の2つの電気信号を用いて音源の周波数成分を計算する。ここでは、音源を検出できた集音器対の2つの電気信号間の相互相関値の高い周波数成分(相互相関値が閾値(位相差分散判定用)より高い周波数成分)を計算する。
【0045】
音源周波数成分フィルタ26Aは、特定の周波数帯域のみを抽出するフィルタである。音源周波数成分フィルタ26Aでは、集音器の電気信号から、音源周波数成分計算部25Aで計算された音源の周波数成分を抽出する。第1の実施の形態では、第1集音器13Aの電気信号と第4集音器16Aの電気信号から、音源の周波数成分が抽出される。
【0046】
位相差変化計算部27Aでは、集音器対について音源周波数成分フィルタ26Aで特定の周波数成分がそれぞれ抽出された電気信号間の相互相関が相互相関計算部22Aで計算されると、その特定の周波数成分の電気信号間の位相差を計算する。さらに、位相差変化計算部27Aでは、一定時間毎に計算される位相差を用いて、検出されている音源の位相差の時間変化を計算する。第1の実施の形態では、第1集音器13Aの電気信号と第4集音器16Aの電気信号間の位相差の時間変化が計算される。
【0047】
音圧変化計算部28Aでは、集音器対について音源周波数成分フィルタ26Aで特定の周波数成分がそれぞれ抽出された電気信号を用いて、音圧の時間変化をそれぞれ計算する。第1の実施の形態では、第1集音器13Aの電気信号と第4集音器16Aの電気信号の音圧の時間変化がそれぞれ計算される。
【0048】
移動方向判別部29Aでは、位相差変化計算部27Aで計算された音源の位相差の時間変化と音圧変化計算部28Aで計算された音源の音圧の時間変化に基づいて、音源(すなわち、車両の走行音)の移動方向を判別する。ここでは、図3に示すように、位相差の時間変化が減少かつ音圧の時間変化が増大の場合には自車両の左右方向(特に、前方の左右方向)から音源が接近と判別し、位相差の時間変化が増大かつ音圧の時間変化が減少の場合には自車両の左右方向へ音源が遠ざかると判別し、位相差の時間変化がゼロ(略ゼロでもよい)で一定かつ音圧の時間変化が増大の場合には自車両の前後方向から音源が接近と判別し、位相差の時間変化がゼロ(略ゼロでもよい)かつ音圧の時間変化が減少の場合には自車両の前後方向へ音源が遠ざかると判別する。
【0049】
接近車両判断部30Aでは、移動方向判別部29Aでの判別結果に基づいて、接近する車両かあるいは遠ざかる車両か否かを判定する。接近する車両が存在する場合、接近車両判断部30Aでは、移動方向判別部29Aでの判別結果に基づいて、接近車両が左右方向の接近か又は前後方向の接近かを判定する。左右方向の接近車両の場合、接近車両判断部30Aでは、位相差の変化に基づいて、接近車両が左方向からの接近かあるいは右方向からの接近かを判定する。そして、接近車両判断部30Aでは、その判断結果に基づいて接近車両情報を生成し、接近車両情報を運転支援装置2に送信する。接近車両情報としては、例えば、接近車両の有無、接近車両が存在する場合には接近方向や自車両との相対距離の情報である。自車両との相対距離は位相差から計算される。
【0050】
運転支援装置2は、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置2では、一定時間毎に、接近車両検出装置1Aから接近車両情報を受信すると、接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両に対して接近する車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して警報を出力したり、接近車両の情報を提供し、更に、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。
【0051】
次に、図1〜図4を参照して、接近車両検出装置1Aでの動作について説明する。特に、ECU20Aでの処理については、図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
各集音器13A,14A,15A,16Aでは、車外の周囲の音を集音し、その集音した音を電気信号に変換してECU20Aに送信している。
【0053】
一定時間毎に、ECU20Aでは、第1集音器13Aからの電気信号を入力すると(S10)、フィルタ21Aで電気信号から高周波数帯域と低周波数帯域を除去する(S11)。また、ECU20Aでは、第2集音器14Aからの電気信号を入力すると(S10)、フィルタ21Aで電気信号から高周波数帯域と低周波数帯域を除去する(S11)。また、ECU20Aでは、第3集音器15Aからの電気信号を入力すると(S10)、フィルタ21Aで電気信号から高周波数帯域と低周波数帯域を除去する(S11)。また、ECU20Aでは、第4集音器16Aからの電気信号を入力すると(S10)、フィルタ21Aで電気信号から高周波数帯域と低周波数帯域を除去する(S11)。
【0054】
次に、ECU20Aの相互相関計算部22Aでは、第1集音器13Aのフィルタリング後の電気信号と第2集音器14Aのフィルタリング後の電気信号間の相互相関値を計算する(S12)。さらに、ECU20Aの位相差分散計算部23Aでは、第1集音器13Aのフィルタリング後の電気信号と第2集音器14Aのフィルタリング後の電気信号間の位相差の分散を計算する(S13)。また、ECU20Aの相互相関計算部22Aでは、第3集音器15Aのフィルタリング後の電気信号と第4集音器16Aのフィルタリング後の電気信号間の相互相関値を計算する(S12)。さらに、ECU20Aの位相差分散計算部23Aでは、第3集音器15Aのフィルタリング後の電気信号と第4集音器16Aのフィルタリング後の電気信号間の位相差の分散を計算する(S13)。
【0055】
そして、ECU20Aの音源検出部24Aでは、第1集音器13Aと第2集音器14Aの電気信号間の相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上か否かを判定するとともに、第1集音器13Aと第2集音器14Aの電気信号間の位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下か否かを判定する(S14)。S14の判定にて相互相関値が閾値(相互相関値判定用)未満又は位相差分散が閾値(位相差分散判定用)より大きいと判定した場合、ECU20Aの音源検出部24Aでは、左側集音器ユニット11A側では音源を検出できないと判定する。
【0056】
また、ECU20Aの音源検出部24Aでは、第3集音器15Aと第4集音器16Aの電気信号間の相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上か否かを判定するとともに、第3集音器15Aと第4集音器16Aの電気信号間の位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下か否かを判定する(S14)。S14の判定にて相互相関値が閾値(相互相関値判定用)未満又は位相差分散が閾値(位相差分散判定用)より大きいと判定した場合、ECU20Aの音源検出部24Aでは、右側集音器ユニット11A側では音源を検出できないと判定する。
【0057】
S14の判定にて相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上かつ位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下と判定した場合、ECU20Aの音源検出部24Aでは、左側集音器ユニット11A側では音源を検出できたと判定する。ここでは、所定の距離離れた位置に特定の周波数成分の音源が存在していることが検出されたことになり、音源が複数存在する場合もある。ECU20Aの音源周波数成分計算部25Aでは、第1集音器13Aと第2集音器14Aの電気信号間の相互相関の高い音源の周波数成分を計算する(S15)。そして、ECU20Aの音源周波数成分フィルタ26Aでは、第1集音器13Aの電気信号からその計算された音源の周波数成分(周波数帯域)を抽出する(S16)。音源が複数検出されている場合、各音源について周波数成分をそれぞれ抽出する。
【0058】
S14の判定にて相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上かつ位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下と判定した場合、ECU20Aの音源検出部24Aでは、右側集音器ユニット12A側では音源を検出できたと判定する。ECU20Aの音源周波数成分計算部25Aでは、第3集音器15Aと第4集音器16Aの電気信号間の相互相関の高い音源の周波数成分を計算する(S15)。そして、ECU20Aの音源周波数成分フィルタ26Aでは、第4集音器16Aの電気信号からその計算された音源の周波数成分(周波数帯域)を抽出する(S16)。音源が複数検出されている場合、各音源について周波数成分をそれぞれ抽出する。
【0059】
なお、S16とS16のフィルタリングでは、左側と右側でそれぞれ検出された音源のうち、左右両側で周波数成分が共通する周波数成分の音源だけを抽出するようにするとよい。
【0060】
次に、ECU20Aの相互相関計算部22Aでは、第1集音器13Aの電気信号から抽出された音源の周波数成分と第4集音器16Aの電気信号から抽出された音源の周波数成分間の相互相関を計算し(S17)、位相差変化計算部27Aで位相差の時間変化を計算する(S18)。また、ECU20Aの音圧変化計算部28Aでは、第1集音器13Aの電気信号から抽出された音源の周波数成分と第4集音器16Aの電気信号から抽出された音源の周波数成分から音圧の時間変化を計算する(S19)。
【0061】
次に、ECU20Aの移動方向判別部29Aでは、位相差の時間変化と音圧の時間変化に基づいて、音源の移動方向を判別する(S20)。そして、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、その判別結果に基づいて、自車両に接近する車両が存在するか否かを判定する(S21)。S21の判定にて接近車両が存在しないと判定した場合、ECU20Aでは、今回の処理を終了する。S21にて接近車両が存在すると判定した場合、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、判別結果に基づいて、接近車両の接近方向が左右方向か否かを判定する(S22)。S22の判定にて接近方向が左右方向でないと判定した場合、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、前後方向からの接近車両と判断する(S24)。S22にて接近方向が左右方向と判定した場合、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、位相差の変化に基づいて、左方向からの接近か否かを判定する(S23)。S23の判定にて左方向からの接近と判定した場合、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、左方向から接近車両と判断する(S25)。S23の判定にて左方向からの接近でないと判定した場合、ECU20Aの接近車両判断部30Aでは、右方向から接近車両と判断する(S26)。
【0062】
ECU20Aでは、上記の各判定結果に基づいて接近車両情報を生成し、その接近車両情報を運転支援装置2に送信する。ECU20Aでは、上記の処理を繰り返し行う。
【0063】
この接近車両検出装置1Aによれば、狭い間隔の集音器対からなる集音器ユニット11A,12Aを構成し、各集音器ユニット11A,12Aでそれぞれ音源の検出を行うことにより、耐ノイズ性能が向上する。また、接近車両検出装置1Aによれば、集音器ユニット11A,12Aの外側の集音器13A,16Aによって広い間隔の集音器対を構成し、その集音器対で音源の定位を行うことにより、空間分解能(角度分解能)が高くなり、最大検出距離性能が向上する。このように、接近車両検出装置1Aは、耐ノイズ性能と最大検出距離性能を両立でき、ノイズの影響を抑えて、遠方の接近車両まで高精度に検出することができる。
【0064】
図1及び図6を参照して、第2の実施の形態に係る接近車両検出装置1Bについて説明する。図6は、第2の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【0065】
接近車両検出装置1Bは、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1Aと比較すると、前後方向からの接近車両が存在する場合に前方からの接近車両かあるいは後方からの接近車両かを判別できる。そのために、接近車両検出装置1Bは、接近車両検出装置1Aと同様に4個の集音器を有しているが、左側の外側の集音器と右側の外側の集音器が車幅方向の最外端の角部に配置される。そして、接近車両検出装置1Bは、接近車両検出装置1Aでの基本となる接近車両の検出処理に加えて、前後方向の接近車両の場合には音源が前方からか後方からかの判別も行う。
【0066】
なお、前後方向の接近車両の場合、接近車両(音源)が自車両の前方と後方のどちらに存在しても、接近車両が正面に存在すると集音器対の電気信号間の位相差がゼロ(あるいは略ゼロ)になる。そのため、第1の実施の形態での接近車両の判別処理では、位相差の時間変化がゼロかつ音圧の時間変化が増大の条件によって前後方向の接近車両であることまでは判別できるが、前方からかあるいは後方からかは判別できない。
【0067】
接近車両検出装置1Bは、集音器アレイ10B(左側集音器ユニット11B(第1集音器13B、第2集音器14B)、右側集音器ユニット12B(第3集音器15B、第4集音器16B))及びECU20B(フィルタ21B、相互相関計算部22B、位相差分散計算部23B、音源検出部24B、音源周波数成分計算部25B、音源周波数成分フィルタ26B、位相差変化計算部27B、音圧変化計算部28B、移動方向判別部29B、接近車両判断部30B)を備えている。
【0068】
集音器アレイ10Bは、左側集音器ユニット11Bと右側集音器ユニット12Bを有している。左側集音器ユニット11Bと右側集音器ユニット12Bとは、図6に示すように、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向(左右方向)の左側と右側に配置され、外側の集音器を車両の角部に配置するために外側寄り配置される。したがって、左側集音器ユニット11Bと右側集音器ユニット12Bが配置される間隔は、接近車両検出装置1Aの配置よりも広い間隔である。
【0069】
左側集音器ユニット11Bは、第1集音器13Bと第2集音器14Bを有している。第1集音器13Bは、車幅方向の左側の角部(最外端)に配置される。第2集音器14Bは、第1集音器13Bから所定の間隔をあけて車両中心側に配置される。右側集音器ユニット12Bは、第3集音器15Bと第4集音器16Bを有している。第4集音器16Bは、車幅方向の右側の角部(最外端)に配置される。第3集音器15Bは、第4集音器16Bから所定の間隔をあけて車両中心側に配置される。各集音器ユニット11B,12B内の集音器対の間隔は狭い間隔で配置され、間隔が狭いほど耐ノイズ性能を向上させることができる。各集音器13B,14B,15B,16Bは、第1の実施の形態に係る集音器13A,14A,15A,16Aと同様の集音器である。
【0070】
このように各集音器13B,14B,15B,16Bを配置した場合、車両の角部に配置された集音器13B,16Bには、車両の後方からの音も入力され易い。しかし、車両の角部よりも車両中心側に配置された集音器14B,15Bには、車体自体が遮音物体となるため、車両の後方からの音が入力され難くい。したがって、第1集音器13Bと第4集音器16Bの集音器対を用いた音源検出でのみ音源を検出できる場合には後方に存在する音源であり、第1集音器13Bと第4集音器16Bの集音器対を用いた音源検出と第2集音器14Bと第3集音器15Bの集音器対を用いた音源検出の両方で音源を検出できる場合には前方に存在する音源であると、判別できる。
【0071】
ECU20Bは、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Bを統括制御する。ECU20Bでは、ROMに記憶されている接近車両検出用のアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行することにより、フィルタ21B、相互相関計算部22B、位相差分散計算部23B、音源検出部24B、音源周波数成分計算部25B、音源周波数成分フィルタ26B、位相差変化計算部27B、音圧変化計算部28B、移動方向判別部29B、接近車両判断部30Bが構成される。そして、ECU20Bでは、第1集音器13B、第2集音器14B、第3集音器15B、第4集音器16Bから各電気信号をそれぞれ入力し、一定時間毎に各電気信号を用いて各フィルタ21B,26B及び各処理部22B,23B,24B,25B,27B,28B,29B,30Bでの処理を行う。
【0072】
フィルタ21Bは、第1の実施の形態に係るフィルタ21Aと同様のフィルタリングを行う。相互相関計算部22Bは、第1の実施の形態に係る相互相関計算部22Aと同様の処理を行う。位相差分散計算部23Bは、第1の実施の形態に係る位相差分散計算部23Aと同様の処理を行う。音源検出部24Bは、第1の実施の形態に係る音源検出部24Aと同様の処理を行う。音源周波数成分フィルタ26Bは、第1の実施の形態に係る音源周波数成分フィルタ26Aと同様のフィルタリングを行う。位相差変化計算部27Bは、第1の実施の形態に係る位相差変化計算部27Aと同様の処理を行う。音圧変化計算部28Bは、第1の実施の形態に係る音圧変化計算部28Aと同様の処理を行う。
【0073】
音源周波数成分計算部25Bは、第1の実施の形態に係る音源周波数成分計算部25Aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。音源周波数成分計算部25Bでは、フィルタ21Bでそれぞれフィルタリングされた第1集音器13Bの電気信号と第4集音器16Bの電気信号間で相関の高い音源の周波数成分を計算する。また、音源周波数成分計算部25Bでは、フィルタ21Bでそれぞれフィルタリングされた第2集音器14Bの電気信号と第3集音器15Bの電気信号間で相関の高い音源の周波数成分を計算する。ここでは、前後方向から接近する音源が存在することを前提として、上記の処理が行われる。
【0074】
移動方向判別部29Bは、第1の実施の形態に係る移動方向判別部29Aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。前後方向からの接近車両と判別した場合、移動方向判別部29Bでは、音源周波数成分計算部25Bで計算された第1集音器13Bの電気信号と第4集音器16Bの電気信号間で相関の高い音源の周波数成分と、第2集音器14Bの電気信号と第3集音器15Bの電気信号間で相関の高い音源の周波数成分とを比較し、同様の周波数成分か否かを判定する。そして、移動方向判別部29Bでは、同様の周波数成分の場合には前方からの接近車両と判別し、周波数成分に差異がある場合には後方からの接近車両と判別する。
【0075】
接近車両判断部30Bは、第1の実施の形態に係る接近車両判断部30Aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。接近車両判断部30Bでは、移動方向判別部29Bでの判別結果に基づいて、前後方向の接近車両が前方向からの接近かあるいは後方向からの接近かを判定する。
【0076】
次に、図1及び図6を参照して、接近車両検出装置1Bでの動作について説明する。特に、ECU20Bでの処理については、図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、第2の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0077】
接近車両検出装置1Bでは、第1の実施の形態で説明した接近車両接近装置1Aでの動作については全て行うとともに、前後方向の接近車両の移動方向判別を行う。そこで、前後方向の接近車両の移動方向判別の動作についてのみ説明する。ここでは、第1の実施の形態に係る図5のフローチャートにおけるS22の「接近車両が左右方向か否かの判定」で「No」と判定された場合の以降の処理を説明する。
【0078】
第1の実施の形態で説明したうように、第1集音器13Bからの電気信号が入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Bでフィルタリングされ(S11)、第2集音器14Bからの電気信号を入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Bでフィルタリングされ、第3集音器15Bからの電気信号を入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Bでフィルタリングされ(S11)、第4集音器16Bからの電気信号を入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Bでフィルタリングされている(S11)。
【0079】
S22の判定にて接近方向が左右方向でないと判定した場合、ECU20Bの音源周波数成分計算部25Bでは、フィルタリング後の第2集音器14Bの電気信号と第3集音器15Bの電気信号間の相関の高い音源の周波数成分を計算する(S30)。ここでは、内側の集音器対で検出される音源の周波数成分が抽出され、複数の音源の周波数成分が抽出される場合もある。また、ECU20Bの音源周波数成分計算部25Bでは、フィルタリング後の第1集音器13Bの電気信号と第4集音器16Bの電気信号間の相関の高い音源の周波数成分を計算する(S30)。ここでは、角部の集音器対で検出される音源の周波数成分が抽出され、複数の音源の周波数成分が抽出される場合もある。
【0080】
そして、ECU20Bの移動方向判別部29Bでは、抽出できた内側の集音器対の周波数成分と角部の集音器対の周波数成分とを比較し(S31)、前方からの接近車両か否か(すなわち、周波数成分に差異があるか同様か)を判定する(S32)。S32の判定にて周波数成分が同様であると判定した場合、ECU20Bの接近車両判断部30Bでは、前方からの接近車両と判断する(S33)。S32の判定にて周波数成分に差異があると判定した場合、ECU20Bの接近車両判断部30Bでは、後方からの接近車両と判断する(S34)。
【0081】
ECU20Bでは、上記の各判定結果も含めて接近車両情報を生成し、その接近車両情報を運転支援装置2に送信する。ECU20Bでは、上記の処理を繰り返し行う。
【0082】
この接近車両検出装置1Bは、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1Aと同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。この接近車両検出装置1Bによれば、外側の集音器13B,16Bを車両の前端の角部に配置し、角部の集音器対13B,16Bで検出できる音源の周波数成分と内側の集音器対14B,15Bで検出できる音源の周波数成分とを比較することにより、前後方向の接近車両が前方からの接近かあるいは後方からの接近かを判別できる。
【0083】
図8及び図9を参照して、第3の実施の形態に係る接近車両検出装置1Cについて説明する。図8は、第3の実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。図9は、第3の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【0084】
接近車両検出装置1Cは、第2の接近車両検出装置1Bと比較すると。後方向からの接近車両が存在する場合に真後方からの接近車両かあるいは左後方からの接近車両かあるいは右後方からの接近車両かを判別できる。接近車両検出装置1Cは、接近車両検出装置1Bと同様の配置で車両の前端部に4個の集音器が配置され、車両の後端部に1個の集音器が配置される。そして、接近車両検出装置1Cでは、接近車両検出装置1Bでの接近車両の検出処理に加えて、後方向の接近車両の場合には音源が真後方からか左後方からか右後方からかの判別も行う。
【0085】
接近車両検出装置1Cは、集音器アレイ10C(左側集音器ユニット11C(第1集音器13C、第2集音器14C)、右側集音器ユニット12C(第3集音器15C、第4集音器16C)、後方集音器17C)及びECU20C(フィルタ21C、相互相関計算部22C、位相差分散計算部23C、音源検出部24C、音源周波数成分計算部25C、音源周波数成分フィルタ26C、位相差変化計算部27C、音圧変化計算部28C、移動方向判別部29C、接近車両判断部30C)を備えている。
【0086】
集音器アレイ10Cは、左側集音器ユニット11Cと右側集音器ユニット12Cの他に後方集音器17Cを有している。左側集音器ユニット11Cと右側集音器ユニット12Cは、図9に示すように、第2の実施の形態に係る左側集音器ユニット11Bと右側集音器ユニット12Bと同様の構成である。
【0087】
後方集音器17Cは、図9に示すように、車両の後端部における車幅方向の中央に配置される。後方集音器17Cは、無指向性の集音器であり、車両の周囲における車外の音を集音する。後方集音器17Cは、音響電気変換器であり、集音した音に対応した電気信号に変換し、その電気信号をECU20Cに送信する。
【0088】
このように各集音器13C,14C,15C,16C,17Cを配置した場合、後方の左側に音源があると、後方の後方集音器17Cと前方の左角部の第1集音器13Cの集音器対では音源が検出され易いが、後方の後方集音器17Cと前方の右角部の第4集音器16Cの集音器対では音源が検出され難い。また、後方の右側に音源があると、後方の後方集音器17Cと前方の右角部の第4集音器16Cの集音器対では音源が検出され易いが、後方の後方集音器17Cと前方の左角部の第1集音器13Cの集音器対では音源が検出され難い。したがって、後方集音器17Cと第1集音器13Cの集音器対を用いて後方の左側の音源を判別でき、後方集音器17Cと第4集音器16Cの集音器対を用いて後方の右側の音源を判別できる。さらに、前方の左右端の第1集音器13Cと第4集音器16Cとが同程度の音圧変化を検出できる場合、第1集音器13Cと第4集音器16Cの集音器対を用いて後方の真後の音源を判別できる。
【0089】
ECU20Cは、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Cを統括制御する。ECU20Cでは、ROMに記憶されている接近車両検出用のアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行することにより、フィルタ21C、相互相関計算部22C、位相差分散計算部23C、音源検出部24C、音源周波数成分計算部25C、音源周波数成分フィルタ26C、位相差変化計算部27C、音圧変化計算部28C、移動方向判別部29C、接近車両判断部30Cが構成される。そして、ECU20Cでは、第1集音器13C、第2集音器14C、第3集音器15C、第4集音器16C及び後方集音器17Cから各電気信号をそれぞれ入力し、一定時間毎に各電気信号を用いて各フィルタ21C,26C及び各処理部22C,23C,24C,25C,27C,28C,29C,30Cでの処理を行う。
【0090】
位相差分散計算部23Cは、第2の実施の形態に係る位相差分散計算部23Bと同様の処理を行う。音源検出部24Cは、第2の実施の形態に係る音源検出部24Bと同様の処理を行う。音源周波数成分計算部25Cは、第2の実施の形態に係る音源周波数成分計算部25Bと同様の処理を行う。音源周波数成分フィルタ26Cは、第2の実施の形態に係る音源周波数成分フィルタ26Cと同様のフィルタリングを行う。音圧変化計算部28Cは、第2の実施の形態に係る音圧変化計算部28Bと同様の処理を行う。
【0091】
フィルタ21Cは、第2の実施の形態に係るフィルタ21Bと同様のフィルタリングを行う上に、以下のフィルタリングも行う。フィルタ21Cでは、後方集音器17Cから電気信号が入力される毎に、その電気信号から車両の走行音の周波数帯域を十分に含む帯域より高い高周波数帯域と低い低周波数帯域を除去する。
【0092】
相互相関計算部22Cは、第2の実施の形態に係る相互相関計算部22Bと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。相互相関計算部22Cでは、第1集音器13Cと第4集音器16Cの集音器対について、フィルタ21Cでフィルタリングされた2個の集音器13C,16Cの電気信号間の相互相関値を計算する。また、相互相関計算部22Cでは、第1集音器13Cと後方集音器17Cの集音器対について、フィルタ21Cでフィルタリングされた2個の集音器13C,17Cの電気信号間の相互相関値を計算する。また、相互相関計算部22Cでは、第4集音器16Cと後方集音器17Cの集音器対について、フィルタ21Cでフィルタリングされた2個の集音器16C,17Cの電気信号間の相互相関値を計算する。
【0093】
位相差変化計算部27Cは、第2の実施の形態に係る位相差変化計算部27Bと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。位相差変化計算部27Cでは、第1集音器13Cと第4集音器16Cの集音器対について電気信号間の相互相関が相互相関計算部22Cで計算されると、その電気信号間の位相差を計算し、その一定時間毎に計算した位相差を用いて音源の位相差の時間変化を計算する。また、位相差変化計算部27Cでは、第1集音器13Cと後方集音器17Cの集音器対について電気信号間の相互相関が相互相関計算部22Cで計算されると、その電気信号間の位相差を計算し、その一定時間毎に計算した位相差を用いて音源の位相差の時間変化を計算する。また、位相差変化計算部27Cでは、第4集音器16Cと後方集音器17Cの集音器対について電気信号間の相互相関が相互相関計算部22Cで計算されると、その電気信号間の位相差を計算し、その一定時間毎に計算した位相差を用いて音源の位相差の時間変化を計算する。
【0094】
移動方向判別部29Cは、第2の実施の形態に係る移動方向判別部29Cと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。後方向からの接近車両と判別した場合、移動方向判別部29Cでは、第1集音器13Cの電気信号と第4集音器16Cの電気信号間の位相差の時間変化と音圧の時間変化に基づいて、真後方からの接近車両か否かを判別する。ここでは、位相差がゼロ(略ゼロでもよい)で継続しかつ第1集音器13Cの音圧と第4集音器16Cの音圧とが共に増加している場合に真後方からの接近車両と判定する。真後方からの接近車両でない場合、移動方向判別部29Cでは、第1集音器13Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差の時間変化と、第4集音器16Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差の時間変化とを比較し、左後方からの接近車両かあるいは右後方からの接近車両かを判別する。ここでは、第1集音器13Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差が減少している場合には左後方からの接近車両と判別し、第4集音器16Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差が減少している場合には右後方からの接近車両と判別する。また、第1集音器13Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差及び第4集音器16Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の位相差が共に減少している場合、左後方からの接近車両と右後方からの接近車両が存在すると判別する。
【0095】
接近車両判断部30Cは、第2の実施の形態に係る接近車両判断部30Bと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。接近車両判断部30Cでは、移動方向判別部29Cでの判別結果に基づいて、後方からの接近車両が真後方からの車両か否かを判定する。真後方からの車両でない場合、接近車両判断部30Cでは、移動方向判別部29Cでの判別結果に基づいて、後方からの接近車両が左後方からの車両かあるいは右後方からの車両かを判定する。
【0096】
次に、図8及び図9を参照して、接近車両検出装置1Cでの動作について説明する。特に、ECU20Cでの処理については、図10のフローチャートに沿って説明する。図10は、第3の実施の形態に係る接近車両検出装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0097】
接近車両検出装置1Cでは、第2の実施の形態で説明した接近車両接近装置1Bでの動作については全て行うとともに、後方からの接近車両の移動方向判別を行う。そこで、後方からの接近車両の移動方向判別の動作についてのみ説明する。ここでは、第2の実施の形態に係る図7のフローチャートにおけるS32の「前方からの接近車両か否かの判定」で「No」と判定された場合の以降の処理を説明する。
【0098】
第1の実施の形態で説明したうように、第1集音器13Cからの電気信号が入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Cでフィルタリングされ(S11)、第4集音器16Cからの電気信号が入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Cでフィルタリングされている(S11)。さらに、接近車両検出装置1Cの場合、後方集音器17Cからの電気信号が入力されると(S10)、その電気信号がフィルタ21Cでフィルタリングされる(S11)。
【0099】
S32の判定にて前後方向の接近車両が前方からの接近車両でないと判定した場合、ECU20Cの相互相関計算部22Cでは、フィルタリング後の第1集音器13Cの電気信号と第4集音器16Cの電気信号間の相互相関値を計算し(S40)、位相差変化計算部27Cで位相差の時間変化を計算する(S41)。また、ECU20Cの音圧変化計算部28Cでは、フィルタリング後の第1集音器13Cの電気信号と第4集音器16Cの電気信号から音圧の時間変化を計算する(S42)。
【0100】
ECU20Cの移動方向判別部29Cでは、第1集音器13Cと第4集音器16Cとの電気信号間の位相差の時間変化と音圧の時間変化に基づいて、後方からの接近車両が真後方からか否かを判別する(S43)。そして、ECU20Cの接近車両判断部30Cでは、その判別結果に基づいて、後方から接近する車両が真後方からか否かを判定する(S44)。S44の判定にて真後方からの接近車両と判定した場合、ECU20Cでは、真後方から接近車両と判断する(S49)。
【0101】
S44の判定にて真後方からの接近車両でないと判定した場合、ECU20Cの相互相関計算部22Cでは、フィルタリング後の第1集音器13Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の相互相関値を計算し(S45)、位相差変化計算部27Cで位相差の時間変化を計算する(S46)。また、ECU20Cの相互相関計算部22Cでは、フィルタリング後の第4集音器16Cの電気信号と後方集音器17Cの電気信号間の相互相関値を計算し(S45)、位相差変化計算部27Cで位相差の時間変化を計算する(S46)。
【0102】
ECU20Cの移動方向判別部29Cでは、第1集音器13Cと後方集音器17Cとの電気信号間の位相差の時間変化と第4集音器16Cと後方集音器17Cとの電気信号間の位相差の時間変化に基づいて、後方からの接近車両が左方向からかあるいは右後方からかを判別する(S47)。そして、ECU20Cの接近車両判断部30Cでは、その判別結果に基づいて、右後方からの接近車両かを判定する(S48)。S48の判定にて右後方からの接近車両と判定した場合、ECU20Cの接近車両判断部30Cでは、右後方から接近車両と判断する(S50)。一方、S48の判定にて右後方からの接近車両でないと判定した場合、ECU20Cの接近車両判断部30Cでは、左後方から接近車両と判断する(S51)。
【0103】
ECU20Cでは、上記の各判定結果も含めて接近車両情報を生成し、その接近車両情報を運転支援装置2に送信する。ECU20Cでは、上記の処理を繰り返し行う。
【0104】
この接近車両検出装置1Cは、第2の実施の形態に係る接近車両検出装置1Bと同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。この接近車両検出装置1Cによれば、後方にも集音器17Cを配置し、前左角部の第1集音器13Cと前右角部の第4集音器対16Cの集音器対、後方集音器17Cと前左角部の第1集音器13Cの集音器対及び後方集音器17Cと前右角部の第4集音器16Cの集音器対を用いて後方の接近車両の移動方向を判別することにより、真後方からの接近車両、左後方からの接近車両かあるいは右後方からの接近車両かを判別できる。このように、後方からの接近車両の移動方向を判別することにより、自車両の車線変更時に有用な情報となる。
【0105】
図11を参照して、第4の実施の形態に係る接近車両検出装置の集音器の配置のバリエーションとして集音器アレイ10Dについて説明する。図11は、第4の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【0106】
集音器アレイ10Dは、3個の第1集音器13D、第4集音器16D、中央集音器18Dを有しており、第1集音器13D、第4集音器16D、中央集音器18Dが車両の前端部の同じ高さ位置に車幅方向に沿って並べて配置される。第1集音器13Dは、車両の前端部における車幅方向の左側に配置される。第4集音器16Dは、車両の前端部における車幅方向の右側に配置される。中央集音器18Dは、車両の前端部における車幅方向の中心に配置される。第1集音器13Dと中央集音器18Dとの間隔と、第4集音器16Dと中央集音器18Dとの間隔は、同じ間隔である。
【0107】
第1集音器13Dと中央集音器18Dによって第1の実施の形態等における左側集音器ユニットとして構成するとともに第4集音器16Dと中央集音器18Dによって第1の実施の形態等における右側集音器ユニットとして構成し、この各集音器ユニットによって第1の実施の形態等と同様の音源の検出を行う。また、第1集音器13Dと第4集音器16Dの集音器対によって、第1の実施の形態等と同様の音源の移動方向の判別(音源の定位)を行う。
【0108】
例えば、第4の実施の形態に係る集音器アレイ10Dを用いて、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1における接近車両の検出処理に適用した場合、第1の実施の形態に係る第2集音器14Aの電気信号及び第3集音器15Aの電気信号の代わりに中央集音器18Dの電気信号を用いて各処理を行う。
【0109】
この接近車両検出装置1Dによれば、3個の集音器13D,16D,18Dによる最少の集音器の個数で、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1Aと同様の効果が得られる。
【0110】
図12を参照して、第5の実施の形態に係る接近車両検出装置の集音器の配置のバリエーションとして集音器アレイ10Eについて説明する。図12は、第5の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図と集音器間隔である。
【0111】
上記の実施の形態でも説明したように、狭い間隔の集音器対による音源の検出と広い間隔の集音器対による音源の定位を行う場合には3個以上の集音器が必要となる。また、一般に、音は周期性のある波形を持っているため、その音の周期と集音器対の間隔が一致したりあるいは倍数の関係になったりすると、集音器対の電気信号間の位相差を誤って検出する場合がある。この場合、音源の検出性能が低下する。音の周期は条件によって様々に変化するので、予め予測することは難しい。そこで、集音器対の間隔として複数の間隔を予め用意しておけば、ある集音器対の間隔では音の周期と集音器対の間隔との関係が不適切でも、他の集音器対の間隔では音の周期と集音器対の間隔との関係が適切になる。したがって、集音器対の間隔が多数用意できるほど良い。
【0112】
そこで、第5の実施の形態では、7個の集音器10E〜10Eを有する集音器アレイ10Eの例を示す。この集音器アレイ10Eの集音器10E〜10Eの配置は、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向にランダムに並べて、隣接する集音器同士の間隔I12,I23,I34,I45,I56,I67が全て異なる間隔で配置されている。このように隣接する集音器同士の間隔の他にも、任意に2個の集音器を選択することにより、異なる多数の集音器対の間隔を構成できる。なお、7個の集音器を有する集音器アレイの例を挙げたが、他の個数の集音器アレイにも適用できる。
【0113】
例えば、第5の実施の形態に係る集音器アレイ10Eを用いて、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1における接近車両の検出処理に適用した場合、1回の処理毎に、第1の実施の形態に係る狭い間隔の集音器対として7個の集音器10E〜10Eから間隔が狭い2個の集音器対を順次選択するとともに、広い間隔の集音器対として7個の集音器10E〜10Eから間隔が広い2個の集音器対を選択し、選択した各集音器対の電気信号を用いて各処理を行う。
【0114】
狭い間隔の集音器対による音源の検出と広い間隔の集音器対による音源の定位を行う接近車両の検出方法としては、他の検出方法を用いてもよい。例えば、集音器アレイ10Eに含まれる集音器10E〜10Eの様々な組み合わせの集音器対を用いて各処理を行い、各集音器対で検出された情報(例えば、相互相関、位相差、音圧)を平均化し、その平均化した情報に基づいて音源(接近車両)の移動方向を判別する。この検出方法の場合、狭い間隔の集音器対や広い間隔の集音器対の組み合わせが多いほど検出性能が向上するが、処理負荷が大きくなるので、この兼ね合いにより処理に用いる集音器対の組み合わせ数を決定する。
【0115】
この接近車両検出装置1Eは、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置1Aと同様の効果が得られる上に、以下の効果も有する。接近車両検出装置1Eによれば、音の周期に関係なく、音源(接近車両)の検出が可能であり、検出性能を向上させることができる。
【0116】
図13を参照して、第6の実施の形態に係る接近車両検出装置の集音器の配置のバリエーションとして集音器アレイ10Fについて説明する。図13は、第6の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図である。
【0117】
集音器間隔としては様々な間隔を得るためには、集音器を多数配置する必要がある。しかし、コスト、車両構造上の制約や意匠面を考慮すると、集音器の個数は少ないほうがよい。そこで、少ない個数の集音器で、より多くの集音器間隔を得ることが望まれる。
【0118】
そこで、第6の実施の形態では、フィボナッチ級数で指定される間隔を利用した6個の集音器10F〜10Fを有する集音器アレイ10Fの例を示す。フィボナッチ級数で指定される数列(フィボナッチ数列)は、0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,987・・・のように、0,1から始まり、前の数とその前の数を合計した数を新しい数とするような数列である。この数列に従って集音器を配置することにより、少ない個数の集音器で、多くの集音器間隔を得ることができる。
【0119】
集音器アレイ10Fの集音器10F〜10Fの配置は、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向に1,2,3,5,8,13(フィボナッチ数列の一部)の位置に配置されている。つまり、図13に示すように、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向に沿って13個の丸印で示す位置を仮定し、隣接する丸印の位置間は全て同じ間隔とする。この13個の位置のうち、車両の右端の位置に集音器10Fが配置され、右端から2個目の位置に集音器10Fが配置され、右端から3個目の位置に集音器10Fが配置され、右端から5個目の位置に集音器10Fが配置され、右端から8個目の位置に集音器10Fが配置され、右端から13個目(左端)の位置に集音器10Fが配置される。なお、6個の集音器を有する集音器アレイの例を挙げたが、他の個数の集音器アレイにも適用できる。
【0120】
この例の場合、隣接する集音器同士の間隔をLとすると、集音器10Fと集音器10Fの集音器対の間隔が1×Lとなり(集音器10Fと集音器10Fの集音器対の間隔でもよい)、集音器10Fと集音器10Fの集音器対の間隔が2×Lとなり(集音器10Fと集音器10Fの集音器対等の間隔でもよい)、集音器10Fと集音器10Fの集音器対の間隔が3×Lとなる。このように、6個の集音器10F〜10Fを用いて様々な組み合わせの集音器対を構成することにより、集音器対の間隔として、1×L〜12×Lのうち11個の間隔を生成できる(9×Lだけ生成できない)。
【0121】
そして、第6の実施の形態に係る集音器アレイ10Fを用いて、第5の実施の形態で説明したような接近車両の検出処理を行う。
【0122】
この接近車両検出装置1Fは、第5の実施の形態に係る接近車両検出装置1Eと同様の効果が得られる上に、以下の効果も有する。接近車両検出装置1Fによれば、フィボナッチ数列を用いて集音器を配置することにより、少ない集音器数でより多くの集音器間隔を得ることができる。
【0123】
図14を参照して、第7の実施の形態に係る接近車両検出装置の集音器の配置のバリエーションとして集音器アレイ10Gについて説明する。図14は、第7の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の配置図と集音器間隔である。
【0124】
第5及び第6の実施の形態に係る集音器アレイでは集音器間隔がランダムな間隔に配置されていたが、全ての集音器間隔が同じ間隔で配置されていても、集音器対を構成する集音器の組み合わせにより様々な集音器間隔を構成できる。この場合、集音器間隔がランダムな間隔に配置した集音器アレイを用いる場合と同様の効果を得ることできる。
【0125】
第7の実施の形態では、12個の集音器10G〜10G12を有する集音器アレイ10Gの例を示す。集音器アレイ10Gの集音器10G〜10G12の配置は、車両の前端部における同じ高さ位置に車幅方向に一定の間隔で配置されている。このように一定の間隔で配置したとしても、隣接する集音器同士の間隔をLとすると、例えば、集音器10Gと集音器Gの集音器対の間隔が1×Lとなり、集音器10Gと集音器Gの集音器対の間隔が2×Lとなり、集音器10Gと集音器Gの集音器対の間隔が3×Lとなり、集音器10Gと集音器Gの集音器対の間隔が4×Lとなり、集音器10Gと集音器G12の集音器対の間隔が5×Lとなり、集音器10Gと集音器G11の集音器対の間隔が6×Lとなり、集音器10Gと集音器G10の集音器対の間隔が7×Lとなり、それぞれ異なる間隔である。
【0126】
そして、第7の実施の形態に係る集音器アレイ10Gを用いて、1回の処理毎に選択する集音器対の組み合わせを変えて、上記の実施の形態で説明したような接近車両の検出処理を行う。1回の処理毎に選択する集音器対の組み合わせを変えることにより、ノイズ等が一定時間現われるような場合でも、その影響を小さくすることができる。
【0127】
この接近車両検出装置1Gは、第5の実施の形態に係る接近車両検出装置1Eと同様の効果が得られる上に、以下の効果も有する。接近車両検出装置1Gによれば、1回の処理毎に集音器対の組み合わせを変えることにより、耐ノイズ性能をより向上できる。
【0128】
図15を参照して、第7の実施の形態に係る接近車両検出装置の集音器アレイ10Fに含まれる集音器の中に処理に不都合のある集音器がある場合の対処方法について説明する。なお、不都合があるとは、例えば、集音器の故障である。図15は、第7の実施の形態に係る接近車両検出装置における集音器の一部が故障した場合の集音器間隔の一例である。
【0129】
対処方法としては、接近車両検出装置が、ECU内に故障判断部を有しており、故障を検出するための基準の音を発生する音発生装置を備えている。音発生装置としては、例えば、一般に自動車に備えられているクラクションを用いる。
【0130】
音発生装置では、予め周波数特性の判っている音を発生させる。集音器アレイ10Fの各集音器10G〜10G12では、音発生装置から出力された音を入力し、電気信号をそれぞれ出力する。ECU内の故障判断部では、集音器10G〜10G12毎に、電気信号に基づいて故障か否かを判断する。この判断方法としては、例えば、電気信号がゼロの時間が一定時間以上続いた場合、電気信号として同じ値が一定時間以上続いた場合を故障と判断する。そして、故障判断部では、故障と判断した集音器については音源検出や音源定位に用いる集音器の候補から除外し、その集音器を選択できないようにする。
【0131】
図15に示すように、例えば、集音器10Gが故障と判断された場合、集音器10Gを選択対象から外し、他の11個の集音器から選択するようにする。集音器10Gが集音器10Gとの集音器対で間隔として3×Lが構成されていた場合、集音器10Gを使用できなくても、他の集音器対の組み合わせで(例えば、集音器10Gと集音器10Gとの集音器対)で3×Lの間隔を構成できる。
【0132】
この接近車両検出装置によれば、故障した集音器を除外して検出を行うので、音源(接近車両)の検出の信頼性を向上できる。
【0133】
上記の構成のように故障と判断された集音器を除外した場合、選択できる集音器対の組み合わせが少なくなる。そこで、音源(接近車両)の検出に対して信頼度を設け、集音器対の組み合わせの減少に応じて信頼度を低下させるようにしてもよい。この信頼度を接近車両情報に付加することにより、運転支援装置2において信頼度に応じて運転支援の内容を変更する。例えば、接近車両検出後に運転者に対する警報出力等の処理が続く場合、信頼度が低い場合には警報や車両制御を弱くするなどの制御が可能となる。なお、全体の集音器の個数と故障で使用できなくなった集音器の個数を減じた使用可能な集音器の個数との比や故障の集音器の個数と使用可能な集音器の数の比に応じて信頼度を減じるなどしてもよい。
【0134】
この接近車両検出装置によれば、故障した集音器に応じて信頼度を低下させることにより、信頼度に応じて運転支援の程度を変更できるので、検出の信頼性に応じた運転支援ができる。
【0135】
また、集音器は、経年変化などによって感度が初期状態と比べて変化する場合がある。上記の各接近車両検出装置では、集音器アレイに含まれる集音器の感度が一定であることを前提として、音源(接近車両)の検出処理を行っている。したがって、集音器アレイに含まれる集音器の中に他の集音器と感度が異なる集音器はあると、検出性能が低下する。そこで、定期的に集音器の感度を調査し、必要に応じて感度を調整することが望ましい。
【0136】
そのためには、接近車両検出装置の出荷前に、周波数毎に、音圧が既知である音をそれぞれ発生させ、集音器アレイに含まれる各集音器でその各周波数の音を入力し、電気信号をそれぞれ出力する。そして、集音器毎に、電気信号から周波数毎の音圧を記録する。初期設定としては、周波数毎に集音器が出力する音圧の関係が存在し、例えば、感度調整するための係数に初期値として1.0を与えておく。例えば、周波数が200Hzの場合には音圧が1000であり、係数が1.0であり、周波数が250Hzの場合には音圧が1010であり、係数が1.0である。なお、音発生装置としては、例えば、一般に自動車に備えられるクラクションを用いる。
【0137】
経年後、周波数毎に同じ音圧の音をそれぞれ発生させ、集音器アレイに含まれる各集音器でその各周波数の音を入力し、電気信号をそれぞれ出力する。そして、集音器毎に、電気信号から周波数毎の音圧を記録する。さらに、集音器毎に、周波数毎にこの音圧と初期値の音圧とを比較し、音圧が初期値の音圧と同じになるように係数を更新する。例えば、集音器Aについて、周波数が250Hzの場合、今回計測した音圧が980であったとすると、係数を1.02に更新する。また、周波数が250Hzの場合、今回計測した音圧が1010であったとすると、係数の1.0を維持する。なお、上記の各集音器からの音圧の計測については2回以上行い、その平均を各集音器の音圧としてもよい。
【0138】
そして、集音器毎に、更新された周波数毎の係数からなる係数テーブルをフィルタとして用い、集音器から出力される各周波数の音圧に対して係数をそれぞれ乗算し、感度調整後の音圧として音源の検出処理で用いるようにしてもよい。例えば、上記の集音器Aについて、周波数が250Hzの場合、音圧の980に係数1.02を乗算することにより、音圧として1000を出力する。また、周波数が250Hzの場合、音圧の1010に係数1.0を乗算し、音圧として1010を出力する。
【0139】
なお、集音器の感度調整を行う場合、調整用に発生される音以外に、周囲に他の音源がないことが望ましい。しかしながら、車両に搭載される接近車両検出装置の場合、自車両自体が音源となりうる。そこで、自車両が音を発生していないときに感度調整をするのが望ましい。例えば、運転者が停止状態から車両のシステム起動を指示した後でありかつ車両のシステムがまだ起動していない間(例えば、エンジンキーを差し込んだ瞬間やエンジンキーを回し始めた瞬間)に、感度調整用の音を発生させて感度調整を行う。その後に、車両のシステムを起動させる。
【0140】
このように、集音器の感度調整のための音発生と演算処理は瞬時に行われるため、運転者は通常のシステム起動と何ら違和感無しに、システムが起動する前に感度調整が行われるため、例えば、エンジン音などの感度調整に邪魔な音の影響を受けずに済む。
【0141】
さらに、システム起動前でも他の音源を完全に遮断することは難しい場合がある。この場合、感度調整用の音を集音器が受音する直前の音圧を計測して記録しておき、感度調整用の音発生直前に集音器が出力した各周波数の音圧が1つでも想定される発生音の音圧を超えているかあるいは音圧の比が規定値以上であった場合には感度調整を行わないようしてもよい。このようにすることにより、外部の音源の影響により感度調整が失敗することを防止できる。
【0142】
この接近車両検出装置によれば、経年後も集音器アレイに含まれる集音器の感度が一定に調整されるので、音源(接近車両)の検出性能を向上できる。
【0143】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0144】
例えば、本実施の形態では車両に搭載され、検出した接近車両情報を運転支援装置に提供する接近車両検出装置に適用したが、接近車両検出装置の構成としては他の構成でもよい。例えば、運転支援装置の中に接近車両検出機能として組み込まれるものでもよいし、接近車両検出装置の中に警報機能等を有するものでもよい。
【0145】
また、本実施の形態では自車両前方の接近車両を主として検出するために自車両の前端部に複数の集音器対を配置する構成としたが、自車両後方の接近車両を主として検出するために自車両の後端部に複数の集音器対を配置する構成としてもよい。
【0146】
また、本実施の形態では複数の集音器の配置について集音器の個数及び各集音器を配置する位置について幾つかの例を挙げて説明したが、少なくとも間隔の狭い1対の集音器とそれよりも間隔の広い1対の集音器を備える構成であれば、集音器の個数や各集音器を配置する位置について他の様々なバリエーションが適用可能である。
【0147】
また、本実施の形態では狭い間隔の集音器対を用いた音源検出方法と広い間隔の集音器対を用いた音源定位方法の一例を示したが、狭い間隔の集音器対を用いた音源検出方法と広い間隔の集音器対を用いた音源定位方法については他の方法を適用してもよい。
【0148】
また、本実施の形態では集音器アレイに含まれる全ての集音器の位置を固定としたが、集音器アレイに含まれる集音器を車幅方向に移動できる可動式に構成してもよい。このように集音器の位置を変えることにより、集音器間隔を最適な間隔に変えることができるので、音源の検出を行う場合には集音器対の間隔を狭くして耐ノイズ性能を向上させ、音源の定位を行う場合には集音器対の間隔を広くして最大検出距離性能を向上させることができる。これによって、常に最適な検出性能が得られる。このように可動式の集音器とすることにより、本発明に適用可能な集音器アレイを2個の集音器でも構成できる。
【符号の説明】
【0149】
1A,1B,1C…接近車両検出装置、2…運転支援装置、10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G…集音器アレイ、11A,11B,11C,11D…左側集音器ユニット、12A,12B,12C,12D…右側集音器ユニット、13A,13B,13C,13D…第1集音器、14A,14B,14C…第2集音器、15A,15B,15C…第3集音器、16A,16B,16C,16D…第4集音器、17C…後方集音器、18D…中央集音器、10E〜10E,10F〜10F,10G〜10G12…集音器、21A,21B,21C…フィルタ、22A,22B,22C…相互相関計算部、23A,23B,23C…位相差分散計算部、24A,24B,24C…音源検出部、25A,25B,25C…音源周波数成分計算部、26A,26B,26C…音源周波数成分フィルタ、27A,27B,27C…位相差変化計算部、28A,28B,28C…音圧変化計算部、29A,29B,29C…移動方向判別部、30A,30B,30C…接近車両判断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、
少なくとも1対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、前記1対の集音器の間隔よりも広い間隔で配置された他の1対の集音器を用いて前記音源の接近を検出することを特徴とする接近車両検出装置。
【請求項2】
車両の車幅方向における左側と右側にそれぞれ配置される2対の集音器を備え、
前記2対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、前記2対の集音器の一方の対の集音器のうちの車幅方向における外側の集音器と他方の対の集音器のうちの車幅方向における外側の集音器とを用いて前記音源の接近を検出することを特徴とする請求項1に記載の接近車両検出装置。
【請求項3】
車両の車幅方向に配置される3個の集音器を備え、
前記3個の集音器のうちの中央の集音器と車幅方向における外側の集音器とを用いて音源の検出を行うとともに、前記3個の集音器のうちの車幅方向における両外側の2個の集音器を用いて前記音源の接近を検出することを特徴とする請求項1に記載の接近車両検出装置。
【請求項4】
前記広い間隔で配置された他の1対の集音器は、無指向性の集音器であり、車幅方向の両端部に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の接近車両検出装置。
【請求項5】
車両の前後方向において前記各対の集音器が配置される側と反対側に、少なくとも1個の集音器が配置されることを特徴とする請求項4に記載の接近車両検出装置。
【請求項6】
前記複数の集音器の間隔は、フィボナッチ数列で指定される間隔で設定されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の接近車両検出装置。
【請求項7】
前記集音器の故障を診断する故障診断手段を備え、
前記故障診断手段で故障と診断された集音器がある場合には故障と診断された集音器を接近車両の検出に用いる集音器から除外することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の接近車両検出装置。
【請求項8】
前記故障診断手段で故障と診断された集音器がある場合には接近車両の検出の信頼度を低くすることを特徴とする請求項7に記載の接近車両検出装置。
【請求項9】
特定の周波数成分の音を発生する音発生手段を備え、
前記音発生手段で発生した音を前記複数の集音器でそれぞれ集音し、前記複数の集音器が前記特定の周波数成分の音に対して感度が一定になるように調整することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の接近車両検出装置。
【請求項10】
複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出方法であって、
少なくとも1対の集音器を用いて音源の検出を行うとともに、前記1対の集音器の間隔よりも広い間隔で配置された他の1対の集音器を用いて前記音源の接近を検出することを特徴とする接近車両検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−173211(P2012−173211A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37284(P2011−37284)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】