説明

推進工法用コンクリート管およびその遠心力成形方法

【課題】管体の外圧強度の向上を図るとともに成形時の強度低下のバラツキをなくす。
【解決手段】推進工法用コンクリート管において、鉄筋篭を鉄筋篭部11とこの鉄筋篭部11より小径の挿し口用鉄筋篭部12とを連続成形したものを用い、上記鉄筋篭部11をコンクリート管体14の外周面近くに埋設し、上記挿し口用鉄筋篭部12を前記管体14の段差部18aに埋設することにより、コンクリートの被りを最小にした推進用コンクリート管15となり、その外圧強度が増す。また、円筒型枠内に上記連続成形した鉄筋篭を配設した状態で、遠心力成形することにより、上記鉄筋篭は管体に同心状に埋設され、この管体の品質が一定となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、推進工法用コンクリート管およびその遠心力成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の推進工法用コンクリート管は、例えば図10に示すように、一端に埋込カラー17による受け口16と他端に段差部18aを形成した挿し口18とからなるコンクリート管体14内に鉄筋篭7を埋設してなるものである。
この鉄筋篭7は、軸方向に平行な複数の軸筋8の外周に螺旋筋9を螺旋状に巻きつけ、交差部を溶接し一体化してなるものであり、その全長にわたり同一径のものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−38878号公報
【0003】
そして、上記推進工法用コンクリート管(以下、推進用コンクリート管という)は常法により遠心力成形される。すなわち、図11に示すように、一側に受け口形成用金具2(鋼製の埋込カラー17)が、他側に挿し口形成用金具(型)3がセットされた円筒型枠1は、一側に取り付けたタイヤ4および他側に取り付けた受け口形成用型部5と一体のタイヤ4を介して回転成形機6の上に載置される。上記円筒型枠1内に上記鉄筋篭7を収容する。この鉄筋篭7は、一端が円筒型枠1に設けた受け口形成型部5の端部から他端の挿し口形成用金具(型)3の端部まで延びている。そして、鉄筋篭7の外径は、図10に示すように、挿し口形成用金具3の内周面との間に所定の隙間Sが空くように設定され、この隙間Sにより円筒型枠1の内周面と鉄筋篭7との隙間(距離)はSとなる。上記鉄筋篭7は挿し口形成用金具3および円筒型枠1内に、上記の隙間が均等となるように、多数のスペーサ(図示しない)を介してセットされる。
上記のようにしてなる円筒型枠1を高速回転させながら、コンクリート投入用トラフ(シュート)13により、コンクリートを投入してコンクリート管体14を遠心力成形し、この管体の内面仕上げを行ない、製管工程を終了する。以下、スチーム養生、脱型を経て推進用コンクリート管15となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記コンクリート管体14に埋設される鉄筋篭7の外径は、挿し口18の段差部(凹入段差部)18aの外径(実際は段差部18aの凹周溝18bの内径、すなわち底径)より小径に設定される。その設定数値は、例えば、プレキャストコンクリートの被りが鋼材(鉄筋)の直径以上と規定されていることから、上記コンクリート管体14の外径より、半径で最小6.0mm小径のものとする必要がある。したがって、上記推進用コンクリート管15は、その鉄筋篭7が上記コンクリート管体14の外周面から距離S離れた内側に位置するため、埋設された鉄筋篭7による補強効果が十分に発揮されない。
【0005】
上記推進用コンクリート管15が、例えば、管口径800mm(管厚80mm、鉄筋篭7の鉄筋線径5mm)の場合、上記段差部18aの凹周溝18bの内径は、このコンクリート管体14の外径より半径で15mm小径となる。このことから、上記凹周溝18bの内径と鉄筋篭7との間に、上記の規定に従い6mmの隙間Sを設定したとすると、コンクリート管体14の外周面から鉄筋篭7の外径との間に21mmの距離(隙間S)を生じることになる。つまり、コンクリートの被りが21mmとなり、コンクリート管体14の外周面からコンクリートの中側に位置することとなる。このように鉄筋篭7の位置がコンクリート厚み80mmに対して上記21mm内側になると、配筋の効果、すなわち鉄筋補強が有効に発揮されず、ひいては推進用コンクリート管15の破壊強度(外圧強度)が低下するという問題がある。
【0006】
また、上記遠心力成形の際、上記鉄筋篭7は、円筒型枠1の内周面から隙間Sだけ内側の離れた位置になるため、コンクリート管体14への埋設が均等な位置にならない場合がある。その理由は、上記隙間Sが大きいため、遠心力成形時に鉄筋篭7の片寄り(位置ずれ)がそれだけ大きくなることによる。この片寄りを防止するためにスペーサ(図示省略)を用いても十分に対応できず、したがって、推進用コンクリート管15の破壊(外圧)強度にバラツキが発生するという問題がある。
【0007】
この発明は、上記従来の問題点を解消し、管体の外圧強度の向上を図るとともに、成形時の強度低下のバラツキをなくすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の推進用コンクリート管は、コンクリート管体に埋設される鉄筋篭が、鉄筋篭部とこの鉄筋篭部より小径の挿し口用鉄筋篭部とを連続成形したものであり、上記鉄筋篭部を上記コンクリート管体の外周面近くに埋設し、上記挿し口用鉄筋篭部を上記段差部に埋設してなるものである。これによって、上記鉄筋篭部を上記コンクリート管体の外周面近くに接近させ、コンクリートの被りを最小にして埋設することができる。
【0009】
また、推進用コンクリート管の遠心力成形方法は、円筒型枠内に配設する鉄筋篭が、鉄筋篭部とこの鉄筋篭部より小径の挿し口用鉄筋篭部とを連続成形したものであり、この鉄筋篭の鉄筋篭部を上記円筒型枠の内周面近くに配設し、上記挿し口形成用金具の内周面に上記挿し口用鉄筋篭部を配設して遠心力成形するものであり、これにより、上記鉄筋篭部を均等、すなわち同心状に埋設することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、以上のように、コンクリート管体の外周面近くに鉄筋篭を埋設することにより、その管体の品質が一定となるとともに、外圧強度が大幅に向上する。
また、遠心力成形時における鉄筋篭の埋設位置のバラツキが少なく品質が一定となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、従来と同一部材は同一符号を用いる。図1において、1は円筒型枠で、この円筒型枠1内の一側に受け口形成用金具2、すなわち後述の鋼製の埋込カラー17、他側に挿し口形成用金具(型)3がセットされる。
埋込カラー17および挿し口形成用金具3は、後述するように推進用コンクリート管に受け口と挿し口を形成するためのものである。また、円筒型枠1の両側外面にはタイヤ4が取付けられ、このタイヤ4は回転成形機6の上に載置される。5はタイヤ4と一体の受け口形成用型部である。
【0012】
上記円筒型枠1内に鉄筋篭10が配設される。この鉄筋篭10は、図2〜3に示すように、鉄筋篭部11の一側(挿し口側)に上記鉄筋篭部11の外径より小径の挿し口用鉄筋篭部12を一体成形したものである。すなわち、上記鉄筋篭10は、その軸心方向の長さが上記段差部18aの長さ分だけ短い鉄筋篭部11と、上記段差部18aの長さ分だけであり、かつ上記鉄筋篭部11の篭径より小径の挿し口用鉄筋篭部12とを連続して成形したものである。
上記鉄筋篭部11は、軸方向の複数の軸筋11aとその外側に一体成形した円周方向の螺旋筋11bとからなり、また、上記挿し口用鉄筋篭部12も、軸方向の複数の軸筋12aとその外側に一体成形した円周方向の螺旋筋12bとからなり、上記軸筋11a、12aおよび螺旋筋11a、12bは鉄筋編成機(図示しない)により連続して一体に編成され、鳥かご状の円筒体に成形される。このように鉄筋篭10は両篭部11、12が連続一体に編成されるので、その境目の強度が補強される。
【0013】
上記鉄筋篭部11の長さは、円筒型枠1にセットした受け口形成用型部5の内側(奥側)端部から挿し口形成用金具(型)3の内側(奥側)端部までである。そして、上記鉄筋篭部11は、円筒型枠1との間に所定の隙間Sが空くように、軸筋11aに嵌めたスペーサ(図示しない)を介して設置される。この隙間Sは、上記鉄筋篭部11に対するコンクリートの被りが規定の範囲内となるように設定される。この被り寸法は、通常、少なくとも埋設される鉄筋径以上とされる。したがって、例えば、管口径が800mmφであれば、使用する鉄筋の直径は5mmであるので、隙間Sは5〜10mmに設定され、これにより鉄筋篭10の篭径が決められる。
また、上記挿し口用鉄筋篭部12は、挿し口形成用金具3の内周面に、この挿し口形成用金具3との間に所定の隙間Sが空くように、上記と同様に、軸筋12aに嵌めたスペーサ(図示しない)を介して設置される。このときの隙間Sは、挿し口形成用金具3に対するコンクリートの被りが規定の範囲内となるように外径が設定される。この場合の隙間Sは、上記隙間Sと同程度の寸法に設定される。
【0014】
上記のように鉄筋篭10を組み込んだ円筒型枠1を、図1に示すように、回転成形機6上で高速回転させながら、この円筒型枠1内にコンクリート投入用トラフ(シュート)13によりコンクリートを投入し、鉄筋篭10が埋設されたコンクリート管体14を遠心力成形し、この管体内面の仕上げを行ない、製管工程を終了すると、スチーム養生、脱型を経て推進用コンクリート管15となる。上記コンクリート管体14の円筒型枠1からの脱型は、タイヤ4およびを受け口形成用型部5と一体のタイヤ4を取り外し、挿し口形成用金具3を含む2つ割の円筒型枠1を解くことによる。なお、受け口用形成用金具2は埋込カラー17そのものであるから、コンクリート管体14に一体化される。
【0015】
上記により製造された推進用コンクリート管15は、図4に示すように、一側に受け口16と他側に挿し口18を有し、コンクリート管体14内に鉄筋篭部11が、挿し口18内に挿し口用鉄筋篭部12がそれぞれ均等に埋設一体化されて補強されたものとなる。なお、受け口16の外径は推進用コンクリート管15の外径と同一である。
【0016】
上記推進用コンクリート管15の接続は、図5に示すように、先頭側の推進用コンクリート管15の受け口16に後続の推進用コンクリート管15の挿し口18を凹周溝18bに装着した止水部材19を介して押し込むことによる。20はクッション材である。
【0017】
なお、受け口16と挿し口18を有する推進用コンクリート管15としては種々のものがあり、例えば、図6に示すように、段差部18aに一個の凹入段部18cを設けたものである。この場合の鉄筋篭10も前記実施の形態と同様の鉄筋篭部11と挿し口用鉄筋篭部12とからなり、かつコンクリート管体14の外周面と鉄筋篭部11の外周との隙間および凹入段部18cの外周面と挿し口用鉄筋篭部12の外周との隙間は、上記で挙げた隙間S、Sと同様に設定される。
上記推進用コンクリート管15の接続は、その受け口16に後続の推進用コンクリート管15の挿し口18を、凹入段部18cに装着した止水部材19を介して嵌合することによりなる。
【0018】
また、図7は、一側に段差部18aによる挿し口18を有し、他側に埋込カラー17による受け口16を有し、埋込カラー17にその先端部の内向き折曲部と中間部の内向き凸部との間に周溝17aを形成したものである。さらに、図8は、図7における1個の内向き凸部を、間隔を空けて2個形成し、その間に2個の周溝17aとしたものであり、他の形状は図7と同様である。
上記何れの鉄筋篭10も前記実施の形態と同様の鉄筋篭部11と挿し口用鉄筋篭部12とからなり、かつコンクリート管体14の外周面と鉄筋篭部11の外周との隙間および段差部18aの外周面と挿し口用鉄筋篭部12の外周との隙間は、上記で挙げた隙間S、Sと同様に設定される。
上記推進用コンクリート管15の接続は、その受け口16に後続の挿し口18を上記埋込カラー17の周溝17aに装着した止水部材19を介して嵌合することによりなる。
【0019】
管口径が800φmm以上になると、図9のように、コンクリート管体14の外層側に上記の鉄筋篭10を埋設するとともに、その内層側にも鉄筋篭21を埋設して、内外2重の鉄筋構造とする。この場合、鉄筋篭21は複数本の軸筋と螺旋筋とからなり、管の全長にわたり同一外径のものである。
【0020】
推進用コンクリート管15の外圧強さ(破壊強度)は、挿し口18部分を除いた管体を加圧することにより測定するので、その間の補強を十分に行なえばよい。
【0021】
上記のコンクリートは、セメント、砂礫、水を混合したものであり、ドライコンクリートは、セメント、砂礫に少量の水を添加して混合したものであり、セメントスラリーはセメントのみか、少量の水を加えたものである。
【0022】
さらに、この材料投入の後の硬化期間中の回転、振動などは、いずれも公知の遠心力成形による技術を利用して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における遠心成形方法を示す縦断面図
【図2】本発明の実施形態に係る鉄筋篭を示す正面図
【図3】図2の左側面図
【図4】本発明の実施形態に係る推進用コンクリート管を示す一部縦断正面図
【図5】本発明の推進用コンクリート管の接続状態を示す部分拡大縦断面図
【図6】本発明の他の推進用コンクリート管の接続形態を示す部分拡大縦断面図
【図7】本発明の他の推進用コンクリート管の接続形態を示す部分拡大縦断面図
【図8】本発明の他の推進用コンクリート管の接続形態を示す部分拡大縦断面図
【図9】本発明の他の実施形態に係る推進用コンクリート管を示す一部縦断正面図
【図10】従来例の概略説明図
【図11】従来例の遠心成形方法を示す縦断面図
【符号の説明】
【0024】
1 円筒型枠
2 受け口形成用金具
3 挿し口形成用金具(型)
4 タイヤ
5 受け口形成用型部
6 回転成形機
10 鉄筋篭
11 鉄筋篭部
11a 軸筋
11b 螺旋筋
12 挿し口用鉄筋篭部
12a 軸筋
12b 螺旋筋
13 トラフ
14 コンクリート管体
15 推進用コンクリート管
16 受け口
17 埋込カラー
17a 凹周溝
18 挿し口
18a 段差部
18b 凹周溝
18c 凹入段部
19 止水部材
20 クッション材
21 鉄筋篭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に埋込カラー17により形成した受け口16と他端に上記受け口16の外径より小径の段差部18aにより形成した挿し口18を具えたコンクリート管体14に鉄筋篭10を埋設してなる推進工法用コンクリート管において、
上記鉄筋篭10は、鉄筋篭部11とこの鉄筋篭部11より小径の挿し口用鉄筋篭部12とを連続成形したものであり、上記鉄筋篭部11を上記コンクリート管体14の外周面近くに埋設し、上記挿し口用鉄筋篭部12を上記段差部18aに埋設してなることを特徴とする推進工法用コンクリート管。
【請求項2】
上記挿し口用鉄筋篭部12を上記段差部18aの外周面近くに埋設してなることを特徴とする請求項1記載の推進工法用コンクリート管。
【請求項3】
上記段差部18aに形成した凹周溝18bの外周面近くに上記挿し口用鉄筋篭部12を埋設してなることを特徴とする請求項1記載の推進工法用コンクリート管。
【請求項4】
一端に受け口形成用金具2と他端に上記受け口形成用金具2の内径より小内径の挿し口形成用金具3を装着した円筒型枠1内に、鉄筋篭10を配設してなる推進工法用コンクリート管の遠心力成形方法において、
上記鉄筋篭10は、鉄筋篭部11とこの鉄筋篭部11より小径の挿し口用鉄筋篭部12とを連続成形したものであり、この鉄筋篭10の鉄筋篭部11を上記円筒型枠1の内周面近くに配設し、上記挿し口形成用金具3の内周面に上記挿し口用鉄筋篭部12を配設した状態で、上記円筒型枠1を回転させながら、コンクリートを投入して遠心力成形することを特徴とする推進工法用コンクリート管の遠心力成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−181955(P2006−181955A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380118(P2004−380118)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】