説明

推力伝達材及びその製造方法

【課題】圧縮強度に優れた推力伝達材を提供する。
【解決手段】推進工法における推進管間に設置される推力伝達材が、
ポリスチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分とを含む複数の発泡樹脂粒子の融着体からなる発泡成形体であり、前記発泡成形体が、1〜70質量%の割合のトルエン不溶ゲル分を含み、ATR法赤外分光分析により測定された前記発泡樹脂粒子界面付近の赤外線吸収スペクトルから得られる1735cm-1及び1600cm-1での吸光度比(D1735/D1600)が0.1〜2の範囲であり、前記発泡樹脂粒子中心の吸光度比(D1735/D1600)が、前記発泡樹脂粒子界面付近の吸光度比(D1735/D1600)より、0.6以上低いことを特徴とする推力伝達材により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力伝達材及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、圧縮強度に優れた推力伝達材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、ガス管等の管を地中に埋める方法として、開削工法と非開削工法が知られている。この内、非開削工法は、地表を堀削する領域が小さいため、開削工法に比べて、工事占有面積、騒音、振動等を減少でき、近年、多く行われている。
非開削工法中、地中の掘削は推進機が行い、推進機により形成された空間に管を連続的に挿入することで、所望の管配置を実現する推進工法が知られている。推進工法において、管は、押圧機による推力により空間に連続的に挿入される。推進工法で挿入される管は、推進管と一般的に称される。
【0003】
推進管は、押圧機により挿入されるため、推進管と推進管の接触部位に推力の変化が生じると、変化した部位に圧力が集中し、推進管が破損することがある。この破損を抑制するために、推進管と推進管との間に、クッション材を介在させることが提案されている(特開昭61−8320号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−8320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クッション材は、推進管の破損を防止すると共に、推進管間の推力を伝達する役割を果たしている。後者の意味において、クッション材は、推力伝達材とも称される。
推力伝達材には、推力の伝達のため及び原料費の抑制のために、高圧縮強度で高発泡倍率の発泡成形体が求められている。しかしながら、圧縮強度の向上と高発泡倍率化とは、通常相反する関係にあり、同時に実現することは困難であった。
そのため、圧縮強度の向上と高発泡倍率化とが同時に実現された推力伝達材の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、推力伝達材の圧縮強度の向上と高発泡倍率化とを同時に実現するために、推力伝達材を構成する発泡成形体中の互いに融着した複数の発泡樹脂粒子中の樹脂成分の存在状態について見直した。その結果、特定範囲のトルエン不溶ゲル分の割合を有することと、ATR法による吸光度比で規定される発泡樹脂粒子界面付近におけるスチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分の含有割合が、発泡成形体の全量に対する含有割合より多いこと、言い換えると、トルエン不溶ゲル分が樹脂粒子の表面に偏在していることで、発泡成形体に高発泡倍率でも優れた圧縮強度を与えうることを見い出し、本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、推進工法における推進管間に設置される推力伝達材が、
ポリスチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基とを有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分とを含む複数の発泡樹脂粒子の融着体からなる発泡成形体であり、
前記発泡成形体が、1〜70質量%の割合のトルエン不溶ゲル分を含み、
ATR法赤外分光分析により測定された前記発泡樹脂粒子界面付近の赤外線吸収スペクトルから得られる1735cm-1及び1600cm-1での吸光度比(D1735/D1600)が0.1〜2の範囲であり、
前記発泡樹脂粒子中心の吸光度比(D1735/D1600)が、前記発泡樹脂粒子界面付近の吸光度比(D1735/D1600)より、0.6以上低いことを特徴とする推力伝達材が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記推力伝達材の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂を含む種粒子に、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体を吸収させる工程と、吸収時又は吸収後に、前記スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体を重合させることでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、重合させた後又は、重合させつつ前記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る工程と、前記発泡性樹脂粒子を直接、又は前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させた後、発泡成形する工程とを含むことを特徴とする推力伝達材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高発泡倍率でも優れた圧縮強度を有する推力伝達材及びその製造方法を提供できる。この効果は、トルエン不溶ゲル分が発泡樹脂粒子の界面付近に偏在していることにより奏されると発明者等は考えている。
また、トルエン不溶ゲル分が、スチレン系単量体と(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体との共重合体に由来する成分である場合、より高発泡倍率でも優れた圧縮強度を有する推力伝達材を提供できる。
【0010】
更に、(メタ)アクリレート系単量体が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である場合、より高発泡倍率でも優れた圧縮強度を有する推力伝達材を提供できる。
【0011】
また、推力伝達材が、0.05〜0.67g/cm3の密度を有する場合、より高発泡倍率でも優れた圧縮強度を有する推力伝達材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の発泡成形体断面の赤外吸収スペクトルイメージである。
【図2】比較例5の樹脂粒子断面の赤外吸収スペクトルイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(推力伝達材)
本発明の推力伝達材は、ポリスチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分とを含む複数の発泡樹脂粒子の融着体からなる発泡成形体である。
推力伝達材は、外形は、特に限定されず、推進管の形状に応じて適宜設定できる。一般的にリング状の外形を有している。
また、推力伝達材は、トルエン不溶ゲル分を含まないものに比べて、同じ圧縮強度であれば、約15%程度薄くすることができる。
【0014】
以下、推力伝達材の構成成分について説明する。
(1)ポリスチレン系樹脂成分
ポリスチレン系樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等に由来する成分が挙げられる。
【0015】
また、ポリスチレン系樹脂成分としては、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体に由来する成分であってもよい。このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等の単官能単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能単量体等が挙げられる。
上記ポリスチレン系樹脂成分の内、ポリスチレン樹脂成分であることがより好ましい。
【0016】
(2)スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分
スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体としては、圧縮強度に優れた発泡成形体を与えうる単量体であれば、特に限定されない。例えば、スチレン系単量体、(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体が挙げられる。
【0017】
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリレート系単量体としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
ウレタン結合を有するビニル系単量体としては、新中村化学工業社から入手しうるNKオリゴシリーズが使用できる。具体的には、NKオリゴU−6HA、NKオリゴUA−32P等が挙げられる。
上記例示された単量体は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0018】
(3)トルエン不溶ゲル分
本発明の発泡成形体は、1〜70質量%の割合のトルエン不溶ゲル分を含む。このゲルは、分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体と、任意にこの単量体と共重合したスチレン系単量体とに由来すると発明者は考えている。ゲル分の割合が1質量%未満の場合、発泡成形体の強度の向上が十分でない。70質量%より多い場合、トルエン不溶ゲル分が多くなり、得られる発泡性樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡倍数を向上できないことがある。より好ましい範囲は、1〜65質量%である。
【0019】
(4)吸光度比
次に、ATR法赤外分光分析により測定された発泡樹脂粒子界面付近の赤外線吸収スペクトルから得られる1735cm-1及び1600cm-1での吸光度比(D1735/D1600)が0.1〜2の範囲である。ここで、1735cm-1の吸収はアクリル酸エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来するピークを示しており、トルエン不溶ゲル分の存在を示している。1600cm-1の吸収はポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来するピークの存在を示している。この範囲の吸光度比は、トルエン不溶ゲル分が、発泡樹脂粒子界面付近に1質量%以上存在していることを意味している。吸光度比が0.1未満の場合、トルエン不溶ゲル分が存在しないこととなる。2より多い場合、トルエン不溶ゲル分が多くなり、発泡成形体の発泡倍率が低下することがある。より好ましい吸光度比の範囲は、0.2〜1である。
【0020】
更に、発泡樹脂粒子中心の吸光度比(D1735/D1600)が、発泡樹脂粒子界面付近の吸光度比(D1735/D1600)より、0.6以上低い発泡成形体である。発泡樹脂粒子が、界面付近より低い吸光度比の中心を有することで、トルエン不溶ゲル分が発泡樹脂粒子の界面に偏在していることが理解できる。より好ましい吸光度比の差は、0〜0.6である。
また、発泡樹脂粒子中心の吸光度比(D1735/D1600)は、0〜0.4の範囲であることが好ましく、0〜0.3の範囲であることがより好ましい。
【0021】
(5)添加剤
発泡成形体には、物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、発泡助剤、可塑剤、滑剤、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等の難燃剤が挙げられる。
【0022】
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0023】
結合防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0024】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0025】
(推力伝達材の製造方法)
推力伝達材としての発泡成形体は、例えば、樹脂粒子への発泡剤の含浸により発泡性樹脂粒子を得る含浸工程、発泡性樹脂粒子を直接、又は前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させた後、発泡成形する工程を経ることにより製造できる。ここで、発泡性樹脂粒子の予備発泡は、推力伝達材を構成する発泡成形体の密度に対応する嵩密度の予備発泡粒子を与える条件で行われることが好ましい。例えば、密度が0.05〜0.67g/cm3の推力伝達材を所望する場合は、0.05〜0.67g/cm3の比較的低い嵩密度を有する予備発泡粒子を与える条件で予備発泡が行われることが好ましい。発泡成形は、適宜発泡成形型の成形体キャビティ内に発泡性樹脂粒子又は予備発泡粒子を充填した後に行うことができる。
【0026】
(1)発泡性樹脂粒子
発泡性樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、
(a)スチレン、架橋性単量体を含有する単量体混合物を重合開始剤の存在下にて塊状重合させた後、得られた塊状物をペレット化して樹脂粒子とし、この樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を製造する方法(塊状重合法)、
(b)単量体混合物を重合開始剤の存在下にて懸濁重合させて樹脂粒子を得、重合させた後又は重合させつつ樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を製造する方法(懸濁重合法)、
(c)種粒子に、単量体混合物を吸収させ、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行うことにより樹脂粒子を得、重合させた後又は重合させつつ樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を製造する方法(シード重合法)
等が挙げられる。これら製造方法の内、ペレット化する工程が不要で、製造効率に優れ難燃剤や難燃助剤の分解し難い、上記(b)及び(c)の方法が好ましい。なお、樹脂粒子中に難燃剤や難燃助剤を含有させる場合には、単量体混合物の重合時や、上記(a)の方法においてはペレット化する時に、反応系や樹脂中に難燃剤や難燃助剤を添加すればよい。
【0027】
上記方法の中でも、上記特定の吸光度比で、上記(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体に由来する樹脂とスチレン系単量体由来の樹脂とを存在させることが可能なシード重合法が好ましい。
【0028】
シード重合法による発泡性樹脂粒子の製造方法は、例えば、
水性媒体中で、種粒子に、スチレン、分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する、例えば(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体を含む単量体混合物(但し、種粒子がスチレン由来の成分を含む場合は、単量体混合物はスチレンを含んでいなくてもよい)を吸収させる工程と、
吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と重合させた後又は重合させつつポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程とを含む方法を採用できる。
【0029】
なお、分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体は、発泡成形体を製造するための全単量体に対して、1:0.001〜0.015(質量比)の割合で含まれていることが好ましい。0.001未満の場合、トルエン不溶ゲル分が少なくなりすぎ得られる発泡性成形体の強度が低下することがある。0.015より多い場合、トルエン不溶ゲル分が多くなり、得られる発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。より好ましい比は、1:0.0015〜0.010である。
【0030】
(a)種粒子
単量体混合物は、これを構成する単量体を全て同時に水性媒体中に供給する必要はなく、単量体の全部あるいは一部を別々のタイミングで水性媒体中に供給してもよい。発泡性樹脂粒子中に難燃剤や難燃助剤を含有させる場合には、難燃剤や難燃助剤を単量体混合物や水性媒体中に添加しても、あるいは、種粒子中に含有させてもよい。
【0031】
具体的には、種粒子を構成する樹脂が、スチレン、上記(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体に由来する成分のいずれかを含む場合には、得られる発泡性樹脂粒子を構成する単量体由来の成分の割合が上記特定の範囲となるように、単量体混合物中の各単量体の使用量を調整することが好ましい。
【0032】
特に、種粒子を構成する樹脂が、スチレンに由来する成分を含む場合には、上記と同様に、得られる発泡性樹脂粒子を構成する単量体由来の成分の割合が上記特定の範囲となるように、単量体混合物中の各単量体の使用量を調整するが、その際にスチレンの使用量が0質量部であってもよい。
【0033】
また、種粒子は一部又は全部にポリスチレン系樹脂回収品を用いることができる。更に、種粒子は、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体や、これらスチレン系単量体と共重合可能なo−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0034】
種粒子の平均粒子径は、作製する発泡性樹脂粒子の平均粒子径等に応じて適宜調整できる。例えば、種粒子の平均粒子径は、発泡性樹脂粒子の平均粒子径の40〜70%とすることができる。具体的には、平均粒子径が1.0mmの発泡性樹脂粒子を作製する場合には、平均粒子径が0.4〜0.7mm程度の種粒子を用いることが好ましい。
種粒子の重量平均分子量は、特に限定されないが、15万〜70万が好ましく、更に好ましくは20万〜50万である。
【0035】
種粒子は、特に限定されず、公知の方法により製造できる。例えば、懸濁重合法や、押出機で原料樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法が挙げられる。また、懸濁重合法により得られた又はカットする方法により得られた粒子は、適宜篩い分けすることで、所望の平均粒子径の粒子に分級してもよい。分級した種粒子を使用することで、粒径分布が狭く所望粒子径を有する発泡性樹脂粒子を得ることができる。
【0036】
種粒子は、懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子に、水性媒体中で、スチレン系単量体を含浸・重合させることにより得られる粒子であってもよい。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。この方法で用いられるスチレン系単量体の量は、粒子100質量部に対して、7.0〜100.0質量部の範囲とできる。7.0質量部未満の場合は成形時の耐熱性が低下することがあり、100.0質量部を超えると発泡性が低下することがある。
【0037】
種粒子の使用量は、重合終了時に得られる樹脂粒子の全量に対して、10〜75質量%が好ましい。種粒子の使用量が10質量%より少ない場合、シード重合時における単量体混合物の重合率を適正範囲に制御することが困難となることがある。その結果、得られる樹脂が高分子量化して発泡性樹脂粒子の発泡性を低下させることがある。また、この場合、樹脂の微粉末が多量に発生して製造効率が低下することがある。一方、種粒子の使用量が75質量%より多い場合、発泡成形体の外観が低下することがある。より好ましい使用量は、15〜50質量%である。
【0038】
(b)水性媒体
水性媒体には、単量体混合物の液滴及び種粒子の分散性を安定させるために分散剤を用いてもよい。このような分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物が挙げられる。水溶性高分子と難溶性無機化合物の併用が好ましい。また、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0039】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩のようなカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩が挙げられる。
【0040】
(c)単量体混合物の重合
単量体混合物の重合は、例えば、60〜150℃で、2〜40時間加熱することにより行うことができる。重合は、単量体混合物を種粒子中に吸収させた後、又は単量体混合物を種粒子に吸収させながら行うことができる。
【0041】
単量体混合物は、通常重合開始剤の存在下で重合する。重合開始剤は、通常単量体混合物と同時に種粒子に含浸させる。重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で用いられても、併用されてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、例えば0.05〜0.5質量部の範囲である。
【0042】
特に、重量平均分子量を調整し、残存単量体を減少させるために、10時間半減期温度の異なる二種類の重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、10時間半減期温度が高い方の重合開始剤の10時間半減期温度が80〜120℃で、かつ、10時間半減期温度が低い方の重合開始剤の10時間半減期温度が70〜110℃であることが好ましい。
【0043】
重合開始剤を種粒子又は種粒子から成長途上の粒子に均一に吸収させるために、重合開始剤を水性媒体中に添加するにあたって、重合開始剤を水性媒体中に予め懸濁又は乳化分散させた上で分散液中に添加するか、あるいは、重合開始剤を単量体混合物あるいは単量体混合物のいずれかの単量体に予め溶解させた上で水性媒体中に添加することが好ましい。
【0044】
(d)発泡剤の含浸工程
樹脂粒子に発泡剤(以下、単に発泡剤ともいう)を含浸させることで、発泡性樹脂粒子が得られる。発泡剤の含浸は、重合させた後に行ってもよく、重合させつつ行ってもよい。
含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
【0045】
(i)発泡剤
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0046】
更に、発泡剤の含有量は、0.5〜15質量%の範囲であることが好ましい。0.5質量%より少ないと、発泡性樹脂粒子から所望の密度の発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。15質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、1〜14質量%である。
【0047】
(ii)発泡性樹脂粒子の製造方法
樹脂粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させる際の温度は、低いと、樹脂粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがあり、又、高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがあるので、60〜120℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。発泡助剤・可塑剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤・可塑剤としては、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0048】
(2)予備発泡粒子
予備発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性樹脂粒子を予備発泡させることで得られる。
予備発泡粒子の嵩密度は、0.05〜0.67g/cm3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.05g/cm3より小さい場合、発泡成形体に十分な強度と長期耐久性を持たすことができない。一方、嵩密度が0.67g/cm3より大きい場合、嵩発泡倍数のばらつきが大きくなり、均一な粒子が得られず、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
【0049】
なお、発泡前に、発泡性樹脂粒子の表面に、滑剤を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性樹脂粒子の発泡工程において予備発泡粒子同士の結合を減少できる。
予備発泡粒子中の発泡剤の含有量は、0.5〜15質量%の範囲であることが好ましい。0.5質量%より少ないと、所望の密度の予備発泡粒子を得られないことがある。加えて、予備発泡粒子を型内発泡成形する際の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。15質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、1〜14質量%である。
【0050】
(3)発泡成形体
発泡性樹脂粒子又は予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体が製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調整できる。
【0051】
予備発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、予備発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<吸光度比>
(1)発泡樹脂粒子界面付近の吸光度比X
発泡成形体を厚さ0.1〜0.15mmでスライスしてスライス試料を得、得られたスライス試料中の互いに融着した2つの発泡樹脂粒子を任意に10組選択する。本明細書では、発泡樹脂粒子界面付近とは、2つの発泡樹脂粒子が互い融着した界面から中心に向かう200μm以内の領域を意味する。2つの発泡樹脂粒子の一方の中心と他方の中心とを結ぶ直線に沿って、顕微IRイメージングマッピング法にて分析する。その結果から、各組のポリスチレン系樹脂成分と、分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分の吸光度比(1735cm-1/1600cm-1)を算出する。得られた10組の吸光度比の平均値を、上記吸光度比Xとする。なお、吸光度の測定に使用した測定装置及び測定条件を下記する。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One(Perkin Elmer社製)
高速IRイメージングシステム Spectrum Spotlight 300
測定モード:Imaging 透過法
測定条件:分解能=8cm-1 スキャン回数2、8 ピクセルサイズ6.25×6.25μm
前処理方法:スライス試料をフッ化Ba板に挟み、透過法に測定後、吸光度の強度比マッピングを実施。
スライス試料作製:ウルトラミクロトーム ULTRACUT−UCT(ライカ社製)
スライス使用ナイフ:ダイヤモンドナイフ 切削厚み10μm
【0053】
(2)発泡樹脂粒子中心の吸光度比Y
発泡成形体を厚さ0.1〜0.15mmでスライスしてスライス試料を得、得られたスライス試料中の互いに融着した2つの発泡樹脂粒子を任意に10組選択する。2つの発泡樹脂粒子の一方の中心と他方の中心とを結ぶ直線に沿って、顕微IRイメージングマッピング法にて発泡樹脂粒子中心を分析する。本明細書では、発泡樹脂粒子中心とは、発泡樹脂粒子が隣接する発泡性樹脂粒子と融着した界面から粒子中心を含む断面において、粒子の中心部から半径200μm以内の領域を意味する。その結果から、各組のポリスチレン系樹脂成分と、分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分の吸光度比(1735cm-1/1600cm-1)を算出する。得られた10組の吸光度比の平均値を、吸光度比Yとする。なお、吸光度の測定に使用した測定装置及び測定条件は、上記吸光度比Xの装置及び条件と同じである。
【0054】
<トルエン不溶ゲル分の含有割合>
トルエン不溶ゲル分の含有割合は、以下の条件で測定される値とする。
発泡成形体の測定試料W1(1.00g±0.02gで精秤する)をトルエン100ml中、130℃で24時間浸漬させる。浸漬後80メッシュの金網を用いて濾過し、残渣を80℃、−60cmHgで2時間減圧乾燥する。乾燥後デシケータ内で室温まで自然冷却し、乾燥残渣の質量W2を測定する。
前記の測定値から下記式より、トルエン不溶ゲル分を算出する。
トルエン不溶ゲル分(質量%)=100×W2/W1
【0055】
<嵩密度>
予備発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0056】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例300×400×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m3)を求める。
【0057】
<圧縮強度>
発泡成形体の5%圧縮強度をJIS K9511:1999「発泡プラスチック保温材」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、密度200kg/m3の発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片の5%圧縮強度を、圧縮強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、圧縮速度10mm/分の条件下にて測定する。試験片を3個用意し、各試験片の5%圧縮強度を同じ要領で測定し、その相加平均を平均5%圧縮強度とする。
評価:平均5%圧縮強度 1.5MPa以上:○
1.5MPa未満:×
【0058】
(実施例1)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに第三リン酸カルシウム(大平化学社製)120gと、亜硫酸水素ナトリウム0.2g及び過硫酸カリウム0.2gとを加え、更に、過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート20g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを供給した後、攪拌羽を100rpmの回転速度にて回転させて攪拌して水性懸濁液を形成した。
【0059】
次に、攪拌羽を200rpmの回転速度で回転させて水性懸濁液を攪拌しながらオートクレーブ内の温度を90℃まで昇温して90℃にて6時間に亘って保持し、更に、オートクレーブ内の温度を125℃まで昇温し、125℃で2時間15分に亘って保持することによって、スチレン単量体を懸濁重合した。
しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、オートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.2〜1.2mmでかつ重量平均分子量が30万のポリスチレン粒子を得た。
【0060】
次に別の25リットルの攪拌機付オートクレーブにイオン交換水10kg、上記ポリスチレン系樹脂を種粒子2350gとして供給し、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム1gを供給して攪拌しつつ75℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド33.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート3.2gをスチレン単量体1000gに溶解させ、このスチレン単量体を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。
【0061】
そして、分散液中に、前記スチレン単量体を供給し終えてから30分経過後に、スチレン単量体2650gにトリメチロールプロパントリメタクリレート(3官能単量体、分子量338)13.3gを溶解したものを60分かけて一定の供給速度で供給しながら、オートクレーブ内を75℃から88℃まで昇温した。
次に、分散液を88℃に保持したまま、スチレン単量体4000gにトリメチロールプロパントリメタクリレート20gを溶解したものを90分かけて一定の供給速度で供給しながら、シード重合を行うことで、樹脂粒子を得た。続いて反応容器を密閉し、30分かけて120℃に加熱して90分保持し、その後60℃まで冷却した。
【0062】
次に、樹脂粒子が分散した分散液を120℃に保持し、続いて、重合容器内にトルエン47.5g、ペンタン125g、ブタン90gを圧入して5時間に亘って保持することにより、樹脂粒子中にペンタン、ブタンを含浸させた。この後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
発泡性樹脂粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。
【0063】
そして、発泡性樹脂粒子を加熱して嵩密度0.20g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。次に、予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得た。発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.20g/cm3(200kg/m3)であった。発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
発泡成形体のトルエン不溶ゲル分は60質量%であった。
【0064】
(実施例2〜7及び比較例1〜5)
表1に示すトルエン不溶ゲル分を与える単量体を使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。比較例5については、架橋成分の偏在が見られ、発泡成形体を得ることができなかった。
実施例2〜7の発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
一方、比較例1〜4の発泡成形体は、発泡成形体の圧縮強度は1.5Mpa未満であった。
実施例1〜7及び比較例1〜5の結果を表1にまとめて示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から、トルエン不溶ゲル分を与えるビニル基数が3〜10個の範囲であれば、圧縮強度を顕著に向上できることが分かる。
実施例1の発泡成形体断面の赤外吸収スペクトルイメージを、比較例5の樹脂粒子断面の赤外吸収スペクトルイメージを、それぞれ図1と2に示す。図1と2から、実施例1の発泡成形体の方が、粒子界面にトルエン不溶ゲル分が偏在していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法における推進管間に設置される推力伝達材が、
ポリスチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基とを有する単量体との共重合体に由来するトルエン不溶ゲル分とを含む複数の発泡樹脂粒子の融着体からなる発泡成形体であり、
前記発泡成形体が、1〜70質量%の割合のトルエン不溶ゲル分を含み、
ATR法赤外分光分析により測定された前記発泡樹脂粒子界面付近の赤外線吸収スペクトルから得られる1735cm-1及び1600cm-1での吸光度比(D1735/D1600)が0.1〜2の範囲であり、
前記発泡樹脂粒子中心の吸光度比(D1735/D1600)が、前記発泡樹脂粒子界面付近の吸光度比(D1735/D1600)より、0.6以上低いことを特徴とする推力伝達材。
【請求項2】
前記トルエン不溶ゲル分が、スチレン系単量体と(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体との共重合体に由来する成分である請求項1に記載の推力伝達材。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系単量体が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である請求項2に記載の推力伝達材。
【請求項4】
前記推力伝達材が、0.05〜0.67g/cm3の密度を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の推力伝達材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の推力伝達材の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂を含む種粒子に、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体を吸収させる工程と、吸収時又は吸収後に、前記スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基とエステル基を有する単量体を重合させることでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、重合させた後又は、重合させつつ前記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る工程と、前記発泡性樹脂粒子を直接、又は前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させた後、発泡成形する工程とを含むことを特徴とする推力伝達材の製造方法。
【請求項6】
前記発泡性樹脂粒子の予備発泡が、0.05〜0.67g/cm3の嵩密度を有する予備発泡粒子を与える条件で行われる請求項5に記載の推力伝達材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214990(P2012−214990A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79587(P2011−79587)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】